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コロナ禍の大学におけるオンライン授業の実践報告

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Academic year: 2021

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Ⅰ.はじめに

本報告は,帝京科学大学教育人間科学部学校教 育学科小学校コースにおいて実践された,5編の オンライン授業について,コースの目指す共通し た教育観と担当教員による独自の工夫から生まれ た授業形態を広く公開することで,新しい教育実 践の可能性を提言するものである.

令和2(2020)年は,世界的に新型コロナウィ ルスによる感染が広まり,日本の学校は3月から 機能停止に陥った.4月7日には政府は緊急事態 宣言を7都府県に発出し,16日には全国へ拡大 した.それにより国民は不要不急の外出を抑止さ れることとなり,文部科学省は,4月の新学期開 始早々にオンライン授業を行うよう指導と助言を 示し,大学教育は,感染症の収束まで非対面授業 を求められることとなった.

新学期開始後に,シラバス等で予定していた教 室で行う授業をオンライン授業とすることは,授 業全体の見直しを図ることであり,教員にとって は時間的余裕もなく,授業の質の確保をどうする か各教員共に相当の苦労を強いられることとなっ た.こうした中にあって,小学校コースでは,学 生に対して授業の質を確保し,自宅で精神的に孤 立した状況とならないような授業を模索し,各教 員は自由な発想で授業を行ってきた.特にコース においては,学生が主体的に授業へ取り組むこと を目指す自律的教育を共通認識としている.

ここで報告する授業は,小学校コースの典型的 事例となるものである.第一報告は,吉村日出東 教授による社会演習,第二報告は,石橋裕子教授 による音楽基礎であり,これらは,教科教育に関 する専門科目群の中の選択科目である.第三報告 は,神谷純子准教授による教育社会学,第四報告 は,平田敦義准教授による教育課程論であり,こ れらは,教育基礎論に属するもので本コースの必 修科目である.第五報告は,江田慧子講師による 初等理科実験法で,これは,学科専門科目群の中 の選択科目にあたる.これらの実践例は,授業の 形態においても,演習,実技,講義,実験と異な るものであり,教員各自の独自性を示せるもので あると認識している.

以上の実践例を通じて,非対面授業でどのよう な活動ができるのか広く認知してもらえたらと思 う.

尚,各実践の中で活用されているZoomとは,

Zoomビデオコミュニケーションズが提供するク ラウドコンピューティングを使用したWeb会議 サービスZoomのことである.

Ⅱ.各授業における実践報告 1.社会演習

a.授業の概要

本報告は,社会演習について,非対面授業をど のように構想し,実施したかを報告するものであ

コロナ禍の大学におけるオンライン授業の実践報告

A Report on Online Classes at University during the COVID-19 Pandemic

吉村日出東,石橋裕子,神谷純子,平田敦義,江田慧子 帝京科学大学教育人間科学部

Hideto YOSHIMURA,Yuko ISHIBASHI,Sumiko KAMITANI, Atsuyoshi HIRATA, Keiko KODA Faculty of Education & Human Sciences, Teikyo University of Science

要約: 本稿は,コロナ禍の中,本学教育人間科学部学校教育学科小学校コースにおいてオンラ インを活用して開講された科目の実践報告5編である.小学校コースでは,学生に対して授業の 質を確保し,自宅で精神的に孤立した状況とならないような授業を模索し,各教員は自由な発想 で授業を行ってきた.特にコースにおいては,学生が主体的に授業へ取り組むことを目指す自律 的教育を共通認識としている.それぞれの教員による独自の工夫によってオンライン授業におい てもその特性を活かし,学生の主体性を育む授業を行えることが示せた.

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る.本授業は,2年次後期に開設された小学校 コースの専門科目である.

本授業は,社会科の基礎技能の向上を目的に演 習形式で行う授業である.今年度は,北千住の街 を対象に,歴史的背景と産業構造と隣接地域との かかわりについて,をテーマとして,町そのもの を多角的に考察しようとするものであった.

授業の進め方は,「北千住を知ろう」という共 通テーマの下で,参加する学生の興味・関心事か らグループを構成し,各グループが独自のテーマ を設定した上で,北千住を調査・分析し,授業で その内容を発表するものである.また,各グルー プ発表の内容を整理して,授業の終了時には,北 千住を総合的にまとめるものとする.この間,北 千住の街を実際に巡検し,多様な施設や史跡など にも赴くことを計画していた.

授業の中で実際にグループ活動するための各 テーマについて,教員の側からヒントとして,事 前の研究事例として用意したものは,次のもので あった.

①北千住という町の歴史について  「宿場町」「寺社」「通史」

②北千住という町の産業について

 「一次産業・二次産業」「流通について」

③北千住という町の防災について

 「水害対策について」「文化財の防災対策につ いて」

④北千住と隣接地域

 「日光街道・草加方面まで」「尾竹橋方面から 町屋・日暮里方面へ」「南千住・浅草方面へ」

各グループ活動では,文献資料による調査とし て,足立区史などの活用や行政文書類による客観 的なデータを活用することを心掛けさせるもので あるが,ともすれば,個別専門的な内容の羅列に 陥りかねないため,実際に巡検した際に,観光パ ンフレットや商店街のキャッチコピーなどから町 について,多様な見方を持たせるように進めるも のであった.

b.オンラインによる授業の変更

今年度の新型コロナウィルス感染拡大に伴う,

大学の授業形態の変更については,前期(春学 期)開始時点では,学期途中で非対面型から対面 型に変更される可能性がある中で始められた.一 方,後期(秋学期)は,既に前期の非対面授業の

実績の下で,学期途中に授業形態の変更のない予 測での授業となっていた.そこで,後期科目であ る本授業は,授業目的を達成できる範囲で大幅な 内容変更を行い,次の通りの内容とした.

①北千住を調べる

年度当初に予定していた北千住についての調査 をおこなうものである.但し,履修者による北千 住の巡検は行わず,北千住について文献やイン ターネットを使って調査するものとする.調査内 容は,歴史・文化・産業・教育・住宅・商店街な どを事例として提示し,グループ調査とした.

グループの構成は,履修者28人を6グループ に分け,それぞれのグループごとに北千住につい て自由調査とした.調査期間は,第二週目から第 六週目まで行い,第七週から第九週までの授業回 で各回2グループの発表を行うものとした.

②北千住実況中継

学生による北千住の調査の間,各回(第2回以 降の授業日)の授業は,教員によるZoomを利用 した北千住の町の実況中継を行った.北千住を後 述のブロックに分けて巡検し,特徴的な史跡や町 の成り立ちなどについて解説した.モバイルパソ コンにハンドカメラをつなげて,中継する形とし たものであり,実施前に懸案としたWi-Fiの中断 や聞き取り難さなどの問題は特になく,Zoomの 中継は行った.

この中継で見た内容を参考にして,グループ調 査に生かしていくことも予定していたが,後述の 通り学生の発想に刺激を与えられたようである.

③私の町を調べる

今回,学生による北千住の実地踏査は行うこと のできないものとなった.そこで,これに替わる ものとして,学生の住む地域について紹介する課 題を用意した.町を多角的に捉える視点を得るた めには,実際現地に赴いて,五感を駆使した理解 が必要である.身近な町を自分の観点で調査しま とめていくものとした.

この課題は,個人調査によるものであり,関心 事も対象地も多岐にわたる.それを第十週目から 各回5人程度の発表を行うものとした.これも Zoomによりオンラインで行うものとした.

c.実践結果

本報告での実践結果に関しては,授業の進め方 で示した①北千住を調べる,と②北千住実況中継 についてのみとする.

本授業に対する期待は大きく,社会科という教

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科につての関心と共に,学生自身の通学する北千 住という町について知りたいという動機によるもの と思われる.それは,学生の次の声に現れている.

『社会演習第1回ありがとうございました.私 自身,社会は得意科目で今回の「北千住の街を知 ろう」というテーマがおもしろそうだなと思い,

履修させていただきました.』

『もう大学2年生になり学校にも1年間通い続 けましたが,全然北千住について知らないため,

この授業で深く知れることが楽しみです.将来授 業を構成する中でこの経験が役に立つように沢山 吸収していきたいです.自分の住んでいる町の良 いところを沢山見つけて,よいものを作り上げて いきたいです.』(『 』内はリアクションペー パーからの引用.以下同様)

第二回目から行ったZoomによる実況中継で は,特に中継の中断が起きることもなく,順調に 進められた.巡検した範囲は次の通りである.

1日目(第2週) 帝京科学大学周辺 2日目(第3週) 掃部堤通周辺

3日目(第4週) 旧日光街道北部から下妻道中 4日目(第5週) 旧日光街道北部から水戸道中 5日目(第6週) 旧日光街道中心部

各回の授業を通じて,学生の町に対する関心や 興味が深まっていくものであった.

『いつもはあまり歩かないところで発見が色々 ありました.千住の知らないところを知れてうれ しかったです.こんなに寺院がたくさんあるなん て思わなかったです.まだまだ知らないことばか りなので,積極的な北千住という町にかかわって いきたいなと思います.』

『最後の北千住散策ありがとうございました.

毎回この時間を楽しみにして待っていました.北 千住がどういう町なのか,どういう昔の姿だった のか想像できました.私が住んでいる街がどんな ところなのかをこれまでの北千住散策を参考にし て作っていこうと思います.コロナ禍でなければ 実際に北千住散策をやってみたかったです,本当 にありがとうございました.』

本授業は,年度当初予定していたものとは,大 きく異なるものとなった.演習科目として,調査 や巡検という対面での参加型授業が基本のものを 非対面で行うことが余儀なくされ,授業の目的が 達成できるか懸念されるものであった.しかし,

リアクションペーパーから見る限り,学生の満足 度も得られるものとできた.今回の実施から,全 学生が参加できない場所からでも授業が行えると いう可能性を示すことにもつながったといえる.

(吉村日出東)

2.音楽基礎 a.授業の概要

本授業は,1年次前期に開講される小学校教諭 免許状取得のための必修科目の一つで,講義(第 1~10回)と実技(第11~15回)とで構成した.

小学校1~3年生の授業を教室で教えられるよう になることを目的とし,義務教育で学んだ音楽理 論を学び直すこと,ピアノを弾きながら,学習指 導要領で指定された歌唱共通教材を歌うことが主 な学修内容である.毎年第1回に音楽理論の苦手 意識に関する調査をしているが,音楽系部活動や 習い事経験者のおよそ7割,未経験者のおよそ9 割が苦手意識を持っている(表2.1).そこで,平 時の対面授業では,お互いが教え合えるよう4人 を基本としたグループを編成し,疑問点を授業内 で解決できる環境を提供している.

b. オンデマンド(課題学修型)・対面での授業の 内容と進め方

第1回に,楽譜中の音符,休符,さまざまな記 号を解答することで読譜に必要な事項を確認し,

第2~10回は音楽理論,第11~15回はピアノ弾 き歌いを実施し,毎時間,ト音・ヘ音記号の音符 を読む「読譜ドリル」で読譜力を付けた(表2.2).

表2.1 音楽理論の得意・不得意

2018年 2019年

経験 未経験 経験 未経験

部活動 習い事 部活動 習い事 部活動 習い事 部活動 習い事

得意 47% 39% 16% 15% 20% 15% 6% 5%

苦手 53% 61% 84% 85% 80% 85% 94% 95%

表2.2 授業内容等

回数 内容 形態

第1回 読譜に必要な事項等

非対面 第2~9回 音楽理論

第10回 理論試験 第11~15回 ピアノ弾き歌い 試験期間 弾き歌い試験 対面

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コロナ渦でにわかに脚光を浴び,今でこそ授業 で多く実施され,<ブレイクアウトルーム>でコ ミュニケーションがとれるZoomによる授業は,

前期開始直後には周知されていなかった.大学か ら指定されたのは,大学のcampussquareの掲示 板に10MB以下の動画や資料等を掲出し,同レ ポート欄等へ課題を提出させることが中心の「課 題学修型非対面授業」であり,対話的な授業を実 施することは困難だった.そこで,独学でも学修 に取り組みやすくするため,掲示板に「第〇回課 題」として当該回の学修内容や動画のURL等を

(図2.1),レポート欄に「ワークシート」「読譜ド リル」を掲出した.具体的には,音声を付けたパ ワーポイント(以下,「ppt」)をGoogle Driveに 限定公開して,ワークシートと読譜ドリルを次時 の前日までに提出することを課題とした.何らか の事情で音声付きの動画が再生できない者がいる ため,毎回,pptのpdfも掲示板に掲出した.次 時には前時の解答を掲出し,誤りの多かった箇所 等をpptで解説した.

学生からの一方通行にならないよう,課題を提 出した者へは,毎回レポート欄にコメントを掲出 した.コメントへの返信や質問する者も複数いた ので,学生からの反応がなくなるまでコメントの やりとりを続けた.

第10回の試験は,前日にレポート欄にwordの 解答用紙を掲出し,プリントアウトできない場合 には似せて作ることを指示して,当日は開始3分 前に掲示板にpdfの問題を掲出し,終了時間の5

分後を解答用紙提出の締め切りとした.

対面の「ピアノ弾き歌い」は個人レッスン形式 とし,試験は,一人ずつ弾き歌った.毎時間異な る種類のピアノを使用した(表2.3).

弾き歌い時には全員にマスクを着用させ,無理 のない範囲で歌唱するよう指示した.息苦しく なったら歌唱を中断すること,向かい合うこと等 を禁止した.

教室と音楽演習室ではドアを開放して「密閉」

を回避,座席を指定し,教師は学生の隣ではな く,1つ後の席から指導して「密接」「密集」を 回避した.

個人レッスン室ではドアを開けて「密閉」を回 避,教師は入室せずに演奏を聴き,楽譜や鍵盤を 使用しての指導時のみ入室し,「密接」「密集」を 回避した.

鍵盤楽器は,表2.4の方法で使用前後に消毒し た.

c.成果と課題

課題提出型での成果は,毎回コメントを掲出し たことが励みとなっているとの返信が多数あった こと,未提出や遅れて出す者は少なく,初対面と なった個人レッスンでは良好なコミュニケーショ ンが取れたこと,さらに,pptに音声を付けたこ とが学びの手助けになったと複数名から声が上 がったこと等が成果である.

一方,課題は成果以上に多い.苦手意識を持つ 者が多い上,対面のように仲間と交わることなく 一人で学んだ理論試験の平均点は,昨年度と比較 して20点低かった.このこと等から,再び非対 面授業を実施する際には,Zoomのブレイクアウ ト機能を使う等対話のできる授業を展開すると共 図2.1 課題一覧

表2.3 使用鍵盤楽器

楽器の種類 鍵盤数 場所 鍵盤の重さ

卓上用キーボード 61 教室 非常に軽い

電子ピアノ 88 音楽演習室 軽い

アップライトピアノ 88 個人レッスン室 重い

表2.4 鍵盤楽器の消毒方法

1.使い捨て手袋をはめ,アルカリ電解水でキッチンペー パーを湿らせて,金属部分に触れないようにして拭く 2.固く絞ったマイクロファイバーで拭く

3.乾拭きする

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に,小テスト等で理解度を確認しながら進めてい くことが課題の一つである.また,平時では対面 で話して伝えればよいが,pptに音声を付けたり,

すべてを「資料」として目に見える形で準備する こと,提出された課題に目を通すことは教師の負 担であり,期日までに課題を提出することは学生 の負担になったこと等が問題点である.

(石橋裕子)

3.教育社会学(小)

a.授業の概要

本授業は教職課程の必修科目のひとつで,本学 では3年次後期に開講されている.大人数での講 義であり,後期開講当初からオンラインでの実施 を予定していた.シラバスには本授業の目的とし て以下をあげている.

・現代の日本社会が子どもや若者の教育において 抱える諸課題(特に格差に関わる身近な課題―

―学力低下や教育格差,いじめや不登校,フ リーター・ニート,学歴主義など)に関心を持 ち,理解を深める.

・教育社会学の諸理論や研究から,諸課題の背後 にある社会構造の問題を批判的,分析的に読み 解く視点を学ぶ.

・格差を縮小すると同時に多様な価値観の共存を 図る具体的な方策を現場の目線で考える.

平時の対面での授業では,毎回のテーマに応じ た問題提起と解説のあと,授業の内容にかかわる 論題を提示しその場で10分程度の小レポートを 記述させていた.小レポートはその回のうちに提 出させ,翌週までに目を通していくつかをとりあ げ次の授業のはじめに10分程度のフィードバッ クを行うのが本授業のルーティンであった.

授業では現代社会に起こる事象をオンタイムで 取り上げることを心掛け,ニュース映像を始め積 極的に動画を取り入れている.またSNSやツイッ ターに象徴的に表れる声も時に応じて紹介してい る.それらを学生に考察させる前に,社会学の理 論や視点からはどのようにそれらの事象や声が分 析されているかを解説し,自分の視点に執着せず 新たな視点から考察を試みることができるよう留 意している.

b.オンライン授業の内容と進め方

本学学校教育学科では後期より実技実習に関わ

る科目の一部が対面で行われるようになったため 時間割が複雑に入り組み,Zoomなどオンタイム での授業実施には調整が必要になった.この状況 を鑑み本授業では当初からオンデマンド(課題提 出型)の授業を準備し実施している.

課題として毎回以下を準備する.

・スライドを使用した解説動画

・前週の提出課題のフィードバック動画

・提出課題の様式(600字程度)

・スライドのPDF資料

スライド,動画をZoomで共有しながら録画し,

毎回60分程度の動画を作成している.本学研修 でもデータダイエットが呼びかけられたため,授 業風景ではなくスライドに音声による解説をつけ る形をとっている.今年度は聴覚障害学生が履修 し て お り, こ の 動 画 に 自 動 字 幕 生 成 ツ ー ル

「Vrew」で字幕をつけている(図3.1).後期開講 当初は平時の授業のように,まずスライドを解説 して録画し,それに字幕をつけていたが,言い間 違いや言いよどみが多くうまく字幕が生成されず に編集に莫大な時間がかかったため,途中からス ライドをもとにある程度原稿を作成し読み上げる 形にしたところ,多少効率が上がったと感じてい る.

作成したフィードバック動画,解説動画の URLそ の 他 を 時 間 割 に 合 わ せ て 大 学Campus Squareの掲示板にアップし,課題は数日の取り 組み期間を置いて同じくCampus Squareのレ

図3.1 作成した授業のスライド動画

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ポート提出欄に提出させている.

c.成果と課題

成果の一つ目は,学生の記述の質が格段に上 がったことである.平時の授業ではどうしても余 計なことを話しすぎて時間配分がうまくいかず,

記述の時間が十分にとれないことが多かった.こ の点は学生の授業アンケートでもしばしば指摘を 受けていた.しかし課題提出型のオンライン授業 になってからは目処としている600字程度まで しっかりと記述する学生が大半を占め,それとと もに学生の学びの質も上がったと感じている.

二つ目は,字幕による授業教材の質の向上であ る.聴覚障害学生が履修するため解説動画に字幕 をつけていたが,その他の学生からも字幕がある ことで内容をつかみやすいという声が出ている.

大変手間はかかるが字幕がユニバーサルデザイン として機能したことがうかがえる.

課題としては一つ目に,オンデマンドの課題提 出型の授業は,学生にとっても授業担当者にとっ ても負担が大きいということである.本授業では 解説動画60分,記述30分と見積もり,授業時間 の90分で課題を提出できるように配慮していた が,学生の中には提出期限までの数日間,悩み続 ける学生もいると聞いている.また担当者も動画 教材の作成,提出課題の確認とフィードバックの ため連日PCの前から離れることができない.

二つ目に,双方向性,参加型がとりにくいた め,大人数のオンライン授業でこの担保を要請さ れることは授業担当者に相当な負担を強いる.筆 者は平時,提出された課題を確認する際に手書き の文字の特徴で学生を把握していたが,これも双 方向性を確保するひとつの方法であった.現在は テキスト化された没個性の膨大な文章に目を通さ ざるを得ず,苦しんでいる.

しかし総じて筆者自身は授業担当者として最善 をつくしてきたし,学生はよく学んでくれた.こ のコロナ禍における経験が今後どのように活かさ れていくのか見守っていきたい.

(神谷純子)

4.教育課程論(小)

a.授業の概要

本授業は教育職員免許法に定められる「教育の 基礎的理解に関する科目」であり,「教育課程の 意義及び編成の方法」を内容とすることが規定さ れている.学校教育学科小学校コースでは2年次

前期に配当されており,卒業必修科目であるとと もに,教員免許状取得のための必修科目として全 学生が受講している.

文部科学省が策定した「教職課程コアカリキュ ラム」では,全国の大学の教職課程で共有して修 得すべき資質や能力が示され,本科目「教育課程 論(小)」が相当する「教育課程の意義及び編成 の方法」においては,全体目標として「学習指導 要領を基準として各学校において編成される教育 課程について,その意義や編成の方法を理解する とともに,各学校の実情に合わせてカリキュラ ム・マネジメントを行うことの意義を理解する」

と例示されている.

このため,本科目では「教職課程コアカリキュ ラム」に示される目標に準じシラバスを作成し,

学校において教育課程がもつ役割・意義を理解す ること,教育課程編成の基本原理を理解するこ と,カリキュラム・マネジメントの概要とその意 義を理解することを3つの柱として,学習指導要 領総則の内容を学ぶことを内容としている.

b.オンライン授業の内容と方法

本科目では,対面授業として実施した2019年 度とオンライン授業として実施した2020年度で,

ほぼ同じシラバス,同じテキスト,同じ配布資料 によって授業を行った.

テキストとして,『小学校学習指導要領解説 総 則編(平成29年告示)』(文部科学省,東洋館出 版社,2017年)を用い,これは各学校で授業を 行う際,全国のすべての学校で教えなければなら ない内容を記した文部科学省作成の「基準学習指 導要領」の解説書であり,特に総論部分である

「総則」の解説書である.

数回にわたり使用する主要資料としては,中央 教育審議会答申「幼稚園,小学校,中学校,高等 学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及 び必要な方策等について」(中教審第197号,平 成28年12月21日)を配布した.

2019年度実施の対面授業では,テキスト,資 料に加え,映像資料を加え講義形式で授業を行っ た.映像資料は,主に,学習指導要領改訂の際検 討されるこれからの社会や時代の在り方を受講者 が実感を伴って学習することをねらいに,グロー バル化,情報技術の進展,人口減少という現在の 日本社会が直面する状況を取り扱ったニュースや ドキュメンタリーの一部を視聴させてきた.

2020年度はオンライン方式が指定されたため,

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学生がテキストを準備していることを前提に,毎 回,A4で3ページから5ページの授業資料を配 布し,授業資料で記述された説明と,指示される テキストの該当箇所を読み合わせながら,ノート をとる内容の指示やテキストにアンダーラインを 施す指示に従って,テキストを読み進める方法と した.

なお,対面授業で使用したニュース等の動画の 使用は著作権への懸念と授業資料のオンライン上 の情報量軽減の観点から使用を見送り,新聞記事 を資料として配布したり,官公庁やNHKが公開 する動画のURLを示しそれを視聴させる方法で 代替した.

また,授業資料の終わりには課題として400字 から800字程度のレポート,もしくは,短文で解 答できる質問を提示する形式で受講者に振り返り をさせながら,受講状況の確認を行った.課題の 提出期限は1週間として,レポート等への全体講 評を次の回の授業資料中に記述して受講生に伝え た.

c.成果と課題

対面授業として実施した2019年度とオンライ ン授業として実施した2020年度を比較しながら,

その成果と課題を整理したい.

まず,課題について,大学が実施する授業評価 アンケートにより比較すると,総合評価および各 設問(受講者の意欲,授業の変わりやすさ,配布 資料の満足度,資料の読みやすさ,教員の熱意,

受講者の目標達成度)のスコアにおいて2019年 度の対面授業より低い評価となった.このアン ケートは各質問が「満足」,「ほぼ満足」,「どちら ともいえない」,「やや不満」,「不満」の5件法で の質問であり,「満足」を5点,「不満」を1点と したスコアが出され授業者に提示される.

2019年度対面授業の総合スコアが4.37,2020 年度のオンライン授業が4.03であり,対面授業の 方がオンライン授業より高評価であった.また,

対面授業では「満足」が「ほぼ満足」の数を上 回ったが,2020年度のオンライン授業ではこれ が逆転し,「ほぼ満足」が「満足」を上回る結果 となった.

なお,対面授業と同様,オンライン授業でも全 体の満足度として「不満」と「やや不満」の回答 がなかった点は安堵できるものの,理解度や満足 度でスコアが下がった点は課題といえる.

一方,成果としては,受講生にレポートを書く

機会を例年より多く提供ができたこと,および,

感染症拡大予防対策として小学校での休校措置に 関する内容を取り扱うなど,時事的な内容を取り 入れ学生の興味関心の喚起ができたことが挙げら れる.

対面授業の際には,次回授業で取り上げるテキ ストの個所をあらかじめ読むよう指示を行うこと があるが,授業改善アンケートでは授業以外の学 習を行ったという回答が低迷していたが,オンラ イン授業では課題を課すことで予習復習に充てる 時間が1時間以上と回答した学生が81%となり,

学習時間が増えたことがうかがえる.なお,この 質問への回答が授業受講時間も含んでいることも 推測されるが,少なくとも数回のレポートを書い た点では,授業の振り返りや知識の活用をする機 会が増えたと評価が可能であろう.

次に,感染症拡大予防策として,小学校等の休 校措置により授業数の確保の難しさや小学校等で のオンライン授業の試みが新聞やニュースで報道 されたことから,これらの新聞記事を資料として 配布し,教育課程の意義や役割の学習の具体例と して提示したところ,レポートでは受講者が関心 を持ち考察を加えることができ,学びが深まっ た.感染症拡大が授業改善アンケートのスコアを 下げる結果となり課題が多かったが,感染症拡大 による新聞報道等により教育課程や教育方法への 関心が高まった点は成果と評価できると考えられ る.

最後に,本科目「教育課程論(小)」は2020年 度後期に「教育課程論(中・高)」としてオンラ インで類似した内容で開講されており,今回明ら かとなった課題に対する改善の試みを行ったこと を紹介しておく.前期「教育課程論(小)」で課 題となった理解度や満足度を向上させるため,毎 回,授業資料に加え15分から20程度,音声によ り解説を加えた音声ファイルの提供を新たな試み として開始した.配布する授業資料の読み上げで はなく,配布資料に記述しきれない詳細な内容や 余談を授業担当者が通常の授業のように話したも のを録音し,データ量を落とした音声資料ファイ ルを作成し,受講者がそれを聞きながら授業資料 とテキストを読む形式であり,理解度や満足度の 改善に期待したい.

(平田敦義)

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5.初等理科実験法 a.授業の概要

本授業は教職課程の選択科目のひとつで,本学 では2年次前期に開講されている.少人数の授業 であり,小学校理科で扱う実験の手法を学ぶとと もに,授業を通して,理科に親しみを持つよう方 向付け,科学的なものの見方や考え方,レポート の書き方など,科学的な素養を養うことを目的と している.

平時の対面授業では,毎回1つ実験を行い,レ ポートの作成・提出を行う.また学生自身が実験 の準備や片づけも行うため,2コマ続きの授業と なっている.しかし2020年度前期においてはす べて非対面授業を余儀なくされ,学生たちが理科 実験室で班ごとに実験することができなくなって しまった.そこで自宅やその周辺で準備できる物 を使用し,実験できる内容へと変更した.また授 業はすべてオンデマンドの課題提出型で行った.

本報告では8~10回の3回分の事例を紹介する.

今年度は12名(男子5名,女子7名)が受講し,

全学生が15回のすべてのレポートを提出した.

b.オンライン授業の内容と進め方

単元:小学3年生「風やゴムのはたらき」のゴム のはたらき

c.学生のレポート内容と反応

8回目の事前準備では①の設問に対してタイ ヤ,ヘアゴム,消しゴム,靴が共通して記述され ていた.他にお弁当箱のパッキンやペンのグリッ プ,リモコン等日常生活で目に触れるものが記述 されていた.男子学生は平均3.0個挙げていたの に対して,女子学生は7.1個挙げていた.②の設 問では,伸ばす,巻き付けるなどの行動が記述さ れていた.また「こっちの方が伸びるよー」「わー 切れそう」といった児童の反応を記述した学生が 3名いて,児童の反応を想定している様子が分 かった.③の設問ではゴムを飛ばして人に当てて しまうという想定が最も多かった.他には指や手 首に巻き付けて血を止めてしまう,口に入れてし まうという想定もあった.④の設問では,本数が 多いほど力の働きが大きくなるという解答が最も 多かった.⑤の設問では,輪ゴム,竹ひご,スト ロー,段ボール(厚紙)といった車の部品となる 材料と,はさみ,コンパス,鉛筆,定規,接着 剤,色鉛筆,セロハンテープといった車を作るた めに必要な道具が記述されていた.⑥の設問では 段ボール(厚紙)を切る際にはさみの使い方に注 意する必要がある,竹ひごを人に向けない,紙で 手を切らないという記述が多かった.他には車輪 を作る時には円の形と大きさを均一にしないと車 が走らない,接着剤を付けすぎるとタイヤが回転 しないといった車を走らせるための工夫を記述し ている学生も見られた.車はそれぞれデコレー ションなどを行い,工夫が見られた(図5.1).

9回目の測定では,それぞれの自宅で車を走ら せた距離を測定した.値は6~174cmと幅があっ た(表5.1).レポートコメントで「順位が楽し み!」「上位に入りますか?」と反応があり,学 生が結果を気にしている様子がみられた.

10回目の比較と改良では,①の設問に対して

<8回目>実験のための事前準備をしよう 内容:教科書の流れを確認する.作り方をみて

輪ゴムで動く車を作成する.

レポート内容:

①身近でゴムが使われている物を考えよう

②児童に輪ゴムを渡したらはどのような反応を するか?

③児童にはどんな注意をしたら良いか?

④輪ゴムの本数で違いがあるのか?

⑤車を作るための材料・道具は?

⑥児童に作らせる時に気を付けたいこと

<9回目>車を走らせ,計測しよう

内容:各自作成した車を走らせ走行距離を測定 する.ゴムの巻き数は5回で統一し,自 宅内のフローリング等平らな場所で実施 することを条件とする.

レポート内容:

①車の名前をつけよう(10回目で公開するた め)

②10回計測したときの距離の平均を算出しよ

<10回目>みんなで比較して,改良しよう 内容:全員のデータを比較し,自分の車につい

て考え,改良を加えてもう一度計測する.

レポート内容:

①データを見て自分の車について考えよう

②改良ポイントを記述しよう

③改良車で10回計測したときの平均を算出し よう

④3回の授業を通して輪ゴムはどのような働き をしていたか考えよう

(9)

ランキングの良し悪しについて「嬉しかった」

「驚いた」「ショックだった」という感想と共に,

ランキングで周りの学生の状況も分かりとても楽 しかったという意見があった.レポートコメント

にも「競争が刺激となった」「楽しかった」とい う反応があった.②の設問では,輪ゴムの本数や 繋げ方を変更する,タイヤの摩擦を減らすために セロハンをつける・素材を変更するという主に2 つの改良がみられた.③の設問では,輪ゴムの伸 縮性を使って車を動かしていたことをすべての学 生が記述していた.なお学生全員が改良によって 走行距離を延ばすことができた.

以上の実践報告から学生はオンライン授業にお いても教員の意図を理解し,正しく課題をこなし ていた.オンラインでは教員と学生が1対1にな りがちであり,当初は教員が努力しコメントを返 すことで学生は満足していると考えていた.しか し,学生同士のデータを公表して競わせることに よって,学生間の間接的な交流がうまれた.非対 面授業においても学生間の交流は学生の感情の変 化に繋がり,15週のすべての課題において全員 が気持ちを途切れることなく,期限内に提出でき たと考えられる.今後も学生同士で問題解決がで きるような授業工夫をしていきたい.

(江田慧子)

Ⅲ.おわりに

本報告では,5編のオンライン授業を紹介し た.ここに取り上げられたものは,小学校コース の中でも授業形態の異なる特徴的なものである.

それぞれの教員による独自の工夫によってオンラ イン授業の制約の中でもその特性を活かし,学生 の主体性を育む授業を行えることが示せた.特に 今回紹介した授業は,演習,実技,講義,実験と 全く異なる授業形態のものが,それぞれ非対面型 によっても授業が成立したことは新たな発見で あったといえる.こうした取り組みが非常時の一 過性で終わることなく,これからの新しい大学教 育を生み出す契機となるよう分析を継続していき たい.

図5.1 学生がそれぞれ作成した車 表5.1 学生が作成した車の走行距離 番号 改良前(cm) 改良後(cm) 距離の差(cm)

1 131 214 83

2 118 165 47

3 6 18 12

4 133 174 41

5 48 115 67

6 68 71 3

7 167 175 8

8 174 207 33

9 102 196 94

10 30 148 118

11 154 170 16

12 149 230 81

(10)

参照

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