鎌倉時代の軍縮についてうんげん
鈴 木 正 文*
A Study of Ungen (Color Gradation) in the Kamakura Era
お1asafumÌ Suzuki
序
本研究では, 紀要第12集に発表した弘仁 ・ 平 安時代の盛綱の継 続 研究として, 鎌倉時代のも のをとりあけγこ。 鎌倉時代は, 政治・ 思想・ 文 化などにおいて大きな変卒期にあった。 そうし たなかで伝統的に施されてきた蕗綿は, 宋 ・ 元 商の影響により, 形骸イヒの頃向がみられる。 こ うした強制の意匠のうえにみられる変化を具体 的に調べ, どのような時代的特徴づけができる の か知ろうとした。
方法として, この時代に施された盛綱および 討二1 )
最網に近い手法を, 実物や図版により観察し,
施されている場所・ 文様 ・色彩 ・ 階関 数といっ た各点について分額し, 考察した。
I 畳詰uが施された美術品
観察により盛綱がみられた美術品は, 表1に 示した。 これを各部門別にみると表 2のように なる。 仏画が全体の半数近くを占め, 次いで彫
* 本学助手 立医学・服装デザイン
刻 ・ 締仏・ 建築・ 絵巻物・ 工芸という顕であっ た。
王子安時代後期には, 切金を 多用した精織な仏 画の中に盛綱が施された作例が 多 数 見 ら れ た が, 鎌倉時代にも, 密教関係の受茶羅に代表さ れる仏画の中に, 多くの主主織を見ることができ る。 そのほか, 絵画には, 絵巻物の中に:最高mに 近い表現がみられる。
彫刻では, 鹿派による, 南部の伝統をふまえ た作風を見せる天部に鐙締が多い。 なかには興 福寺の八部衆のように, 奈良時代の像に加彩を 施したものも見られる。 その ほか3 明王や, 地 蔵菩践にも施されたものが多い。
繍仏は, 平安時代には, 仏画の発達や寺院組 織の変改により, ほとんど製作 さ れ な か っ た が, 鎌倉時代には浄土教の布教に伴って復活さ れ, それらの中に盛綱の刺織がみられる。
建築においては, 三重塔や多宝塔の内部に施 されたものがよく残っている。
この時代に権力を得た武家の生活用品や美術 品には, 琵嫡が施された作例はみあた らず, 絵 巻物を除くほとんどの作例が, 仏教美術品であ る。
表1 畳網の見られる美術品の一覧
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附 記i 作 品 名 |略された場所 文 様 色初 日関数 界線的色 ìí'i 治一 jj 品 名 抱された場�T :文 様 色相 問調紋 界線の色
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〈浄土宗〉 i1tf訂JßI斗 .lIÍt .iifi観ーす}'f..{� A.B a'b+s む 3・4 1!' 羽(z:苛 阿 弥 陀三時間 A g * * * 高野山 λ大JlH.jLI軍昔前藍子立控 B c * * 本 組)1.良氏 r'l誌陀三尊摂子 窓 A.H <H‘S 。 本 '偉 高野山 λ大章子立性盟主税子主{草 B a ム * 金 f司弥f"Ë寺阿 弥 陀名号1.11 A.F d's 。 3 魯 浄土数美術〈浄土教のi1i淡〉
田丸正二氏 椛子阿弥陀三王将[�ì A s 2ぐa 4. 司民 知Jι院 地蔵野rんてと{象 B a+j ロ * * 協王寺税子�Ul�t �t::三尊民 A s キ 3 * :耳(白aE弘Jz恐呂ミ日喝ミ子伊〕 1也J議苛謎工>:[世 B c ム 3 金 f事 寺 綾 子 阿 弥 陀 A s * * * 地me :1f孤立像 B a 18: 3 {ft 神山ill雄氏 釈�阿弥陀ニ尊{京 A s 。 * :,l,�・ドl 東(念大仏�,寺J 地球"If ii!:ιI世 B a'n 。 * 本
際図災術館 釈;担河弥陀ニ G d * * * 興f品4'i' 地成主主隊立像 B a * * * 新長谷寺釈i組問弥陀ニl'1.f型 G d * 3 * 典 主M 苛 地政苔政11:{卑 B a * * * 今村千ll'-氏 釈;担阿弥陀二尊{草 A s * 3 * rmWil救ま 地球惑際立{生 B Í"n A * 古島
[彫刻IJ]釈迦関係の美術<1ム弟ナ〉 〈地獄六逃関係の泣物〉
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興福寺 λ部殺立像 B.E a * 2影 * 伊勢約紙 百í14f111/ m 。 6 *
三十三!剖:!:t ニfλ部設 緊部報主 E c 色 3 ;;f,l_\ | …専t量1m相m位お縁起指山2 I魯1!\第 第一1 1段進11 H H m 。 3 l思
三一十三耳目致 ニ十凡部投 抄端F主主 E c ム ヨド 判ド m θ 3 *
〈干且日市{象など〉 コとtìl a:陪花文 b : 3:i担!l恭丈 C : lE(小花・遣を形花・木Jlt形) d: e .往 興福寺法相六祖虫i象伝�削J B c * * * 丹 f :m草丈 g :部花丈 h 地文 L.詮校草 1 k : I且尽 興私1 苛 総Ift�応士ill,象 A 君臨 ホ * 1 蛇行状の丈械 m:情状文 n・円(連成・王) 0:欠羽根文 p :奨文
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広�l寺12:徳太子学問像 日 ..k 。 3 旦1・fで 色相1. <1H、・'N'紋・紫又は,ïi C占、・'"N'紋
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ロff l2'l紋 得隠王苛|十一部総背菩旅立rtI B I a I 0 I * I 金 務印の{î�ir11,立ヰ3尽のものであるが特例と
表2 主義網が施された美術品の部門による分類
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2 彫 刻 53 29.1
3 議!i 仏 14 7.7
4 建 築 12 6.5
5 暗hι号ζ 巻 物 8 4.4
6 工 τ芝民公 1 0.5
182
H 仏教美術品に見られる畳網
1. 教義による分類
注3 )
仏教美術に関するものを教義別に分類すると 表3のようになり, 密教・ 大乗仏教・ 浄土教の 美術品に畳網が施された作例が多い。 この時代 の宗教界は, I日来の 南部六宗と天台宗・ 真言宗 の 2 宗に加え, 新たに禅宗・ 浄土宗・ 浄土真宗・
真言律宗 ・ 法華宗といった宗派の活動が鎌倉な どを中心?と盛んになる。 こうしたなかには, 禅 宗や浄土真宗のように , 基本的には造仏を必要 としない宗派も台頭する。 この時代より栄えた 禅宗に関する建築物や美術品には, 最舗による 装飾がみあた らない。
一方 , 東大寺や興福寺などのように, 鎌倉時 代に再興された寺院や, 平安時代以前から存在 した!日来の教義による美術品には, 盛綱が施さ れた作品が多 数ある。 なかには, 浄瑠璃寺の吉 祥天や厨子絵のように, 奈良時代への復古的な 意図のもとに製作されたと思われる作例も幾っ かある。 また, 木地霊遣の 思想により製作され た垂逃憂奈羅や垂迩像の蓮華座に鍾綿が施され る。 その ほか特殊な作例には, 平安時代にはみ あたらなかった浄土教の地獄六道関係の絵画や 彫刻が挙げられ, 十王の衣服や冠に盛綱が施さ れている。
2. 盛綱が施された場所
畳綿は, 美術品のどのような所に施されてい るかを謂べると, 表4に示すように , 絵画 ・ 繍 仏 ・ 彫刻を通じて仏教像の台鹿に施されている
表3 盛綱の泌された美術品の教義による分類
鈴的 局:安主当 務lã 建イム 築議品会コ二τ士止p; 言十 %
1 密 教 美 術 @ 91 3 4 59 32.6 2 大衆仏 教美術 ⑬ @ 1 48 26.5 3 浄土 教美術 ⑬ 10 10 31 37 20.4 4 まま迩美 術 10 2 11 13 7.2 5 釈迦関係美術 71 1 8 4.4 6 禅宗美 術 1 I 0.6 そ グ〉 他 115 18 11 15 8.3
ものが最も多い。 ことに密教を最高として , 浄 土教 ・ 垂逃の畏奈羅に拙かれた蓮霊安m:や台座周 縁 の装飾に施されているものを多数見ることが できる。 それに次'f[, 彫刻の天部の衣服や甲南 に施されているもの , 次いで光背, 次ぎに寝泊 .宝冠などのアグセサリーといった}績に多く観 察された。 かわったものには, 天部の沓や旗・
扇にも主主綿が施されている例がある。 建築物で は, 堂内の長押・ 組物・ 天井・ 夫議・ 四天柱・
支輪板・ 無自・ 壁面といった部材に施されてい る。
作品のいたるところに畳織がよく残っている 作例として , 絵画では, 浄瑠鴇寺の吉祥天像関 子絵, 浄蓮寺・ 光明寺の 当麻長否定羅図を , 彫刻 では, 浄瑠璃寺の吉祥天像を , 建築では省山寺 や高野山金制三三日未慌の多宝塔などを挙げること ができる。
3. 鐙網で表現された文様
軍縮で表現された文様 を分類すると表 5 のよ うになり, 草花や動物・ 雲など具体的な自然形 象をそチーフにした文様と, 直線・ 曲線の組み 合わせによる幾伺学的な抽象文様 に大別 するこ とができる。 このうち自然、形象 をそチーフにし た文様 が圧倒的に多く, 中でも宝栢翠・ 蓮華・
唐草など, 奈良時代より伝統的に用いられてき た文様 が, 天部の被服や建築の長押に多く見ら れる。 この時代になると, そうした文様 のほか に牡丹や菊の文様 が見られるようになる。 高野法4)
山金剛三妹院多宝塔〈図1) , 海住山 寺 五重塔 (国 2 ) の内部装飾は, こうした作例である。
そのほか自然形象をモチーフとしたものには,
( 194)
彫刻や建築の彩色のなかに, 鳳風 や, 霊芝雲と 呼ばれる繋を形どった文様がみられる。
幾{向学的な抽象文様 のうち, 直線による縞文 様 には, 天部の衣服周 縁や建築部材の長押・ 格 縁にみられる帯状の文様(図3) と, それを一 単位 としてこ方向に 連続 さ せたような形の , 絵 画や彫刻の綴錦縁にみられる錦の文様〈霞4 ) がある。 寵線の組み合わせによる文様 は多 種あ
り, 1j)J王の坐す恋々座に相似 形の長方 形を重ね 合わせたような文機 (図5), アクセサリー や 天 蓋に矢羽根に似 た文様(図 6 ), 長奈 羅 の頭 光部の展状の文様(図 7), 天部の甲闘 な ど に 亀 甲 文様(国8 ) などがみられる。 これらの文 様 は古くから みられるもので, 王子安時代 までの 文様がほぼ受け継 がれている。 このほか, 長方 形を対角線で 区 切った文様(図 9 ) が, 原氏蔵 の紅旗梨色阿強陀簡の桓に みられる。 平安時代 中期の青蓮院・ 不動 明王二章子像に見られる文 様 と同じで古様 を示すものであるが 3 鎌倉時代 においては, ほかに例がみあたら なかった。
曲線による抽象文様 には, 密教の長奈擦の中 の大 日如来や 愛染 明王の頭光部に, 蛇行状の曲
表4 畳網が施された場所
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2衣 1Jfì. ⑪ @ I 52
3 ぅ巴 背 @ 2 l
4アクセサリー ⑮ 2 21
41 Ej3 Ff 9 12
10 外践の装飾! 3
11 供 養 iJ 、 2 2
9天 ヨ蚤 2 1 4
6四 天 中主 7 7
7長 11jl 6 6
8天 弁 5 5
11 内 l;jÎL 2
13 主主 部
11 外 1,涼 l
11 支 iÏ命 板 1
11 無 日 1
11 虹 梁
'マてァ グ〉 f也 20 2 l 23
1246
線を組み合わせた文様(図 1 0) が 錦繍 で表現さ れ, 弘仁 時 代を主体とする密教美術特有の肱惑 的な雰顕気 が 引き継 がれている。 その他, 宝珠 や 連珠 といった問芯円を重ねたような文様 や 渦 巻状の文様(図 11 ) がある。 渦巻状の文様は,
雲を形どった霊芝雲のー単位 としてみられる場 合が多く, 弘仁 時代の観心寺知意輪 観音の蓮華 控に見られるような , 力強いものはみあたらな いが, 比較的これと類似 とした文様が, 興福寺 北円堂の 海{主山ミ子五 重塔の長押にみら れる。
4. 色彩と階調数
この時代の畳綿に用いられ た色 彩について調 べると, 赤系統・ 青系統・ 緑系統・ 紫 系統もし くは 茶 系統の4色から5色に大別され, 各々の 色は3�4段の 階調を作っているものが多い。
紫 系統の彩色は, 変色によって 茶褐色化してい る場合が多く, 現在 茶 系統である盟締が, 当時 からのものであるのか, 紫色の変色によるもの
法5 ) かの識別は 困難 である。
当 時の紫色が 比較的よく残っている作例とし
表5 主主繍 が施された文様 文 j藻 *エι IIJ; 工 建
自 亥IJ 主芸 築 l 関 :{I:. 文 ⑬ ⑪ 33 認i 2 宝粉禁文 2 11 1 1 ⑬
12 E 9 自 3 花(小花・綿花・材申) 8 ⑫ 1 1
4 立主 主主 文 l 6 17
停と 6お: 丹 1 4 6 11
8唐 主主 文 2 8
jf� ヰお 11 菊 花 文 3 3
13 渓 文 l
象 13 主〆誌� E苦 草 務
グf也ラ
7 霊 斗~ーっでいy 号τZ室3旨会 6
11 風 風 2 1 3
幾 5蛇行状の文絵 ⑫ 12
可 6管 tk 文 5
詰-r会 9 円(逮珠・玉) 5 6
自ヲ 10 矢羽根文 2 1 4
t出象 11 菱 文 3 3
jr� 12 主主 ;1え 文
体 13 亀 甲 文 1
65 72 4 40 181
1 金持IJ三味|淀 多�i{ttr 外l主!l
2 ìiFj(ìõlll寺 Ji.J及活 長jlP
4 ::Il:M,' Mil
5 金剛ミl' 尊勝史茶!ììt図 l列王
6 浄瑠璃寺
吉祥天厨子 天井
8 円成寺 山天王立像
9 ま工!以梨色 阿弥陀図
7 松尾ギj三 原氏蔵
孔雀総見茶縦 光背
光背
(196 )
21 薬師寺 吉祥天間像 衿・ 背子
( 奈良時代)
1 4 税蹴寺三宝i淀 詞梨帝ほ{象 衣
1 5 教王i品目j寺
観音菩薩先天王子釈ヲミ{象 述翠陛 返1t
20 ì争1留璃ミデ 吉祥天{象 裳
22薬師寺 吉祥天画像 裳・裾
( 奈良時代)
文殊菩治U�;Hrnlí1象
表6 界 線 の 色
界線の色 絵酒 臨l 江i翠
1
議日仏 工芸 5十 祭 21 I 1 I 1 I 1 24
赤 9 8 3 20
泉 と 金 11 1 12
金 12
j黙 と 白 2 5
祭 と 赤 3 3
自 2 2
金 と 茶 2 2
そ の f也 5 2 3 10
不 明 i僚 37 30 5 11 1 84
て, 彫刻では浄瑠璃寺の吉祥天像, および厨子 内部の装飾・ 馬頭観音立像, 海住山寺の四天王 立像, 秋篠寺の伝帝釈天立像が, また繍仏では 細見氏蔵の大臼如来や阿弥陀三 尊種子長陀羅な どが挙げられる。
強網の配色については, 平安末期の「ニ中歴」
に紺丹緑紫という字句があり, 育系と赤系, 緑 系と紫系の主主網が隣接して繰り返されるのが,
当時の造仏における一般的な配色であったよう 法6 )
である。 鎌倉時代においても, 紫系については 不明瞭な点はあるが, 絵酪の中に措かれる蓮華 座や彫刻・建築の花文 様 の彩色には, こうした 配色が踏襲されている。 しかし, 鎌倉時代後半 になると, おもに垂班長奈羅に描かれる蓮華座 のように, 赤と青 あるには赤と緑だけの盛綱で 構成されるような, 形式化の著しい作例もでて くる。
配色における特殊な 例には, 教王護国寺の十 二天界風の帝釈天の衣(館12) のように, 自黒 の単色で階調を作っているものや, 仁和寺の孔 雀明王像(図13) のように, 青 と白を強調して いるものがある。 階調部を観察すると, 醍富士;寺 の区魔天や詣梨 帝母像(閣14) のように, 淡彩 で階調が判然としないものがみられる。 これら は, 鎌倉時代初期の新しい 様 式の 仏国で あ る が, I潜掘が判然としないという点では, この時 代後半の形骸化された作例の蓮華座にも向じよ うな例がみられる。
そのほか, 特殊な技法を並用している例に,
(198 )
教主護国寺の観音菩薩・党天・帝 釈 天 の 返 花 (密15) のように, 塁塁網彩生しずこ運弁の上に,
水眠にそって金泥彩患を施しているものや, 由 主草寺の地蔵菩 や般若寺の文殊菩躍騎獅像〈図 16) のように, 界線を盛り上げ彩色で表現した ものがみられる。 いずれも金色が強調されてい る作例である。
色彩において最も変 化が顕著であるのは, そ tl: 9)
れぞれの生相を括る界線の色で, 表6に示すよ うに, 平安時代のような白を用 い た例は少な い。 奈良時代への復古的なねらいにより用いら れた赤を除けば, 黒や, 黒と金を併用している ものが非常に多くなる。 図17は和歌山県桜池院 の薬師十二神将であるが, 平安時代末期から鎌 倉時代初期にかけての過渡的な作例とされてお り, 界線が黒で捕かれるようになった頃の作例 といえる。 こうした事は, 平安時代中期以降に 数多く請来された宋・元商の影響によるものと 思われる。 なかには, 醗蹴寺三宝読の虚空蔵菩注10)
護にみられる由と金や, 近年発見された四天王 寺の河界主主茶羅留にみられる白・黒・金のよう に, 数色を併用しているものもみられる。 これ らは平安末期から鎌倉初期にかけての作例であ る。 そのほか, 高野山金剛三三昧院多宝塔の蟻綿 には黄色が用いられている。 これは, 王子安時代 中期の醍醐寺五重塔内部の界線と共通し, 密教 寺院の畳網にみられるものである。
盟 仏教美術以外にみられる最綱的
な表現
1. 女房装束の配色と, -罷網との共通性 仏画や仏教彫刻における女性の天部の衣服は 唐服である場合 が多い。 しかし鎌倉時代以時の 仏画の中には, 平安中期以降に宮廷で着られる ようになった女房装束を着せた 作 品 が み ら れ る。 日野原家の普賢十羅来IJ女(閣18) はその例 である。 桂の衿口や袖回り・措聞など, 衣服周 縁 部のおめり出しは, 鐙網と同 様 に赤や緑の6 から10階謂に及ぶグラデイションで表現されて いる。 仏教美術以外にも, この時代に描かれた
E主11) 宗教的あるいは貴族的内容による絵巻物に, こ
のようなおめり出しの表現を数多く見る ことが できる。(密19)。
絵巻物に描かれた桂の色相を調べてみると,
1人につき1色相もしくは 2 色相で, 赤系統・
管系統・紫 系統・緑系統・寅系統に大別 する こ とができる。 これは主主概に組み合 わされる色相 とほぼ一致している。
桂の重ねの枚数には4寺にき まりはなく, 時に は20枚にも及ぶ ことがあったようであるが, 絵 巻物には, 多いもので6, 7枚, 少ないもので 3枚程の表現がみられる。 当時, 桂は五つ衣と 呼ばれ, 通常, 1色につき5枚の 桂で匂といわ れる濃淡の効果をねらったもの, あるいは3枚 の匂と他の色の 2 枚の 桂を組み合 わ せて 5 枚と す る ことが多かったようである。 このように明 度差による階調の数も, 最紘彩色の3から5 階 調が多い ことと類似 している。
縞による効果という点からみてみると, 桂の おめり出しは衣の重ねによって で き る 縞 で あ り, 文様 とはいし、がたいが, 仏教美術品に施さ れる畳織による文様 のうち, 直線による縞文様 と同類のものである。 例えば, 寺院の長押や格 縁 に みられる縞文様 の盛綱や(図4 ), 天 部が 着る朝服の 背子の周縁 部や裳裾 の織柄の 盛 綱 (図20) などである。 薬師寺の天平時代の古符 天画像は, 衿や背子の周縁 部が赤のグラデイシ ョンで表現され(21国), 裳裾には赤や緑 の 縞 文様 の鐙網(22国〉がみられる。 こうした文様 は, 鎌倉時代初期の浄瑠璃寺吉祥天(図20) や その厨子に拾かれた天部の衣服にも見られる。
このように鉱倉時代の控の重ねによる色彩や形 体の効果のうえには, 畳織との 共 通 性が み ら れ, 女房装束の意匠には盛縮が応用されている
ことが想像される。法13)
ま と め
鎌倉時代の鏡締 は, 浄土宗により再び製作さ れるようになった締仏のように, これまで貴族 階級の文化が主体であった軍縮が民衆の中に広 がってゆく傾向がみられる。 一方 , 造仏を必要
としない当 時の新しい禅宗などの業術品や, 貴 族に代って権力を得た武家の生活用品や美術品 には, 畳織が施されているもの は み あ た らな L、。
ま た, この時代に描かれた貴族的・宗教的内 容を扱った絵巻物には, 女鹿装束の桂の表現に 軍縮に近い効果をみる ことができる。 こうした ことより, 平安時代中期以降の 日本化に伴って 作られた女房装束の意匠には最棋が応用されて いる ことが想像される。
また一方 , 18来の大乗仏教に関する天部の彫 刻や, 密教を主とする塔の建築な ど の 彩 色 に は, 牡丹や菊の文様 も施されるようになる。 こ うした盛締 の色彩 には, 平安時代 までの配色を 踏襲しているもの, 奈良時代へ の 復 古的な も の, 宋・元田の影響がみられるもの, 形骸化し てし まっているものなど, 幾つかの傾向がでて くる。 新たな手法には, 盛り上げ彩色によるも のも見られる。
こうした中で, 色彩における最も顕著な特徴 として, 文様 を括る界線の色が, 宋・元厨の影 響を受けてか, 黒や足、と金で、描かれるものが多 くなる ことを挙げる ことができる。
追記
この研究にあたり, 本学西国教授および下地 教授よりご指導ご教示いただし、た。 こ こに深く 感謝の意を表する。
j主および参考文献 注1) 本研究に用いた図版
① 奈良六大寺大綴 〈唐招提寺 1> 80頁・223図
〈法隆寺 5> 181・187図・210頁〈興福寺 1> 31 1支・98・125・150�154図 〈興福王子 2> 14・18
�23・32・33・36�39・40�47・54�57・60� 62・100・101凶〈東 大寺 3> 1�7・12�15・20
�25図 別刷3 頁 挿図 5 <西 大寺全> 10・11 . 14図
② 大和古寺大観第 3巻 〈船若寺> 123主主 同第 4 巻 〈円成寺> 24・74・75・132・133・146図
〈自主筆寺> 119・130図同第 5巻 く秋篠寺> 8�11
・33・34 íllj,\jì1j 2劉〈海龍王寺> 122図
〈不退寺> 149�話向第 6巻 く室生寺> 112�117図