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沖縄県にいたるまで広く分布し 草地や川辺 道路わきなどいろいろな場所で見かけることがで きます 日本の作物畑にはめったに入り込みませんが 植え込み 管理敷地内の空き地 芝地や 人家の庭に入り込み やっかいな雑草として扱われることも多いようです 地下にひそむ多大な根茎このチガヤの雑草としてのやっかいさ

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Academic year: 2021

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10 茅の輪 フリー百科事典『ウィキペディア 日本語版』2006/10/17 (火) 11:08 UTC (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E 3%83%95%E3%82%A1%E3%82 %A4%E3%83%AB:Shimenawa_2 .jpg#filelinks)より転用 NPO 法人防草緑化技術研究所/京都大学農学研究科 小西 真衣 印南野の 浅茅押しなべ さ寝る夜の 毛長くしあれば 家し偲はゆ (万葉集第六巻:山部赤人) 〈印南野の一面に生えたチガヤを押し伏せて寝る夜 が幾日も続くので、故郷の家のことがしきりに思わ れてならない〉 チガヤは、古くから私たちの生活と深くかかわりを持ち親しまれてきました。茎葉は屋根ふき の材料に、穂は詰め物や火口に使用され、若い穂は甘く時にはおやつとしてかじられたりしまし た。日本書紀には「茅纏(ちまき)の矛」が登場し、万葉集には浅茅 (あさじ)や茅花(つばな)として多く歌われている(万葉集にはチ ガヤを詠んだ歌が 30 首弱あります)ことからも、そのことをうかがい 知ることができます。チガヤは神聖なもの、疫病除けの力があるもの とも信じられていました。夏な越ごしの 祓はらえにチガヤでつくった茅ちの輪わをく ぐることで病災をまぬかれるという信仰は現在も受け継がれ、今日で は笹で巻かれることが多いチマキも、供物を包むのにチガヤが使われ たので「茅巻き」として誕生したと考えられるそうです。 チガヤはイネ科の多年草で、アジア、アフリカ、オーストラリア、 アメリカなど世界中の熱帯、亜熱帯および温帯に広く分布しています。 アジアやアフリカでも、屋根ふきの材料や家畜の飼料、生薬、儀式用など多くの用途に利用され ています。その一方で多くの国で作物栽培時のやっかいな雑草ともなっており、世界の悪草の 7 番目に挙げられ、また、南アジア・東アジアでは最強害草とされています。日本では北海道から 雑草紹介シリーズ

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伊藤操子氏提供 防草緑化技術 1:10-15 (2009)

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11 沖縄県にいたるまで広く分布し、草地や川辺、道路わきなどいろいろな場所で見かけることがで きます。日本の作物畑にはめったに入り込みませんが、植え込み、管理敷地内の空き地、芝地や 人家の庭に入り込み、やっかいな雑草として扱われることも多いようです。 地下にひそむ多大な根茎 このチガヤの雑草としてのやっかいさは、なんといってもその侵略的な根茎(一見根のように 見える地中にある茎)にあるといえるでしょう。根茎は土の比重が大きい場合(粘土など)は深 さ 15cm、小さい場合(砂地など)は 40cm までに分布します。120cm の深さまで伸びることもある ようですが、多くは地下 20cm までにみられ、根と絡み合ってマット状になっています。根茎は先 に芽があり、親シュート(茎+葉)の根もとから土の中 をほぼ水平に伸びた後、上向きに方向を変えて新しい地 上シュートを作ります。根茎の表皮は硬く先は鋭くとが り地中を貫くのに適しています。地上に向かう根茎は、 びっしりと根を張った芝や雑草を防止するためのシート、 アスファルトをも貫くことがあります。また根茎には、 親シュートからあまり長く伸びずに新しいシュートを出 すものと、長く伸びたのち(25cm 以上)に新シュートを つくるものに分けられることが報告されています。つま り親シュートの周りにシュートをつくる根茎は『群落の 維持』、親シュートから遠い位置にシュートをつくる根茎 は『群落の拡大』という役割を担って、群落の形成に貢 献しているのです。 春から秋まで根茎はシュートを出しながら旺盛に伸長しています。根茎が上向きに伸び始める 頃には、根茎の先に近いところから新たに根茎が伸びて分枝ができ、1 シーズンに最大 3 本の分 枝(4 次分枝)ができます。素焼き鉢で栽培された 1 株のチガヤからは、1 年間で 22~82 の根茎 がつくられました。そのうち最長の根茎は 1m ほど、総延長は約 12m にもなります。ある群落では 255 日間で、1 個体の根茎は最大 265cm、平均で約 90cm 伸びたそうです。乾燥させた重さでみる と根茎は全体の半分程度を占めているという報告もあります。このようにチガヤは多量の根茎を 生産し、多くの養分を地下に蓄えています。 チガヤの根茎 楢原(1965)より転用

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12 さらに、根茎には節があり、チガヤの根茎のほとんどの節 には芽が一つあります。そのため何らかの原因で切断されて 生じた根茎片からは、芽が出て新しい個体がつくられること があります。根茎片にある伸びることができる芽の割合は 10%程度ですが、穂が出る約 1 か月前の 4 月頃には 30%弱まで 高まります。1 節間の根茎片は完全なチガヤをつくる能力を もち、芽を含む長さ数 cm の根茎片は 15cm ほどの深さであればそこから芽を出すことができます。 根茎片の芽は 20~35℃で伸び、一般に冬には死んでしまいます。15℃や 40℃では全く芽は出ませ んが、この場合も湿度が 80%以上であれば、芽は死なずに休眠しているようです。根茎片は乾燥 にも強く、30℃で 2 日間放置された程度ではほとんどの芽は死なず、5 日間放置された後でも、 まだ芽を出せる場合があります。このような根茎(片)の特性を考えれば、例えば植栽する樹木 の土にチガヤの根茎片が混じっていた場合、その植栽地がやがてチガヤに覆われてしまうことも、 容易に想像することができます。 風に運ばれる種子 よく発達した活発な根茎が特徴的なチガヤですが、穂が出ると群落では一面の銀白色の穂が風 になびき美しい風景をつくります。西日本では春の終わりごろ、北日本ではそれよりやや遅く、 奄美大島よりも南では 1 年中、穂が出ます。刈り取りなどによって一時地上部を失った個体が、 秋になって穂を出すこともあります。穂が出ると、雌しべが先に現れ、後から雄しべが伸び、や がて果実ができます。チガヤの花粉は風に運ばれ、ほとんどが他の 個体と受粉します。そのため群落の大きさやその時の気象によって 果実のできる割合は大きく異なります。穂が出てから 1 カ月ほどす ると種子が成熟します。種子は穂ごと地上へ落ちるか、種子の根も とにある多数の白い絹毛によって、風で運ばれていきます。大抵は それほど遠くまで運ばれませんが(平均飛距離は 15m ほどです)、周 囲に森林などの飛行を邪魔するものがなければかなり遠くまで飛ん でいくことができます。時には海を越えることもあるそうです。散 布された種子は、25~35℃で適度な水分があればすぐに発芽します。 しかし種子から発芽した個体は根茎から萌芽したものよりもきわめ て小さく、4 週間は根茎がありません。また、発芽した後十分に生育し開花するまでには、栽培 チガヤ根茎の節と芽(伊藤操子氏提供)

チガヤの穂(伊藤操子氏提供)

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13 多様な変異を示すチガヤ 同じ条件で約 5 カ月間栽培したチガヤ 6 系統。各系統の採取地は次の 通り。506:宮城県(空き地)、505:宮城県(路傍)、2314:福井県(頻 繁に刈り刈りのある水田畦畔)、2308:福井県(水田畦畔)、松村 E: 中部地方(路傍、早生型)、松村 C:中部地方(路傍、普通型) 条件下でも 2 年以上かかります。種子の寿命もあまり長くありません。すでに植物が密に生えて いるところへ散布されたチガヤの種子は、発芽してもその後の生育をそこの植物に邪魔されてし まい、十分に大きくなり定着できることはほとんどないといえるでしょう。反対に、人為的に、 あるいは自然災害などによって造られた開放地ではよく発芽・定着でき、新たなチガヤ群落をつ くることができるでしょう。 様々な環境に適応するチガヤ群落 先にも述べたようにチガヤはほとんどの場合、風に運ばれてきた他個体の花粉と受粉するため、 多様な遺伝的変異を内包しています。新しい環境へ散布された種子から生じた個体は、そこで様々 な強い自然選択を受けます。多様な変異を示す個体の中でこの自然選択によって選ばれたものだ けが、そこで根茎を伸ばし、自分と同じ遺伝子を持つシュートをうみだしていくことができます。 さらに定着後も環境に適応できない個体は淘汰されてしまいます。そのため、一つの群落はかな り均質なものになり、個々の群落はそれぞれの生育環境に適応するかたちで、生態的にも形態的 にも分化していきます。中部地方では、平野部に普通に見られるチガヤよりも、穂が出る時期や 花が咲く時期が 1 カ月早い早生型のチガヤが認められています。この早生型チガヤは不安定なか く乱を受ける立地に生育しています。そしてこの立地に対応すべく、早生であることに加えて、 種子が発芽できる条件の幅が広い、種子から発芽して穂が出るまでの期間が短い等の、移住能力 を高める特性をもっています。紀伊半島南部では、海岸砂丘の波打ち際のすぐ後ろに、内陸部の チガヤよりも小型で、花粉粒がほとんど 認められず果実が非常に少ないチガヤ群 落がみつかっています。そこは常に潮風 の影響を受け、時には直接海水がかかる こともあるような厳しい立地です。この ようなところでは、種子によって新しい 遺伝子をもつ個体をつくりだすよりも、 定着した親固体と同じ遺伝子型を広げて いく方が効率的です。花粉をつくる代わ りに、より多くのエネルギーを根茎へ投資しているのでしょう。また、全国から集めたチガヤを 同じ条件のもとで栽培したところ、地上部の生育期間が短い北方のチガヤほど小型で、萌芽が遅 く出穂や地上部の枯死が早いことが認められています。

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14 このようにしてチガヤの群落は、南北に長く標高差の大きい日本列島の変化に富む気象条件や、 多様なかく乱、強酸性から弱アルカリ性・痩せ地・乾燥土壌から湿地に至るまでの土壌条件にも、 多様な遺伝的変異によって広く適応して、様々な特性をもつ群落をつくるのです。 今日では、チガヤは以前のように屋根ふきに利用されたり口に含まれたりすることはなくなり ました。その一方で、新たに「緑化植物」としての利用に期待が高まっています。垂直に立つチ ガヤのシュートは、繁茂しても光が地表に届きやすく、土壌が多湿にならないので土壌安定に効 果的です。発達した根茎は土壌をしっかりと縛 り土砂崩壊の防止に有効です。晩春は銀白色の 穂が波打って美観上からも好ましい草くさはらとな ります。こういった特徴から、とくにのり面で の緑化に適する材料として注目されています。 チガヤは地下に多くの養分を蓄えているため刈 り取り後の再生はきわめて速く、刈りこみに対 する耐性をもっています。チガヤ群落は放って おくと数年でススキなどの群落に移ってしまいますが、刈り取りや放牧のあるところでは安定し て群落を維持することができます。春から秋に 2~4 回刈り取ると、チガヤ優占の草はらになりや すいようです。 また、最近ではビオトープの素材の一つとしても注目され、葉の赤い変種「紅チガヤ」は園芸 用植物として利用されています。 チガヤは種子による散布、変異の多様さによる適応性、根茎による維持・拡大という巧妙な戦 略をもっています。これらの戦略からつくりだされるチガヤの生命力の強さ・たくましさゆえに、 疫病の災害をも屈服させることができるとの信仰があったのでしょう。チガヤが雑草として繁茂 した場合、除草剤でチガヤに有効なものがいくつかあります。しかし除草剤が利用できない場面 では、一度定着してしまったチガヤを駆除することは非常に困難といえるでしょう。チガヤの多 様な変異から、その防除行為に適応して、さらに防除困難な新しい系統が生まれる可能性もあり ます。その駆除に巨費を投じるよりも、その生態的機能を最大限に利用する方が賢明であるとも いわれています。しかしチガヤを利用しようとする場合も、利用する場所や管理法など、雑草化 防止を予め念頭におくことがとても大切です。利用するにしても防除するにしても、チガヤの特 前田純氏(京大雑草研)提供

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性を十分に踏まえることで、チガヤと上手につきあっていくことができるでしょう。

参考文献

Holm, L.G., Plucknett, D.L., Pancho J.V. and Herberger, J.P. 1977 Imperata cylindrica In “The World's Worst Weeds”. University Press of Hawaii, Honolulu.

伊藤操子・森田亜貴.1999 チガヤ.地下で拡がる多年生雑草たち. (伊藤操子編).京都大学大学院農学研究科 雑草学分野,pp.60-62

小西真衣・伊藤操子・冨永 達.2004 日本産チガヤ(Imperata cylindrica (L.) Beauv.)ののり面緑化植物とし ての特性の系統間比較.日本緑化工学会誌 30;421-427 松村正幸.1997 イネ科主要在来野草の個生態 12~14.畜産の研究 51:1036-1246 楢原恭爾.1965 チガヤ.日本の草地社会,養賢堂,東京. pp.106-111. 桜井満.1994 茅の輪.万葉春秋-万葉びとの歳時記 ,おうふう,東京.pp.125-134 冨永達.1997 チガヤの生活史特性の分化.山口裕文編著「雑草の自然史—たくましさの生態学—」,北海道大学 図書刊行会,札幌,pp. 141-149. 富永達.2003 日本産チガヤの特性とその利用の可能性,芝草研究 32(別):45-51 冨永達.2007 日本産チガヤの生態とその利用に関する総合的研究.雑草研究 52:66-71 . 冨永 達・ 西脇 亜也・ 水口 亜樹・ 江崎 次夫.2007 雑草モノグラフ 5.チガヤ(Imperata cylindrica(L.) Beauv.).雑草研究 52:17-27 . 山田卓三・中嶋信太郎.1995 万葉植物事典-万葉植物を読む.北隆館

参照

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