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韓国の保育における音楽活動の実際 : ソウル市内 の幼稚園の事例から

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(1)

韓国の保育における音楽活動の実際 : ソウル市内 の幼稚園の事例から

著者 石川 眞佐江, 志民 一成

雑誌名 静岡大学教育学部研究報告. 教科教育学篇

46

ページ 59‑75

発行年 2015‑03

出版者 静岡大学教育学部

URL http://doi.org/10.14945/00009178

(2)

静岡大学教育学部研究報告 (教科教育学篇)

(20153)59〜

%

韓国の保育における音楽活動の実際

―ソウル市内の幼稚園の事例か ら一

Mudcal Aci宙ies h Early Cblldhood Care and Education in Korea:

From the Cases of Kndergarten in the Seoul C■

石     員佐江 1         成 2 Masae ISHIKAヽ

VA and Kazunぷ

SHITAMI

(平

成 26年

10月

2日 受理 )

1  研究の目的

我が国の保育 は、時代 と共 に変化 して きたが、現代 においては少子化や共働 き家庭 の増加 な どのさまざまな社会的要因に対応 して、 さらに大 きな変化の時期 を迎えている。 日本の保育が 制度的に大 きな変わ り日となっている現在、それに伴 って保育の内容 について も改めてそのカ リキュラム と中身を見直す必要があろう。そこで本研究では、少子化や女性の就労問題 など日 本 と同 じような社会問題 を抱 える隣国の韓国に着 日し、韓国の保育における音楽活動では、実 際にどの ような活動が行われているのか、視察 を通 して明 らかに してい きたい。

今 日、 日本の幼稚 園や保育所ではさまざまな形で音楽活動が行われている。幼稚 園教育要領 及び保育所保育指針の領域「表現」 において、「音楽 に親 しみ、歌 を歌 った り、簡単 なリズム 楽器 を使 つた りする楽 しさを味わう」 と記 されているように、幼児が思いのままに歌 った り、

簡単なリズム楽器 を使 つて遊んだ りしてその心地 よさを十分 に味わうことが、 自分の気持 ちを 込めて表現す る楽 しさとな り、生活の中で音楽に親 しむ態度を育てることになる。 ここで重視 されていることは、幼児 自らが音や音楽で充分 に遊び、表現する楽 しさを味わうことである。

日本では保育における音楽活動 は、上記の ように遊びの中で総合的な活動 として捉 えられ実践 されているが、韓国ではどの ような理念の もと、 どのような活動が行われているのか、実際に 韓国の保育現場 を訪れ、音楽活動 を見学す ることでその特徴 をとらえてい きたい。

韓国の音楽教育についての研究は、歴史的な視点か らは、儒教思想 をもとに今 日の韓国の幼 児教育 と伝統音楽の伝承 を子 どもの遊び歌か ら考察 した朴 (21X13)、 近代文明、近代教育の象 徴である音楽教育の女子への伝播 について考察 した、朴 (2000)な どが挙げ られる。 また、学 校教育 における音楽教育 については、小学校、中学校及び高等学校の音楽科教育課程の変遷や、

学校 における音楽授業の実態について論 じた関 (2009)な どが挙 げられる。保育 における音楽 活動 については、韓国釜山市内の幼稚園 と保育園における子 どもの音楽活動 に焦点を当て、韓 国 と日本の就学前教育 を比較、考察 した早川 (2008)、 韓国釜 山市及び近郊都市 を中心 とした 幼稚園・保育所視 における音楽教育内容の伝統文化 との関連を検討 し、 日本の幼児の教育内容 との比較検討 を行い、望 ましい伝統文化 との関わ りを探 った今村 (2004)な どが挙 げ られる。

本研究では、 まず韓国の保育の歴史 と現状、教育課程 について概観 した上で、実際に視察 を l教

育学部 学校教育講座 幼児教育

2教育学部 音楽教育講座

第46号 59

(3)

60   具佐江

行 つたソウル市内の幼稚園

2か

所 における

3種

類 の音楽活動の分析 を通 して、韓国の保育 におけ る音楽活動の実 lTtに ついて分析 してい くことにしたい。

2  韓国における保育

2.1  韓国の幼稚園と保育施設の歴史

韓国における近代幼稚 園の設立は、

1914年

に設立 された梨花幼稚 園、

1916年

に設立 された中 央幼稚 園であるとされる。梨花幼稚 園はデューイの進歩主義、児童中心、活動中心 といった幼 児教育の原理 を適用 し開園 した。中央幼稚園は京城府仁寺堂の中央協会の中で開園 した。 この 後幼稚 園は

1921年

39園

1930年

206園

1931年

245園

198年

277園

と増加 してい く。

丹波

(21X17)は

この間の幼稚 園について「キ リス ト教思想に依拠する人権思想 を背景 とした幼 児の発達支援 という側面 と、幼雅 園をも舞台の一つ とした救国運動、具体的には愛国 と子 ども の文化尊重運動であるオリニ運動 と関連 して」いたことを指摘 している。

1949年

に教育法が制定 され、

1969年

には文教部令 として幼稚 園教育課程が制定、公布 され、

1976年

か ら公立幼稚園が本格的に設立 され始め、

1980年

代 には公立幼稚園 と私立幼稚 園の数が ほぼ同 じとなった。

1980年

か らの

10年

間に約

10倍

弱幼稚園数が増加 し、

1982年

の幼児教育振興 法の成立 により、 「セマウル幼児 園」が現れた。

幼稚園の数の増加 と就園率の向上に伴い、

19∞

年代 に入 り幼稚園教育の質の向上が新たな課 題 となった。 また同時に、幼児対象の学院の乱立、学習誌産業の活性、早期教育、英オ教育、

特技教育 といつた社会状況 も浮 き上がってきた。その後

2∞4年

に「幼児教育法」力滞

J定

された。

丹羽

(前

掲書

)に

よれば、幼稚 園を対象 とした独立法である幼児教育法は、「『幼児教育の公教 育化』の実

,そ

の ものを意味 して

Jお

り、 これにより幼稚園制度が韓国の教育法体系 に位置づ けられた。

保育施設については、韓国人の子 どものための託児事業が始 まったのは

1921年

京城の泰和基 教社会福祉館で行われた保育プログラムの開設であるとされる。 この頃の託児所 は毎 日昼間だ け運営す る都市型 と、農繁期のみ運営す る農村型に分けられる。都市型では、

1928年

に京城財 団法人和光教園東大門託児所、

1930年

に清津私立託児保護院、清津府託児所の

3カ

所が開設 され、

1939年

には

11カ

所に増 えた。農村型では

1930年

代初めに桃林託児所、高頭 山里託児所 と雲村託 児所の

3カ

所が開設 され、

1934年

には

960カ

所、

1939年

には

2000カ

所以上 と増加 した。

1961年

に児童福利法が制定 され、託児所 は施行令第

2条

で「保護者が勤労、 もしくは疾病の 理由で養育すべ き児童が保護で きない場合、保護者の委託 を受けて、その児童 を入所 させ、保 護することを目的 とす る施設」 と規定 された。玄 (2001)は これについて、 「極貧子女 に対す る救護的な側面の強い事業か ら、一般児童への福利 という側面

Jへ

の変化 を指摘 している。そ の後、

1967年

に託児施設増設

5カ

年計画が打 ち出 され、

1960年

度 の

24カ

所 だ った託児施設 は

1970年

度末 には

377カ

所 に増加 した。

1968年

に保健社会部 は託児所 を「子 どもが生活す る家」

という意味で名付 け られた「 オ リニジ ップ」 と改め、

1977年

にはオリニジ ップの数は

607カ

所 となった。この時期 には他 に、

5月

10月

のそれぞオ

2ヶ

月間実施 される農繁期託児所 も存在 し た。

1981年

、内務部がセマウル事業の一環 として「セマウル協同幼児 園

Jを

設立 した。

1980年

での韓国の幼児教育機関は、幼稚園

tオ

リニジ ップ、セマウル協 同幼児園、農繁期託児所 と乱

立 してお り、幼稚園は文教部、オリニジップは保健社会部、セマウル協 同幼児 園は内務部、農

(4)

韓国の保育 における音楽活動の実際

繁期託児所は農村振興庁、 と管轄部署がそれぞれ異 なっていた。そ こで政府は

1982年

に幼児教 育振興法 を制定 し、セマ ウル幼児 園を設置 し、オリニジップ、セマ ウル協同幼児園、そ して農 繁期託児所 を吸収、統合 した。 これにより幼児教育機 関は、幼稚 園 とセマウル幼児 園の

2つ

と なった。 しか し、核家族化 と女性の社会進出が進み、保育需要が急激 に高 ま り、セマ ウル幼児 園だけでは対応で きず、

1987年

には職場託児所、

1989年

には保健福祉部が保育事業 を独 自に始 めた。

1991年

に乳幼児保育法が制定 され、保育事業の主管轄部署が保健福祉部 に一元化 された。幼 児教育振興法 により設置 されたセマ ウル幼児 園は幼稚園か保育施設に転換す るように した。 こ の予

L幼

児保育法 によ り、 「今 までの単純 な 『託児』か ら保護 と教育 を同時に行 う『保育』 とい う用語が法律上で使 われるようになった」

(金2007)の

である。

2000年

以降の保育政策は、保 育の質の向上、そのための本格的な財政支援 による保育制度の再構築が行われた。

2004年

には、

乳幼児保育法が改正 され、幼児教育法の内容 に対応 させた理念 と内容が確認 された。 また、改 正により標準保育課程が制定 されることにな り、

2007年

に公示 された。

3  韓国の幼児教育の現状と課題

3 1  韓国の幼児教育の現状

韓国の公的な就学前の機関 としては、幼稚園 とオリニジ ップ と呼ばれる保育施設がある。 ま た、幼稚園 とオリニジップの どちらにも利用 していない

3歳

か ら

5歳

児の多 くは学院 と呼ばれる 塾 に当たる機関に通っている。学院には、絵画や陶芸 を教 える美術学院や、英会話等のプログ ラムをもつ英語学院などの種類があ り、多 くは幼稚 園 と同 じように朝か ら午後 まで活動が行わ れている。 この学院にういては、保育施設 と幼稚園の一元化 を追究 していた折 に常に学院の存 在が問題にな り、政府の提示 した基準 に合致する学院は「公認施設」 とし、政府が補助金 を出 す決定をしている

(勅

使

2012)。

幼稚 園の法的根拠 は

2004年

に制定 された幼児教育法である。管轄 は教育科学技術部で、対象 年齢 は満

3歳

か ら小学校就学の始期 に達するまでの幼児である。幼稚 園には国公立 と私立があ り、保育時間は

3時

間の半 日制、

5時

間未満の延長制、

8時

間の終 日制 とある。平均時間は公立 で

4〜5時

間、私立で

7〜9時

間 となっている。保育内容の基準 はヌ リ課程で、保育施設 と統一 化 されている。教師は幼稚 園正教師

1級

2級

、幼稚 園準教師である。

保育施設の法的根拠 は

1991年

に制定 された乳幼児保育法である。管轄 は保健福祉部で、対象 年齢 は

0歳

か ら小学校就学の始期 に達す るまでの幼児である。保育施設 には回公立保育施設、

法人保育施設、職場保育施設、家庭保育施設、父母共同保育施設、民間保育施設の

6種

類がある。

保育時間は午前

7時30分

〜午後

7時30分

であるが、延長保育 も夜 間保育 も実施 している。保育内 容の基準 はメ リ課程で幼稚国 と統一化 されている。教師は保育教師

1級

2級

3級

とある。

また、韓国では満

5歳

児 に対す る無償教育 ・保育が幼児教育法 と乳幼児保育法 に明文化 され ている。 しか し

2011年

までは所得下位

70%以

下 と限定 した支援であ り、 また金額 も幼児の学費、

保育費用の一部の金額が支援 されていた。そんな中

2011年5月

に「満

5歳

共通課程」制度 を導入 す る と発表 された。 この「満

5歳

共通課程」は、 「

5歳

児 を対象 に保育施設 と幼稚園で行 われて いる保育内容   方法の基礎 となる『保育・教育課程』 を共通にすることで、保育施設 と幼稚園 の保育・教育内容の 『一元化』 を実施す ることに した」 ものである

(勅

使   前掲書 )。 また、

5

歳児 の保育   教育費の支援 を全ての階層 までに拡大 し、希望する全ての

5歳

児 に保育   教育費

α υ

(5)

つ4

αυ   員佐江

を無償 とすることとした。その後「満

5歳

共通課程」は「

5歳

メ リ課程」 という名称 に変更 され た。

2012年3月

か ら「

5歳

ヌ リ課程」が適用 され、

2013年3月

か ら、満

3歳

4歳

までヌ リ課程が 拡大 され、適用 され始めた。

2011年

までの幼稚 園教育課程の領域 は、 「健康生活、社会生活、表現生活、言語生活、探求 生活」の

5領

域であ り、標準保育課程の領域 は、 「基本生活、身体運動、社会関係、コミュニケー シ ョン、自然探求、芸術経験」の

6領

域である。それに対 し、メ リ課程の領域 は、「身体運動、

意思疎通、社会関係、芸術経験、 自然探求」の

5領

域である。 また、 この他 に基本生活習慣、

他人への配慮、共感する力量、インターネッ トまたはメデイアを正 しく使用すること、グリー ン成長、資源の節約、他人 との違いの尊重 などを強化 している。

32  韓国の幼児教育の課題

ヌリ課程が適用 され、内容上では幼児教育 と保育の間での協力が行われ、無償教育・保育の 枠組みが完成 した。 しか し、両機関の 自発的な協力体制の進みは遅れていることが指摘 されて いる。そのような中、

2013年

に教育科学技術部が「幼児教育発展 5カ 年計画」の政策研究 を発 表 した。 この中で幼稚園は、幼児教育の広報 とシステムの構築、振興院などの設立強化 と運営 の活性化、伝達系の拡大や伝達機関の新設、公 。私立幼稚 園間の強化 など、学校 とい う概念 を 広 く捉 え、機関 とい う範囲をおいて体制の強化 を図っている。一方、保育施設は、民間オ リニ ジップの数が

89%と

多 く、供給調節の問題や公共性の確保のため、国公立オリニジツプの拡充 に重点が置かれている

(金2013)。89%を

占める民間オ リニジップヘの支援 は少額であ り、施設・

設備が悪 く、保育教師の労働条件 も悪い。そのためにオリニジップとしての保育実践の連続性 が途切れるとい う実態がある。

4.韓 国の保育における音楽活動

4 1  韓国の幼稚園教育課程 における音楽活動

韓国の幼稚 園教育課程の変遷 と音楽領域の位置付 けについては早川 (2008)お よび河

(2012)

に詳 しい。第

1次

幼稚 園教育課程期 (1969‑1978年

)に

おける領域「芸能」、第

2次

幼稚 園教育 課程期 (1979‑1981年

)に

おける領域「社会・情緒発達」、第

3次

幼稚 園教育課程期 (1982‑

1987年)に

おける領域「情緒発達領域」、第

4次

幼稚 園教育課程期 (1988‑1992年

)に

おける領 域「情緒発達」、第

5次

幼稚園教育課程期 (1993‑1998年

)に

おける領域「表現生活」、第

6次

幼 稚園教育課程期 (1999‑2007年

)に

おける領域「表現生活」 において、それぞれ音楽分野の活 動が位置付 け られてきている。

21107年

幼稚園教育課程期 における音楽に関する領域 は、 「表現生活」領域である。ね らいには、

「考 え、感 じたことを芸術 的に表現、鑑賞で きるように し、審美的な態度や創意的な表現力 を 養 う。① 自然 と生活の中で芸術的な要素 を探 る。②考 え、感 じたことを、音楽、動 きや踊 り、

造形、劇遊 びお よび統合的な活動によつて表現する過程 を楽 しむ。③ 自然 と事物、多様 な芸術 と自国の伝統などを鑑賞することにより、豊かな感性や審美的態度 を養 う。」 とある。

また、ヌ リ課程 における音楽に関する領域 は、 「芸術経験

Jで

ある。ね らいには、「美 しい も

のに関心 を持 って、芸術経験 を楽 しんで、創意的に表現す る能力 を育てる。① 自然 と周辺環境

で発見 した美 しさと芸術的要素に関心 を持 って探究す る。② 自分の考えたこと感 じたことを音

楽、動作 と踊 り、美術、劇あそびを通 じて創意的に表現することを楽 しむ。③ 自然 と多様 な芸

(6)

韓 国の保 育 にお け る音 楽活 動 の実 際

術作品を鑑賞 して、豊かな感性 と審美的態度 を育てる。」 となっている。音楽活動 に関 しては、

芸術的に表現す る、 とい う内容範疇の内容「音楽で表現す る

Jの

中に、 リズム楽器 を演奏 して みる、歌で 自分の考 えと感 じたことを表現 してみる、伝来童謡 を楽 しく歌 う、などがある。

42  韓国の保育における音楽活動の特徴

早川 (2008)は 韓国の保育の特徴 として、 コーナー保育、統合教育、そ して伝統音楽への取 り組み を挙 げている。 コーナー保育 とは、保育者がある活動 に適 した場所 に、道具や材料 など の設定 を し、子 どもの生活や遊 びの拠点 となるように構成 した空間をコーナー と呼 び、 この コーナーをい くつか設けて行 う保育の ことを呼び、その中に音楽 コーナー も存在 している。 ま た、韓国では、多学問的な内容 を一つの活動 を通 して育てることを意味 し、統合教育 と捉 えて いる。早川

(同

)は

、「単 なる遊びの 目的の教材ではな く、子 どもの知的好奇心 を喚起 させ、

倉」 造性が高め られるような教材が意識的に設置 されてお り、コーナー保育 も統合教育 として捉 えることがで きる」 と指摘 している。韓国の伝統的な家庭生活や家族 を題材 とした歌 を伝統楽 器のチ ヤンゴの伴奏で歌 うとい うことも、音楽 と他の領域の統合教育 と考 えられる。

また、韓国の幼児教育 における伝統音楽への取 り組みについては、伝統文化が幼児達 に受け 継がれてい くことによ り、固有の文化が創造で き、外来文化 も発展的に受容 されてい くと考 え られている。今 村 (2004)は 「子 どもの もつ音楽文化性 を遊びの中で無理な く自然 に発揮 させ ようとしている点」に着 目している。 また、伝統や文化 を学ぶことについて早川

(前

掲書

)は

幼児期か ら日常生活の中で文化的な活動の一部 として身近に伝統音楽を捉 えることで 自国の文 化や伝統のよさに気づ き、それを基盤 として創造力のある子 どもを育成 してい くことが重視 さ れている点 を指摘 している。

5  実践か らみる韓国の保育における音楽活動

今 回の視察では、 ソウル市内の公立小学校の附属幼稚園

1園

お よび私立大学の附属幼稚園

1園

の計

2園

において、

3,4,5歳

児の音楽活動 を視察 した。

5 1 3歳

児の音楽活動の事例

ソウル市内にある中央大学附属幼稚 園の事例である。幼稚園は

1916年

創立であ り、保育者 は 修士課程修了者が多 く、最低で も

3年

以上の保育経験 を持 ってない と採用 されない。全員が中 央大学の卒業者であ り、

7〜8年

ぐらいの教師歴 を持つ保育者が多い。

35歳

ぐらいまで働いて、

出産   進学のために退職す るとい う人が多い とい う。

3歳

児か らの入園であるが、それ以前 に子 どもの家

(保

育園

)に

通 っていた子 どもも多 く来る。

また、入園前か ら何 らかのお稽古事 をしていた子 どもが多 く、幼稚 園が初めての集団生活 とい う子 どもは少ない。人数は、

3歳

2ク

ラス

20人

4歳

2ク

ラス

24人

5歳

2ク

ラス

28人

である。

午前 中で半分 ぐらいが降園す るが、

5 6時

まで預かっている子 どもも多い。幼稚園のコンセプ トとしては、幼稚園は特色のある教育 をす る場だ と捉 え、特にここでは想像力 を育むことに重 きを置いている。 「遊びなが ら

J「

思考 しなが ら」「学びなが ら」 ということを謳 っている。

幼稚園で行われる音楽活動 については、幼稚 園の生活の中で音楽は重要なものであるが、音

楽だけをす るような時間はな く、教師によって音楽の使い方 もさまざまとのことであつた。お

迎 えの時、子 どもをなだめる時、帰 るときな ど各活動の中で音楽 を取 り入れる教師 もいる。生

63

(7)

64   員佐江

活の歌 などについては、以前は手遊びを子 どもの注意 を向けるためのツール として行 っていた。

しか し、多 くの子 どもにとっては、幼稚園が初めての集団生活の場ではない

(何

らかの習い事 や、保育園などでの生活 をして きている

)の

で今 は特 に必要性 を感 じていない とい う。 この幼 稚園は、特に「言葉

Jを

使 って意思疎通 を図れるようになるとい うことを重視 している。その ため、手遊びは同 じ言葉 を繰 り返 し用いるので、言葉 を教 えるために使 っている、例 えば、

3

歳児 にとっては、音楽 を使 ってコミュニケーシ ョンを図るとい うのは利点が多い。そのため、

3歳

児⇒音楽を使 って集中させ る

/4歳

児⇒ 自分で考えて集団生活にどのように参加するか考 え る

/5歳

児⇒言語 を使 った思考力 を育むといった 目標 を立てている。

行事の中で音楽 については、季節の行事 とい うより、西洋   束洋 とい う分 け方を して音楽活 動 を行 っているとのことであった。特 に中央大学で国楽に合わせた体操が作 られたので、これ を幼稚国で行 った りす る。 また、年 に

2回

コンサー トを開催 してお り、それは家族 ぐるみで行 う音楽活動の発表の場 となっている。

9月

に一回 目のコンサー トが開かれるが、舞台 に上が る とい うこと自体、子 どもに自信がつ くし、家族の結束力が強まる。また、国家行事があつて、

子 ども集団が必要 となるとこの幼稚園が呼ばれることがある。そのために音楽活動 を幼稚 園で 行 うより、コンサー トの参加者か ら希望 を取 った り、推薦 した りして、その家族 を参加 させ る

とい う方法 を取 っている。童謡音楽会 という区の音楽 コンペティションもある。

≪活動の概要≫

実施 日時

:2013年3月27日

水曜 日   午前中  

15分

実施園

:中

央大学附属幼稚園

 3歳

【 写真

1 3歳

児の音楽活動の様子】

(8)

韓国の保育 における音楽活動の実際 65

《活動 内容 ≫

〜前略〜

保育者

:♪

チ ヨヨンちゃんの真似 してみ よう

!こ

の ように

l

(保

育者 と子 ども達が前 に立うた子 どもの真似 をして頭の後 ろで手 を組む ) 保育者

:♪

チ ヨヨンちゃんの真似 してみ よう

1こ

のように

!

(保

育者 と子 ども達が気 をつけの姿勢 をする

)

保育者

:♪

楽 しい〜。

保育者

:う

わ l楽 しく鏡遊び して くれたチ ヨヨンちゃんに拍手す る ?

(保

育者 と子 ども達、拍手す る。前 にいた子 どもが席 に戻 る

)

保育者 :私 も鏡遊び したいです

l(と

思 う人手 を挙 げて

)

(複

数の子 どもが手 を挙 げる。保育者、 リズムを回ず さみなが ら男児 を指名する ) 保育者

:♪

パパパパ   パパパパ   チ ョン   ユ ジュン

!

(指

名 された男児が前 に来る。 )

保育者 :私 たちが今か らユジュン君 を真似 してみ よう。みんなはユジュン君 を真似す る人 形になれ 1ユ ジュン君 !私 たちが今か らユジュン君の真似 をするね

!

保育者

:♪

ユジユン君の真似 してみ よう

!こ

のように

lお

lユ ジユン君が何 してる ?

(前

に立った男児、頭の後 ろで手 を組 む。

)

保育者

:)ユ

ジュン君の真似 してみ よう

!こ

の ように

!

(保

育者 と子 ども達、真似 をして頭の後 ろで手 を組 む。

)

保育者

:♪

ユ ジユン君の真似 してみ よう

!こ

のように

!

(前

に立った男児、お尻 に両手 を当てる。

)

保育者

:お

尻 に手 をつけたね ?

(保

育者 と子 ども達、お尻 に手 を当てる。 )

保育者

:♪

楽 しい〜

1も

う一回 l他 ので

1♪

ユ ジュン君の真似 してみよう

!こ

の ように

1

(男

児、首の後ろに手 を当てる。保育者 と子 ども達、真似 をす る

)

保育者

:♪

ユジユン君の真似 してみよう

!こ

の ように

I

(男

児、お尻 に手 を当てる。保育者 と子 ども達、真似 をする ) 保育者

:♪

ユジユン君の真似 してみ よう

1こ

のように

!

(男 児、脇 に手 を当てる。保育者 と子 ども達、真似 をす る。

)

保育者

:♪

楽 しい〜 !皆 さんユジュン君 よくで きましたね ?拍 手 しましょう

1

(保

育者 と子 ども達、拍手す る

)

保育者 :ユ ジェン君 よくで きました〜。

〜中略〜

保育者

:♪

今か ら今か ら教室遊びをします I今か ら今か ら何 をする ? 子 ども達 :教 室遊び l教室遊び

!

保育者 :教室遊びをします。 どんな部屋があるのか紹介 します。

(保

育者、子 ども達の前 に立ててあるパネルを指 し示す。 ) 子 ども達

:(口

々に

)絵

の部屋で遊びたいです

!

保育者

:あ

〜絵の部屋で遊びたいの

?お

?じ や、 どんな部屋があるのかな ?チ ェミン君

(9)

66   員佐江

は座 って

,。

この部屋 は何の部屋 ?

(保

育者、パネルの写真の一つを示す

)

子 ども達 :パ ズルの部屋

!

保育者

:♪

パズルの部屋で、パズルの部屋で、楽 しいパズル遊びできます よ〜

!こ

こは ?

子 ども達 :童話の部屋

!

保育者

:♪

童話の部屋 で、童話の部屋 で、今 日は先生が新 しい童話の本 を準備 して くれ ました l新 しい童話 を見てみて ください 1新 しい童話の本があ ります よ

!

〜中略〜

保育者

:♪

どこ ?役 割の部屋 も開 きました〜。 じゃ、考えてみ よう

lよ

く考 えてみ よう。

どの部屋で遊ぶかな ?

子 ども達 :考 えました

I

保育者

:よ

く見て考 えてみ よう

!考

えた人は体で見せて下 さい !準 備で きた子か ら名前呼 びますね

!

子 ども達 :準 備で きました

l

保育者

:お !ソ

ンウ見てみて

Iう

わ、準備で きました

I名

前 を呼んでみるね lユ ソンウ

1

子 ども

:は

!

先生 :ユ ソンウ

!

子 ども

:は

l

(名 前 を呼ばれた子は前 に行 き、 自分が行 く部屋の写真 を指差す

)

保育者

:♪

パパパパパパパパ〜絵の部屋に行 きます 1次 は、キムミンジュ

I

〜後略〜

このように、「鏡遊び

Jと

呼ばれる遊びを行っている。保育者に呼ばれた子 どもが前に出て 何 らかの動作をし、他の子 どもがその子の真似をする遊びである。保育者の歌に合わせ、子 ど もは頭に手を乗せたり、脇に手を当てたりと動作を変える。前に立つ子 どもを

4,5人

指名 して 変えた後、次の教室内での遊びに移るため、保育者が写真を使って遊びのコーナーを紹介 し、

子 ども達はそれぞれ自分の遊びたいコーナーを指差 してから次の遊びに移ってい く。遊びの コーナーは「パズル」 「童話

J「

プロック」 「絵」 「役割 (ま まごと )」 である。

この事例における活動は、外遊びから教室遊びの間に行われてお り、つなぎ的要素 も持って いると考えられる。日本の保育においても、遊びに入る前や集合時にこういった形で手遊びや 音楽遊びをすることがある。 しかし、この活動は全員をきちんと座 らせた上である程度の時間 をかけて行ってお り、単なる活動と活動の間のつなぎというよりは、これ自体にかなり意味の ある活動であることが窺われる。この活動において、保育者は子 どもへの指示や説明もほとん どすべてメロデイーに乗せて歌のように話 してお り、音楽的な雰囲気のなかに子 どもを巻き込 んでいくような保育者のはたらきかけが印象的であつた。即興的にメロデイーに乗せて歌のよ うに話すには、保育者の音楽的力量がかなり高 くないと難 しいであろう。

また、保育者が進行を進める上や子どもを指名する時に歌を歌 う姿には、指示的な発話が多

く、ある程度保育者の主導のもとで活動を進めている印象を受けた。後半では韓国の保育の特

徴 ともいえるコーナー保育の説明や、子 どもが自分で遊ぶところを選んで表明してから遊びに

(10)

韓国の保育 における音楽活動の実際

行 くとい う姿が見 られた。遊ぶ前 に自分の意思 を表示 し、それを皆の前で示 してか ら遊びに行 くとい う点や、遊びを選ぶのは子 どもであるが、提示 された遊びのコーナーの中か ら選ぶ点、

保育者がある程度人数の制限を している点にも特徴が見 られる。 しか し、その中で も保育者の 問いかけに子 どもが答 えるとい う形 を取 つてお り、前 日の遊びを思い起 こさせた り、 自分の考 えを言葉で表現 させた りす る様子が見 られた。

この活動 における

3歳

児担当の保育者 については、音楽 を得意 としてお り、朝の挨拶等、簡 単な言葉 を使 ってす ぐにメロデ イーを作 つて しまうとのことであつた。ペアの保育者 にピアノ の得意な保育者 を配置 し、二人で組んで保育 を行 つている。彼 らの

2013年

度の 目標 は、それ ら の楽譜集 を作 ることである。韓国では幼稚園で活動計画 を作成 して既存の楽曲を用い ようとす ると著作権侵害に当たることがあ り、そのため、現場か ら生 まれたツールがあればよい とい う 発想があるとい うことである。

52 4歳 児の音楽活動の事例

次 に

4歳

児の活動の事例である。 ソウル市立ジャ ミル小学校の附属幼稚園を訪ねた。小学校 の在学生徒 は全校生徒

1900人

であ り、他の地域の小学校は少子化の影響で、全校生徒数が減つ ているが この地域 は特別 とのことである。比較的経済力のある家庭の子 どもが来ている。その ため若千他の公立小学校 よりも恵まれている部分 もある。小学校長は幼稚園長 も兼ねている。

放課後には在校生 を対象 とした

160を

超 える講座が開かれてお り、 この講座が多いのは特徴的 である。また土曜 日に行われる講座 もある。音楽 (ピ アノ   ヴァイオリンなど

)体

育、英語 な どの教室があ り、すべて学校 にある教室で行われてお り、講座 によっては、そのための教室が あてがわれている。 これ らは有料であるが、子 どもを預かる、そ して心身を鍛 えるというよう な目的を持つ とのことであつた。

《活動の概要≫

実施 日時

:2013年3月 26日

火曜 日   午前中   約

30分

実施園

│ソ

ウル市立ジャミル小学校附属幼稚園

 4歳

 28名

【 写真2 4歳 児の音楽活動の様子】

酔 :1

ウ′

rυ

(11)

68   員佐江       

《活動内容 》

保育者

:先

生の 目を見 て、始 まるよ。

(保育者、楽器 を持 つた子 どもに手 を差 し仲べ て示す

)

:)テインガデイン

 

ティンガデ ィン

 

タタタ

 

私たちの演奏会

♪テ インガデ イン

 

テ インガデ イン

 

トン トン トン

 

音楽の音

 

楽 しい (保育者、指 を2本立て、2番 に移 ることを示す

)

保育者 :タ ンバ リン、メイ ンシェイ

│カ

ー。

:♪ トロロ ン

 

トロロン

 

タンタンタン

 

私 たちの演 奏会

♪ トロロン

 

トロロン

 

チ ュチュチュ

 

音楽の音お もしろい

保育者

:じ

や、 タンバ リンの皆 さん も先生 と一緒に。 もう一回 してみましょうか ? 子 ども達 :は い。

保育者

:じ

ゃ、楽器 を探 して ください。

(再

び歌が流れる )

保育者 :先 生 を見て、

2節

保育者

:マ

ラカス (と 言 ってマラカスの子 ども達 を指 し示す

)

(保

育者、子 ども達に手 を差 し伸べて指示 しなが ら、 タンウヾリンの ところで一緒 にタンバ リンを叩 く )

保育者 :わ 〜お疲れ !「私 は他の楽器 をしてみたい」 と思 っている人 もいます よね ?

(数

人の子 どもが手を挙げる

)

保育者 :先生が変 えてあげます。 じゃ、マ ラカスの皆 さん〜先生の ところに来て ください。

この友達 と変えてみてね。 ソユルちゃんが ビンちゃんと。そうそう。友達 と変え て ください。

(保

育者、楽器 を交換す る相手を指示する )

保育者 :楽器だけ変えて ください。楽器だけ変えて席 に戻 つて ください。楽器 だけ変えて ください。次、ゲ ヒ君が ミンジュン君 と楽器変えて、座 って ください。次、ジユ ンちゃんがソンヒョンちゃんと楽器 を変 えてみよう

Iじ

ゃ、次は、ジユ ンちゃん とジュンヒョン君、いや、テウォン君のジユンヒョン君が変 えてみ ようか ?

(楽

器 を交換 した子 どもが席に戻 る )

保育者

:よ

くで きました。 もう一回 してみ ますね。マ ラカス と果物 シェイカー大文夫です か ?じ ゃ、始めていいですか〜

?後

で大 きい楽器はもう一回 してか ら変 えるか ら ね。ち ょっと待 つてて下 さい。

〜中略〜

保育者 :ど うで したか ?二 回変えてみたけど、今回は大 きい楽器変えてみますか ? 子 ども達

:は

い〜。

保育者 lじ ゃ、 ヒョンソン君 とヒジュン君 は誰 と変えてみたいですか ?

子 ども :手 鼓が したい。

保育者

:そ

うなの ア座 っている友たちはさっき変 えたか ら、先生の考 えでは一

(保

育者が立ち上が り、大 きな楽器 を持 つた子 どもの ところへ行 き、楽器 を交換する

)

保育者 :先 生 に ください。次は手鼓ち よつと待 つてね。先生に ください。 ソヒ ヨンちゃん

(12)

韓 国の保 育 にお ける音 楽活動 の実際

ヨンウンちゃん。先生 に ください。

子 ども :先 生、はい〜。

保育者

:そ

した ら楽器 を「大好 き〜

Jっ

て言いなが ら触 つてあげて ください。「大好 き〜 J 触 つてあげました ?

(保

育者が楽器 を撫で、子 ども達 も同 じようにす る

)

保育者

:じ

ゃ、先生が もう一回音楽 をかけますね。最後 にもう一回 してみ ましょう。

〜中略〜

保育者

:じ

や、楽器の音ちゃんと聞いてみましたか

?今

か ら先生 と楽器 を元の場所 に戻 し てみ ましょう。誰 に一番で きるか、で きる子は先生の耳に聞かせて ください。聞 いてみますね〜。楽器の名前 は言わないで、写真で話 しますね。先生の手 を見て

ください。先生が どんな楽器 を戻 してつて言 うかな ? 保育者

:じ

や、 この楽器の名前は何で しようか ?

子 ども達

:タ

ンバ リン。

〜中略〜

保育者

:じ

や、種 クラスの皆 さん〜楽器遊び 楽 しかつた ? 子 ども達

:は

い〜。

保育者 :先生 も楽 しかつたです。 この楽器たち と遊びたい ときにどこに行けばいいかな ? どこに行 った ら遊べ る ?

子 ども達 :音 楽 コーナー。

保育者

:そ

うそ う〜先生が音楽 コーナーにおいてお きます。音楽遊びは「先生、私は友達 と一緒 にしたいです」 と言 つて もいい し、一人で もで きる遊びなの。 自分が好 き な楽器 を出 して、歌詞板 をみて遊ぶ ことがで きる。そ して、一緒に遊びたい友達 と手 をつないで、音楽 コーナーに入るときに、何 を貼 りますか ?

子 ども

:名

札。

先生

:そ

うそう。名札。   自分の名札 を貼 らなければな らない。

〜後略〜

以上力溢歳児の活動の事例である。マ ラカス、 タンバ リン、果物 シェイカー、手鼓、メイン シェイカー、カスタネッ トを使用 して楽器遊びをしている。子 ども達はそれぞれ一つずつ楽器 を持 つている。パ ソコンを使用 して流 している曲 《私たちの演奏会》に合わせて保育者が鳴 ら す楽器 を持 っている子 に手 を差 し伸べて示 し、子 ども達が楽器 を鳴 らしている。その後、小 さ い楽器 を持っていた子 ども達が楽器 を交換 し、同様 に曲に合わせて楽器 を鳴 らす。次に大 きな 楽器 を持 っていた子 ども達が楽器 を交換 して同様 に楽器 を鳴 らす。それか ら楽器の片付 けに入 り、保育者が楽器の写真 を指差 し、その楽器 を持 つている子は保育者のところへ片付 けに行 く とい う活動である。

この活動では、音楽 を聴いて自由に鳴 らすのではな く、それぞれの楽器 によって鳴 らす部分

が決 まってお り、鳴 らす部分では、保育者が子 ども達に手 を差 し伸べて示 していた。 また、楽

器 を交換す る場面では、保育者が誰 と誰が どの楽器 を交換するか ということについてある程度

指示 を出 し、 リー ドして交換 した りす る姿が見 られた。恐 ら く、楽器の大 きさや種類 な どに

69

(13)

   員佐江

よって さまざまな楽器 を経験 させ た り、音 のバ ランスな どに気 を配 った りしてい る もの と思 わ τる。

また、比較 的長い時間 を使 い、何度 も同 じ曲に合 わせ て演奏 していたが、子 ども達 は基本 的 に集 中 して活動 に取 り組 んでい る様子がみ られた。 自分 の鳴 らす場所が決 まってい るか らこそ、

緊張感 を持 つてその部分が出て くるの を待 っていた り、保育者 の指示 を見落 とさない ように し た りす ることで集 中力 を持続 させ ることがで きるのであろう。 しか し、子 ども自身が音楽の雰

囲気やダイナミクスを感 じて自由に鳴らす という活動ではないため、子 どもがどのように音楽 を感 じているかということについてはこの活動では分析できないものと思われる。活動の最後 には、これらの楽器を使いたいときは音楽コーナーに準備されているという保育者の発話があ り、一斉的な楽器遊びの活動を、普段の個々の遊びにつなげている様子が窺われる。音楽コー ナーにはこれらの楽器が準備されているだけはなく、歌の歌詞を書 き出したものや楽器の絵、

名前などが整然 と貼 られてお り

(写

4)、 経験 と知識 とをきちんと対応させていこうとする姿 勢がみられる。この活動に限らず、保育室内のあちこちにはこのようにモノの写真や名前を書

き出した掲示が数多 くみられた。

53 5歳 児の音楽活動の事例

《活動の概要≫

実施 日時 :2013年

3月 26日

火曜 日   午前 中   約

30分

実施園

:ソ

ウル市立ジャミル小学校附属幼稚園

 5歳

28名

【 写真5 5歳 児の音楽活動の様子】

【 写真

活動時に提示された楽器の写真】 【 写真

音楽コーナーの様子】

70

(14)

韓国の保育における音楽活動の実際

ワー

《活動 内容 ≫

保育者

:こ

れか ら国楽 リズムをするけど、まず、 こっちのチームの名前 はなんですか ? 子 ども達 :グ ンチェ

l

保育者 :グ ンチェチームは静かに起 きて、チ ャングの前 に座 ってみますか ?グ ンチ ェチー ムが先 に座 りたいチヤングの前 に座 つてみて ください。

(子

ども達、チ ヤングの前 に座 る )

保育者 :グ ンチェチーム、チ ヤングの前 に座 って最初何 をす るかな ?ト ギュ ン君 ここに 座 ってね。絞 りをかけて ください。最後 までかけな くて もいいです よ。で きるだ けやって も大文夫です。 じや、で きた人は手 を膝の上 に。胡坐 をか きましょう。

(保

育者が手本 を見せなが ら、子 ども達が絞 りをかける

)

保育者 :先 生 と同 じ方向に してグンチェを握つてみ よう。グンチェ、この前 グンチェを握 る方法 を学びました。九い ところが下 に来るように。 うん

1そ

れで合 つてます よ。

じゃ、 ヨルチェも握 りましたか ?じ ゃ、次は座っている皆 さんは、国楽挨拶 を手 で リズムを合わせなが ら歌 って くれますか ?

子 ども達

:は

い〜。

(ス クリーンに 《国楽挨拶》の歌詞が示 されている ) 保育者 :じ や、国楽挨拶準備

1

子 ども達

:♪

エイヤ ア〜

保育者 :せ 二の

l

子 ども達

:♪

こんにちは   ホイ

!こ

んにちは   ホイ !み んな   みんな   こんにちは〜  

んにちは   ホイ

!

保育者

:よ

くで きました

!も

う一回 してみましょうか ?  じゃ、国楽挨拶準備

1

〜中略〜

保育者 :私 たちはこの前、国楽挨拶のほかに何 を習い ましたか ?お 餅 の中で

l

子 ども達

:き

な粉餅

1

保育者

:き

な粉餅

Iき

な粉餅 、覚 えていますか ?じ ゃ、 もう一回 してみよう。 まず は読 ん でみ よう。

(ス クリーンに 《きな粉餅》の歌詞が示 されている )

子 ども達 :ぐ っと〜おい しい   きな粉餅   きな粉餅   おい しい

保育者

:じ

ゃ、 リズムはどうやって しますか つ

子 ども達

:♪

ドン〜 ドン〜 ドン ドン

 

タタ

 

ドドドン

 

ドドドン

 

ドン

 

ドン

 

タタ 保育者

:タ

タはどうやつてす る ?

(子

ども達、チ ャングでタタのリズムを出す )

保育者

:じ

ゃ、 きな粉餅 の歌 を歌 って ください。せ―の

l

子 ども達

:♪

ぐつと〜おい しい   きな粉餅   きな粉餅   おい しい

保育者

:よ

くで きました

今回はチヤングの リズムだけ してみ よう

!ド

ン〜 ドン〜  

さんも一緒 に ドン〜 ドン〜 して ください。せ―の

!

子 ども達

:♪

ドン〜 ドン〜 ドン ドン

 

タタ

 

ドドドン

 

ドドドン

 

ドン

 

ドン

 

タタ

保育者

:よ

くで きました。グンチェとヨルチェを置いておいて、グンチェチームの席 に戻

(15)

04

  員佐江       

ります。

(グ

ンチェチームの子 ども達、席に戻る )

保育者 :先 生が新 しく紹介する歌です、タイ トルを見て ください !何 て書いてあ ります

?

子 ども達 :子ど もア リラ ン。

保育者

:子

どもアリラン。先生が子 どもアリランを聞かせたことがあ りますね ? 子 ども達

:は

い。

保育者

:い

つで したか ?

子 ども達 :今 日

1

保育者 :今 日 l今 日の何の時間 ?

子 ども達 :昨 日

!

保育者 :昨 日と今 日の何の時間に聞かせた ?片付 けの時間に、また朝、集 まる時間に、こ の時間に皆 さんの耳 を聞 き慣 らすために先生が一回聞かせたことがあ りますね。

で も、皆 さんは音は知つているけど、 どんな歌詞なのか、歌詞はよくわか らない と思って、先生が歌詞 を紹介 しようと思います。 じゃ、

1節

です。

(ス クリーンに 《子 どもアリラン》の歌詞が示 されている

)

保育者

:タ

イ トルはなんで したか ?

子 ども達 :子 どもアリラン。

保育者

:じ

ゃ、子 どもアリラン。先生が先 に読んでみるか ら、先生 に続いて読んでみます か ?

子 ども達

:は

!

(保

育者が一節ずつ読み、子 どもが続いて読む )

保育者 :「 ウリ   オムマ

(=私

のお母 さん )」 を略 して「 ウル   オムマ」って表現 しました ね。アリラン峠はどんな形 をしている ?

子 ども達

:く

にゃぐにゃ。

保育者

:ぐ

にゃぐにゃだね。峠 を越 えてどこに行 く ?

子 ども達 :母 さんのいる、私の家 にゆ く。

保育者 :私 の家に行 くね〜。お母 さんのいる家 に行 くときは、 どんな気持ちだ と思 う ? 子 ども達 :嬉 しいです。

保育者 :嬉 しそうだね。楽 しく行 ったのか、疲れて とぼとぼと歩いて行 ったのかな ? 子 ども達

:楽

しく

l

保育者

:楽

しく行 ったと思いますか ?じ ゃ、次は

2節

をみてみ よう。

〜中略〜

保育者

:じ

ゃ、最初はアリラン峠 を越 えて どこに行 くと言いましたか ?

子 ども達

:お

母 さんの家 に

保育者

:お

母 さんの家 に。私のお母 さんの家 に行 くと言いましたか

?2番

目 1春 に何 を見 に行 くと言いましたか ?

子 ども達

:ツ

ツジ

!

保育者

:ツ

ツジ !夏 には ?

(16)

韓国の保育における音楽活動の実際

子 ども達

:海

!

保育者

:海

に行 くと言 つたね〜秋 には

?

子 ども達 :稲

l稲

保育者

:黄

金色 の稲 を見 に。冬 には

?

子 ども達 :そ りに乗 りに!

保育者 :そ り乗 りに行 きます ね。 じゃ、 どんな歌 なのか聞いてみ よう!

〜後略〜

以上が

5歳

児 の活動の事例である。チ ャングの演奏の活動であ り、 まず既 に既習の 《国楽挨 拶》 と 《きな

ll■

もち》 を演奏 したのち、 この 日は 《子 どもアリラン》 とい う新 しい曲を習つて いた。

1番

か ら

5番

までそれぞれの歌詞 を確認 した後、保育者 と一緒 に歌 った り子 どもだけで 歌 った りしている。子 ども達 はグンチェテームとチ ャングチームに分かれてお り、交代でチ ャ

ングの演奏をする。

この活動は、恐 らく日本か らの視察のために実践 された活動であろうが、小学校 さなが らの 指導案が用意 され、ほとんど小学校の音楽科の授業のように展開されていた。活動の 目標 とし ては、「①我が国の民謡 に関心 を持 つて歌 うことがで きる。」「②チ ャングで長短 を演奏する。」

「③我が国の民謡 を通 して語彙 と表現 を育む。」 とい う点が挙げ られている。保育者が前で手本 を見せ、子 ども達がそれを見なが ら一緒 にチ ャングを演奏 した り、歌詞 についてスクリーンを 使いなが ら一つ一つ確認 しなが ら理解 していった りしている。特 に歌詞 については、

5番

まで ある歌詞 を保育者の後 について追読 しているが、一度終わつたのち保育者が子 ども達にそれぞ れの節の歌詞の内容 について問いかけている。ただ教 え込むのではな く、 ここで も逐一対話の 形 をとって確認が行われている。また、歌詞内容について も「お母 さんの ところに行 くときは どんな気持 ち ?」 というように子 ども達に考えさせるような発話が多 く用い られてお り、歌詞 の言葉 を機械的に覚 えるのではな く、情景や気持ちを想像 し、歌詞 に共感 しなが ら歌 を覚えて い くという過程が重視 されている様子が窺われる。また、時間的にもかな り長い活動であ り、

2グ

ループが交代 でチ ヤングを演奏す る ものであるが、チ ャングを演奏せずに待 つているグ ループも非常に落ち着いて順番 を待 ち、歌 にはきちんと参カロしている様子か ら、こういった長 い時間の活動にも慣れている様子が見て取れた。

6、 まとめにかえて

以上、

2つ

の幼稚園における

3,4,5歳

児の音楽活動の様子 をみて きた。いずれの活動 も恐 ら

く日本か らの視察者 を意識 してかな り計画的に行われた もの と考 えられ、これ らが韓 国の保育

における日常的な音楽活動であるのか どうかは判断 しかねるが、それで もい くつかの特徴 を見

出す ことがで きる。ひとつには保育者の高い指導力 と専 門性である。いずれの活動 も保育者が

扱 う教材や楽器について熟知 してお り、歌詞や教材内容の伝 え方、楽器の配置、配分 などに気

を配 っていることがわかる。それにより、比較的長い時間の活動で も子 どもが飽 きずに取 り組

むことがで き、音楽活動 として も効果的な内容 となっているのではないか。

2点

目として、音

楽活動ではあるものの、言葉の教育 とのつなが りをかな り意識 していることがわかった。写真

や掲示 を利用 しての提示方法や、歌詞内容 を対話的に反復 させ ること、 また保育室内の環境構

73

(17)

  員佐江       

成 も、活動や遊びの中で得 られた経験 と言葉

(語

)に

よる表現、知識 とをしっか りとつなげ てい く姿勢が窺 われた。 また音楽活動のみにかかわることではないが、

3点

日として、幼児期 か ら子 ども達に自分の意思 を表現、表明させてい くことを重視 していることがわかった。保育 者 とのや り取 りで も、常 に対話の形 をとり子 ども達 に考 えて発話 させた り、遊びを選ぶ際 も必 ず 自分の意思 を皆の前で表明 してか ら遊びに移 った りす るというように、幼児期の段 階か ら自 分で考え、 自分で決めるという自己決定の過程 を重視 していることが明 らかになった。

日本 を超 える超低 出生国といわれる韓国では、その分 ひとりの子 どもの教育にかける比重が 非常 に高 くなっていると言われる。幼児教育において も、質の高い教育 を乳幼児期か ら提供す るために、綿密に整備・計画 された保育環境 と保育計画があることが窺われた。今 回得 られた 事例 は

2つ

の幼稚 園のみの ものだが、今後更 に保育施設等の視察 も検討 し、今回み られた よう な韓国の幼児期の保育における特徴が、乳児期か らの連続性 という視′ 点ではどのようになって いるのか とい う点について もさらに掘 り下げてい きたい。

付記

本研究 は平成

24年

度科学研究費補助金

(基

盤研究 C)「保育者養成・教員養成・現職教育 に お け る「声 を育 て る

J教

育 プログ ラムの構 築

J(研

究代 表者 :志 民一成、研 究課題番号

:

24531192)の 助成 を受けた ものである。

謝辞

見学にご協力いただきました幼稚 園の教職員、保護者、幼児の皆様 に御礼 申 し上げます。 ま た見学 にあた りま して韓国三育大学校のキム   ヨンミ先生 に多大 なるご助力 をいただ きま した。

あわせて御ネ

L申

し上げます。音楽活動の記録の翻訳 にあたっては静岡大学人文学部卒業生のパ ク・アヨンさんにご協力いただ きました。

引用・参考文献

安正恩

(2013)「

韓国幼児教育・保育政策 と教員 の専 門性の発達」 日本保育学会国際シンポジ ウム報告資料

テ淑鉱

(2007)「

韓国における保育施設の現状 と課題 ―『仕事 と家庭 の両立』 の視点か ら」『福 井県立大学論集』29 pp103‐

130

今村方子

(2004)「

韓国の幼児の音楽表現活動 と文化的背景 との関連 ―釜山市 における実態視 察 を通 して」『山口芸術短期大学研究紀要』36 ppl‐

12

林再澤

(2008)「

韓国の幼児教育史研究の現状 と課題及 び生態幼児教育学の位相」幼児教育史 学会 『幼児教育史研究』

3 pp5C158

金明順

(2013)「

韓国における乳幼児保育   教育の改革」幼児教育国際シンポジウム「東 アジ アの幼児教育改革動向 :韓 国・台湾の乳幼児教育改革に学ぶ」資料

勅使千鶴編

(21108)『

韓国の保育・幼児教育 と子育ての社会的支援』新読書社

勅使千鶴

(2012)「

韓国における保育   幼児教育の公共性お よび質の向上への取 り組 み :『 満

5

歳共通課程』導入の推進計画をめ ぐって

J『

日本福祉大学子 ども発濤学論剣

4 pp2746

勅使千鶴

(2013)「

資料 に見 る韓国の幼稚 園・オ リニジ ップの実際」幼児教育国際 シンポジウ ム「東 アジアの幼児教育改革動向」資料

74

参照

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