<総 説>
発育鶏卵を利用した創薬研究と将来展望
1)徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部 ライフシステム部門 生命情報工学講座 2)金沢大学がん進展制御研究所 安部千秋1)、宇都義浩1)*、遠藤良夫2)、堀 均1)
1.はじめに
創薬開発プロセスにおいて、動物実験では候補薬剤の効果、薬物動態、毒性などを評価し、そ の結果から臨床試験における投与量や投与期間など多くの情報をもたらすことから、創薬におい て動物実験は必要不可欠である。臨床試験における候補薬剤の脱落要因として、1991年ではPK/
PD(Pharmacokinetics/Pharmacodynamics)が、2000年では治療効果が主要因との報告がある(1)。
その論文では治療効果による脱落の割合が大きい抗がん剤の前臨床試験において、Kolaらはヌー ドマウスに代わりKOマウスやtransgenicマウスを用いることで脱落を減らせるのではないかと も指摘している。また、分子標的薬イレッサはEGFR(Endothelial Growth Factor Receptor)
遺伝子変異の有無により奏効率に違いがあるということからも(2)、変異を伴うがん遺伝子など を標的とする薬剤(分子標的治療薬)では遺伝子改変が可能な実験動物モデルでの評価が要求さ れるであろう。マウスやラットに代わる実験動物として、ゼブラフィッシュが注目されてきてお り多くの研究者が用いているが、皮膚やエラからしか薬剤が吸収されないことから投与方法が限 られること、脂溶性パラメーターであるlogPが1以下の値をもつ化合物の吸収が著しく悪いとい う問題点が解決されていない(3)。これに対し発育鶏卵はこれまでに様々な研究分野で用いられ てきた実績があり、静脈投与も可能なため、我々は発育鶏卵に注目してきた。発育鶏卵は発生学 材料として長く用いられてきており、RNAiやエレクトロポレーションなどで遺伝子機能の欠失・
獲得が可能であることが示されている(4)。発育鶏卵とは孵卵状態の受精鶏卵を指し、21日間の 孵卵後ヒヨコになる。発育鶏卵の模式図ならびに胎児写真を図1に示す。そのため、発育鶏卵を 用いた実験の日数は孵化までの21日間に限られるが、鶏胎児は常に卵の中にいるので逃亡する恐 れがなく、通常の実験動物と異なり物理的に隔離する専用の動物実験施設が不要である。また、
キーワード:発育鶏卵、放射線増感活性、抗酸化活性、血管新生阻害活性、抗腫瘍活性 *〒770-8506 徳島県徳島市南常三島町2-1
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放射線生物研究 46(3),2011 P221 ~ 233
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