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対人環境および自己調整学習が 学校生活に及ぼす 影響

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(1)

影響

著者 寺田 未来, 浦 光博

雑誌名 大手前大学論集

巻 18

ページ 041‑059

発行年 2018‑07‑31

URL http://id.nii.ac.jp/1160/00001926/

(2)

対人環境および自己調整学習が 学校生活に及ぼす影響

寺 田 未 来

1)

浦 光 博

2)

要 旨

本研究は、自己調整学習に影響を与える対人環境に着目し、それと自己調整学習が 学校適応と抑うつに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。対人環境として、

親密な他者(家族成員と友人)からのサポートと家族成員からの養育態度、家庭環境 を取り上げた。質問紙調査をH県内の公立高校に通う高校生98名を対象に実施した。

その結果、親密な家族成員や友人からのサポートが自己調整学習に正の影響を与え、

さらに学校適応と抑うつにもポジティブな効果をもたらすことが示された。また、ケ アと自律支援的な家庭環境が自己調整学習に正の影響を与え学校適応と抑うつにもポ ジティブな効果をもたらすこと、過保護と管理統制的な家庭環境が自己調整学習に負 の影響を与え学校適応と抑うつにネガティブな効果をもたらすことが示された。これ らの結果から、学校生活における適応や抑うつに対し、対人環境と自己調整学習がど のような影響を及ぼすかについて議論した。

キーワード:自己調整学習、サポート、養育態度、家庭環境、学校生活

ઃ.問題と目的 1-1.本研究の背景

「自己学習力」や「自己教育力」など、「自ら学ぶ力」を育成することの必要性が叫 ばれて久しい。学習者が受け身でなく主体的に学習に取り組むよう働きかけること

1) 大手前大学 現代社会学部 2) 追手門学院大学 心理学部

(3)

が、教育現場において求められている。学習への動機づけについて従来、自己調整学 習(Self-regulated learning;以下、SRL とする)研究により多くの知見が蓄積され てきた。SRL とは、学習者が動機づけ的側面、メタ認知的側面、行動的側面におい て能動的かつ主体的に関わる学習である(Zimmerman, 1986)。これまで自己効力感 や達成目標などが、SRL に影響を及ぼすことが示されてきた(Ames & Archer,

1988;Pintrich & De Groot,1990;Zimmerman & Schunk,1989)。こうした個人内 の過程に着目した研究に加え、SRL に影響を及ぼす社会要因の影響も検討されてい る。SRL に影響を与える要因として個人要因と社会要因の双方に着目する必要があ ることは SRL 研究において繰り返し主張されてきた(Zimmerman & Shunck,

2000)。本研究では社会要因として対人環境に着目し、SRL との関連を明らかにして いく。さらにこれらの関連が、学校生活への適応や精神面での健康にどのような影響 を及ぼすのかを検討していく。

SRL の構成要素である動機づけと学習方略は、対人環境と密接に関わる(速水,

1998;中谷,1996)。たとえば、先生や親にほめられたいので頑張って勉強する、友 達と一緒に頑張ることが楽しいから残って勉強する、などいずれも人との関わりが動 機づけに影響を与える。さらに一緒に勉強する、競い合う、など友人との相互作用は 学習方略の利用を促す。事実、だれかと一緒に勉強することは自らの学習を動機づけ るためのつの方略と捉えられる(伊藤・神藤,2003a)。またわからないところを友 人や教師に相談する、質問するなどの援助要請の技法も学習方略のつである(岡 田・大谷・中谷・伊藤,2012;瀬尾,2007)。他者の優れた学習方略を模倣すること によるモデリングや、相互作用を通じさまざまな学習方略にふれながら自分に合う方 略を身につけていくことも SRL といえる(Zimmerman & Schunk,2001;塚野他訳,

2006)。Bandura(1986)による社会的学習理論では、直接的な他者からの指導のみ ならず、モデルの学習方略を観察することで学習方略の獲得が促されるという。この ように社会的な状況や文脈に着目した検討は盛んである。教師と学習者、学習者同士 のペア学習やグループ学習など他者との相互作用による協同の学び(McCaslin &

Hickey,2001;Palincsar & Brown,1984)に着目したアプローチは、SRL 研究の展 開として取り上げられている。

1-2.本研究の目的

ここまで述べた対人環境の多くは SRL への働きかけが直接的であり、その意図が

明白である。一方で SRL に直接関連しない、つまり働きかけの意図が明示的ではな

い教室外での友人との相互作用や、勉強に対する親の期待や間接的援助なども、SRL

に影響を及ぼす可能性がある。SRL は学習に直接関連する明示的な援助に加え、間

(4)

接的な援助から影響を受けやすい可能性も指摘されている(Zimmerman & Schunk,

2001;塚野他訳,2006)。Martin, David, & Joyce(2008)は、教室内で一緒に勉強す る仲間よりも教室外における仲間との会話の方が SRL と深く関わることを示してい る。また勉強に対する保護者のかかわり方や学習観が学習者の動機づけに影響を及ぼ すこと(伊藤,2015)、学習者の評価する親の動機づけの影響(伊藤,2011)も報告 されている。三木・山内(2005)は、教室の目標構造が学習者の目標志向に影響を及 ぼすことを示している。

こうした間接的な対人環境は、SRL のみならず学校生活への適応にも大きな影響 を及ぼす。大久保(2005)は、学校適応を規定する要因について、友人関係の良好さ がおおむね学校適応と関連することを明らかにしている。また、大学生活における他 者との良好な関係性の構築・維持は学生生活への適応と関連する(浦・高野,1995)

ことや、友人からのサポートは学生生活全般に対する意欲の低下を防ぐ(福岡,2000)

ことが示されている。さらに学業の充実も学校適応を規定するつであるという(大 久保,2005)。これらをふまえると、対人環境が SRL に影響を与え、そしてそれらが 学校適応にも影響を与えることが予測される。本研究では学習者を取り巻く対人環境 が SRL に及ぼす影響、ならびに SRL が学校適応に及ぼす影響という媒介効果を検討 する。

1-3.本研究で扱う測定指標ならびに対象

本研究では SRL の測定について、学習全般に対し日頃から自ら調整している傾向 を SRL の行動傾向と定義し測定する(寺田・浦,2016)。SRL の行動傾向が高いほ ど学習を自ら調整できていること、低いほど学習を自ら調整できていないことを意味 する。SRL の行動傾向はメタ認知、努力調整、否定的思考の制御の因子から構成 され、学習者の行動レベルの個人差に着目している。メタ認知はメタ的な理解や活 動、学習のふりかえりなどの行動を指しており、努力調整とは、学習への積極的な態 度、姿勢を指す。さらに学習面でのネガティブな思考を自らコントロールする否定的 思考の制御がある。これらつの行動傾向を測定することで、SRL の個人差を行動 レベルで捉えることができる。

SRL は小学校高学年から次第に身に付き、中等・高等教育段階に進級するにつれ て成熟していく(岡本,1992)。高校生になると、SRL が形成される時期と異なり、

学習スタイルが定着している場合が多く、そのため SRL の行動傾向における個人差 も大きい。同時に、SRL が未定着な状態で学習スタイルが形成されていることも多々 ある。まさしく高校生における学業不振やテスト不安、意欲減退などの背景には、

SRL の未定着がかかわっているといえる。加えてこの時期は、進路やキャリアにつ

(5)

いて考える時間が増える時期であり、友人関係や家族関係との間にさまざまな葛藤や トラブルが生じたり、対人ストレスを感じたりすることも多い。そのため、高校生を 対象に対人環境のあり方が SRL に及ぼす影響、そしてそれらが学校適応に与える影 響を明らかにする意義は大きい。

なお、学校生活への適応に加え本研究では抑うつを取り上げ検討する。谷島(1996)

は、大学新入生の生活リズムと抑うつの関連を検討し、生活リズムの乱れが体調の不 調を引き起こし抑うつに影響を与えることを示している。高校生にとって、学校生活 で多くの時間を占める学習時間を自ら調整していく、具体的には意欲的に授業に出席 し、きちんと宿題に取り組むなどは、学習習慣ともいえ、生活リズムを整えるうえで 重要な位置づけといえよう。また、学校生活において、学習面での悩みや問題が、単 一で生じることはまれであり、学習面でのストレスが進路面、対人関係面、心理・社 会面などの問題と複雑に絡み合って学校適応に影響を及ぼし、ひいては体調面の問題 や意欲の減退、無力感などの抑うつ症状を引き起こす精神的な健康面へと問題が複合 化されていく場合もある。そのため対人環境と SRL の行動傾向が抑うつに与える影 響を検討していく必要がある。以後、本研究では学校適応と抑うつを併せて学校生活 指標と表記する。

1-4.サポート、養育態度、家庭環境が SRL の行動傾向と学校生活指標に及ぼす影響 本研究では学習者を取り巻く対人環境として、学習者にとって身近な親密な家族成 員および友人からのサポートの受容、家族成員からの養育態度、家庭環境を取り上げ る。先述の通り、サポートは人の適応にさまざまな影響を及ぼす(西川,2000;松井・

浦,1998)。また日常の対人関係がサポーティブであることは、ストレスフルな出来 事による精神的健康の悪化を緩和させる(浦,1992)。なかでも親密な他者からのサ ポートの受容は、個人の適応に重要な維持・促進効果をもつ。

親密な他者の存在が重要であることを説明する理論のつに Bowlby(1969)の愛 着理論がある。愛着とは、個人がある危機的状況に接する、あるいは危機を予知し恐 れや不安が喚起されたときに、特定の他者への近接を通じて安全の感覚を回復・維持 しようとする傾向と定義される(Bowlby,1969)。愛着の機能により得られる心理的 な安心感は、恐れや緊張感を低減させ、新たな刺激に対して接近し情報を得ようとす る探索行動を活性化させる。こうして人は自立し安定的で積極的な行動をとる。この 考え方によると、受け身的ではなく、自らの意志で積極的に働きかける活動である SRL に対し、親密な家族成員からのサポートはポジティブな影響を及ぼすと考えら れる。

これまでの愛着研究は乳幼児における母子関係に焦点をあててきた。ゆえに愛着対

(6)

象として、母親や主たる養育者の役割を担う者が挙げられてきた。しかし母子関係で 形成される愛着の安定性・継続性について、愛着は成長とともに親密な友人との関係 に移行し、親密な友人との関係においても同じような機能を担うという(Main,

1990)。そのための友人からのサポートも同様に SRL にポジティブな影響を及ぼすだ ろう。

次に養育態度についてである。養育態度を議論する際に用いられる概念にケアと過 保護(Parker, Tupling, & Brown,1979)がある。ケアとはサポーティブな介入を行 おうとする養育態度を指し、過保護とは必要以上の介入やプライバシーの侵害など、

文字通り過保護な養育態度を指す。ここで、ケア・過保護という概念を愛着理論の枠 組みを用いて捉える。養育態度は個人の愛着を概ね規定する。金政(2007)は、ケア と回避型の愛着スタイルに負の関連、過保護と不安型の愛着スタイルに正の関連がみ られることを示した。回避型の愛着スタイルの特徴として愛着対象を安全と捉えず、

探索行動をあまりしないことなどが挙げられる。また、不安型の愛着スタイルをもつ 者の特徴として、随所に用心深い態度がみられ、探索行動ができない、愛着対象に執 拗に依存する傾向などが挙げられる。このことから、ケアの高さ、過保護の低さは、

学習者の能力を発揮できるように仕向ける、あるいは次の探索に向かわせると考える ことができる。ケアと過保護はそれぞれ SRL の行動傾向に相反する影響を与えると 考えることができる。さらに、サポートやケアは SRL の行動傾向を高めることで学 校適応に正の影響、抑うつには負の影響を与え、過保護の養育態度は SRL の行動傾 向を低めることで学校適応に負の影響、抑うつに正の影響を及ぼすと予測される。

ここまで、SRL の行動傾向に影響を与える要因として、愛着理論を基に議論して きた。加えて、学習者を取り巻く家庭環境として、自律を促す支援的な環境と管理統 制的な環境がそれぞれ学習にさまざまな影響を及ぼすことが示されてきた(Deci &

Ryan,1985)。自律的動機づけは SRL を高めるために重要な役割を担う(Deci &

Ryan,1985)。学習への動機づけは、学習に対する価値を内在化することで他律的か ら自律的に段階的に変化するという(Deci & Ryan,1985;速水,1995;櫻井,2009)。

他律的、自律的な動機づけ間には負の相関が認められている。自律的動機づけは他律 的動機と比べ学習方略の活用を促し成績を向上させること(田中・山内,1999)、他 律的な動機づけは成績の低下にもかかわること(外山,2015)、価値の内在化は学習 方略の利用(市原・新井,2006)に影響することが明らかにされている。そのため、

自律を支援する家庭環境、ならびに管理統制的な家庭環境も同様に SRL の行動傾向 に影響を与えると予測される。

自律的な調整と他律的な調整とでは学習者の心理的欲求を満たす度合いが異なると

いう(Zimmerman & Schunk,2001;塚野他訳,2006)。自律的な動機づけに基づく、

(7)

つまり自律支援的な家庭環境において学習者は自律的な行動を誘発する。自分の行動 が自分自身によって調整されていると感じ、課題に熱心に取り組み、結果として高い 充実感、満足感などを経験する。一方ある行動の理由が外部からのプレッシャーや指 示などの要求に基づく、つまり管理統制的な家庭環境で育つことは、自分の行動が自 分以外の外的な力により制御されているために心理的健全さの低下と関連する(Deci

& Ryan,1985,2000)。このことから、自律支援的な家庭環境は、SRL の行動傾向 を高めることで学校適応の高さや抑うつの低さに影響を与え、管理統制的な家庭環境 は SRL の行動傾向を低め学校適応の低さや抑うつの高さに影響を与えると予測できる。

以上の議論をもとに、本研究は次の予測を検討する。

予測.親密な家族成員および友人からのサポートは SRL の行動傾向に正の影響 を与える。

予測.サポートにより高められた SRL の行動傾向は、学校適応を高め、抑うつ を低める。

予測.ケアは SRL の行動傾向に正の影響を、過保護は負の影響を与える。

予測.ケアの養育態度により高められた SRL の行動傾向は、学校適応を高め、

抑うつを低める。一方、過保護の養育態度により高まる SRL の行動傾向 は、学校適応を低め、抑うつを高める。

予測.自律支援的な家庭環境は SRL の行動傾向に正の影響を、管理統制的な養 育態度は負の影響を与える。

予測.自律支援的な家庭環境により高められた SRL の行動傾向は、学校適応を 高め、抑うつを低める。一方、管理統制的な家庭環境による SRL の行動 傾向は、学校適応を低め、抑うつを高める。

઄.方法 2-1.調査対象者

調査協力の了承が得られた合計校(A、B、C校)の高校に通う高校生98名であ る。対象校はすべて公立高校であり、各校には普通科及びその他複数の専門学科が設 置されている。各対象校のうち、全日制課程に通う高校生を対象とした。各対象校の 詳細な内訳を示す。

A校では年生(平均年齢17.63歳(標準偏差0.49))24名(男子16名、女子名)

からの回答の協力を得た。B校では年生(平均年齢16.62歳(標準偏差0.63))38名

(男子14名、女子23名、不明名)から協力を得た。C校では年生19名、年生17

名(平均年齢16.08歳(標準偏差0.73))の合計36名(男子13名、女子23名)の協力を

(8)

得た。

2-2.調査の実施方法

各対象校に “学習意欲に関するアンケート調査” への協力を依頼した。了承が得ら れたうえで校長、教頭、教員と打ち合わせ、及び質問項目の内容、表現の適切性、回 答の困難さなどについて確認を行った。また作成した尺度項目について学校での調査 において適用可能がどうかについて現場の教員名の確認を得た。その後、調査への 協力と研究に際してのデータを使用することの許可を得たのち、調査を実施した。

A校は授業の時間を用い、調査を実施した。調査は無記名により、回答はコン ピュータにより統計的に処理されること、回答したくないと感じた質問に対してはと ばしてもかまわないこと、また途中で回答をやめてもかまわないことを説明し、質問 紙を配布した。回答時間は約25分程度であった。教員及び研究者ともに記入状況など は確認せず、回答のしやすい環境作りに配慮した。回答が終了した質問紙はその場で 回収した。回収の際には、回答者のプライバシーを保護するため、教卓に設置した回 収用の袋に回答者自身が質問紙を提出することとした。

B、C校は学校に質問紙を持参または郵送した。質問紙には、調査の目的・内容の 詳細な説明とともに、回答は強制ではないことを明確に示した依頼文と、調査実施に おける手続き上の注意点、方法などを記した資料を添付した。授業等の時間に、授業 担当教員あるいは担任教員の教示のもと、調査が実施された。教示内容及び手続きは A校と同様で回答済みの質問紙は後日回収した。

データに不備がみられた名を除く92名(男子40名・女子51名・不明名;平均年 齢16.71歳、標準偏差0.86)を分析対象者とした。なお本研究の分析には HAD シリー ズ(清水,2016)を用いた。

2-3.調査内容

.SRL の行動傾向尺度(寺田・浦,2016)22項目を用いた。メタ認知(項目;α

=.75)、努力調整(項目;α =.66)、否定的思考の制御( 項目;α =.80)

である。それぞれあてはまらない(点)・あまりあてはまらない(点)・どち らともいえない(点)・ややあてはまる(点)・あてはまる(点)の件法 で回答を求めた。

.サポートを測定するため、The Quality of Relationship Inventory 日本語版(浦・

高野,1995)15項目を用いた。この尺度はある個人と特定の他者と関係がいかな

る特質をもつかを明らかにする Pierce, Sarason, & Sarason(1991)による尺度

を日本語訳した尺度である。浦・高野(1995)において、サポート因子および葛

(9)

藤因子のつの下位因子が示されている。本研究ではサポート 項目(家族成 員:α =.85,友人:α =.86)を用いた。親密な家族成員と友人名をそれぞれ 想起してもらい、想起した人物との関係について尋ねた。.と同様の件法で 回答を求めた。

.養育態度のケアと過保護を測定するため A Parental Bonding Instrument 日本語 版(以下、PBI とする、高野,1996)25項目を用いた。Parker et al.(1979)の PBI を高野(1996)が翻訳したものである。親密な家族成員名を想起してもら い、想起した人物についての養育態度を尋ねた。本尺度は金政(2007)において もケアと過保護の因子が抽出されている。.と同様の件法で回答を求めた。

.家庭環境として自律支援および管理統制を測定する14項目を独自に作成した。日 常生活場面を想定している PBI を参考に、学習場面を重視した項目に修正し作 成した。親密な家族成員名を想起してもらい、想起した人物について.と同 様の件法で回答を求めた。

.学校適応尺度(大久保,2005)19項目(α =.91)を用いた。.と同様件法で 回答を求めた。

.抑うつを測定するため東大式健康調査票の抑うつ尺度(鈴木・青木・柳井,1989)

10項目(α =.90)を用いた。“近ごろ元気がないですか” などの質問に対し、は い(点)・どちらともいえない(点)・いいえ(点)の件法で回答を求めた。

分析に際しすべての項目の回答を逆転処理した。得点が高いほど抑うつが高く、

低いほど抑うつが低いこと示す。

અ.結果

3-1.各尺度得点の作成

親密な家族成員の内訳は父親名、母親72名、祖父名、祖母名、その他11名で あった。その他はすべて兄弟、姉妹との関係であった。SRL の行動傾向について、

つの下位尺度を構成する項目から平均値を算出し下位尺度得点を算出した

(Appendix 参照)。またサポートについて、 項目の平均値を算出し、家族と友人そ

れぞれのサポートの下位尺度得点を作成した。PBI25項目について、先行研究により

因子構造が示されているものの、高校生を対象とした知見ではない。そのため、各

因子の構成に相違がある可能性を考慮し、本調査による回答に対し因子を指定した

因子分析(Table参照;最尤法、プロマックス回転)を実施した。その結果、ケア

14項目と過保護11項目に分類された。それぞれの α 係数は十分であり(ケア:α =

.84、過保護:α =.79)、I-T 相関係数は r =.28〜.78だった。それぞれの因子を構

(10)

成する各項目の得点から平均値を算出し、下位尺度得点を作成した。因子間相関は r

=-.32であり、下位尺度得点間にも負の相関が認められた(r =-.34)。家庭環境尺 度14項目について因子を指定した因子分析を実施した(Table参照;最尤法、プ ロマックス回転)。共通性の値が.10未満の項目を削除し、自律支援項目と管理統 制 項目が抽出された。α 係数は自律支援が α =.70、管理統制が α =.84であった。

I-T 相関係数は r =.31〜.86だった。それぞれの因子を構成する各項目の得点から平 均値を算出し、下位尺度得点を作成した。因子間相関は r =-.27、下位尺度得点間も 負の関連が有意傾向であった(r =-.21)。

作成した尺度の妥当性を検討するため、ケアと過保護の各下位尺度得点と、自律支 援、管理統制の各下位尺度得点との間の相関を求めた(Table参照)。その結果、

自律支援はケアと正の関連、過保護と負の関連をもち、管理統制はケアと負の関連、

過保護と正の関連をもつことが示された。学校適応は、19項目の平均値を算出し、下 位尺度得点を作成した。抑うつについても10項目の平均値から下位尺度得点を作成し た。

否定的思考の制御 メタ認知

テストのあとは答案を見直し、自分でもう一度解き直す 今までの自分の勉強方法を見直すことがある

テストで失敗したときは、自分の勉強方法を見直す

授業中は、自分がきちんと理解しているかどうかを、確認するようにしている 授業で学ぶ内容に興味がある

授業で学んだことを、生活でいかしたい 計画をたてて、勉強する

もう一度問題を解き直したりすることはない

テストで失敗したときは、もう少し勉強すればよかったと思う たとえ悪い成績をとっても、次はがんばろうと思う

次の試験では前回よりもいい点をとるという目標をたてている 授業中や宿題をするときは、それに集中している

将来、いい仕事につきたい

授業を最後まで聞きとおしたことがない

今の自分の勉強法に自信がもてない 何から勉強をしていいのか分からない

授業中は、自分が理解しているかどうかは気にせず、ただ話を聞いているだけだ なんとなく授業を聞いている

テストで悪い点をとったときは、自分は頭が悪いと思う

問題がむずかしいときは、後回しにしたり、解くのをあきらめることが多い

テストで自分が取った点数ばかりが気になってなぜ間違えたかまでは気にしないことが多い 自分が勉強していなかったところに限って、テストに出るような気がしてならない 努力調整

Appendix SRL の行動傾向尺度項目

(11)

3-2.予測の検証

各尺度得点の間の相関係数を算出した(Table参照)。その結果、家族成員サポー トと努力調整の間に弱い正の相関、友人サポートと努力調整の間に弱い正の相関、否 定的思考の制御との間に弱い負の相関が認められた。また、ケアおよび自律支援と努 力調整との間に有意な正の相関が認められた。一方過保護と管理統制は、努力調整お よび否定的思考の制御と負の相関をもつことが示された。学校生活指標との関連につ いて、友人サポートと学校適応、メタ認知および努力調整と学校適応との間に中程度 の相関が認められた。さらにメタ認知、否定的思考の制御と抑うつとの間に弱い負の 関連がみられた。

予測とを検討するため、諸変数の関連についてパス解析を行った。各サポー

3.800

― 因子寄与

因子間相関

.204 .017 .111 .335 .068 -.024 -.024 .066 -.083 .000 .343 -.192 .013 .270 第因子(Ⅱ) 過保護(α=.79)

.845 .779 .759 .678 .661 .641 .526 .466 .384 .373 -.362 .327 .290 -.288

Ⅱ 因子負荷量 第因子(Ⅰ) ケア(α=.84)

私によくほほえみかけてくれる

私のかかえている問題や心配について理解してくれる 温かく親しみをもって話しかけてくれる

私が混乱しているときに立ち直らせてくれる 私に対して愛情深い

私が好きなことをやらせてくれる 自分のことは自分で決めさせてくれる 私と話し合うのを好む

私が自分で自分のことを決めるのを好む 私の好きな服を着させてくれる 私とあまり話さない

私が遊びに行きたいだけ行かせてくれる 私に望むだけの自由をあたえてくれる 私のことを十分には助けてくれない

私をよく子どもあつかいする 私が役に立たない人間だと感じさせる 過保護である

その人は私のことを自分の思い通りにさせようとする 私のプライバシーを侵害する

ときどき、私に対して冷たい

私がその人なしでは何もできないと思っている 私のことをほめてくれない

いつまでも私が子どもでいることを望んでいる

私が必要としているものや欲しがっているものを分かってくれない 私が甘えることを望んでいる

a) 最大の因子負荷量を太字で示す

Table1 PBI項目の因子分析によるパターン行列

.652 .642 .620 .609 .598 .423 .419 .407 .392 .379 .373 .051

-.252 .140 .214 -.224 -.139 .128 -.383 .083 -.325 .248 5.241 -.322 項目

(12)

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 家族成員サポート

友人サポート ケア 過保護 熟達目標構造 遂行目標構造

メタ認知 努力調整 否定的思考の制御 10 学校適応 11 抑うつ

M SD Min Max

**p<.01,p<.05,p<.10

Table3 各変数の基礎統計量および相関係数

― .187 .400**

-.202

― .144 -.251

― -.571** ― 1

2.447 0.636 1.000 4.000

3.744 0.716 2.000 5.000

2.431 0.859 1.000 4.857

2.966 0.668 1.250 4.875

3.976 0.590 2.833 5.000

2.737 0.768 1.000 4.500

3.331 0.661 1.706 4.895

1.803 0.569 1.000 3.000

― .237 .584**

-.242 .317**

-.107 .102 .253 -.057

.077 .000

― .233 -.131

.122 -.130 .012 .287**

-.221 .371**

-.159

― -.344**

.600**

-.365**

.001 .271**

-.066 .113 -.072

― -.339**

.614**

.111 -.226 -.270**

-.038 -.003

― -.219 -.116

.273**

-.023 .177 -.016

― .042 -.258 -.209 -.051

.066

― .348**

.260 .447**

-.237 3.671

0.848 1.143 5.000

4.066 0.771 1.714 5.000

3.640 0.608 2.143 4.857

2.300

― 因子寄与

因子間相関

-.138 .159 -.008 -.077 -.013 -.148 .360 第因子(Ⅱ) 熟達目標構造(α=.70)

.829 .789 .709 .697 .684 .615 .409

Ⅱ 因子負荷量 第因子(Ⅰ) 遂行目標構造(α=.84)

自分の勉強方法に口出しをする

自分の成績を他の人(兄弟、友人など)と比べる 勉強に関して何でも干渉したがる

自分の成績によって、自分への接し方を変える

自分自身のためというよりもむしろ、その人のために勉強している 私のテストの結果ばかりを気にする

勉強しやすい環境を作るための努力をしてくれる

進路に関する選択を最終的に自分自身に決めさせる 将来の進路を自分自身が決めることを望んでいる 私はその人の顔色を気にすることなく、勉強している 成績にかかわらず、勉強をがんばるとほめてくれる 勉強することを温かく見守ってくれる

a) 削除項目:その人から注意されなくても、決まった時間になると勉強する 自分の勉強のじゃまをしないように気づかってくれる

b) 最大の因子負荷量を太字で示す

Table2 家庭環境尺度項目の因子分析によるパターン行列

.840 .732 .477 .438 .409 -.057

.010 -.143 -.074 .325 3.606 -.279 項目

(13)

ト、SRL の行動傾向の下位尺度、学校生活指標それぞれの変数間には強い相関が認 められたため、それぞれ誤差項間の相関を仮定した。最終モデルを Figureに示す。

適合指標は、χ

2

(7)=8.17,n.s.,GFI =.975,AGFI =.899,RMSEA =.044だった。

χ

2

は非有意であり、GFI と AGFI は共にに近い値を示した。また RMSEA は.05以 下の値だったことから、各適合度指標は良好といえる。また説明変数間の相関につい て VIF は10以下であり、多重共線性は認められなかった。努力調整に対し友人サ ポートの正の影響が、否定的思考の制御に友人サポートの負の影響が認められた。さ らに学校適応に対し、メタ認知と友人サポートが互い影響を統制しながら、両者が正 の影響を与えていた。抑うつについては否定的思考の制御、友人サポートがそれぞれ の影響を互いに統制し負の影響を与えていた。

Figure2 養育態度が SRL の行動傾向および学校生活指標に与える影響

a) パス係数は標準化解であり、誤差項間の相関係数はいずれも有意

b) **p<.01,p<.05,p<.10

次に予測とを検討するため、養育態度と SRL の行動傾向、ならびに学校生活 指標との関連についてパス解析を行った。先と同様に誤差項間の相関を仮定した最終 モデルを Figureに示す。適合指標は、χ

2

(9)=10.73,n.s.,GFI =.968,AGFI = .902,RMSEA =.047であった。χ

2

は非有意であり、GFI と AGFI は共にに近い

a) パス係数は標準化解であり、誤差項間の相関係数はいずれも有意

b) **p<.01,p<.05,p<.10

Figure1 サポートが SRL の行動傾向および学校生活指標に与える影響

(14)

値を示した。また RMSEA は.05以下の値であったことから、各適合度指標は良好と いえる。VIF はすべて10以下であり多重共線性の疑いは低かった。その結果、ケア が努力調整に正の影響を、過保護が否定的思考の制御に負の影響を与えていた。また メタ認知と努力調整が互いの影響を統制し、学校適応に正の影響を、否定的思考の制 御が抑うつに負の影響を与えていた。

Figure3 家庭環境が SRL の行動傾向および学校生活指標に与える影響

a) パス係数は標準化解であり、誤差項間(e2↔e3)の相関係数のみ非有意、その他はいずれも有意

b) **p<.01,p<.05,p<.10

最後に予測とを検討するため、家庭環境と SRL の行動傾向、ならびに学校生 活指標との関連についてパス解析を行った。誤差項間の相関を仮定し最終モデルを Figure に 示 す。適 合 指 標 は、χ

2

(7) = 4.57,n. s.,GFI = .986,AGFI = .943,

RMSEA =.000であった。χ

2

は非有意であり、GFI と AGFI は共にに近い値を示 した。また RMSEA は.01以下の値であったことから、各適合度指標は良好といえる。

VIF はすべて10以下であり多重共線性の疑いは低い。その結果、自律支援が努力調 整に正の影響を、管理統制が努力調整と否定的思考の制御に負の影響を与えていた。

さらにメタ認知、自律支援が学校適応に正の影響を、否定的思考の制御が抑うつに負 の影響を与えていた。

自律支援と努力調整、学校適応の関連をふまえ、自律支援と学校適応との関連に影 響する努力調整の媒介効果の検討を行った。自律支援から学校適応への有意な直接効 果が認められた( β =.20,p =.05)。次に努力調整を媒介変数として投入した結果、

自律支援から努力調整への関連( β =.27,p =.01)、および努力調整から学校適応

への関連( β =.37,p < .01)が有意であり、自律支援から学校適応への直接効果は

認められなかった( β =.10,p =.32)。Sobel 検定を実施した結果、自律支援から学

校適応への回帰係数に有意な減少がみられた( z =2.13,p < .05)。媒介変数を投入

した後、自律支援と学校適応の直接効果は完全に消失したため努力調整は自律支援と

(15)

学校適応との関連を完全に媒介したといえる。

આ.考察

4-1.サポート、養育態度、家庭環境が SRL の行動傾向と学校生活指標に及ぼす影響 本研究は、学習者を取り巻く対人環境が SRL の行動傾向に与える影響について、

愛着理論ならびに動機づけに関する理論をもとに検討した。そして親密な家族成員や 友人からのサポートと家族成員による養育態度や家庭環境が SRL の行動傾向を媒介 し、学校生活指標に影響を与えるという仮説を検討した。

その結果、友人からのサポートの受容が SRL の行動傾向のうち努力調整に正の影 響を与えることが示された。これは予測を支持する。親密な他者からのサポート が、メタ認知という SRL に必要な高次の認知機能を伴いながら学習を進める行動や 否定的思考を制御する行動ではなく、自ら動機づけを維持・向上させるための行動に 対して影響力をもつといえる。人は生まれながらに自律性、有能感、関係性の欲求を もつという(Deci & Ryan,1985)。なかでも関係性の欲求が満たされ、自らが親密 な他者により受容されていると感じ、安心して学習できることが、動機づけの維持・

向上に影響する可能性が示唆された。

しかしながら、友人からのサポートにより高められた努力調整と、学校適応や抑う つとの間には関連は認められなかった。予測は不支持であった。この原因として、

友人からのサポートおよびメタ認知が学校適応を高めるうえで重要な役割を果たした 可能性が挙げられる。大久保(2005)によれば、学校適応は友人関係と関連する一方、

学業との関連については学校によって異なるという。学校適応と友人サポートとの間 には強い関連が認められており、この点は先行研究と一貫する。加えて本結果はメタ 認知が高いほど学校適応が高いことを示している。このことから、努力調整と学校適 応との関連は、友人からのサポートとメタ認知の影響力を統制することで消失する擬 似相関であった可能性が高い。ゆえに、友人からのサポートは努力調整と学校適応と もに正の影響を与え、努力調整が媒介要因として関与している可能性は低いといえ る。

さらに、友人からサポートを受容するほど否定的思考の制御が低まるという予測

と相反する結果が得られた。この結果は、抑うつと併せて興味深い点を示唆する。友

人からのサポートと抑うつとの間の単純相関係数は有意でなかった。しかしパス解析

の結果、有意な負の関連がみられた。友人からのサポートと否定的思考の制御、抑う

つの間の関連について、抑制変数の影響がみられた可能性が考えられる。友人からの

サポートは否定的思考の制御に負の影響を与え、そして否定的思考の制御が抑うつに

(16)

負の影響を与えていた。つまり、友人からのサポートを受容するほど否定的思考の制 御がなされにくい一方、否定的思考の制御がされにくいことで抑うつが高まるのであ る。一方で友人からのサポートは抑うつを低める効果をもつことも示された。つま り、友人からのサポートと抑うつとの間の相関は、直接的な負の関連と、否定的思考 の制御を経由することによる間接的な関連がそれぞれ異なるために消失したと考えら れる。この点は、対人環境、とりわけ友人関係と SRL の行動傾向が学校生活への適 応や精神的な健康面に与える影響に対し、重要な示唆を与える。高校生にとって、友 人関係の良好さが必ずしも SRL の行動傾向にポジティブな影響を及ぼすわけではな い。むしろ否定的思考を高めるという結果が得られた。否定的な思考をもつことは言 い換えれば自ら学習を調整できておらず、抑うつにも影響を与えかねない。しかしな がら友人関係の良好さを伴うことで抑うつの高まりは軽減されるのである。友人関係 が SRL の行動傾向に対し、表裏一体かつ複雑な影響を及ぼしていることを示す結果 といえる。

次に、ケアと自律支援が努力調整に正の影響を与え、過保護と管理統制が努力調整 や否定的思考の制御に負の影響を与えることが示された。予測とは支持された。

また努力調整と否定的思考の制御がそれぞれ学校適応や抑うつに影響を与えていた。

媒介過程が認められていないため予測は一部支持にとどまるものの、予測は支持 された。ケアの養育態度を受ける学習者は先と同様に、動機づけの維持・向上に寄与 する努力調整の行動傾向が高く、学校適応にもポジティブな影響が及ぶ。一方、過保 護の養育態度を受ける学習者は、否定的思考を制御する行動傾向が低く、その結果抑 うつというネガティブな影響が及ぶといえる。本結果より、自律的な動機づけの影響 が SRL の行動傾向を高めたり低めたりする可能性も示された。つまり自律支援の家 庭環境に育つことにより、自律性の欲求が満たされることで努力調整にポジティブな 影響が及び、さらにその効果を通じ学校適応も向上していた。反対に管理統制の家庭 環境に育つことにより自律性が阻害されるとその結果、否定的な思考の制御が難しく なり、また努力調整の行動を低めるといえる。

4-2.間接的に強いられた学習がもつ弊害

本研究より、学習とは直接関連しない間接的な影響として学習者を取り巻く親密な 他者からのサポートや養育態度、家庭環境が SRL の行動傾向に影響を与えることが 示された。加えて、その対人環境による影響を受けた SRL の行動傾向が学校生活指 標に及ぼす影響を明らかにすることができた。ケアの養育態度や自律支援的家庭環境 における学習者の SRL の行動傾向は高く、学校適応の向上という効果をもたらす。

一方、過保護な養育態度や管理統制的、すなわち学習に対する働きかけを過剰に重視

(17)

し強制的な家庭環境における学習者の SRL の行動傾向は低く、また彼らの学校適応 は低く抑うつが高いことが示された。彼らにとって家族成員からの期待や過剰にサ ポーティブな働きかけ、間接的なプレッシャーが他律的な調整を促している可能性が 考えられる。それゆえ、SRL の行動傾向が低く学校生活指標にもネガティブな影響 をもたらすのだろう。

学習を他律的に調整することは精神的疲労を引き起こす。これは学習にかかわら ず、一般的な自己調整の観点からも明らかにされている。Muraven & Slessareva

(2003)は、実験で取り組む課題に対する価値を操作し、課題に対する動機づけがパ フォーマンスに与える影響を検討している。その結果、課題への価値づけにより動機 づけが高まることでパフォーマンスにポジティブな影響が及ぶことを示している。さ らに Muraven, Gagne, & Rosman(2008)は課題に対する動機づけの自律性、他律性 に着目し、外部からの強制による課題の遂行は、自律動機による場合と比べパフォー マンスを低下させることを明らかにしている。このように学習にかかわらず、強いら れたという感情をもつことは、自発的な意志でそれを行うことよりも多大なエネル ギーを必要とする(Muraven et al.,2008)。この考え方は学習にも応用することがで きる。周囲により強いられた学習は、学習者が自ら選択して行う学習よりも、高い精 神的疲労をもたらし学校適応を低め抑うつを高めるといえる。

周囲の対人環境による強制された学習が学校生活指標において精神面での不調とか かわることが示された。学習者へのサポートやケアの提供が SRL の活動を促進させ る一方、必要以上のサポートが負の影響を与え、他律的な学習を助長しかねない可能 性が示唆された。また他律による学習が不適応や抑うつを生じさせる。自主的に学ぶ 機会の提供は SRL を促すだろう。しかしながら、その機会が自律的ではなく他律的 な影響を受ける場合もある。とりわけ、親密な家族成員の養育態度や家庭環境が、暗 黙裡に他律的調整を促している可能性がある。自主的な学びが定着したかにみえる一 方で、その背景にある潜在的な対人環境、なかでも他律的な対人環境の影響を考慮し、

自主的な学びが学校不適応や精神的健康に負の影響を及ぼしている可能性を視野に入 れる必要性は十分にある。今後も、強いられた学習が学校生活指標にいかなる影響を 及ぼすかを明らかにすることは、SRL の効果を考えるうえで重要な意味をもつ。

4-3.本研究の限界と課題

最後に本研究の限界と課題として点を述べる。つ目は、家庭環境尺度の洗練で

ある。妥当性について PBI との相関を検討したのみであり、その検証が不十分であ

り、妥当性を高める必要がある。点目として、本研究では横断的なデザインにより

得られたデータを分析した。そのため、要因間の因果関係については確証されていな

(18)

い。今後は本研究の知見についての縦断的なデザインでの検証が求められる。点目 は、本調査では調査対象者が少なかった。今後より多くのデータをもとに汎用性を高 めた検証が必要である。同時に小中高校段階をふまえ対人環境のあり方との関連も検 討する必要がある。

点目は養育態度や家庭環境による影響の調整効果についての検討の必要性であ る。本研究では過保護や管理統制の高さが、強いられた学習、いわば他律的な学習を 促し学校生活指標に負の影響を及ぼすことを、パス解析から示唆した。しかし強いら れた学習をしたか否かについては、本調査で扱った尺度から判断できるものではな い。加えて暗黙裡に作用する可能性が高い対人環境の影響を検討するためには、SRL の行動傾向と学校生活指標との関連を対人環境が調整している可能性を検討する必要 がある。今後調整効果についても検討していくことで、潜在的かつ暗黙裡の養育態度 がいかに強いられた学習を促進し弊害をもたらすかについて明らかになるだろう。

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Figure 1 サポートが SRL の行動傾向および学校生活指標に与える影響

参照

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