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Fig.1 Specimen 用いた粒子は高速度鋼 ( ハイス )( ) および硬質 ガラスビーズ ( ) である. ピーニングは重力式で行 い, 投射条件は圧力を前者 0.6MPa, 後者 0.4MPa とした ほかは同じで, ノズル径 9mm, 距離 100mm, 回転数 6rpm, 時間 40

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Academic year: 2021

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(1)

Improvement of Fatigue Strength Properties by Fine-Particle-Peening

Katsushi SARUKI

1)

Abstract

The rotating bending fatigu tests were carried out about fine-particle-peening specimens and non-peening specimens. Most specimens are plain and several specimens have a semi-spherical notch or a straight V-notch. The S-N diagrams obtained were compared with peening and non-peening. About the plain specimens, the phenomina were examined by the position of initiation point of fracture. In the case that the fracture origin switched from surface to internal by fine- particle-peening, the fatigue limit increased remarkably. Also in the case that fracture occurred from surface regardless of peening or not, the fatigue limit of the peening specimen increased. In the case that fracture origin was internal regardless of peening or not, the fatigue limit did not increase, but the fatigue life was improved by peening. About the notched specimens, the fatigue limit increased by peening, since fracture occurred from surface of notch in these cases. The improvement of fatigue properties can explain considerably in terms of compressive residual stress given to the surface vicinity by peening. The fatigue limits of the peening specimens, was able to be predicted well comparatively by the distribution of the Vickers hardness and residual stress measured, as the first approximation.

1. はじめに 各種輸送機器をはじめとする多くの機器や構造物の 部品には小型軽量化が求められ,これに応えるためには 疲労強度を向上化させることが一つの課題である.この ためには高周波焼入れ,浸炭,窒化など熱処理によって 表面を強化する方法とショットピーニングやロール加工 など冷間加工によって表面を強化する方法とがある.こ のうちショットピーニングは,熱処理によって高めた疲 労強度をさらに向上化する一手段として,ばねや浸炭歯 車などをはじめ種々の部品に幅広く利用されている. このカテゴリーに属するものの一つに微粒子ピーニ ングがある.これは200μm 以下の微粒を投射材とし, これをエアーで高速に噴射するもので,表面が高温にな り熱処理効果から組織が微細になる,表面に白層が現れ る,ナノ結晶粒が生成するなどのことが報告されており, 従来のショットピーニングとは一味違った形で疲労強度 を向上化させる可能性を秘めていると考えられる.しか し一方,疲労強度に強い白層やナノ結晶ができても,そ れが局所的なものであればそれらのできていないところ から破壊が起こる,また投射材が微粒であるが故にその 影響層は非常に薄く,その下部から破壊が起こるなどし て,部品の疲労強度向上にはつながらない懸念もある. 筆者は上記のことを明らかにしたいと考え,まず種々 の材料に微粒子ピーニングを施し,疲労強度の向上の仕 方を見ていくこととした.蓄積した多くのデータから帰 納法的に真理が導き出せるものと思っている.道はまだ 長い.本報では数年間で蓄積したデータを提示する.今 年度もさらにデータは積み上がるのであるが,残念なが らその結果はここには記載できないので,別な機会に発 表したいと考えている. 2. 方法 疲労試験は回転数3150rpmの4連式片持ち回転曲げ疲 労試験機を用い,打切り回数1010で行った.疲労試 験片はFig.1に示す.試験片のくびれ部の最小径aは4mm (一部3mm)で,応力集中率は 1.08(1.06)である.微 粒子ピーニングはくびれ部を含む約20mm 間に施した. 1) 材料機能工学科

(2)

Fig.1 Specimen 用いた粒子は高速度鋼(ハイス)(♯300)および硬質 ガラスビーズ(♯300)である.ピーニングは重力式で行 い,投射条件は圧力を前者0.6MPa,後者 0.4MPa とした ほかは同じで,ノズル径9mm,距離100mm,回転数 6rpm, 時間40sである.(前者を H,後者を B と表記).また, その他それ以外の特殊な条件でピーニングした場合はそ の都度文中に表記する.硬さ,残留応力の測定には,そ れぞれビッカース硬さ計,X 線応力測定器を用いた. 3. 機械構造用鋼 3.1 炭素鋼S25C 試験片は受け入れのままのもの(AR),微粒子ピーニ ング処理H を行ったもの,B を行ったもの,H 後 B を行 ったもの(二段ピーニング,以下D と表記)の4種類で ある.得られたS-N 線図1)Fig.2 に示す. 100 200 300 400 500 600

1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09 Number of Cycles to Fracture

S tr es s( M P a) S25C-AR S25C-AR-H S25C-AR-B S25C-AR-D Fig.2 S-N diagram of S25C 図より疲労限度はAR 材が 263MPa であるのに対し,

H 材が 358MPa,B 材が 363MPa,D 材が 363MPa とピー

ニングしたものはいずれもほぼ40%弱の上昇となった. ついで疲労限度の推定について述べる.今回の組織は フェライト・パーライト組織なので疲労限度の推定式と しては σW0={(HV/8)+ 4 }×9.8 (1) を用いる2).その結果210HV(圧子荷重 100gf)の AR 材の疲労限度は296MPa とやや高めの推定結果となった. 残留応力がある場合は残留応力を平均応力とみなし σW=σW0{1-(σr/σT)} (2) を用いて推定する.なお式(2)中の両振り疲労限度σW0は 式(1)で,また真破断力σTは次式 σT={(HV/3)+ 50 }×9.8 (3) で硬さから推定する2).今回いずれのピーニング材も圧 子荷重100gf(圧痕対角線約 30μm)で測定した表面近 傍硬さに顕著な増加は認められなかったが,残留応力は 約-250MPa 程度付与されていた.この値を用いて式(2) で推定すると,疲労限度は364MPa となり実験値にかな り近い.このことは対角線30μm 程度の圧痕で得られた 硬さ値がマクロな疲労強度を決定付けていると考えるこ とができる.ちなみに圧子荷重10gf で測定した表面硬さ400HV であるが,実験値はこの値で推定した疲労限度 にはなっていない. 3.2 炭素鋼S45C 試験片は受け入れのままのもの(AR)とピーニング処H を行ったものである.得られた S-N 線図1)Fig.3 に示す.図より疲労限度はAR 材が 385MPa であるのに 対し,H 材が 438MPa となり,上昇率は約14%であった. 200 300 400 500 600 700

1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09

Number of Cycles to Fracture

S tr es s( M P a ) S45C-AR S45C-AR-H Fig.3 S-N diagram of S45C つぎに疲労限度を3.1 と同様の方法で推定すると,硬 さ260HV(圧子荷重100gf)のAR材の疲労限度は358MPa とやや低めであるが,実験値にかなり近い推定結果とな った.また,ピーニング処理を施した H 材については 270HV,残留応力-290MPa から疲労限度の推定を行う と444MPa となり,この場合も推定値は実験値にかなり 近い値となった. 3.3 炭素鋼S55C 試験片は受け入れのままのもの(AR)とピーニング処H,B,D を行ったものあわせて4種類である.得ら れたS-N 線図3)Fig.4 示す.図より疲労限度は AR 材390MPaであるのに対し,H材,B材がともに445MPa, D 材が 435MPa で,上昇率は 14~11%であった. 疲労限度について 3.1 と同様の推定を行うと,硬さ 100 50 7 10 100 50 7 10

(3)

270HV(圧子荷重300gf)のAR材が370MPa,硬さ255HV, 残留応力-290MPa の H 材が 429MPa,硬さ 260HV,残 留応力-280MPa の B 材が 432MPa,硬さ 250HV,残留 応力-300MPa の D 材が 425MPa となり,これらはいず れも5%以内の誤差で実験値とよくあった. ついで微小切欠きについて検討した.試験片はAR 材Fig.1 の長手方向中央部に機械加工によって半径 300 μm の半球切欠きを付けたもの(以下 S と表記)と深さ 145μm,角度 90°,先端半径 50μm のストレート V 切 欠きを付けたもの(以下V と表記)の 2 種類とした.こ れらの切欠き部投影面積はほぼ同じになっている.応力 集中率は前者が2.2,後者が 2.0 程度でそう大きな差はな い.ピーニング処理はいずれもH と B とした.得られた S-N 線図4)Fig.5 に示す.図より疲労限度は S 試験片, V 試験片ともピーニングなしの場合 225~235MPa であ るのに対し,ピーニングしたH 材では 290MPa, B 材で265MPa 程度となった.ピーニングによる疲労限度の 上昇率はそれぞれ25%,15%である. 200 300 400 500 600 700

1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09

Number of Cycles to Fracture

S tr e ss (M P a ) S55C-AR S55C-AR-H S55C-AR-B S55C-AR-D Fig.4 S-N diagram of S55C 0 100 200 300 400 500

1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09

Number of Cycles to Fracture

S tr e ss (M P a) S55C-AR[S] S55C-AR[S]-H S55C-AR[S]-B S55C-AR[V] S55C-AR[V]-H S55C-AR[V]-B

Fig.5 S-N diagram of S55C notched

3.4 合金鋼 SCM435 試験片は1128K 1.8ks 油冷,873K 3.6ks 水冷の焼入れ焼 戻し材(QT)である.ピーニングは H と混合ピーニン グ(ハイス粒子30~600μm,直圧0.5MPa,ノズル径7mm, 距離150mm,回転数 6rpm,時間 60s,以下 M と表記) を行った.得られたS-N 線図5)Fig.6 に示す.図より 疲労限度はQT 材が 450MPa であるのに対し,H 材は 600MPa,M 材は 550MPa,上昇率はそれぞれ約 30%, 20%であった. 疲労限度の推定には今までと同様に式(2)を用いるが, 式中の両振り疲労限度,真破断力の推定にはこの場合は 式(1),(3)の代わりに焼戻しマルテンサイトに適用できる 次式 σW0={(HV/8)+ 10 }×9.8 (4) σT={(HV/4.3)+ 85 }×9.8 (5) を用いる6)HV310 として QT 材の疲労限度は 478MPa となった.またピーニング材は H 材,M 材の硬さが 330HV,300HV,残留応力が-400MPa,-330MPa であ ることから疲労限度は629MPa,576MPa と推定できる. 結果は誤差10%以内で大略よく推定できているといえ る. 300 400 500 600 700 800

1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09

Number of Cycles to Fracture

S tr es s( M P a ) SCM435-QT SCM435-QT-H SCM435-QT-M Fig.6 S-N diagram of SCM435QT 3.5 合金鋼SNCM439 この場合の試験片最小径は 3mm である.試験片は 1123K 3.6ks 油冷,433K 7.2ks 空冷の焼入れ焼戻し材とこ れにピーニング処理 H を行ったものである.得られた S-N 線図5)Fig.7 に示す. 900 1000 1100 1200 1300 1400 1500

1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09 1.E+10

Number of Cycles to Fracture

S tr e ss (M P a) SNCM439-QT SNCM439-QT-H Fig.7 S-N diagram of SNCM439QT

(4)

図中オープンマークは内部破壊が明確に認識できた ものを示している(以下の図も同じ).図よりQT 材の時 間強度線は低寿命側(表面破壊型)と高寿命側(不明確 ではあるが内部破壊型と判定)の2 箇所に現れ二重 S-N となっている.しかしH 材は高寿命側(内部破壊型)の みに実験点が現れた.また10回強度(第一水平部)は1050MPa であった.本材料においては,ピーニングの 有無にかかわらず内部破壊で疲労限度(107回強度)が 決定付けられており,そのことから両者の疲労限度には 差が現れなかったものと考えられる.また時間強度域で はピーニング無しのもので低寿命で破壊するものが現れ たが,有りのものでは確実に高寿命側で破壊しているの で,ピーニングが寿命向上に確実性を与えているといえ る. 内部破壊は亀裂の発生進展が真空中で起こるので,疲 労限度は高くなる可能性がある.そこで今回の疲労限度 の推定には式(4)より高い値を与える次式 σW0=1.6×HV (6) を用いた7).推定の方法は,試験片断面の硬さ分布,残 留応力分布から式(6),(5),(2)を用いて疲労限度分布線を 描き,作用応力線との接点として求める.得られた結果 はQT 材が 1020MPa,H 材が 1030MPa,これらは実験値 とかなりよくあっている.参考までに表面近傍硬さと残 留応力は,QT材がHV620,-500MPa,QT-H材がHV640,1150MPa であるから,これらから表面疲労限度を推定 すると,前者は1048MPa,後者は 1324MPa となった. 前者は内部破壊として求めた疲労限度1020MPa に非常 に近い.このことは,どちらで破壊することもありうる ということを物語っており,二重S-N となった実験結果 とよく符合している. 4. 窒化鋼,浸炭鋼 4.1 炭素鋼S45C 試験片はガス軟窒化 853K10.8ks(GN),イオン窒化 773K18ks(IN),ラジカル窒化 723K18ks(RN)の 3 種類 の窒化を施したものとそれらにピーニング処理を施した もの(H)である.得られた S-N 線図1)Fig.8 に示す. 図より疲労限度は GN 材が 663MPa,その H 材が 763MPa,前者が表面破壊であるのに対し,後者は内部破 壊で上昇率は15%となった.IN 材は 710MPa,その H 材760MPa,両者とも表面破壊で上昇率は 7%と低かった. またRN 材はピーニング処理(H)の有無にかかわらず, 682MPa で変わらなかった. ついで疲労限度推定について述べる.窒化材では一般 に最表面に薄い化合物層ができ,その下に拡散層ができ るが,今回の場合第一近似として表面に形成された薄い 化合物層は無視し,拡散層に注目して疲労強度を考える. 窒化鋼の場合,拡散層は硬化していることを考え,σW0 の推定には式(4)を,また疲労限度線は修正グッドマン式 σW=σW0{1-(σr/σB)} (7) を用いる.式中のσBは σB=(HV/3)×9.8 (8) で推定する6).まず表面破壊したものについて拡散層の 表面近傍硬さ(圧子荷重300gf),残留応力,推定疲労限 度,誤差の順で結果を示すと,GN 材 450HV,60MPa, 623MPa,6%,IN 材 410HV,-110MPa,638MPa,10%, IN-H 材 380HV,-430MPa,759MPa,0%,RN 材 340HV, -190MPa,602MPa,12%,RN-H 材 357HV,-510MPa, 769MPa,13%となった.RN 系でやや誤差が大きかった が,他は0~10%の範囲で推定できている.内部破壊で 疲労限度が決まっているGN-H 材(参考:表面近傍硬さ HV470,残留応力-570MPa)については,3.5 で述べた 方法(ただし使用した式は式(6),(7),(8))で疲労限度を 推定したが,その結果は710MPa,誤差 7%であった. 500 600 700 800 900 1000

1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09 Number of Cycles to Fracture

S tr e ss (M P a) S45C-GN S45C-GN-H S45C-IN S45C-IN-H S45C-RN S45C-RN-H

Fig.8 S-N diagram of S45C nitrided

4.2 炭素鋼 S55C 試験片は平滑のほか半球切欠き(S)とストレート V 切欠き(V)も加え,それらのそれぞれに 4.1 と同様,軟 窒化(GN),イオン窒化(IN),ラジカル窒化(RN)の 3 種類の窒化を施したものとその後それらをピーニング 処理(H)したものである.得られた S-N 線図4)8)Fig.9Fig.11 に示す. 図より疲労限度はGN 材が 625MPa,その H 材は内部 破壊に移行し713MPa と 14%の上昇,また IN 材はピー ニング処理(H)の有無にかかわらず内部破壊で 700MPa 前後,H 処理による上昇は認められなかった.RN 材は 表面破壊でH 処理により 12%の上昇が認められた.平滑 材の疲労限度推定結果については表面近傍硬さ,残留応 力,推定疲労限度,誤差の順で結果を示すと,GN 材 400HV,-70MPa,620MPa,6%,RN 材 300HV,-250MPa,

(5)

300 400 500 600 700 800 900

1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09 Number of Cycles to Fracture

S tr e ss (M P a ) S55C-GN S55C-GN-H S55C-[S]GN S55C-[S]GN-H S55C-[V]GN S55C-[V]GN-H

Fig.9 S-N diagram of S55C gas nitrided

300 400 500 600 700 800 900

1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09

Number of Cycles to Fracture

S tr es s( M P a) S55C-IN S55C-IN-H S55C-[S]IN S55C-[S]IN-H S55C-[V]IN S55C-[V]IN-H

Fig.10 S-N diagram of S55C ion nitrided

300 400 500 600 700 800

1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09 Number of Cycles to Fracture

S tr e ss (M P a ) S55C-RN S55C-RN-H S55C-[S]RN S55C-[S]RN-H S55C-[V]RN S55C-[V]RN-H

Fig.11 S-N diagram of S55C radical nitrided 584MPa,3%,RN-H 材 320HV,-250MPa,607MPa, 4%となった.内部破壊で疲労限度が決まっているものに ついては4.1 で述べた方法で疲労限度を推定したが,そ の結果はGN-H 材が 657MPa,0%,IN 材が 640MPa,9%, IN-H 材が 660MPa,4%となり,IN 材を除きいずれもか なりよい精度で推定できた. また,半球切欠き,ストレートV 切欠きにおける H 処 理の効果はいずれの窒化材についても認められ,中でも GN 材では疲労限度が 30 数%と大きく上昇した. 4.3 合金鋼 SCM435 窒化処理は4.1 と同様とし,ピーニング処理(H)の有 無について検討した.窒化による拡散層表面近傍の硬さ は600~700 HV で,H 処理によっても大幅な上昇はなか った.一方,残留応力は窒化した状態では-200~-400 MPa 程度であるが H 処理で-1200~-1600MPa と大幅 に変化した.得られたS-N 線図9)Fig.12 に示す. 700 800 900 1000 1100 1200

1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09 Number of Cycles to Fracture

S tr e ss (M P a ) SCM435GN SCM435GN-H SCM435IN SCM435IN-H SCM435RN SCM435RN-H

Fig.12 S-N diagram of SCM435 nitrided

GN 材は H 処理の有無にかかわらず内部破壊で 107 度(疲労限度)が決まっており, H 処理によるその上昇 率は高々4%であった.IN 材,RN 材では,表面破壊が H 処理することにより内部破壊に移行し,上昇率は 14~ 18%と比較的大きかった. 次に浸炭材(C と表記)についてピーニングの有無を 検討した.この場合のピーニング条件は今までのものと 異なり,微粒子にWC(9μm)を用い,圧力 0.6MPa, 距離50mm,時間 60s とした(以下 W と表記).試験材 はC 材,C-W 材とも表面に浸炭異常層があり,その硬さ は500HV程度,その後の浸炭部は750~800HVであった. また表面残留応力は 前者が 90MPa,後者が-490MPa であった. 得られたS-N 線図10)Fig.13 に示す. 700 800 900 1000 1100 1200

1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09

Number of Cycles to Fracture

S tr es s( M P a) SCM435-C SCM435-C-W

Fig.13 S-N diagram of SCM435 carburized

この場合は10回以下と以上のところに別なS-N 線図

が現れるいわゆる二重S-N 線図となった.一段目の S-N

(6)

いることが判る.なおこの場合は内部破壊が不明確であ ったので,破壊起点によるプロットの区別は付けていな い. 5. 特殊用途鋼 5.1 軸受鋼SUJ2 この場合の試験片最小径は 3mm である.試験片は 1008K 2.4 ks 油冷,453K 1.2 ks 空冷の焼入れ焼戻しを行 ったもの(QT)で,その後のピーニング処理(H)の有 無について検討した.QT 材の表面硬さは 760HV(圧子 荷重100gf)であったが,H 処理により 830HV となり,1200MPa の残留応力が付与された.得られた S-N 線図 11)Fig.14 に示す.時間強度線は QT 材では低寿命側 (表面破壊型)と高寿命側(表面破壊型と内部破壊型が 混在)の2本となり,1400MPa 付近に第一水平部が現れ たが,H 材ではその高寿命側(内部破壊型)の関係線に 近いところに結果が現れた.本材料では一段目の寿命は H 処理によって高寿命となっているようであるが,二段 目はあまり変わらず,どちらかというと若干低寿命とな った. 1000 1200 1400 1600 1800 2000

1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09 Number of Cycles to Fracture

S tr e ss (M P a) SUJ2QT SUJ2QT-H

Fig.14 S-N diagram of SUJ2QT

5.2 ステンレス鋼 SUS304 試験材は受け入れのままのもの(引抜き材)(AR)に 対するピーニング処理(H)の有無について検討した. またプラズマ浸炭を施したもの(C)に対するピーニン グ処理の有無についても調べた.表面近傍硬さはAR 材HV280,AR-H 材が HV350,C 材が HV530,C-H 材HV620 であった.得られた S-N 線図12)Fig.15 に示 す. 図よりAR 材に比し H 処理材は疲労強度が上昇してい ることがわかる.一方プラズマ浸炭すると疲労限度は上 昇するが,寿命は下がる.しかしこれにH処理を行うと, 疲労限度の上昇は見られないが,寿命が2 桁以上も向上 した. 300 400 500 600 700 800

1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09 Number of Cycles to Fracture

S tr e ss (M P a) SUS304-AR SUS304-AR-H SUS304-C SUS304-C-H

Fig.15 S-N diagram of SUS304 6. その他 6.1 球状黒鉛鋳鉄FCD400 試験材は受け入れのままのもの(鋳放し材)(AC)が 表面近傍硬さ230HV である.それにピーニング処理を行 ったもの(H),浸炭処理を行ったもの(C),C 後 H 処 理およびHp(直圧式)処理を行ったものについて検討し た.それぞれの硬さと残留応力は,AR-H 材が 760HV,600MPa,C 材が 820HV,110MPa,C-H 材が 820HV,1400MPa,C-Hp 材が 790HV,-1700 MPa であった. 得られたS-N 線図を Fig.16 に示す.AR 材は H 処理で寿 命,疲労限度とも向上したが,この場合もC 材は寿命の みが向上した. 200 250 300 350 400 450

1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09 Number of Cycles to Fracture

S tr es s( M P a ) FCD400-AC FCD400-AC-H FCD400-C FCD400-C-H FCD400-C-Hp Fig.16 S-N diagram of FCD400 6.2 アルミニウム合金 A5083 は受け入れのままのもの AR(O)材とそれに二 段ピーニングを施したもの(D)について,また A5052 は受け入れのままのものAR(H34)材とそれにピーニン グ処理B と D を施したもの,A6061 についても,受け入 れのままのものAR(T6)材とそれに B 処理,D 処理を 施したものについて調べた.表面近傍硬さは A5083AR95HV,その D 材が 109HV,A5052AR 材が 105HV, そのB材が115HV,D材が145HV,A6061AR材が125HV, そのB 材が 145HV,D 材が 155HV であった.得られた S-N 線図を Fig.17 に示す. 図よりピーニング処理による疲労強度の向上度合い

(7)

A5083 が最も大きく,ついで A5052 であった.A6061 は硬さは上昇しているが,疲労限度には顕著な向上は認 められなかった. 50 100 150 200 250 300

1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09 Number of Cycles to Fracture

S tr e ss (M P a ) A5083-AR(O) A5083-AR-D A5052-AR(H34) A5052-AR-D A5052-AR-B A6061-AR(T6) A6061-AR-D A6061-AR-B

Fig.17 S-N diagram of Aluminum Alloys

7. おわりに 微粒子ピーニングによって疲労強度がどの程度向上 するか,またそれがどのような要因によっているかにつ いて,蓄積したデータを基に考察した. (1)機械構造用炭素鋼S25C~S55C ではピーニング により疲労限度に1~4 割程度の向上が見られた.なかで も炭素量の低いS25C の上昇度合いが大きかった.焼入 れ焼戻しした合金鋼SCM435 でも3 割程度の向上が見ら れた.これらはいずれも表面破壊で疲労限度が決まるも のであり,疲労限度の上昇には表面およびその近傍に付 与された圧縮残留応力が効いていると考えられる.一方 SNCM439 のように表面破壊,内部破壊が同じ強度レベ ルであるときはピーニングすることによって表面が強化 され破壊が内部に限定される.この場合疲労限度の向上 にはつながらないが高寿命が保証されることになる. (2)窒化材の場合ピーニングしても内部破壊に移行 しないS45C-IN 材,SCM435-RN 材で 1 割程度,ピーニ ングによって表面破壊が内部破壊に移行する S45C-GN 材,S55C-GN 材,SCM435-IN 材などでは 1~2 割の疲労 限度向上が認められた.これらの場合も疲労限度の上昇 には圧縮残留応力が効いていると考えられる.一方,浸 炭材SCM435-C 材は二重 S-N となったが,ピーニングは 低寿命側にも高寿命側にも寿命延長効果をもたらしてい る. (3)軸受鋼SUJ2 にも二重 S-N が現れたが,ピーニ ングしたものの結果はこのうち高寿命側の関係線の近く にのみ現れ,高寿命に確実性を与えていることがわかる. ステンレス鋼SUS304,球状黒鉛鋳鉄 FCD400 もピーニ ングによって疲労限度が向上したが,浸炭した場合は高 寿命化に効果を示した.アルミニウム合金については, A5083,A5052 などでピーニングによる疲労限度の向上 が見られたが,A6061 では顕著な効果は見られなかった. 以上,蓄積した微粒子ピーニングに関する疲労強度デ ータを提示し,現在考えられる硬さの上昇と付与された 圧縮残留応力とから疲労限度や寿命の向上がどこまで説 明できるか検討した.なお,提示したデータは投射条件 を種々変えて最適な条件を選んだ上で検討したものでは ないので,疲労強度が向上しなかったものでも投射条件 の選び方によっては向上する可能性がある,また今回向 上しているものでも条件によってはさらに向上する可能 性もある.これらのことは今後の検討課題としたい. また,ここに提示したデータは必ずしも本目的のため に検討したものばかりではなく,窒化処理と疲労強度の 関係とか微小切欠きと疲労強度の関係など種々の目的に 対して検討した結果も含まれている.これらのデータは 今後また別な形でまとめていかなければならないことは 当然である. 微粒子ピーニングの場合は一般的に表面粗さが通常 のショットピーニングより小となるので,そのことは疲 労強度に有利となり,表面粗さが疲労強度を低下させる ということはあまり考慮しなくてもよいと思われる.し たがって本報でも表面粗さについては特には触れなかっ た.また,白層やナノ結晶の生成などのような微視的考 察も本報では行っていない.しかし,このような表面現 象が疲労強度にどのような形で効くのかについては,今 後さらにデータの蓄積を計るとともに,ミクロな観察と 考察を加え検討していかなければならない.そしてその ような詳細な検討の結果を踏まえ,工学的に有用な一般 化を進めていく必要がある.まだまだ道は長いが,今後 に期待して筆を置くこととする. 謝辞 本研究を遂行するにあたり,微粒子ピーニングの大部 分は㈱不二機販殿にご協力いただいた.またデータはす べて猿木研究室所属の学生によって取られたものである. 記して謝意を表する. 参考文献 1) 坂東啓至,猿木勝司:微粒子ピーニングによる鋼材の 疲労強度向上化に関する一考察,日本材料学会東海支 部第2 回学術講演会講演論文集,pp.49-50,2008 2) 青山咸恒:自動車構造用鋼板の疲労耐久性 TD-24,豊 田中央研究所,pp.38,1988.

(8)

3) 日下正造,猿木勝司:炭素鋼 S55C の回転曲げ疲労強 度特性に及ぼす各種窒化および微粒子ピーニングの 影響,日本機械学会東海支部第58 期総会講演会講演 論文集,pp.11-12,2009 4) 日下正造,猿木勝司:窒化処理した微小切欠き材の回 転曲げ疲労強度特性に及ぼす微粒子ピーニングの影 響,日本機械学2009 年度年次大会講演論文集,Vol.1, pp. 109-110,2009 5) 八田一成,猿木勝司:微粒子ピーニングを施した機械 構造用合金鋼の超長寿命域を含む疲労特性,日本機械 学会東海支部第 52 期総会講演会講演論文集, pp.271-272,2003 6) 青山咸恒:焼入れ焼もどしした構造用鋼の強度特性: REVIEW of TOYOTA RD CENTER,Vol. 5, No. 2, pp. 1-30, 1968 7) 日本材料学会:第 4 章 疲労強度,改訂材料強度学, p.93,2005 8) 日下正造,猿木勝司:微小切欠きを付した炭素鋼 S55C の回転曲げ疲労強度特性に及ぼす各種窒化処理の影 響,日本材料学会第58 期学術講演会講演論文集, pp.411-412,2009 9) 鳥居敦厚,猿木勝司:窒化および微粒子ピーニング処 理を施したSCM435調質鋼の広寿命域回転曲げ疲労特 性,日本機械学会東海支部第57 期総会講演会講演論 文集,pp.87-88,2008 10) 八田一成,猿木勝司:微粒子ピーニングを施した機 械構造用合金鋼の超長寿命域を含む疲労特性,日本機 械学会東海支部第 57 期総会講演会講演論文集, pp.87-88,2008 11) 崔基哲,猿木勝司:微粒子ピーニングを施した高炭 素クロム軸受鋼SUJ2 の超長寿命疲労特性,日本機械 学会東海支部第 53 期総会講演会講演論文集, pp.79-80,2004 12) 辻俊哉,猿木勝司:プラズマ浸炭および微粒子ピー ニング処理を施したSUS304 の回転曲げ疲労強度特性, 日本機械学会東海支部第55 期総会講演会講演論文集, pp.207-208,2006 (原稿受理日 平成21 年 9 月 18 日)

参照

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