フィリピンの理数科教育と二重言語政策
教科・領域教育専攻 自然系(理科)コース 横 山 修
【はじめに】:授業は教師と生徒がさま ざ ま な 行 為 を 通 じ て 作 り 上 げ る 創 造 物 である。その行為とは、話す・聞く・読 む・書く、そして理科では実験や観察が 加わる。これらの行為のどれか一つでも 困難な状態になれば、生徒の理解カに影 響を及ぼす。フィリピンでは英語とタガ ログ語が公用語であるが、英語は普段の 生活では使われず、英語能力の差のある
中 で 英 語 に よ る 理 数 科 教 育 が 行 わ れ て いる。この状況の中で、言葉・文字と授 業 の 理 解 度 の 関 係 を 調 査 し フ ィ リ ピ ン の 理 数 科 教 育 を 発 展 さ せ る 手 立 て を 考 察した。
【目的】フィリピンの理数科教育で行わ れている二重言語政策の調査より、理解 できる理数科教育の要素を探るo
【フィリピン言語の背景]
公用語はフィリピノ語と英語であるが、
母 語 と し て 使 わ れ る 言 語 は 、 合 計 172 に及ぶ(ワライ語,カパンパンガン語、
セブアノ語(ビザヤ語)、タガログ語(フ ィリピーノ語、フィリピノ語、フィリピ ン語) )などこれらは、ほとんど意志の 疎通が図れないほどの違いがある。
1571年にはスペインの領土になり、
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指導教員 小津大成
1899年のパリ条約によりアメリカの統 治および植民地化が始まることにより、
フ ィ リ ピ ノ 語 は ス ペ イ ン 語 と 英 語 の 影 響を受ける。
【フィリピン初等教育の背景】
フィリピンの初等教育では 1974年よ り、小学校 3年生から理数科では英語に よ る 授 業 が 行 わ れ て い る ( 二 重 言 語 政 策・・・英語、理科、数学は英語で、そ の 他 の 教 科 は タ ガ ロ グ 語 ) 。 一 方 TIMSS (第4回 2003年)による理科の 成績では、小学校4年生で、 25地域中 23位、中学校2年生(第3回1999 年)で、 38地域中 35位、第 4回 (2003 年)では 45地域中 42位となっており、
フ ィ リ ピ ン 児 童 生 徒 の 理 科 能 力 は 低 迷 している。
【調査方法】
「現地事前調査j
‑生徒へのアンケートを実施し、理科能 力と英語能力を把握した。また、教師 へのアンケートにより、英語での理数 科教育の実態を知った。
「文章言語の違いによる比較調査j
‑理科の問題をタガログ語で質問した 場合による効果、または弊害をアンケ ート!こより調査した
・日本の生徒との理科及び英語の成 績を比較した。
「教授言語の違いによる比較調査」
‑理科の授業をタガログ語で行う事に よる効果、または弊害をアンケートによ り調査した。また、実験を多く取り入れ る事で授業の理解度を補助する効果 を検証した。
【結果】
フ ィ リ ピ ン 教 師 の ア ン ケ ー ト 調 査 の 結 果、英語による理数科教育は、教える媒 体として受け入れられ、タガログ語では 表 現 困 難 な 語 句 や 現 象 を 表 現 す る 際 に 役立つているが、英語が理解困難な生徒 に は 障 害 と な っ て い る 事 も 把 握 し て い るが、グローバルな立場から英語で教え る 事 の 意 義 を 唱 え て い る 回 答 も 多 く 見 受けられた。 3回の調査の結果、タガロ グ語での質問は有効であったが、授業で 使 用 す る 言 語 を タ ガ ロ グ 語 で 置 き 換 え た場合は不明瞭な結果になった。ただ、
普 段 は 許 可 さ れ て い な い タ ガ ロ グ 語 で の 質 問 や 意 見 交 換 を 行 う 事 に よ っ て 授 業は活発になった。タガログ語の授業を 受 け た 生 徒 に 挙 手 に よ る ア ン ケ ー ト を 千子ったところ、授業に使用する言語を英 語だけ、またはタガログ語だけの授業で なく、両方の言葉を使った授業を生徒の 多くは望んで、いた。また、実験を行った
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り、結果を表で再確認する事で、生徒の 理解を深めることができた。
【考察】
フ ィ リ ピ ン で は 英 語 が 公 用 語 と し て 位置づけられているが、母国語でないフ ィ リ ピ ン 人 の 英 語 能 力 の 高 さ の 要 因 の ー っ と な っ て い る 英 語 に よ る 理 数 科 教 育は、英語能力が低い生徒にとっては授 業を理解する際に障害となっている。た だ¥知識理解力は日本の生徒と比べて同 じレベルであるが,授業の進め方で生徒 に 考 え さ せ る 時 間 的 余 裕 と 教 育 方 法 が 不足しており、カリキュラムの多さと難 しさの影響で、理科で最も重要な科学的 思考力の育成が懸念された。一方日本の 理科教育は,上記に述べた好環境に加え,
学 習 指 導 要 領 な ど で の 一 貫 し た 指 導 内 容、教師の研修制度,ゆとりのあるカリ
キ ュ ラ ム な ど に よ り 未 だ 世 界 的 に 高 水 準を保っているが、フィリピンの教師の意 識にあった急速な国際化の進展への対応が行 われているとは言い切れない。全世界で科 学 を 共 有 す る 媒 体 と し て 英 語 が 位 置 づ けられている今、英語は科学に携わる者 に と っ て 益 々 重 要 な ア イ テ ム に な る 傾 向が強いため、日本の科学者が流暢な英 語を使えるような教育を準備する際,フ ィ リ ピ ン の 理 数 科 教 育 が 参 考 に な る だ ろう.