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School counseling that contributes to special needs education at high school : From the view point of independent activities

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(1)

       

*茨城県公立学校スクールカウンセラー

*茨城大学教育学部学校心理学研究室(〒 310-8512 水戸市文京 2-1-1; Laboratory of school psychology, College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan).

1 はじめに

筆者は,中学校や高等学校のスクールカウンセラー(以下

SC

と略記)として勤務している。不 適応傾向の生徒支援に携わる中で,診断の有無にかかわらず,発達障害等の特徴がみられる事例に 数多く出会ってきた。平成

28

4

月に施行された障害者差別解消法により,発達障害等のある子 どもたちに,学校が「合理的配慮」をすることが明確化された。そして,小学校,中学校,義務教 育学校及び中等教育学校の前期課程(以下「小・中学校」と略記)において実施されてきた「通級 による指導」(大部分の授業を通常の学級で受けながら,一部の授業について障害に応じた特別の 指導を特別な場で受ける指導形態)を,高等学校及び中等教育学校の後期課程(以下「高等学校」

と略記)においても平成

30

年度より実施できるようになった。しかし,この制度については,保 護者はおろか教員の一部にも,まだ正しく理解されていない。例えば,単なる各教科の補充指導が 行えるかのような誤解を招いていることがある。教員だけでなく支援者である

SC

も制度を正しく 理解していなければ,適切な支援は行えない。そこで,本稿ではまず,通級による指導の制度を簡 単にまとめてみたい。その上で,筆者が出会った事例のいくつかを提示し,高等学校における特別 支援教育の推進に向けた筆者なりの提案を述べていきたい。

2 通級による指導とは

「通級による指導」とは,通常の学級に在籍する障害のある児童生徒が,各教科の大部分の授業

高等学校の特別支援教育に寄与するスクールカウンセリング

―自立活動の観点から ―

深谷佳子

*

・丸山広人

**

(2019 年 8 月 30 日受理)

School counseling that contributes to special needs education at high school : From the view point of independent activities

Keiko F

UKAYA

* and Hiroto M

ARUYAMA

**

(Accepted August 30, 2019)

(2)

を通常の学級で行けながら,一部の授業について,障害に応じた特別の指導を「通級指導教室」な どの特別な場で受ける指導形態のことである。対象となる障害の種類は,①言語障害者,②自閉症 者,③情緒障害者,④弱視者,⑤難聴者,⑥学習障害者,⑦注意欠陥多動性障害者,⑧肢体不自由 者,⑨病弱者・身体虚弱者としている。知的障害者は,通級による指導の対象となっていない。そ れは,知的障害者の学習上の困難の改善・克服に必要な指導は,生活に結びつく実際的・具体的な 内容を継続して指導することが必要であり,一定の時間のみ取り出して行うことはなじまないこと による。通級による指導は,「障害による学習上又は,生活上の困難を改善し,又は克服を目的と する指導」とし,特に必要があり障害の状態に応じた各教科の内容を取り扱う場合も,単なる各教 科の遅れを補充するための指導とはな

らないようにしなければならない。そ してそれは,特別支援学校の特別な指 導領域である「自立活動」に相当する 指導とされている。特別支援学校学習 指導要領「自立活動」の内容について は,表

1

に示す。また,個々の児童の 障害の状態等に応じた具体的な目標や 内容を定め,学習活動を行うこととし,

通常の学級の教育課程に加え,又はそ の一部に替えた特別の教育課程を編成 することになっている。小・中学校に おける通級による指導に係る授業時数 は年間

35

単位時間から

280

単位時間 までを標準としているほか,学習障害 者及び注意欠陥多動性障害者について は,年間

10

単位時間から

280

単位時 間までを標準としている。なお,一人 一人の障害の状態や特性及び心身の発 達の段階等に即した指導目標の設定や 指導内容・方法の工夫などの配慮が必 要なため,個別の指導計画を作成し,

個に応じたきめ細かな指導を行うこと や個別の教育支援計画を作成すること

になっている。これは,学校生活だけでなく,家庭や地域での生活も含めて,障害のある児童生徒 一人一人の生活を総合的にとらえて実態やニーズを明らかにし,それに応じて,教育,福祉,医療,

労働等の関係機関が連携協力して支援を行うための計画で,本人・保護者のニーズを踏まえた支援 を実施することが重要である。その取扱いについては,本人・保護者の了解が不可欠である(文部 科学省

2015,

2017a,

2017b,

2018a,

2018b

)。

1 特別支援学校学習指導要領「自立活動」の内容

項目 内容

1 健康の保持

(1) 生活のリズムや生活習慣の形成に関すること。

(2) 病気の状態の理解と生活管理に関すること。

(3) 身体各部の状態の理解と養護に関すること。

(4) 健康状態の維持・改善に関すること。

2 心理的な安定

(1) 情緒の安定に関すること。

(2) 状況の理解と変化への対応に関すること。

(3) 障害による学習上又は生活上の困難を改善・

克服する意欲に関すること。

3 人間関係の形成

(1) 他者とのかかわりの基礎に関すること。

(2) 他者の意図や感情の理解に関すること。

(3) 自己の理解と行動の調整に関すること。

(4) 集団への参加の基礎に関すること。

4 環境の把握

(1) 保有する感覚の活用に関すること。

(2) 感覚や認知の特性への対応に関すること。

(3) 感覚の補助及び代行手段の活用に関すること。

(4) 感覚を総合的に活用した周囲の状況の把握に 関すること。

(5) 認知や行動の手掛かりとなる概念の形成に関 すること。

5 身体の動き

(1) 姿勢と運動・動作の基本的技能に関すること。

(2) 姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用に 関すること。

(3) 日常生活に必要な基本動作に関すること。

(4) 身体の移動能力に関すること。

(5) 作業に必要な動作と円滑な遂行に関すること。

6 コミュニケーション

(1) コミュニケーションの基礎的能力に関すること。

(2) 言語の受容と表出に関すること。

(3) 言語の形成と活用に関すること。

(4) コミュニケーション手段の選択と活用に関す ること。

(5) 状況に応じたコミュニケーションに関すること。

(3)

3 高等学校における通級による指導

高等学校における通級による指導の対象者や指導内容は小・中学校同様であるが,その大きな違 いは,単位の扱いである。単位の修得及び卒業の認定について,履修単位数は,年間

7

単位を超 えない範囲で,当該高等学校が定めた全課程の修了を認めるのに必要な単位数のうちに加えること ができる(文部科学省

2018b

)。教育課程に加える場合とは,放課後等の授業のない時間帯に通級 による指導の時間を設定し実施するものである。この場合,対象となる生徒の全体の授業時数は他 の生徒に比べて増加することになる。一方,教育課程の一部に替える場合は,選択教科・科目等に 替えて実施するものである。この場合,対象となる生徒の全体の授業時数は増加しない。なお,通 級による指導を,必履修教科・科目,専門学科において全ての生徒に履修させる専門教科・科目,

総合学科における「産業社会と人間」,総合的な探究の時間及び特別活動に替えることはできない。

また,特別支援学校学習指導要領に定める「自立活動」は,個々の生徒の障害に応じ,その障害に よる学習上又は生活上の困難を改善し,又は克服することを目的とする指導であるから選択教科・

科目として「自立活動」を行うことはできない(文部科学省

2018a

)というものである。

さて,ここで高等学校における通級による指導について,疑問や課題だと感じる点をいくつか提 示したい。まず,生徒にとって,学校が設定している選択教科・科目は,自分でも興味があり,進 学や就職に必要かつ役立つ科目である場合が多いことから,通級による指導へ替えることには,慎 重になることが予想される。そもそも,第

1

学年は,大半が必履修科目で構成されていることが多い。

さらに,放課後の実施を考えた場合,進学校では

7

時間目にも授業が組まれていたり,課外授業が 行われていたりする。その他,部活動やアルバイト等,高校生は放課後もとても忙しく,「自立活動」

に興味があったとしても増単位をしてまで,取り組むのか疑問である。

重(

2017

)は,高等学校における通級による指導が制度化に向けて動き出した経過についてま とめている。その中で,通級による指導の実施前のモデル校の取組として,進学者の多い全日制高 等学校での「通級による指導」に関連したものを報告している。対象者を限定した「自立活動」の 授業を

2

種類,①肢体不自由の生徒を対象にしたもの,②障がいの有無にかかわらず希望者を対 象にしたもので,全生徒

1,000

人中

2

4

人(年度による)で実施されたとしている。①は,肢 体不自由の生徒に,週

1

時間,体育の時間のうち

1

時間を自立活動として,「身体各部位の弛め」,

「姿勢づくり」,「選択種目の基礎練習など」という内容で 「身体の動き」に関する内容の授業が行 われたというもので,通級による指導として単位が認められるにふさわしい内容である。一方,②は,

週 ₁ 時間,選択教科として「人間関係形成」等に関する内容の授業であるが,これは「選択教科」

であり,個別の障害を対象としていないため,通級による指導の範疇ではないと考える。

ところで.障害の種類で,知的障害が対象にはなっていないことにも疑問が残る。全日制,定時 制,通信制に限らず高等学校に,一定数の軽度知的障害者が存在する実態がある(障害者職業総合 センター

2017

)。障害上の特性から,状況を理解できずに混乱し,トラブルに発展するような事例 が少なくない。このような生徒が,生徒指導の対象になったときに,学校での対応で「指導」か「支 援」で議論されるケースをいくつも目にしてきた。このような生徒たちにこそ「自立活動」の時間 が必要なのではないかと考える。さて,吉澤(

2018

)は,高等学校における特別支援教育政策の 動向や課題を整理し,通級による指導が学校現場で円滑に導入される方策について検討している。

(4)

そして,「高等学校教育における特別支援教育は,生徒のこれまでの生育歴を含め発達段階に配慮し,

学力保障だけでなく,規範意識の醸成だけでもなく,また,情緒的な安定だけでもなく,それらの 全てを含めて生徒の支援ニーズに気づき,個々のニーズに応じた支援を行うことにより,社会の中 で生きる力を育てるという視点が大切である」としている。中学までに,教育支援計画書と個別の 指導計画が作成されていた生徒については,高等学校でもスムーズに支援が導入できそうであるが,

高等学校入学後に,支援の対象者となった場合,生徒・保護者との合意形成は大きな課題だと感じ る。そのことについては,事例をもとに考えてみたい。

4 事例について

関ら(

2017

)は,北海道内で高校における特別な教育的支援を必要とする生徒への支援につい て実態調査を行っている。「学校全体での支援や配慮」について,「生徒自身への面談やカウンセリ ングは,小・中学校での特別支援教育においてはあまり強調されない事項であるが,高等学校にお ける支援においては重要になると思われる」と指摘している。生徒自身への面接について,筆者が これまで関わった複数の事例を一つにまとめた形で,本人が特定できないよう配慮して提示しなが ら,そこでの支援について,「自立活動」の内容との関連も含めて検討したい。

1

)自閉スペクトラム症(

ASD

)で,思い込みが強く対人関係に自信がないAくん(進学校の

2

年)

A

くんの主訴】

・いじめ(誹謗中傷)に耐えられない。

・対人関係が築けない。他者とのかかわり方がわからない。

〔相談の概要〕

事前に担任から「

A

くんが訴えるいじめについては,担任も直接本人から確認しており,ペンケー スのデザインを笑われたという思い込みから始まったもの」という情報を受けていた。

担任の勧めで自ら予約し来室。「クラス替えにより親しい友人が全て別のクラスになり話す相手 がいなくなった。自分は,とてもコミュニケーション力が低く,クラスの中心的な発言力の高い人 たちのグループに入ることに失敗したため,誹謗中傷を受けるようになった。大多数のクラスメイ トから不当な扱いを受け,自分について他校にまで悪い噂を流されている。バスに乗っている大学 生までも自分の悪口を言っているのが辛い」と訴える。具体的な被害を尋ねる。「そう思った」ば かりで,明確な言葉や暴力などの実態は確認できない。そこで,体調面を確認したところ「体調が すぐれず,食事ものどを通らないことがあった。それは,自分の抱える不安と関係があると思う。」

と答える。<いつ頃から?>「小学校の頃から運動も芸術も得意なことがなく,馬鹿にされたり悪 口を言われたり辛かった。教科書や本には自分の悪口は書かれていないので,勉強や読書に打ち込 んで紛らわせてきた。中学時代は,成績もよく認められている実感があったが,高校では,皆が優 秀で,自分には何も秀でたところがないと感じる。人の気持ちが分からないから,皆のように他者 を慮れないし,どう振舞ったらよいのかがわからない」と言う。<コミュニケーション力が低いと いう割には,初対面の私に,大変わかりやすく,しっかりと自分の状況を説明してくれているし,

穏やかで悪い印象は受けないけれど…>とフィードバックする。「小学

4

年の時に小児科で発達障 害の診断を受けた。処方もあり今も服用している。その医師は,よき理解者で,『他者の気持ちの

(5)

考え方』を教えてもらった。『もしも,自分が言われたらどう思うか』って考えてから動くようになっ た。いつもそのようなことに気を使っていたら,考えすぎてわからなくなってしまった。発達障害 のことや病院に行っていることは,絶対に学校には知られたくない。」と険しい表情になる。<了 解なしに病院のことは言わないけれど,他者とのかかわり方や振る舞いについて困ったときに一緒 に考えるのはどう?>と提案する。「是非そうしたい。今日は聞いてもらって,とてもスッキリし ました。耐え切れない事態になったらまた来ます」と,とても礼儀正しく挨拶をして退室する。担 任によれば,ペンケースの件以降,席替えして気配りのできる生徒の近くにし様子を見ている。また,

母もAくんの妄想的なところを気にしていて,近いうちに父親が一緒にバスに乗って登校し,状況 を確認する予定とのこと。通院等の話題はでなかった。

[見立てと対応]

思い込みの激しさは,一見妄想かのようなにも感じる。杉山(

2007

)は,発達障害の子どもた ちについて論じる中で「小学校高学年になると,社会的なルールに従えないというトラブルは激減 する。しかし同時に周囲を気にするようになり,それまで無関心な態度から一転して,被害妄想と 言えるほど,ささいな働きかけに対して,いじめられたと大騒ぎする例が少なくない」(

P.111

)と している。中学では「勉強が秀でている」という実感に支えられ乗り越えたAくんだが,高校入学 後は,小学校時代からやってきた勉強や読書によるコーピングが通用しなくなった。必死でがんばっ たが,進級時の環境の変化から孤独感を強くし情緒不安定になった。親子ともに学校に発達障害に ついては知られたくない様子だが,主治医との関係も良好で,定期的な通院ができていた。また,

母も

A

くんの不安定な状態を把握しており,適切な対応をされていた。そこで,さらに踏み込ん だ支援は控えときどき担任に様子を尋ね,落ち着いた学校生活を送っていることを確認する見守り 支援に留めた。その後の予約はなかった。

2

)おとなしく発話のない自閉スペクトラム症(

ASD

)疑の

B

くん(進学校の高1)

【担任の主訴】

・大人しく友人もなく,教員との会話も成立しない。

・授業中,発問への応答がなく固まってしまったり,寝てしまったりが多く,課題が出ない。

・放課後昇降口付近で意味もなくうろついている。

・面談で母に状況を報告したところ,頻繁に連絡してくるようになり,「各教科の内容や課題を 母にも知らせて欲しい」という要望にどう対応すればよいかわからない。

【母の主訴】

・発達に凸凹がある子で,中学までは周りのお友達や先生方に支えられながらうまくやってきた が,高校入学後,うまくいかないことが多い様子で元気がない。

・課題があるはずなのにスマホでゲームばかりしている。

・どのように勉強を見てやればよいかわからなくなった。

B

くんの主訴】

・課題が終わらないこと(特に数学)

・授業中,眠くなってしまう。

・アクティブラーニングで会話に入れない。

・困りごとがあった時に話せる先生が高校にいない。

(6)

・ゲームが好きだが母に

1

時間と管理され,うるさくいわれるのが嫌。

〔相談の概要〕

担任から困り感を聞き,母を相談に誘うよう助言する。母が来室し,上記の困り感とともに,「小

2

まで,市の療育相談に行っていたが,特に診断は受けてはいない」などが,びっしり書かれたメ モ用紙を片手に,丁寧かつ矢継ぎ早に語られた。幼い頃から心配な面があり,肌理細やかに丁寧に かかわってきたことを労い,<

B

くんが学校でうまくいかないと感じていることが,発達の特徴 によるものであるならば,医療機関等で検査を受けてみるなどして,特徴をきちんと把握し学校に 合理的な配慮をお願いすることも必要なのでは>と伝える。「そんなことをしたら進学に不利にな るのではないか」と不安を語る。<センター試験の配慮申請書といくつかの有名大学のホームペー ジから障害学生の支援に関する情報を見せ,合理的配慮について説明をする。>母の顔が少し明る くなった。<

B

くんにも会ってみたい>と伝えるが,母の同意は得られなかった。担任には,<

母は,コミュニケーションの苦手な子を育てる中で過干渉になっていったようだ。クレイマーと捉 えるのではなく,

B

くんの支援の手がかりをくれるリソースと考え,かかわり方を一緒に模索して いこう>と伝える。そして学年会で,応答がなくても問い詰めない,寝ているときはそっと声をか けるなど

B

くんへの声掛けについて共有される。また,その翌週に

SC

が講師で全職員を対象に「発 達障害の理解と対応」についての研修会を実施した。

2

か月後,母が

2

回目の来室。「前回の面接後,療育相談でお世話になっていた医師のいる小児 科を受診し,今度検査を受けることになった。医師は診断名をつけることに慎重で,今は必要な いかもしれないと話し合っている」という。一方,「

B

に検査のことを何と説明をすればよいのか」

と吐露する。<自己理解のための検査と捉え,自分の強みを知り,弱いところをどうやって補えば よいのか考える材料になればよいのではないか>と助言する。「実は,

3

歳の時に

1

度『高機能自 閉症』と診断されたことがあったが,翌年

4

歳の診察では,もうそこまでの特徴ではないと言われた」

と受診歴について打ち明ける。<大事なことは診断名ではなく,

B

くんが自分の抱える困り感を表 現し,周囲に助けを求められるようになることや適職を見つけることではないか>と伝える。

1

か月後,母が

3

回目の来室。「最近,言うことをきいてくれなくなった。話し合いにならない ことが増えてきた。次年度のコース選択について,母の提案を受け入れずの用紙を提出していな かった。」と一番の理解者であると自負している母の指示に従わない

B

くんにいら立ちを隠せない 様子。その後,「父親は妹より

B

をかわいがっているが,母とは価値観が違い相談相手にならない」

など吐露する。「来月続きの検査を受けることになっている。医師は,場合によっては学校に出向き,

配慮要請をしてくれるようだ。

B

は,冬休みの課題がまだ提出できておらず,同じプリントを開い

1

時間以上固まっていたりする」などを話す。<やはり直接

B

くんから困り感を確認したいので,

次回は本人も交えて

3

人で話し合おう>の提案に母も同意する。

2

週間後,母(

4

回目)が少し早く来室し,

10

分後に

B

がやってくる。病院で検査も受けてきたが,

医師から『教育には口をはさめないので,診断書は出せても,それで本当に合理的配慮をしていた だけるかどうかはわからないので,診断書を出せばどのような配慮が望めるのか確認してからの方 がよいのではないか』と言われた」と話す。<診断名ではなく,検査の結果から特徴,つまり情報 処理能力等を知り,

B

くんの努力だけではうまくいかない問題を明らかにすることが大切ではない か>と伝える。予約時間(

6

時間目)になったが,

B

くんが来室しない。母は「相談室の場所がわ

(7)

からないのかもしれない,教室まで迎えに行ってきます」と立ち上がった。母を制し,

SC

が職員 室に電話を入れ,先生に対応してもらう。

B

くんが到着するまでの間,「以前にもお弁当を教室ま で届けた」ことが語られた。<小・中学校とは違い,高校には保護者が教室まで行くような慣習は ないことや高校生にとって母が教室まで来ることは,恥ずかしいことかもしれない>とやんわり伝 える。ほどなくして

B

くんが来室。小さな声だが,「失礼します。」と言って入室し母の隣に座った。

SC

と二人で話すことの同意を得て,母には外で待ってもらう。

B

は,

SC

からの質問に,「はい」か「い いえ」で答え,必要に応じて言葉で補足をしてくれる形で適切に応答をした。趣味や家庭生活や家 族との関係についても尋ね,時折笑顔を見せながらよく考えて応答してくれた。<初対面の相手に 話すのは緊張したでしょうけれども,しっかり伝わるように話してくれてうれしかった>と伝え,

母にも入室してもらう。

B

くんが礼儀正しく,話をしてくれたことを報告した。母は,驚いた表情 をしながらもうれしそうな笑顔を見せた。<学校生活にいろいろと困っていることが分かったが,

具体的なことが今日は確認できなかったので,次回それを確認し,先生にどのように理解してもら い,どのような支援要請すればよいかを話し合いたい>と伝える。

1

か月後,親子(母

5

回目)で来室。

B

くんはルーズリーフに箇条書きにしたメモを持参し,① 課題が終わらないこと((特に数学)),②授業中,眠くなってしまうこと,③アクティブラーニン グで会話に入れないこと,と困り感を話してくれた。睡眠について確認をすると,「今は,

12

時過 ぎに就寝し,睡眠時間は

6

時間程度だが,中学までは

8

時間の睡眠をとっていた」とのこと。<ど んなゲームをするの?>には,「ゲームは一人でできる単純なパズルのようなものが中心で通信に よるゲームはしない」といったことを教えてくれた。アクティブラーニングについて,さらに質問 をし,考えてもらっている間に

B

くんは深く眠ってしまう。その様子に,母も授業中寝てしまう 姿が想像できた様子。

B

くんには<睡眠時間を増やし良い状態で授業に臨むことや,今は母がサポー トしている時間の管理などを自分でできるようにする方法を親子で話し合うこと>を提案する。そ して母には,<中学まで学校で先生がしてくださっていたことを全て高校の先生に求めるのではな く,

B

くんが自分なりのスタイルで自己管理できるように支援していくことが大切ではないか>と 助言する。<課題については,先生方も生徒の特徴にあった学習スタイルを尊重する姿勢でおり,

実際に冬休みの課題も催促はしていない。提出がないことだけで単位を落とすことはないし,それ よりも自分なりのやり方で理解し,考査で点数を取ることの方が大切だと聞いている>と伝える。

数日後,検査結果が担任に提出され,

B

くんの特徴を教員も共有した。

B

くんは,不登校になるこ ともなく順調に進級する。

新年度

4

月,母が

6

回目の来室。「生活状況は落ち着いている」と

WISC-

Ⅳの結果を持参される。

処理速度が遅いことなどの特徴を確認しながら,

B

くんの最近の様子や親としての関わり方につい て話し合う。<ペースは,ゆっくりでも社会性も少しずつ育ってきている。より高めていくために は,自分で様々な体験をしていくことが大切で,母は指示するのではなく,見守る姿勢も大切で は>と助言する。母が,中学校までと同じ支援をしていくことは,成長を抑制してしまうことにも つながることを話し合う。<ゲーム依存というほどの状態ではないし,家庭では睡眠や食事をしっ かりとれるようなサポートに徹し,学習や進路については,先生に頼ってみてはどうか>と提案す る。母も同意し「少し本人に任せてみます」と話す。

(8)

[見立てと対応]

母は,「そこまでの特徴ではない」という見立てや「発達の凸凹」がある子といった捉えを支えに,

中学まで「通級による指導」など特別な支援を依頼せずに,自らが様々サポートしてきたことを明 らかにした。その一方で,

B

くんの特徴は十分承知しており,

3

年後・

10

年後,さらには自分が亡 くなった後までを案じて不安や焦りでいっぱいになっていた。

SC

の勧めもあって,受診するも医 師は「診断名をつけることに慎重」,「場合によっては学校に出向き,配慮要請をしてくれる」,「教 育には口をはさめないので,診断書は出せても,それで本当に合理的配慮をしていただけるかどう かはわからないので,診断書を出せばどのような配慮が望めるのか確認してからの方がよいのでは ないか」などのコメントを持ち帰ってきた。発言が,仮に医師によるものだったとしてもそれは,

母の願いを受けてそう言わされたか,母がそう解釈したものだったように感じた。持参した検査結 果には,

B

くんの特徴を解釈し,学校生活で予想される困難さと必要な配慮事項が記されていた。

また,母の「診断名」が付くことへの強い不安と受け入れがたい思いが,「学校生活で躓かぬようしっ かりサポートしなければ」という焦りを強化させた。そして,授業中の教室まで足を運ぶことに違 和感を覚えないほど盲目的になっており,

B

くんへの過干渉となった。そして,思春期でもあり自 分の意思で動きたいという

B

くんの自立心が,母への反抗的な態度となってさらに母を混乱させ ていった。

SC

との面接を重ねる中で,

B

くんの強みを伸ばしていこうという前向きな気持ちにも なり,少し落ち着いて見守ることができるようになっていった。担任を通して教科担当の先生にも

B

くんの特性を理解してもらい,環境調整や声掛けの工夫で不適応は起こさずに学校生活を続ける ことができた。

SC

は,もっとテンポよく対応したかったが,隔週の

3

時間勤務で,予約枠に限り があり来室希望者を順番に受け付けていくため,

B

くん親子の優先はできなかった。

3

)不注意と衝動性の混在する

ADHD

疑の

C

くん(専門学科の高

1

【担任の主訴】

・指示が伝わらない。簡単な作業にも取り組めない。課題が全く提出できない。

・不貞腐れている感じで,聞く耳を持っていない。 

・実習は危険を伴うこともあるので心配。

・自転車の危険な運転で自動車と接触し,運転手からの強い抗議により生徒指導になる。

・今までにないタイプの生徒でどう指導したらよいかわからない。

C

くんの主訴】

・一つのことを考え出すと止まらなくなってしまう。

・なぜか知らないうちに生傷が絶えない。

・視力が悪く黒板が見えないのでノートが書けないし,やる気がなくなる。

・無くすからとコンタクトを買ってもらえない。

・自分の特徴をうまく先生に説明できず困る。

【両親の主訴】

・スマホの使い方,ルールを決めても守れないので母と口論になる。

〔相談の概要〕

C

くんが来室。上記の困り感を訴えたので,掘り下げて質問をしていく。「授業中にポッと頭に 浮かんだことを考え始めると何も耳に入らなくなり,気が付くと授業はずっと進んでしまっていて,

(9)

焦って周りの子に聞いて,なんとか追いつくということがよくある。周囲がとても良い人達で助け られている。」<一番楽しいのは何をしているとき?>「自分の家にいる時間が一番良い時間で楽 しい。ゲームをしたり考え事をしたりマイワールドに入っている。」<考え事は,楽しい考え事の ようね。>「社会生活とマイワールドの行き来がうまくできないところが課題。マイワールドに没 入してしまうとひきこもりになってしまうし,そうはなりたくないと思っている」と話す。

C

くんの面接後,両親が来室。<今,一番ご心配なことは?>と尋ねる。まず母が,「ずっとゲー ムをやっていて,時間のルールを作っても聞かず,夜遅くまでやっていて朝起きられずに,食事も せずに慌てて出かけ,遅刻もしているようだ。」<今のような状況はいつ頃からですか?>「厳し く育ててきたのだが,小学校の高学年から盗癖があり,中学位からいうことを聞かなくなった。」

と話す。父は,「

C

が小

6

のときに再婚した。それまでは母が一人で二人の子を育てていた。父親 になり,

C

の盗癖を何とかしなければと,病院を転々としながら,思春期外来にたどり着いた。と ころが,担当医が不誠実な対応が多く,『

ADHD

の傾向がある』と処方された投薬もきかず通院を やめた。」とし,「中学では,父が

SC

に相談しながらやってきた。ぜひ高校でも

SC

に相談したい。」

と訴えた。<

SC

は月に

1

回の勤務のため,生徒が優先ではあるが,また相談しよう。>と伝え,

母に,<

C

くんが,目が見えないと訴えていたので,

1Day

のコンタクトを試してみては?>と勧 めると「メガネはあるのですけど,嫌がってかけなくて…。コンタクトはつけたまま寝てしまうこ とが心配で作らずにいた。でも,考えてみます」と

C

くんに寄り添う姿勢がみられた。終了時間 がきてしまったため,スマホの使い方については,<ネット依存外来の

HP

に良い資料があるので,

家族で読んで対応を考えてみてはどうか」と紹介する。ご両親の了解も得て,

C

くんの成育歴や特 徴については,担任と共有をし,自尊心を傷つけないような声掛けなど,対応についてコンサルテー ションした。

1

か月後

C

くんが,

2

回目の来室。夏休み中,家族で旅行に行ったことや日常の生活の様子を傾 聴する。課題は,夏休み中には終わらなかったものの期限内に完成させ提出ができたとホッとした 様子。「夏休みをはさんでしまい,ちゃんと学校に来ることができるのか心配だったが,うまくスター トできてよかった」と話す。視力が悪い件で,「教室の座席を前にしてもらえたので,板書も写せ るようになったが,実習の教室はよく見えない。コンタクトを作ろうかと親も言ってくれたが,う まく管理できずにつけたまま寝てしまうなどして健康被害が起きないかが心配で購入できないでい る。今のところ学校生活はうまくやれていると思う。」とうれしそうな表情を見せる。その後,「最 近の考え事(マイワールド)」について話し,

SC

の意見を求めたりしながら会話を楽しんで退室する。

担任によれば,驚くほど奇行が目立たなくなり,何とかやれているとのこと。

さらに

1

か月後

C

くんが

3

回目の来室,最近の生活状況や関心事項,家族との関りについて傾 聴する。「良いことと悪いことでは,良いことの方が多く起こっている気がする」と話す。そして,

「最近の考え事」について,しばらく話すと急に自分自身のこれまでについて振り返っていく,「中 学に入った頃の春休みに,自分は変わったのだ。

6

年間ずっと変わらなかったので,もういいかな という思いから自分が変わった。」<どう変わったの?>「いろいろ気にしなくなった。」<外界の 刺激を遮断してきたようにも感じるけど?>とフィードバックした。「そうかもしれない」とうな ずく。<もう少し,五感を働かせるようにすると,周りともっとうまくいくようになるかもしれな いね。>と伝えると,「第六感の方が興味あるな…」と笑顔を見せた。担任によれば,補講が必要

(10)

な教科が数科目あるが許容範囲だとのこと。

さらに

1

か月後,担任が

4

回目の予約を入れてくれたが,時間になっても来室がなく,キャン セルとなった。予約は,

C

くんが,落ち着いて生活できているのは定期的なカウンセリングのおか げと考えていた担任の配慮によるものだった。

[見立てと対応]

「一つのことを考え出すと止まらなくなってしまう。」という

C

くんは,周囲からは,動きがな くボーっとしているように見えても,頭の中は忙しくいろいろ考え動いている時間で,不貞腐れて 授業を無視しているわけではなかった。「

6

年間ずっと変わらなかった」という言葉の裏には,家 庭でも学校でも叱責され,うまくいかないことが多く孤独や辛さが感じられた。急に父親ができて 母を取られてしまった寂しさが盗癖という形で現れたのだろう。「もういいかなという思いから自 分が変わった。」のは,杉山(

2007

)の言う「着席していながら外の刺激を遮断し,ファンタジー への没頭によって,さらには解離によって,自由に意識を体外へ飛ばす技術を磨くだけ」(

P.198

の状態になっていたからではないか。

SC

との面接の中で,「社会生活とマイワールドの行き来がう まくできないところが課題。マイワールドに没入してしまうとひきこもりになってしまうし,そう はなりたくない」と,客観的に自分をとらえるようになり,社会生活への適応を意識し始めた。そ して,継父を含め家族との時間も受け入れられるようになっていった。

4

回目の面接はキャンセル となったが,

C

くんの特有の不注意によるものではなく,「僕はもう大丈夫」というサインだった ようにも思う。その後は,月

1

回の

SC

でもあり,担任への声かけによる見守り支援のみとなった が,無事進級できた。

4

)「自立活動」の内容との関連から   

3

事例と「自立活動」の内容との関 連を表

2

に示す。

SC

との面接は,そ れぞれ「自立活動」に通じる内容を扱っ ている。これは,普段のスクールカウ ンセリングの中で行われている一例に 過ぎない。発達凸凹(杉山

2011

)が ある生徒たちが,そのことで日常生活 に支障をきたさぬよう

SC

が,適切に アセスメントとし,教員に働きかける ことで,生徒をエンパワメントするこ とにもつながる。そして,単位や評価 にかかわらない形で,「障害による学 習上又は,生活上の困難を改善し,又 は克服を目的とする」支援を担うこと もできるのではないかと考える。

2 事例と「自立活動」の内容との関連

事例 項目 内容

(1)

1 健康の保持 (4) 健康状態の維持・改善に関すること。

2 心理的な安定 (1) 情緒の安定に関すること。

(2) 状況の理解と変化への対応に関すること。

3 人間関係の形成 (2) 他者の意図や感情の理解に関すること。

(3) 自己の理解と行動の調整に関すること。

6 コミュニケーション (1) コミュニケーションの基礎的能力に関する こと。

(2)

1 健康の保持 (1) 生活のリズムや生活習慣の形成に関する こと。

2 心理的な安定 (3) 障害による学習上又は生活上の困難を改 善・克服する意欲に関すること。

3 人間関係の形成 (3) 自己の理解と行動の調整に関すること。

6 コミュニケーション (1) コミュニケーションの基礎的能力に関する こと。

(3)

1 健康の保持 (1) 生活のリズムや生活習慣の形成に関する こと。

2 心理的な安定

(1) 情緒の安定に関すること。

(2) 状況の理解と変化への対応に関すること。

(3) 障害による学習上又は生活上の困難を改 善・克服する意欲に関すること。

3 人間関係の形成 (3) 自己の理解と行動の調整に関すること。

(11)

5 おわりに

必要な生徒にとって,通級による指導は,有意義な支援であろう。一方,事例の生徒たちには,

中学までの「個別の指導計画」,「個別の教育支援計画」がなかった。特に,生徒の知的な力が高い 場合,保護者や本人が,発達上の特徴を受容することに抵抗があり,「学校には知られたくない」

という思いが根強く,合理的な配慮をするための合意形成が難しい。

B

くんの事例では,かしま

2006

)の言う「人が生きる場において,曖昧にやり過ごしてきたものが明確にされるときには,

必ず切り分けの痛みを伴う。その痛みによるマイナスと専門機関への紹介によって得られるだろう プラスとの両方に目配りし,助言することが,専門家であるスクールカウンセラーの仕事となる」

P.296-297

)ことを実感させられた。教員と

SC

が,連携することで,生徒にとって評価者でない

SC

が,本人や保護者の困り感を聞きながら対応し,最小限の合理的配慮で,通級による指導まで の支援をしなくても学校適応できるケースもあることを本稿は示した。このような対応で救われる 生徒は少なくないと考える。しかし,スクールカウンセラーの配置は,まだまだ進んでおらず,需 要に追い付いていない。勤務時間いっぱい相談予約が入り,サービス残業で教員とのコンサルテー ションがなされている現状があり,

SC

常駐化の実現が望まれる。また

SC

は,さまざまな特徴の 生徒の支援に対応できるような力量が問われるところと肝に銘じたい。

引用文献  

安文部科学省. 2015.『特別支援学校小学部・中学部学習指導要領(平成 27 年一部改正)』.

文部科学省. 2017a.『小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 総則編』.

文部科学省. 2017b.『中学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 総則編』.

文部科学省. 2018a.『障害に応じた通級による指導の手引解説とQ&A』(海文堂).

文部科学省. 2018b.『高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 総則編』.

重歩美. 2017.「高等学校における特別支援教育導入の経過について」『千葉大学教育学部研究紀要』66,(1),43-

50.

障害者職業総合センター

. 2017.

『専門的な雇用支援が必要な若年軽度知的障害者の実態把握に関する基礎調査』

(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター).

吉澤勝治. 2018.「特別支援教育における高等学校教育の課題の研究―高等学校における通級による指導の実践 的課題に焦点化して―」『日本高校教育学会年報』25,18-27.

関あゆみ・姫野完治・安達潤・近藤健一郎.2017.「高等学校における特別支援教育の現状と課題(1)

―北海道の高等学校を対象とする実態調査から ―」『子ども発達臨床研究』9,13-22.

杉山登志郎. 2007.『発達障害の子どもたち』(講談社).

杉山登志郎. 2011.『発達障害のいま』(講談社).

かしまえりこ・神田橋條治. 2006『スクールカウンセリングモデル

100

例』(創元社).

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