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分割錯視に関する実験的研究(?)
著者 瀧野 千春
雑誌名 奈良学芸大学紀要. 人文・社会科学
巻 12
ページ 127‑134
発行年 1964‑02‑29
その他のタイトル AN EXPERIMENTAL ANALYSIS OF DIVIDED DISTANCE ILLUSION (II)
URL http://hdl.handle.net/10105/3471
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分割錯視に関する実験的研究(Ⅱ)
瀧 野 千 春 (心 理 学 教 室)
問 題
この紀要の前回の論文(盟)では、外隣を一定とし内隔を変化させた場合、内側線分の轟きの要因 が外隔の過大視すなわち錯視量に対して如何なる影響を及ぼすかという点を見るために行なわ れた実験について述べたが、その実験条件を吟味してみると、内側線分の長さは段階的に変化し ているが、外側線分の轟きの万は一定で変化していないことがわかる。従って内側線分(すなわ ち分割線分)の長さの要因云々といっても、或る限られた刺激布置だけについてその影響をしら べるということにもなるわけである。従って外価線分の長さの万も段階的に変化させ、これまた 段階的に変化している内側線分の長さと組み合わせた各種の条件(ないし刺激布置)をとりあげ ること、によって内側線分と外側線分との関係すなわち分割・被分割の関係を前回の論文で問題に したのよりは更に範囲な観点から確かめてゆく必要が生じてくる。
実 験(3)
目的 水平方向における分割錯視について、内側線分の長さも、外側線分の長さも、両者共に 変化する場合、そのような内外両線分の各種の組合わせという刺激布置の下で、錯視量はどのよ
うに変化するであろうか、また同様の刺激布置のそれぞれについて、内側線分間の距離(内隔)を 変化した場合錯視量はどのような変化を示すであろうかという点についてしらべる。
実額条件 刺激はすべて白色用紙に黒インクで画かれており、標準刺激は2本の内側線分と2 本の外側線分とで構成された図形である。外側線分間の距離(外隔)は60mm一定であり、内隔 (d)は10mm、 20mm、 30mm、 40mm、 50mmの5段階に変化するO内側線分の長さ(」i )も外側 線分の長さ(̲eo)も共に10mm、 20mm、 40mmの3段階に変化するo eoとeiとの組合せによっ
てA、B、C、D、Eの5種類の2‑条件が構成される。 (第1表を参照)
第1表 (単位.'mm) 上述の標準刺激から2本の内側線分を取り除 いた刺激図形を用意し、これを対照条件用の標 準刺激とする。比較刺激はすべて2本の線分だ けから構成され、その線分間の距離が2mmの段 階で.50mmから72mmで変化する12種類の図形 である。線分の太さはすべて約0.5mmである。
実験手続 標準刺激は向って左に、比較刺激 は向って右に、別個の剖激呈示箱の中に皇示 される。刺激呈示箱の中には上下に各1灯の
128 分割錯視に関する実験的研究(I) (海野)
10W蛍光灯が取付けられており皇示される刺激は刺激呈示箱の満面にある窓(縦10cm横15cm) をとおして被験者に観察される。刺激面の明るさ(白色画用紙の部分)は約172ミリランベルト であり、被験者から蛍光灯は直接見えないように作られている。観察距離は1mである。 5種 類のe‑条件と5段階のd‑条件を組み合わせf;25種類の条件に対照条件を加えた計26種類の条 件について、それぞれ4回(上昇下降各2回)の完全上下法によって、標準刺激の外側線分の PSEが求められる。被験者は8名で、いずれも心理学専攻の学生である。
結果 8名の被験者の各実験条件におけるPSEの平均を示したのが第2表である。
第2表 (対照条件のPSE : 59.41)
次に内側線分の長さと外側線分の長さとが相互に影響しあうかどうかをしらべるために5種類 の2‑条件を第3表に示すように組み合わすことによって3つのグループにまとめてみる。すな
わちグループIはio‑aの場合であって、 eo
!>*!表
ゲル‑プI e A, B, C A, B, D B, C, E
およびLiの両者が10mm、 20mm、 40mmと変 化する条件をまとめたものであり、グループ‡
は条件A及び条件Bの両条件と条件D (」o>
eiの場合)とを比較するために三つの条件を まとめたものであり、グループⅡは条件Bと条 件Cの両条件と条件E(」o<」iの場合)とを 比較する為にまとめたものである。今少し詳し く述べると,条件Dのeoは条件Bのeoに等しく、条件Dの2iは条件Aのeiに等しい.また条 件EのPoは条件Bのeoに等しく、条件Eのeiは条件CのPiに等しいような刺激図形になるよ うにつくられている.そしてeoキeiの条件が20‑eiの条件に比べてどのような錯視量の変化 を示すであろうかという点をしらべるために上述のグルーピングがなされたわけである。
最初にグループIについて5段階のd‑条件について別個に、三つの条件間の差をみるために pSEに関するデータに基づいて分散分析を行なったO詳言すれば各条件について、 8名の被験者 があり、また被験者1名についてそれぞれ4個の測定値(PSE)があるわけであるoその分散分析 の一例が第4表に示されている.また5段階のムー‑条件のそれぞれにおける結果をまとめたのが 第5表である。
分割錯視に関する実験的研究(I) (瀧野) 第4表 (rf‑40の場合)
要 因 df ss MS I F
129
*iXO. 05
**xO. 01
***♪<0. 001
第5表から、 Ssの要因はすべて5%或いは0.1%レベルで有意であり、 Pの要因はrf‑40及び d‑50の場合それぞれ0.1%レベルで有意であり、ゼxSsの要因はrf‑30及びd‑40の場合にそれ ぞれ0.1%或いは5%レベルで有意であることがわかった。次に0.1%レベルで有意であったd=
40及び^‑50の場合の両者について、 A、B、C三条件のうち二条件ずつを対にして、その間の平 均値の有意差を分散分析から得られた残差分散
を分母に用いてt一検定(1)を行った結果が第6 表である。すなわち条件Bと条A件との間には 0.1%レベルで条件Cとの間には1%レベルで 有意差がみられた.これはd‑40の場合とd‑50 の場合とでは同じであった。
次に錯視量を示すために各条件のPSEから対 照条件のPSEを減じた値を示したのが第7表で あり、グラフに図示したのが第1図である。
第6表
d‑40,及びrf‑50 B
20 30 40 50
10 20 d
第1図
40 50 3棚m
130 分割錯視に関する実験的研究(I) (瀧野)
今度はグループ1について同様の分析を行なった。まず5段階のd一条件についての結果をまと 第8表
要 因 1 0 20 30 40 50
めたのが第8表である。
第8表から、 Ssの要因はすべて5%ないし0.1%のレベルで有意であり、それと反対に 2×Ss の要因はすべて有意でないことがわかった。 Pの要因はグループTと同じく、 d‑40及びd‑50の 両者において共に0.1%レベルで有意であった。このrf‑40及びrf‑50の両者について、 A、B、D の三条件ずつを対にして前と同じ方法でt‑検定を行なったのが第9表の(a)と(b)とであるO
第9表 (a) (b) d‑40 B D
A B D
*** ***
第9表から、条件Dはd‑40においては条件 Aと、^‑50においては条件Bとの間にそれぞれ 0.1% および1%レベルで有意差がみられた。
次に錯視量を示すために、各条件のPSEから対 照条件のPSEを減じた値が第10表に示されてい る。それをグラフに図示したのが第2図であ m
グループⅡについて、分散分析を行ない、 5
rf‑50 A D A
B D
***
4.0
錯 3・5
3.0 fi
25
段階のd一条件についての結果をまとめたのが
第11表である0第11表から、 Ssの要因は<2‑20 量 2・0 の場合を除いてすべて0.1 レベルで有意であ
り、 Pの要因はd‑20、 rf‑40、 ^‑50の三つの 第10表
」 10 20 30 40 50 1.0
2 2 1
1 7 3
C O o c
︼
4 n u 9 っ U 4 5
!
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>
i
‑ C r
‑ 3
2
6
LO '.Q Ifi
3 2 2 2 2 n U 7 1 5 C O M C O
10 20 30 40 50 (mm).
第2図
分割錯視に関する実験的研究(I) (瀧野) 第11表
要 因 10 20 30 1 40
131
場合において、すべて0.5%レベルで有意であり、 dxSsの要因は<2‑30、 <2‑40、 rf‑50の場合に おいてそれぞれ1%、 5%、 5%のレベルで有意であったQ次に<*‑20、 rf‑40、 ^‑50の場合につ いて、それぞれB、C、Eの三条件のうち二条件ずつを対にしてt‑検定を行なったのが第12表の
(a)、(b)、 (C)である。
第12表 (a)
d‑2可 B C
ち C E
(b) (c)
d‑40 B d‑50 B
B
*** c E
第12表から、条件Eは^=20において条件B及 び条件Cとそれぞれ1%及び0.1%レベルで、 d
‑40及びrf‑50においては条件Cとそれぞれ0.1
%レベルで有意差のあることがわかった。次に 錯視量を示すために、各条件のPSEから対照条 件のPSEを減じた値が第13表に示されている。
第13表
10 20 30 40
B 1.72 3.12 2.62 1.40 (T72 C !2.75 3.93 2.78 2.72 2.93 E 1.84 1.40 1.84 0.84 1.31
1
それをグラフに図示したのが第3図である。
次に5種類の2‑条件について、内隅が変化 するにつれて、培視量がどのように変化するか を見るために、 A、B、C、D、Eの各条件につい て別個に分散分析を行なった。その結果の一例 が第14表に示きれている。またその結果をまと めたのが第15表である。
132 分割錯視に関する実験的研究(I) (龍野) (条件Bの場合)
要 ss MS
全 体
第15表
要 因 D I E
残差 分散 4.352 3.487 3.752
第15表からSsの要因はすべて0.1%レベルで有意であり、 dの要因は条件A、B、Dがそれぞれ 1%、 0.1%、 5%のレベルで有意である。 そしてdxSsの要因は条件Eだけが5%レベルで 有意であることがわかった。 そこで有意差を示した条件A、B、Dの三つについてそれぞれ5段 階のd‑条件のうち二条件ずつを対にしてスチユデント化されたレンヂ( Studentized range statistic)の方法による検定(4)を行なった結果が第16表の(a)、(b) 、( C)である.
第16表 (a) (b) (c)
A I0 20 30 40 50 B I0 20 30 40 50
** **
* **
D 】 10 20 30 40 50
o o o o o
ri N B >* ffl
(注) 0.1%の表示(***)のないのは検定に用いた数表には0.1%の値を欠いていたためである。
第16表から、 d‑2Qのところに三つの条件とも極大値の存在することを示しているが、 dが大に なるにつれて錯視量が減小して行くことが統計的にたしかめられたのは条件Bだけであったと云 えようO
考察(1)グループIについては、内情が大となる場合、すなわち内側線分が外側線分にかな り接近するような場合では条件Bの錯視量は減少して行く傾向を示したが、条件A及び条件Cで はそのような傾向がみられなかった。
(2)グループⅡでは、やはり内隔が大となる場合は条件Dと条件A、また条件Dと条件Bとの 問に有意差がみられるが、条件Dの変化のグラフは条件Aを上限とし、条件Bを下限とする範囲
分割錯視に関する実験的研究(I) (瀧野) 133
内におさまっていると云うような結果が得られた。
(3)グループⅡでは、条件Eの変化のグラフは、条件Cよりも鍍祝量が小であることを示して おり、内癖が大となる場合には条件Eと条件Cとの間には有意差が認められる。しかし条件Eと 条件Bとの間には<2‑20の場合を除いて鎗視量の有意差は認められない <2‑20の場合に、条件E と条件B及び条件Cとの間に有意差が認められるのは、条件B及び条件Cの極大値がd‑20のと
ころに存在するためであろうと思われる。
要 約
水平方向における分割錯視の実験を外側線分のPSEを測定して、これを錯視量とすると云う条 件で行なった。外側線分の長さ及び内側線分の長さを両方共3段階に変化し、この内外面線分の 長さを組合わせて5種類の実験条件(刺激布置)をつくり,結果の分析の時に(i)」0‑」i (2)」o>」i (s)」oくPiの三群に分類して、主として(幻と(3)とで異った結果がえられるか否か をしらべたところ、 (乞)では即ち内側線分が外側線分よりも短い条件では、錯視量の変化のグラフ は内外両線分が等しい条件(条件A及び条件B)の示す二本の変化グラフの中間におさまると云 う結果がえられた(3)では即ち内側線分が外側線分よりも長い条件では、その錯視量変化のグラ フは内外両線分が等しい条件(条件B及び条件C)の示す二本の変化グラフの範囲におさまると 云うよりはむしろその下限(条件B)に殆んど接近したところに存在すると云うような結果を示 した。
参 考 文 献
(l) Cochran, W.G. and Cox, G.M. 1950 Experimental designs, Wiley.
(2)瀧野千春1963 分割錯視に関する実験的研究、奈良学芸大学紀要人文・社会科学編,ll,193‑203.
(3)瀧野千春1963 分割緒祝に関する実験的研究(Ⅳ)日本心理学会第27回大会報告.
(4) Winer, B.J. 1962 Statistical principles in e坤erimental design, McGraw‑Hill.
(昭和38年9月30日受理)
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AN EXPERIMENTAL ANALYSIS OF DIVIDED DISTANCE ILLUSION (II)
Chiharu Takino
Department of Psychology, Nara Gakugei University, Nara, Japan
In the previous experiment upon the so-called "Divided distance illusion", an amount of illusion was measured as a magnitude of over-estimation of the distance between two outer lines under the experimental situation where the length of outer lines was held constant, and the length of inner lines was varied.
The present experiment was conducted to investigate the interactive effect between the outer lines and the inner ones by varing the length of outer lines.
The length of the outer lines (Jo) and the length of the inner lines (If) were both 10mm, 20mm, and 40mm. And there were five experimental conditions by combining W s and lo's The W s and lo's combined in each condition were as follows: (Condition A)10 and 10, (Condition B)20 and 20, (Condition C)40 and 40, (Condition D)20 and 10, (ConditionE) 20 and 40.
Experimental results in five conditions were grouped into three groups. These groups were as follows: (GroupI) A, B, and C;(GroupII) A, B, and D;(GroupIII) B, C, and E. And within each group, a ststistical analysis through the method of analysis of variance was done, and thereafter (-tests using error variance terms as denominators were applied to test significance of differences about the amounts of illusion between any pairs of conditions within a group.
The results thus obtained were summarized as follows: (l) In Group I, Condition B was smaller than Condition A and Condition C with highly statistical significance where the distances between inner lines(d) were both 40 mm and 50 mm.
(2) In Group II, the statistically significant differences were found between Condition D and Condition A where d was 40 mm; and between Condition D and Condition B where d was 50 mm. But amounts of illusion in Condition D varied in a similar way as Condition A and Condition B did.
(3) In Group III, Condition E was smaller than Condition C with highly statistical significance where d's were both 40 mm and 50 mm, but there was no statistical significance between Condition E and Condition B. And Condition E was smaller than both Condition B and Condition C where d was 20 mm.