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背景照度及び相関色温度に関するVDT作業空間の照明環境評価 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)背景照度及び相関色温度に関する VDT 作業空間の照明環境評価. 山本 宏亮 1. はじめに 一般にオフィスの照明基準における照度基準は作業面. ることである。実験は、背景照度と相関色温度に違いを設. 照度について規定されている。特に日本におけるオフィス. けた実大模型室にて行った。被験者には、実大模型室内に. 設計では、作業面照度の基準値を満たすことが主な目標と. て、長時間の VDT 作業を課した。VDT 作業前後において疲. なっている。しかし、作業面照度だけでは、光の快適性や. 労の主観評価を行うとともに、感覚機能検査として調節機. 心理への影響を考慮できない。また、屋内照明に関する欧. 能検査、ならびに精神運動機能検査として反応時間測定を. 州規格の改定案では壁面及び天井面の照度に関する基準. 行った。. も追加されようとしている。近年のオフィスでは VDT 作業 が中心となっており、全業務時間に占める VDT 作業時間は. 2.被験者実験方法. 7 割を超え、1日平均 5.6 時間〜8.3 時間 VDT 作業を行っ. (1) 実大模型室概要. ているとの報告がある。VDT 作業では、画面を注視するこ. 実験は、実大模型室(3500×3500 mm)にて実施した。実. とが多く、作業面照度だけでなく空間全体における照明の. 大模型室内の壁面は白色プリント合板、床面と天井面は既. 質を考慮した設計の必要性が指摘されている。. 存のものを使用し、パーティションで区切られた 2 つのブ. また、波長の短い光と覚醒喚起との関係から、作業性向. ース内それぞれの中央部に作業机を設置した。天井面 14. 上を目的として、青色光成分の多い高色温度光照明を作業. 箇所に照明器具を均等に配置し、32 型蛍光灯を照明条件. 1). 場に適用する試みがあり、Antoine.U.Viola らは実際の. ごとに付け替えた。蛍光ランプは出力 25~100%で調光可. オフィスで相関色温度 4000 K と 17000 K の状況下で 2 ヶ. 能である。図 1 に実大模型室断面図、図 2 に実大模型室平. 月間従業員に作業をさせ、作業における違いを調査した。. 面図を示す。. 視差業においては 17000 K の高色温度に良い結果が出たと. (2) 実験条件. されている。. 机上面照度を 500 lx で一定とし、相関色温度 2 条件(32. 本研究の目的は、被験者と向かい合う壁面の照度(以降、. 型昼白色蛍光灯 4200 K・12000 K を使用)と背景照度 2 条. 背景照度と定義する)の違いや相関色温度の違いが、被験. 件(平均照度 113 lx・376 lx)の組み合わせ計 4 条件で評. 者の光環境評価、視覚疲労、覚醒度に与える影響を検討す. 価を行った。表 1 に相関色温度、照度の実測値を示す。. Ev. ↓. 図 1 実大模型室断面図. 図 2 実大模型室平面図. 46-1.

(2) (3) 実験条件. 表 1 実測値. 実験は 2011 年 12 月~2012 年 1 月にかけて行った。被 験者は 1 日 1 条件、計 4 日ですべての条件を終了する。1 日の実験時間を 13:00~17:30 までとし、その時間内で被 験者にノートパソコンを用いて Excel によるデータの入 力とグラフの作成を課題として与えた。実験期間中の室温 は 18~21℃、湿度は 30~50%であった。被験者からは手 足の冷えによる作業のしづらさ等の指摘はなかった。なお、 被験者には十分な睡眠時間の確保と生活リズムを一定に 保つよう教示した。図 3 に実験手順を示す。 (4) 測定項目 被験者は作業の前後に、主観的評価と客観的評価を行っ た。主観的評価には、自覚症状しらべ 2)、眼精疲労申告、 図 3 実験手順. 光環境に関する申告 3)を行った。疲労の客観的評価には、 焦点調節応答時間(以下 ART とする)、反応時間(以下 PVT とする)を測定した。. 表 2 自覚症状しらべの症状項目. 自覚症状調べは、日本産業衛生協会産業疲労研究会作成 の申告書を用いた。自覚症状しらべの中身は疲労一般の訴 え項目からなるⅠ群、心的症状の訴え項目からなるⅡ群、 神経感覚的症状項目からなるⅢ群から構成されており、各 項目に対して○×で申告する。表 2 に自覚症状しらべの症 状項目を示す。訴え率は式(1)に基づき算出し、30 項目 全体に対する訴え率を「総合訴え率」と定義した。. 対象集団の総訴え数 訴え率(%)= ×100 ………(1) 項目の数×人数. 吉武ら 4) は、自覚症状しらべの各症状群間の順序関係 は、一般型「Ι>Ⅲ>Ⅱ」 、精神作業・夜勤型「Ι>Ⅱ> Ⅲ」 、肉体作業型「Ⅲ>Ι>Ⅱ」の 3 種類に大別され、総 合訴え率が高い場合に精神作業・夜勤型が生じやすいと報 告している。 眼精疲労申告は「目が痛い」 「目が乾く」などの 10 の項 目からなっており 4 段階の尺度で評価する。光環境に関す る申告書を図 4 に示す。 ① 反応時間測定 PVT PVT は、視覚刺激が与えられてから押しボタンを押すま での単純反応時間を測定する眠気の客観的測定方法であ る。測定機器には、米国 A.M.I 社製 P.V.T-192 型モニタを 用いた。本体上面の指示器が点灯してから、ボタンを押す までの反応時間を測定した。指示器の点灯による視覚刺激 を 2~10 秒の間隔で表示し、測定時間は 5 分間とした。図 6 に PVT モニタを示す。 ② 焦点調節応答時間 A.R.T5) 網膜に鮮明な像を結ぶためのピント合わせを調節とい. 図 4 光環境に関する申告書. 46-2.

(3) う。最大に調節したときに明瞭に見える点を近点といい、 逆に調節を休ませたときに見える明瞭な点を遠点という。 この近点から遠点、もしくは遠点から近点に要する時間を 焦点調節応答時間といい、値が大きいほど視覚疲労が大き いことを意味する。被験者は利き目と反対側の眼をアイマ スクで覆い、凸レンズを利き目で覗き込み、指標を注視し 焦点を合わせる。次に合図と同時にストップウォッチを押 図 6 PVT モニタ. し、凹レンズを覗き込み、指標を注視し、焦点があった時 点でストップウォッチを押し、焦点が遠点から近点へ移動. 表 3 被験者の特徴. するのに要する時間を測定した。この手順を凹レンズ、凸 レンズ交互に 21 回ずつ、計 42 回測定した。指標は 18pt のランドルト環とし、被験者にはランドルト環の隙間がは っきりと認識できた時点で焦点があったと判断させた。 (5) 被験者の特徴. 表 4 光環境に関する申告. 実験には 10 人の被験者を用いた。被験者は健康な大学 生年齢の男女 10 名(男性 6 名,女性 4 名)である。被験者 の特徴を表 3 に示す。 3.結果と考察 (1) 統計解析 実験条件別の比較には、危険率 5%の分散分析を行った 後、多重比較により解析を行った。また、作業前後の比較 には対応のある t 検定を用いた。 (2) 主観評価 ① 光環境評価 明るさ感は〈12000 K〉条件が〈4200 K〉条件よりも申 告値が低く有意傾向にあり「暗い」側の申告であった。明 るさ調節に対する要求では有意な差は認められなかった。 光環境に対する受容度では〈376 lx〉条件が〈113 lx〉条 図 7 眼精疲労訴え率. 件よりも有意に高く、 「受け入れられる」側の申告であっ た。まぶしさ感に関する申告では〈12000 K〉条件が〈4200 K〉条件よりも申告値が有意に高く「非常に気になる」側 の申告であった。文字の読みやすさに関する申告では交互 作用が確認され、 〈113 lx・12000 K〉条件が〈376 lx・4200 K〉条件よりも有意に低く、 「読みにくい」側の申告であっ た。表 4 に光環境における申告結果を示す。. ② 眼精疲労 1 以上の申告を「症状あり」 、0 を「症状なし」として、 各項目を合わせた眼精疲労の総合訴え率を個人ごとに求 めた。背景照度〈376 lx〉条件は、背景照度〈113 lx〉条 件に比べて作業により眼精疲労の訴え率が高くなる事が わかった。総訴え率は、 〈113 lx・12000 K〉条件と〈376 lx・ 4200K〉条件において、p<0.05 で作業前より作業後の方 が有意に高かった。また、 〈376 lx・12000 K〉条件と〈113 lx・4200 K〉条件において、p<0.01 で作業前より作業後. の方が有意に高かった。訴え率を平均した総合訴え率の結 果を図 7 に示す。 ③ 自覚症状調べ 群間比較を行うと、 〈376 lx・12000 K〉条件以外では、 全ての時間帯で「Ⅰ>Ⅱ>Ⅲ」の精神作業型・夜勤型とな る結果が得られた。精神疲労に影響を及ぼす Ⅱ/T につい ては、一日の作業終了後の 17:30 において〈12000K・132lx〉 条件で他の条件より高い値を得た。 〈12000K・132lx〉条件 では、他の条件に比べて作業により疲労を強く感じられた と考えられる。自覚症状調べの集計結果を表 4 に示す。 (3) 生理指標 ① 焦点調節応答時間 1回の測定では、ART を 42 回測定した。最初の10 回は 数値が安定しないため除外し、11 回から 42 回の測定値の. 46-3.

(4) うち、焦点が遠点から近点に移動した際の 16 回分の中央. 表 4 自覚症状しらべ集計結果. 値を代表値として用いた。被験者ごとに ART の値に差があ り、作業後の ART が作業前の ART より長くなる者と、作業 後のARTが作業前のARTより短くなる者が各条件で半数程 度ずつであった。被験者ごとに VDT 作業前後での ART 変化 率(作業後中央値-作業前中央値/作業前中央値)を求め分 散分析を行った。全ての条件間において、ART 変化率に有 意な差は確認されなかった。背景照度の違い、色温度の違 いは、ART に影響を与えないと考えられる。 ② 反応時間測定 PVT 1回の測定では、90~100 回程度の PVT を測定した。1 回の実験の結果には、測定値の中央値を代表値として用い た。 〈376 lx・4200 K〉条件と〈113 lx・4200 K〉条件で は、概ね作業後の PVT が作業前の PVT より短くなる傾向を 示した。被験者ごとに VDT 作業前後での PVT 変化率(作業 後中央値-作業前中央値/作業前中央値)を求め分散分析を 行った。各条件間で有意差は認められなかったが、 〈4200 K〉条件が〈12000 K〉条件よりも PVT が低く有意傾向であ った。 〈12000 K〉条件より〈4200 K〉条件の方が覚醒して いると考えられる。図 8 に〈113 lx・4200 K〉条件と〈113 lx・12000 K〉条件の変化率を、図 9 に〈113 lx・4200 K〉 条件と〈113 lx・12000 K〉条件の変化率を示す。. 図 8 PVT 変化率. 4.まとめ 本研究では、光環境を対象とし、背景照度と色温度に違 いを設け、被験者に長時間の VDT 作業を課すことで、視覚 疲労への影響を検討した。背景照度〈113 lx〉条件と〈376 lx〉条件を比べると、光環境に関する申告結果では、 〈376 lx〉条件で光環境に対する受容度が高く、相関色温度が 4200 K の時に文字が読みやすいという結果を得た。一方、 眼精疲労に関する申告結果では、 〈376 lx〉条件で眼精疲. 図 9 PVT 変化率 謝辞. 労訴え率が高くなる結果を得た。自覚症状しらべの結果で は、 〈113 lx・12000 K〉条件で、疲労を強く感じることが. 本研究は、平成 21 年度科学研究費補助・新学術領域研究(課題番号 21200003) および基盤研究 C(課題番号 21560613)によった。記して謝意を表する。. 示唆された。一方、相関色温度〈4200 K〉条件と〈12000 K〉 条件を比べると、光環境に関する申告結果では、 〈12000 K〉. 参考文献. 条件でまぶしく「非常に気になる」という結果を得た。PVT. 1)Antoine.U.Viola:Blue enriched white light in the workplace improves self-reported alertness,performance and sleep quality.Scand J Work. の結果では、 〈4200 K〉条件で覚醒度が高いという結果を 得た。本研究結果より、 〈12000 K〉条件より〈4200 K〉条. Environ Health,pp.297-306.2008 2)日本産業衛生学会・産業疲労研究会編集委員会編:産業疲労ハンドブック pp164-169, pp190-193,pp201-204,1998.5.. 件が、光環境として好まれ、覚醒度が高いことが示唆され た。また、背景照度〈113 lx〉条件より〈376 lx〉条件が. 3)西川雅弥.西原直枝.田辺新一:800lx と 3lx の机上面照度が知的生産性に与え る影響に関する被験者実験,日本建築学会環境系論文集. 光環境として好まれる一方で、眼精疲労の訴え率は、背景 照度〈113 lx〉条件より〈376 lx〉条件が高くなる事がわ かった。本研究より、VDT 作業を行う空間では、作業面照. vol73,pp.349-353,2008.3. 4)吉竹博:改訂産業疲労-自覚症状からのアプローチ-,労働科学研究所出版部 1993 5)望月悦子,木村洋:分光分布の違いが視覚疲労に与える影響-LED と蛍光ランプ. 度だけでなく背景照度や相関色温度を考慮した設計を行. 下の VDT 作業による視覚疲労の比較.日本建築学会大会学術講演梗概. うことが重要であることが示唆された。. 集,D-1,pp.397-400,2009. 46-4.

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