• 検索結果がありません。

新人看護師のインシデント発生状況の把握

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "新人看護師のインシデント発生状況の把握"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

新人看護師のインシデント発生状況の把握

1.はじめに

医療技術の進歩に伴う看護技術の複雑多様化 によって、看護師が遭遇する医療事故は増加傾 向にある。 1 )新人看護師(以下新人とする)は、

看護基礎教育で経験しない複数の患者を受け 持ち、限られた時間の中で多重業務に対処しな ければならず、精神的疲労や業務に関する負担 感が強い。誰もが起こしうる内容であっても新 人にとって インシデント"とは非常に大きな 意味を持っている。今回、プリセプターとして 関わる中で新人がインシデントを発生した状 況を目の当たりにして、インシデント発生に至 った新人に対する指導・サポ}トの難しさを感 じている。 A 病棟において、今まで新人のイン シデントに関するデ}タはなく、新人に対する インシデントの現状・傾向を明らかにすること で、今後の新人教育にあたり時期に応じた指導 ができるのではないかと考えた。

そこで今回、新人のインシデント発生状況を調 査し傾向を明らかにした。

l l .   目的

新人がどのような時期にインシデントを発生 しているのか、現状・傾向を知る。

m . 方法

1)対象 :A 病棟の平成 1 8 年度 4 月 平成 22 年度 1 0 月までの新人が記載したイ ンシデントレポート

2) 方法:電子カルテより医療安全推進室の ページから、過去のインシデント検索を 行い、その中で新人がインシデントを発 生した部分のみピックアップする内容 (内服・薬剤管理・ Dr 指示抜け・ノレー ト類自己抜去・点滴管理・転倒・検査) 個人的要因(確認が不十分・観察が不十 分・判断の誤り・知識不足・技術が未熟・

‑77 ー

B棟 6 階 O 西 尾 果 菜 島 岡 理 恵

報告忘れ)心理的要因(慌てていた・イ ライラしていた・緊張していた・気を取 られた・思い込み・無意識だった)にそ れぞれ分類し、月毎に単純集計した結果 から、新人のインシデントの傾向を分析

した。

3)倫理的配慮:対象者には研究の目的・個 人情報の保護、協力は自由意志であるこ とを文書・口頭で説明し、同意しない場 合でも不利益は生じないこと、研究以外 でデータは使用しないこと、個人が特定

されないよう配慮することを伝えた。

4)用語の定義:新人とは看護基礎教育を終 えた直後に病院に就職し、病棟に従事し ている経験 1 年以内の看護師。

1V.結果および考察

1.インシデント発生件数と内容

図 1 より 5 月から 7 月にかけて 9 件か ら 1 8 件と急速に上昇していることが分 かる。次いで 1 0 月・ 1 1 月 、 1 月に上昇

している。

‑ ‑

‑ ‑

‑ ‑ H  

‑ ‑ ‑

‑ ‑ ‑

‑ ‑ ‑

‑ ‑ ‑ e  

:  ; 

‑ ‑ ‑

・ ・ ・ 月

‑ ‑ ‑ ・ 圃 ・ ・

2 j  [ 

‑ ‑ ・ ・

・ ・ ・ ・ 圃 ・ 闘

n

E 圃

a ‑

‑ ‑

‑ E 1

‑ ‑

‑ E E H  

・ 圃 圃 圃 圃 圃 圃

' a

i

i  ‑ ‑ ‑

‑ ‑ E E ‑ ‑ E

n

i

‑ 司 自

﹄ E ﹄ 1 i 

‑ 圃 ‑ ‑ ‑

‑ R

E ‑ ‑ ‑

‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑

‑ ‑ a u

‑ ‑ 4 E l d ‑ ‑ J 1   j 

e‑‑

・ ・ ・ 月

‑ ‑ ‑ ‑

‑ ‑ ‑ ‑ e  

j j  ‑ ・ 圃 圃

・ ・ ・ ・ 圃 回

n

田 園 ・ ・

・ ・ ・

8 1  J 

E ‑ ‑ 圃 ・ ・ ・ 圃 ・

・ ・ ・ ・ 圃 園 内

‑.. . . . .

. . . . . . . . . . . . .   ︐ ︐  

j j  ‑ ‑ ・ ・ ・

・ ・ ・ 月

l e  

:  J 

‑ ‑ ‑ ・

・ ・ ・ 月

‑ " ・ ・ ・

・ ・ 圃

5 j  : 

‑ ‑ ‑

‑ ・ 月

‑ 圃

4

M e s a H W

医 胡 肉

U

2 1 1  

件 敵

国 12 0 0 6 年目 2 0 1 0 年のや・ンデント発生件数 発生内容としては点滴管理の件数が多

く、次いで転倒・内服・薬剤管理であっ た。(件数の多い点滴管理については、

指示投与時間より早く落としきってじ

まったものが 40 件中 1 9 件と約半数に

至っている。

(2)

件 数

‑ o ' ' a u R u a ‑ y ' o n a  

図 22006 年 ‑2010 年のインシデント内容別発生件数

自 ・ 欄 圃

' l

一 個 圃 ・ 聞 明 一 ・ 凶

‑ ‑ h

. . . .  

一 . 圃 . .  

﹄ z

一 困

. .   一 開

. .  

‑ ・

・ ・

‑ ‑ B E

一 ・

・ ・

a 旭 j 

一 幽 圃 ・

・ 田

l 明

t  

j  一

‑ ‑ ‑

‑ E ・ ・ 且 月 一 園

"

・ ・

・ ・

a 叩

一 ・

・ ・

4

一 回

・ 圃 園 田

・ 月

i g  

‑ ‑ E

I

・ i 

i 1

・ ・

・ ・ 月

‑ ‑ ‑ ‑ ‑

‑ ‑ ‑ ‑ ‑

‑ ‑ a e e

一 ・ ・ ・

・ ・ ・ ・

・ 圃 月

│ 7  

j [  ー 圃

・ ・ ・ ・

・ 月

‑ ‑ ‑ ‑

‑ ‑ ‑ ‑

‑ e  

‑ ‑

‑ ‑ a

‑ E

圃 圃 圃 ・

・ 月 一 幽 圃 ・

4 ・ ﹄

S E‑‑

凹 幽

司 ‑

‑ ‑ 一 綱

8 4 2 0

件数

図 3点滴管理

盤 l ‑ j L H E H ・ . .

・ 圃 圃 ‑ ‑ E

‑ ‑

‑ ‑ ‑ a a

i  国‑‑‑‑周

M

M

"

2 : : 

E

幽 ・ ・ ・

・ ・

E 目

H

‑ 幽 ・ ・

・ ・ ・ ・

1 ; 

‑ R  

H

‑ z  

j i   j i  

j  i 

‑ ‑ ‑ ‑ E E ‑ ‑

且 周

H

‑ ‑ ‑ ‑

‑ ‑ ‑ ‑

‑ ‑ o  

J t  

:

j J  

:

j  m ‑

‑ ‑ ‑ ‑ E

‑ ‑ ・ 圃 ・ ・

・ ・ ・

・ ・

8 : 

i l  

‑ 7  

:  j 

m

・ ・

・ 園 月

‑ ‑ ‑ ‑

‑ ‑ ‑ ‑

‑ a u  

j  ; l  

‑ ‑

‑ ・

5 j 

‑ 圃

R

E ‑

‑ ‑

‑ ‑

‑ a a T  

8 6 4 2 0   件 数

国 4 転倒 園 5 内服・藁剤管理

10  r ‑ 四 ー ー 『 司 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ーー ー ー 』 ー ー ー ‑

8  6  4  2  0 

4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 1 0 月 1 1 月 1 2 月 1 月 2 月 3 月

│回慌てていた図イライラしていた図緊猿していた口気を取られた固思い込み悶無意識だった│

国6 心理的要因

14  r ー 園 田 ー 一 回 目 ー ー 一 一 ‑ ‑ ‑ 一 一 ー 『 ー ー 一 一 ー 守

F

一 一 一

9  4 

│回確認が不+分回観察が不十分図判断の誤り回知識不足図掠術・手技未熟回報告・記載忘れ│

固7 個人的要因

︒ ︒

マ t

(3)

新人は入職後病棟に配属になってから 6 月 ごろにかけて、周りは知らない事だらけで 何もわからない・専門用語が理解できない といった不完全な知識や、慣れない環境で のなかで業務に携わることで緊張も強く、

物品の配置も記憶できないうちに業務を行 わなければならないといった事も多々あり、

物の仕組みゃ経験があれば起こさないよう なインシデントに至ってしまいやすい状況 にあると考えられる。図 6 の心理的要因に 関しては、 6 月に「緊張していた」の件数 が上昇している。

新人に話を聞いてみると「実際に勤務し始 めて学生の時には経験していないことがた くさんあって、不安になった J という意見 があった。学生の頃の状況と実際の現場と の状況の差が不安を増大させ、その中でも 実際に業務を行わなければならない状況に 新人は戸惑いを感じてしまう。そのため、

この時期にインシデントを発生させること は不安を抱えている上にさらに精神的ダメ ージも大きくさせてしまうと考えられる。

図 3 より点滴管理の件数に関しては、 5~8 月にかけて多く、 7月に急増している。図 5 より内服管理の件数に関しても、 7.8 月 に増加している。 7 月頃にかけて急速に全 体の発生件数が増加している要因として、

10 月に件数が増加している要因として、働 き始めて 6 ヶ月が経過し、一通りの業務・

動き方を習得してきている。また、この時 期には未経験処置を経験できるように指 導・介入を行うが、プリセプターはそれぞ れの処置の方法を知り、経験させるという

新人が業務の 1 人立ちを始めている時期に 値する。日勤業務だけでなく夜勤業務も開 始している時期であり夜勤では受け持ち患 者数が日勤より 4""5 倍へと多くなる。また、

業務内容も専門性の高い技術から単純作業 まで幅広い。当科では、周手術期からタ}

ミナノレ患者と状態も様々である。そのため、

情報量が多く、患者の把握も十分にできな いことが考えられる。緊急で入る処置や

I V R ・内視鏡・レントゲン・手術などへの 出室も多く、処置施行前後の経時的な観察 も必要である。絶食・栄養管理のために点 滴施行中の患者数が多く、点滴管理は必須 である。持続点滴も多いため夜間に接続す る点滴も多く、同時間に多数の点滴更新を しなければならない状況にある。 6""8 月に かけて図 7 の個人的要因での「確認が不十 分 J r 観察が不十分」の件数が多くなってい

る原因ではないかと考えられる。

これらのことより、一日の行動計画を立て ていても思うようにすすまない、計画通り にいかない事がある。図 6 の心理的要因か

らも、 6 " " ' 8 月にかけて「慌てていた」の件 数が増加しており、経験を積んだ看護師で あれば、状況判断を行い落ち着いて計画の 立て直しをして行動に移すことができるが、

新人には困難と考えられる。

ことに重点を置いてしまっている現状があ り、実際に一人で行える技術は少ない。塩 谷ら 2) は「新人は知識と実践の結びつき が弱いため、不安や危険を感じる事もない。

そのため、新人は業務の慣れや経験が知識 であると思いこみやすい。 J と述べており、

‑79 ‑

(4)

「一人でもできる」といった自信に陥りや すいのではないかと考えられる。このこと から新人は自己の考えに執着し、短絡的行 動からインシデントに発展しやすい傾向が あるため、この時期のインシデント発生件 数の増加につながっているのではないかと 考えられる。 1月噴には周囲からはーメン

ノ~~としてみられるため、フォロー体制が

変化してくる。この時期には次年度に入っ てくる看護師の話も多く飛び交い、 2年目 になる責任の重さを改めて感じさせられる。

この事が新人にとって誰かに頼らずに一人 で行わなければならない、分からないこと があっても相談出来ないと思い込ませてし まいやすくなる。塩谷 2) らは「新人看護 師の傾向として慌てると全体の状況判断が できなくなり、根拠を持って優先順位が考 えられなくなる。応援依頼や相談も戸惑い があって出来ず、一人で対応しようとする ため、手順に沿った基本行為も確実でなく なる」と述べているように、この時期では 状況判断の誤りや優先順位が考えられず、

これまで出来てきたことが出来なくなると いった傾向があると考えられ、図 6 の心理 的要因の中で「慌てていた j が再度上昇し ているのもこれらが原因ではないかと考え る。図 4よりインシデント件数で多かった

「転倒」は月に関係なく、平均的に同じ件 数が発生している。今回、新人がどのよう な転倒に関してインシデントを起こしてい るかまでは把握するまでには至らなかった。

v . 結論

新人がインシデントを発生しやすい時期は、

5 月から夜勤も入りだす 7 月まで、ゆとり が国てきた 1 0 月、ーメンバーとして自覚す る 1月に多い。

発生内容としては点滴管理の件数が多く、

次いで転倒・内服・薬剤管理が多い。

V I . 研究の限界

今回の研究で新人のインシデント発生の現 状・傾向を知ることができた。しかし、研 究対象をインシデントレポートのみに設定 したことで、件数の把握のみに止まってし まい、インシデント発生時の状況を知るこ とは難しく限界があったと考える。また、

今回はインシデントを発生している時間 帯・インシデントに至った具体的内容・イ ンシデントの内容と深面の関係性までは検 索できず、今後の具体的な対応策を考慮す るところまでは至らなかったため、今後の 課題にしていきたいと考える。

V H . おわりに

今後新人を指導していく中で、実際に患者 と関わり始めた時期に「インシデントとは」

「インシデントレポートを書く意味Jを教 え、意味や理解を深めることで、インシデ ントという事実だけに止まらず、実感・再 認識でき、振り返りを活かすことが出来る のではないかと考える。

【引用・参考文献】

1) 嶋森好子:リスクマネジメントにおけ る新卒看護師の課題,看護展望, V O L 3 4   ,  P 9 ‑ 1 4 ,  2 0 0 9  

2) 塩谷今日子他:新人看護師のインシ デントを防止するための安全教育,看護管 理 , 3 9 , P 1 8 1 ‑ 1 8 3 , 2 0 0 8

‑80‑

参照

関連したドキュメント

(ロ)

2.認定看護管理者教育課程サードレベル修了者以外の受験者について、看護系大学院の修士課程

「社会人基礎力」とは、 「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な 力」として、経済産業省が 2006

ア  入居者の身体状況・精神状況・社会環境を把握し、本人や家族のニーズに

の 立病院との連携が必要で、 立病院のケース ー ーに訪問看護の を らせ、利用者の をしてもらえるよう 報活動をする。 の ・看護 ・ケア

では,訪問看護認定看護師が在宅ケアの推進・質の高い看護の実践に対して,どのような活動

あれば、その逸脱に対しては N400 が惹起され、 ELAN や P600 は惹起しないと 考えられる。もし、シカの認可処理に統語的処理と意味的処理の両方が関わっ

3.仕事(業務量)の繁閑に対応するため