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新型コロナウイルス感染症で思う

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Academic year: 2021

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新型コロナウイルス感染症で思う. 2019年12月に中国河北省武漢での原因不明のウイルス性肺炎としての報告を最初として, 中国だけにとどまらず,強い感染力と春節とにより,新型コロナウイルスは世界中に広 がった。日本も,対岸の火事ではなくなり,種々の水際対策にも関わらず,2020年3月に なり患者は一気に急増し,4月16日には非常事態宣言が全国に出されるに至り,国民の生 活が一転した。その後,アメリカやイタリアのような感染爆発は抑えられたものの,患者 増加は続き,北海道では第2波に見舞われ,この原稿作成時点(5月3日)で,5月6日 の非常事態宣言終了の予定が5月末までに延長されることが決定している。 各地の感染症指定医療機関や救急救命センターをはじめとする医療機関は対応に追われ, 院内感染によるクラスター発生が問題化しており,大都市の一部では医療崩壊が始まって いる。精神科領域でも,4月中旬の時点で少なくとも全国5か所の精神科病院で院内感染 が発生し,特に神奈川県のケースでは,措置入院患者が新型コロナウイルス感染であった ため,転院調整がうまくいかず,院内感染が広まった。新型コロナウイルス感染の精神疾 患患者をどこで治療するかは大事な問題であり,総合病院精神科の整備の重要性,県・地 域全体でのネットワークづくりの必要性が感じられた。それとは逆方向の現象であるが, 全国で10近くの大学病院の精神科病床が,独立した構造上の問題などで新型コロナウイル ス感染症病棟への転用や,新型コロナウイルス病棟に対応する看護師などの人員確保のた めに閉棟を余儀なくされている,病院長の管理・経営的視点での采配で仕方はないとは思 うが,精神科のアイデンティティに関わる非常に残念な現状もある。 精神科の診療・教育・研究のスタイルも大きく変わった。通院間隔を開け,電話や処方 箋をFAXすることで通院精神療法を行い,さらに遠隔診療に取り組んでいる医療機関も 増えている。新型コロナウイルス感染者が入院している総合病院精神科のリエゾン診療は, タブレットやスマホを用いた診療に取り組んでいる。ちなみに熊本大学では,回診・カン ファレンスは少人数で,WEBを用いた取り組みも始め,医局会はメールのみ,院内・学 外の会議はメールかWEB,業者のやりとりもメールだけになった。職員に一人熱発者が 出ただけで,大騒ぎになる。医学部の学生もキャンパス立ち入り禁止となり,臨床実習も WEB形式となり,教育担当の教官の頭を悩ましている。9月入学への制度変更も現実化 してきた。また,学会もすべて中止・延期となり,実験動物の購入はできなくなり,研究 のアクティビティは極端に低下している。ちなみに熊本が10月主催予定の九州精神神経学 会・医療学会も今後理事会に諮るところであるが,中止・延期を余儀なくされている。 私個人としては,現場で生じていること・感じられていることをキャッチしながら,氾 濫する新型コロナウイルス対策情報を組織で有用なものを入手して,対策を立て,いかに 早く組織の中に伝達することに苦慮している毎日である。地域と状況により対応の仕方は さまざまであることや不用意に不安があおられている自分に改めて気づかされている。ま た,当たり前な事ではあるが,新型コロナウイルス感染の病因解明から簡便な診断法・シ ステム構築や治療薬の開発が最も重要であり,一日でも早い開発が終息へ導くことを改め て医師として応援したいと思うし,全然話は違うが,多面的な側面のある精神疾患につい ても然りだと思う。精神科医として腕の見せ所は,新型コロナウイルス感染症患者の精神. 巻 頭 言. (九州神経精神医学,第65巻,第 3~ 4号,令和1年12月15日発行) 111. 症状は,重症者の場合,脳炎様の脳画像所見や脳 塞・血栓症の所見が数多く報告され, 単なる肺炎に伴うせん妄ではない可能性も指摘されているので,このあたりの病因解明や 治療法の開発が進んだらと思う。また災害時に共通する部分と思われるが,コロナ疲れと 呼ばれる非常事態宣言に伴う環境変化や活動制限による不安症状の悪化・適応障害への 対応,失業・経営破綻などの経済的問題に起因するうつ病や自殺増加への対応,感染症指 定医療機関や救急救命センターの医療従事者のメンタルケアなどが必要であろう。そのた めには,看護師,心理士,精神保健福祉士,行政などとの多くの連携が不可欠になるであ ろう。 今回の新型コロナウイルスの大激震は,診療や生活を一時的ではなくて,今後も継続し て大きく変えると思う。遠隔診療,WEBを用いた会議・授業・学会などが進むだろうし, 出張や講演会もWEB形式がますます増えるであろう。不要な会議や出張は極力やめたほ うがよい。生活スタイルも IT化が益々すすむ。今回を通じて,不要不急の仕事がどんな に多かったのかが気づかされるし,自分がいったい何がしたいのかが,より明確化された 機会でもある。 一方で,WEBでは伝わらないものがあることも,改めて気づかされた。特に初対面の 方の雰囲気はわからない。微妙なニュアンスは伝わらないし,感じにくい。誤解が生じる こともあるし,また,多くの人が一度に議論ができない。会うことで,さりげない日常会 話や場の雰囲気,表情・トーンの微妙な変化が,書類以外の重要な情報として得られる。 また,WEBでは発言が抑制され,意外性や自由な発言・発想が明らかに減ってしまう。 お互いの信頼関係があった上での,ツールとしてはよいが,信頼関係を築くまでは,直 接コミュニケーションをとり,お互いのこころを感じることが大事であり,このことは精 神医学に一番重要な部分につながることかもしれない。. 令和2年5月吉日. 熊本大学大学院生命科学研究部神経精神医学講座 竹 林 実. 112 巻 頭 言

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