圃 前額皮弁による内眼角の再建 一 皮弁の thinning を行った 2 例 ‑
原 田 浩 史 長 江 浩 朗
小松島赤十字病院形成外科要 旨
腫蕩の切除後に生じた内眼角の組織欠損に対して、前額皮弁による 再建を行った。従来この方法では皮弁の厚さのた めに整容的に問題があり、 二次修正術が必要とされてきたが術中に皮弁の先端を t h i n n i n gし薄い皮弁を移植すること によって良好な結果が得られた。Thin f l a pは近年ほぼ確立された手技であり、薄い組織が必要な部位の再建には 非常に有効な方法であると考えられる 。
キーワード:
Thin f l a p 、内眼角、前額皮弁
はじめに
内眼角の再建には種々の方法があるが、皮膚が非常 に薄く立体的な部位であるため、整容的に満足のいく 再建は困難な ことが多い。今回、正中前額皮弁の先端 を薄くした状態で用いて内眼角を再建し、良好な結果 が得られたので報告する 。
症 例
症例 1: 7 9 才、女性。平成 8 年 2 月頃、左内眼角 鼻 根部にかけて黒色でやや隆起した腫壊が出現、次第に 増大したため当科を受診し た (F i g .1 ) 。基底細胞癌 の診断で平成 8年 5月2 7日手術をおこなった。腫療の 周囲から 5m m 離して眼輸筋上で切除したところ長径 約20mm の楕円形の皮庸欠損となった (Fig.2) 。正中 前額皮弁による再建を計画、内眼角にあたる部分の皮 膚を thinningして皮下組織をほとんど含まない厚さ で欠損部に移植した (Fig.3) 02 週間後の 6 月 1 2 日に 皮弁の切り離しをおこなっ た。術直後は腫脹してやや 膨隆し ていた皮弁はほどなく 平坦化し、術後約 l 年半 の現在内眼角は良好な形態を保っている (Fig.4) 。
症例 2: 7 1 才、男性。平成元年頃から右内眼角に黒色 斑が出現、次第に大きくなったため 当科を受診した
5 2 前額皮弁による内限角の再建 皮弁のt h i n n i n g を行った 2
例(Fig.5 ) 。基底細胞癌の診断で平成 9年 2 月 5日手術 をおこなった。腫療は上下眼臓にかかるものの、眼験 結膜、涙小管は保たれていた。腫虜ーから約 5 m m はなし て切除、直径約 30mm の欠損となった (Fig . 6 ) ため内 側を正中前額皮弁、外側を上、下眼│除からのV‑y前 進皮弁で再建した (Fig . 7 ) 。前額皮弁の内眼角にあ たる部分は症例 l と同様に t h inning をおこない、ほ とんどの皮下組織を切除して移植、 2 月 1 9 日に皮弁を 切り離した。全経過を通じて植皮の際に見られる様な 色調の変化や腫脹はなく、術後約 8 ヶ月の現在良好な 形態を保っている (Fig . 8 ) 。
考 察
眼!除は全身の皮脂の中で最も薄い部位のひとつであ るため、その再建には 当然ながら薄い組織の移植が要 求される問。特に内眼角においては三次元的な要素が 加わるため、整容的に満足できる再建が得難いことが 多い 。
前額皮弁
3)は眼寓上動脈、滑車上動脈を栄養血管 と する 主軸型皮弁で、血行が保証された安全な皮弁のひ
とつであり、内眼角の大きな欠損や上下眼険にまたが
る複雑な形の欠損にもデザインを工夫することによっ
て利 用できる。欠点は手術が二期にわ たること、 皮弁
が厚すぎる こと などが挙げられ、眼脆に使用するには
従来は 二次 的 に 皮 弁 を 薄 く す る 手 術 が 必 要 と さ れ
Komatus him a Red C r o s s H o s p i t a l M e d i c a l J o u r n a l
てきた I P
一方近年の皮弁に対する研究、 開発の進歩によって、
再建外科は単に被覆するのみならず健常な状態により 近い再建が要求されるようになってきた。その流れの 中で皮弁の厚さの問題に対する解決策として、 t h i n f l a pというひとつの新しい概念が生まれた刷。 これ は皮下脂肪層をほとんど含まず、主軸化 ( a x i a l i ‑ z a t i o n ) された皮下血管網のみで栄養される薄い皮弁 である 。皮下血管網は本来 ran d om な血行であるが、
皮脂穿通枝と連続したひとつの血行系として主軸化す るという考え方で、少量の筋体をつけた筋皮弁の皮膚 穿通枝を利用した薄層拡大筋皮弁 ( t h i nextended
( F i g 1 ) p r e o p e r a t i v e view
( F i g 2 ) round ‑ d e f e c t on t h e medial c anthu s
VOL.3 NO.1 MARCH 1 9 9 8
muscloc u taneo u s f l a p ) として広背筋皮弁
6)、腹直 筋皮弁7 )などがほぼ確立され臨床応用されている 。
今回利用した前額皮弁も、主軸動脈の皮膚栄養枝が、
薄くした先端部の皮下血管網に十分な血流を供給した と考えられ、 全層植皮の際に見られるような術直後の 色調の変化はなく、全経過を通じて皮弁の色調は正常 色のままであった。
従来移植した皮弁を薄めるために二次手術が必要と されてきた前額皮弁による内眼角の 一 再建 に 、 t h i nf l a p の概念を利用した今回の再建方法は有用であると思わ れた 。
( F i g 3 ) recon s t r u c t i o n with a t h inned forehead f l a p
( F i g 4 ) 1 year a f t e r recon s t r u c t i o n
前額皮弁による内眼角の再 建
53
一皮弁のt hinning
を 行 っ た2
例一( F i g 5 ) b a s a l c e l l carcinoma o f t h e medial canthus
( F i g 6 ) d e f e c t o f t h e r i g h t upper and l o w e r e y e l i d c o n t i g u o u s w i t h t h e medial canthus
文 献
1)小川豊:眼験の基底細胞癌の手術.形成外科 4 0:
3 ‑ 1 3 , 1 9 9 7
2 )小} 1 1 豊 :内眼角形成および外眼角形成. 一色信彦 編「ア トラス 眼の形成外科手術書
j, P 1 3 0 ‑ 1 5 , 1 金原出版,東京, 1 9 8 8
3 )安田幸雄 : 顔面、頚部の皮弁.塚田貞夫編 「有茎 植皮術
j, p 7 5 ‑ 9 4 ,克誠堂出版,東京, 1 9 8 8 4 )高建華, 百東比古,秋元正宇他: 超薄皮弁の経験.
5 4
形成外科 3 5 : 1 0 9 7 ‑ 1 1 0 3 , 1 9 9 2
前額皮弁による内眼角の再建 皮弁の