同性婚と異性婚における法的保護の平等
──近時の婚姻防衛法(Defense of Marriage Act)
違憲判決を素材として──
The Constitutionality of the Defense of Marriage Act : Can Same-sex Married Couples Enjoy the Same Benefits as
Heterosexual Married Couples?
石 田 若 菜*
目 次 は じ め に
Ⅰ DOMAの概要および成立から現在までの経緯 1 条文および内容
2 成立から現在までの経緯
Ⅱ DOMA第 3 条違憲判決 1 判決の紹介
2 検討─判決の射程,違憲審査基準および婚姻の目的について お わ り に
は じ め に
「婚姻は一人の男性と一人の女性の間の法的結合をいう」。多くの国が同 性カップルに何らかの法的保護を図る同性パートナーシップ制度1)を採用
* 中央大学大学院法学研究科博士後期課程在学中
1) 同性パートナーシップ制度には,イギリスのシヴィル・パートナーシップ, 同性パートナーシップ制度には,イギリスのシヴィル・パートナーシップ,
するようになり,さらには同性婚を法律婚として認めた国2)もある一方で,
冒頭のような定義を新たに設けた国もまた存在する。本稿が考察するアメ リカ合衆国(以下,合衆国)も1996年
Defense of Marriage Act
3)(婚姻防衛 法4)。以下,DOMA)第 3 条により,婚姻を上記のように定義し,連邦と して5)異性婚をまさに防衛した。DOMA
は成立から16年を経て,いまその存廃をめぐる対立が激化して いる。2012年 5 月に大統領としてはじめて「同一の性同士のカップルが結 婚できるようになるべきだ」と同性婚を支持する考えを明らかにした6)オ フランスの連帯民事契約(PACS),ドイツの生活パートナーシップ,合衆国の 州におけるドメスティックパートナーシップおよびシビルユニオンなどがあ る。なお,シビルユニオンとドメスティックパートナーシップの用語の定義は 州により異なることがある。詳細については,鳥澤孝之「諸外国の同性パート ナーシップ制度」レファレンス60巻 4 号(2010)29頁以下等参照。2) 2012年 2012年2012年年 8 月現在,同性婚を認める国は,オランダ,ベルギー,スペイン,カ ナダ,南アフリカ共和国,ノルウェー,スウェーデン,ポルトガル,アイスラ ンド,アルゼンチン,デンマークの11ヶ国である。http://www.freedomtomar-11ヶ国である。http://www.freedomtomar-ヶ国である。http://www.freedomtomar-
http://www.freedomtomar- ry.org/pages/international-progress-toward-the-freedom-to-marry
参 照。 以 下,インターネット情報は2012/08/31閲覧のものである。
3) Defense of Marriage Act, Pub. L. No. 104 Defense of Marriage Act, Pub. L. No. 104
Defense of Marriage Act, Pub. L. No. 104-199, 110 Stat. 2419 (1996) (codified at 28 U.S.C.
§1738C (2006) and 1 U.S.C. §7 (2006)).4) なお,同法には「婚姻擁護法」や「婚姻保護法」といった訳語もあるが, なお,同法には「婚姻擁護法」や「婚姻保護法」といった訳語もあるが,「同「同 性結婚,および,同性結婚が世間で承認される可能性によって,異性間の婚姻 制度が脅威にさらされているのだという考えを示している」(マーサ・ヌスバウ ム(河野哲也他訳)『感情と法─現代アメリカ社会の政治的リベラリズム』(慶應 義塾大学出版会・2010)324頁)ことを明確にすべく,「婚姻防衛法」との訳語 を採用した。
5) また,現在38の州が,州として また,現在38の州が,州として38の州が,州としての州が,州として
DOMA DOMA DOMA DOMA DOMA
第第第第第第 3 条と同じく憲法や法律によって 婚姻を一人の男性と一人の女性のものと限定している。http://www.ncsl.org/issues-research/human-services/same-sex-marriage-overview.aspx
参照。また,井樋三枝子「アメリカの州における同性婚法制定の動向」外国の立法250号
(2011) 5 頁以下参照。
6) 「米大統領,同性婚を容認,歴代初,リベラル派基盤固め─再選にらみ方針 「米大統領,同性婚を容認,歴代初,リベラル派基盤固め─再選にらみ方針─再選にらみ方針再選にらみ方針 転換。」日本経済新聞2012年 5 月10日(夕刊) 2 頁。
バマ大統領は,前回2008年選挙から
DOMA
の完全撤廃を主張している7)。 一方,オバマ大統領の同性婚支持の表明に対し,「結婚そのものは異性間 であるべきだ」と改めて語った8)ミット・ロムニー共和党候補は,DOMA の支持に加え,婚姻を男女間のものと定義する憲法修正にも意欲的であ る9)。そのような状況下で,ここ数年,複数の連邦裁判所は,DOMA第 3 条について10)第 5 修正のデュープロセス条項が保護する自由に含まれる平 等保護条項に反すると判断するようになった。後述のように,DOMAは全部で 3 つの条文から成り立ち,実質的内容 を持つ規定は第 2 条と第 3 条である。本稿では,第 3 条の婚姻の定義規定 を考察の対象とし,第 2 条については関連する限りで言及するにとどめる。
婚姻を男女間のものと定義することには,およそ 2 つの意味がある。 1 つは同性愛者の婚姻の権利11)を否定するということ,もう 1 つは同性婚に ある夫婦と異性婚にある夫婦で異なる取扱いをするということである。合 衆国憲法に照らしていえば,主として前者はデュープロセス条項と,後者 は平等保護条項と関連してくることになる。
本稿では,このうち後者を主眼とし,同性婚夫婦と異性婚夫婦の連邦法 上の婚姻に伴う利益の平等について,関連する連邦地方裁判所および連邦 控訴裁判所の判断を参照しながら検討していく。以下では,第Ⅰ章で
DOMA
がどのような法律なのかを概観し,第Ⅱ章でDOMA
第 3 条を違憲7) 駒村圭吾「大統領 “Yes, We Can!” のプログレッシヴィズムとアメリカン・リ 駒村圭吾「大統領 “Yes, We Can!” のプログレッシヴィズムとアメリカン・リ“Yes, We Can!” のプログレッシヴィズムとアメリカン・リのプログレッシヴィズムとアメリカン・リ ベラルの再生」法学セミナー663号(2010)11頁以下等参照。
8) 前掲注 前掲注 6 )参照。
9) Matea Gold & Melanie Mason, Matea Gold & Melanie Mason,
Matea Gold & Melanie Mason, Romneyʼs fight against gay marriage; When he governed Massachusetts, a court ruling forced the issue to the forefront. His response was telling, L.A. Times, Apr. 30, 2012, at A1.
10) なお,現在のところ,DOMA なお,現在のところ,DOMA
DOMA
第第第第 2 条についての違憲判断はない。CourtneyJoslin & Shannon Minter, LESBIAN, GAY, BISEXUAL AND TRANSGENDER FAMILY LAW
§8:9 (2012).
11) この観点から検討するものとして, この観点から検討するものとして,See e.g., Cass R. Sunstein, The Right to
Marry, 26 Cardozo L. Rev. 2081 (2005).
とする判決を紹介・検討し,最後にこれら判決が示唆するところとして違 憲審査基準と婚姻の目的の変容についてまとめる。
I DOMA
の概要および成立から現在までの経緯1
条文および内容⑴ 条文
DOMA
は,「婚姻制度を定義および保護する法律」であり,前述のよう に次に示す 3 つの条文から成り立つ。第 1 条 略称
本法は「婚姻防衛法」と引用することができる。
第 2 条 州に留保される権限
合衆国のいかなる州,準州もしくは領地またはインディアン部族も,他 の州,準州,領地もしくは部族の法の下で婚姻として扱われる同性間の関 係またはそのような関係に由来する権利もしくは請求に関し,その一般法 律,記録または司法手続を実行するよう要求されない。
第 3 条 婚姻の定義
連邦議会の法律または合衆国の行政各部の裁定,規則もしくは解釈の意 味を決定するとき,ʻ 婚姻 ʼ という文言は夫と妻としての一人の男性と一 人の女性の間の法的結合のみを意味し,ʻ 配偶者 ʼ という文言は夫または 妻である異性の人のみをいう。
⑵ 内容
このように
DOMA
は,第 2 条の合衆国憲法第 4 編第 1 節第 2 文に基づ き定められた同編同節第 1 文の免除規定と第 3 条の連邦法における婚姻の 定義規定から成る。合衆国では,婚姻を含む家族法についての事項は各州の管轄とされてき た。そのため,同性婚の可否はもちろん,婚姻適齢や婚姻できない近親の
範囲なども州ごとに異なる。ある州で有効な婚姻は,伝統的に,他州にお いてもその基本的な公序則に違反しない限り尊重され,連邦もまた社会保 障などの受給資格について州法を参照してきた12)。DOMAがしたことは,
この慣行の明示的な変更である。すなわち,第 2 条は,ある州で有効な婚 姻は他の州でも有効であるという原則を覆し,第 3 条は,ある州で有効な 婚姻は連邦でも有効であるという原則を覆した13),14),14)14)。
現在,同性婚を法律婚として認めているのは,マサチューセッツ州15), コネチカット州16),アイオワ州17),バーモント州18),ニューハンプシャー州,
12) ただし,同性愛者については,実務上,既存の法文の解釈・適用の段階でこ ただし,同性愛者については,実務上,既存の法文の解釈・適用の段階でこ れらの資格がないと判断されることもある。
13) この意味で この意味で
DOMA DOMA DOMA
第第第第 2 条は水平的(horizontal)規定,第 3 条は垂直的(ver-ver- tical)規定と呼ばれることがある。
14) 抵触法上の問題については,ヘルマ・ヒル・ケイ(棚村政行訳) 抵触法上の問題については,ヘルマ・ヒル・ケイ(棚村政行訳)「抵触法にお「抵触法にお ける同性婚─提案されている婚姻擁護法についての検討」『21世紀の民法─小野 幸二教授還暦記念論集』(1996・法学書院)831頁以下,孫ピヤワン「アメリカ 抵触法における婚姻擁護法(the Defense of Marriage Act)の意義」早稲田大 学大学院法研論集135号(2010)151頁以下参照。
15) マサチューセッツ州では,2003年11月,州最高裁が同性婚を禁止する州法を マサチューセッツ州では,2003年11月,州最高裁が同性婚を禁止する州法を2003年11月,州最高裁が同性婚を禁止する州法を年11月,州最高裁が同性婚を禁止する州法を11月,州最高裁が同性婚を禁止する州法を月,州最高裁が同性婚を禁止する州法を 無 効 と 判 示 し た。Goodridge v. Department Public Health, 798 N. E. 2d 941
(Mass. 2003).
16) コネチカット州では,2008年10月,州最高裁が同性婚を禁止する州法を無効と コネチカット州では,2008年10月,州最高裁が同性婚を禁止する州法を無効と2008年10月,州最高裁が同性婚を禁止する州法を無効と年10月,州最高裁が同性婚を禁止する州法を無効と10月,州最高裁が同性婚を禁止する州法を無効と月,州最高裁が同性婚を禁止する州法を無効と 判示した。Kerrigan v. Commissioner of Public Health, 957 A. 2d 407 (Conn. 2008).
17) アイオワ州では,2009年 アイオワ州では,2009年2009年年 4 月,州最高裁が同性婚を禁止する州法を無効と判 示した。Varnum v. Brien 763 N. W. 2d 862 (Iowa, 2009).
18) バーモント州では,1999年の バーモント州では,1999年の1999年の年の
Baker v. State of Vermont, Baker v. State of Vermont, Baker v. State of Vermont, Baker v. State of Vermont, Baker v. State of Vermont,
744 A. 2d 864 (Vt. 744 A. 2d 864 (Vt. 744 A. 2d 864 (Vt. 744 A. 2d 864 (Vt. 744 A. 2d 864 (Vt.1999).を契機に,2000年からシビル・ユニオンが導入されていた(ここまでの 動向については,鈴木伸智「同性のカップルに対する法的保護─
From Baker to Baker」青山法学論集42巻 4 号(2001)59頁以下,駒村圭吾「法制度の刷新
と市民社会」公共政策研究 5 巻(2005)9 頁以下等参照)。その後,2009年 5 月,同性婚を認める州法が成立した。
ニューヨーク州の 6 州およびコロンビア特別区であり19),20),20)20),これら州など で婚姻した同性婚夫婦は,2010年の調査を基に13万1729人と推測されてい る21)。繰り返しとなるが,DOMA第 2 条は,ここに含まれない州に対し,
これら法域で有効に成立した同姓婚を法律婚として認めなくてもよい(認 めてはいけないではない)とする規定であり,一方,第 3 条は,連邦に関 し,たとえこれらの法域で同姓婚が有効な婚姻として成立したとしても同 性婚は連邦法上の法律婚ではないのだから彼らに対して社会保障など連邦 法上の婚姻に伴う利益は認めないという規定である。
2
成立から現在までの経緯では,DOMAは,どのような経緯で成立し,いまどのような状況にあ るのだろうか。
DOMA
は,1996年,下院では賛成342対反対6722),上院では賛成85対反 対1423)という圧倒的多数で可決され,クリントン大統領の署名により成立 した法律である。同法は,同性婚を禁止するハワイ州法が違憲とされた19) なお,2012年,ワシントン州およびメリーランド州でも同性婚を認める法律 なお,2012年,ワシントン州およびメリーランド州でも同性婚を認める法律2012年,ワシントン州およびメリーランド州でも同性婚を認める法律年,ワシントン州およびメリーランド州でも同性婚を認める法律 が成立している。ただ,同法が有効となるかどうかは同年11月実施の州民投票 の結果による。井樋三枝子「ワシントン州,メリーランド州同性婚法成立」外 国の立法251-1号(2012) 4 頁以下等参照。
20) また,カリフォルニア州については,同姓婚を禁止する憲法修正(提案 また,カリフォルニア州については,同姓婚を禁止する憲法修正(提案 8 ) の合憲性を問う裁判が係属中であり,連邦最高裁まで上訴されることが確実と みられている。井樋三枝子「カリフォルニア州憲法同性婚禁止条項に関する違 憲訴訟」外国の立法250-1号(2012) 4 頁以下等参照。
21) http://www.census.gov/newsroom/releases/archives/2010_census/cb11- http://www.census.gov/newsroom/releases/archives/2010_census/cb11-
http://www.census.gov/newsroom/releases/archives/2010_census/cb11- cn181.html
参照。22) 142 Cong. Rec. H7480 142 Cong. Rec. H7480142 Cong. Rec. H7480-05 (daily ed. Jul. 12, 1996).
23) 142 Cong. Rec. S10129 142 Cong. Rec. S10129142 Cong. Rec. S10129-01 (daily ed. Sep. 10, 1996).
1993年の
Baehr v. Lewin
事件24)を契機に制定された25)。同事件において,ハワイ州最高裁は,合衆国史上はじめて同性カップルの主張を受け入れた のである26),27),27)27)。
司法委員会報告書によれば,DOMAにより促進される利益は,①「伝 統的な異性婚制度の防衛および促進」,②「伝統的道徳観念の防衛」,③「州 の主権および民主的自治の保護」,④「十分ではない政府資源の保持」の 4 つという28)。ただし,このうち③「州の主権および民主的自治の保護」
は
DOMA
第 2 条にのみかかわるものである。さて,圧倒的多数で支持された
DOMA
であったが,当初より合衆国憲 法上のいくつかの規定(たとえば,デュープロセス条項,平等保護条項,十分な信頼と信用条項,特権および免除条項など)に違反するのではない かとの疑いを持たれていた29)。そのため,同性婚反対派は,そのような批
24) 852 P. 2d 44 (Haw. 1993). 判決の内容については,鈴木・前掲注18)69頁以 852 P. 2d 44 (Haw. 1993). 判決の内容については,鈴木・前掲注18)69頁以852 P. 2d 44 (Haw. 1993). 判決の内容については,鈴木・前掲注18)69頁以 判決の内容については,鈴木・前掲注18)69頁以18)69頁以)69頁以69頁以頁以 下,鈴木伸智「アメリカ合衆国における同性婚と家族 ⑴」青山社会科学紀要25 巻 2 号(1997)34頁以下,羽渕雅裕「同性婚に関する憲法学的考察─1997)34頁以下,羽渕雅裕「同性婚に関する憲法学的考察─)34頁以下,羽渕雅裕「同性婚に関する憲法学的考察─34頁以下,羽渕雅裕「同性婚に関する憲法学的考察─頁以下,羽渕雅裕「同性婚に関する憲法学的考察──
Law- Law- Law- Law- Law- Law- rence v. Texas, 539 U.S. 558 (2003)
を契機として」帝塚山法学10巻(2005)31 頁以下等参照。25) H.R. REP. 104 H.R. REP. 104
H.R. REP. 104-664.
26) 合衆国では,1970年代初頭から何度も同性婚訴訟が繰り返されてきた。 合衆国では,1970年代初頭から何度も同性婚訴訟が繰り返されてきた。1970年代初頭から何度も同性婚訴訟が繰り返されてきた。年代初頭から何度も同性婚訴訟が繰り返されてきた。See
e.g., Baker v. Nelson, 191 N. W. 2d 185 (Minn. 1971); Jones v. Hallahan, 501 S. W.
2d 588 (Ky. 1973); Singer v. Hara, 522 P.2d 1187 (Wash. Ct. App. 1974). これら は,婚姻許可証の発給を拒否された同性カップルが州政府の婚姻法の解釈・適 用をめぐり訴訟を提起したものであり,裁判所は,婚姻は男女間のものである という伝統的婚姻観に依拠して,婚姻許可証の発行を求める原告の主張を退け てきた。詳細については,石川稔「同性愛者の婚姻─同性婚は認められるか〔そ の 1 〕」法学セミナー(1984)90頁以下等参照。
27) ただし,ハワイ州では,1998年に憲法が修正されており,現在に至るまで同 ただし,ハワイ州では,1998年に憲法が修正されており,現在に至るまで同1998年に憲法が修正されており,現在に至るまで同年に憲法が修正されており,現在に至るまで同 性 婚 は 認 め ら れ て い な い。See David Orgon Coolidge, The Hawaii Marriage
Amendment: Its Origins, Meaning and Fate, 22 U. Haw. L. Rev. 19 (2000).
28) H.R. REP. 104 H.R. REP. 104
H.R. REP. 104-664, at 12.
29) See e.g., Mark Strasser, THE CHALLENGE OF SAME-SEX MARRIAGE: FED-
ERALIST PRINCIPLES AND CONSTITUTIONAL PROTECTIONS, 187 (1999).
判を一掃するために,2002年以降,DOMAの憲法版ともいえる
Federal Marriage Amendment(婚姻についての合衆国憲法修正案,以下 FMA)
30)を提案するようになった。FMAは,時期などにより若干の相違はあるが,
おおよそ「合衆国における婚姻は一人の男性と一人の女性の結合からのみ 成り立つ」ことを内容とする。ただし,現在のところ,この憲法修正案は 実現には至っていない31)。
一方,冒頭でも示した通り,DOMAを廃止しようとの動きもみられる。
第111議会中の2009年と第112議会中の2011年には,DOMAの廃止を目的 とする
Respect for Marriage Act(以下,RFMA)
32)が提出された。また,2012年 2 月には,エリック・ホルダー司法長官により,オバマ政権が今後 の訴訟において
DOMA
を支持しないことが明らかにされ33),同年 6 月に は,オバマ大統領自身がDOMA
は差別的で憲法に違反するものであると 述べた34)。同年 7 月には,ジェイ・カーニー大統領報道官により,オバマ 政権がRFMA
を支持することも明らかにされた35)。このように,DOMAは,立法部・執行部における議論の渦中にある。
以下では,連邦裁判所がどのように
DOMA
第 3 条を評価しているのかを 整理・検討する。30) なお,FMA なお,FMA
FMA
には,Marriage Protection Amendmentには,Marriage Protection Amendmentには,Marriage Protection Amendmentには,Marriage Protection AmendmentMarriage Protection Amendment
との通称もある。との通称もある。との通称もある。との通称もある。との通称もある。との通称もある。31) DOMA DOMA
DOMA
およびおよびおよびおよびFMA FMA FMA FMA FMA
をめぐる議論の詳細については,小泉明子「婚姻のポリをめぐる議論の詳細については,小泉明子「婚姻のポリをめぐる議論の詳細については,小泉明子「婚姻のポリをめぐる議論の詳細については,小泉明子「婚姻のポリをめぐる議論の詳細については,小泉明子「婚姻のポリをめぐる議論の詳細については,小泉明子「婚姻のポリ ティクス(二・完)─アメリカの同性婚訴訟を中心に」民商法雑誌137巻 3 号(2007)34頁以下,同「家族の価値(family values)とはなにか─宗教右派と同 性婚(二・完)」法学論叢170巻 2 号(2011)65頁以下等参照。
32) H.R. 1116, H.R. 1116,
H.R. 1116,
112th Cong. (2011), S.598, 112th Cong. (2011), H.R. 3567, 111th 112th Cong. (2011), S.598, 112th Cong. (2011), H.R. 3567, 111th 112th Cong. (2011), S.598, 112th Cong. (2011), H.R. 3567, 111thCong. (2009).
33) Press Release, U.S. Depʼt of Justice, Statement of the Attorney General on Liti- Press Release, U.S. Depʼt of Justice, Statement of the Attorney General on Liti-
Press Release, U.S. Depʼt of Justice, Statement of the Attorney General on Liti- gation Involving the Defense of Marriage Act (Feb. 23, 2011). http://www.justice.
gov/opa/pr/2011/February/11-ag-222.html
参照。34) http://www.whitehouse.gov/blog/2011/06/29/lgbt-pride-month-white-house http://www.whitehouse.gov/blog/2011/06/29/lgbt-pride-month-white-house
http://www.whitehouse.gov/blog/2011/06/29/lgbt-pride-month-white-house
参照。35) David Nakamura, David Nakamura,
David Nakamura, Obama Backs Repeal of Marriage Law, Wash. Post, Jul. 20,
2011. at A3.II DOMA
第3条違憲判決1
判決の紹介すでに述べたように,DOMA第 3 条は,その効果として,たとえある 法域で同性カップルが有効な婚姻をしたとしても,連邦法における「ʻ 婚姻 ʼ という文言は夫と妻としての一人の男性と一人の女性の間の法的結合のみ を意味し,ʻ 配偶者 ʼ という文言は夫または妻である異性の人のみをいう」
のだから,婚姻していることによってあるいは配偶者であることによって 与えられる多数の連邦法上の利益36)を彼らには与えないとするものであ る。そのため,これら利益を受けることのできなかった同性愛者がいくつ かの訴訟を起こしてきた。裁判所は,当初は
DOMA
第 3 条を支持してい たが37),2010年頃から今日にかけて反対の立場をとるようになった。ここ では,DOMA第 3 条を違憲とした近時の判決をみていこう。2010年の 2 つの連邦地裁判決である①Gill v. Office of Personnel Management
および②
Massachusetts v. U.S. Department of Health and Human Services(以下,
Massachusetts
第一審判決),③これら 2 つの判決の控訴審である2012年 36) 2003年の段階で,既婚という地位が連邦法上の「利益,権利および特権」の 2003年の段階で,既婚という地位が連邦法上の「利益,権利および特権」の2003年の段階で,既婚という地位が連邦法上の「利益,権利および特権」の年の段階で,既婚という地位が連邦法上の「利益,権利および特権」の 要因となるとする規定は1138存在するという。General Accounting Offi ce, De-1138存在するという。General Accounting Offi ce, De-存在するという。General Accounting Offi ce, De-General Accounting Office, De- fense of Marriage Act: Update to Prior Report, GAO-04-353R (2004).
たとえば,連邦法上に規定のある連邦の健康保険,年金,相続などの権利義 務あるいは連邦機関の被用者の配偶者としての福利厚生などが同性配偶者に対 しては認められない。また,合衆国の市民権に関する事項が連邦議会の権限で あるため,同性婚を認める国からの移民や国際結婚などについても影響がある。
井樋・前掲注 5 ) 7 頁参照。
37) たとえば,Smelt v. County of Orange, 374 F. Supp. 2d 861 (C.D. Cal. 2005)(た たとえば,Smelt v. County of Orange, 374 F. Supp. 2d 861 (C.D. Cal. 2005)(た
Smelt v. County of Orange, 374 F. Supp. 2d 861 (C.D. Cal. 2005)(た
(た だ,その上訴審であるSmelt v. County of Orange,
447 F.3d 673 (9th Cir. 2006)
は,同性カップルの原告が婚姻していない以上,彼らに訴えの利益はないとし た); Wilson v. Ake, 354 F. Supp. 2d 1298 (M.D. Fla. 2005); In re Kandu, 315 B.R.123 (Bankr. D. Wash. 2004). これらの事件では,いずれの裁判所も
DOMA
第 3 条はデュープロセス条項および平等保護条項に違反しないと判断している。の 連 邦 控 裁 判 決
Massachusetts v. U.S. Department of Health and Human Services(以下,Massachusetts
控訴審判決),そして,④2012年の連邦地 裁判決Golinski v. Office of Personnel Management
である。⑴ Gill v. Office of Personnel Management38)
これは,DOMA第 3 条を第 5 修正に基づき違憲とした最初の判決であ る。本件は,マサチューセッツ州で婚姻した 7 組の同性カップルと同様に マサチューセッツ州で婚姻した同性カップルの生存配偶者が,DOMA第 3 条により連邦法上の婚姻に伴う利益39)を否定されたため,提起した訴訟 である。
2010年 7 月 8 日,連邦地裁のタウロ裁判官は,原告の主張する厳格審査 ではなく,合理性審査でも同条は違憲となることを理由に,いかなる審査 基準が妥当かを特段考慮せずに,合理性審査の下で
DOMA
第 3 条が正当 な立法目的と合理的に関連しているかどうかを審査した40)。ただし,同裁 判所は,同性愛者を立法などの措置によって差別から保護することを禁止 したコロラド州憲法の改正規定を第14修正の平等保護条項に基づき違憲と したRomer v. Evans
41)などを引用しながら,「たとえもっとも敬譲的な審 査を要求する通常の平等保護の事件であっても,裁判所は採用されている 差別的取扱いと達成される目的との関連を知ることを求める」42)とし,「〔DOMA〕のような法律が判断されなければならない基準は牙のないそ れではない」43)としている。
38) 699 F.Supp.2d 374 (D.Mass. 2010). 699 F.Supp.2d 374 (D.Mass. 2010).699 F.Supp.2d 374 (D.Mass. 2010).
39) 具体的には,連邦公務員の医療保障,社会保障,所得税控除の申告資格が問 具体的には,連邦公務員の医療保障,社会保障,所得税控除の申告資格が問 題となった。
40) Gill, 699 F.Supp.2d at 387.
41) 517 U.S. 620 (1996). 紙谷雅子「性的性向に基づく差別から同性愛者を保護 517 U.S. 620 (1996). 紙谷雅子「性的性向に基づく差別から同性愛者を保護517 U.S. 620 (1996). 紙谷雅子「性的性向に基づく差別から同性愛者を保護 紙谷雅子「性的性向に基づく差別から同性愛者を保護 することを禁止するコロラド州憲法の修正 2 と第14修正の平等保護条項─
Romer v. Evans, 116 S.Ct. 1620 (1996)」ジュリスト1148号(1999)333頁以下等
参照。42) Gill, 699 F.Supp.2d at 387.
43) Id. at 387.
連邦地裁は,まず前述の司法委員会報告書を基に,DOMAが促進する 政府利益について,ⅰ)「責任ある生殖と出産の促進」44),ⅱ)「伝統的な異性 婚制度の防衛および促進」,ⅲ)「伝統的道徳観念の防衛」,ⅳ)「十分ではな い政府資源の保持」を検討した。
ⅰ)「責任ある生殖と出産の促進」に関しては,連邦地裁は,「DOMA制 定以降,同性愛者の両親に育てられた子どもも異性カップルに育てられた 子どもと同じように精神的に安定しているというコンセンサスが,医学,
心理学,福祉の領域で発展してきた」として親の性的指向と子どもの福祉 を切り離した。そして,「生殖の能力は,今も昔も,この国のどの州にお いても婚姻の条件ではなかった」と指摘した。さらに,
DOMA
に関し,「た とえDOMA
可決の時期に連邦議会が生物学的な母と父に育てられること で子どもは成功のいちばんの機会を得られると考えたとしても,異性カッ プルに対し,より責任をもって彼らの子どもを産んだり育てたりすること を促進させたいという願望は,連邦が同性婚の承認を拒否することについ ての合理的論拠とはならないだろう。そのような拒否が,異性の出産や育 児についての安定性を促進することはない」と述べ,目的と手段が関連し ないことを示した45)。ⅱ)「伝統的な異性婚制度の防衛および促進」に関しても,「原告はすで に同性の人と婚姻しているのだから,原告に対し異性の人と婚姻するよう 奨励はできない」こと,「同性配偶者には利益を付与しないという連邦政 府の手段で,同性愛者の人々に対し異性の人との婚姻が促されるとは考え られない」こと,「同性配偶者に婚姻に伴う利益を付与しないということ
44) なお,「責任ある生殖と出産の促進」という政府利益は,司法委員会報告書 なお,「責任ある生殖と出産の促進」という政府利益は,司法委員会報告書 では「伝統的な異性婚制度の防衛および促進」の中で説明されている。その部 分は次の通りである。「根本的には,市民社会は,責任ある生殖と出産を促進 する重要かつ不変の利益を有するがゆえに,異性婚制度を維持し保護する利益 を有する。端的にいえば,政府は,子どもに利益を有するがゆえに,婚姻に利 益を有する。」H.R. REP. 104-664. at 12.
45) Gill, 699 F. Supp. 2d at 388-389.
と異性婚をより安定したものにするという政府利益は合理的に関連しな い」ことを指摘した46)。
ⅲ)「伝統的道徳観念の防衛」に関しても,同性愛者のソドミー行為を禁 止する州法を第14修正のデュープロセス条項に基づき違憲とした14修正のデュープロセス条項に基づき違憲とした修正のデュープロセス条項に基づき違憲とした
Law- Law- Law- Law- rence v. Texas
47)やRomer判決に依拠しながら,「国家における支配的マジョ リティが特定の行為を不道徳なものとして伝統的にみてきたという事実は 当該法律を支持する十分な理由ではない」とした48)。ⅳ)「十分ではない政府資源の保持」に関しては,違法入国者の子どもへ の無償教育を拒否する州法を第14修正の平等保護条項に基づき違憲とした
Plyler v. Doe
49)を引用し,「公的資金の保持は正当な政府利益となりうるが,資源の保持という関心だけではそのような資源の分配に使用される分類を 正当化することはできない」とした50)。
以上のようにして,連邦地裁は,「連邦議会による
DOMA
の制定を支 持する根拠はいずれも適切でないあるいはDOMA
の効果と関連していな い」51)と判断し,続いてこの訴訟に際し連邦政府が申し出た正当化根拠を 検討することにした。ⅴ
)
現状維持:連邦政府によれば,「合衆国憲法は,連邦議会に対し,同性婚を承認するかどうかという各州の社会的問題が解決するまでの現状 維持の手段として
DOMA
を制定することを許容している」という52)。これ46) Id. at 389.
47) 539 U.S. 558 (2003). 駒村圭吾「道徳立法と文化闘争─アメリカ最高裁にお 539 U.S. 558 (2003). 駒村圭吾「道徳立法と文化闘争─アメリカ最高裁にお539 U.S. 558 (2003). 駒村圭吾「道徳立法と文化闘争─アメリカ最高裁にお 駒村圭吾「道徳立法と文化闘争─アメリカ最高裁にお─アメリカ最高裁におアメリカ最高裁にお けるソドミー処罰法関連判例を素材に」法学研究78巻 5 号(2005)83頁以下等 参照。
48) Gill, 699 F.Supp.2d at 389-390.
49) 457 U.S. 202 (1982). 宮川成雄「違法外国人への無償教育の拒否と平等保護 457 U.S. 202 (1982). 宮川成雄「違法外国人への無償教育の拒否と平等保護457 U.S. 202 (1982). 宮川成雄「違法外国人への無償教育の拒否と平等保護 宮川成雄「違法外国人への無償教育の拒否と平等保護 条項─
Plyler v. Doe, 102 S.Ct. 2382 (1982)」判例タイムズ34巻29号(1983)21頁
以下等参照。50) Gill, 699 F.Supp.2d at at 390.
51) Id.
52) Id.
に対し,連邦地裁は,「このような主張は,より重要な問題,すなわちそ もそも連邦政府はそのような政策を立てる適切な役割を有しているかとい う問題を回避しているだけである」とし,婚姻の要件など「家族関係の問 題は州の排他的管轄にある」から「連邦の権利,利益および特権を決定す るという目的のための統一的な婚姻の定義についての連邦議会の利益は
〔…〕存在しない」,「州のみが家族関係についての適格要件を規定する権 限をもつのであって,それゆえ連邦政府には州により適切になされた家族 の地位の決定を軽視する正当な利益はない」とした53)。
ⅵ
)
行政の負担の軽減:また,「連邦の婚姻に伴う利益の配分に際し,各州の可変的な同性婚への対応によって行政の負担がもたらされる」とい う連邦政府の主張についても,「連邦の部局は,州が承認した婚姻許可証 をすでにもっているカップルに対し連邦の婚姻に伴う利益を配分するだけ であり」,行政上の複雑性は「それらカップルが同性であること」や「以 前に婚姻の資格がなかったこと」から来るものではないと述べた54)。
かくして,連邦地裁は,Romer判決を引用し,「当裁判所は,DOMAが 確認しうる正当な目的ないし個々の目的に向けられたものということはで きない。DOMAは,正当な政府利益との関係性を認識しうるあらゆる事 実的文脈からも切り離された,地位に基づく立法である。実際,連邦議会 は,その承認しない集団を不利にするという,立法の限界の完全に外部に ある 1 つの目的のためにこの分類に着手した。そして,そのような分類を 合衆国憲法は明らかに認めていないだろう」55)と述べ,「DOMA第 3 条は 原告に適用される限りにおいて合衆国憲法修正第 5 条に含意される平等保 護の原則に違反すると判決しなければならない」56)とした。
⑵ Massachusetts v. U.S. Department of Health and Human Services57)
53) Id. at 391-394.
54) Id. at 395.
55) Id. at 396.
56) Id. at 397.
57) 698 F.Supp.2d 234, (D.Mass. 2010). 698 F.Supp.2d 234, (D.Mass. 2010).698 F.Supp.2d 234, (D.Mass. 2010).
(第一審)
これは,Gill判決と対を成す判決であり,Gill判決と同じ日に同じ裁判 官により下された。本件は,マサチューセッツ州が,合衆国退役軍人省や 合衆国保健社会福祉省を相手取り,DOMA第 3 条は合衆国憲法第 1 編第 8 節第 1 項の支出条項および第10修正に違反すると主張したものである。
本件は平等保護条項に直接かかわるものではないが,次にみる控訴審判決 と関連するため,その限りで紹介する。
本件では,DOMA第 3 条の効果として,連邦の資金を受けて建設や拡 張をしたマサチューセッツ州の退役軍人共同墓地について埋葬できる「配 偶者」に同性配偶者が含まれないこと,また,医療保障にかかる費用につ いて連邦の資金が提供される「配偶者」に同性配偶者が含まれないことが 問題となった。
2010年 7 月 8 日,連邦地裁のタウロ裁判官は,以下のように述べ,原告 の申立てを認めた。まず当事者適格については,合衆国退役軍人省が,マ サチューセッツ州に対し,もし同性配偶者を埋葬すると決定するならば連 邦の資金を返還するよう通知し,同州が,この通知に反し,同性配偶者も 埋葬される資格があると決定したこと,また,医療保障をまかなうために すでに同州に財政負担がもたらされていることを理由に,同州には
DOMA
第 3 条の合憲性を争う利益があるとした58)。また,支出条項に関しては,DOMA第 3 条は,それが婚姻に伴う利益 を異性婚夫婦には与えるが同性婚夫婦には与えないとすることを連邦政府 の資金提供の条件とするような場合,マサチューセッツ州に対し,その市 民の平等保護の権利を侵害するよう導くものであり,連邦議会の支出権限 を超えるものであると述べた59)。
さらには,第10修正に関しても,DOMA第 3 条は,州の主権の核心と なる領域,すなわちその市民の婚姻の地位を定義する能力を侵害するもの
58) Id. at 244-245.
59) Id. at 245-249.
であり,違反すると述べた60)。
⑶ Massachusetts v. U.S. Department of Health and Human Services61)
(控訴審)
本判決は,上述の連邦地裁による
Gill
判決およびMassachusetts
第一審 判決の控訴審であり,連邦控裁としてははじめてのDOMA
第 3 条違憲判 決である。連邦控裁によれば,本判決は平等保護と連邦主義に関する先例 がどのような結論を導き出すかを考察するものであるが,最終的にこの独 特な事案を解決できるのは連邦最高裁のみであるという62)。2012年 5 月31日,連邦控裁は,性的嗜好(sexual preference)に基づく 差別的取扱いについて厳格審査基準も中間審査基準も適用されてこなかっ たことを確認しながらも63),合理性審査の下で違憲判断につながった 3 つ の 判 決(U.S. Department of Agriculture v. Moreno64),City of Cleburne v.
Cleburne Living Center
65),Romer
判決)を挙げ,連邦最高裁がそれらの正 当化根拠について従来の合理性審査よりも慎重な評価をしてきたこと,そ してDOMA
第 3 条がもたらす負担がこれら事件で問題となった負担と類 似していることを指摘した66)。また,これら 3 つの判決では問題とならな かった連邦主義に関し,「DOMAは支出条項および第10修正には違反しな い」67)としながらも,同条が伝統的な州の規制の領域に広範に介入するも のであることを考慮にいれれば,同条が平等保護に違反しないとする正当 化根拠の審査は連邦主義という観点からもより厳密なものとなるとし60) Id. at 249-253.
61) 682 F.3d 1 (1st Cir. 2012). 682 F.3d 1 (1st Cir. 2012). 682 F.3d 1 (1st Cir. 2012).
62) Id. at 7-8.
63) Id. at 8-10.
64) 413 U.S. 528 (1973). フードスタンプの詐欺を防止するために親戚以外の者 413 U.S. 528 (1973). フードスタンプの詐欺を防止するために親戚以外の者413 U.S. 528 (1973). フードスタンプの詐欺を防止するために親戚以外の者 フードスタンプの詐欺を防止するために親戚以外の者 を含む家庭をフードスタンプの受給資格から排除した連邦法を違憲とした事例。
65) 473 U.S. 432 (1985). 知的障害者の集合住宅の建設について市が許可をしな 473 U.S. 432 (1985). 知的障害者の集合住宅の建設について市が許可をしな473 U.S. 432 (1985). 知的障害者の集合住宅の建設について市が許可をしな 知的障害者の集合住宅の建設について市が許可をしな かったことが違憲であるとされた事例。
66) Massachusetts, 682 F.3d at 10-11.
67) Id. at 11.
た68)。
かくして,連邦控裁は,DOMA第 3 条について通常の合理性審査より も慎重に審査されることを示した上で,司法委員会報告書による
DOMA
第 3 条に関する 3 つの正当化根拠,すなわち,ⅰ)「十分ではない政府資源 の保持」,ⅱ)「伝統的な異性婚制度の防衛および促進」,ⅲ)「伝統的道徳観 念の防衛」を審査する69)。ⅰ)「十分ではない政府資源の保持」に関しては,DOMAによって連邦 の資金を節約できるということは正しいかもしれないあるいは少なくとも 正しかったかもしれないという70)。しかし,「当該差別的取扱いが歴史的に 不利な立場に置かれてきた集団に対してなされ,かつ,〔「十分ではない政 府資源の保持」〕以外の根拠がない場合には,連邦最高裁の先例は,この 根拠を当該差別的取扱いを支持する理由としてではなく批判する理由とし てみなしてきた」と
Plyler
判決などを挙げながら指摘した71)。ⅱ)「伝統的な異性婚制度の防衛および促進」に関しては,同性カップル に育てられた子どもについての証拠は議論のあるところではあるが,「異 性婚夫婦によって育てられた子どもが平均してより良く扱われようとなか ろうと,DOMAはマサチューセッツ州の同性カップルに対し養子縁組を することや女性に対し〔同性〕パートナーが育てるための子どもを産むこ とを妨げられるものではない」,また,「DOMAは,異性カップルへの利 益を増大させるものではなく,同性カップルの利益を否定することがどの ように異性婚を強化するのかを説明するものでもない」とした72)。かくし
68) Id. at 13.
69) 「州の主権および民主的自治の保護」については,DOMA 「州の主権および民主的自治の保護」については,DOMA
DOMA
第第第第 3 条にはかかわ らない(実際には相反するものである)として検討しないとした。Id. at 14.70) ただし,連邦控裁は,DOMA ただし,連邦控裁は,DOMA
DOMA
が政府の資金に負担を掛ける可能性が高いとが政府の資金に負担を掛ける可能性が高いとが政府の資金に負担を掛ける可能性が高いとが政府の資金に負担を掛ける可能性が高いと のより詳細な最近の分析があることも指摘している。Id.http://www.cbo.gov/sites/default/files/cbofiles/ftpdocs/55xx/doc5559/06- 21-samesexmarriage.pdf参照。
71) Id.
72) Id.
て,「〔「伝統的な異性婚制度の防衛および促進」という正当化根拠〕は,
把握されている問題の解決と適合していない根拠であるばかりか,
DOMA
による同性カップルの取扱いと異性婚社会の結束や利益を強化するという 主張されている目的との立証された結びつきがない」と説明した73)。なお,ここでは,同性カップルについて,「その婚姻にはどんな事情にせよ子ど もがいないことも安定していないこともある」と指摘されている74)。
ⅲ)「伝統的道徳観念の防衛」に関しても,「Lawrence判決は,同性嗜好
(same-sex preference)について直接言及しながら,道徳的不承認だけで はそれを根拠として差別をする立法を正当化できないと判示した。道徳的 判断は立法において避けることは難しいが,Lawrence判決や
Romer
判決 はこの根拠を削り取ってきた」と説明した75)。このようにして,連邦控裁は,DOMA第 3 条の正当化根拠のいずれに ついても否定し,「もしマイノリティの利益への差別的効果および連邦主 義の観点がこの事件に対し連邦議会の意思へのほぼ機械的な敬譲以上のも のを要求するという当裁判所の考えが正しければ,〔DOMA第 3 条〕はこ の審査を通過できない」と判示した76)。
⑷ Golinski v. Office of Personnel Management77)
これは,上記の
Gill
判決およびMassachusetts
控訴審判決とは異なり,合理性審査ではなく高められた審査基準に依拠して,DOMA第 3 条を第 5 修正違反とした判決である。本件は,連邦機関の被用者が,DOMA第 3 条の効果としてその同性配偶者への健康保険の適用を拒否されたために 起こした訴えである。
2012年 2 月22日,連邦地裁は,性的指向に基づく差別が疑わしい区分あ るいは疑わしい区分に準ずるものかどうかを拘束する先例はまだないとし
73) Id. at 15.
74) Id. at 14.
75) Id. at 15.
76) Id.
77) 824 F.Supp.2d 968 (N.D.Cal. 2012). 824 F.Supp.2d 968 (N.D.Cal. 2012).824 F.Supp.2d 968 (N.D.Cal. 2012).
て78),性的指向が高められた審査基準に値する疑わしい区分あるいは疑わ しい区分に準ずるものかを決定するために,①不当な差別の歴史,②当該 分類が社会に貢献する能力と無関係かどうか(無関係だとすれば,不適切 なステレオタイプや偏見が存在しているということになる),③性的指向 は不変のものないし当人でコントロールできないものかどうか,④政治的 権力の存在という 4 つの要件を考察した。そして,①同性愛者が差別の歴 史を経験してきたという記録についてもまたそのように裁判所が認めてき たことにも疑いはなく79),②性的指向は社会に貢献する能力と無関係であ り80),③性的指向は個人のアイデンティティにとって非常に基本的なもの でありそれを放棄するよう要求されるべきではなく81),④同性愛者はマイ ノリティであり立法者の好意的な注意を引きつけるような政治的権力は相 対的に限定的なものであるとし82),高められた審査基準を適用するとした。
かくして,連邦地裁は,Gill事件同様に,ⅰ)「責任ある生殖と出産の促 進」,ⅱ)「伝統的な異性婚制度の防衛および促進」,ⅲ)「伝統的道徳観念の 防衛」,ⅳ)「十分ではない政府資源の保持」という観点から,DOMA第 3 条が重要な立法目的と実質的に関連しているかどうかを検討した。
ⅰ)「責任ある生殖と出産の促進」については,Gill事件同様に,いくつ もの実証的報告が「同性の両親に育てられた子どもが異性の両親に育てら れた子どもと同じように感情的に健全であり教育的にも社会的にも成功し ていると証明してきた」として親の性的指向と子どもの福祉を切り離し,
また,「出産の能力が婚姻の要件とはなりえないしなってこなかった」こと,
「連邦政府も出産の可否に基づき婚姻を認めないと考えたことはない」こ とを指摘した。さらには,現実にすでに同性愛者の親が存在することをふ まえ,「同性の親は子どもを儲けたり養子にしたりすることが可能であり
78) Id. at 985.
79) Id. at 985-986.
80) Id. at 986.
81) Id. at 987.
82) Id. at 989.
実際にそうしている」のであって,「同性カップルに婚姻の利益を承認し なかったり保留したりすることは異性が親となることを促すことにはなら ず,むしろただ同性の親の子どもを危険にさらすことにしかならない」と 逆に子どもの福祉の観点から同性婚夫婦の婚姻に伴う利益の付与を正当化 した。また,DOMAに関し,「たとえもし〔「責任ある生殖と出産の促進」
という立法目的〕が正当な利益だとしても,合法的に婚姻した同性婚夫婦 に対し連邦の利益を認めないことは異性カップルに対し婚内子を儲けさせ ることを促すことも妨げることもない」とした83)。
ⅱ)「伝統的な異性婚制度の防衛および促進」に関しても,Romer判決
や
Lawrence
判決などを引きながら「伝統だけでは当該法律の適切な正当化根拠とはなりえない」こと,「同性婚をしている人々はすでに同性の人 と婚姻しているのだから,DOMAが彼らに対して異性の人と婚姻するよ う促進することにはならない」こと,「同性カップルの利益を否定するこ とと異性カップルに婚姻を促進することは無関係である」ことを指摘し た84)。
ⅲ)「伝統的道徳観念の防衛」に関しても,「同性カップルに対する道徳 的不承認に基づく立法はいかなるレベルの審査基準も通過するものでは な」く,「マイノリティに対しマジョリティの実質的な道徳的信念を押し つけることは立法の正当化根拠とはなりえない」とした。ここでも
Romer
判決やLawrence
判決が参照されている85)。ⅳ)「十分ではない政府資源の保持」についても,Plyler判決などを参照 して「政府資源の保持は政府の政策から恣意的に選び出した集団を閉め出 すことを正当化しえない」とした。また,実際の問題として,「同性婚夫 婦に連邦の利益を供給することで政府の財政に悪影響を及ぼすということ を示す証拠はない」ことを指摘し,「高められた審査基準の下では,政府 の政策の運営上の利便的および経済的効果は異なる取扱いを正当化するも
83) Id. at 991-993.
84) Id. at 993.
85) Id. at 994.
のではない」と確認した86)。
以上のようにして,連邦地裁は,ⅰ)~ⅳ)のすべてについて「重要な 政府の目的と実質的に関連する正当化根拠を提供するとは思えない」と述 べた87)。なお,同裁判所は,
DOMA
は合理性審査も通過しえないと補足し ている88)。かくして,本件でもまた,「DOMAは,〔原告〕の合衆国憲法第5 修正の下の法の平等保護の権利を侵害するものである」89)とされた。
2
検討─判決の射程,違憲審査基準および婚姻の目的について⑴ 判決の射程
さて,以上の判決はすべて
DOMA
第 3 条にかかわるものであるために,その結論は,連邦が有効に成立している同性婚について連邦法上の婚姻に 伴う利益を平等に保障しないことは憲法に違反するということのみであ る。したがって,今後,たとえ
DOMA
第 3 条が法律によって廃止された りあるいは連邦最高裁によって違憲とされたりしたとしても,①同性婚の 禁止それ自体が違憲とならない限り,州は自由に同性婚を禁止することが でき,②特別の連邦法が制定されない限り,シビルユニオンやドメスティッ クパートナーシップといった関係性は婚姻とはみなされないため,そのよ うな関係性に連邦法上の婚姻に伴う利益が保障されることにはならない90)。こういった事情から,以上の違憲判断には今後の合衆国全土における同 性婚の行方とは無関係の部分も多く,同性愛者にとっては,その要求の一 部を満たすものに過ぎない91)。しかし,これらの判決におけるより一般的
86) Id.
87) Id. at 993-995.
88) Id. at 995-1002.
89) Id. at 1002.
90) Mark Strasser, Mark Strasser,
Mark Strasser, Life after DOMA, 17 Duke J. Gender L. & Polʼy 399, 418 (2010).
91) 同性愛者の要求は,婚姻に伴う利益を望むものから異性婚と同じ法律婚を望 同性愛者の要求は,婚姻に伴う利益を望むものから異性婚と同じ法律婚を望 むものまでさまざまである。同性愛者の権利獲得の歴史などについては,
ジョージ・チョーンシー『同性婚─ゲイの権利をめぐるアメリカ現代史』(明石 書店・2006),風間孝・河口和也『同性愛と異性愛』(岩波書店・2010)等参照。