Abstract
The present paper reviews into the area of foster care system, with the aim of promoting foster care in Japan. Qualitative interviews were conducted with 39 foster parents who were aged between 52 and 54 years old on average among Kyushu, Okinawa, and Sapporo re- gions. Data were used to analyze the effectiveness of foster care placements for children sub- ject to child protection intervention. The results of the preset review indicate that for foster children as well as for their birth parents, foster parents play a crucial role in children’s well- being, progress and parental support. In addition, the results suggest parent-child relation- ships are to be built in foster families between foster parents and foster children although there exist no biological ties between them. This implies that the perception of family in the family sociology needs to be widened to cover day-to-day experiences of foster families. De- fining the foster family as a family of fosterage may be a first step to recognize daily interac- tions between foster parents and foster children.
Keywords: foster care, children in public care, family of fosterage
1.本稿の目的
近年、実親による虐待等により、「社会的養護」を必要とする子どもの問題が深刻さを増 している。現在、社会的養護を必要とする子どもは4万人近くに上る。少子化が進む一方で、
社会的養護を必要とする児童が増加傾向にあることは、近年の日本において、子育てがいか に困難になってきているかを示すものである。
社会的養護を必要とする子どもは、児童養護施設等の「施設養護」か、里親制度のもとで の「家庭的養護」かのどちらかでケアされる。欧米先進諸国では、要養護児童は里親家庭で ケアされるのが基本だが、日本では施設養護が主流である。日本の社会的養護がいかに施設 養護を中心として担われてきたかということは、児童養護施設や乳児院といった施設の定員
里親養育の必要性と新しい家族としての養育家族
園 井 ゆ り
Exploring an Effectiveness of Foster Care and Defining the Foster Family as a Family of Fosterage
Yuri SONOI
活水論文集 第53集 19
に対する在所児童の割合(在所率)が、戦後以来、およそ8割前後で推移してきていること からも明らかである。実際、2007(平成19)年における施設の児童在所率は90.4%となって おり、児童養護施設や乳児院の定員は近年ほぼ満員の状態が続いている。一方、里親制度に ついては、近年、確かに登録里親数は微増傾向にあるものの、里親へ委託される児童は、1970 年代半ば頃より現在に至るまで要養護児童全体の約1割にとどまっている。
しかし、児童が要養護状態に陥る背景を考慮すれば、第1に、社会的養護を必要とする子 どもは、何より「家庭」という養育環境を奪われた子どもであるということ、第2に、施設 養護の場合は、18歳での措置解除後、直ちに「自立」を迫られるのに対して、里親養育の場 合は、委託解除後も里親―里子という「親子」関係を保ち続けることが可能であること、第 3に、要養護児童が自身の家族をつくる際、里親家族は、「家族」のモデルを子どもに示す ことができること、第4に、社会的養護を必要とする子どもの数が増えると同時に子どもの 成育歴も多様化してきており、家庭的環境の提供が児童にとって必要になってきていること 等から、里親制度は重要な意義をもつ。したがって、これまで以上に委託里親数を増やし、
家庭的養護の代表的形態である、里親養育を促進させることは、子の福祉の観点においても 喫緊の課題といえる。
社会的養護を必要とする児童の増加ならびに施設定員の満床という物理的背景と、里親養 育の意義という理念的背景のもとで、社会的養護に関する国の政策は、近年、「施設養護」
から「家庭的養護」へと大きく方針を転換している。実際、2008(平成20)年には、里親制 度の拡充を盛り込んだ改正児童福祉法が成立し、家庭的養護重点化に向けた国の指針が明確 に打ち出された。
しかしながら、里親制度は法的には整備されつつあるとはいえ、日本の場合、社会的養護 の主流は、依然として施設養護であるという現状に変わりない。里親制度は、戦後まもない 1948(昭和23)年の児童福祉法によって発足した制度である。発足当初、登録里親数は増加 傾向にあり、1962(昭和37)年には19,275(世帯)とピークを迎えるが、以降、1980年代頃 から現在に至るまで8000人前後で推移する(宮島2006:69)。本稿の目的は、なぜ里親養育 が今必要とされているのか、ということを、2008年度より九州・沖縄地域および札幌市を中 心に実施している、里親を対象としたインタビュー調査の結果をもとに考察することである。
そのうえで、家族社会学的観点から、里親家族が、新しい家族としての「養育家族」として 立ち現れていることを提示し、家族社会学の理論に新たな考察を加えることを目的とする。
なお、本稿では、里親へ委託されている委託児童を「里子」、里子の親を「実親」、里親の 子を「実子」と呼ぶことにする。
園 井 ゆ り 20
里親制度(養育里親・専門里親・親族里親)
家庭的養護
養子縁組・特別養子縁組制度 社
会 的 養
護 施 設 養 護 入所型児童福祉施設
(乳児院・児童養護施設など)
図1 日本における社会的養護の体系
出典)庄司(2003:19)図1‐1「社会的養護の体系」、柏女(2008:65)図1「要保護児童の社 会的養護システムの体系」をもとに作成。
2.社会的養護に関する現在の動向 2−1.社会的養護の定義及び動向
!社会的養護の定義。社会的養護とは、家庭環境を奪われた子どもや、不適切な家庭環境 のもとで心身の痛手を被った子どもに対して、社会が用意した養育環境の体系を指す(柏女 2008:62)。わが国の社会的養護は、2つの柱から構成される(図1)。1つは家庭的養護で あり、いま1つは施設養護である。家庭的養護としては、里親制度が代表的である。また、
養子縁組・特別養子縁組制度も家庭的養護の1形態として位置づけることができる。
"社会的養護の動向。家庭的養護の代表的形態である里親養育の状況と施設養護の代表的
形態である乳児院及び児童養護施設について、2007年の状況をまとめたものが表1である。
まず、家庭的養護についてみると、2007年において登録里親数は7934世帯であるが、その うちのわずか2582世帯に3633人の児童が委託されている1)。従って登録里親に占める、委託 里親の割合(委託里親率)は32.5%にとどまる。委託里親率が低い背景としては、登録里親 の中には、里親登録したものの、何年間も児童の委託がなく、いわば委託待ちの状況が続い ている里親が存在することが考えられる(湯沢2005:15)。国は現在、里親数の増大に向け、
新規里親の開拓を目指しているが、問題なのは、里親数が少ないことではなく、むしろ登録 しながら児童の委託がなされない里親が一方で存在していることである。従って、今後の里 親制度の促進にあたっては、a)新規里親の開拓とあわせて、b) 委託待ち里親 問題の解 消に向けて対策を講じる必要がある。委託待ち里親問題の解決のためには、里親と里親委託
表1 日本における家庭的養護及び施設養護の現状(2007年)
家庭的養護
定 義 登録里親数 委託里親数 委託児童数
里親制度
保護者のない児童または保護者に監護させ ることが不適当であると認められる児童の 養育を都道府県が里親に委託する制度
7,934人 2,582人 3,633人 里親養育の必要性と新しい家族としての養育家族 21
定員数 在所児数 在所率
19 69 19 70 19 71 19 72 19 73 19 74 19 75 19 76 19 77 19 78 19 79 19 80 19 81 19 82 19 83 19 84 19 85 19 86 19 87 19 88 19 89 19 90 19 91 19 92 19 93 19 94 19 95 19 96 19 97 19 98 19 99 20 00 20 01 20 02 20 03 20 04 20 05 20 06 20 07
95.0
90.0
85.0
80.0
75.0
70.0
% 人
45000 40000 35000 30000 25000 20000 15000 10000 5000 0
を行う行政機関との間をつなぐ人材を配置するなど、両者がさらに緊密に連携しあうことが 重要であると考える。
次に、施設養護についてみる。2007年においては、乳児院には、3190人、児童養護施設に は30,846人が在所しており、両施設を合計すると34,036人の児童が入所している。里親に委 託された児童数は同年、3633人であるため、施設には里親の約9倍の児童が措置されている ことがわかる。各施設の定員に占める在所児童の割合である、「在所率」をみてみると、2007 年時点では、乳児院の在所率は、85.6%、児童養護施設の在所率は90.9%となっており、2007 年における施設養護の現状は、乳児院、児童養護施設ともほぼ満杯の状態となっている。図 2は、児童養護施設の定員数、在所児数、および在所率について最近の約40年間の推移をみ
施設養護
乳 児 院 児童養護施設
対 象 児 童
乳児(保健上、安定した生活 環境の確保その他の理由によ り特に必要のある場合には、
幼児を含む)
保護者のない児童、虐待されている児童そ の他環境上養護を要する児童(安定した生 活環境の確保その他の理由により特に必要 のある場合には、乳児を含む)
施 設 数
(内訳:公立/私立)
121ヶ所
(9ヶ所/112ヶ所)
564ヶ所
(18ヶ所/546ヶ所)
定 員 数 3,727人 33,917人 入所児童数 3,190人 30,846人
出典)里親関連データは、『平成19年度 社会福祉行政業務報告(福祉行政報告例)』第18表(p487)。施設関連データは、
厚生労働省大臣官房統計情報部『平成19年度 社会福祉施設施設等調査報告』表2,3(p32‐3)、第4表(p124‐ 5)。里親制度の定義、乳児院・児童養護施設の対象児童の定義については、「児童福祉法」第6条の3、同第37条、
同第41条、柏女(2008:65)を参照。
図2 児童養護施設(乳児院含む)の定員数、在所児数、在所率の年次推移(1969〜2007年)
注)図2の「児童養護施設」データには、乳児院のデータを含む。
出典)厚生労働省大臣官房統計情報部『社会福祉施設施設等調査報告』各年版より算出。
園 井 ゆ り 22
全ケア児童数 里親委託 児数 全ケア児童中の%
19 69 19 70 19 71 19 72 19 73 19 74 19 75 19 76 19 77 19 78 19 79 19 80 19 81 19 82 19 83 19 84 19 85 19 86 19 87 19 88 19 89 19 90 19 91 19 92 19 93 19 94 19 95 19 96 19 97 19 98 19 99 20 00 20 01 20 02 20 03 20 04 20 05 20 06 20 07
14.0
10.0 12.0
8.0 6.0 4.0 2.0 0.0
% 人
45000 40000 35000 30000 25000 20000 15000 10000 5000 0
図3 要養護児童数、里親委託児童数、里親委託率の年次推移(1969〜2007年)
注)イ)「全ケア児童数!」とは、社会的養護を必要とする児童の総数である。図3では、「全ケア児童」として、「乳児院」と「児 童養護施設」の在所児及び「里親委託児」の3つを計上した。
ロ)「里親委託児童数"」とは里親へ委託されている児童を指す。
ハ)「全ケア児童中の%#」とは、「社会的養護」を必要とする児童全体の中で里親へ委託された児童の割合を指す。すなわち、
C=B/A の値。
出典)施設データは、厚生労働省大臣官房統計情報部『社会福祉施設施設等調査報告』各年版より。里親データは、同『平成19年度 社会福祉行政業務報告(福祉行政報告例)』より抜粋、算出。
たものである(厚生労働省大臣官房統計情報部2007b:18,32‐3,212)。
図2をみると、乳児院及び児童養護施設の在所率は、1980年代半ば以降減少傾向にあり、
1993(平成5)年には77.0%と最近の40年間のなかでは最低値となるが、その後、1990年代 後半以降頃から在所率は増加し始め、近年は、9割近い状態が続いている。定員数はほぼ一 定の値で推移していることから考えると、在所率の増減は、在所児数の増減を反映している と推察される。すなわち、1990年代初頭は乳児院や児童養護施設に在所する児童が他の年と 比べると少ないということが伺える。
家庭的養護と施設養護の概要を把握したうえで、さらに要養護児童および里親委託児童の 状況についてみる。図3は要養護児童数、里親委託児童数、里親委託率に関する近年の約40 年間の推移をみたものである。
図3より、ここ約40年間における、日本の社会的養護を必要とする児童の概況をみると、
a)「全ケア児童数」(社会的養護を必要とする児童数のこと。以下、「要養護児童数」と記す)
は、1969(昭和44)年より現在に至るまでほぼ3万5000人前後で推移しており、b)「全ケア 児童中の%」(要養護児童全体の中で里親へ委託された児童の割合のこと)の動向から、要 養護児童は、1970年代半ば頃より、約9割が施設養護のもとで、約1割が里親養育のもとで 養護されている、という特徴を持つ。
まず、a)要養護児童数の傾向をみると、1985(昭和60)年に37,043人であった要養護児 里親養育の必要性と新しい家族としての養育家族 23
童数は、以後減少し続け、1995(平成7)年には30,684人にまで低下し、ここ40年間では最 低値となる。その後、要養護児童数は1995年を境に増加に転じ、2007(平成19)年には37,669 人と4万人近くまで達している。しかし、要養護児童はここ数年は確かに増加傾向にあるも のの、現在の要養護児童数は1969(昭和44)年の39,624人に比べるとまだ低い。さらに、図 3では示されていないが、ちょうど高度経済成長期に相当する昭和30年代(1955〜1964年)
は、4万5000人前後の要養護児童が存在していた。例えば、1959(昭和34)年では、要養護 児童は47,568人に上る。従って、要養護児童についての状況は、50年ほど前は現在よりもさ らに1万人ほど多い児童が要養護の状態にあったということである(厚生労働省大臣官房統 計情報部『社会福祉施設等調査報告』各年版より算出)。
次に、b)里親へ委託された児童の割合について。里親へ委託された児童の割合は、1969
(昭和44)年では、12.8%(里親委託児童数は5054人)であったのが、2007(平成19)年に は9.6%(里親委託児童数は3633人)にまで減少している。一方、要養護児童の数が現在よ りも1万人ほど多かった昭和30年代は、概ね約2割の要養護児童が里親のもとで養育されて いた。例えば昭和31(1956)年では、里親へ委託された児童の割合は21.2%(里親委託児童 数は9348人)を占めていた。また、戦後直後の昭和24(1949)年では、里親へ委託された児 童の割合は、17.6%となっており、戦後間もない頃から昭和30年代頃までは、里親へ委託さ れた児童の割合は約2割前後で推移してきたことが推察される。従って、注目すべきは、か つて日本では里親へ委託された児童の割合が、現在よりも約1割多かったということである
(湯沢2005:3;厚生労働省大臣官房統計情報部『社会福祉施設等調査報告』各年版より算 出)。
2−2.日本における里親委託の動向
里親制度は、1948(昭和23)年の児童福祉法において初めて法的に規定された制度である。
戦後まもない頃に制定された児童福祉法は、その第1条で「すべて国民は、児童が心身とも に健やかに生まれ、且つ、育成されるように努めなければならない」、同第2号「すべて児 童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」と述べ、第2条で「国及 び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」
と謳う。従って、児童福祉法は、子どもの育つ権利を明文化したものであり、かつ社会的条 件に恵まれない子は、親にかわり社会が養育の責任を持つことを明示したものである。汐見
(2001:54)は、里親となる人は、児童福祉法の主旨を尊重し、「親の愛に恵まれない子ど もの人間として育つ権利を、親にかわって何とか実現してやりたい人」と定義する。
日本における里親委託の動向についてみるため、第1に里親の種類を整理し、第2に里親 委託の動向をみていくことにする。
まず、里親の種類について。表2は、2008年の改正児童福祉法をふまえたうえで、里親の 園 井 ゆ り
24
種類別に里親の概要をみたものである。
2008年の改正児童福祉法によって、里親の分類が変わった2)。主要な改正点としては、! 従来区別されていた「養育里親」、「短期里親」が「養育里親」として統合され、"従来、「養 育里親」と制度上は区別のなかった、「養子縁組里親」が「養育里親」と明確に区分された。
結果、2008年の改正児童福祉法においては、里親は「養育里親」と「養子縁組によって養 親となることを希望するものその他これに類する者」の2種類に大別された。「養育里親」
は、さらに「養育里親」と「専門里親」へ2区分され、「養子縁組によって養親となること を希望するものその他これに類する者」は、「養子縁組を希望する里親」と、「親族里親」へ 2区分されることになった。即ち、「その他これに類する者」には、「親族里親」が含まれる。
2007年時点における、里親別の委託状況をみると、(従来の区分における)「養育里親」の 場合、登録数は7142世帯であり、そのうち2195世帯に2656名の子どもが委託され、「専門里 親」の場合、登録数は428世帯であり、そのうち86世帯に88名の子どもが委託されている。「親 族里親」の場合、登録数は292世帯であり、そのうち285世帯に430名の子どもが委託されて
表2 里親の種類別概要
法 律 上 の 規 定
養子縁組によって養親となることを希望 するものその他これに類する者として都 道府県知事が適当と認めるもの
養 育 里 親
里 親 の 種 類
養子縁組を
希望する里親 親 族 里 親 養育里親 専 門 里 親
対 象 児 童 要保護児童
!当該親族里親と三親等 以内の親族であること
"児童の両親その他当該
児童を現に監護する者が 死亡、行方不明、拘禁等 の状態となったことによ り、これらの者により、
養育が期待できないこと
要保護児童
!児童虐待の防止等に関 する法律第2条に規定す る児童虐待等の行為によ り心身に有害な影響を受 けた児童
"非行等の問題を有する 児童
#身体障害、知的障害又 は精神障害がある児童 委託児童の最大人数 N/A 人数制限なし 4人以下 2人以下
委 託 期 間 N/A 養育里親と同じ
児童が18歳に 達するまでで あれば制限な し
2年以内
出典)庄司(2005:31)、厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会2009年5月18 日付資料より作成。N/A は非該当。
里親養育の必要性と新しい家族としての養育家族 25
19 69 19 70 19 68 19 67 19 66 19 65 19 64 19 63 19 62 19 61 19 60 19 59 19 58 19 57 19 56 19 55 19 54 19 53 19 52 19 51 19 50 19 49
19 71 19 72 19 73 19 74 19 75 19 76 19 77 19 78 19 79 19 80 19 81 19 82 19 83 19 84 19 85 19 86 19 87 19 88 19 89 19 90 19 91 19 92 19 93 19 94 19 95 19 96 19 97 19 98 19 99 20 00 20 01 20 02 20 03 20 04 20 05 20 06 20 07
80.0
60.0 70.0
50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0
% 人
25000
20000
15000
10000
5000
0
登録里親数 委託里親数 委託里親率
図4 登録里親数、委託里親数、委託里親率の年次推移(1949〜2007年)
注)イ)「委託里親数」とは、児童が委託されている里親数。
ロ)「委託里親率」とは、登録里親に占める、委託里親の割合。
出典)1949〜1959までは宮島(2006:69)より引用。1960〜2007までは厚生労働省大臣官房統計情報部(2007a:487)より抜粋、算 出。
いる。また従来の区分における「短期里親」の場合、登録数は2171世帯であり、そのうち446 世帯に459名の子どもが委託されている。よって、委託児童の総数は、3633名となる(厚生 労働省大臣官房統計情報部2007a:426‐7(第48表))3)。
次に、日本における里親委託の動向をみていくことにする。
図4より、まず全体的な特徴として、a)委託里親率は、多少の増減はあるものの、1965
(昭和40)年ごろより現在に至るまで概ね3割前後で推移している、b)1949(昭和24)年 は、登録里親数4153、うち委託里親数2909で委託里親率は70.0%に達していたが、委託里親 率は1970年代初頭にかけて急減し、1973(昭和48)年には26.7%と1949年の半分以下の水準 にまで落ち込む、c)1949年から1973年にかけての委託里親率急減の背景には、委託里親数 の減少および登録里親数の増加という背景がある、d)近年、委託里親率は微増傾向にある とはいえ、2007年の委託率32.5%という値は、約30年前の水準にやっと達した程度であると いう特徴が見出される。
登録里親数についてみると、e)登録里親数のピークは1962(昭和37)年の19,275である。
今から50年ほど前、ちょうど高度経済成長期の只中においては現在の2倍を越える者が里親 として登録していたことがわかる。f)登録里親数7934という2007(平成19)年の水準は、
1950(昭和25)年の水準(登録里親数7429)に類似する。しかし、委託里親率でみると、1950 年は65.4%であったのに対して2007年はその約半分の水準でしかない。従って、登録しなが
園 井 ゆ り 26
表3 本調査の概要
調 査 時 期 2008年10月〜継続中
調 査 対 象 者 !現在里子を受託中または過去に受託経験がある「養育里親」4)。
"「養子縁組(普通養子縁組・特別養子縁組の両方を対象)」を行った里親
(「養子縁組里親」)。
対象里親の選出にあたっては、「札幌市里親会」及び「九州地区里親会」か らの協力を得た。
調 査 方 法 半構造化面接法。1対1の対面式。(面接対象里親は、「里父母」または「里 父」、「里母」の一方でも可)。時間は、1家族1回、3時間〜4時間。
調 査 場 所 各里親家庭または各県・市の里親会事務局所在施設内の一室。
調査対象地区 九州・沖縄各県、及び3政令指定都市(福岡市、北九州市、札幌市)
実施状況内訳 札幌市(10)、福岡市(6)、北九州市(6)、佐賀県(5)、大分県(6)、 沖縄県(6)の6地区(2009年10月時点。括弧内は対象里親世帯数)。
らも、児童の委託がなされない、委託待ち里親が存在するということがいかに深刻な問題を 招いているかが了解される。a)で指摘した点もふまえると、日本の場合、1960年代半ば頃 より、登録里親が「委託里親」と、「委託待ち里親」とに2極化される傾向にあることが推 察される。
よって、問題とされるべきは、登録里親数が少ないことではなく、7割もの登録里親が委 託待ちの状態にあるということである。
3.調査概要とデータ 3−1.調査概要
表3は、本調査の調査概要である。本調査の対象は、養育里親または養子縁組を行った里 親である。調査対象総数は39里親世帯である(2009年10月時)。
3−2.里親の属性と里親になった動機
!里親の属性。表4は、本調査の対象者である里親の属性についてまとめたものである。
なお、先行調査として「被虐待児受託里親の支援に関する調査研究」(主任研究者 湯沢雍 彦、2004、以下「湯沢調査」と記す)、及び厚生労働省雇用均等・児童家庭局(2004)によ る「児童養護施設入所児童等調査」(以下、「厚生労働省調査」と記す)を参照する。
表4から、本調査の傾向をみると、里父母とも50代であり、約半数は実子がいる。6割が 里親登録後7年以上経過しており、いわばベテラン里親が過半数を占める。登録後、最初の 子が委託されるまでの待機期間については過半数が1年未満となっており、委託児童数は調 査時まで平均で5.1人である。委託児童1人との縁組も半数が経験している。里母は高卒で 専業主婦である傾向がみられ、里父は2割が定年退職者である。家族形態としては7割が核 里親養育の必要性と新しい家族としての養育家族 27
家族世帯であり、住居は8割が一戸建て持家となっている。本調査の対象里親は、里親登録 後、比較的早期に児童が委託され、以後、児童が委託され続けている傾向にあることが推察 される。
先行調査の傾向と比べると、類似点としては、里父母の年齢と住宅状況である。相違点と して特に指摘されるのは、委託児童数が先行調査に比して多い傾向にあることである。本調 査では、里親登録後比較的早期に児童が委託されていること、ベテラン里親が過半数を占め 表4 里親の属性 n=里親数、( )内は%
調査主体(調査時期)
対象地域(里親数)
本調査(2008〜)
九州・札幌(n=39)
湯沢調査(2003)
全国(n=1189)
厚生労働省調査(2003)
全国(n=1958)
・里父年齢層(歳) 平均54 50〜55(25.5) 50代(42.2)
・里母年齢層(歳) 平均52 50〜55(22.0) 50代(37.4)
・実子の有無 あり(56.4) あり(29.0)
・里親登録後7年以上経過の里親 (61.5) (50.5) ―
・登録後、最初の子が委託され るまでの待機期間
1年未満
(57.9)
1年以上3年未満
(46.7) ―
・委託児童数(人) 平均5.1 平均3.4 1〜2人(79.8)
・委託児童との養子縁組 経験あり(51.3) あり(15.6) ―
・養子の人数(特別/普通) 1人(80.0) 1人(85.5) ―
・里母学歴 高校(44.4) ― ―
・里母職業 専業主婦(71.8) ― 専門・技術(20.5)
・里父職業 定年退職(24.0) ―
・里親家庭の世帯構造 核家族世帯(69.2) ― ―
・里親家庭の住宅状況 一戸建て持家(79.5) ― 一戸建て持家(77.9)
表5 里親になった動機
動 機
全体
(39件)
実子の有無別 実子あり
(22件)
実子なし
(17件)
イ)子どもを育てたいから** 14 10 4
ロ)養子を得たいから** 11 1 10
ハ)恵まれない子を何とかしたいから 7 5 2
ニ)宗教的理由から 4 4 0
ホ)里親家庭で(の実子として)育ったから 3 2 1 注)図中、「**」は、湯沢調査、厚生労働省調査において多かった理由。また、ハ)「恵まれない子を何とか
したい」という理由は、対象里親全てに共通する動機であった。今回は、「恵まれない子を何とかしたい」
以外の動機が他に見当たらない場合について当該項目に計上した。
園 井 ゆ り 28
ていることなどが影響を及ぼしていると推察される。
"里親になった動機。次に、本調査における里親を対象に、里親になった動機をみる。
表5をみると、全体としては、里親になった動機として、イ)「子どもを育てたいから」
とロ)「養子を得たいから」という理由が多い傾向にあった。これら2つの動機は、先行調 査においても多い傾向にある。実子の有無別にみると、実子がいる場合は、「子どもを育て たいから」が最も多く、実子がいない場合は「養子を得たいから」が最も多い。里親になる 動機は、実子の有無によって大きく異なることが伺える。また、数としては少ないが、ホ)
「里親家庭で育ったから」という理由からは、里親養育という行為が世代間にわたって継承 されうることを示している。
3−3.里子の属性と養護問題発生理由
本調査の対象者である里親へのインタビュー調査から明らかになった里子の属性及び、要 養護問題発生理由についてみる。
!里子の属性。表6は里子の属性についてみたものである。
表6をみると、本調査では、里子は就学前に委託され、現在は小学校高学年である傾向に
表6 里子の属性 n=現在委託中又は縁組をした里子数、( )内は%
調査主体(調査時期)
対象地域(里子数)
本調査(2008〜)
九州・札幌(n=84)5)
湯沢調査(2003)
全国(n=1580)
厚生労働省調査(2003)
全国(n=2454)
・調査時平均年齢(歳) 11.0 約8.7 8.5
・委託時平均年齢(歳) 4.6 約4.7 4.4
・児童の性別 男児(51.2)、女児(48.8) 男児(49.7)、女児(50.3) 男児(51.0)、女児(48.9)
・平均委託期間 3年5ヶ月 約3年7ヶ月 4年2ヶ月
・里親委託の種類 養育:縁組≒7:3 ― ―
・委託児童の苗字 里親名(54.8)、
児童の戸籍名(45.2) ― ―
・何人目の委託児童か 平均4.5人目 平均4.2人目 ―
・委託目的 子どもが社会的に自立
するまでの養育(48.6)
同左(39.5) ―
・委託経路(委託直前、児童が
生活していた場所) 実親家庭から(28.6) 乳児院から(31.8) 実親家庭から(34.8)
・委託児童の障害等 障害等あり(23.8) ― 障害等あり(12.6)
・養護問題発生理由 両親の未婚(23.8) 養育拒否(16.1) 養育拒否(20.4)
・委託時の保護者の状況 実母のみ(43.4) ― 実母のみ(44.0)
・実親や親族等との交流 交流あり(48.7) 交流あり(29.1) 交流あり(23.3)
里親養育の必要性と新しい家族としての養育家族 29
25 20 15 10 5 0 件数
25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0
%
両 親の 未婚
虐︶ 養育 拒否**
行 方不 明**
虐︶ 放任
・怠 だ**
虐︶ 虐待
・酷 使
離 婚**
死 亡・ 自 殺
精 神疾 患
拘 禁・ 服 役
父 母の 不和
入
院 虐
︶棄 児 23.8
13.1
10.7 10.7 10.7
7.1 6.0 6.0 4.8
2.4 2.4 2.4
ある。里子の年齢が小学生ごろまでの比較的低い年齢にあるというのは里親の本来の目的に 適う。里親制度は、家庭的養護の代表的形態であることから分かるように、里親は家庭での 個別的な養育を必要とする、特に乳児や低学年の子どもに対する親代わり、という役割を担っ ているからである。性別は男児、女児とも同程度であり、委託期間はほぼ3年半である6)。 養子縁組を行った子どもは3割となっている。養子縁組に関する全国的な動向をみると、2007
(平成19)年度では、措置を解除された児童910名のうち208名が養子縁組によるものとされ ている(厚生労働省大臣官房統計情報部,2007a:425、第46表)。即ち、約2割は縁組によっ て委託が解除されている。本調査では養子縁組児は3割であり、全国的な傾向とほぼ類似の 傾向にあることが伺われる。
苗字については、里親名と戸籍名とがほぼ5割ずつ、社会的に自立するまでの養育として 委託された里子が5割近くを占め、約3割は委託前の生活場所が実親家庭となっている。な ぜ社会的養護が必要な状況になったかについては、「両親の未婚」に起因する割合が最も高 い。約4割は保護者が実母のみであり、実親や親族との交流は半数近くがもっているという 状況である。また、養子縁組児童の場合は、苗字が里親名になることから考えると、養子縁 組児童の3割を超えて里親名の使用があるということは、養育里親であっても里親名を用い て子を養育している状況が伺える。
先行調査の傾向と比べると、先行調査では養護問題発生理由が「養育拒否」であること、
実親や親族との交流が先行調査では約2〜3割であるのに対して、本調査は約5割となって いることが相違点として挙げられる。養護問題発生理由については、「養育拒否」は本調査 の場合も、「両親の未婚」に次ぐ理由となっている。実親との交流については、縁組児の場
図4 本調査における子どもの養護問題発生理由(n=84、n:現在委託中又は縁組をした児童数)
注)図中、「**」は、湯沢調査、厚生労働省調査において多かった値を示す。なお、!各理由は、養育者の側からみた理由である。
従って、例えば、「精神疾患」は「養育者の」精神疾患を指す。"データの集計については、各対象児童について、最もそう思わ れる理由1つを集計した。よって、全データの合計値は100.0%となる。#図中、「虐」とは一般に「虐待」とされる項目。
園 井 ゆ り 30
合は、実親との交流を比較的持たない傾向にあることから、先行調査における縁組児の割合 がどの程度であったかということも、実親との交流割合に関わってくると推察される。
"養護問題発生理由。図4は、現在委託中の児童又は縁組児の合計84名について、養護問
題発生の理由をみたものである。
図4をみると、「両親の未婚」(23.8%)という理由が最も多い理由であることが分かる。
「両親の未婚」は、その約7割が10代から20代前半の若年者によって惹起されている。また、
一般に「虐待」とされる、「養育拒否」、「放任・怠だ」、「虐待・酷使」、「棄児」を合計する と、約36.9%となる(湯沢調査の場合は、32.2%、厚生労働省調査の場合は41.4%)。従っ て、本調査の結果からは、4割近くの児童は、虐待が原因で要養護状態になったということ が指摘できる。
「虐待・酷使(9件)」について、虐待者別・内容別の内訳をみると、実親によるものとし て5件、継父母によるものとして4件であった。それぞれの内容は、イ)実親による場合が
「身体的虐待」(4件)、性的虐待(1件)、ロ)継父母による場合が「性的虐待」(2件)、「言 葉による虐待」(1件)、「身体的虐待」(1件)となっている。
4 社会的養護問題発生の背景―社会学的観点からのアプローチ 4−1.家族解体論
なぜ社会的養護を必要とする状態に子どもは陥るのか。社会的養護の問題が発生する背景 を、グードの家族解体論に依拠しながら考察する。グードは、家族の解体(family disorgani- zation)を「1人ないしはそれ以上の家族成員が、自己の役割義務を満足に果たさない場合 における社会的役割構造の解体ないしは崩壊」と定義する(Goode1961:479)。そのうえで、
家族解体の主要な「類型」として次の5つを指摘する。!非嫡出。非嫡出はa)潜在的な「父
―夫」が自己の役割義務を果たしておらず、かつb)父、母双方がおのおのに課せられた(子 に対する)役割義務を遂行していないため(家族解体を招く)、"別居、離婚、遺棄など夫 婦の一方が意図的に家族集団から離脱することで生じる家族解体、#家族成員は同居してい るが、成員相互のコミュニケーションや接触は最小限であり、互いに情緒的サポートを与え あう役割義務を果たさない「抜け殻の家族(empty shell family)」、$外的な出来事―例えば、
(夫婦いずれかの)死亡、投獄や戦争、不況等の災難による、夫婦のいずれかの意図されな い一時的あるいは永久的欠損―によって生じた家族危機、%家族成員の精神的・情緒的ある いは身体的疾患によって、意図せずして主要な役割が遂行できずに生ずる内生的災難、すな わち、子の精神的遅滞や、子や配偶者の精神疾患ないしは慢性・不治の身体疾患(Goode 1961:480)。
ここから、2つのことが指摘できる。第1に、家族解体のプロセスとしては、離婚などに よる家族成員の欠如といった家族の構造上の欠損があり、それが家族機能の弱化を招く結果、
里親養育の必要性と新しい家族としての養育家族 31
家族が解体するということである。まず、家族の構造上の欠損とは、具体的には家族成員の 人数が減るということである。家族の人数が減ることは、危機に対抗する力が減ることを意 味する。このことを、日本の普通世帯人員の動向からみると、1930(昭和5)年に4.98人で あった世帯人員は、その後高度経済成長期より減少傾向が顕著となり、2005(平成17)年に は2.58人にまで減少している。即ち、現在、世帯人員は昭和初期の頃から比べるとその約半 分にまで減少し、家族の小規模化が進んだことが分かる。世帯人員の減少幅は、1955年〜1975 年の高度経済成長期の時代に大きく、この20年間に約1.5人減少している。よって、例えば 昭和初期の頃は、5人家族で、誰かが病気になっても、病人が担っていた家族役割を他の家 族成員で肩代わりできていたが、現在のように2〜3人の家族では、1人が倒れてしまうと、
危機に対応しうる人的資源が限られているため、家族集団そのものの存立が脅かされかねな い状況になっているのである(森岡・望月1997:169;総務省統計局2005)。
次に、家族構造と家族機能との関係から家族解体のプロセスをみてみる。パーソンズが指 摘するように、近代化が進み、核家族化が進行した社会では、家族に期待される機能は、「子 に対する社会化」と「成人に対するパーソナリティの安定化」の2つに限定される(Parsons 1956=1970:35)。これらは社会が存続するための前提条件であるため、これらの機能を家 族が果たせなくなった場合、当該家族の存続のみらならず、当該社会の存続自体が危ぶまれ ることになる。従って、例えば、離婚や未婚といった夫婦のどちらか一方の不在という家族 の構造上の欠損が、経済的にも精神的にも家族を窮地に陥れることで、子は家族のなかで社 会化の過程を開始できず、親は情緒的に不安定な状況におかれ、家族機能が弱化する。結果、
家族は家族成員を守ることができず、解体するのである。
第2に、家族の解体は子どもを社会的養護が必要な状況に陥れる、ということである。そ こで、グードの家族解体論を養護問題の発生の背景との関わりについてみてみる。結論から 述べると、養護問題発生の背景として考えられる筋道としては、第1に、養育者の未婚や離 婚などが原因で、家族解体が結果として生じ、子どもが要養護の状態に陥る場合と、第2に、
家族が解体したことが原因で、虐待が発生し、結果として子どもが要養護の状態に陥る場合 の2つが考えられる。第1の筋道については、まず、「両親の未婚」(グードの!「非嫡出」
に相当)、「離婚」、「父母の不和」、「行方不明」(以上、グードの"「別居、離婚、遺棄」に 相当)、「死亡・自殺」、「拘禁・服役」(以上、グードの#「外的出来事による家族危機」に 相当)、「精神疾患」、「入院」(以上、グードの$「内的出来事による家族危機」に相当)が、
家族解体を招く要因として考えられる。結果、家族解体が帰結され、子どもが要養護状態に 陥るというものである。第2の筋道については、家族が解体したことが原因となって、家族 内部で「養育拒否」、「放任・怠だ」、「虐待・酷使」、「棄児」という「虐待」問題が発生し、
結果、子どもが要養護状態に陥るというものである。
家族が解体することは、家族が子どもの養育に対する機能を果たせない状態に陥っている 園 井 ゆ り
32
ことを意味する。即ち、家族解体は子どもを社会的養護が必要な状況に陥れるのである。
4−2.近代家族の脆弱性
グードが指摘した5つの家族解体の契機は通文化的な「類型」であるため、日本の現在の 家族状況に即して考察し直すことが必要である。そこで、戦後以降、高度経済成長期のなか で確立し、現在の日本における家族の基盤を形成した、「近代家族」と家族解体との関連に ついて考察する。結論から述べれば、今日の近代家族は家族に対する内的外的危機に対して 脆弱であるために、家族解体が帰結され、子どもが要養護状態に陥りやすい傾向にあること が指摘できる。
高度経済成長期のなかで確立した近代家族は、核家族の形態をとる。近代家族は、!家族 の集団としての凝集力の「弱体化」、"家族成員相互の「個人化」、#夫婦関係の「不安定化」、
$家族の社会的「孤立化」という特徴を持つがゆえに、家族に対する内的外的危機に対して 脆弱である(福武・濱島編1979:133)。
!家族の集団としての凝集力の「弱体化」について。近代家族のもとでは、家族機能が単 純化したために、集団としての凝集力は弱化する。即ち、近代家族のもとでは家族が家族成 員に対して果たす役割は、「子に対する社会化」と「成人に対するパーソナリティの安定化」
という2つに限られるため、集団としての凝集性は弱まる。オグバーンが指摘するように、
近代工業が勃興する以前の家族では、家族は「経済」、「地位付与」、「教育」、「保護」、「宗教」、
「娯楽」、「愛情」という7つの機能を果たしており、家族の集団としての結束は強かった。
しかし、近代化以降の家族では「愛情」以外の6機能は企業や学校や政府などの専門機関が 家族にとって代わることによって、これらの機能に対して家族が果たしていた役割の度合い は衰退する。従って、近代化以降の家族では、「愛情」というパーソナリティに関わる機能
(子の社会化、成人のパーソナリティの安定化)のみが他の機能に比して顕著となる以外は、
家族の機能は縮小し、ゆえに家族の集団としての凝集力も弱化するのである(Ogburn1933;
森岡・望月1997:169)。
"家族成員相互の「個人化」について。家族の集団としての凝集力の弱化は、一方で家族
成員相互の個人化を招く。家族成員相互の個人化とは、時間的、空間的に家族成員同士が離 れて生活する機会が多くなることで、社会的関心や生活態度が個々の家族成員で形成され、
結果、家族成員相互の連帯が失われる状況を指す。例えば単身赴任であったり、遠方の学校 に通ったりすることで家族を離れれば、家族員は空間的に離れて生活することになる。また、
たとえ同居していても、生活周期が家族成員間で異なるために、食事すら家族で一緒にしな い状況などは時間的に離れた状態ということになる(森岡・望月1997:4)。
#夫婦関係の「不安定化」について。近代家族のもとでは、配偶者選択の方法も恋愛結婚 が主流である。結婚年次別に恋愛結婚と見合い結婚の構成比の推移をみると、1935(昭和10)
里親養育の必要性と新しい家族としての養育家族 33
年に約7割を占めていた見合い結婚は、現在に至るまで一貫して減少傾向にある。1960年代 後半には、恋愛結婚が見合結婚を上回り、その傾向は現在も続く。現在では、約9割が恋愛 結婚によるものとなっている。即ち、近代家族は、結婚という家族の成立の契機から、当事 者2人の愛情による自由な意思のみに基づき実現されるようになった。結婚が当事者の自由 な意思のもとで行われることは、異質の社会的、また文化的背景をもった者同士が結ばれる 可能性を一方で増大させる。親や親族が配偶者選択に介入する見合い結婚の場合は、同格の 家の者との結婚が目的であるため、社会階層、教育程度、職業など、社会的、文化的属性の 似たもの同士が結ばれる、同類婚的傾向が強くなる。しかし、恋愛結婚による夫婦関係の場 合は、異類婚的要素を孕むため、見合い結婚に基づく夫婦関係に比べ、不安定になる傾向が 指摘できるのである。
!家族の社会的「孤立化」について。1950年代後半に第1次産業と第3次産業の比率が逆 転し、産業構造が転換して以降、サービス業を中心とする第3次産業は、日本の近代化を支 える主要な産業となった。高度経済成長期に近代家族が確立しえたのも、一つには日本にお ける産業構造の転換という社会的背景があったからに他ならない。即ち、農業をはじめとす る第1次産業に立脚し家族が生産の単位とともに消費の単位である社会では、近隣同士で農 作業を共同で行う、というように近隣の援助が必要であった。しかし、第3次産業に立脚し 家族が専ら消費のための単位となった社会では、都市部で雇用者として生活することが可能 となる。かつての村落共同体のように、近隣からの援助が不可欠な生活形態ではなくなるた め、近隣間で日常的な互助関係も形成されにくい。また、親族も、同様に都市部での雇用者 化が進むため、互いの生活領域が地理的に分散し、日常的な互助関係を育む親族は限定され ることになる7)。
近代家族は、産業化の進展のなかで、親族といった血縁集団や近隣といった地縁集団への 依存度を低め、この意味で近代家族は家族の自立性の度合いを増大させた。しかし、近代家 族の親族、近隣からの「自立」は、家族が社会的に孤立することを一方で帰結する。なぜな ら、親族や近隣といった集団は、個々の家族を看視したり、援助したりしながら、家族にとっ て、これまで援助源として機能していたため、これらの集団とのつながりを失うことは、家 族は、全くの個別的責任においてあらゆる問題に対処せねばならないことを意味するからで ある。
従って、例えば、病気や入院、離婚等によって家族が危機に陥った時でさえ、家族は急場 の協力を親族や近隣に頼めず、個々の家族のなかで解決を強いられるか、あるいは一足飛び に公的な社会機関に援助を求めざるを得なくなっているのである(森岡・望月1997:150;
福武・濱島編1979)。このような近代家族の特徴は、内的外的危機に対する脆弱性を帰結す るがゆえに、家族解体が引き起こされ、子どもが要養護状態に陥りやすくなる、という過程 が指摘できるのである。
園 井 ゆ り 34