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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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     博士(水産科学)佐々木宏明 学位論文題名

高緯度海域における光環境と生物光学/ ヾラメータとの      関係に関する基礎的研究

学位論文内容の要旨

  植物プ ランクト ン・デト ライタスな どの生物 起源物質 による吸 収が海水 の光学特 性を 支配す る海水はCase‑I waterと呼ばれている。水柱内での照度の減衰の割合を示す拡散消 散係数脇(りと,物質がどれだけ光を吸収したのかを示す吸収係数口(りは光環境を特徴づ けるの に有効で あるだけ でなく,植 物プラン クトンに よる一次 生産推定 や海色リ モート セ ン シ ン グ に よ る 輝 度 情 報 を 理 解 す る 上で も 必要 不 可 欠な 光 学 バラ メ 一夕 で あ る。

  吸収係数ロ(りは,水分子による吸収aw(り,植物プランクトン・デトライタスなどの有 機 懸濁 粒 子や バ ク テリ ア ・ 土砂 な どの 無 機 懸濁 粒 子な ど を含む全 懸濁粒子 による吸 収 ap(り,溶存有機物(CDOM)による吸収ロg(りに分けることができる。特に植物プランク トンによる吸収係数 lPh(入は,植物プランクトンの成長率,あるいは一次生産推定モデル     丶

にとっ て重要な 光学バラ メータとな っている 。現在で は光学測 器の進歩 により, 現場観 測で測 定可能な 光学バラ メ一夕も増加してきている。しかしqh(りを直接測定する測器は なく, 実験的に 有機溶媒 で色素を除 去する方 法,ある いは実験 的に分離 せずにス ペクト ル特性 を考慮し た波長比 ・植物色素 濃度など の組み合 わせを利 用して, 統計的手 法によ る生物光学モデルを用いた方法に限定される。

  植物プ ランク卜 ンは利用 可能な照度 の放射分 布による 影響を大 きく受け るため, 一次 生産を 推定する ためには ,まず水柱内での光がどのように伝達されていくのか(光の振る 舞い)を明らかにすることが非常に重要となってくる。

  本研究 では高緯 度海域に おける海水 の光学特 性のスベ クトル特 性を評価 し,海域 特有 の光環境を理解することで,

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  ・拡散消散係数鰯(りと吸収係数ロ(りとの関係   ・植物プランクトンによる吸収係数モデル開発 以上の2点について議論する。

  本研究で は,光海 洋学研究 に関して の知見が まだ非常に 少ない北 太平洋亜 寒帯を含 む 高 緯度海域 の光環境 に注目し た。使用 データは ,7つの研究 航海で実施した水中分光放射 計 を用い た水柱内 の照度測 定と現場 探水によ る植物色素 濃度,お よび吸収 係数測定 デー タ を用い た。研究 対象海域 は7つのエ リア(北 東北太平洋 亜寒帯(NEP), ベーリン グ海南 部(SBS), 北 西 北 太 平 洋 亜 寒 帯(NWP), 日 本 海(JP D, バ フ イ ン 湾(NOW) , 噴 火 湾 (FUN),北 海 道 周辺 海 域(AHK冫) に区別し た。全エ リアの有光 層深度Zeuは ,NOW, FUN エ リ ア で ブ ル ー ム 期 を 含 む た め に11‑84mで ,Zeu内 の ク ロ 口 フ イ ルa濃 度(Chlめ も 0.06‑21.37 mg fll‑3と非常に広範囲であった。しかし全サンプルの70%以上がく1.0 mg111‑3 で,エリア別に見るとNEPJPN,AHKエリアの多くが含まれていた。

1.拡散消散係数K(りと吸収係数ロQ)との関係

  脇 (りはCmロと 経験的な 関係があ ることが 知られて いる。低Chl口では鰯(いの最小値 は490nm付近を示 したが, 高Chlロにな るにっれ て脇(り は増加し ,さらに最 小値倣長 波 長 側 に シ フ ト し た 。 こ れ は 短 波 長 域 にChlqそし てCDOM, デト ラ イタ ス に よる 吸 収帯 が あり,長 波長域で は水自身 による吸 収く冫580nm冫 が強いた めに565nm付近が 一番透過 す る こと に な る。 従 って 脇 ( りは 光 環 境の 特 徴を 見 る には 最適な バラメー タである 。   Cmロから脇(りを求める胸陀´a耐朋めfD′℃M[2001]のモデルを用いると,実測値は低 Chlロのとき短 波長域の 鰯(りは 過大評価 傾向を示 すエリア が多く,ま たHJNエリア で多 く見られた高Chlロでは逆に過小評価していた。

  各 エリアの単位CM口当たりの植物プランクトンによる吸収係数a゛ph(りは,短波長側の 青 色 域(436nm冫 と 長 波長 側 の赤 色域(675nm) のChlロによ るニつの ピークを含 むスペ ク トルを示 した。さ らに補助 色素によ る吸収帯 がある波 長域のスペ クトル形 状が各エ リ ア で 特 徴 的 で あ っ た 。 従 っ て ロ ゛ph( り は 群 集 構 造 の 情 報 を 提 供 す る と い え る 。   吸 収係数は物 質濃度に 比例するBeerの法則に 原理的に は従うので,qPh(りの増加率は Chl口 と共に一定 になるは ずである。しかし実際はChlaが増加するにっれて,飾h(りは偏     一1385―

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りが生じ非線形関係に変化する。主な要因はpigment package effectにより吸収効率の低下 を生じるためである。他のエリアと比較すると,特にFUNエリアの口゛ph(りは低い値を示 していた。

  従っ て各エリ アで得ら れた吸収 スペクトル と補助色 素濃度デ 一夕を, 過去の知 見によ り 判 断 す る と ,NEPSBS,NWPJPN,AHKエ リ アで はdiatomsも合 む が主 に 小 型の 植 物プ ランクトンが卓越した海域で,FUNエリアは低ロ゛ph(りのdiatomsに代表される主に大型の 植物プランクトンが卓越している海域と示唆された。

  CDOM.デトライタスによる吸収係数ag(A), aet(A)は共に,短波長域に向かうにっれて 指数 関数的に 増加し続 ける傾向 を示す。そ のために スペクト ルを指数 増加関数 で近似さ せる ことがで きる。ま た海水の 光学特性を 理解する 上で,Chlaの 濃度変化 により他の物 質に よる光学 バラメー タがどの ように変化 するのか を明らか にするこ とが重要 である。

しかし咋(り,adet(A)はどちらもChlロに伴う傾向は示さなかった。FUNエリアではブルー ムに よりChlロが2桁変化し ても,agQ,)は ほとんど大 きな変化は見られなかった。咋(り に対 するデト ライタス の寄与は ,低Chlロでは 平均45%程 度である が,高Chlロ になると デトライタスも増加するにもかかわらず20%まで減少していた。

  脇( り の スペ ク トル は 餌 りに 大 きく 影 響 され , 春季 プ ル ーム 期 のFUNエ リ アで は 低 ロ゛ph(りでかつ咋(りに対して低adet(りであるために低消散になり,既存の生物光学モデルに 合わ ない要因 であると 示唆された。島(りは,光環境の鉛直的な光学情報を含み,海色リ モ ー 卜 セ ン シ ン グ ヘ 直 接 リ ン ク さ せ る こ と が 可 能 な バ ラ メ ー タ と な る と 考 え る 。

2.吸収係数モデル

  青色域と赤色域での吸収の比(¢曲とag(A),ロふルスペクトルの傾きを用いるRoeslerガ 甜.[1989]のモデルを参考にし,最初にap(入)とChlロは線形関係が成立するとして,シン プルに実測値の比(aph(436)/aphく675))から恤を計算した。エリア毎にaph(入)を見積もる と , 実測 値とモデ ル値はど のエリア も良い相関 関係を示 したが, やや過大 評価傾向 を示 し て い た。 特 にFUNエ リ アで は2倍 近 くも 高 い値 を 見 積も っ た。 他の エリアと 吸収特性 が 異なると 思われるFUNエリアの みで恤を 求めなお すと,高aph( 入)で誤差が小さくなっ たがまだ過大評価していた。

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  そこでpigment package effectを考慮に入れるために,紬(りが非線形関係になることに 注目 し 細を 累 乗 関数 で 求 めた 。 特にFUNエ リア は 高Chlロ 域が 非常に良 い関係を 示し,

高濃度まで増加するChl口に対応できることが示唆された。pigment package effectが顕著 に 表 れ る 水 塊 に 対 し て は , 蛾 は 累 乗 関 数 の 適 用 が 有 効 で あ る と 思 わ れ る 。   さらに外 洋域で卓 越している 小型の植 物プラン クトンと 沿岸域のdiatomsに代表される 大型の植 物プラン クトンをap(A)ス ペクトル の波長比 から識別し,適切なモデルの係数を 選択 す る指 標 を 用い て , 低Chlロ で過 大 評 価を し てい たAHKエ リアの誤 差を減少 させる ことができた。

  本研究で参考にしたRoesler et al. [1989]のモデルは各エリアの光学特性を把握すれぱ,

Ahと傾き(Sdet Sg)を 変えるこ とによって どのエリ アにも適 用可能なモデルとなる。スベ クトル平均した屬hを求めると,全エリアでは飾(りからは相対誤差9‑18%以内,ロ(りから でも14‑38%以内の精度で見積もることが可能であった。

  さらに精 度のよい 生物光学モ デルが開発できれぱ,間接的にでも高い精度でaphQ')を見 積もるこ とが可能 で,現場観 測では作 業時間と 労カの節 約による 効率化に っながり, さ らに生物 光学デ一 夕の利用の 増加によ る現場光 学測器の 技術面に おける測 器開発の発 展 も期待される。

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学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 教授 助教授

齊藤誠一 三浦汀介 飯田浩二

古谷   研(東京大学)

米田園三郎

学 位 論 文 題 名

高緯度海域における光環境と生物光学 / ヾラメータとの      関係に関する基礎的研究

  水 柱 内 で の 照 度 の 減 衰 の 割 合 を示 す 拡 散消 散 係 数脇 ( り と、 物 質 が どれ だ け 光を 吸 収 し た の か を 示 す 吸 収 係 数 ロ ( り は 光 環境 を 特 徴づ け る のに 有 効 であ る 。 さ らに 、 植 物プ ラ ン ク ト ン に よ る 基 礎 生 産 推 定 や 海 色 リ モ ー ト セ ン シ ン グ に よ る 輝 度 情 報 を 理 解 す る 上 で も 必 要 不 可 欠 な 生 物 光 学 パ ラ メ ー タ で あ る 。 特 に 植 物 プ ラ ン ク トン に よ る 吸収 係 数aph( ス は , 植 物 プ ラ ン ク ト ン の 成 長 率 、 あ る い は 基 礎 生 産 推 定 モ デ ル に と っ て 重 要 な 光 学 パ ラ メ ー タ と な っ て い る 。 植 物 プ ラ ン ク ト ン は 利 用 可 能 な 照 度 の 放 射 分 布 に よ る 影 響 を 大 き く 受 け る た め 、 基 礎 生 産 を 推 定 す る た め に は , ま ず 水 柱 内 で の 光 が ど の よ う に 伝 達 さ れ て い く の か ( 光 の 振 る 舞 い ) を 明 ら か に す る こ と が 非 常 に 重 要 と な っ て く る 。   現 在 、 海 洋 光 学 測 器 の 進 歩 に よ り , 吸 収 係 数 ば か り で な く 散 乱 係 数 も 含 め 現 場 観 測 で 測 定 可 能 な 光 学 パ ラ メ ー タ も 増 加 して き て いる 。 し かし ロph( り を 直 接測 定 す る測 器 は な く . , 実 験 的 に 有 機 溶 媒 で 色 素 を 除去 す る 方法 , あ るい は 実 験的 に 分 離 せず に ス ペク ト ル 特 性 を 考 慮 し た 波 長 比 ・ 植 物 色 素 濃 度 な ど の 組 み 合 わ せ を 利 用 し て , 統 計 的 手 法 に よ る 生 物 光学 モ デ ル を用 い た 方法 に 限 定さ れ る 。

  そ こ で 、 植 物 プ ラ ン ク ト ン に よ る 吸 収 係 数 モ デ ル を 開 発 し て 、 間 接 的 に で も 高 い 精 度 で りh(入 を 見 積 もる こ と が可 能 に なれ ば , 現場 観 測 では 作 業 時間 と 労 カ の節 約 に よる 効 率 化 に っ な が り , さ ら に 新 し い 現 場 海 洋 光 学 測 器 開 発 の 発 展 や 衛 星 海 色 リ モ ー ト セ ン シ ン グ を 応用 し た 吸 収係 数 分 布観 測 へ の進 展 が 期待 で き る。

  本 研 究 で は 、 光 海 洋 学 研 究 に 関 し て の 知 見 が ま だ 非 常 に 少 な い 北 太 平 洋 亜 寒 帯 を 含 む 高 緯 度 海 域 の 光 環 境 に 注 目 し 、1997年 か ら2001年 ま で の5年 間 に 、7っ の 研 究 水 域 ( 北 東 北 太 平 洋 亜 寒 帯 、 べ ー リ ン グ 海 南 部 、 北 西 北 太 平 洋 亜 寒 帯 、 日 本 海 、 バ フ イ ン 湾 、 噴 火 湾 、 北 海 道 周 辺 海 域 ) で 水 中 分 光 放射 計 を 用い た 水 柱内 の 照 度測 定 、 現 場採 水 に よる 植 物 色 素 濃 度 お よ び 吸 収 係 数 測 定 を 実 施 し た 。 本 研 究 は 、 そ れ ら の 観 測 結 果 を 用 い て 、 @ 拡 散 消 散係 数 脇 ( りと 吸 収 係数 ロ ( りと の 関 係、 お よ び、 ◎ 植 物プ ラン クトンに よる吸 収係数

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モデル開発 を中心に 、高緯度 海域にお ける海水の光学特性のスペクトル特性を評価し,

海域特有の 光環境を 理解しよ うとした ものであ る。

特に審査員一同が評価した点は以下の通りである。

1.知 見 が まだ 非 常 に少 ない 北太平洋 亜寒帯を 含む高緯 度海域の 光環境に注 目して、 非     常に広範囲 で収集し たデータを用いて解析して、その光環境の特性を明らかにした。

2. Chlロから脇(りを求めるMorel and Maritorena [2001]のモデルを用いて,実測値は低     Chlロのとき短波長域の脇(りは過大評価傾向を示す海域が多く、また噴火湾海域では     で 多 く 見 ら れ た 高 Chlロ で は 逆 に 過 小 評 価 し て い る こ と を 示 し た 。 3.補 助 色 素 に よ る 吸 収 帯 が あ る波 長 域 のス ペ クト ル 形 状が 各 海域 で 特 徴的 で あり 、     ロ゛ph(りは群集構造の情報を提供することを示した。各海域で得られた吸収スペクトル     と補助色素 濃度デー タを、過 去の知見 により判 断して、 珪藻類も含 むが主に 小型の     植物プランクトンが卓越した海域、低ロ゛ph(りの珪藻類に代表される主に大型の植物プ     ランクトンが卓越している海域を区別した。

4.拡 散消 散 係 数量 ば りと 吸 収 係数 ロ ( りと の 関係 に つい てCDOM・デト ライタスに よる     吸収係数ag(A),adet(りは共に、短波長域に向かうにっれて指数関数的に増加し続ける     傾向があり 、そのた めにスペ クトルを 指数増加 関数で近 似させるこ とができ ること     を示した。

5.植 物プ ラ ン クト ン によ る 吸 収係 数 モ デル 開 発を 試 み 、高 ク ロロ フ ィ ルa濃度 海 域で     pigment package effectが顕著に表れる水塊に対しては、青色域と赤色域での吸収の比     (4bh)は累乗関数の適用が有効であることを提案した。さらに吸収係数ロ(りまたは全懸     濁粒子によ る吸収ap( りから植物プランクトンによる吸収係数ap(りを求めるモデル     を開発した。

6.外 洋域 で 卓 越し て いる 小型 の植物プ ランクト ンと沿岸 域のdiatomsに代 表される大 型     の植物プランクトンをロp(ルスペクトルの波長比から識別し、適切なモデルの係数を     選択する指 標を用い て、低Chlロ で過大評 価をして いた海域の誤差を減少させること     ができた。

7.このような 生物光学 モデルを 応用すれ ば,間接 的にでも 高い精度で ロphくりを 見積も     れ,現場海 洋生物光 学観測において作業時間と労カの節約ができ効率化にっながり、

    さらに生物 光学デー タの利用 、さらに は衛星海 色リモー トセンシン グへの応 用可能     性を示した。

  以上の諸 点は高緯 度海域に おける光環 境と生物 光学に関 する重要 な基礎的 知見を得た ものとし て高く評 価できる 。

  よって審 査員一同 は、本論 文が博士( 水産科学 )の学位 論文とし て価値あ るものと認 定した。

参照

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