Macroglossia in advanced amyotrophic lateral sclerosis
著者 Matsuda Chiharu
journal or
publication title
Muscle & nerve
volume 54
number 3
page range 386‑390
year 2016‑09‑30
その他のタイトル 進行した筋萎縮性側索硬化症の舌肥大
学位授与機関 首都大学東京
学位授与番号 22604A713
URL http://hdl.handle.net/10748/00008653
doi: http://doi.org/10.1002/mus.25058
博士学位論文審査の要旨
【学位論文審査の要旨】
筋萎縮性側索硬化症 (amyotrophic lateral sclerosis; ALS)は、上位ニューロンとともに下位 運動ニューロンが障害され、全身の随意筋の筋萎縮・筋力低下をきたす疾病である。なか でも、呼吸筋障害により気管切開下陽圧人工呼吸(tracheostomy invasive ventilation; TIV)とと もに嚥下障害を有することから胃瘻の造設が必要となる。海外では、進行した
ALS
症例に おけるTIV
装着は医療費の観点から積極的に行われない状況であることから、進行したALS
症例の臨床症状、とくに、口腔機能及び舌の状況の報告は極めて少ない。報告された2例 の報告では、舌肥大を有し、舌生検により脂肪によるreplacement
と記載されている。申請 者は、看護師の資格を有し、進行したALS
症例に接する機会が多く、舌の肥大が口腔内の ケアの妨げになったり、肥大した舌のために歯列による舌の裂傷に気付いていた。そのよ うな背景をもとに、「Macroglossia in advanced amyotorophic lateral sclerosis (進行した筋萎縮性 側索硬化症の舌肥大)」について検討した。TIV装着下の65
例の進行したALS
症例(重篤 な心不全、肺炎、肝障害及び腎機能障害の合併がない症例)を対象に、舌肥大の頻度と舌 肥大の有 (+)無 (-)により臨床症状の関連を検討した。舌肥大の頻度は、22例 (33.8 %)に認めた。舌肥大(+)群では、舌肥大 (-)群に比し、発症年 齢や
TIV
装着時年齢が若く、発症からの罹病期間やTIV
装着期間が長く、ALS functionalrating scale
において重症度が高いことが明らかになった。さらに、body mass index (BMI)値 が高いにも拘らず、検査時の摂取カロリーは低値であった。多変量解析を行うと、舌肥大 に関連する因子は、BMIとcommunication impairment stages
であった。以上のことから、進 行したALS
症例の舌肥大はBMI
の観点から摂取カロリーが過剰であることが考えられ、communication impairment
はALS
自体の症状ではあるが舌肥大も加わったことによりcommunication impairment
の更なる増悪を招来しているものと思われた。この過剰摂取カロリーにより、舌への脂肪の
replacement
を起こしていることが示唆された。本研究結果は、進行した
ALS
症例の臨床症状の中で口腔ケアにおいて極めて重要な課題 を提示し、諸外国では見られない舌肥大を臨床症状と関連付けた極めて学術的意義の大き な論文である。さらに、進行したALS
症例の摂取カロリーの設定を見直す必要性とともに 世界的に科学的根拠をもってそのカロリーを設定すべき課題を投げかけている点でも学術 的意義は大きい。最終試験においても、口頭発表は明確に論点が絞られ、審査員による質疑も適切な応答 であったことから、当該領域において十分な見識を有していることを認めた。
以上のことから、本研究論文は博士論文に相応しく、松田千春氏に博士(健康科学)の 学位を授与するに値すると判断した。