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精神障害者ホームヘルプサービス利用における          当事者の負担感について

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No.31 明星大学社会学研究紀要 March 2011

《論 文》

精神障害者ホームヘルプサービス利用における

         当事者の負担感について

妹 尾 和 美

1.はじめに

(1)研究目的について

 1999年「精神保健及び精神障害者福祉に関す る法律(精神保健福祉法)」の一部改正により 2002年から精神障害者ホームヘルプサービスが 実施となった。

 しかし、事業単価の低さや相談体制の未整備 などの事情により、市町村の事業開始は遅れ、

必要な人達ヘサービスが届くまでには到ってい ない。そして、サービスの定着を促進するには、

自治体・当事者・支援者・ヘルパー含め他多く の関係機関の連携が必要である。

 こうした中、各自治体単位で精神障害者ホー ムヘルプサービスのシステムを構築途上である にもかかわらず、2006年には障害者自立支援法 施行に伴い、自治体単位でのシステムから国の 指針に準じるシステムへの変化、障害区分認定 システムの導入、サービス提供時間の短縮化、

利用者に対する1割の応益負担が導入された。

加えて、精神障害者への支援経験ないヘルパー に対する精神障害者理解を深めるにあたり重要 な事前研修が事業所責任となり、事前研修の自 治体開催の実施責任の重要性と最低講習時間な どの枠組みが事実上終了するなど、制度に劇的 な変化がおこった。

 今後、退院促進や家族からの自立を目指す多 くの精神障害者が、自分らしい生活を築く上で、

精神障害者ホームヘルプサービスは有効な支援

といえる。しかし、これまで、サービスを利用 する側からの研究が行われてこなかった。そこ で、本稿では、まず、当事者が利用する際の負 担感について調査を行い、また、より詳細な状 況を明らかにするために、4名の方への面接調 査を行った。これによって、障害者自立支援法 施行前後における負担感の傾向や変化について 論じることを目的とする。

(2)研究方法について

 障害者自立支援法施行以前に、精神障害者ホ

ムヘルプサービスを利用した経験のある当事 者に対して、サービス利用における負担感の調 査を行った。調査期間は2005年8月から11月で ある。調査対象は、東京都内で単身生活をして いる精神障害者で、精神障害者ホームヘルプサ

ビスにおいて、利用・中断・終了を含み、過 去3ヶ月以上利用経験のある当事者とする。調 査内容は当事者の基本情報と5段階レベル調査 法(1から5)による設問40問に回答する形式 で、利用プロセスに沿う設問内容から負担の度 合いを尋ねた。

 さらに、サービス利用経験のある2名の当事 者の面接調査により、負担感の具体的内容を明

らかにし、支援者からどのような支援を受け、

負担感を軽減したかについて考察した。

 次に、障害者自立支援法施行後、上記同様の 条件にて、新規に精神障害者ホームヘルプサー ビスを利用している精神障害者2名に上記同様

(2)

16一 明星大学社会学研究紀要

の調査と面接調査を実施した。そこで障害者自 立支援法施行前後の負担感の増減や内容の変化 について把握を行った。

 仮説としては、当事者は精神障害者ホームヘ ルプサービスを活用したいが、申請手続きや他 者が自宅へ訪問する負担から利用することに抵 抗感がある。また、実際に精神障害者ホームヘ

ルプサービスを活用した中で起こる負担から、

利用の中断や終了に至るような場合があると考 えられる。

 本論文は平成22年3月法政大学大学院人間社 会研究科研究倫理審査委員会にて承認された。

2.調査について

 精神障害者ホームヘルプサービスの利用希望 がありながらも、手続きの煩雑さやヘルパーと のコミュニケーションの齪齪などにより精神障 害者ホームヘルプサービス利用の継続に至らな い課題がみられる。こうした利用に大きく影響 する、負担感を明らかにするため、当事者に対

して調査を行い、負担感の分析と考察について 述べる。

(1)調査の概要

 調査対象は、東京都内で単身生活をしている 精神障害者で精神障害者ホームヘルプサービス を現在利用・中断・終了を含み、過去に3ヶ月 以上利用経験のある当事者とその支援者とす る。支援者の定義は職業として当事者支援をお こなっている方を対象とした。

 調査の実施期間は2005年8月から11月で都内 精神保健福祉資源や精神科病院等へ調査を依頼 した。送付内容は、調査用紙・研究趣旨と情報 の取り扱いについてを明記した依頼書・調査用 紙記載後の返送用封筒である。各関係機関にお いて、当事者で協力希望のある方に調査を無記 名の形式により記載していただき、記載内容を

No.31

他者からの閲覧を回避するため、返送用封筒に より郵送の方法をとり、倫理上の配慮を行った。

調査回収状況は当事者調査票120部配布、46名 回収された。(回収率38%)

 調査内容についてであるが、当事者調査は基 本情報と利用プロセスに沿う設問内容から負担 の度合いを尋ねる設問40問に5段階レベル調査 法(1から5)で回答していただいた。

 ホームヘルプサービス利用における負担感は サービス提供内容や当事者の生活状況が密接に 影響するため、概況を把握するシートも活用し

た。

 調査における負担感については、利用プロセ スにおける、緊張、抵抗感、圧迫感、苦手意識、

不安感、不快感等を想定した。

(2)基本情報から

 基本情報から調査回答者概況について述べ る。回答者の傾向としては年齢50代、単身生活 経験5年以上、入院経験が5年から10年未満で あり、日中活動及び訪問支援などを利用してい る方は全体の70%を超えている。

 現状ホームヘルプサービスを利用中73.9%、

他26%は現在、一時的中断や終了等である。ま た、利用期間としては3ヶ月以上6ヶ月未満が 最も多く32.6%、次に2年以上の28.3%である。

 複数回答によるホームヘルプサービス利用の 感想としては、「よかった」と「ヘルパーと一 緒に家事や身の回りのことを取り組めるように なった」がいずれも20.5%であり、「徐々に慣 れてきた」「安心する」がいずれも17.9%、「ふ っう」15.4%であった。「負担となった」の回 答は15.4%であった。

 サービス利用の動機については「周囲の関係 者から勧められた」が最も多く58.7%、「本人 希望」が19.6%、「知人が利用していることを 聞いて」が13%である。サービス利用にあたり

(3)

March 2011 精神障害者ホームヘルプサービス利用における当事者の負担感について 支援者との支援関係継続期間については、3年

以上が39.1%と最も多く、次に6ヶ月未満・2 年半以上3年未満が10.9%と同数であった。

 以上のことから利用者傾向としては入院経験 が長い中高年世代で、支援者との関係性も長く、

周囲の関係者の勧めで利用開始している場合が 多いことがいえる。このサービスは2002年制度 化され、2005年当時では制度化3年未満という

こともあり、サービス利用期間は制度開始当初 からの利用者と最近開始した3ヶ月以上6ヶ月 未満と2極化している。また、日中活動や訪問 支援などホームヘルプサービス以外にも資源活 用をしている。

(3)サービス利用の負担感

 次に5段階レベル調査法(1から5)による 設問40問を設問ごとに平均値を算出し、棒グラ

一 17一 フで表した。平均値が高いものほど負担感が大 きいことを意味している。設問全体について、

申請前の準備段階からヘルパー派遣の終了に至 るまでの3つのプロセスに分類し、プロセスご とに各設問の平均点を棒グラフ化により下記の 結果が得られた。

①利用開始準備におけるプロセス12問からは  平均値の最小1.46、最大値2であり設問が進  むにつれ、徐々に平均点が増加している。

       (図4−1)

②利用申請における窓口対応のプロセスにお  いては平均点最小値が2.13、最大値2.37とな  っている。特徴としては、平均点の段階的増  加が3段階となっている。一部調査回答には  申請についてはほぼ支援者が代行しているた  め自分に負担感がないことやNA扱いとなっ

図4−1 当事者準備カテゴリー単純計算グラフ      12支援者と窓ロへ申鼠にいくこと

   11関係機関と娃務して申試を進めること 10サービス利用で生活のべ一スが変わったこと       9自宅にヘルパーがくること       8利用希望を継続すること 設問 6サ_ビス利用彊璽欝竃蕊珪      5ヘルパーの役割を理解すること   4サービスの手続きについて理解すること      3利用対象について理解すること      2サービスの内容を理解すること        1支援者と話し合いを持つ

      1

22.96913

1.

1.7 1.7

{,7

1.7 1.67

$.52 1.46

1.5 2

□系列1

2.5     3     3.5     4     4.5     5

平均値

図4−2 当事者窓ロカテゴリー単純計算グラフ

設問

 22事案所と派遣時間・内容を尋ねること 2$訪問認査で生活の様子を尋ねられること      20訪問調査を受けること     19申請害類を提出すること   18提出書類を理解すること   17申舘手続きを理解すること  16利用条件の説明を理解する    15生活状況を尋ねられる 14一人で窓口で利用希望を伝える     13窓ロヘー人で行く

2 7

2.2.2222 7

22 22

2.η 2.1 2.13

[コ系列1

1    1.5   2    2.5    3   3.5   4    4.5   5

       平均値

(4)

18一       明星大学社会学研究紀要       No.31  たものもある。       (図4−2)    派遣部分については当事者によりサービス

③実際にヘルパーが派遣されるプロセスにお   内容がことなるため、現在依頼していない内  いては平均点の最小値2.37、最大値3.02とな   容についてのNA扱いとなっているものもあ  り設問36以上から平均点が増加しており2段   る。       (図4−3)

 階の増加傾向がみられる。      ④ 当事者調査全体では平均点最小値L46、最

       図4−3 当事者派遣カテゴリー単純計算グラフ       40終了を窓ロへ連絡すること

      39自己都合で事業所ヘキャンセルすること

       38ヘルパーの交替       37目的地までの同行       36精神的・身体的不調を話すこと

      35困っていることを話すこと

     34ヘルパーにサービス内容の変更を伝えること

       33定期的にヘルパーが来ること

       32買い物に同行してもらうこと

設問       ロ系列1        31買い物を依頼すること

       30一緒に食事を作ること    29ヘルパーから食事の希望や味付けを聞かれること

       28食事を作ってもらうこと

    27ヘルパーと一緒に部屋の掃除・片づけをすること

      26部屋の掃除・片づけをされること

       25ヘルパーに希望を尋ねられる

      24希望をヘルパーに伝える

       231回目の派遣

       1     1.5     2     2.5     3     3.5     4     4.5     5

       平均値

3.02

89

2.7

2.6】

2.59

︷ミ1|︷︷llll︷︸︷Elil;︷:︷︷1︸| ﹈1|;ミil︸︸︸i|ミ:|ミ︸︷ミ︷|:

2.5

2.5

2.5

,46

.43

.43

.43

.41

.41

41

39

39

7 2

(5)

March 2011 精神障害者ホームヘルプサービス利用における当事者の負担感について 19一 大値302となり、準備プロセス、窓ロプロセ

ス、派遣プロセスごとに3層の段階が見られ

る。設問による順位変動がないことが特徴的 である。         (図4−4)

図4−4 当事者全体単純計算グラフ       40終了を窓口へ連絡すること

       39自己都合で事業所ヘキャンセルすること       38ヘルパーの交替        37目的地までの同行       36精神的・身体的不調を話すこと        35困っていることを話すこと      34ヘルパーにサービス内容の変更を伝えること        33定期的にヘルパーが来ること       32買い物に同行してもらうこと       31買い物を依頼すること       30一緒に食事を作ること   29ヘルパーから食事の希望や味付けを聞かれること       28食事を作ってもらうこと    27ヘルパーと一緒に部屋の掃除・片づけをすること       26部屋の掃除・片づけをされること        25ヘルパーに希望を尋ねられる        24希望をヘルパーに伝える        231回目の派遣         22事業所と派遣時間・内容を尋ねること       21訪問調査で生活の様子を尋ねられること 設問      20訪問調査を受けること

       19申請書類を提出すること        18提出書類を理解すること       17申請手続きを理解すること       16利用条件の説明を理解する       15生活状況を尋ねられる       14一人で窓口で利用希望を伝える       13窓ロヘー人で行く       12支援者と窓口へ申請にいくこと         11関係機関と連携して申請を進めること      10サービス利用で生活のペースが変わること        9自宅にヘルパーがくること        8利用希望を継続すること        7利用を決断すること          6サービス利用の必要性を感じること        5ヘルパーの役割を理解すること        4サービスの手続きについて理解すること       3利用対象について理解すること       2サービスの内容を理解する        1支援者と話し合いを持つ

3.02

89

2︐

2.61

2.59 2.5

2.5

2.5

.46

.43

.43

.43

.41

、4て

41 39 397722

2.2.

22 22 22

2.2

2.17 2.17 2.13

22t96.913

1㊨

1.7

1.7

t7 L7

1.67 重.52

1.46

1 て.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5

ロ系列1

平均値

(6)

20一 明星大学社会学研究紀要

(4)考察

 以上の結果を踏まえて、プロセスごとに考察 すると、まず、準備におけるプロセスは最も平 均点が低い理由として、日頃より関係性のある 支援者からの相談や同行などの支援により当事 者の不安感を和らげ、負担感の軽減に繋がり、

低いことが推察される。

 また、窓ロプロセスでは窓口へ支援者が同行 する設問では平均点は低く、窓口にて申請用 件・手続き・書類などの理解や提出の部分では 負担感の増加が顕著である。さらに訪問調査な

どで増加していることから、当事者が初めての 場面や人への緊張、手続きへの理解などの負担 が表れている。

 さらに、ヘルパー派遣開始時期のプロセスか らは平均点の最小値が準備カテゴリーや窓ロカ テゴリーの最大値以上となり、負担感の大きさ が特徴づけられている。理由としては、準備や 窓ロカテゴリーにおいては支援者の存在が負担 軽減の役割を果たしていると思われる。ヘルパ

派遣時に支援者が毎回同席などは難しく、当 事者本人がヘルパーという新しい人の存在であ ること、なおかつ自分の部屋に来るという2つ の負担があること。次いで、自分からコミュニ ケーションをとる必要性があることが考えられ

る。

 ただし、ヘルパーと一緒に取組む行為につい て、より平均点の増加がみられるのではないか と考えていたが、大きな変化は見られなかった。

データ的にはヘルパーから尋ねられる、掃除を してもらうなどの代理行為や声を掛けられる点 については若干低い数値がでている。サービス の内容や一緒にするかどうかという点よりも派 遣され、部屋にいることとそのものの負担感が 根底にあるように考えられる。

 そして、ヘルパーと支援者と比較すると、支 援者への相談が負担軽減するかと考えていた

No.31

が、負担感が高い結果が示されている。これは、

関わる人のかかわりの期間などの関係性の違い よりも、自分から相談する、またコミュニケー ションをとっていくなどの障害特性による負担 が大きいことがいえる。またヘルパーの交替や 事業所や窓口ヘキャンセルや終了を伝えること が負担の大きいことについては仮説に準じた結 果であった。

 なお、3つのカテゴリーを値の再割り当て後、

基本情報とのクロス集計を行い、x二乗検定を 行ったが、有意差が表れたものはなかった。

3.面接調査1(自立支援法施行前)

 障害者自立支援法施行前後において、実際に 精神障害者ホームヘルプサービス利用経験者と その支援者に対して、サービス利用の負担感と その対応を支援者がどのように行ったかを、調 査と面接調査により考察をいった。この際、協 力いただいた方には、本研究の目的や情報の取 り扱いについて説明の上、承諾書をいただき倫 理的配慮を行った。また、当事者に面接調査の 日時・場所・支援者の同席有無など希望を尋ね 面接調査の負担を和らげる配慮を行った。

(i)事例概要

 事例対象の設定としては、単身生活をしなが らホームヘルプサービスの利用経験を現在終 了・中断も含み3ヶ月以上経験した下記2事例

とし、面接調査は2005年9月に実施した。

事例①現在サービスを終了した事例1例(当     事者1名・支援者2名)

    設定理由として、サービス活用を望ん     でいたが、本人の希望するサービス内     容とはミスマッチがあり、終了せざる     を得ない事態の考察とその支援のあり     方を明らかにするため。

事例②継続して利用している事例1例(当事

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March 2011  精神障害者ホームヘルプサービス利用における当事者の負担感について    一21一 者1名・支援者1名)

設定理由として、サービス利用の負担 がありながらも長期に活用できる理由 面接罰査事例①

とその支援のあり方を明らかとするた

め。

利用を終了した事例(障害者自立支援法以前)

利用開始から終了の経緯 利用目的

年代 40代

性別 男性

①生活リズムの建て直し

②食生活の安定から身体疾患悪  化を防ぐ

単身生活経験 5年以上

入院経験 5年未満

支援者との継続支援関係 ②約1.5年③約3年以上 当事者がよかったこと

支援者の所属

②病院PSW

③小規模通所授産施設  職員

(開始は周囲のすすめ)

身体的疾患から主治医の勧 めにより本人及び支援者含 めカンファレンスを行い利 用することとした。

申請や調査は一人で対応し ている

(終了)

自治体から3ヶ月利用後の 継続の意思確認の調査書類

に自ら終了を希望し、本 人・主治医・支援者②・③ でカンファレンス後終了と

なる。

その後自炊を自分でするよ うになった。また利用をし てみたい気持ちはある。

買い物でかさばるものを持っ てもらったこと。

日中活動 無(不定期利用)

訪問支援

利用状況 3ヶ月で終了

サービス内容 派遣時間・回数

家事援助

(週1回2時間)料理・

掃除・片付け・一部買 い物

当事者の感想や負担であっ

た事 当事者の希望 支援者のかかわり 支援者からみた課題

ヘルパーが女性でお料 理や片づけが上手な人 を依頼したい

当事者の対処

(調査設問から)

①ヘルパーの役割

②1回目のヘルパー派遣

③ヘルパーに困っているこ  とを話す

(感想から)・ヘルパーが来る時間合わ

 せること一緒にいること  が負担。

男性ヘルパーだったこ

 と。

料理の味が好みではなか  った。

掃除の仕方が大雑把な感  じがした。

掃除を一緒にやろうとい  われるとしょうがないと  思いつつやった

申詰窓口には一人で行っ  たが、誰かそばにいてほ  しい気持ちもあった。

関係者からも聞かれ ず、特に何もしなかっ

支援者②

訪問看護及びサービス利用 の感想含めフォローと主治 医との調整や関係者とのカ

ンファレンス調整 支援者③

通所先職員が申請窓口との 調整及びフオロー サービス利用のイメージ化 のために利用したことのあ る当事者の体験やヘルパー 実習性と話す機会を持つな ど動機付けを高める対応を 行った

支援者②・③ともヘルパー 派遣事業所との連絡調整は

支援者②

本人の病状や気持ちの変化でサ

ビス利用の本人の意向が変化 した場合、本人の気持ちをどの ように共有化してサービスの調 整をしていくのか。

支援者③

初対面に人と話す緊張からヘル パー受け入れが負担。また自治 体訪問調査も初対面であると、

質問の仕方や説明の内容により 伝わりにくい。よい面が現れる まで時間がかかるため、それ以 前に終了や中断となり、サービ スの効果が得られない。

支援者いずれも接点ある都度 利用状況のフォローをしている が本人はフォローしてもらって いる実感がない。手続きなどは 問題ないが自分の気持ちなどを 伝えることに負担がある。手伝 ってほしくても踏み込まれるの も負担ということへの対応の工 夫が必要。

ただし、利用して初めてサービ スが実感できた、次にどうする か検討する機会になった。

(8)

22一 面接調査事例②

明星大学社会学研究紀要

継続利用中の事例(障害者自立支援法以前)

No.31

利用開始の経緯 利用目的

年代 50代 制度化以前、急に単身生活 単身生活を安心して送りた

性別 女性 ならざる得ない事態とな

り、通院先PSWと保健師

単身生活経験 5年以上 が有料のホームヘルプサー

ビスを利用を調整。

入院経験 6ヶ月未満 制度化後、本人希望により、

支援者との継続支援関係 3年未満 通所先職員の支援で利用開

始。制度化以前も通算する 当事者がよかったこと 支援者の所属 ④小規模通所授産施設 と10年利用。訪問調査・申 電化製品など買い替えな

日中活動 請は通所先職員が同行支

援。

どの同行・自治会費を支払い手伝い

訪問支援 入院が減った

利用状況 利用中(制度化1年半)

サービス内容 家事援助(月1回3時

派遣時間・回数 問)

掃除・一部買い物

当事者の感想や負担であったこ 当事者の希望 支援者のかかわり 支援者からみた課題

(調査設問から) ヘルパーの年代が近す 制度化後の申請同行・訪問 同じヘルパーに10年以上関

①1回目のヘルパー派遣 ぎず、離れすぎないよ 調査同席などの対応。本人 わってもらっていることが

②自分の希望はヘルパーに伝え うにしてほしい。 からヘルパーとのやり取り 良くも悪くも影響している で相談については受けてい ことがある。信頼を築きな

③ヘルパーから希望を尋ねられ るが、ヘルパー事業所への がら距離をとる難しさを感 調整はしていない。 じる。

④部屋を片付け掃除されること

(感想から)

いろいろいわれるのが困る

やめたくなるときもある

ヘルパーが年が離れすぎると あわない

病院へ連絡されてしまう心配 当事者の対処 がある

書類を間に合わせるのが負担 通所先職員へ相談して いる

窓口で最初の一声が掛けられ ず、相手が気づくまでずっと 待つ。

 それぞれ事例の面接調査場面設定について は、当事者に支援者同席有無の希望を聞き行っ た。事例①は当事者と支援者はそれぞれに面接 調査を行ない、事例②の当事者面接調査には支 援者が同席した。

 面接調査方法については、まず当事者・支援 者調査に記載をしていただき、基本情報などの 補足事項を質問した。次に調査の項目内容にお いて、5段階レベル調査法の回答設問から特に 負担感が高いものについて、詳しく尋ね、時間

は約1時間程度とした。

(2)面接調査結果

① 当事者の視点から

 サービス利用の経緯や目的としては、2事例 とも周囲の関係者の勧めで利用を開始してお り、当事者調査と同様である。また利用目的と しては、自分の苦手な部分の支援や生活環境を 改善したい点が上げられている。

 負担が大きい設問内容はいずれもヘルパーに

(9)

March 2011 精神障害者ホームヘルプサービス利用における当事者の負担感について 対するもので、ヘルパーが具体的に自分にとっ

て何をしてくれる役割の人であるかわからな い。ヘルパー初回の派遣や、ヘルパーと一緒に 何かをする、またコミュニケーションをとるこ

とであった。

 上記の負担については、自分から支援者に相 談する、直接ヘルパーや担当窓口等へ相談する、

特に相談しないなど事例により異なっている。

② 支援者の視点から

 支援者の傾向は、いずれも当事者への支援を 継続した関係であり、ホームヘルプサービスだ けでなく、日常的に当事者を支援している。

 具体的な支援内容としては、サービス利用開 始にあたり、当事者を交えたカンファレスの調 整や申請窓口との調整、申請プロセスにおける 同行や同席を行っている。

 そして、当事者が順調にサービス利用してい るか感想を聞くことや困る点がないか確認を取 る支援を行っている。さらに、当事者からホー ムヘルプサービス利用している中で困る点など の話を聞き、問題を整理し、具体的にヘルパー

とのコミュニケーションのとり方の提案などを 行っている。ただし、いずれもヘルパー事業所 や担当ヘルパーとの連絡調整は行っていない。

 その他、支援者からホームヘルプサービスの 課題として、下記の点が上げられている。

 a) 当事者がヘルパーからの声かけ・提案・

  促しについて理解した上で、当事者の希望   や気持ちを伝えるコミュニケーションが円   滑に図りにくいこと。

 b)当事者にとっては新しいヘルパーという   存在を精神的に受け入れること、関係性を   前向きにつくろうとするといった心理的距   離を縮めるためには、タイミングや時間の   経過を必要とすること。ヘルパーという新   しい存在が当事者の自宅を訪問すること

23一  は、当事者が安心できる空間に脅かすよう  な違和感を生むといった物理的距離感を和  らげる工夫が必要であること。

c) 当事者はサービス利用の申請手続き及び  説明や理解を促す支援が必要であること。

 ヘルパーが具体的にどのような内容の支援  を行い、当事者自身にどのように役立つの  かというイメージ化には支援が必要である  こと。

d) 当事者の気持ち・病状・生活の変化に合  わせたサービス内容の変更や希望をホーム  ヘルパーのみならず、周囲の関係者がキャ  ッチし、関係者で共有し、当事者が希望す  るホームヘルプサービスを柔軟に提供して  いくこと。

e)ヘルパーが当事者の力を引き出していく  支援のあり方を研修すること。

(3)考察

 当事者がホームヘルプサービスそのものやヘ ルパーが何をしてくれる人なのかについてわか らないという点へは、口頭の説明等だけでは限 界があり、体験を重ねながらイメージを作って いく必要があることがいえる。場合によっては 短期で終了することもあるが、自分にとって本 当に必要な支援なのか、求めていたことが提供 されたかを相互に確認しあえる場があること で、結果的に終了となっても生活課題の共有に

もつながる効果がある。

 イメージ化をするために、ヘルパー養成講座 の実習を通所先でうけ、当事者とヘルパーが接 する機会をもつことや、他利用者からサービス を利用しての感想を聞く機会なども効果が期待 できる。

 当事者は生活で困っている家事援助を中心と したサービスを活用したいが、特にヘルパーと のコミュニケーションや距離感について、負担

(10)

24一 明星大学社会学研究紀要 を感じながら利用していることが顕著であっ

た。

 当事者が希望したいこと、ヘルパーから尋ね られることそれぞれのコミュニケーションのキ ャッチボールが順調になるには、ある程度時間 が必要である。しかし、その関係を作るプロセ スそのものが、当事者に負担になる場合もあり、

結果的にサービスの終了につながる危惧さえあ るといえる。その負担を和らげるために、支援 者が問題整理や助言等を行なっている。

 事例1では、他支援者と異なりヘルパーは、

初対面で自宅へ来るため、いきなり、本人と物 理的な距離感が近いところから関係がスタート している。ヘルパーに限らず、当事者との関係 づくりにおいて緊張が和らぐ心理的距離は、す ぐに見極められるものではない。また、その都 度日によっても異なる場合が多いといえる。

 当事者もサービス利用を通じて、自分から希 望や要望をヘルパーや支援者に伝えられるよう 次第に変化してくる場合もある。

 その一方で、なかなか自分から表現すること が苦手である当事者の場合に、この負担を和ら げるためには、事前のアセスメント時に配慮す る事項として関係者含めて共有することや、状 況に応じて当事者を含め話し合いをする必要性 がある。場合によっては支援者がヘルパーとい る場面に同席し、支援者とのコミュニケーショ ンをとっている様子をモデル的にヘルパーにも 実感してもらうなど機会があることも工夫のひ

とつとしてあげられるのではないだろうか。

 今回の面接調査にご協力いただいた方々は負 担を感じつつも支援者の対応により比較的長く 利用が継続しているが、今後新たに利用希望対 象者を意識する場合には、ヘルパーや申請窓口

を含めた調整を丁寧に行えるシステムは必要で

ある。

 当事者の常に変化するニーズを把握し、当事

No.31

者を含め関係者が共有し、相互にズレを確認す る場や人をどのように作っていくかは課題であ る。高齢者のようにケアマネージャーの存在は ないが、唐突に新しい人がなるのも問題である。

やはり、継続した関係性がニーズ把握には重要 であるため、精神障害者が活用しやすいケアマ ネージャー的な役割が必要である。

 さらに、ヘルパーについては「一緒にやる」

そのものが目的とならないことと同時に、ヘル パーの支援の質を高める意味でも養成研修後も フォロー研修として、当事者の力を引き出して いく支援のあり方や心理的距離感やコミュニケ

ションについて体験的に学習できる研修の機 会が求められる。

4.面接調査2(自立支援法施行後)

(i)事例概要

 事例対象の設定としては、障害者自立支援法 施行後、単身生活をしながらホームヘルプサー

ビスの利用経験を現在終了・中断も含み3ヶ月 以上経験した下記2事例とし、面接調査実施時 期は2009年11月に行った。

事例③ 現在精神障害者ホームヘルプサービス     を利用している事例1例(当事者1     名・支援者1名)

    設定理由として、支援者からの勧めに     より支援開始となっているため。

事例④現在精神障害者ホームヘルプサービス     事例1例(当事者1名・支援者1名)

    設定理由として、障害者自立支援法施     行以前からホームヘルプサービスへの     関心がありながらも、実際の利用にい     たらず、障害者自立支援法施行後、支     援者の支援がほほない形でサービス利     用を継続しているため。

(11)

March 2011  精神障害者ホームヘルプサービス利用における当事者の負担感について 面接調査事例③       継続利用中の事例(障害者自立支援法施行以降)

25一

利用開始の経緯 利用目的

年代 30代 グループホームを退所し、 苦手な掃除やかたづけを手

単身生活に移行するにあた 伝ってほしい

性別 女性 り、生活課題とされていた、

単身生活経験 1年以上3年未満 片付けや掃除を中心とし、

関係者の進めで退所準備と

入院経験 2年未満 並行して利用開始の準備を

支援者との継続支援関係 5年未満 進め、単身生活開始後まも

なく、利用開始となる。支 当事者がよかったこと 支援者の所属 グループホーム職員 援者からの勧めで、食生活 ・自分が苦手なお風呂の掃

をよりよくすることも必要 除をやってくれる 日中活動

であるため、適宜料理を一 部屋がきれいになる

訪問支援 緒につくることもサービス

内容に盛り込むこととし

食事が食べられる

利用状況 利用中(1年) た。

サービス内容 派遣時間・回数

家事援助

(月2回1回1時間)

掃除・一緒に料理 当事者の感想や負担であったこ

当事者の希望 支援者のかかわり 支援者からみた課題

(調査設問から) 現在のように掃除を中 利用申請のための行政同行 ヘルパー活用を始め1年が

①担当窓口の人が訪問調査にく 心として支援をしてほ 支援・障害区分認定面接の 経過した。ヘルパーとの関 ることについては知らない人 しい食事は相談しなが 同席・利用開始の伴うヘル 係もよく、順調に支援をう の自分の家入られることが負 ら作っていきたい パー事業所の選定支援と契 けており、本人の満足度も

約など同席支援。本人から 高い。日中活動や就労から、

②担当窓口の人がいろいろ聞か ヘルパーとのやり取りで相 疲れや物理的な時間の確保

れることが負担。 談については受けている などバランスもあり、本人

③ヘルパーが交替することは一 が、ヘルパー事業所への調 のみで身の回りの事をする 番負担。慣れてない人がくる 整はしていない。本人がへ 負担が大きい。また食生活

のと緊張する。 ルパー事業所とやり取りし の課題も顕著になりつつあ

④ヘルパー事業所との調整はど ている。本人より一緒に作 るため、現状の日中活動を のようにしてよいかわからな るメニューなどの相談は通 維持するためには、ヘルパ

い。 所施設がうけており、必要 の派氾回数を増やし、よ

に応じて助言している。 り安定度を高めることが必

(感想から)・最初に来たときは緊張したが

当事者の対処 要と思われる。

だんだんに慣れてきた。

緒に作る料理のメニ

・ヘルパーが来ると安心する ユーなどは自分の食べ

季節の変わり目に衣替えでき たいものや派遣時間な

助かる ど兼ね合いもあるの

少しずつ料理をすることがで で、通所職員へ相談す きるようになった ることもある。

(12)

26一 面接調査事例④

明星大学社会学研究紀要

利用継続事例(障害者自立支援法施行以降)

No.31

利用開始から終了の経緯 利用目的

年代 60代 以前からご本人はサービス 自分だけでは取り組みにく

に関心があり、情報として い清掃をお願いしたい

性別 男性 は知っていたが、直接的利

単身生活経験 5年以上 用にまではいたっていなか

った。単身生活が継続する 入院経験 5年以上10年未満 につれ、ご自身だけでは取 支援者との継続支援関係 3年以上 組みづらい水周りの清掃が

必要な事態となったことが 当事者がよかったこと 支援者の所属 グループホーム職員 直接のきっかけとして利用 水周りの汚れを気にしなく

開始を決心した。ご本人も てよくなった。いつも部屋 日中活動

以前から関心があり、同時 がきれいで快適。

訪問支援

期に親族や関係者の勧めも

あり、継続的に清掃を依頼

利用状況 利用中 することとなった。

(6ヶ月以上1年未満)

サービス内容 派遣時間・回数

家事援助

(週1回30分)

掃除 当事者の感想や負担であったこ

当事者の希望 支援者のかかわり 支援者からみた課題

(調査設問から) 現状の掃除を中心にし 障害者自立支援法施行以前 現状の時点では、ご本人の

①1回目のヘルパー派遣最初は て担当者も変更なく継 からホームヘルプサービス 満足度も高く、利用につい

緊張した。 続してほしい には関心があったため、必 て不都合や負担を感じてい

②自分の希望することをヘルパ 要に応じて情報提供を行っ る部分は余り見受けられな に伝えること あまりいろ ていた経緯がある。 い。今後事業所の都合など いろお願いすると申し訳ない 今回の実際のサービス利用 でヘルパー担当者が変更に  と思った。

③ヘルパーと一緒に掃除や片づ 当事者の対処 開始になるにあたり、本人 より様々な方法について情

なるなどの場合、新しい方 に慣れるまでの負担感につ けをすること わからないことや困っ 報提供を求められた。そこ いて課題となると思われ

本来掃除は自分が行う必要 たことは、グループホ で、企業による家事援助サ る。

があることを、ヘルパーさん

ム職員などの相談し ビス・NPOなどの有償 にお願いすることが申し訳な ている。 家事援助サービス・障害者

いと思った。 自立支援法のサービスなど

(感想から) それぞれにおいてのメリッ

サービス開始当初は緊張した ト・デメリット・費用など

が、今は慣れた。安心できる。 を情報提供を行い、ご自身

いつも水周りや部屋がきれい でサービス利用を決断され

になった。 た。利用必要な手続きは、

本当は自分でもっと掃除など ご本人が単独で行い、時折 するべきなのにという気持ち 本人より必要に応じて電話

もある。掃除全般はヘルパー などでの助言であった。同 さんのお願いしているが、1 行はしていない。ヘルパー ヶ所だけ自分で掃除をする場 派遣事業所の選定も単独で

所をつくりやっている。 調整し、サービス実施にい

たっている。

(2)面接調査結果

 それぞれ事例の面接調査場面設定について は、当事者単独にて実施した。

 面接調査方法については、まず当事者・支援 者調査に記載し、基本情報などの補足事項を質

問した。次に5段階レベル調査法の回答設問か ら特に負担感が高いものについて、詳しく尋ね、

時間は約1時間程度とした。

(13)

March 2011 精神障害者ホームヘルプサービス利用における当事者の負担感について

① 当事者の視点から

 サービス利用の経緯としては、1事例が周囲 の関係者の勧めで利用を開始している。1名は 以前から関心はあったが利用開始までは至ら ず、生活上自分自身だけでは、取組めない事態 が生じた点と、周囲の勧めがタイムリーに行わ れたことで利用開始となっている。また利用目 的としては、自分の苦手な部分の支援や生活環 境で改善したい点が上げられている。

 負担が大きい設問内容として、事例③はサー ビス利用に必要な申請手続きにおいて、関係性 のない担当者から聞き取りや訪問を受けること による緊張感である。

 障害者自立支援法施行以前はヘルパーの派遣 事業所を行政が決定していたが、施行後は当事 者が選定することに制度上変更となった。1名 は自分で事業所の選定や調整をすることに負担 を感じている。

 次にヘルパーに対するものとしては、事例④ からは本来掃除は自分でするべきものを頼み、

支援を受けることに対する心苦しさを感じてお り、一部は自分でも取組める掃除の場所をつく るなどをヘルパーと相談して実施している。

 2名とも共通していた点としては、ヘルパー が最初に訪問した場合の緊張感であったが、い ずれもしばらくすると慣れてきて安心に変化し ている。次にヘルパーの交替があげられており、

新しい人に緊張感を持ち、慣れるまでに負担を 感じることがあげられている。

 上記の負担については、自分から支援者に相 談する場合と、相談は行わず、自分なりの対応

している場合があり、事例により異なっている。

② 支援者の視点から

 支援者の傾向は、いずれも当事者の支援を継 続した関係であり、ホームヘルプサービスだけ ではなく、必要に応じて日常的に当事者を支援

27一 している。

 具体的な支援内容としては、1名については、

サービス利用開始にあたり、障害区分認定に必 要な医師の意見書作成依頼などを含め主治医と の調整や申請窓口との調整、申請プロセスにお ける同行や同席を行っている。ヘルパー事業所 選定、利用契約の調整(派遣内容・派遣時間・

回数)を行っている。

 そして、当事者が順調にサービス利用してい るか感想を聞くことや困る点がないか確認を取 る支援を行っている。さらに、当事者からホー ムヘルプサービス利用している中で困る点など の話を聞き、問題を整理し、具体的にヘルパー とのコミュニケーションのとり方の提案などを 行っている。ただし、いずれもヘルパーサービ スの定期的利用開始以降、ヘルパー事業所や担 当ヘルパーとの連絡調整は行っていない。

 1名については、サービス利用を考える上で、

障害者自立支援法以外の様々な家事援助サービ スの情報提供を行い、同行など支援は行ってい ない。本人からの相談があれば必要に応じ情報 提供や助言である。

 その他、支援者からホームヘルプサービスの 課題として、下記の点が上げられている。

 a)当事者のヘルパーとの物理的・心理的な   距離感の取り方。

 b)当事者が手続きを安心して行えるような   支援(同行・同席など)

 c) ヘルパーが当事者と一緒に取組む場合に   は、当事者の力を引き出していく支援のあ   り方を研修すること。

 d)支援者・ヘルパーは当事者自身のもって   いる、自分が苦手であることを認め、人に   お願いしなくてはいけない心苦しさなど対   して配慮ある対応が必要である。

(14)

28一 明星大学社会学研究紀要

(3)考察として

 当事者がホームヘルプサービス利用開始にあ たり、生活課題が明らかで支援してほしい内容 が具体的である場合はスムーズに進むことがい える。また、他に相談できる支援者や関係機関 との関係性が強い場合は、ホームヘルプサービ ス利用において、困った事態が起きても相談で きる人がいるという安心から、問題の早期解決 が可能となり、問題が大きくなることを防いで いるように思われる。

 これは当事者自身が問題を整理しながら、だ れに相談すればよいかを選び、相談する行動が とれているからこそ成り立つことである。

5.まとめと考察

 制度上の変化として、障害者自立支援法施行 後は、利用手続きが複雑になったために、どの ようなプロセスを踏むと、利用開始にいたるの かについては、支援者が見通しを持って支援を 行う必要がある。次に課題としては、施設から の退去や退院後スムーズなサービス導入が制度 上難しいために、最も環境変化があり、支援が 必要とされる時期にタイムリーな利用開始に繋

rb S りCこくV、。

 具体的には福祉サービス受給者証の発行申請 のため、多くの書類の記載と用意が必要であり、

また生活状況の聞き取りについては設問そのも のが精神障害者の障害や生活のしづらさを明ら かにする内容には不十分である。認定審査会開 催頻度や審査会委員が各自治体により異なるた め、同じ精神障害者でも自治体毎で区分判定基 準に差異があり、サービスの利用時間や頻度の 決定の適正性が問われている。

 こうした制度的課題から言える事は、手続き が複雑になったこと、さらにタイムリーな活用 に至らず、利用のハードルはあがってしまった と考えられる。

No.31

 ただし、手続きは一過性のものであり、かつ 支援者等の同行により解決する場合がある。重 要な点としては、サービス導入時にヘルパー事 業所との調整と、本人の緊張感や他者が自宅に いる抵抗感に無理がない事を前提として、具体 的支援が適切に提供されることである。

 次に、日常的な支援者が不在であることや相 談できる人がいない、当事者にとってはヘルパ

との関係が悪化した場合、相談する先の確保 や立場の違う助言が求めづらく、利用中断に繋 がる危倶は自立支援施行以前同様変化はない。

 当事者の負担感については、今回の2事例か ら共通に見られる負担の内容はヘルパーの交替 と1回目のヘルパー派遣における点である。ヘ ルパーの交替については当事者調査全体単純計 算グラフ図4−4にみられるように、負担感の 調査数値では278と負担感が全設問中3番目に 高い項目に該当している。次に初回ヘルパー訪 問については、負担感では平均値は2.37であり、

負担感については全設問中17項目となってい る。そして1事例は訪問調査を受けることやそ こで生活状況を聞かれることに負担を感じてお り、当事者調査では2項日とも平均値2.3であ り、負担感は全設問中19番と20番目に該当して

いる。

 こうした経過から当事者の負担感の内容や傾 向については大きな差異は認められなかった。

今回の調査項目及び面接調査の方法は前回と変 更していない。実際に2名に面接調査を実施し たが、障害者自立支援法施行前後において、大 きな違和感のある設問や当事者が解答に苦慮す るものはなかった。

 今回の面接調査による聞き取りのため、障害 者自立支援法前後において、負担感の増減につ いて、量的な比較については、明らかではない。

しかし、負担感の内容などについては、大きな 変化はないことが言えると考えられる。

参照

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