水平水路における跳水の基礎的研究
一定常跳水の跳水長について一
川 端 猛
者蒜
言
水門の開口から流出する流れやダムを越流した流れは一般に射流であって,このような 流れが下流の常流と出合うところでは渦によって流れが急激に遷移する。この現象を跳水
(Hydraulic jump)といい流れが射流から常流に変わるところでは例外なく現われる。
跳水の応用は多方面に亘っている。Chowにょると
(1)ダム,堰,その他の水理構造物を越流する水のエネルギーを減らして構造物の下流 側の洗掘を防止する。
(2)測水用フリュームの下流側の水頭を回復し水位を高めて,灌泡,その他配水用の水 路における水位を保持する。
(3)水叩きの上の水深を高めて水叩きにかかる重量を増加し.構造物に作用する揚圧力 を減らす。
(4)下流で跳水が潜ってしまうようにすると,有効水頭がへるので下流水位を抑制して 水門の流量を増加する。
(5)射流や測水地点を設けられるように支配断面ができる特殊な流れの状態をつくる。
(6)水の浄化に用いる薬品を混和する。
⑦ 上水道における曝気
(8)給水管中の空気を除いて流れを滑らかにする。
等がある。
1818年にイタリヤのBidoneが跳水の実験的研究を行って以来, B61anger, Bresse,
Darcy, Safranez, Einwachtcr, Smetana, Ba1 hmieteff, Kindsvater, Ludin, Woy−
cick等の研究者が従事してきた。
我が国でも永井荘七郎 岩崎敏夫,椿東一郎をはじめ多数の研究者が寄与している。
このような跳水現象のうちで,水叩き等の設計に必要な要素である跳水の表面渦の長さ は流れの流速分布等を仮定しない限り,一次解析法では理論的に求められない。そこで本 研究においては実験的に表面渦の長さに影響する水理量を測定し,従来の研究と比較し,
合せて相互の相関性を追及するものである。
1跳水の水理
(1)跳水の水深
図一1において跳水をはさんで2つの断面1,2を想定する。各々の水深,流速,流積
をYi, y,,τJI, U、, al, a2,とし両断面間に運動量を考えると,
2
wy三
一定 b
充幅 量
I r−v.各
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・
8 ぐiO︐刀
図 1
({ ;一・v12+Pl)a・一(丁・ …+P・)a2 ・……・…・(…)
.となる。
ただしP.P、・緬・,2における圧力,P一がψ
w:水の単位体積重量,Q=a、v、ニa2−u、
q:Q/b:単位流量 変形すると
与一参こ一(Tl _ η29 9)q ……・・…・(・・2)
さらに
y・ == −S−y・+1停+誓こ …・…・・…(…)
治rみ(断面・の…u・・数)を代入し・
Y2/・・一丁(・/8F・,2+・一・) …・・…・…(1・4)
(2)エネルギー損失
跳水によるエネルギー損失は跳水前後の比エネルギーの差に等しく,図一ユにおいて断 面1,2の比エネルギーをH、,H,とすると
A…−H・−H・一(計+y・)一腸+Y2)一一呼蒜)3 −……・(1・・)
rである。
(3)跳水長(L)に関する従来の実験式
跳水長は流れの流速分布を仮定しない限り,一次解析法では理論的には求められないの で,従来より幾つかの実験式が求められている。著名なものを列挙すると,
⑧ Safranez式
⑤ Ludin式 ◎ Smetana式 ⑥ Woycicki式 ◎ Bakhmeteff式 ① 米国開拓局の式 等がある。
L=6yiFr、
L=4.5y2 L= Y2−Yi 1 1 4.5 6Fri
L=6(y、−y、)
L−
( Y28−0.05 Yi)(Y・一・・)
L=4.8y2
L=6.9(!ノ2− Yエ)
・…・……・(1・6)
・一・・・・・・… (1●7)
…………(1・8)
・・・・・・・・・… (1・9)
…………(1・ユ0)
…………(1・ユ1)
・…・…・…(1・12)
ll 実験装置及び方法
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図2
実験は長さユ2m,幅0.4m,高さ0.4mの銅及びガラス製の傾斜可変開水路で水路の ほぼ中央に表面をエナメルで塗装し十分に磨いたコンクリート製の堰(高さ21c皿)を設置 し射流をつくり,下流側にはゲートを設けて常流をつくり,2つの流れをぶつけ跳水を発 生させた。
流量は上流端に設けられた全幅堰により,流速及び水深は図一2の断面1,2,3でピト
ー管及びポイントゲージにて測定した。跳水の長さは水路の両側面にスチールテープを接 着し測定した。水路の粗度係数はマニング式より71=0.006程度である。流量,流速,水 深の精度はかなり高いが跳水の長さはその性質上かなり落ちる。
皿 実験の妥当性
この種の模型実験では幾何学的条件の他に実物と模型とのFroude数を同一にする必要 がある。又水平床に生ずる跳水にはいくつかの異なった型式があるが,この実験では実際 に最も生じやすい定常跳水(Steady jump:Fr、=4.5〜9.0)についてのみ行なった。
実験資料の妥当性を吟味するのに(1・4)式
鋤一丁(1/8Fr、2+1−1)
・・・・・・・・・… (1・4)
と実験資料(個数100)の比較をして
みた。
(1・4)式を基として資料を調べると 4.5%程度の誤差であり,解析資料と して十分に役立つものと推察できる。
N 従来の実験式の検討
前記した実験式を実験資料を基に検 討することにする。
@ Safranez式
L=6y1Fri ・・・・・・・・・… (1・6)
この式は断面1の流速,水深の2つ が測定できれぽ跳水長が求められる簡 明な式であるが,当実験資料との差異 は16.8%であり,跳水長は当資料よ
り小さめにである。(図一4)
乙=4.5y2 ・・・・・・・・・… (1.7)
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図 4
7.0 8.0
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5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 8.
図 3
Fr、
この式は(1・6)式を改良したもの で,常流水深のみの測定で跳水長が求 められる簡明な式である。当資料との 差異は22,6%で(1.6)式同様跳水長 は少なめにでる。(図一5)
⑤ Ludin式
L−−iY−一 −Y_ 「………(・・8)
4.5 6Fri
この式はSafranez式を別の角度か ら見直したもので複雑な型をしてい
る。
差異は23.4%,跳水長は少なめに でる。(図一6)
◎ Smetana式
L=:6(Y2・一一Y1) ・・・・・・・・・… (1・9)
常流水深と射流水深の差が測定です れぽ跳水長が求められる式で.変形す
れぽ,
Y2−Yi_1 L 6
となり跳水のなす角(tanθ)が一定だ ということになる。
当資料との差異は9.4%,跳水長は 少なめにでる。(図一7)
⑥ Wogcicki式
L=(8−0.05y2/!ノ1)(Y2−Y,)
…………(ユ・10)
常流水深と射流水深の比及び差が測 定できれぽ跳水長の求まる式で当資料
との差異は15.3%程度であり,跳水A 長は当資料より大きめにでる。(図一
8)
◎ Bakhmeteff式
▲L=4.81〆2 ・・・・・・・・・… (1・11)
Safranez式L=4.5y,と同型で係数 が異るだけである。差異はユ6.0%で 跳水長は同じく少なめにでる。(図一5)
① 米国開拓局の式
7
5.
65
60
55
50
45
40
7.0 7.5 8。0 8.5 9.0 9.5 10.0 10.5
1
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5.
図5 y2
L=6.9 (Y,−Y1) 一・… (1 ・12)
Smetana式L=6(y,−Yi)と同型 で係数のみが異る式である。差異は,
4.ユ%で跳水長はほんの少しだけ多目 である。(図一7)
以上7式と当資料との差異をまとめ たのが表一1である。各式は各々仮定 条件,実験条件が異なり一概にその良 否を決めかねるが,この表から推察す ると米国開拓局の式及びSmetena式 がよく当てはまる。
V 著者の提案式
4.
5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 図 6
−−Frl
FrOude数であり跳水の長さはFroude数による表示が必要と考える。又跳水現象は射流 が常流に遷移するためにエネルギーを棄てる現象とも云えるから,エネルギーの損失量と E「で示す如く,各式に相当の差異が
あるので現象を別の角度から見る必要 があると考える。
跳水が生ずるには常流と刮流の2つ の流れがなくてはいけないと考える と,その2つの流れを表わす数を用い る必要がある。流れを適切に示すのは
ユ38
跳水の長さとは何らかの関係があると 考えられる。
そこでL・=f(Fr,, Fr、, AH)という
関係を想定し,Saframez氏の資料及 び当資料を検討してみると
L/・H−・・(Fr2Frt)・…・・(・・1)
なる型が適するようである。
・H一 断註………(…)
F・・ == 1/蒜・現一〆㌫
・・・・・… ◆… (5・2)
(1・5),(5・2)式と連続の方程式 Q=by、U、=by、・V、
とを(5・1)に代入し整理すると 川2
Y2)3 ノ享
・・・・・・・・・… (5.3)
となり,Yi, Y2の関数となる。
8.0
{i
K︳UK︶!﹇
7.5
7.0
6.5
6.0
6.0
5.5
5.0
4.5
4.0
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●
●
6.0 6.5 7.0 7.5 8.0 8.5 9.0
図 7
Lミ︵8こo︐1 ∴°5凱︸
XJ 2
y・2 ︐
9
● ●
●●
●
● ●
●
●
●■ ●
●
●
﹂.
●
● ● ● ・
●
6.0 7.0 8.0 9.0 ]0 11 12
図 8
y2/Y、
一(y,−y、)
当資料100個を基にβの値を求め るとβ=24.607となり(5・3)式は
L−・4…7±
・・・・・・・・・… (5・4)
となる。(図一9,10)
M 結 語
この実験及び解析から推察すると
(1)跳水の表面渦の長さは測定がと ても難かしい。Wで示したように 実験者によってその長さの測定が 異っているようにみうける。
(2)この種の理論式のない問題では 幾多の実験式が提案されるであろ う。例えぽ跳水前後のFroude数 の差も跳水長に影響を与える要素 であると考えられる。
(3)図一10を基に考えると,Yiを一 定にするとy、が大きくなるとLも大きくなる。y,を一定にしてみるとLは放物線 的変化をする。又y、,g、を共に大きくするとLも大きくなる。
表 1
研 究 者
Safranez
Ludin
Smetana Woycicki Bakhmeteff
米国開拓局
tt
,1 1
ヲ
験 式
L=6YiFr1
L=4.5y2
L−(Y・一・・)/(☆一詰=)
」L=6(!ノ2−Yl)
L−(・一…ll)(Y・一・・)
L=4. 8y2
L=:6.9(!ノ2−!ノェ)
差異
16.8%
22.6%
23.4%
9.4%
15.39ち
16.0%
4.1%
跳水長の多少,
少
少
少
少
多
少
E
多
1
A
65
60
55
50
45
40
●
1
L=24.607 等⊇3∫葺 ●●●
●
●
● 0
●
●
●
●
●●
1.7 1.8 1.9 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.
(y2−y1)3、ry三7yτ
y:
図9
6e
55
ピi
三1
口5°盲
1
45
40
ど−
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1 1
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:
F
﹁1|
図 10
(4)跳水中の流速分布の測定を試みたが相当に困難で今後の課題である。
本研究はFr、==5.5〜8.0程度の範囲での資料を基に展開しているがFri=1,0〜15.0程 度の範囲に拡張して論ずる必要がある。現在広範囲の資料を作製中であり,別の機会に報 告できるであろう。
末筆でありますがこの研究を進めるにあたり終始御指導を賜わった,明星大学加藤正晴
教授に感謝の意を表わします。本研究で使用した資料は当時明星大学生の山本昭博,関川 芳樹両君が行なった実験によるものである。
Ven Te Chow F M Henderson 鶴見一之 今野彦貞 佐藤清一 本間
E.A. Elevatorski
参 考 文 献
:Open Channel Hydraulic
:Open Channel Flow
:跳水について 土木学会誌16巻9号
:跳水現象の実験的考察 土木学会誌21巻3号
:水理学 仁・安芸佼一:物吉[水理学
:Hydraulic Energy Dissipators.