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一 はじめに      3 その他の買収防衛策

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(1)

イギリスにおける買収防衛策をめぐる規制

矢 崎 淳 司

   目  次

一 はじめに      3 その他の買収防衛策

一一

Cギリスにおける買収防衛策の特徴      4 買付が競合する場合における取締役の義務

 ー イギリスにおける企業買収規制の特色       四 平時導入型の買収防衛策をめぐる規制

 2 買収防衛策に関する規制の概要       1 種類株式等の発行

 3 アメリカにおける買収防衛策との対比        2 友好的な第三者に対する新株発行

三 有事防衛型の買収防衛策をめぐる規制         3 防衛的な自己株式取得

 1 取締役会による反対意見の表明      五 おわりに

 2 ホワイトナイトの勧誘

イギリスにおける買収防衛策をめぐる規制       ︵都法四十六ー二︶ 二七七

(2)

二七八

一 はじめに

 ニッポン放送をめぐるライブドアとフジテレビによる会社支配権争奪戦などを契機に︑わが国でも敵対的買収や買

収防衛策に関して社会的な関心が高まっている︒わが国では︑これまであまりM&Aが行われてこなかったが︑二〇

〇五年上半期だけで一二八四件のM&Aが行われており︑年間件数が二千件を超えるような規模になってきている︒

また︑委員会等設置会社制度の創設︑株式持合構造の段階的解消︑株主利益を重視する考え方など︑従来の日本的な

企業社会の構造とは大きく異なる状況になってきており︑経営戦略としてM&Aを積極的に活用する時代に突入しつ

つあるといえる︒

 買収防衛策に関しては︑わが国では︑平成一三年の商法改正による種類株式制度の改正や新株予約権制度の創設な

どにより︑従来よりも多様な買収防衛策が可能となった︒また︑会社法現代化や証券取引法改正︑企業価値研究会の

企業価値報告書の公表と買収防衛策に関する指針の策定︑自民党経済調査会企業統治委員会による提言など︑買収防

衛策をめぐる議論が盛んである︒さらに︑ニッポン放送をめぐる支配権争奪戦や︑日本初のポイズンピルとして話題

になったニレコの新株予約権発行︑夢真ホールディングスの日本技術開発に対する敵対的な株式公開買付に対抗して

なされた株式分割につき︑司法判断が下されるなど︑わが国でもM&Aをめぐって大きな動きがある︒

 このようなM&Aをめぐる近時の動向を考えれば︑企業買収に関する法的インフラの整備が重要な課題であること

は疑う余地もないが︑わが国ではM&Aの経験が乏しいため︑M&Aの経験が豊富な欧米諸国の法制度を参考にしな

がら議論を進めていくことも必要である︒ただ︑M&Aをめぐる法制度には︑世界共通の基準があるのではなく︑そ

(3)

の国のM&A市場の動向や証券市場の成熟度等により︑各国の諸事情を反映した様々なものが存在する点には注意を

要する︒  アメリヵでは︑経営陣が自らの経営判断に基づき買収防衛策を講じることができることを前提に︑その適法性判断

に関する精緻な基準が判例法において構築されてきた︒これに対し︑イギリスでは︑株主の承認がなければ︑原則と

して経営陣は買収防衛策を講じることができない︒このように︑同じくコモンローの法系に属しながら︑買収防衛策

に関してアメリカと異なる規制を行うイギリスの法制度は︑比較法的考察の対象として興味深く︑かつ有益な示唆が

得られると思われる︒本稿は︑以上のような観点から︑イギリスにおける買収防衛策をめぐる規制の全体像を紹介す

るものである︒

ω  ﹃Marr﹄一三〇号︵統計とデータ︶六四頁︵二〇〇五年八月号︶︒

② 平成一七年六月二九日に新しい会社法が成立した︒新会社法では︑M&Aに関連する規定として︑合併対価の柔軟化︑簡易

 組織再編行為の範囲の拡大︑略式組織再編行為の創設︑合併差益が生じる会社との合併の承認︑新設会社を受け皿会社とする

 場合の規制の緩和︑強制転換条項付新株予約権付社債の創設を定めている︒新会社法におけるM&A関係の規制につき︑宮廻

 美明﹁会社法の現代化と組織再編の概要﹂商事法務一七三〇号四頁以下︵二〇〇五年︶等を参照︒

③ 企業価値報告書については︑庁§ミ綱綱≦目︒江σq︒旨\唱﹃①゜・°・鳶OOいO芯∨OOい\ω占︒鼻︒オ5ぎ占︒目§﹂9唱珪を参照︒買収防衛策に関

 する指針︵﹁企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針﹂︶については︑庁ξ⁝ミ≦を≦目Φ江o︒°七\

 肩゜°・°︒心OOいO芯ばOい\﹈1°・書巨づ〒ぎ目︷巴よ6昌烏を参照︒以上の他︑企業価値報告書および買収防衛策に関する指針については︑

 神田秀樹・日下部聡・村田敏一・武井一浩﹁︵座談会︶企業買収防衛策をめぐる法的論点と実務上の対応﹂商事法務一七ご二

 号四頁以下︵二〇〇五年︶︑武井一浩﹁企業価値研究会における買収防衛策の法的インフラ整備﹂商事法務一七三一号五一頁

 以下︵二〇〇五年︶︑日下部聡﹁企業社会における公正なルール形成を目指して1企業価値報告書と指針策定の問題意識1﹂

 商事法務一七三四号四頁以下︵二〇〇五年︶等を参照︒

イギリスにおける買収防衛策をめぐる規制      ︵都法四十六ー二︶ 二七九

(4)

二八〇

④ 自民党経済調査会企業統治委員会は︑M&Aに関する公正なルールの構築およびM&Aを促すための環境整備につき︑﹁公

 正なM&Aルールに関する提言﹂を発表した︒この提言につき︑商事法務一七︑二八号四二頁以下︵二〇〇五年︶を参照︒

⑤ ニッポン放送をめぐる支配権争奪戦については︑太田洋﹁ニッポン放送新株予約権発行差止仮処分申立事件決定とその意義

 ﹇上﹈﹇下﹈﹂商事法務一七二九号二四頁以下︑一七三〇号九頁以下︵二〇〇五年︶︑ニレコの新株予約権発行については︑商

 事法務一七三四号三七頁以下︑一七三五号四四頁以下︵一︑○〇五年︶︑夢真ホールディングスと日本技術開発の事案について

 は︑太田洋﹁日本技術開発の株式分割差止仮処分命令申立事件﹂商事法務一七四二号四二頁以下︵二〇〇五年︶を参照︒

ニ イギリスにおける買収防衛策の特徴

ー イギリスにおける企業買収規制の特色

 ω シティコードによる自主規制

 イギリスにおける企業買収規制の特色は︑テイクオーバー・パネル︵↓鼻8<臼㊥芦旦︵以下﹁パネル﹂という︶と

いう民間団体の監督の下︑パネルによって作成される﹁買収および合併に関するシティコード﹂︵ΩロOoユ︒8↓爵︒−        ㈲ ︒<︒ロ昌臼ζ2⑯Φ邑︵以下﹁シティコード﹂という︶に基づき︑自主的な規制が行われていることである︒アメリカ       ω では︑企業買収を直接に規制する連邦および州の制定法が存在する他︑企業買収に関する多くの判例の蓄積がある︒

これに対し︑イギリスでは︑自主規制機関であるパネルが作成したシティコードが︑企業買収規制に関する中心的な          ⑧ 役割を果たしている︒

 シティコードは︑企業買収に職業的に関与してきた者が企業買収を行う場面で妥当と考える実務の標準に関する意

(5)

見を集積したものであり︑企業買収の場面において株主が公正かつ平等に取り扱われることを保証し︑企業買収活動

の指針を提供することを主たる目的とする︒シティコードを施行するパネルは︑イングランド銀行︵仔゜切きWo︹団ロσq         一芦α︶により設立された機関であり︑そのメンバーは市場関係者から広く選出される︒シティコードは︑原則として︑        連合王国︑チャネル諸島またはマン島で設立された公開会社に関する公開買付に対して適用される︒

 パネルは民間の自主規制機関であり︑パネルの作成するシティコードには法的拘束力はなく︑何人に対しても法的       カ 義務を課すものではな冷︒しかし︑現在︑金融サービス・市場法︵市一口①PO一①﹂mWΦ﹃<一〇60◎①ロユプ︽㏄RオO︷o力>O︷NOOO︶一四三条

により︑金融サービス機構︵国ロ芦︒巨゜力oヨ8°・﹀旨﹃oユ⊇︶ ︵以下﹁FSA﹂とい・ユがシティコードを承認しており︑        シティコードに違反した場合はFSAによる制裁の対象となる︒        ゆ  シティコードは︑公開買付規制の理念に関する一〇の一般原則︵O︒g邑勺旨︒菅6・・︶と︑一般原則の補足および適

用を例示する三八の規則︵力巳Φ゜・︶から構成される︒規則には詳細な注︵Z︒︷6°・︶が付されている︒

 ② EUの企業買収指令との関係

 EUでは︑長年に及ぶ議論の末︑二〇〇四年四月二一日に公開買付に関する指令︵臣89<Φoご冨団烏oづ゜芦㊥邑宇       ぼ 目6旨芦ユ鳥日Φ百゜き巳8↓爵8<隅ヒd巨︶︵以下﹁企業買収指令﹂とい引︶が欧州議会の承認を経て採択され︑同年

五月二〇日に発効した︒企業買収指令は︑株式取得により会社の支配権を獲得しようとする者への公開買付の強制︑

公開買付中の対象会社の経営陣による買収防衛策の原則禁止および事前の防御策の効力停止︑ならびに公開買付成功

後の買付者による少数株主の締出権と少数株主の株式買取請求権などの内容を含むものであり︑比較法的にも興味深      ⑯ いものである︒

 企業買収指令は︑二〇〇六年五月二〇日までに︑各加盟国において国内法化することが要求されており︵企業買収

イギリスにおける買収防衛策をめぐる規制       ︵都法四十六−二︶ 二八一

(6)

︑一八二

指令二一条︶︑加盟国はそのための検討段階にある︒企業買収指令は︑EUにおける公開買付規制の最低限の基準を

定めるものであり︑国内法化された後も加盟国間の公開買付規制にはある程度の差異が生じることが予想される︒国

内法化にあたり︑加盟国は︑企業買収指令三条一項に掲げられた一般原則を最低限遵守することが要求される︒

 加盟国は︑公開買付を監督する機関を指定する必要があるが︵企業買収指令四条一項︶︑イギリス貿易産業省︵O︒−       ゆ 唱§日8︷o﹃⇒昆︒きO甘号゜・ξ︶︵以下﹁DTI﹂という︶は︑企業買収指令の国内法化に関する諮問文書において︑        ゆ パネルが引き続きイギリスの監督機関となり︑現行制度を前提に企業買収指令の国内法化を行うとしだ︒また︑バネ

       む      

ルも企業買収指令に関する説明文書を公表し︑指令の国内法化の際に必要なシティコードの改正点を指摘してい疏︒

2 買収防衛策に関する規制の概要

 イギリスにおいて︑買収防衛策に関する規制として主要なものは︑シティコードと一九八五年会社法︵∩○日官巳9

>・二〇°︒い︶︵以下﹁会社法﹂という︶である︒買収防衛策を直接に規制するのはシティコードであり︑会社法は買収

防衛策を直接に規制するわけではない︒しかし︑会社法には株主の権利保護の観点を中心とした規定が置かれてお

り︑買収防衛策の多くが株主の権利に直接および間接に影響を与えることから︑買収防衛策にも会社法の規定が適用

される︒  対象会社の取締役が買収防衛策を講じる場合には︑取締役の信認義務と取締役の個人的利益が相反する可能性があ       ⑫ ることから︑この点をどのように考えるかが問題となる︒企業買収の場面における取締役の信認義務に関する規定

は︑シティコードおよび会社法に存在するが︑特にシティコードはこの点に関する具体的な規定を置いている︒以下

では︑企業買収の場面における取締役の信認義務の観点から︑買収防衛策に関するシティコードおよび会社法の主な

(7)

規定につき概観する︒

 D シティコード

 ①一般原則第四および規則三条

 株主には︑適正な情報に基づいて判断できるよう︑十分な情報︑助言および時間が与えられなければならない︒ま

た・対象会社の取締役は︑いかなる公開買付に関しても︑独立した立場の者からの助言を求め︑その内容を株主に対

して伝えなければならない︵規則三・一条︶︒

 ②一般原則第七および規則二一条

 真正な︵Oo目①口合︶公開買付が対象会社の取締役会に伝えられるか︑対象会社の取締役会が真正な公開買付が間際

に迫っていると信じるのが相当な理由を有するにいたった時点以降は︑対象会社の取締役会は︑株主総会の承認な

く・真正な公開買付に対抗し︑またはそのメリットにつき株主が判断を下す機会を奪うことになり得る措置を一切講

じることはできない︵一般原則第七︶︒これは︑取締役の中立義務とも呼ばれる︒この一般原則第七を補強するのが

規則二一条であるが︑特に二一・一条は︑公開買付期間中︑あるいは公開買付の開始以前であっても対象会社の取締

役会が真正な公開買付が間際に迫っていると信じるのが相当な理由を有する場合には︑以前に締結された契約に基づ

く場合を除き︑対象会社の取締役会が株主総会の承認なく講じることができない措置として次のものをあげる︒

 ⑧ 未発行の授権株式の発行や金庫株の移転または売却︑移転または売却の合意

 ㈲ 未発行株式に関する発行または授与︵oq§白﹇︶

 ㈲ 株式への転換権または新株引受権付きの有価証券の創設もしくは発行︑またはかかる有価証券の創設もしくは

  発行の許可

イギリスにおける買収防衛策をめぐる規制       ︵都法四十六ー二︶ 二八三

(8)

二八四

 ㈲ 高額の資産の売却︑処分もしくは取得︑または売却︑処分もしくは取得の合意

 ㈲ 通常の業務遂行とはいえない契約の締結

 このように︑真正な公開買付がなされるか︑それが差し迫ったものとなった以降は︑対象会社の取締役が買収防衛

策をとることは一般原則第七および規則二一条により厳しく制限される︒しかし︑買付会社が規則一=条の適用を免

除する場合は︑パネルは株主総会の承認の要件を免除するのが通例である︵規則二一条・注一︶︒

 ③ 一般原則第八

 会社の支配権は誠実に行使されなければならず︑少数株主の抑圧は一切許されない︒

 ④ 一般原則第九

 株主に対して助言する際︑買付者および対象会社の取締役は常に取締役の立場で行動すべきであり︑個人的な持分

または家族の持分や︑会社との個人的関係を考慮してはならない︒取締役は︑株主に対して助言する際︑従業員︑債

権者の利益と共に株主全体の利益を考慮しなければならない︒対象会社の取締役は︑株主に助言をする自由が将来制

限されうる合意︵否O日日一↑日OO房︶を買付者と結ぶ前に十分に考慮すべきである︒かかる合意は利益相反を引き起こし︑       づ 取締役の信認義務違反となる可能性があ勧︒

 ② 会社法

 ① 四五九条

 少数株主が不公正な取り扱いをうけた場合の救済につき規定する︒株主は︑会社の業務が株主全体の利益または一

部株主の利益に対して不公正かつ不利益な方法で行われているとか︑会社の実際の作為もしくは不作為または提案さ

れた作為もしくは不作為が不利であるという理由に基づき︑裁判所に四五九条から四六一条の救済命令を申し立てる

(9)

ことができる︒

 ②三〇三条

 定款または会社・取締役間の契約で取締役の任期が定められている場合であっても︑会社は普通決議により取締役

を任期終了前に解任することができる旨を規定する︒この場合には︑少なくとも二八日前に事前の通知がなされる必

要がある︒取締役は株主であると否とに関わらず︑株主総会において意見を表明でき︑取締役は会社に対して各株主

に取締役の説明文書を送るよう請求できる︒取締役が解任された場合には︑賠償金︵OO日唱O目o◎①江Oβ︶が支払われる︒

この点については三一二条から三一六条が規定する︒

3 アメリカにおける買収防衛策との対比

 ω 買収防衛策の適法性に関する判例法       ⑭  アメリカでは︑制定法上︑取締役には経営に関する広範な権限が与えられており︑取締役はこの権限に基づいて買

収防衛策を講じることができる︒対象会社の取締役が買収防衛策を講じる場合には︑企業買収を通じてプレミアムを

獲得する株主の機会が奪われる可能性もあるため︑買収防衛策を一律に禁止することも考えられる︒しかし︑アメリ

カでは︑取締役は自らの経営判断に基づき︑有事または平時において買収防衛策を講じることができ︑ほとんどの買

収防衛策には株主の承認は要求されない︒ただ︑買収防衛策を講じる場合︑取締役には先鋭な利益相反の状況が生じ

るため︑その経営判断の是非を判断する際の基準として︑かかる利益相反を考慮した﹁中間的基準﹂と呼ばれる判断        ⑳ 枠組みが判例法において構築されてきた︒

 これに対し︑イギリスでは︑シティコード一般原則第七および規則二一条からも明らかなように︑対象会社の株主

イギリスにおける買収防衛策をめぐる規制       ︵都法四十六ー二︶ 二八五

(10)

二八六

が最終的に敵対的買収の成否を決定するのであって︑対象会社の取締役はそのような株主の選択を妨げることはでき

ない︒また︑シティコードの自主規制的な性質もあってか︑公開会社に対する敵対的買収に対抗してとられた取締役

の行為の適法性に関する判例が少なく︑アメリカのような判断枠組みが判例法において構築されてきたとはいえな

迦゜ し

 ② 買収防衛策の制限

 アメリカでは︑対象会社の取締役は自らの経営判断に基づいて買収防衛策を講じることができ︑ポイズンピルや       ㈲ シャーク.リペラント︵︒・庁閂︻δ廿巴︒巨︶等の様々な買収防衛策が存在する︒しかし︑イギリスでは︑シティコードの

一般原則第七および規則二一条により︑真正な公開買付が間際に差し迫った後は︑株主の事前の承認がなければ︑対

象会社の取締役は買収防衛策をとることができないとされているため︑対象会社の取締役が自らの判断に基づいて買

収防衛策を講じることができない︒このため︑アメリカでは一般的な買収防衛策がイギリスでは利用できない場合が

あり︑実務上︑アメリカよりも買収防衛策が制限されているといえる︒

 例えば︑アメリカで最もポピュラーな買収防衛策であるポイズンピルは︑株主の事前承認がなくても採用できる点        ⑳ において非常に効果的であるが︑シティコードの一般原則第七および規則二一条により︑イギリスでは株主の事前の

承認が要求されるため︑アメリカのようなポイズンピルを採用することができない︒また︑シャーク・リペラントに

ついても︑アメリカでは利用できるがイギリスでは利用できないものもある︒例えば︑期差任期取締役制度︵°・声︒︒︒︒鶴9

ぴo碧工︶や累積投票制度の導入︑ならびに﹁理由のある場合のみ︵o己∨日85︒︶﹂取締役を辞任させることができる

条項等を基本定款に予め挿入しておくことはアメリカでは一般的であるが︑このようなシャーク・リペラントはイギ

リスでは利用できない︒会社法三〇三条は︑株主は普通総会において﹁理由ある場合または理由なぐ﹂取締役を辞任

(11)

させることができると規定しているが︑これらのシャーク・リペラントは同条の株主の権利を侵害するおそれがある     ⑳ からである︒       倒  さらに︑アメリヵでは︑各州で敵対的買収を退ける効果を有する反企業買収法が存在するが︑イギリスではこのよ

うな類の制定法は存在しない点も︑イギリスにおいて買収防衛策が制限されている事実を示すものといえる︒

 ③ 戦略的な訴訟提起の制限

 アメリカでは︑対象会社が敵対的な買収者に対し︑州および連邦の証券取引法や独占禁止法で要求される手続要件

や開示要件に違反していることを理由に訴訟を提起することがしばしば見られる︒対象会社による訴訟提起は︑予備

的差止めによる救済を得て結果的に公開買付の進行を遅らせることを主たる目的としており︑敵対的な公開買付を妨

害しようとしている点において対象会社の防衛戦略の一つといえる︒対象会社は︑このような戦略的な訴訟提起を行        ⑪ うことにより︑他の買収防衛策を実施したりホワイトナイトを探したりする時間を稼ぐことが可能になる︒

 これに対し︑イギリスでは︑買収を妨害する効果を持つ訴訟提起に対しては︑裁判所もパネルも従来から消極的な

立場をとっており︑対象会社が敵対的な公開買付に対抗するために訴訟を提起する土壌が形成されているとはいえな       .    02 い︒例えば︑一︶旨まa臼団巨9ζらく°臼958臼市旨庁u目8≦⇒﹇a°事件判決では︑公開買付の進行を妨害する差止請求

がなされたが︑裁判所は︑そのような差止請求自体がシティコードの一般原則第七に反するものであると判示した︒

パネルも本件判決後に声明を出し︑買収を妨げる効果を持つ訴訟の提起に反対であることを強調したうえで︑訴訟を       カ       ね      ア 提起する場合は予めパネルに相談すべきであるとしている︒また︑パネルの活動は司法審査に服するとしながらも︑

裁判所の司法審査の範囲は狭く︑パネルの自主規制的なシステムの実効性を阻害することは許されないとする判例が

 や       ロ ヨ       ほ

あ勘︒その後︑パネルは︑公開買付を妨げる目的での訴訟提起は制限されるべきであるとする声明を出したが︑敵対

イギリスにおける買収防衛策をめぐる規制       ︵都法四十六ー二︶ 二八七

(12)

二八八

的な買収者に対抗するためのロビー活動はシティコードの一般原則第七に違反するとはいえないとする声明も出して  ㈹ いる︒

㈲ シティコードは︑一九五九年に発表されたシテイノート︵Z2︒︒︒8>日己窓日呂8︒︒o﹁oロ量︒︒=o目ロ・・日o°・㊤︶に起源を有する︒第二

 次世界大戦後︑公開買付による企業の支配権取得をめぐる事例が多発していたが︑当時のイギリス政府当局は企業買収の行為

 につき中立的な立場をとっており︑経済界でも企業買収は会社財産を効率的に運用する有益な契機になると受け取られてい

 た︒政府当局や経済界が問題にしためは︑企業買収の是非ではなく︑企業買収のための善良な行動基準の準則の必要性であっ

 た︒このような背景からシティノートが作成された︒シティノートはその後改正され︑一九六八年にシティコードとして登場

 することになる︒シティノートにつき︑田邊光政・坂上真美﹁イギリスにおける株式公開買付の法規制ω﹂インベストメント

 四四巻二号︵一九九一年︶を参照︒

⑦ 連邦法レベルでは︑一九三四年証券取引法を改正したウィリアム法︵≠<一﹈=①ヨ>9︶が一九六八年に制定された︒同法は︑ア

 メリカにおける公開買付規制の基礎となる制定法であり︑投資家保護の観点から十分な開示がなされるよう様々な実体的およ

 び手続的要件が定められている︒州法レベルでは︑濫用的な敵対的買収による弊害の発生を抑止するため︑各州において様々

 な立法対応がなされている︒近時におけるアメリカの州法レベルの企業買収規制につき︑太田洋・今井英次郎﹁米国各州にお

 ける企業買収規制立法の最新状況﹇上﹈﹇下﹈﹂商事法務︑七二二号三五頁以下︑︑七二三号三八頁以下︵二〇〇五年︶を参照︒

㈲ パネルによる自主規制の利点は︑企業買収の問題点に対し︑状況に応じた柔軟な対応が可能であることや︑シティコードの

 理念である正義および公正が実現できることにある︒また︑シティコードは比較的容易に修正できるため︑状況の変化に対応

 できるし︑時間と費用のかかる裁判手続も回避することができる︒このようなことから︑一九六八年の設立以降︑パネルは最

 も効果的な自主規制⁝機関と賞賛されている︒栖爲g力宕菩9民⑦自o〒°︒一置Pζ団閃0団閃゜︒>ZO弓﹀臣O<団男゜力︻Z↓工団ζ゜り>ZOご内↑2

 §△即e﹇︷8︵O×甘a°NOOω︶㊨讐いOいーいO◎°

G 甘胃o合已9δ58日oQ↓∨OoOP廿閂ロ一︵①︸

  シティコードの規定については︑主に以下の文献の該当箇所を適宜参照した︒≦︒日げ自σqきらOd庁鼻8↓爵O︒<︒ロ目ら家巽oq︒﹃°︒

 廿§②︵の綱06﹇臼ζ艮≦o戸﹄旨゜8Sご﹀勺日oS80﹁.︒・○已ユ①8仔oΩせ∩oα08↓集8<oロ芦Oζo﹃σq2°︒80い\N8ひ︵Ω受簿国⇒昌o巨

(13)

 曽庄恰臣ロ⑰q°NOOい︶°

oo @吻災oo三宮20口冨∩o目唱琶∨↑岱綱○已庄6︵鼻日9°︶°巴ωひ︒︒°

⑪ 甘胃oOξ江o昌8書oΩ﹇∨ひoOPで曽曽や︵旬∀

02 @甘胃o合合88日oΩせ∩90も自陣﹂︵o︶§○ミq這⇔さ◎§§馬ひ9叉6<団ミ已⇔ミ§︑㎏§﹃トミ・ロ8二〇dO↑百一く︒︒二⊃rO>・

03 @シテイコードに違反した者に対する制裁には︑私的もしくは公的な非難︑DTI︑証券取引所︑FSA等の規制当局に対す

 る違反者の行為の報告などがある︒浄二葺o合昌88仔︒Ω喝Oo9も碧①ω︵●︶°

04 @本稿では︑買収防衛策に関するシティコードの一般原則につき︑必要な箇所において適宜紹介するに止める︒シティコード

 の一般原則全般については︑主に以下の文献を参照した︒﹀勺日9巨o口巽︑°・○巨合8日゜Ω⊇百o合o目吋爵8<°臣昌Oζo日o冨NOOい\

 NOO9°︒已買①ロ08②゜

 EUの企業買収指令につき︑北村雅史﹁EUにおける公開買付規制﹂商事法務一七三二号四頁以下︵二〇〇五年︶︑末岡晶子 08 @0ぎ9︿oNOOミロ\団Oo吟仔o団烏oη昌勺邑●日Φ邑①且oご冨百80巳o﹃N一﹀唱巳80や8﹃爵8<o﹃oθ達︒・°O﹃﹇一芯三〇・昏8宝唱・声N

 ﹁EU企業買収指令における敵対的買収防衛策の位置づけとTOB規制﹂商事法務一七三三号三四頁以下︵二〇〇五年︶を参

 照︒ ⑯ 北村・前掲注︵15︶四頁︒

⑰ 企業買収指令の一般原則については︑末岡・前掲注︵15︶三五頁を参照︒

⑱ 弓庁oO唱§日o巨o㌣弓﹃芦o呂△甘O已︒・5百o目廿芦∨﹇ρ≦︼日巳6日昌§日50=庁o団烏o需芦一︼お合く08弓畏8︿2目o巳︒︒﹀︹8︒︒巳§芝o

 OOO已日0巨﹈騨田゜NOOい.

㈲ 句災↓庁oO呂§日o巨亀弓日○①呂○甘05︷q三題日s︷Φ一︒︒寸℃碧pドS

 ⑳

@昌⑦﹃爵8<自㊥き9島o団自o唱o芦O片oo江く08↓呉60<9bo己︒・°NOOO\一〇°

⑪ 例えば︑企業買収指令の一般原則は︑シティコードの一般原則と基本的に似ていることなどから︑現行のシティコードの一

 般原則に代えて企業買収指令の一般原則を採用することが提案されている︒取締役の中立義務については︑現行のシティコー

 ドの一般原則第七および規則二一条が詳細な規定を置いているが︑企業買収指令の一般原則に代わることに伴い︑規則一=条

 の改正が必要になる︒已爲↓冨吋爵8<9㊥⇔匡三已弓目ロ9ΦN⇔巳一ひー一︒︒ふNlN﹈.イギリスにおけるその他の企業買収指令の施行

 に向けた動きについては︑末岡・前掲注︵15︶四五〜四六頁を参照︒

イギリスにおける買収防衛策をめぐる規制       噛        ︵都法四十六ー二︶ 二八九

(14)

二九〇

⑳ イギリスでは︑取締役は会社に対して信認義務を負うものとされ︑取締役は会社の利益になると信じるところに従って行動

 しなければならず︵ぴ05陣問ユOゴ﹄一〇︶︵以下﹁最善行動ルール﹂という︶︑その権限を定款または制定法によって認められた適正

 な目的のためにのみ行使しなければならないとされる︵買o唱Φ﹃宅弓o°・︒ユo臼︸︒︶︵以下﹁適正目的ルール﹂という︶︒

⑳ 株主に助言をする自由が将来制限されうる合意とは︑対象会社の取締役会が︑買付者が特定の価格または条件で買付できる

 ようにするため︑対象会社の株主の承認が得られるよう当該買付を株主に勧めることを合意したり︑対象会社の株主の承認を

 保証するために﹁最善の努力︵σOo乃↑05工O恥くO﹃︶﹂をすることを合意したりするのが典型的である︒しかし︑状況が変わった場合︑

 対象会社の取締役会はこのような合意を撤回して会社の利益のために行動することができる︒

04 @例えば︑デラウェア一般会社法一四一条は︑取締役は経営を行う権限を有すると規定し︑取締役はこの権限に基づき買収防

 衛策を講じることになる︒アメリカでは︑企業買収に対抗する権限は︑まず対象会社の取締役に存在し︑企業買収を通じてプ

 レミアムを獲得する株主の権利は︑買収防衛策を講じる対象会社の取締役会の経営判断に服すると考えられており︑対象会社

 の取締役は︑自らの経営判断に基づき︑有事または平時における買収防衛策を積極的に講じることができる︒そして︑ポイズ

 ンピル等のほとんどの買収防衛策は︑株主の承認なく講じることができる︒

⑳ アメリカでは︑経営陣の行為は︑取締役の利益と会社および株主との利益が衝突する危険性のあるものと︑そのような危険

 性のないものに分けられ︑前者は厳格な﹁本質的公正さの基準︵°・§ユ碧○︒ご巳口区︒合一∋9°・︶﹂によって審査され︑後者は経営

 判断原則による合法性の推定を受けることになる︒敵対的買収に対する買収防衛策の合法性は︑本質的公正さの基準と経営判

 断原則との中間に位置する程度の厳しさを備えた基準により審査されるため︑﹁中間的基準︵巨o日o合騨δ゜・声且碧烏︶﹂ないしは

 ﹁高められた経営判断原則︵o呂き8qσ匡白︒°・°・甘工σ︒・日︒旦三〇ごと呼ばれている︒以上︑品川知久﹁米国における敵対的企業買

 収の防衛策と取締役の責任﹇上﹈﹇中﹈﹇下﹈﹂商事法務︑︑一︑.八号一五頁以ド︑=︑︑一九号一〇八頁以下︑一二三一号三三頁

 以下︵一九九〇年︶︑拙稿﹁デラウェア州判例法における企業買収の場面での取締役の信認義務﹂法学雑誌四四巻二号一一八

 頁以下︵一九九八年︶を参照︒この点に関する先例として︑ユノカル事件判決︵S災ミ9ミペミD亀︑災S〜§§Ooこ芯ω﹀°N亀

 ②ま︵﹇︶O一令 一⇔o◎い︶︶が有名である︒

⑳ このようなアメリカとイギリスの異なる企業買収規制に対する考え方は︑それぞれの国における会社法の展開が異なってい

 ることにも原因がある︒アメリカでは︑州の制定法が会社内部における権限分配を厳格に規定しているのに対し︑イギリスで

 は︑会社法が契約法およびパートナーシップ法の原理にそのルートを有しているため︑株主間の契約︵①σq器①∋︒邑がない場合

(15)

 の会社の構造を定める規定が多く存在する︒吻90︒≦︒□曽ミひ︒ミ§旨忠ミ恥§㎏︑ミき§⇔﹄§o︑膏§9這︒ミ〜§忠きひ②エ§°

 r閃0<°一ωひぷ一ω司N︵一②いひ︶°

助 シャーク・リペラントとは︑買収者がその意欲をなくすような条項を基本定款等に予め挿入しておくものであり︑アメリカ

 の買収防衛策として代表的なものである︒その他︑対象会社と友好関係にある会社︵以下﹁ホワイトナイト﹂︵≦庁︷8巨︷o︒ゴ↑︶

 という︶が敵対的買収者と競合して買収を試みる場合には︑ホワイトナイトに対して便宜を図る旨の対象会社およびホワイト

 ナイト間の取引であるロック・アップ︵一〇︒〒毛︶︑買収者にとって魅力的な対象会社の財産であるクラウンジュエル︵︒δ宅︒

 ﹂・≦旦を売却して買収者の意欲を失わせるなどの方法がある︒吻需閃゜げ゜旨綱゜出岱日声ぎPOO閃㊥○カ﹀目OZ°り芝○巨ごO芝O勺﹀閃司−

 Z団声oり出一勺o力>Z﹈︶↑一﹈≦一↓団O㊥﹀カ↓Z団声ψカエ一㊥o力⁚∩>oり団○り>ZO﹈≦﹀↓団声一﹀ピoりw讐=やNl一一やω︵い日O伜一⇔⇔よ︸

⑳ ポイズンピルは︑一九八四年にマーティン・リプトンにより考案された買収防衛策であり︑その有効性が概ねアメリカ各州

 の裁判所において認められており︑現在でも多数の会社によって採用されている︒ただし︑買収防衛策としての機能を更に高

 めたデッドハンド条項を付したポイズンピルはデラウェア裁判所において違法と判示された︒また︑ポイズンピルはアメリカ

 でポピュラーな買収防衛策であるが︑コーツ教授によれば︑対象会社がポイズンピルを採用するかもしれないという買収者の

 予測︵これをコーツ教授は﹁シャドウピル︵°・庁巳︒≦唱巨︶﹂と表現する︶がポイズンピルに買収防衛策としての効果を生じさせ

 ているという︒デッドハンド条項につき︑拙稿﹁アメリカおけるデッドハンド・ポイズンピル﹂法学雑誌四八巻四号四一九頁

 以下︵二〇〇二年︶を参照︒シャドウピルにつき︑ざ冒nOo器゜・拝ぎぎミミb慧さ需︵ミぎ恕ミミミ︑汀︑ミh∩︑ミ心§ミ︑汀

 印討ミミひeミ§6♪⇔⇔弓︒×舎ピ゜寄く°Nご︵NOOO︶を参照︒

⑳ バックエンド・マージャーに影響する特別多数決条項や︑締め出し合併の価格を設定する公正価格条項のようなシャーク・

 リペラントもイギリスでは利用できないと考えられる︒その理由は︑第一に︑シティコードは株主の﹁対等な取り扱い︵雪巳

 且§梶曲Φ邑﹂を強調しており︑強圧的な部分的買付や二段階買付が制限されると考えられるからであり︑第二に︑イギリス

 では強制的合併︵会社法四二八条ないし四三〇条︶または和議︵§自σq︒日8︷︶︵会社法四二五条ないし四二七条︶による場合

 にのみ少数株主を消滅させることができ︑これらの場合において少数株主を消滅させる際の価格︑株主の賛成割合および裁判

 所の承認要件は︑会社の定款︵コρO白ロ◎﹃β5色已白ロO﹃口昌一⇔一60ウ O㌣①o力oうOO一①︷一〇〇︶で変更できないものとされているからである︒切↑Φ菩窪民Φ〒

 ∨oローoり訂αP︒︒已唱臣口o甘◎◎彗ひ②い゜

oo 浄亀oQ§○§せoり9嘗雲民o自8−oり庁包P°・已層口520︒︒◇讐一ひ②1巳ρ

イギリスにおける買収防衛策をめぐる規制       ︵都法四十六−二︶ 二九一

(16)

二九二

閨 吻災丙§亀§S綱8宮orぜ災宣隷さ合︑§︑トミ⑳ミX§民92三N005C宅﹂おω︵一⇔↓司︶⁝﹀詳=葺民まS芦全声①﹂戸b書さミX§

 皆書g☆き§§S60這o§討eミ︑忘㎏ミ︑〜D三∨co已︒・°﹇βξ一︵一②︒︒一ご団諺⇔o﹃ぴ﹃oo奔呂○呈゜・o庁o﹈w﹄ミミ5︑吻ミロせば碍○ロミ賠ミミ

 §奏w◎︒O﹈≦8ひピ゜閃o<﹂一いい︵一②o◎N︶°   イギリスにおける戦略的な訴訟提起に関する邦語文献として︑竹野康造﹁英国における敵対的買収に対する企業防衛策﹂国

 際商事法務二一巻八号九六二〜九六三頁︵一九九三年︶を参照︒

ω bミミOミ朱肉ミミトミ℃eぎ已§俸ゴき旬ミさ↑ミ゜ロ②司﹈﹇δ置.°・↑ヵ︒﹁°いOい︵∩﹀︸

03

?∮c匡︒︐§窒‖︒三︶旨♂a陣団巨2﹇江く﹂9︒°・8臼ロ己o︒δ≦↑己ス盲・已3一゜︒三〇刈刈゜

84

ォg戸く已き98↓爵8︿2芦○ζ9⑰︒Φ逐団×勺§巴︶§ココ円∩陣﹀コ2=︒﹁︵一②o︒司︶ωo︒百0一〇︵○﹀︶⁚丙゜<°㊥昌巳8吋爵゜°<°;巳

 ﹈≦自σqg︒・⁝団×勺§oO已目9︒・㊥﹇∩︵一〇︒︒︒◎︶やoo百n∨芯︵○﹀︶°

05 已需勺碧江︒︒巨︒日︒巨8ζ一9﹃810︒5σqo戸ζ還ぷ一②゜︒ρ≦3﹁8\百︒自加︒匡事件の概要は︑竹野・前掲注︵31︶九六二〜九六三

 頁を参照︒

儲 已9℃芦巳゜り巨Φ日︒巨8出︒工爵6ーウ冒﹀ヨ゜力唱言日げ︒二M一②゜︒一=︒工畏︒田﹀↓事件の概要は︑竹野・前掲注︵31︶九六三頁を参照︒

三 有事防衛型の買収防衛策をめぐる規制

 シティコードの一般原則第七および規則二一条によれば︑真正な公開買付が対象会社の取締役会に伝えられるか︑

対象会社の取締役会が真正な公開買付が間際に迫っていると信じるのが相当な理由を有するにいたった時点以降は︑

株主総会の承認がなければ︑対象会社の取締役会は買収防衛策を講じることができない︒株主総会の事前の承認が原

則として要求されることにより︑いわゆる有事防衛型の買収防衛策が制限されることになる︒

 イギリスにおいては︑有事防衛型の買収防衛策として︑①対象会社の取締役会が買付に対して反対意見を表明す

る︑②ホワイトナイトを探して新たな買付をしてもらう︑③その他の買収防衛策を講じる︵対象会社の経営陣による

(17)

      あ マネジメント・バイアウト等︶︑ことが可能である︒

 これらのうちで︑ホワイトナイトに買付をしてもらう場合や︑対象会社の経営陣によるマネジメント・バイアウト

がなされる場合には︑敵対的な買収者による公開買付とホワイトナイトや対象会社の経営陣による公開買付が競合す

ることになるが︑その場合においては︑対象会社の取締役がどのような義務を負うかが問題となる︒以下では︑①か

ら③の買収防衛策をめぐる規制につきみたうえで︑買付が競合する場合における取締役の義務につき検討する︒

1 取締役会による反対意見の表明

 シティコードは︑公開買付が株主の利益になるかどうかの判断を株主が行う機会を保証することを目的としてお

り︑このような株主の機会を奪うことのない買収防衛策であれば株主総会の承認がなくても実施することができると

考えられる︒敵対的買収に対して取締役会が反対意見を表明することも︑かかる株主の機会が保証されるのであれ

ば︑一般原則第七に反するものではない︒対象会社の取締役会は︑買付価格が不適切であったり︑買付者の事業計画︑

過去の事業記録︑経営能力などにつき疑義がある場合には︑シティコードの規則二五条に従い︑対象会社の取締役会        倒 が株主に回覧するため作成する文書︵Oぽ﹃Φ①σO㏄R巳O片O已一艶R︶︵以下﹁回覧文書﹂という︶において反対意見を表明す

ることになる︒

 敵対的買収がなされる場合︑対象会社のファイナンシャル・アドバイザー︑弁護士︑広報担当者等は︑取締役会に

助言を行うためのチームを作り様々な助言を行うが︑その助言の内容は回覧文書により株主に伝えられなければなら

ず︵規則二五条︶︑対象会社とは利害関係のないファイナンシャル・アドバイザー︵戸巳呂︒且︒巨嘗芦○富一巳くぎ﹃︶の        倒 助言を含むものでなければならない︵規則三条︶︒回覧文書は︑買付者の提出する公開買付に関する文書︵oぽ三〇否〒

イギリスにおける買収防衛策をめぐる規制       ︵都法四十六ー二︶ 二九三

(18)

二九四

 ㈹ 日9声︶︵以下﹁買付文書﹂という︶の公開後︑通常一四日以内に︑速やかに対象会社の株主に公表されなければなら

ない︵規則三〇・二条︶︒また︑最初に買付文書が提出されてから三九日が経過した後は︑対象会社の取締役会がパ

ネルの同意なしに取引結果︑収益および配当の予測︑資産評価︑配当金支払の提案を発表することはできない︵規則

三一・九条︶︒

 回覧文書は︑きわめて注意深くかつ正確に準備されなければならず︵一般原則第五︶︑株主が十分な情報に基づい

た判断が下せるよう︑十分な情報および助言が与えられなければならない︵一般原則第四︶︒また︑企業買収の関係

者は︑買付会社および対象会社の株式につき虚偽の市場が形成されることのないよう努めなければならず︑株主の誤       ⑪ 解を招くような声明を出さないよう注意しなければならない︵一般原則第六︶︒       ・

2 ホワイトナイトの勧誘

 敵対的な公開買付がなされた場合︑対象会社の取締役会はホワイトナイトを探し︑ホワイトナイトに競合的な買付

をさせ︑敵対的な買付を不首尾に終わらせようとすることがよく見られる︒

 シティコードは︑公開買付の申出はまず最初に対象会社の取締役会またはアドバイザーに対して通知されるべきで

あり︑株主に対して買付文書が送付されてから公開買付が終了するまで最低二一日間の期間をおかなければならない

とするが︵規則三一・一条︶︑この期間中に対象会社がホワイトナイトを勧誘することは特に制限していない︒した

がって︑対象会社の取締役会はホワイトナイトを探し︑ホワイトナイトに競合的な買付をさせ︑敵対的な買付を不首

尾に終わらせることが可能である︒

 規則二〇条は︑競合する買付がなされた場合の情報の平等さにつき規定するが︑公開買付に関与する会社の情報

(19)

が︑できる限り同時かつ同様の方法で︑全株主に提供されなければならないとする︵規則二〇・一条︶︒また︑一方

の買付者に対して対象会社が提供した情報は︑他方の買付者からの要求があればその者に対しても迅速かつ平等に提

供されなければならず︵規則二〇・二条︶︑ホワイトナイトに対して対象会社が提供した情報は︑敵対的な買付者か

らの要求があれば︑敵対的な買付者に対しても提供されることになる︒

 それ故︑対象会社がホワイトナイトに対して会社の機密情報を提供した場合︑対象会社は同様の情報を敵対的な買

付者に対しても提供しなければならないリスクを負うことになるが︑敵対的な買付者は情報を特定して要求をしなけ

ればならず︑ホワイトナイトに対して提供された全情報を受領することはできない︵規則二〇・二条・注一︶︒特定

の買付者が真正な目的で公開買付に関与しておらず︑単に事業競争の目的から機密情報の提供を要求していると対象       82 会社が信じる場合には︑パネルに相談しなければならない︒

 3 その他の買収防衛策

 ω 防衛的なリキャピタライゼーション

 敵対的な買付がなされた場合︑対象会社がそれに対抗してリキャピタライゼーション︵器︒巷冨書昌8︶を行うこ    ⑬ とがある︒リキャピタライゼーションは︑対象会社の株主に対して直接に短期的な経済価値を付与し︑株主が敵対的

な買付に応じないようにすることを目的として行われる︒具体的には︑社債などの負債証券︵ユOぴ︷ooOO已ユ匡Ooの︶の追加

発行または銀行からの新規借入等を通じた会社の負債割合の引き上げ︑株主割当または第三者割当による優先株式の

発行︑余剰な現金を株主に返還するための株式の買戻しまたは償還︑配当金の増額支払︵規則二一条を条件とする︶︑        ⑭ 競争法等における規制上の問題を敵対的な買付者に生じさせうる財産の購入等の方法で行われる︒

イギリスにおける匝︒貝収防衛策をめぐる規制       ︵都法四十六ー二︶ 二九五

(20)

二九六

 リキャピタライゼーションが行われると︑多くの場合︑対象会社の負債割合は増加し︑対象会社の経営陣側の議決

権割合も増加することになる︒それ故︑取締役会による反対意見の表明やホワイトナイトの勧誘とは異なり︑取締役

会の判断のみでリキャピタライゼーションを行うことはできず︑シティコードおよび会社法に従い︑株主の承認が要    幽 求される︒

 ② 対象会社の経営陣によるマネジメント・バイアウト

 マネジメント・バイアウトとは︑対象会社の現在の経営陣が出資し︑会社事業の継続を前提として対象会社の株式

を買い取ることをいうが︑マネジメント・バイアウトが行われる場合︑敵対的な買付者による公開買付と対象会社の

経営陣による公開買付が競合することになる︒マネジメント・バイアウトを行うにあたっては︑対象会社の経営陣が

資金を全額出資することもあるが︑通常は外部の投資家が資金の大部分を出資して公開買付が進められていくことに  幽 なる︒

 対象会社の取締役会は︑現在の経営陣による買付を検討し︑これを株主に対して説明することが要求される︵規則

三.一条︶︒この場合︑マネジメント・バイアウトに内在する利益相反を考慮し︑独立委員会︵⌒邑8窪Oo巨8昌目㌣

︷8︶が設けられるのが通常であり︑取締役会が株主に対して説明をする際には︑独立性につき疑う余地のないアド       ゆ バイザーの助言が必要とされる︵規則三・一条・注﹁︶︒また︑規則二〇・二条に従い︑対象会社から生じ︑マネジ

メント・バイアウトの買付者または財政的な支援者に対して与えられた情報は︑他の競合する買付者にも与えられな

ければならない︒また︑マネジメント・バイアウトの買付者が外部の投資家に対して提供する全情報は︑対象会社の

独立した取締役に対しても提供されなければならない︵規則二〇二ご条︶︒

(21)

4 買付が競合する場合における取締役の義務

 アメリカでは︑公開買付が競合した場合︑対象会社の取締役には会社を最高価格で売却する義務が生じると考えら       ぽ れている︵レブロン義撤︶︒しかし︑シティコードは︑企業買収において株主が公正かつ平等に取り扱われることを

保証し︑企業買収活動の指針を提供することを主たる目的としていることを考えれば︑対象会社の取締役には会社を

最高価格で売却する義務があると考える必要は必ずしもない︒公開買付の競合は︑イギリスでもしばしば問題となる

ため︑買付が競合する場面における取締役の義務はイギリスにおいてどのように理解されているかを把握することは

重要である︒

 買付が競合する場合における取締役の競売義務に関しては︑イギリスにおいても判例が存在するが︑会社を最高価

格で売却する義務があるかのように読める判例がある一方で︑そのような義務はないとする判例もあり︑両者の整合        性が問題となる︒以下では︑前者に関する判例として︑出︒δ三巨⑦日呂05巴や江く°﹇o己Q置Φ事件判決︵以下﹁ヘロ         ン事件判決﹂という︶︑後者に関する判例として︑肉o①百o日廿芦∨事件判決︵以下﹁リ・カンパニー事件判決﹂という︶        か および一︶①自゜o巨o日呂8巴勺巨ひ<°百8︷︒︒・㊥賠09事件判染︵以下﹁ドーソン事件判決﹂という︶を取り上げる︒

 ω ヘロン事件判決

 財政的苦境に陥っていたACC社は︑五四〇〇万株の議決権株式と一五万株の無議決権株式を発行する会社であ

り︑議決権株式のうち六三パーセントは同社の取締役が所有している︒ACC社に対し︑二つの買付が申し入れられ

た︒一つは出o巨゜・︑﹀百o旨の率いるヒロ巴90毛︵以下﹁ベル社﹂という︶による三六〇〇万ポンドの買付であり︑も

う一つはヘロン社による四二五〇万ポンドの買付である︒出︒巨゜・︑﹀ひ︒旨はACC社の取締役に指名されており︑子

イギリスにおける買収防衛策をめぐる規制       ︵都法四十六−二︶ 二九七

(22)

︑一九八

会社であるTVW社を通してACC社の無議決権株式の五一パーセントを保有していた︒また︑ベル社による買付は

財政的苦境に陥っていたACC社を救済する計画の一環として説明されていた︒ACC社の定款二九条には︑同社の

普通株式を譲渡しようとする者は会社に対して書面でその旨を通知しなければならず︑その場合︑会社が譲渡を希望

する者の代理人となり︑取締役は分別をもって行動しなければならないことと︵同条A項︶︑本条の規定によるので       カ なければ︑普通株式の譲渡には取締役の承認が必要であることが定められていた︵同条D項︶︒

 一九八二年一月一三日にACC社の取締役会が招集され︑競合する買付のいずれを受け入れるかにつき議論がなさ

れた︒同日の取締役会では︑ACC社の取締役達が有する同社の議決権株式をベル社に売却することが決定され︑翌

一月一四日にACC社の取締役会は正式にヘロン社の買付を拒絶したため︑ヘロン社がこのような議決権株式の売却

の差止めを求めた︒

 判決では︑ACC社の定款二九条は︑取締役自身が所有する株式を特定の者に譲渡することが許されるべきかどう

かにつき熟慮する義務を取締役に課しているとしたうえで︑定款.一九条による取締役の義務がACC社に対する買付

が競合する場面においてどのように解釈されるべきかにつき︑次のように判示された︒

 ﹁会社が買収されるのが会社の最善の利益であると取締役が判断し︑かつ複数の買収者がいる場合には︑定款二九

条に定めるような権限を有する取締役の唯﹈の義務は最高価格を得ることである︒取締役は︑取得して当然と思われ

る最高価格を買収者が提示していると納得するのでなければ︑自ら所有する議決権株式を買収者に譲渡する約束をす

べきでない︒競合する買収者のいずれかを選ぶことが取締役に唯一課されている場合には︑会社の利益とは現在の株        63 主の利益のことでなければならない︒﹂

 このように︑ヘロン事件判決では︑取締役には現在の株主に最高価格での買付を選ぶ機会を与える義務があること

(23)

が判示されたが︑このような取締役の義務は定款二九条の解釈として述べられている点が注目される︒

 ② リ・カンパニー事件判決およびドーソン事件判決

 ①リ・カンパニー事件判決

 本件判決は︑非公開会社に対する買付が競合した場合における対象会社の取締役の信認義務につき言及したもので

ある︒非公開会社である対象会社に対し︑二つの競合する買付がなされた︒一方は対象会社の現在の取締役が発起人

となった会社による買付であり︑他方は対象会社と取引上ライバル関係にある会社による買付であるが︑後者の買付

価格は前者の買付価格より高い金額が提示されていた︒双方の買付申入れが受理された後︑対象会社の取締役は︑買

付価格が低い方の買付を株主に対して勧め︑その旨を記載した回覧状︵⇔片o巳ぼ︶を発行した︒回覧状には︑競合す

る買付が成功しないと取締役会が考える理由と︑買付価格の低い方の買付を支持しなければ株主には何らの買付申入

れもなされないようになってしまうと取締役会が警告する理由が記載されていた︒少数株主の一人は︑会社法四五九

条に基づき︑取締役の回覧状により株主の利益が不当に害されることを主張し︑裁判所に申し立てた︒裁判所は︑か

かる回覧状は株主の判断を誤らせ︑株主に買付価格が高い方の買付を受けないよう説得しようとするものであり︑会

社法四五九条の株主の利益を不当に害する場合にあたると判示した︒

 本判決は︑非公開会社に対する買付が競合した場合に関するものであり︑会社法四五九条に関するものであるとい

う特殊性はあるが︑取締役は株主に対して適切な情報と助言を与え︑株主が適切な情報を与えられたうえで判断でき

るようにすべきであり︑その限度において公正さが要求されると判示した︒また︑株主が買付価格が高い方の買付を

選ぶことを妨害または禁止するようなやり方で取締役が裁量権を行使することは認められないが︑買付価格が高い方       64 の買付を推奨または促進する積極的な義務を取締役に課すことを明確に否定した点も注目される︒

イギリスにおける買収防衛策をめぐる規制      ︵都法四十六ー二︶ 二九九

(24)

三〇〇

 ②ドーソン事件判決

 本件事案は︑中止された企業買収との関係で生じた費用につき︑潜在的な買付者が対象会社に対して契約違反を理

由に訴訟を提起したことに関するものである︒裁判では︑対象会社の取締役が︑会社の将来の利益とは無関係に︑対

象会社を売却して現在の株価を最高にする積極的な義務を負うかどうかが問題となった︒

 会社法三〇九条は︑会社の取締役が職務を遂行する際に考慮しなければならない事柄には︑株主の利益と同様に従        ㈲ 業員の利益が含まれると規定するが︑本件判決は同条の﹁株主﹂につき言及している︒判決では︑同条の﹁株主﹂に

は︑会社の現在の株主と同様︑将来の株主も含まれると解釈できない理由はなく︑企業買収の場面では対象会社の取       ぽ 締役が現在の株主に対して一般的な信認義務を負うものではないと判示された︒さらに︑判決では︑①株主の株式の

売主として︑現在の株主に対して負う信認義務と︑②会社に対する義務の履行として︑︵現在および将来の︶株主の

利益を考慮しなければならない取締役の義務とを区別し︑現在の株主の利益が会社全体の利益よりも優先されるわけ       ⑰ ではないことが示されている︒

 以上のように︑ドーソン事件判決は︑対象会社の取締役が会社を売却して現在の株価を最高にする積極的な義務を

負うことを否定しており︑レブロン義務とは異なる義務を対象会社の取締役に課しているものと考えられる︒

 ③ 両者の整合性

 以上みてきたように︑買付が競合する場合における取締役の義務に関して︑ヘロン事件判決で示された立場と︑

リ・カンパニー事件判決およびドーソン事件判決で示された立場は︑一見すると異なるように読める︒特に︑ヘロン

事件判決では︑買付が競合する場合において現在の株主の価値を最大化するレブロン義務を認めたように解釈できる

点が注目される︒しかし︑一般的には︑ヘロン事件判決後の事案であるリ・カンパニー事件およびドーソン事件の両

(25)

判決における判示事項を考えた場合︑ヘロン事件判決の射程範囲は︑当該事件で問題となった特定の事実関係に限定        68 されると解釈すべきであり︑ヘロン事件判決がレブロン義務を肯定したということはできないと解されている︒

 確かに︑ヘロン事件判決では︑取締役には現在の株主に最高価格での買付を選ぶ機会を与える義務があることが判

示されたが︑このような取締役の義務は対象会社の定款規定の解釈として述べられており︑当該定款規定に関する取

締役の行為を検討する場合についてのみ問題となった︒それ故︑ヘロン事件判決は︑当該事件で問題となった特定の

事実関係において︑対象会社の定款規定を合理的に解釈すれば︑本件の取締役には︑現在の株主の価値を最大化する

レブロン義務のようなものが認められることを述べているに過ぎず︑本件判決がレブロン義務を肯定した先例という

ことはできない︒実際︑ドーソン事件判決においても︑ヘロン事件判決で示された取締役の義務は︑対象会社の定款       働 規定に関するものであることが強調されている︒また︑リ・カンパニー事件判決においても︑買付が競合する場合に

おける取締役は︑買付価格が高い方の買付を推奨または促進する積極的な義務を負うのではなく︑むしろ競合する買       ㈹ 付のうちのいずれかを選択するという消極的な役割を想定していると考えられる︒

 以上から︑買付が競合する場面において︑対象会社の取締役にはレブロン義務のような積極的な義務は生じないと

するのがイギリスの判例法の立場と考えられる︒ヘロン事件判決は︑定款規定の解釈から対象会社の取締役に会社を

最高価格で売却する義務を認めたに止まるのであり︑同判決がレブロン義務を認めたということはできない︒

⑰ ﹄爲゜︒§代ミS≦o日げ自o︒§ユoo訂昆㊨゜︒毛田ggぷ暮±②いムN一﹈︵ウ①げ゜一⇔ゆ②︶右

㈹ シティコードの規則二五条は︑回覧文書の要件およびその最低限の内容につき規定するが︑規則二五条以外にも回覧文書に

 関係する規定がシテイコードには沢山ある︒規則一九条は︑企業買収の期間中に発表される情報についての高度の注意につき

 定め︑宣伝︑電話によるキャンペーン︑インタビューおよび討論︑文書の入手可能性および配布につき規定する︒規則二〇条

イギリスにおける買収防衛策をめぐる規制       ︵都法四十六ー二︶ 三〇一

(26)

三〇二

 は︑敵対的な買付者を含めた真正な買付者への情報の均.性を要求する︒規則︑一六条および二七条は︑公開が要求される情報

 を規定し︑後に株主に送られる文書についての規則を規定する︒対象会社の取締役による敵対的な買付に対する批判が︑対象

 会社の利益配当予想または資産評価に関するものである場合は︑規則二八条および二九条の要件が適用される︒㎏需゜り8嘗︒昌

 民8∨oローoり富OP︒・已肩①目o︷o◎︒讐∨OO° 倒 対象会社の取締役会は︑買付者の計画︑買付者の過去の事業記録および経営陣の能力︑買付者が買収により生じると主張す

 る利益につき︑異議を唱えることが考えられる︒また︑現金による買付の場合︑対象会社の取締役会は︑買付価格が不適切で

 ある理由や︑現経営陣またはホワイトナイトによる買収を通して実現されうる将来の価格の方が高いことなどを主張すること

 になろう︒已爲゜りδ嘗o口民o自o〒°り訂OP°・毛日98°︒己9↓O︒︒1やOρ

働 これは︑買付者が公開買付を行う意思を表明した後︑一.八日以内に株主に対して送付される︵規則三〇・一条︶︒

⑪ シティコードは︑回覧文書を含め︑企業買収に関して発行された文書の内容につき厳格な規制を置いているが︑これは株主

 が十分な情報を与えられた上で決断できるようにするためである︒

⑫吻爲勺き匹︒り§6∋窪戸吋口旦①×巨自ミ○信恥8芦巨≦巨①∋百ooオ㊨一⇔②S

㈹ リキャピタライゼーションは︑アメリカにおいて一九八〇年代後半頃の主要な買収防衛策の一つであった︒アメリカでも防

 衛的な新株発行や自己株式取得︑クラウン・ジュエルの売却などの方法によりリキャピタライゼーションが行われた︒リキャ

 ピタライゼーションが行われると︑会社の負債が増加し現金が減少するため︑買収者にとって対象会社が魅力的でなくなり︑

 買収防衛策としての効用が認められる︒防需゜・§代§〜せ﹀邑①ロ○白き工語胃゜恕旨・§︑ミミ゜︒恒〜ミ汀﹂②℃O㎏︵曽=O⇔O︶⁝市匡゜・合6炉片昌全

 oり已・・︒・ヨ①戸寒ぎミミO患還︹一ω1ω︵一②⇔⊃︶°

⑭ ︒力8嘗g内︒自o〒ψり宣エ︒三已弓日ロo甘゜︒三ミ一ω゜

㈲ 例えば︑リキャピタライゼーションが和議︵§§oq︒日︒ロ一︶︵会社法四一︑五条ないし四二七条︶の枠組みを利用して行われる

 場合には︑司法上の認可︵㌣合︒巨゜・きg日口︶を得るか︑株主の承認︵6言゜・唱唱︒毒邑を得ることが必要となる︒

困 ぱ代⑳§6ミξ臣oσqo古﹈≦>2>O国≦団Z↓ooごくーO⊂↓°︒︵匿9°一⇔⇔阜︶°

㈲ 規則二五・一条の注四は︑マネジメント・バイアウトが成功した場合において︑当該買付に関与した取締役がマネジメン

 ト.バイァウトを行った集団または対象会社において継続的な役割︵業務執行役または非業務執行役を問わない︶を果たすこ

 とが意図されているときは︑利益相反があったものとみなされると規定する︒

参照

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