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SPM を用いた霜の形状 / 構造 / 分布とかき取り力の相関に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)

1.緒論

冷却固体面における着霜は,寒冷地における輸送機器をは じめ,装置類への着霜による動作不良や事故の原因となり,

特に熱交換器への着霜はその性能の著しく低下させる.さら に,冷蔵施設の巨大化や技術の進展が著しく,限られた資源 やエネルギーの中でより効率的な運用をするために,冷却シ ステムの省エネルギー化が重要視されている(1).こうした状 況下で,霜の発生を防ぐ方法,効率よく除霜をする方法が注 目されており,着霜現象の科学的・技術的な解明は急務であ る.これまで着霜現象に関する研究において,林,青木らの 霜成長過程の分類や(2),霜層の成長系の構造(3)についてなど 多くの検討がなされているなど,マクロスケールでの霜の付 着,成長に関する研究は行われているが(4)~(5),着霜の本質的 なメカニズムや構造を解明するためには,微小なスケールで の検討が不可欠である.剱持らは,マイクロスケールでの着 霜現象を解明するため,走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope, SPM)を用いた霜形状/構造および冷却固体 面からの霜のかき取り力の測定方法を提案した(6).本研究で は,冷却面温度を変えながら,霜の形状/構造/分布とかき取 り力との相関を検討した.

2.実験装置

2.1 走査型プローブ顕微鏡(SPM)

SPMは微小な形状測定や加工が可能であるため,多くの研 究に用いられており,2 つの材料間の付着力の測定(7)や,遺 伝子工学,原子操作を利用したナノ構造の組み立てなどの応 用分野への利用が期待されている.

SPMの本体はチャンバー内に設置されており,試験板周辺 の温度,湿度を制御することができる.チャンバー内の湿度 は湿潤窒素ガスと乾燥窒素ガスの流入量を調節することに よって制御され,チャンバー内の温度は流入させる湿潤窒素 ガスをヒーターを用いて設定した温度に調節し,内部のファ ンを用いて循環させることによって制御する.

Fig.1SPMシステム全体の構成図に示す.試験板表面温

度は,液体窒素による冷却と試料台内にあるセラミックヒー ターによる加熱で制御する.試験板をセラミックヒーターの 上に設置し,試験板の上部に取り付けたカンチレバーで試験 板表面を走査する.温度センサーは試験板の下部にあるため,

予備実験により,測定時に着霜する試験板表面温度と,温度 センサーの温度との関係を求め,試験板表面温度を決定した.

まず,チャンバー内を窒素ガスで満たすため,圧力100Pa

下にまで真空排気を行い,液体窒素により,試験板表面温度 が-100

°C

になるまで冷却を行う.次に,チャンバー内に純

99.995%の乾燥窒素ガスを流入させ大気圧に戻し,その後

湿潤窒素ガスを流入させることでチャンバー内の湿度を調 節する.同時に試験板表面温度を100°Cまで上昇させ,試験 板上の水滴を取り除き,その後,試験板表面温度20°Cの状 態を維持する.

2.2 走査方法について

Fig.2にプローブの走査方法について示す.図中の点Aから

Bまで走査(トレース)した後,直後に折り返し同じ軌跡 をたどり走査(リトレース)をし,一往復する.1回の走査 でトレース/リトレースの 2 つのデータが設定した測定点数 分得られる.1ライン走査後,所定のピッチで走査位置が 1 ラインY方向に移動し,同様にトレース/リトレースの往復 走査を行う.この動作を繰り返し,設定したライン数の走査 を繰り返す.SPMでは,1ラインの走査速度と測定点数など

SPM を用いた霜の形状 / 構造 / 分布とかき取り力の相関に関する研究

Study on correlations among frost crystal dimensions/structure/distribution and scraping force by using SPM

精密工学専攻

7

号 伊藤洋麻

Yoma Ito

Fig.2 Scanning procedure of probe

X

Y

Last line 1st line 2nd line Probe Trace

Retrace

Fig.1 Experimental apparatus(6)

Liquid N2

N

2

Gas

N2+H2O Sample plate

Glove port

Temperature controller

Scanner Cantilever

holder

Fan

Copper foil

N

2

(2)

の走査条件を設定することができ,トレース/リトレースの往 復走査に要する時間,測定時間などを変えることができる.

本研究では,霜の形状/構造/分布測定においてはダイナミッ クモード,かき取り力測定においては水平力(Lateral Force Microscope, LFM)モードを用いる.

2.3 ダイナミックモード

ダイナミックモードでの走査の様子を Fig.3(a)に示す.共 振周波数付近でカンチレバーを振動させ,この状態でカンチ レバー先端のプローブと試料を接近させることで振幅が変 化することを利用し,走査をした際に振幅が一定になるよう に動作させ,試料の垂直方向の変位を測定するモードである.

このモードを試験板表面形状,霜の形状/構造/分布の測定に 用いる.

2.4 LFMモード

LFMモードの走査の様子をFig.3(b)に示す.走査をする際 に,カンチレバーに一定の力を与え,試験板表面にカンチレ バー先端のプローブの先端を押しつけながら走査をするこ とで,プローブの水平軸方向のねじれ量を検出することがで き,試験板表面の摩擦力を測定することができる.また,霜 結晶などの障害物に衝突した際,プローブ先端で霜結晶をか き取った際の見かけのかき取り力を測定することができる.

2.5 プローブについて

使用したプローブを走査型電子顕微鏡(Scanning Electron

Microscope,SEM)を用いて観察した様子をFig.4に示す.プ

ローブは単結晶 Si でできており,静電気による測定への影 響などが最小限に抑えられている.先端径が1.8µmの円筒形 プ ロ ー ブ を 持 ち , バ ネ 定 数 42N/m の カ ン チ レ バ ー (PL2-NCHR)を用いて霜の形状/構造/分布とかき取り力の測 定を行った.

3.実験方法

本研究における着霜に関わるパラメーターは主に,チャン バー内湿度,試験板冷却温度,冷却時間である.これらの条 件を変えることによって,形状/構造/分布やかき取り力が異 なる霜結晶を生成することができる.また,測定条件として は,プローブの走査速度,測定点数,走査範囲があり,かき 取り力では,プローブの押し付け力がある.

3.1 実験方法

本研究で用いるプローブの先端径が 1.8 µm,走査距離が 30µmであるため,霜の形状/構造/分布測定とかき取り力の測 定 対 象 範 囲 は 1.8µm×30µm と な る . 試 験 板 は 表 面 粗 さ

Ra=0.05µm程度に研磨した10mm×10mm,厚さ1mmの銅板

を用いる.

まず,試験板表面温度20°C で表面を測定し,表面状態の 確認と,試験板表面の摩擦力の測定を行う.その後冷却を開 始し,試験板表面温度が所定の温度に達した時点を冷却時間 0secとし,冷却時間10secの霜の形状/構造/分布をダイナミ ックモードで測定する.直後にLFMモードに切り替え測定 領域内の霜のかき取り力を測定する.同様に冷却時間

2,5,10,15minの実験を行う.なお,ダイナミックモードでの

測定からLFMモードでの測定まで,切り替えに約30secのタ イムラグが生じる.本研究では,湿度を一定とし,試験板表 面温度を変えながら実験を行なった.なお,本研究の条件に おける霜結晶とは,過冷却液滴の凍結現象によるものではな く,空気中に存在する水蒸気が昇華することによって生成,

成長する霜結晶であることを予め確認している.

3.2 形状/構造/分布の測定方法

Fig.5に測定で得られた画像を,Fig.6に霜結晶の断面図の

一例を示す.Fig.5 に示すように,まず試験版表面全体を走 査し,霜の付着の様子を確認した後,測定対象とする領域を

Table 1 Experimental conditions

Sample plate Copper

Probe scanning speed 40 µm/s

Scanning range 1.8 µm×30 µm

Number of measurement points 256×256 Pressing force of probe 5000 nN

Humidity Sample surface

temperature 1.24g/m3 (0.00104kg/kg’) -17.5,-20,-22.5 °C

Fig.4 SEM image of probe Fig.5 Measured image of frost 1.8µm

1.8µm

Scanning

Constant force Twist

Probe Sample plate (a) Dynamic mode (b) LFM mode

Fig.3 Scanning mode of SPM Probe

Sample plate

Scanning

Height

Fig.6 Measurement method of frost shape Extrapolation line

Base diameter

A B

Measurement line

(3)

決定する.Fig.5 における黒枠が測定領域であり,この領域 内の霜結晶を測定対象とする.本研究では,霜結晶を円錐型 と近似し,根元径,高さ,測定領域内の個数,付着面積割合,

分布を測定する.霜結晶の根元径は,Fig.5に示す二点間A-B の距離によって測定できる.SPMを用いた形状測定では,走 査をした際に霜結晶の頭頂部への影響により正確な測定が できないと考えており,霜結晶の高さは根元の傾きから外挿 した.また,測定領域内の霜結晶の個数,生成位置,測定領 域に対する付着面積割合を測定する.

3.3 かき取り力の測定方法

LFMモードでは1 ラインの走査でトレースとリトレース の両方の値が測定されるが,かき取り力は最初に霜と接触を するトレースの値のみを用いる.今回の設定条件では,1 インあたり256個の値が得られ,その平均値を算出し“平均 かき取り力”と定義した.霜の形状/構造/分布測定直後にか き取り力測定を行った場合,霜結晶のかき取り力と試験板表 面の摩擦力が含まれた“見かけのかき取り力”が測定される ため,得られた値から試験板表面の摩擦力を引く.

4.実験結果および考察

湿 度 を 1.24g/m3(0.00104kg/kg’)と し , 試 験 板 表 面 温 度

-17.5,-20,-22.5°Cでの測定を行い,試験板表面温度の違いによ

る霜結晶の生成,成長の様子を検討した.実験結果をFigs.7-9 に示す.各実験条件において測定回数は 5 回とし,Figs.7,9 においては平均値をプロットし,最大値と最小値の範囲をエ ラーバーで表記した.

Fig.7 に冷却時間と霜結晶個数,付着面積割合の関係を示

す.霜結晶個数は,試験板表面温度-17.5°C では,冷却時間

10secから10minまで1~5個の範囲で増加しているが,冷却

時間15minでは,減少している.これは,霜結晶の成長に伴

い,隣接する霜結晶同士が合一する現象によるものではない かと考えられる.試験板表面温度-20,-22.5°Cでは,冷却時間 2minまでは増加しているが,その後は冷却時間とともに概ね 3~5個の範囲で減少傾向が見られた.これは,試験板表面温 度を低くすることで,霜結晶の成長が速くなり,霜結晶同士 の合一が起こりやすくなったためと考えられる.付着面積割 合は,試験板表面温度-17.5,-20°Cでは,冷却時間10minまで

は,概ね 0.1~0.3の範囲で増加しているが,冷却時間 15min

では顕著に増加している.試験板表面温度-22.5°C では,冷 却時間2minの時点で大きく増加し,その後,概ね0.5~0.6 度で推移している.

Fig.8 に冷却時間と霜結晶の根元径,高さの関係を示す.

根元径は,試験板表面温度が低くなるにつれ,また,冷却時 間が長くなるにつれ,成長速度が速くなり,根元径が大きく なることがわかる.さらに,冷却時間10minまでは,いずれ の条件においても増加傾向が見られるが,試験板表面温度

-20°Cの条件において冷却時間15minでは,大きな根元径が

みられた.これは,霜結晶同士の合一により,極端に大きな 形状が測定されたためである.試験板表面温度-22.5°Cでは,

冷却時間5minまでは増加傾向がみられるが,冷却時間5min 以降はほぼ横ばいで推移している.これは,Fig.7(c)からもわ

かるとおり,霜結晶同士の合一が早い段階で起こっているた めではないかと考えられる.試験板表面温度-20,-22.5°Cにお いて,最小値,平均値に大きな変化がなく,霜結晶個数の減 少も著しくないことから,霜結晶同士の合一とともに,新た な霜結晶が生成しているのではないかと考えられる.霜結晶 の高さは,根元径と同様に,試験板表面温度,冷却時間とと もに大きくなる傾向が見られた.

Fig.9 に冷却時間とかき取り力の関係を示す.試験板表面

温度-17.5°Cでは,冷却時間10minまでは概ね200~300nN 度で増加しているが,冷却時間15minでは400nN程度に増加 している.これは,霜結晶同士の合一により,付着面積割合,

Fig.7 Relations among cooling time, ratio of total area of frost crystals to scraping area and

number of frost crystals (Humidity=1.24g/m3 (0.00104kg/kg’)) (a) Sample surface temperature=-17.5°C

(b) Sample surface temperature=-20°C

(c) Sample surface temperature=-22.5°C

5 10 15

0 5

0 0.5 1

N u m b er o f fr o st cr y st al s Rat io o f to tal ar ea o f

  

fr o st cr y st al s to s cr ap in g ar ea

Cooling time [min]

Number of frost crystals Ratio of total square of

  

frost crystals to scraping area

5 10 15

0 5

0 0.5 1

N u m b er o f fr o st cr y st al s Rat io o f to tal ar ea o f

  

fr o st cr y st al s to s cr ap in g ar ea

Cooling time [min]

Number of frost crystals Ratio of total square of

  

frost crystals to scraping area

5 10 15

0 5

0 0.5 1

N u m b er o f fr o st cr y st al s Rat io o f to tal ar ea o f

  

fr o st cr y st al s to s cr ap in g ar ea

Cooling time [min]

Number of frost crystals

Ratio of total square of

  frost crystals to scraping area

(4)

根元径の増加により,かき取り力も高い値が測定されたため であると考えられる.試験板表面温度-17.5,-20°Cでは,冷却

時間10minまでは概ね同じ傾向が見られるが,試験板表面温

度-20°Cの条件で冷却時間15minでは高い値が測定された.

これは,試験板表面温度が低いため,霜結晶の成長が速くな り,霜結晶同士の合一が起こりやすくなり,付着面積割合が 増加しているためと考えられる.試験板表面温度-22.5°C は,冷却時間10secでは,他の条件とほぼ同じ値が測定され たが,冷却2min以降,概ね400~600nNの範囲で増加してい る.試験板表面温度がさらに低くなることで霜結晶同士の合 一が進み,霜結晶の根元径が大きくなっているためであると 考えられる.

5.結論

(1) SPMを用いて霜の形状,構造,分布とかき取り力を測定

し,その相関を明らかにした.

(2) 付着面積率,根元径,高さ,かき取り力冷却時間の経過 とともに増加する.

(3) 冷却時間とともに隣接する霜結晶同士が合一し,測定対 象範囲内に付着する霜結晶個数が減少する.

(4) 霜のかき取り力は,霜結晶の根元径,付着面積割合に大 きく影響する.

本研究の一部は,2011年度科学研究費補助金(基盤研究C)

の助成を受けたことを記して,謝意を表す.

参考文献

(1) 関 光雄, 倉庫における着霜現象と除霜の現状, 冷凍,

Vol.81(2006) pp.270-275.

(2) 林 勇二郎, 青木 和夫, 現象に関する研究(霜層成長の

構造による分類), 日本機械学会論文集(第2部), Vol.43, No.368(1977) pp.1384-1391.

(3) 青木 和夫, 片山 功蔵, 勇二郎, 安達 秀一, 現象に 関する研究(霜層の成長理論), 日本機械学会論文集(B編), Vol.45, No.394(1979) pp.869-876.

(4) Robson O.Piucco, et al., Study of frost growth and densification on flat surfaces, Experimental Thermal and Fluid Science 33 (2009) pp.371–379.

(5) Max Kandula, Frost growth and densification in laminar flow over flat surfaces, International Journal of Heat and Mass Transfer, 54(2011) pp.3719–3731.

(6) Koji Matsumoto, Yoshiaki Kenmotsu, et al., Study on methods of measuring frost crystal dimensions/structure and frost scraping force using a scanning probe microscope, international journal of refrigeration, 34 (2011) pp.550-559.

(7) Olavio Dos Santos Ferreira, et al., Adhesion experiments using an AFM-Parameters of influence, Applied Surface Science, Vol.257 (2010) pp.48-55.

Fig.9 Relation between cooling time and scraping force of frost crystals (Humidity=1.24g/m3 (0.00104kg/kg’)) Fig.8 Relations among scanning position, base

diameter and height of frost crystals (Humidity=1.24g/m3 (0.00104kg/kg’)) (c) Sample surface temperature=-22.5°C

(b) Sample surface temperature=-20°C (a) Sample surface temperature=-17.5°C

5 10 15

0 5 10

0 2

Bas e d iam et er o f

 

fr o st cr y st al s[

μ

m] H ei g h t o f fr o st cr y st al s[

μ

m]

Cooling time [min]

Base diameter of frost crystals Height of frost crystals

5 10 15

0 5 10

0 2

Bas e d iam et er o f

 

fr o st cr y st al s[

μ

m] H ei g h t o f fr o st cr y st al s[

μ

m]

Cooling time [min]

Base diameter of frost crystals Height of frost crystals

5 10 15

0 5 10

0 2

Bas e d iam et er o f

 

fr o st cr y st al s[

μ

m] H ei g h t o f fr o st cr y st al s[

μ

m]

Cooling time [min]

Base diameter of frost crystals Height of frost crystals

5 10 15

0 500

Scraping force of frost crystals [nN]

Cooling time [min]

Sample surface temperature -17.5 -20 -22.5

Table 1  Experimental conditions

参照

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