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耐震性能評価の差異を考慮した木造住宅の地震応答性状の分析 [ PDF

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Academic year: 2021

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69-1

耐震性能評価の差異を考慮した木造住宅の地震応答性状の分析

光武 大貴 1. はじめに 木造住宅の耐震安全性は, その社会的背景から仕様 規定により担保され, 耐震要素の量とその配置を壁量 計算で確認する場合が多い. 壁量計算は, 設計用地震 力に相当する必要壁量を床面積に応じて求めるわけだ が, 1981 年の新耐震設計法の制定以来, 見直しは成さ れていない. その後 1995 年に発生した兵庫県南部地 震を受け, 仕様規定の見直し等があった他, 性能設計 を意図した所謂品確法が施行され, 現在の住宅業界で は, 2 つの評価法が並行し運用されている. 建前では, 両者は一対の対応を示すとされているが, 耐震要素と して見込む仕様が異なるなど, 不透明な部分も多い. 本研究は, これらを背景に 1 ~ 3 階建ての具体的 な木造住宅を想定し, 令 46 条に規定された耐震要素 のみを考慮した場合と, 雑壁等の影響まで考慮した場 合の耐震性能を地震応答解析により検討したものであ る. 検討では, 両者の対応を調べると共に, 特に平屋 建ての住宅に対して, 必要壁量を試算した他, 2 ~ 3 階建ての応答評価を視野にいれ, 等価線形化の観点か ら非線形性の評価を試みた結果も併せて述べる. 2. 検討対象住宅のモデル化と振動特性 2.1 一般的な木造住宅の設定と概要 本研究では, 軸組構法による 1 ~ 3 階建ての標準 的な木造住宅の地震応答を分析するため, 延べ床面積 が 120 m2 程度の平面図を作成した. それぞれの建物 の平面図を図 1 に示す. 同図において, 現行の建築 基準法では屋根の仕様で必要壁量が異なるため, 重い 屋根の壁量計算時に追加で配置される筋かいを色付き ( a ) 1‐story house ( H 1 ) 図 1 検討対象として設定した木造住宅の平面図 ( c ) 3 - story house ( H 3 ) ( b ) 2 - story house ( H 2 )

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69-2 で表記している. 屋根と壁の仕様は数種類を想定し, その組み合わせで地震力算定用の重量を決定した. こ のモデルに対して現行の壁量計算法を用いて各層の検 定比が 1.0 を満たすようにバランス良く筋かいを配 置した. 本研究では窓や壁などの配置は変更せず, 仕 様別に建物の重量のみを変更している. 以降, 各質点 を水平 1 自由度とした系に置き換えて検討を進め, 1 ~ 3 階建てをそれぞれ H1, H2, H3 とし, 長辺方向 ( x 方向)と短辺方向 ( y 方向)の 2 方向について解析 を行う. また, 耐震要素については ① 筋かいのみ ② 筋かい + 雑壁 (石膏ボード) の2 種類を考慮することで実際の建物に近い応答も検 討する. 重量算定のために決定した屋根・壁部の仕様 を表 1 に示す. ここで, モデルの重量を図 2 に示す. 同図より, 住 宅の仕様によって 1.5 倍程度の重量差があることが 確認される. 同図において, 重量が近似しているモデ ルや実例が少ない屋根と壁の仕様の組み合わせを除い た 7 種のモデルについて解析を行うものとし, 以降 では同図の左から順に W1 ~ W7 と表記する. 2.2 復元力特性の設定 本研究では, 耐震要素の復元力特性に五十田ら 2) 提案した Bi-linear + Slip モデルを用いる. このモデル は, 各種の実験で再現性が検証されている他, モデル の有効壁長から復元力特性が容易に設定できるという 特徴がある. モデルの適用範囲は, Slip の層間変形角 1/30 ~ 1/20 rad 間に負勾配を設定することで, 木造 住宅の安全限界 1/30 rad 以降の検討を可能にしてい る. 時刻歴応答解析では, 減衰定数を木質構造で一般 的な h = 3 % とし, 層間変形角 1/30 rad 以降の負勾 配 の 領 域 で は 0 と し た . こ の 他 , 数 値 積 分 に は Runge - Kutta 法を採用し, 時間刻みは 1/500 とした. 2.3 固有値解析によるモデルの振動特性把握 時刻歴応答解析を行う前に, モデルの振動特性を把 握するために固有値解析を行った. 解析結果の 1 例 として, W4 の 1 次固有周期, 1 次振動モードを図 3 に示す. 同図において, H1 モデルは固有周期のみ, H2 と H3 モデルは 1 次固有周期と 1 次振動モー ドを示している. ただし, 同図の固有周期は初期剛性 ではなく, 層間変形角が 1/120 rad 時の非線形化した 際の割線剛性により算定している. 同図より, 同じモ デルでも筋かいと雑壁を考慮した場合のモデル②では, 筋かいのみのモデル①に比べ, 固有周期が約半分程度 になることが分かる. また H2・H3 モデルの振動モー ドから, 雑壁を考慮することで上層部の応答が小さく なることが確認された. 3. 耐震性能の差異による応答性状の分析 3.1 検討に用いた入力地震波 本研究では, 様々な周期特性を持つ地震波に対する 応答を調べるため, 過去に発生した代表的な地震 4 波 (El Centro-NS, Hachinohe-EW, Kobe-NS, Taft-EW) の周期特性を反映した告示波にランダム位相を 加え, Lv.1, Lv.2 の 2 つの異なる入力レベルの計 10 波を採用した. 入力地震波の擬似速度応答スペクトル を図 4 に示す. 以降の検討では, これらの地震波を 入力として, 時刻歴応答解析の結果を基に, 応答性状 を分析する. 表 1 屋根と壁の仕様 TS mud w all MW TR las mortar LM SP siding board SB GS

roof type w all type

tile roofing soil tile roof slate plate galvalume steel sheet

W7 0 100 200 300 400 weight [kN] 1 - story 1F 1F 2F 3F 3 - story 2 - story 1F 2F 図 2 木造住宅モデルの仕様による各層重量の差異 W1 W2 W3 W4 W5 W6 W7 W1 W2 W3 W4 W5 W6 W7 W1 W2 W3 W4 W5 W6 0 50 100 150 200 0.1 1 10 period [sec.] pSv [kine]

kel1 kel2 kha1 kha2 kko1

kko2 kta1 kta2 kra1 kra2

Lv. 2 Lv. 1 図 4 入力地震波の擬似速度応答スペクトル T [sec.] H1 ① 0.90 1.10 1.36 x - ② 0.40 0.63 0.87 y - ② 0.41 0.65 0.93 W4 H2 H3 図 3 固有値解析結果の例

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69-3 3.2 雑壁の有無による応答の差異 今回の検討では, 壁量計算時に耐震要素として考慮 されていない雑壁が地震応答に与える影響を調べるた め, 耐震要素が筋かいのみのモデルと, 雑壁まで考慮 したモデルの応答解析を行った. 解析結果として, 各 層の最大層間変位を図 5 に示す. 同図より, 雑壁ま で考慮することで全てのモデルで応答変位が小さくな っていることが分かり, これは固有値解析により固有 周期が低下していることや応答スペクトルからも予測 することができる. また, H2 モデルでは第 1 層の応 答は変化がほとんど見られないが, 第 2 層はかなり 応答が低下している. これは平面図からも分かるよう に, 2 階の方が 1 階に比べて壁の数が多いため, 雑壁 まで考慮した場合には, 2 層目の剛性が大幅に増大し ているためだと考えられる. 実際に, 大地震発生時の 木造住宅の被害を考えても1 層が層崩壊しているケー スが多く, 雑壁を考慮したモデルの方が実際の被害に 近いことが分かる. 4. 時刻歴応答解析結果に基づく応答性状 4.1 等価線形化によるモデルの等価減衰と等価周期 以降は, H1 についての地震応答性状に対して分析 を行う. 地震応答評価の 1 つとして等価線形化法に 基づく応答評価を図 6 のように行う. この評価方法 で必要となる情報は, 対象とする地震波とその地震波 を入力としたモデルの応答加速度, 応答変位である. まず, モデルの最大応答加速度, 最大変位をそれぞれ Amax, Dmax として, 等価周期 Tf を max max/ 2 D A Tf   の関係式から求める. これは, 加速度応答スペクトル と変位応答スペクトルの Sa - Sd 曲線が描かれる平面 の傾きに相当するため, 両者の交点からモデルの等価 減衰 hf を逆算できる. H1 モデルの算定結果を図 7 に示す. 同図より, 等価減衰はほとんどのケースが 10% ~ 15% の範囲であり, 等価周期は応答が大きくな るにつれて増加していることが確認できる. (1) brace +non-structural wall

0.00 15.00 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 0 10 20 15.0 0.0 15.0 0.0 15.0 0.0 story drift [cm] ① story drift [cm] ① ② 0 10 20 story drift [cm] ① ② ③ max. ave. min. 図 5 雑壁を考慮した場合の応答の差異 brace brace + non-structural wall

W1 W2 W3 W4 W5 W6 W7 図 6 H1 モデルの等価周期 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 0.00 5.00 10.00 15.00 Teq[sec.] story drift [cm] 図 7 H1 モデルの等価減衰 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 0.00 5.00 10.00 15.00 heq[%] story drift [cm]

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69-4 4.2 最小二乗法による必要壁量の試算 時刻歴応答解析によるモデルの各層の最大変位を図 8 に示す. 本研究では, 平屋建ての建物の必要壁量を 簡易的に算定する式を考察する. 例として, 重い屋根 の場合の地震応答と計算手順の概要を図 9 に示す. まず, 複数の地震波に対する応答の平均値をモデル毎 に求め, これに対して最小二乗法に基づき近似直線の 傾きを求める. 次に, 入力地震波による応答のばらつ きを考慮するため, 近似直線と同じ傾きで, ばらつき が一番大きいモデルの最大値を通るような直線を算定 し, Lv.1 の場合は層間変形角が 1/120, Lv.2 の場合は 1/30 の交点にあたるモデルの検定比を逆算すること で必要壁量を算定する. 算定式は屋根の重量で 2 種 類に区別し, Lv.1 と Lv.2 をそれぞれ求めた. 算定式 を表 2 に示す. 表中の W [kN] は建物の屋根・壁・ 床を考慮した総重量であり, 重量を求めることで必要 壁量を求める. また, ここでの必要壁量は耐震要素と して筋かいのみではなく, 石膏ボード等の雑壁も考慮 した値となっている. そのため, 筋かいのみを考慮し ている現行の壁量計算法で算定した場合の有効壁量と 比べると 3 ~ 4 倍程度になっている. 5. まとめ 本研究では, 壁量計算を基に設計された平屋建てか ら 3 階建ての木造軸組構法住宅を対象に, 複数の地 震波に対する応答を, 固有値解析および時刻歴応答解 析を通して調べた. また, 平屋建ての建物について詳 細な分析を行い, 必要壁量を簡易的に算定できる式を 考案した. 得られた知見は以下の通りである. ・ 現行の基準に基づき設計した住宅において石膏 ボードなども耐震要素として考慮した場合, 固有 値解析の結果より, 剛性増大により固有周期が小 さくなり, 2 階建て以上の建物では上部層の応 答が小さくなることが確認され, これは時刻歴応 答解析でも認められた. ・ 平屋建ての建物に対して, 筋かい以外の耐震要素 も考慮した場合の必要壁量の算定式を考案した. ・ 今後は 2・3 階建ての建物についても同様にして 詳しく分析していく. 参考文献 1) 佐藤利昭他:木造住宅用制振装置の性能評価-振動台実験によ る加算則の検証と動特性評価-, 日本建築学会技術報告集, 第 20 巻, 第 45 号, pp.539-544,2014,6 2) 五十田博, 河合直人:木造軸組構法住宅に用いる壁の復元力特 性モデル-木造建物の地震時挙動に関する研究-, 日本建築学会 構造系論文集, 第 616 号, pp.157-163, 2007.6 図 8 各層の最大層間変位とばらつき W1 W2 W3 W4 W5 W6 W7 * x - direction < black line >, y - direction < gray line >

0 1 2 3 4 5 0 5 10 15

wall - length ratio H 1 (1 - story)

story drift [cm] 0 1 2 3 4 5 0 5 10 15 H 2 (1 - story) story drift [cm] 0 1 2 3 4 5 0 5 10 15 H 2 (2 - story) story drift [cm] 0 1 2 3 4 5 0 5 10 15 H 3 (2 - story) story drift [cm] 0 1 2 3 4 5 0 5 10 15 H 3 (3 - story) story drift [cm]

wall - length ratio wall - length ratio

wall - length ratio wall - length ratio

wall - length ratio

0 1 2 3 4 5 0 5 10 15 H 3 (1 - story) story drift [cm] wall - length ratio

2 必要壁量の算定式 (L = α × W) 係数 α 軽い屋根 (スレート, ガルバリウム等) 重い屋根 (瓦葺き) Lv.1 0.416 0.373 Lv.2 0.301 0.331 図 9 必要壁量の計算概要 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 0.0 5.0 10.0 15.0 wall - length ratio story drift [cm] heavy roof Lv.1 Lv.2 1/120 1/ 30

表   2  必要壁量の算定式 (L = α × W)  係数  α  軽い屋根  (スレート, ガルバリウム等) 重い屋根 (瓦葺き) Lv.1  0.416  0.373  Lv.2  0.301  0.331  図   9 必要壁量の計算概要 0.01.02.03.04.00.05.010.0 15.0wall - length ratiostory drift [cm]heavy roofLv.1Lv.21/1201/ 30

参照

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