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ホンドカヤネズミ(ネズミ科) Micromys minutus

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(1)

動物 1

ホンドカヤネズミ(ネズミ科)

Micromys minutus japonicus

この種の概要 主に休耕田や河川敷など水辺の草地、ヨシ原などに生息する。堤防や道路の法面など 人間活動の影響を強く受ける草地にも生息する。県内では自然草地の減少によって、数を減らしてい ると考えられる。埼玉県レッドデータブックでは「準絶滅危惧」。 区別点 日本でいちばん小さいネズミ。同サイズのハツカネズミは尾が短い。ススキ、オギなどイネ 科の植物の葉を細く裂いて球状の巣を作るので、その有無で生息状況を確認することができる。 調査の状況 昨年の調査では、飯能市と上尾市の 2 地点のみの報告であったが、今年はそれ以外に志 木市、さいたま市、本庄市の3 市から報告があり、計 5 市 5 地点から 14 件の確認情報(昨年の倍) が得られた。すべて巣の確認である。増減については、志木市では「今年初めて記録した」、飯能市、 上尾市及び本庄市では「昨年と変わらない」、さいたま市では「昨年より多くなった」であった。 分布の状況 丘陵・台地帯は飯能市の 1 地点で他は低地帯である。飯能市では 2010 年度から継続し て観察されている。 月変化 繁殖時期は、春(6~7 月)と秋(10~12 月)と言われている。今回の調査では 6 月から 1 月まで毎月確認情報があった。巣の発見時期は、8 月、10 月、12 月にそれぞれ 3 巣、他の月はいず れも1 巣であった。 他文献からの情報 「埼玉県レッドデータブック」(2008)によると、県内では、局所的ではあるが 低地帯から低山帯にかけて分布するとしている。また、「狭山丘陵の哺乳類」(2011)によると、狭 山丘陵では点在する谷戸間の個体群の交流が難しくなっていることから、個々の谷戸内の湿性草地の 保全が本種の存続に大きくかかわっていることが指摘されている。このことは本県の丘陵部全般につ いても同様であると思われる。 その他の所見 2010 年度は 4 市町 5 地点で 8 件、2012 年度は 2 市町 2 地点 3 件、2013 年度は 2 市 2 地点 7 件の確認情報があった。今年は確認情報が増えたが、カヤネズミの生息状況からみるとまだ まだ確認情報があってもおかしくないと思われる。生体の観察は難しいがヨシ原やススキ草地に分け 入って巣を調査すると、確認件数が増加すると思われる。ヨシ原や自然草地などの減少によって、大 きく影響を受ける種であり、河川敷を含め現況を幅広く調査することが望まれる。

(2)

動物 2

ホンドタヌキ(イヌ科)

Nyctereutes procyonoides viverrinus

この種の概要 いわゆる里山の環境に多く、キツネと共に昔から人々に親しまれてきた在来の哺乳類。 県内では、近年、都市部でも目撃されることが多いため増加しているように思われるが、ハクビシン やアライグマとの競合や疥癬の蔓延などによって、個体数が急減していると考えられる。埼玉県レッ ドデータブックでは「地帯別危惧」。 区別点 直接姿を観察する機会の多い哺乳類である。夏毛は短毛で、やせて見えるのでイヌに似て見 える点に注意を要する。直接観察以外では、「ためぐそ(ため糞)」の有無により、生息状況を確認 することができる。 調査の状況 今回の調査では、13 市町19 地点で 24 件の確認情報が 得られ、昨年(19 市町 46 地点で 80 件)に比べてかなり少なくなっ た。生体の観察は11 件(昨年 16 件)であまり昨年と変わらなかっ たが、死体の確認が6 件で昨年の 51 件(50 件がロードキル)に比べ ると大幅に減少した。生活痕(足 跡、ため糞)による確認は7 件(昨年は 13 件)であった。増減は「初めての記録」が 6 件、「昨年 と変わらず」が16 件、「昨年より少ない」が 1 件、「昨年より多い」が 1 件であった。 分布の状況 低山帯が秩父市の1 地点、丘陵・台地帯が横瀬町、寄居町、所沢市の 3 地点、低地帯が 15 地点であった。河川敷や緑地などを利用して、県南部の市街地近辺にも生息していることが推測で きる。 月変化 4 月を除いた 1~12 月の各月に確認情報があった。初夏の 6 月から 7 月にかけてと初冬の 11 月から12 月に確認情報が多かった。 他文献からの情報 「埼玉県レッドデータブック」(2008)によると、低地帯での安定的な生息地は 限られているとされるが、本調査では県南部の中川・加須低地からの確認情報が多いのが特筆される。

(3)

動物 3

ホンドキツネ(イヌ科)

Vulpes vulpes japonica

この種の概要 里山の環境を好み、昔から人々に親しまれてきた在来哺乳類。ただし、タヌキよりは 肉食性が強く、より自然度の高い環境が必要。県内では亜高山帯から低地帯まで分布しているが、現 在の分布の中心は亜高山帯から低山帯にかけてである。平野部でもまとまった雑木林のある地域には 生息し、荒川などの河川敷沿いでは市街地に近いところで目撃されることもある。埼玉県レッドデー タブックでは、「地帯別危惧」。 区別点 外部形態から他のイヌ科哺乳類と間違えることは少ないと思われる。とがった口先、三角形 でたった大きな耳、長くて太い尾が特徴である。 調査の状況 今回の調査では、2 市町 2 地点から 2 件の確認情報が得られた。所沢市と美里町の 2 件 で生体の確認であった。 分布の状況 所沢市の丘陵・台地帯が1 件で、低地帯の美里町が 1 件である。 月変化 美里町では8 月、所沢市では 9 月の観察であった。 他文献からの情報 「狭山丘陵の哺乳類」(2011)によると狭山丘陵では 1960 年代後半から 1970 年代前半にかけて絶滅したとされていたが、1980 年代から丘陵西北部を中心に目撃例が増え、現在で は少数個体が安定的に生息しているとされている。 その他の所見 「埼玉の鳥とけものたち」(1985)や「さいたまレッドデータブック」(1996)では、 北本市石戸宿周辺の生息情報が記載されている。2 年前には桶川市から、一昨年と作年は久喜市から 確認情報が寄せられている。今年は情報がなかったが、県中央部の荒川河川敷周辺では継続的に生息 していると考えられる。また、所沢市や入間市でも目撃情報が数件あり、低地、台地・丘陵帯での今 後の動向が注目される。埼玉県レッドデータブックの「地帯別危惧」の内訳は、台地・丘陵帯では「準 絶滅危惧」、低地帯の荒川以西で「絶滅危惧Ⅱ類」、大宮台地と中川・加須低地が「絶滅危惧ⅠB類」。

(4)

動物 4

ニホンイタチ(イタチ科)

Mustela itatsi itatsi

この種の概要 水辺を好む在来の小型肉食獣。田んぼや水路などがあれば、比較的市街地まで進出で きる。県内でも山地帯から低地帯まで、県南の都市部を除きほぼ全域に生息している。埼玉県レッド データブックでは「地帯別危惧」。 区別点 埼玉県内では、特に間違えやすい種類はない。ただし、メスはオスより著しく小型で、オス の半分くらいしかない。長胴で足が短い。毛色は、夏毛ではチョコレート色であるが、冬は明るい黄 かっ色になる。 調査の状況 今回の調査では、9 市町 12 地点で 13 件の確認情報が得られた。11 件が生体で 2 件が死 体の確認であった。増減は「初めての記録」が1 件、「昨年と変わらず」が 10 件、「昨年より少な くなった」が2 件であった。 分布の状況 低山帯は秩父市の1件、台地・丘陵帯は寄居町の1 件で、低地帯は 11 件から確認情報 が得られた。 月変化 4 月から1月まで 11 月をのぞいて毎月 1~3 件の生 体の確認情報があった。 他文献からの情報 「狭山丘陵 の哺乳類」(2011)によると谷 戸や小川などの湿地・水辺環境 の減少・消失が進んでいる丘陵 部では減少傾向にあるという。 その他の所見 今年度の調査では生体及び死体とも確認情報が少なかった。

(5)

動物 5 ハクビシン(ジャコウネコ科)

Paguma larvata

この種の概要 日本で唯一のジャコウネコ科の哺乳類。近年では外来種であるとの説が有力である。 県内では 1978 年に名栗村(現飯能市)で確認されている。近年、山地帯から低地帯にかけて広く目 撃例が増えており、農業被害や住宅被害を引き起こす有害種として増加が危惧されている。 区別点 額中央に白線が入る。胴長・短足で尾が長いのが特徴。電柱や木や塀に登ることが多く、「電 線の上を歩く」のはハクビシン。 調査の状況 今回の調査では、4 市 6 地点で 9 件の確認情報が得られた。8 件が生体で、生活痕によ る確認が1 件であった。生体の確認のうち 6 件は越谷市で駆除のため捕獲されたものである。増減は 「初めての記録」が越谷市、久喜市の7 件、「昨年と変わらず」が秩父市と所沢市の 2 件であった。 分布の状況 低山帯は秩父市の1 地点、丘陵・台地帯は所沢市の 1 地点、低地帯は越谷市、久喜市の 5 地点であった。 月変化 5 月 3 件、6、7、9 月 がそれぞれ1 件、12 月 3 件の確 認情報があった。今回の調査結 果から季節変化を考察すること は難しい。 他文献からの情報 「平成 24 年度アライグマ生息状況等調査 業務報告書」埼玉県環境部自然 環境課(2012)によるとアライ グマの捕獲時に錯誤捕獲されるハクビシンは春から初夏(4 月から 7 月)にかけて多いとされる。 その他の所見 農作物への防除対策が行われているが生態系への被害についてはあまり明らかにされ ていない。アライグマとともにタヌキやキツネなどの中型哺乳類との競合やその他の在来種への影響 が懸念される。また、今回の調査報告は、確認情報が少なくて生息状況を反映したものではない。

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動物 6 アライグマ(アライグマ科)

Procyon lotor

この種の概要 北米大陸原産のペット由来の外来種。外来生物法により特定外来生物に指定されてい る。日本では1962 年に愛知県犬山市の動物展示場から逃亡したのが最初で 2006 年には 47 都道府県 すべてで確認されている。県内では1982 年に初めて野生化した個体が発見され、2004年頃から急増 している。農業被害や住居被害が問題となっている。 区別点 尾のしま模様と目の周りの黒模様が両目でつながっているのが特徴である。自然の状態では 木のウロなどで繁殖するが、ハクビシン同様、家屋の屋根裏でも繁殖する。 調査の状況 今回の調査では、13 市町 19 地 点32 件の確認情報が寄せられ、昨年の 10 市 町9 地点で 13 件の情報から著しく増えた。 死体の確認が1 件、生体の確認が 17 件、足 跡や爪痕による生活痕の確認が 14 件であっ た。増減については「今年初めて記録された」 が越谷市、久喜市、飯能市、日高市、小鹿野 町、寄居町の7 件、「昨年より多くなった」 が上尾市、蓮田市と鳩山町の8 件、「昨年と 変わらず」がさいたま市、所沢市の17 件であった。 分布の状況 山地帯(1 件)から丘陵・台地帯(7 件)、低地帯(24 件)にかけて県内の広範囲の地 点から確認情報があった。特に低地帯からの情報が多かった。 月変化 2 月から 12 月まで、各月に 1~5 件の確認情報があった。今回の調査結果から季節変化を考 察することは難しい。 他文献からの情報 「平成 24 年度アライグマ生息状況等調査業務報告書」埼玉県環境部自然環境課 (2012)によると埼玉県のアライグマ捕獲数は 2006 年度に急増したのち、2009 年度は 2,388 頭と捕 獲を開始後最も多い捕獲頭数となり、その後も多少減少しているが、依然として 2,000 頭を越える多 数個体を捕獲しているという。 その他の所見 在来のタヌキやキツネ、イタチなどと競合し、また、カエルやトウキョウサンショウ ウオなどの両生類などにも影響を与えている可能性が高い。防除を進める上でも、生息状況等を全県 的に調査する必要性がある。

(7)

動物 7 オオタカ(タカ科)

Accipiter gentilis

この種の概要 平野部や丘陵部の森林で繁殖する猛禽類。近年、市街地に近い場所でも営巣場所があ れば繁殖する例が出てきている。埼玉県レッドデータブックでは「絶滅危惧Ⅱ類(繁殖鳥・越冬鳥)」。 区別点 ハイタカ、ツミと体の色や模様が似ているが、オオタカの方が大きく、カラスくらいの大き さ。ハイタカはハト程度の大きさで、ツミはさらに小さい。 調査の状況 今回の調査では、17 市町 29 地点で 65 件の確認情報があり、昨年より確認情報は倍増 した。53 件が生体の直接観察、9 件が鳴き声のみでの確認だった。「今年度初記録」が 1 件、「昨年 と変わらず」が57 件、「昨年より多い」が 7 件であった。 分布の状況 低山帯が 3 地点、台地・丘陵帯が 9 地点、低地帯が 17 地点であった。低地帯での確認 情報が増加している。川越市、蓮田市、鳩山町からは繁殖の情報もあった他、さいたま市、上尾市、 蓮田市から若鳥の情報があり低地帯での繁殖も定常化している。 月変化 調査期間中各月で観察さ れた。今年度は冬季の記録が多い 傾向がみられた。 他文献からの情報 「埼玉県オオ タカ等保護指針」(埼玉県.1999)に よると、1997 年には県内で 40 カ 所程度の営巣が確認され、低地帯、 台地・丘陵帯、山地帯それぞれで 20 ペア程度が繁殖していると推 定している。「埼玉の鳥とけものたち」(1985)によると、台地・丘陵帯では 7 カ所程度の営巣地が 発見されている、とされている。 その他の所見 「埼玉県オオタカ等保護指針」(1999)や「猛禽類保護の進め方」(環境省.1997)などに より、保護のための方策は示され、比較的生息状況のわかっている種である。

(8)

動物 8 ノスリ(タカ科)

Buteo buteo

この種の概要 低山から山地の森林で繁殖する猛禽類。冬期には平野部でも観察できる。埼玉県レッ ドデータブックでは「準絶滅危惧 (繁殖鳥・越冬鳥)」。 区別点 トビよりやや小さく、翼の後縁と尾が丸いのが特徴。飛翔時に翼下面の黒色班が目立つ。ケ アシノスリやオオノスリとは、翼や尾の模様で識別ができる。 調査の状況 今回の調査では、7 市町 13 地点で 26 件の確認情報があった。昨年より確認情報は半減 した。すべて生体の直接観察であった。「今年初めて」が5 件、「「昨年と変わらず」が 21 件であ った。 分布の状況 低山帯での確認が 1 地点、台地・丘陵帯で 3 地点、 低地帯で9 地点であった。 月変化 繁殖期にあたる 5 月の 確認は鳩山町の1 件で、残りは 冬期もしくは渡りの時期の記録 であった。特に冬季の 11、12 月の記録が多かった。 他文献からの情報 県内では、 山地帯から低山帯で繁殖する が、「埼玉県レッドデータブック」によると、近年、台地・丘陵帯での繁殖が確認されている。 その他の所見 低地帯においては、ノスリが越冬する場所は自然度の高い場所である。さいたま市と 蓮田市で昨年と1 昨年に引き続いて冬期の情報が得られた。安定した越冬地と思われる。

(9)

動物 9 チョウゲンボウ(ハヤブサ科)

Falco tinnunculus

この種の概要 山地の崖地で繁殖するハヤブサ科の猛禽類。近年は、低地帯の人工建造物でも営巣し ている。埼玉県レッドデータブックでは「(繁殖鳥)準絶滅危惧」。 区別点 ハト大の小形のタカ。背や雨 覆の赤褐色が目立ち、翼の先が開かな いハヤブサ科の中では、長い尾を開き ながらホバリングする姿がよく見られ ることより、比較的識別が容易。 調査の状況 今回の調査では、11 市町 19 地点で 35 件の確認情報があった。 29 件が生体の直接観察、6 件が鳴き声 による確認だった。増減は「昨年と変 わらず」が 32 件、「昨年より多い」 が3 件であった。 分布の状況 台地・丘陵帯での観察が東松山市の 1 件で、あとは低地帯での観察だった。蓮田市黒浜 では10 年来繁殖しているとの報告があった。 月変化 今年度は 1 月~12 月に毎月観察されている。繁殖期の 5,6 月と 12 月の冬季の記録、及び 9 月の記録が多かった。 他文献からの情報 「埼玉県レッドデータブック」によると、本来の営巣場所である絶壁のくぼみで の繁殖は、秩父山地でのごく少数の確認しかないが、1980 年頃から低地帯の高架橋などの人工建造物 でも営巣例が報告されるようになった。「埼玉県動物誌」(1978)には、繁殖確認の記載はない。 その他の所見 市街地のビルでも営巣が確認されていて、県南部でもよく観察されるようになってき たが、今回の調査では、市街地内にサイトが設定されていないこともあって、市街地の中での観察例 は少なかった。

(10)

動物 10 シラコバト(ハト科)

Streptopelia decaocto

この種の概要 江戸時代中期に移入されたといわれている。県東部を中心に畜舎周辺の農耕地や工業 団地、倉庫近辺などに生息している。埼玉県レッドデータブックでは「(繁殖鳥)(越冬鳥)絶滅危 惧Ⅱ類」。2012 年環境省レッドリストでは絶滅危惧ⅠB類(EN)にランクアップされた。 区別点 首の後の黒い模様により、容易に 他のハトと区別ができる。ただし、飼い鳥 であるジュズカケバトとはきわめてよく 似ている。ジュズカケバトは本種より少し 小さく色も白味が強い。 調査の状況 9 市町から 24 件の報告が寄 せられた。行田市の営巣場所では6 回繁殖 している。 分布の状況 以前生息していた越谷から の報告は少なく、県東部から北東部にかけ ての報告が多かった。三郷市、越谷市、春日部市、さいたま市岩槻区、久喜市、鴻巣市、加須市、行 田市、川島町からの報告があった。県内で局所的に生息しているようだ。また冬季では畜舎への依存 傾向が強まるようで、畜舎付近で多数の個体が確認されている。 月変化 報告が少数であり個人データが多いため季節による変動を分析することは難しい。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」(1978)によると、1948 年頃には、越谷市に 30 羽程度生息 するだけであったが、その後増加して「天然記念物緊急調査報告・越谷のシラコバト」(1982)や「埼 玉の鳥とけものたち」(1985)の 1980 年代初期の分布図によると、低地帯のほぼ全域で生息が確認 されていた。1982 年の県教育委員会の調査結果では推定生息数 1 万羽とされた。しかし、その後再 び減少に転じ、「鳩ヶ谷の生物6・県の鳥シラコバトに明日はあるか」(2008)によると、確実に姿 を見ることができる地域は岩槻区以北の東・西縁見沼代用水沿いの市町村に限られている。また、埼 玉県レッドデータブック2008 でも現在は再び数が減少しているとされている。 その他の所見 「越ヶ谷のシラコバト」として国指定天然記念物に指定され、1965 年には県民の鳥に 指定されている。2013 年度の調査では県外の茨城県境町での生息も確認されている。

(11)

動物 11 カッコウ(カッコウ科)

Cuculus canorus

この種の概要 夏鳥として渡来し、山地から平地で繁殖をする。ヨシ原、木のまばらにある草原、農 耕地、明るい林など開けた環境に生息する。オオヨシキリ、モズ類、ホオジロなどに託卵するが、こ れらの仮親たちの減少でカッコウも減少傾向にある。 区別点 ツツドリ、ホトトギスと外部形態は非常に似ているが、鳴き声が違うため、識別は容易。ま た、ツツドリ、ホトトギスの方がより山地に生息する。ただし、秋の渡りの時期には3 種とも平地で 観察できるが、その時期に は鳴かないので識別は難し い。 調査の状況 今回の調査で は、14 市町 26 地点で 35 件の確認情報があった。7 件が生体の直接観察、27 件 が鳴き声のみでの確認だっ た。増減に関しては「初め ての記録」が9 件、「昨年 と変わらず」が18 件、「昨 年より少なくなった」が6 件、「非常に少ない」が 1 件、「非常に多い」が 1 件であった。 分布の状況 低山帯からの情報はなく、台地・丘陵帯と低地帯で確認された。台地・丘陵帯 8 地点、 及び低地帯 18 地点で、低地帯の記録が多かった。 月変化 5 月上旬から 8 月上旬までの記録であった。最も早い記録は越谷市での 5 月 4 日で、最も遅 い記録は加須市で8 月 4 日であった。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」(1978)では、秩父盆地から低地までの観察例が紹介されてい る。「埼玉の鳥とけものたち」(1985)でも、低山帯から低地帯の分布としている。 その他の所見 河川敷の開発が進みヨシ原の減少によってオオヨシキリが減少したこと、茶畑や農耕 地などの減少によってホオジロやモズ類が減少したことが本種に影響を与えていると思われる。一時 オナガに托卵する例が増えていたが、最近ではオナガの減少もあって本種が増加する可能性は少ない と思われる。

(12)

動物 12 アオバズク(フクロウ科)

Ninox scuulata

この種の概要 青葉の季節に渡ってくるフクロウ。平地から山地に生息するが、多くは大木のある社 寺林や屋敷林などで繁殖している。近年、市街地では少なくなった。埼玉県レッドデータブックでは 「地帯別危惧」。 区別点 フクロウ類では最も黒く見え、尾が長い。フクロウ類では混同する種はいないが、林の中で 飛ぶのを見て、タカ類やヨタカと間違えることがある。 調査の状況 今回の調査では、昨年とほぼ同様な6 市町 8 地点で 19 件の確認情報があった。5 件が 生体の直接観察による確認で、14 件が鳴き声による確認だった。増減は「今年初めての記録」が 1 件、「昨年と変わらず」が17 件、「昨年より多くなった」が 1 件だった。 分布の状況 低山帯での観察が秩父市の 3 地点、台地・ 丘陵帯の観察が飯能市、狭山市、所沢市の 7 地点、低地 帯の観察が川越市、蓮田市の 2 地点だった。 月変化 4 月から 8 月の夏季に観察された。初認が飯能 市の 4 月 26 日で、終認が秩父市の 8 月 23 日であった。 他文献からの情報 「埼玉県レッドデータブック」によ ると、低地帯における繁殖地では、神社の大木に営巣す る例が多かったが、大木及び餌となる昆虫類が少なくな ったことにより繁殖地の減少が顕著になっている。神奈川県(2006)と東京都(2010)のレッドリス トではともに絶滅危惧Ⅱ類。 その他の所見 最も身近なフクロウ類であるが、行動域や縄張り分散など詳細な生態はあまり知られていない。市街 地も含めて全県的な情報収集が求められる。

(13)

動物 13 ヒバリ(ヒバリ科)

Alauda arvensis

この種の概要 河原や畑、草地などの地上で繁殖する。麦畑など耕作地で営巣し、空高く舞い上がり、 長く複雑なさえずりをするため、昔から親しまれてきた。 区別点 特徴的なさえずりと興奮した時によく立てる冠羽のため、識別は容易。 調査の状況 今回の調査では、17 市町 35 地点で 78 件の確認情報があった。59 件が生体の直接観察、 15 件が鳴き声のみでの確認だった。増減に関しては「初めての記録」が 7 件、「昨年と変わらず」が 68 件、「昨年より多くなった」が 2 件であった。 分布の状況 低山帯が 2 地点、台地・ 丘陵帯が4 地点、あとは低地帯での記 録だった。 月変化 繁殖期の 5~7 月を中心とす るピークと 10、11 月をピークとする 二山の確認情報があった。1~4 月と 8 月の記録が少ないが、留鳥の特徴が良 く出た結果である。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」 (1978)では、秩父盆地とその周辺の 低い山地の山麓部から低地まで平地全域に分布とされている。「埼玉の鳥とけものたち」(1985)で も、山地帯から低地帯の分布としている。「東京都レッドリスト」(2010)では、新たにレッドリス トに掲載された。

その他の所見 東京都の調査(Bird Research vol.1 2005)では 1970 年代から 1990 年代にかけてヒ バリの生息地が急激に消失したことが明らかになっている。減少地域では畑の面積が急激に減少して おり、畑地の減少がヒバリの減少に大きく関係していると考えられている。県内でもヒバリが少なく なったという声が聞かれており、畑の減少との関連が予想される。

(14)

動物 14 モズ(モズ科)

Lanius bucephalus

この種の概要 平地から低山帯にかけて広く分布する。人里の林縁、潅木林、屋敷林などで繁殖する。 秋には農耕地を中心に冬のなわばりを主張するモズの「高鳴き」を聞くことができる。 区別点 頭が大きく体も太め、かぎ型のくちばしと長い尾を持つ。その尾を廻したり、上下によく振 る。体は褐色で、雄は背に灰色味があり、翼に白斑がある。また目を通る黒い帯が目立つ。 調査の状況 今回の調査では、23 市町 41 地点で 115 件の確認情報があった。 102 件が生体の直接観察、13 件が鳴き声 による確認だった。増減は「今年初めて」 が3 件、「昨年と変わらず」が 107 件、 「昨年より多い」が3 件、「昨年より少 ない」が2 件だった。 分布の状況 低山帯が1 地点、丘陵・台 地帯が9 地点、低地帯が 31 地点で、昨 年と同様に広範囲で観察された。 また、鳥類では昨年に引き続き最も確認情報が多かった。 月変化 確認情報と個体数とも秋から冬にかけて(9 月から 12 月)が多かった。 他文献からの情報 東京都(2010)のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類、神奈川県(2006)では減少種 に指定されている。 その他の所見 モズは近年、保全が求められている里山を代表する鳥類である。林、草地、農耕地な どで小動物を餌として生活しているモズが、今後も安定して存続できるかどうか、注目していく必要 がある。

(15)

動物 15 オオヨシキリ(ウグイス科)

Acrocephalus arundinaceus

この種の概要 夏鳥として湿地のヨシ原で繁殖する。オスはメスよりも少し早く渡来して、縄張りを 持つ。一夫多妻の鳥で、縄張り内には複数の巣と雌が共存することが多い。 区別点 オスは縄張り宣言をするため、ヨシ原で「ギョギョシ ギョギョシ」と大きな声でさえずり、 識別は容易。コヨシキリは似ているが、ずっと小さく、さえずりの識別も容易である。 調査の状況 今回の調査では、13 市町 26 地点で 72 件の確認情報があった。41 件が生体の直接観察、 26 件が鳴き声のみでの確認だった。増減は増減に関しては「初めての記録」が 2 件、「昨年と変わら ず」が59 件、「昨年より多くなった」が 3 件、「昨年より少なくなった」が 6 件、「非常に多い」 が2 件であった。 分布の状況 低山帯が秩父市の1地点、 台地・丘陵帯が東松山市の1地点だけで、 あとはすべて低地帯(24 地点)での記録 だった。 月変化 縄張りで囀る姿がよく見られる 5 月から7月の記録が多かった。いちば ん早い記録は、伊奈町の5 月 1 日だった。 遅い記録はさいたま市の10 月 7 日だっ た。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」(1978)では、低地から秩父盆地内のヨシ原でよく見られると されている。 その他の所見 10個体以上の個体が観察された地点が、上尾市、さいたま市、蓮田市の 3 地点のみ であった。河川敷、休耕田などのヨシ原の増減によって生息数が大きく影響を受けると思われる。現 況を幅広く調査することが望まれる。

(16)

動物 16 セッカ(ウグイス科)

Cisticola juncidis

この種の概要 チガヤ、ススキ草原、河川敷や埋立地の草地、水田などで繁殖する。オスは繁殖期間 中に次々と巣をつくり、一つの巣ごとにメスを誘っては交尾し、卵やヒナの世話をメスにまかせる連 続的一夫多妻である。 区別点 オスは「ヒッ ヒッ ヒッ」と鳴きながら上昇し、「チャチャ チャチャ」と鳴きながら下 降を繰り返して縄張り宣言をする。このような特徴的な「さえずり飛行」をするので、識別は容易。 より大型のオオセッカが似たようなさえずり飛行をするが、県内では、わずかに越冬するだけで繁殖 はしていない。 調査の状況 今回の調査では、9 市町 18 地点で 40 件の確認情報があった。24 件が生体の直接観察、 11 件が鳴き声のみでの確認だった。増減に関しては「初めての記録」が 1 件、「昨年と変わらず」が 33 件、「昨年より多くなった」が 1 件、「昨年より少なくなった」が 5 件であった。 分布の状況 低山帯や丘陵・大地帯での 確認はなく、すべて低地帯の記録であっ た。 月変化 繁殖期の 5 月から 9 月の記録が 多かった。冬季の 11~12 月の記録はさ いたま市、富士見市、蓮田市のもの。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」 (1978)では、県内平野部の湿地等で普 通に見かけるとしている。「埼玉の鳥と けものたち」(1985)では、台地・丘陵帯から低地帯に分布とされ、「種の多様性調査」でも、いち ばん標高の高い記録は皆野町蓑山である。 その他の所見 草原の鳥であるが、河川の氾濫原や埋め立て地の草原など、恒常的に存在する環境で はなく、突発的に出現するような環境を好んで生息するという(「上田恵介」2006)。植物で言うな らパイオニア植物と言ってよい。

(17)

動物 17 ガビチョウ(チメドリ科)

Garrulax conorus

この種の概要 東南アジア原産のペット由来の外来種。外来生物法による特定外来生物に指定されて いる。1980 年代から関東でも繁殖が確認されている。県内では、10 年ほど前から急激に目撃情報が 増えている。下層植生の発達した林に生息する。 区別点 体色は茶褐色で、目から後ろにかけて白い眉斑が伸びるのが特徴で多種との混同はない。ク ロツグミ、キビタキ、オオルリ、サンコウチョウなどの囀りをまねることが多いので、夏季は注意を 要する。 調査の状況 今回の調査では、 確認件数は昨年とほぼ同様で 13 市町 22 地点で 86 件の確認 情報があった。35 件が生体の直 接観察、51 件が鳴き声による確 認だった。増減は「今年初めて の記録」が1 件、「昨年と変わ らず」が 66 件、「昨年より多 い」が 11 件、「昨年より少な い」が8 件だった。 分布の状況 低山帯は昨年7 地 点あったが、今年は情報がなく なった。丘陵・台地帯が12 地点、低地帯が 10 地点で、低地帯での情報がやや増加した。 月変化 1 月から 12 月まで毎月観察されている。5 月から 6 月の繁殖期の記録が多かった。 他文献からの情報 「外来種ハンドブック」(日本生態学会.2002)によると、里山の放置によるヤ ブの増加がガビチョウの好適な生息場所を増加させていると推測している。日本での在来種への影響 についての詳細な報告はないが、本種が定着しているハワイでは在来種の個体群密度に影響を与えて いるとの報告がある。なお、「埼玉県動物誌」(1978)の「帰化動物と埼玉における現状」には、本 種は記載されていない。 その他の所見 ウグイスやシロハラ、アカハラなど、発達した下層植生の中や林内の地上部で活動す る在来の鳥類と競合する可能性がある。

(18)

動物 18 ニホンヤモリ(ヤモリ科)

Gekko japonicus

この種の概要 日本に定着した時期は不明だが、大陸からの外来種と考えられている。民家などの建 物とその周辺を利用し、野外で見かけることは少ない。県内でも、古い市街地などで見られることが 多いが局地的。夜行性で灯火の周りに集まる昆虫を捕食して生活するので、門灯や軒下で見ることが 多い。埼玉県レッドデータブックでは「準絶滅危惧」。 区別点 県内には、他に間違える種類はいない。 調査の状況 今回の調査では、10 市町 13 地点 27 件で、昨年(8 市 12 地点で 30 件)並みの確認情 報が得られた。すべて生体の確認であったが、鳴き声の記録が2 件あった。増減に関しては「初めて の記録」が 1 件、「昨年と変わらず」が 24 件、「昨年より少なくなった」が1 件、「昨 年より多くなった」が1 件であった。 分布の状況 台地・丘陵帯は所沢市と寄居町 の2 件で、他はすべて低地帯での確認だった。 月変化 生体の確認は4 月から 12 月であっ た。昨年(5~11 月)より確認期間が増えた。 確認件数と個体数とも 8 月にピークがあっ た。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」(1978)では、1945 年以後ほとんど姿が見られなくなり、1970 年頃から再び姿を現しはじめた、と記述している。 その他の所見 分布は局地的とされているが、具体的にどの程度県内に生息しているのか、はっきり していない。全県的なデータの収集が望まれる。

(19)

動物 19 ニホントカゲ(トカゲ科)

Plestiodon japonicus

この種の概要 ニホンカナヘビとともに、県内では身近なは虫類。平地から低山の草地や石垣、庭先 などに生息する。埼玉県レッドデータブックでは、「地帯別危惧」。 区別点 全体に光沢があり、幼体 は尾がコバルトブルーなのが特 徴。ニホンカナヘビよりも乾燥し た場所を好むため、日当たりがよ く、石ころが多いような所に多い。 調査の状況 今回の調査では、16 市町21 地点で 52 件の確認情報が 得られた。すべて生体の確認であ った。昨年(14 市 19 地点で 52 件)に比べて確認件数は同じであ ったが、新たに寄居町と鳩山町か らの報告があった。増減に関しては「初めての記録」が2 件、「昨年と変わらず」が 41 件、「昨年 より少なくなった」が6 件、「昨年より多くなった」が 3 件であった。 分布の状況 低山帯が秩父市の 2 地点、台地・丘陵帯が 8 地点、低地帯が 11 地点であった。 月変化 5 月から 10 月まで確認されている。確認件数は 8 月、個体数は 7 月にピークがあった。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」(1978)によると、県内では標高 500m 以上の山地では発見は きわめて少なく、標高850m 地点が最高。 その他の所見 埼玉県レッドデータブックによる「地帯別危惧」の内訳は、低山帯と低地帯の荒川以 西と大宮台地が「準絶滅危惧」、低地帯の中川・加須低地が「絶滅危惧Ⅱ類」、山地帯が「情報不足」。

(20)

動物 20 ニホンカナヘビ(カナヘビ科)

Takydromus tachydromoides

この種の概要 県内ではいちばん身近なは虫類。平地から低山の草地や藪、庭先などに生息する。ヘ ビのように細長いが、可愛いので愛(かな)蛇というのが名前の由来。 区別点 ニホントカゲと混同されやすいが、ニホンカナヘビは光沢がなく、相対的に尾が長いことで 区別できる。また、ニホントカゲの幼体の尾は青い。 調査の状況 今回の調査では、20 市町 34 地点で 98 件の確認情報が得られた。すべて生体の確認で あった。増減に関しては「初めての記録」が2 件、「昨年と変わらず」が 81 件、「昨年より多くな った」が8 件、「昨年より少なくなった」が 7 件であった。 分布の状況 低山帯が秩父市の 1 地点、台地・丘陵帯が寄居町、飯能市、東松山市、所沢市の 6 地点、 あとの27 地点は低地帯であった。 月変化4 月から 11 月まで確認されてい る。確認件数は6 月、個体数は 10 月が 多かったが、10 月の記録は子供たちが 観察会で多数捕まえてきたためである。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」 (1978)によると、県内では、標高 500m 以上の山地まで一様に分布し、1000m 以 上の高山でも姿を見ることがあるとい う。 その他の所見 同様に人家近くにいるニホントカゲやニホンヤモリと比べて圧倒的に多く情報が集ま った。

(21)

動物 21 クサガメ(イシガメ科)

Chinemys reevesii

この種の概要 平地の河川や池沼、それに繋がった水路や水田などに生息する。県内でも低地帯に広 く分布するが、人為的に放されることもあり、どこまでが自然分布なのかを区別するのは難しい。外 来種のアカミミガメとの競合が懸念されている。埼玉県レッドデータブックでは、「準絶滅危惧」。 区別点 甲羅の背に3本の隆起があることと、後縁部がギザギザしていないことでイシガメと区別で きる。 調査の状況 今回の調査では、7 市町 9 地点で 14 件の確認情報が得られた。13 件が生体の確認で、 鳴き声による確認が1 件あった。増減に関しては「今年初めて」が 2 件、「昨年と変わらず」が 10 件、「昨年より少なくなった」が2 件であった。 分布の状況 台地・丘陵帯が東松山市の1地点、他の8 地点は低地帯(さいたま市、志木市、本庄市、 熊谷市、蓮田市、美里町)であった。 月変化 1月と4月から8月にかけ てと10 月に観察されている。5 と6 月に確認件数が多くなった。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」 (1978)では、県内ではイシガメよ りも数が少ないとされている。 その他の所見 アカミミガメと似た ような環境に生息するが、今回の調 査ではアカミミガメが22 地点 64 件確認されたのに比べて、クサガメは 9 地点 14 件と大幅に少なか った。この傾向は昨年、一昨年と変わらなかった。

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動物 22 アカミミガメ(ヌマガメ科)

Trachemys scripta

この種の概要 アメリカ大陸原産の外来種。幼体がミドリガメという名称でペットとして大量に販売 されてきた。全国の河川や池沼で見られ、在来の淡水ガメとの競合や餌となる生物への影響が懸念さ れている。県内でも、広く分布している。外来生物法による特定外来生物に指定されている。 区別点 目の後方に鮮やかな赤い線が入ることで、容易に見分けられる。 調査の状況 今回の調査では、11 市町 22 地点で 64 件の確認情報が得られた。すべて生体の確認で あった。増減に関しては「初めての記録」が3 件、「昨年と変わらず」が 46 件、「昨年より多くな った」が10 件、「非常に多い」が 4 件、「新規のため不明」が1 件であ った。 分布の状況 東松山市町の1 地点が 台地・丘陵帯、その他はすべて低地 帯で、さいたま市の確認情報が多か った。 月変化 4 月から 12 月にかけて確 認された。5 及び 6 月の確認件数と 個体数が多かった。さいたま市見沼 区では5 月に 60 個体、大宮区氷川神社では 6 月に 51 個体が確認されている。 他文献からの情報 「外来種ハンドブック」(日本生態学会.2002)によると、1950 年代後半から幼 体が輸入され、60 年代後半から野外で野生化した個体が見つかるようになった。なお、「埼玉県動物 誌」(1978)の「帰化動物と埼玉における現状」には、本種は記載されていない。 その他の所見 今回の調査で、県内の広い地域で生息していることが推察できた。在来種への影響を 考える上でも継続的な調査が望まれる。なお、日本に輸入されたのは亜種ミシシッピーアカミミガメ が多いが、別亜種やアカミミガメ属の別種も含まれていたようである。この調査では、特に区別はせ ずにアカミミガメとして集計した。

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動物 23 アズマヒキガエル(ヒキガエル科)

Bufo japonicus

この種の概要 海岸付近から高山まで、幅広い環境に生息する大型のカエル。埼玉を含む東日本の亜 種をアズマヒキガエルと呼ぶ。県内でも山地帯から低地帯まで広い地域に生息する。水辺から遠く離 れた市街地の庭にいることもあり、ガマガエルと呼ばれ親しまれてきた。 区別点 皮膚にたくさんの隆起があり、県内には似た種類はいない。 調査の状況 今回の調査では、7 市町 10 地点で 18 件の確認情報が得られた。すべ て生体の確認であった。 増減に関しては「初めての記録」が1 件、 「昨年と変わらず」が 16 件、「少なくな った」が1 件であった。 分布の状況 低山帯は、昨年記録があった 秩父市からの報告がなくなり、台地・丘陵 帯は飯能市と寄居町の2 地点、低地帯は、さいたま市と川口市、久喜市、志木市、北本市の 8 地点で あった。 月変化 冬眠明けの 3 月から 9 月までと冬眠中の 12 月に確認されている。12 月は作業中に発見され たものである。幼生は4 月に、個体数は 5、6 月に多かった。 他文献からの情報 「種の多様性調査」には、県内での亜高山帯の記録もある。山地産の小型のもの を、ヤマヒキガエルとして別亜種としたこともあったようだが、現在は一般的ではない。 その他の所見 産卵期を除き、水辺からは離れたところで生活をする。近年、局地的に減少している 可能性を指摘する声があるが、詳細はわかっていない。親しまれているカエルにしては情報が少ない が、市街地内の調査サイトが少ないことが原因なのかもしれない。

(24)

動物 24 ニホンアマガエル(アマガエル科)

Hyla japonica

この種の概要 海岸付近から高山まで、幅広い環境で生息している。県内でもほぼ全域に分布してい る。雨が降りそうになると繁殖期以外でも鳴く。主な生息場所は水田やその周囲の樹林地で、繁殖期 以外はヨシなど水辺の植物や木の上などで見られる。日本固有種であり、最も小型のカエル。 区別点 吸盤が発達している。シュレーゲルアオガエルやモリアオガエルの若い個体に似るが、鼓膜 の後に黒い線が入ることで区別できる。幼体は全身が褐色で、うすいまだら模様があるので、全身が 黒いヒキガエル類などと区別できる。 調査の状況 今回の調査では、16 市 25 地点 で 57 件の確認情報が得られた。そのうち鳴 き声だけでの確認は 16 件であった。増減に 関しては「今年初めて」が3 件、「昨年と変 わらず」が49 件、「非常に少ない」が 1 件、 「新規のため不明」が1 件であった。 分布の状況 今年度は、低山帯の秩父市から の報告がなく、台地・丘陵帯が所沢市と寄居 町の2 地点、その他 23 地点が低地帯だった。 月変化 3 月から 11 月にかけて観察されている。5 月 6 月に幼体の記録が多かった。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」(1978)では、数はそれほど多くない、とされている。 その他の所見 今回の調査では、外来種のウシガエルを除いて他の両生類よりも確認情報の件数が多 かった。ある程度の乾燥にも耐えることができ、吸盤を使って垂直な面の移動も可能なことから、多 種の両生類に比べて圃場や水路の整備にも適応力があるとされるが、都市化に伴い湖沼や水田の消失 が進む中で今後の減少が危惧される。

(25)

動物 25

トウキョウダルマガエル(アカガエル科)

Rana porosa porosa

この種の概要 関東平野から仙台平野にかけて分布するダルマガエルの亜種。県内では水田地帯を 中心に、低山帯から低地帯にかけて生息している。埼玉県レッドデータブックでは「準絶滅危惧」。 区別点 小型のウシガエルに似るが、ウシガエルは背中線や背側線がない。県内にはトノサマガエル は生息しないが、トウキョウダルマガエルが「トノサマガエル」と呼ばれていたため、聞き取り調査 等では注意を要する。 調査の状況 今回の調査では、9 市町 14 地点で 19 件の確認情報が得られ た。そのうち鳴き声だけでの確認は 2 件で、6 月と 9 月にそれぞれ1件の情 報があった。増減については、所沢市 とさいたま市の「今年初めて」が3 件、 「昨年と変わらず」が 12 件、「多く なった」が3 件、「少なくなった」が 1件であった。 分布の状況 所沢市山口の1 地点が台地・丘陵帯で、あとは低地帯での観察だった。 月変化 4 月から 10 月にかけて観察されている。個体数は幼体が見られる 6 月が最も多かった。 他文献からの情報 県内では「トノサマガエル」と呼ばれていたため、トノサマガエルとの混乱が生 じていた。「埼玉県動物誌」(1978)では、疑問を呈しながらも、トノサマガエルとトウキョウダル マガエルの両種の記載がある。半水棲で、水辺から離れることはまれである。環境の乾燥化に弱いた め埼玉県レッドデータブックによると、生存が今後最も危惧される種となっている。 その他の所見 ため池や水田の減少と共に数が少なくなっている。水田地帯での調査を含め、県内全 域での調査が望まれる。

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動物 26 ウシガエル(アカガエル科) Rana catesbeniana この種の概要 北アメリカ原産の外来種。食用を目的とした養殖のため導入されたが、放逐され、全 国の多くの地域で繁殖している。県内でも広い地域に生息している。外来生物法による特定外来生物。 区別点 県内では最大のカエルであり、成体であれば他のカエルと間違えることはない。鳴き声が特 徴的なので、それだけでも調査が可能である。ほとんどのオタマジャクシが越冬してから成体になる。 調査の状況 今回の調査では、19 市 町30 地点で 79 件の確認情報が得ら れた。35 件が生体の確認、1 件が死 体及び 43 件が鳴き声での確認だっ た。増減に関しては「昨年と変わら ず」が 61 件、「去年より多くなっ た」が10 件、「初めての記録」が 8 件であった。「初めての記録」が昨 年の1 件に比べて増加した。 分布の状況 昨年記録があった低山 帯での確認はなかった。台地・丘陵帯での確認は寄居町、所沢市、鳩山町と東松山市の4 地点、残り の26 地点は低地帯での確認であった。 月変化 4 月から 12 月まで観察された。昨年より観察期間が 2 ケ月増えた。幼体については、6 月か ら8 月にかけてと、11 月から 12 月にかけて報告があった。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」(1978)によると、埼玉県に入ってきたのは 1936 年頃で、川 口市や浦和市が最初の生息地のようである。また、「1965 年頃までは、東部、南部の平坦地の水域に かなり多く生息していたが、最近の数年間で著しく減少した」と記述されている。 その他の所見 「外来種ハンドブック」(日本生態学会.2002)によると、日本への導入は 1918 年が 最初であり、その後半世紀にわたって、原産地からの輸入などが繰り返されてきた。

(27)

動物 27

ミナミメダカ(メダカ科)

Oryzias latipes

と カダヤシ(カダヤシ科)

Gambusia affinis

この種の概要 メダカは北海道を除く全国に分布し池沼や小川、水田の水路などに生息する。県内で は、台地・丘陵帯から低地帯にかけて生息するが、護岸やほ場整備のため生息地は局地的になってい る。 埼玉県レッドデータブックでは「絶滅危惧Ⅱ類」となっている。環境省第4 次レッドリスト(2013) でも同様に「絶滅危惧Ⅱ類」とされている。 日本産魚類検索:全種の同定、第三版(2013 年 2 月 26 日)において、従来のメダカ(南日本集団)は ミナミメダカとされることになった。ミナミメダカとキタメダカの区別点として、ミナミメダカの雄の背 びれの切れ込みが深いこと、キタメダカでは、雌雄ともに体の後半部分に濃い網目模様があること、があ げられている。 観賞用に販売されているヒメダカと区別するために、野生のミナミメダカをクロメダカと呼ぶこと もある。

(28)

動物 28 ミナミメダカは卵生で雌が水草などに卵を産み付け、そこに雄が精子をかけて受精させる。 カダヤシは観賞魚のグッピーと同様に卵胎生で、体内で卵を受精させて孵化した仔魚を出産する。 また雄(約3cm)に比べて雌(約 5cm)の方が体長が大きい。 カダヤシは北米原産の外来種である。和名「蚊絶やし」が示すように、ボウフラ駆除を目的に世界 各地に移入され、日本にも1916 年に最初に持ち込まれ、1970 年以降各地に放流され広がった。ミナ ミメダカの稚魚の補食など在来の小型水生生物への影響が指摘されている。 外来生物法による特定外来生物。 区別点 ミナミメダカの尾びれの後端は真っ直ぐで、カダヤシでは尾びれの後端が団扇のように 丸くなっている。白矢印 ミナミメダカはカダヤシに比べて尻ビレが大きい。黄色矢印 カダヤシの雄のしりびれは細長くなり、交尾器に変化している。黄色点線矢印 ミナミメダカの雌雄の違い ミナミメダカの雄は背びれの後部に切れ込みがある。赤矢印。 ミナミメダカの尻びれは雄の方が大きい。黄色矢印 ミナミメダカの胸びれは雌の方が大きい。水色矢印、 調査の状況 14 団体、1個人から報告が寄せられた。ミナミメダカとカダヤシの比較調査について7 団体から報告があがった。川越市鯨井・郭町二丁目・小堤、寄居町、蓮田市黒浜沼、深谷市、所沢市 菩提樹地区、東松山市高坂からはミナミメダカだけが、鶴ヶ島市藤金の大谷川中流域、志木市柳瀬川、 本庄市からはカダヤシだけが報告された。川越市鯨井の81 匹、所沢市山口菩提樹池からの 33 匹の報 告はミナミメダカが生育できる健全な環境状態であることが推察される。 報告地点が少ないもののミナミメダカのみの報告が多かったのは喜ばしいことである。捕獲データ 数が少ないため、両者の種間関係まで言及することはできないが、都市近郊で水質のあまり良くない 河川、用水路では、ミナミメダカと思っていたものがすべてカダヤシだったこともあり、今後の動向 について注意深く観察を続ける必要があると思われる。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」(1978)によると、カダヤシは 1970 年頃から県南東部の汚れ た水域で大繁殖をし、東部低地の吉川・三郷付近では本種が多く、ミナミメダカは少ない、との記述 がある。 「さいたまレッドデータブック」(2008)によると、ミナミメダカは近年、加須低地一帯などに多 産地をわずかに残しているものの、ほぼ全県的に産地が激減しているという。 その他の所見 ミナミメダカを他県から安易に導入することは、地域個体群への遺伝子汚染を引き起こす可能性が あるため、注意しなければいけない。今後各地で適切に保護していくことが望まれる。

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動物 29 クマゼミ(セミ科) この種の概要 国内の分布は本州(関東地方以西)、 四国、九州、対馬、沖縄。西日本に多い南方系のセミ。近年、関東地方で増加しており、緑化木の移 植と共に幼虫が移入されたためではないかと考えられている。県内でも県南部を中心に観察例が増え ている。 区別点 大型であること、鳴き声がシャアシャアに 近い声で容易に区別できる。 調査の状況 今回の調査では、10市町 (さいたま市、川越市、所沢市、東松山市、越谷市、入間 市、志木市、和光市、蓮田市、川島町)の16地点から2 0件の確認情報が寄せられた。 分布の状況 確認情報が寄せられた16地点のうち低地帯14地点、台地・丘陵帯2地点であった。 月変化 確認された20件のうち、7月が4件、8月が 15件、9月が1件となっており、盛夏の 8月の確認が多かった。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」(1978)には、浦和、飯能、秩父橋立、皆野での鳴き声報告が 記載され、県内での定着は否定できないと記述されている。「埼玉県昆虫誌Ⅰ」(埼玉昆虫談話会・ 1998)には16か所、「種の多様性調査」には、秩父市、皆野町、県南部など12か所の記録がある。 その他の所見 県内のこれまでの記録には、公園整備に伴う植木の移植によって幼虫が運ばれてきた と推測されるものも多い。人為的な移入によると考えられる場所で、今後世代交代が続くか調べる必 要があると思われる。また、今回の調査では局所的に多く確認できるところがあるものの、県全域的 に分布している様子は伺われない。今後も動向に注視しつつ継続的な調査が望まれる。

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動物 30 ヒグラシ(セミ科) この種の概要 国内では北海道から九州、奄美まで分布。スギ・ヒノキ林に多く、広葉樹林にも生息 する。曇りの日や夕刻に鳴き、その鳴き声から「カナカナ」とも呼ばれている。 区別点 特徴的な鳴き声で早朝や夕方に鳴くので、識別は容易。 調査の状況 今回の調査では、17市町(さいたま市、川越市、熊谷市、川口市、秩父市、所沢市、 飯能市、深谷市、上尾市、入間市、志木市、和光市、 北本市、蓮田市、川島町、鳩山町、寄居町)の22地点 から32件の確認情報が寄せられた。 分布の状況 確認情報が寄せられた22地点のうち、低地帯 15地点、台地・丘陵帯5地点、低山地2地点であった 月変化 確認された32件のうち、7月が9件、8月が17件、9月が5件、10月が1件となって いる。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」(1978)には、「低山地から山地にかけてごく普通、平地には 見られない」と記述されている。「埼玉県昆虫誌Ⅰ」(埼玉昆虫談話会・1998)には、大利根町など の低地帯から大滝村の山地帯まで69地点の記録が記載されている。「種の多様性調査」には、大滝 村、飯能市、所沢市、和光市など14地点の記録がある。 その他の所見 今回の調査では低地帯からの報告が一番多く、山地、丘陵帯のセミというイメージは 伺えない。県内にはもっと広範に生息しているものと考えられるが、鳴き声による確認方法では調査 時間帯によっては確認されないことも危惧される。

(31)

動物 31 ミンミンゼミ(セミ科) この種の概要 国内の分布は北海道から九州まで生息。胸背が黒色地に緑色斑か緑色地に黒色斑をも つセミ。県内でも盛夏には低地帯から低山帯まで普通に見られる。 区別点 ミーンミンミンという鳴き声で容易に区別できる。 調査の状況 今回の調査では、20市町 (さいたま市、川越市、熊谷市、川口市、秩父市、所沢市、飯能市、 東松山市、深谷市、上尾市、 越谷市、入間市、志木市、和光市、久喜市、北本市、行田市、蓮田市、川島町、鳩山町、寄居町) の42地点から78件の確認情報が寄せられた。 分布の状況 確認情報が寄せられた42地点の うち、低地帯34地点、台地・丘陵帯6地点、 低山帯2地点であった。 月変化 確認された78件のうち、7月が22件、 8月が35件、9月が20件、10月が1件となっており、盛夏の8月を中心に暑い盛りの時期の確 認が多い。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」(1978)には、「県内の平地及び低山地にかけて個体数も多く、 普通種」と記載されている。「埼玉県昆虫誌Ⅰ」(埼玉昆虫談話会・1998)には1山地帯の記録も記 載されている。「種の多様性調査」には、大滝村、飯能市、所沢市、さいたま市、加須市など18地 点の記録がある。 その他の所見 首都圏では数が増えていて、これは幼虫が乾燥にも比較的強いためとか、公園に植栽 された樹木が大きくなり屋敷林的に変化しているためとも考えられている。今回の調査でもセミのな かでは一番確認数も多く、県下全域に広く生息している様子が伺える。

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動物 32 0 5 10 15 20 25 30 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 ジャコウアゲハ月別確認件数・数(成虫) 件数 個体数 ジャコウアゲハ(アゲハチョウ科)

Byasa

alcinous alcinous

この種の概要 青森県を除く本州以南で見られるが、東 北地方北部では局部的。翅は細身で尾状の突起は長く、♂は黒色でビロードのような光沢がある。♀ は南では黒色化の傾向があるが、黄褐色。胸部と腹部の側面に暗赤ないし黄色の毛が密生。食草はウ マノスズクサ科の各種。 区別点 ♂はオナガアゲハに似て区別が難しいが、腹部に赤い斑紋があればジャコウアゲハ。♀は似 たアゲハはいない上、食草付近などを非常に緩やかに飛ぶことから、区別は容易である。 調査の状況 10 市町、17 地点から昨年並の確認情報が寄せられたが、増減は変化なしとの報告がほと んどで、安定しているようだ。 分布の状況 山地帯以上を除く、低山帯、 台地・丘陵帯、低地帯で幅広く確認された。 月変化 今回は、最初の記録は 4 月 28 日(飯 能市)で、最後は 11 月 10 日(志木市)。5 ~6 月と 8~9 月に増加する。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」(1978) では丘陵地では少なく、「個体数が少なく なった蝶の内の一つ」と記載されている。「埼玉県昆虫誌」(埼玉昆虫談話会.1998)には、個体数 の増減の変動が観察されるとあり、低山帯を含め41 市町村で記録されている。 その他の所見 食草は河川敷、道路・線路端にも見かけるが、つる性植物のため、刈り払い対象とな りやすい。食草の増減や刈り払い時期が個体数の増減に大きな影響をもたらす可能性がある。同じ食 草で競合する外来種ホソオチョウが各地で確認されており、留意する必要がある。

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動物 33 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 ナガサキアゲハ月別確認件数・数(成虫) 件数 個体数 ナガサキアゲハ(アゲハチョウ科)

Papilio

memnon thunbergii

この種の概要 かつては近畿以西に生息していたが、今は関東地方まで拡大し、東京周辺では普通の チョウに。♂♀とも後翅に尾状突起がない(♀には稀に突起がある)。♂の翅表は黒色、後翅裏面基 部に赤斑があり、♀の地色は淡い黒色で、前中室の基部に赤褐色の紋、後翅に白班をもつ。食樹はザ ボン、ネーブル、ユズ、ナツミカンなどのミカン類。栽培ミカン類への依存度が高いといわれている。 区別点 尾状突起がないのが区別点だが、突 起が切れたクロアゲハもいるので注意が必 要。食樹付近などを緩やかに飛ぶ。 調査の状況 12 市町、22 地点から確認情報が 寄せられ、ほぼ昨年並の確認状況だが、西部 での確認が少なかった。ほとんどが増減は変 化なしとの報告だった。 分布の状況 低地帯、都市部での確認が多いが、台地・丘陵帯、低山帯でも確認されている。 月変化 最も早い確認は 4 月 28 日の伊奈町で、最も遅い確認は 10 月 26 日の東松山市であった。5 月 から数が増え、9・10 月まで波がなく確認された。確認数は 1 日 1 頭が多く、生息密度は低いようだ。 他文献からの情報 埼玉昆虫談話会会報「寄せ蛾記」(143 号/20011.9、牧林功)によれば、2000 年 に北本市で確認されたのが最初で、2005 年前後から県内での記録が増え、2009 年から記録が急増し ているとのこと。東京都内では2006 年に一気に拡大したとのことだ(「東京都の蝶」2012)。 その他の所見 温暖化による分布の拡大かとの指摘もあるが、秩父や奥武蔵の記録もあり、ミカン栽 培との関係も検討する必要がある。

(34)

動物 34

クロコノマチョウ(ジャノメチョウ亜科)

Melanitis phedima oitensis

この種の概要 国内では本州、四国、九州などに分布。北と南へ拡大、定着化がすすみ、本州では 1955 年から見られ、確認が増えている。夏型は 6~7 月頃から現れ、秋型は 9~10 月頃に羽化。秋型の成虫 で越冬。食草は、ススキ、ジュズダマ、ヨシなどのイネ科植物。成虫は樹液や腐果を吸汁。日中は林 内の暗所に止まっていることが多い。 区別点 季節により形や色、紋に変化があり、ウスイロコノマチョウに似ているが、県内には生息し ていない。林内を飛んでいる大型のヒカゲチョウはこのチョウの可能性が高い。 調査の状況 昨年に続き今回も、2市(飯能市、所沢市)2地点のみの確認にとどまった。地味なチ ョウであることが影響していると思われる。 分布の状況 南部の台地・丘陵帯2地点での確認となったが、22 年以降の記録と合わせると、さいた ま市から西部の丘陵部・山地まで幅広く生息していると思われる。 月変化 通常は、春に越冬個体が観察され、初夏に 1 回目の発生、秋に 2 回目の発生が行われる。今 回は越冬個体(5 月に 1 頭)と秋型(8 月 1 頭、9 月 2 頭)が確認された。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」(1978)には記録はなく、「埼玉県昆虫誌Ⅰ」(埼玉昆虫談話 会.1998)には、1981 年以降記録が増え、「北上し、棲息地域を拡大していることが十分考えられる」 とある。最近の埼玉昆虫談話会会報「寄せ蛾記」では、2007 年日高市・飯能市、2008 年上尾市・所沢 市、2009 年坂戸市、2010 年さいたま市などの記録がある。 その他の所見 飯能市の調査員の記録では、2005 年に初めて確認し、2009 年にヨシの茂る谷津田で大 発生した後、個体数は落ち着いているようで、毎年数回目撃されている。

(35)

動物 35 0 10 20 30 40 50 60 70 80 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 ツマグロヒョウモン月別確認件数・数(成虫) 件数 個体数 ツマグロヒョウモン(タテハチョウ科)

Argyreus hyperbius hyperbius

この種の概要 以前は近畿、東海以西に生息していたチョウ。徐々に生息域が北東に拡大し、今は北 関東、北陸、東北まで分布を拡大している。食草はスミレ全般で、パンジー等の栽培種も好むため拡 大したと言われ、市街地の花壇等でも繁殖している。幼虫は毛虫状で、背中にオレンジの筋がある。 区別点 ♀の前翅の先端部に白帯の入った黒色部があるので、他のヒョウモンチョウの仲間と区別し やすい。♂は他のヒョウモンチョウ類に似るが、後翅裏面がまだら模様なので区別は容易(写真)。 調査の状況 20 市町、52 地点で確認され、事実上県内全域で見られるといってよい。ほとんどが昨 年と変化なしとの報告だが、一部減少しているとの報告もあるのが気になる。 分布の状況 低山帯、台地・丘陵帯、低地帯 すべて確認され、標高や市街化に関係なく広 く分布している。 月変化 4 月から 11 月まで確認された。5 月連休前後から各地で確認され、11 月 24 日 の志木市が最後だった。最盛期は9月で、越 冬後徐々に増えて秋に数を増す典型的なパ ターンである。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」(1978)には、戦後採取記録があるが偶産種とし、「埼玉県昆 虫誌Ⅰ」(埼玉昆虫談話会.1998)では「本県には土着していないと考えられる」とあるが、埼玉昆 虫談話会会報「寄せ蛾記」(143 号/20011.9、牧林功)によれば、2000 年前後から県内で確認されは じめ、2005 年頃から各地での確認が急増しているとのこと。 その他の所見 街中や庭、河川敷、谷津、山頂など様々な場所で観察され、幼虫の報告も多い。

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動物 36 0 10 20 30 40 50 60 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 アカボシゴマダラ月別確認件数・数(成虫) 件数 個体数 アカボシゴマダラ(タテハチョウ科)

Hestina assimilis

この種の概要 在来種は奄美大島、徳之島、喜界島に分布。県内では 1995 年にさいたま市などで採取 され、その後急速に分布拡大中。これは中国産の亜種とみられ、ゴマダラチョウとの競合が懸念され ている。要注意外来生物リストでは、注意喚起が必要な外来生物。食樹は、県内ではエノキ。 区別点 白と黒のごまだら模様のゴマダラチョウに似るが、後翅が少し凹み、表面の縁沿いに赤い斑 紋があり比較的区別しやすいが、一見アサギマダラに似る。年3回発生すると見られるが、春型は白 色で黒色部が少なく、赤い紋はない。 調査の状況 22 市町 49 地点から確認され、今回 は秩父市や寄居町から初めて報告があり、県北 への拡大傾向が確認できた。一方、増減はなし との報告が半数以上で、各地ですでに定着して いることが分かる。 分布の状況 今回空白の熊谷・行田方面も昨年 は報告があり、低地帯、台地・丘陵帯から山地帯まで県内全域で生息していると考えられる。 月変化 今回は 5 月連休頃から 11 月中旬まで確認され、9 月に最も数が増加した。 他文献からの情報 「埼玉県動物誌」(1978)には記録はなく、「埼玉県昆虫誌Ⅰ」(埼玉昆虫談話 会.1998)には、1995 年の採集・目撃例。埼玉昆虫談話会会報「寄せ蛾記」ではここ数年、県内各地 での本種の記録が急増している。 その他の所見 調査結果や文献情報から、現在県内全域で、市街地から山間部まで生息しており、拡 大から定着の状況になっていると思われる。今後は、近縁種への影響に留意する必要がある。

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