博 士 ( 理 学 ) Cho Cho Than
学位論文題名
Sheaves on the category of periodic observation Reconstruction of global dynamics from personal observatons
( 周 期 観 測 圏 上 の 層 ― 部 分 的 周 期 的 観 測 結 果 か ら の
大 域 的 力 学 構 造 の 再 構 築 )
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
近年 、複 雑 系の 数理 的研 究に おい て、 従来 のカ 学系 的な 枠組 みで は 取り 扱え ない よ うな テー マ の重 要性 が認 識さ れは じめ 、動 的対 象を とら える 新た な 数学 的枠 組み の 構築 が問 題と なっ てい る。 本研究 は、層の理論に基づく新たな数理的枠組みを導入 す るこ とに よ り、 単一 の対 象を 複数 の観 測者 が異 なる タイ ムス ケー ル で観 測し て得 ら れる デー タを 統合 して 単一 のモデ ルを構築する作業を明確にすることを目指した。
こ の 枠 組 み は 以 下 の よ う に 定 式 化 さ れ る 。 対 象 は 、 あ る 離 散 力 学 系D ‑ (X,T) に 従っ てい る もの とす るが 、こ のカ 学系 は観 測者 には 知ら れて いぬ い もの とす る。
こ こ で 、Xは 有 限 集 合 、 丁 :X→Xは 状 態 遷 移 規 則 と す る 。 さ て 、 観 測 者 の 集 合 只 (iEJ) が 、 各 観 測 量xi:X→Xiを 時 間 間 隔 丑 ご と に 観 測 し 、 発 展 規 則 Ti: Xi→Xiを見 いだ した とす る、 すな わち 、
t( 観(X))ニニ銃(TTiz)
が 成 り 立 っ て い た と す る 。 こ の と き 、 離 散 力 学 系 の 族 (Di= (Xi,Ti)lfEq
を 得る 。逆 に、 こ のよ うな離散力学 系の族が与えられたとき、
の 情 報 を ど こ ま で 回 復 で き る か 、 と い う 問 題 が 生 じ る 。 こ の 問 題 は 、 各Diを 、Dに 関 す る 部 分 情 報 と 考 える とき 、 報 から 大域 的情 報 を再 構築する問題 ととらえることができる。
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も と の 離 散 力 学 系D
整 合 性 の あ る局 所情 この種の問題は通常、
層の理論で取り扱うことが可能である。すなわち、Di 達をある圏の上の準層ととら え 、 適 当 な グ 口 夕 ン デ ィ エ ッ ク 位 相 に よ る 層 化 と し て 解 決 で き る 。
学 位論 文では 、対 象が 自然 数、 射が凪.m カ: n,m →n とan :n →n から生成さ れ、交換関係
夙わ‑ In
夙,m Pm ,n 〓麁,n
aニん,―ニん,m,,a ―
(m ,n は自然数,n>l )を満たす圏を導入した。これは群論の文脈では、整数の加
法群の部分群圏と呼ばれるものである。この圏に適切なグロタンディエック位相を
導入するとき、いくっかの条件の下で、層化作用が大域的モデルを正確に再構成す
ることを明らかにした。
学 位 論 文 審 査 の 要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 教授 助教授
辻下 徹 吉田知行 津田一郎 辻井正人
学位論文題名
Sheaves on the category of periodic observation Reconstruction of global dynamlCS fromperSOnalobSerVatonS
(周期観測圏上の層一部分的周期的観測結果からの
大域的力学構造の再構築)
近年、複雑系の数理的研究において、従来のカ学系的な枠組みでは取り扱えないような テーマの重要性が認識されはじめ、動的対象をとらえる新たな数学的枠組みの構築が問題 となっている。特に、単一の超越的観察者を想定して理論を構築する方法の限界は多くの 研究者により意識されている。その限界を越えるときに最初に問題になることは、単一の 対象を複数の観測者が各々独自の方法により観測して得られたデータから構築されたモデ ル達を統合することであり、これは普遍的重要性を持つ課題ということができるが、その 問題の理論的構造を解明する試みは皆無に近い。
本論文では、次のような簡単な状況を設定して、上記のテーマの基本的な問題点を明確 にしている:すなわち「単一の動的対象を複数の観測者が一定の時間間隔を置いて観察す る が 、 観 測 の 仕 方 と 時 間 間 隔 と が 観 測 者に よ って 異 なる 」 とい う 状 況で あ る。
数学では、局所的な情報の集まりで整合性のあるものから大域的な情報を再構成する問
題には、一般に層
(sheaf)の理論が有効なことが経験的に知られている。本論文では、上記
の問題にも層の理論が有効であることを示したものである。この論文の基盤となるカテゴ リーN は、自然数が、乗除関係についてなす半順序集合をカテゴリーとみなしたものに、
各対象に自明でない自己射を添加したものである。各対象
nは、時間間隔n 置いて対象を 観測する観察者を表す。この圏の上の前層(プレシーフ)は、各観測者が得るカ学系モデ ルの族を表現するが、一部の観測者達が報告する「現状」から、対象の現状を再構成でき るには、色々な条件が必要なことは言うまでもない。
本論文は、局所的な報告から全域的状況を把握できる条件を明確に述べるために、上述 のカテゴリーN にグロタンディエック位相を導入した。この位相に関する層であれば、観 測者の稠密な集まりを考えると、その観察結果は全体の状態を特定することができること がわかる。
本論文は、離散力学系で与えられる対象から定まる前層を層化する問題を解決し、一般 には、局所的な観察から全域的な構造を再構成する場合に、仮想的状態が多く混入するこ とを示すと共に、その混入の事情を明確にした。
これを要するに、本論文は、単一の対象の複数の観測者が異なる方法で得た知識を統合 するという、今後重要性を増すことが予測される問題について、具体的な設定を通してそ の 問 題 い く っ か の 様 相 を 明 確に し た も の で 、 貢 献 す る 所大 大な るもの があ る。