北 海道の雪氷 No 20(2001)
車両走行 が雪氷路面 に与 える影 響 について
○北海道開発土木研究所交通研究室
宮本修司 北海道開発土木研究所交通研究室
浅野基樹
1
まえがき「スパイクタイヤ粉 じんの発生の防止に関する法律」が
1990年
6月 に公布・施行 されて 以後、スパイクタイヤによる粉 じんによる大気汚染等の環境問題は改善されたが、スパイクタ イヤを装着 した車両がほとんどな くなった1992年
度の冬期か ら、「つるつる路面」 とよば れる非常に滑 りやすい路面が頻繁に発生 し大きな社会問題 となった。そのため道路管理者は、凍結防止剤やすべ り止め材の散布などによる路面管理の充実 を図ったが、ス リップ事故等の冬 型事故の増加や都市内交通特性の悪化をもた らしている。一方、罰金規則が適用される前の1
991年
度の冬 には、スパイクタイヤ装着率は約20%で
あったが、大気汚染に関する環境基 準は既 にクリアしてお り、なおかつ 「つるつる路面」は発生 していなかった。 このようにスパ イクタイヤに代わつて冬用タイヤの中心 となったスタッ ドレスタイヤには、路面上の雪氷 を磨 くことによって路面を非常 に滑 りやすい状態に変化 させる性質がある。 これ まで交通研究室で は、凍結路面室内走行試験機を用いてスタッドレスタイヤやスパイクタイヤの走行が路面状況 に与える影響を調査 した ことはあるが1)、 実際の路面で路面性状の変化 と車両通過台数 との関 係を調査 した ことはない。そこで開発土木研究所所有の苫小牧寒地試験道路において、制動時 に車両走行が路面状態 に与える影響について調査 を行 つた。2
自動車走行の雪氷路面への影響に関する実験2 1
実験の概要本実験は平成
13年
2月 7日 (スタッ トレスタイヤ とスパイクタイヤ走行 による路面変化実 験)と
平成13年
2月15日
(スタッ ドレスタイヤ と非金属タイヤチェー ンによる路面変化実 験)の
2回実施 した。苫小牧は、気温は低いが降雪量が少ない地域であるため、人工降雪機 を 用いて圧雪路面を作成 して走行実験 を行 った。試験は乗用車タイプの車を lo台用意 し、それ らを5台ともスタッドレスタイヤを装着 した班 と5台の内1台 (20%)にスパイクタイヤ (2
月 7日)及
び、ネ ッ ト型非金属 タイヤチ ェー
ン (2月 15日
)を
装着 した班 に分 け、並行 し て走行 させ、ABSを
効 かせ た フル プ レー キ 時 の路面状態 を出現 させて観測 を行 つた。 ブ レー キ直前速度 は約 40kmlhであ る。試験 は 日射 の影響 を受 けな い 日没後 に行 い、気温 は マイナスlo℃
〜20℃
で あつた。図‑1に
実験 概 要 を示す 。 な お路面状態 の評価 は一定台 数通過 後 の路 面状態 を 目視 とポー タブルスキ
ッ ドテス トで行 った。
2 2
実験結果2 2 1
スバイクタイヤ20%混
入時まず、スタッ ドレスタイヤ装着時 とスパ イク
図
‑1
実験概要図路面変化調査の概要
ヨ壼彙心日│スバイク混入による日面童化 :油12, ネットチェーン滉入│●0日面壼化:鰤,215
‑47‑
北 海道 の雪 氷 No.20(2001)
タイヤ混入時の路面状態の違 いについてポータブルスキ ッ ドテス トで評価す る と表
‑1の
よ うに、試験時の気温が
‑10℃
以下 で推移 して いるに も係わ らず、ス タ ッ ドレス タイヤ100%装
着時 にはスキ ッ ドナ ンバーが車両 の走行 によって大 き く低下 し、約
60(す
べ り摩擦係数で0.6 に相 当)か
ら約20(同、0.2に 相 当)に
大幅 に低下 して いる。次 に、スパイ クタイヤが
20%混
入 した際のスキ ッ ドナ ンバー を見 る と、200台
目には約 20 まで低下 したが、50台
目の時点 で は40以
上のスキ ッ ドナ ンバー を維持 した。目視 による路面状態 の変化 につ いて は、写真
‑1〜
写真6に
車両走行 1∞ 台 までの路面状況 写真 を示す。 このよ うに、日視 で もス タ ッ ドレス タイヤ100%の場合 と、スパイ クタイヤが 20%混入 した場合で明 らかな違 いが見 られ る。即 ち、スタ ッ ドレス タイヤ 1∞ %の場合 には、50 台 日か ら路面光沢 を持 つ よ うにな り、「つ るつ る路面」 が発 生 して いる様 子が写真か らも見て
表
‑1
路面状況 (スキ ッ ドナ ンバー と雪 の硬度)の
変化ス タ ッ ドレスタイヤlCXl%とスパイ クタイヤ
20%混
入雪 質
圧雪路面の フルブ レーキ
(人工雪)
走行 条件
スパイクタイヤ な し
スパイ クタイヤ あ り
走行 回数
100 ハυ外 気温
‑10.8 ‑15.716.9
‑19.8 ‑10.8 ‑15.7 ‑16.9―19.8 路 面温 度 ‑13.1 ―
lマ1.3 ‑17.2 ‑16.3‑13.1
‑14.3 ‑17.2―
16滑 り 抵 抗 値
l
61.0 25.0 22.0
22.0 60.0 42.8 30.023.0
61.0 19.0 19.0 19.0
62.0 43.025.0
20.057.0
20.019.0 19.0
57.0 42.0 24.8 20.0平 均
59.7 21.3 20.0 20.0
59.712.6 26.6
21.0硬 質
l 248.9
242.l
266.4 248.9 248.9242.l
239.5 237.2 248.9 248.9259.l
248.9242.1
248.9242.1 242.1
248.9242.1 242.l
239.5242.1 242.1
247.3242.1
平 均 248.9 244. 255.8 245.7 244.3 244.3 242.9 240.5※滑 り抵 抗 値 :BPN値
写真
‑1
試験 前 の路 面(スタ ッ ドレスタイヤ
100%)
写真
‑2
試験 前の路面(スパイ クタイヤ
20%混
入)‑48‑
延べ 5 (スタ ッ
0台走行後の路面 ドレス タイヤ
100%)
北 海道 の雪氷 No.20(2001)
延べ
50台
走行後 の路面 (スパイ クタイヤ20%混
入)写真
‑6
延べ100台
走行後 の路面 (スパイ クタイヤ20%混
入)写真
‑5
延べ100台
走行後 の路面 (スタ ッ ドレスタイヤ100%)
とれ るが、スパイ クタイヤが
20%混
入 した場合 には、そのよ うな状態 にはなって いない。これ らの事か ら、わずか 50台のスタ ッ ドレスタイヤ装着車両 によって、路面が磨かれ 「つ るつ る路面」が発 生す るが、
20%の
スパイ クタイヤ によって、その発 生 を防止す る事が可能 で ある ことが明 らか となった。 しか しなが ら目視では明 らかな違 いがある走行lCXl台目以降の スキ ッ ドナ ンバーが、スタ ッ ドレスタイヤ100%と
スパ イ クタイヤ20%混
入時で は 目視で の評価 ほ どには違 いが見 られなか った。但 し、実 際の道路で は路面正整 を行 った後 に残 る雪氷 の厚 さは、かな り薄 い場合 が多 い と思 われ 、そのよ うな条件下でスパイ クタイヤ装着車両が走行 した場合 には、路面のアス ファル ト が露 出す るので短 い時間ですべ りにくい路面状態 にな ると思われ る。
2.2.2
非金属 タイヤチ ェー ン装着20%混
入時同様 に
5台
中1台
が非金属 タイヤチ ェー ンを装着 した場合 につ いてポー タブルスキ ッ ドテス トで評価す ると (表‑2)、
や は り気温が低 い条件下 にあるにも係わ らず、スタ ッ ドレスタイ ヤloo%の場合 には、車 両の走行 と共 にスキ ッ ドナ ンバー が低下 して いるが、 ゴムネ ッ トチ ェ ー ン装着20%混
入時 には、5CXl台 の車両通過時 にもスキ ッ ドナ ンパーで 46.0と なってお り、ほ とん どスキ ッ ドナ ンパーの低下 は見 られない。 同様 に、 日視 による観察 について もスタ ッ ド レス タイヤlcxl%装着 の路面で は、路面が光沢 を持 つ「つ るつ る路 面」の発 生が確 認 出来たが、
ゴムネ ッチ ェー ン装着時
20%混
入時 には、全 く発 生 して いな い。これ らの事か ら、非金属 タイヤチ ェー ンが
20%以
上混入 した交通条件では、「つるつる路面」の発生す る確率が非常 に低 くな る事が明 らか とな った。
写真
‑3
写真‑4
‑49‑
北 海道 の雪 氷 No 20(2001)
表
‑2
路面状況 (スキ ッ ドナ ンバー と雪の硬度)の
変化(スタッ ドレスタイヤlllll%とゴムネ ッ トチェー ン
20%混
入)雪 質
圧 雪路 面 の フル ブ レーキ
(人工雪
)走行 条件
ゴムネッ ト な し
ゴムネ ット あ り
走 行 回 数 0 0
外気温
‑6 3 ‑6 8― 150 ―180
‑6 3 ‑6 8 ‑150 180
路面温度
滑 ‑7 8‑122 ‑171 ‑78 ―S 3 ‑122 ‑171
り 抵 抗 値
1 60 7
24 0
30 0 nけ 61 251 0
46 0 47 02 61 2 27 0 31 0
190 606 19 0 17 0 45 0
3 60 9 25 0 27 0
185
60 8 56 0470
46 0平 均
25 3 293 185 609
52 0467
46 0硬 質
l 250 4 248 9 253 4 248 9 237 5 228 5 235 3 248 9
2 253 8
2591
253 4 248 9 238 6 228 5 245 22421
3
248 1
253 42421
245 9 239 2 226 62421
248 9平 均 250 8 253 8 249 6 248 9 238 4 227 9 240 8 246 6
※ 汁より抵 抗 値
:BPN値
あとがき
スタッ ドレスタイヤの性能は、スパイクタイヤ使用規制が始 まった当時と比較 して、格段に 向上 していると言えるが、スタッ ドレスタイヤ装着率loo%の時に発生する 「つるつる路面」
の対策は、容易なものではない。 しか しなが ら今回の調査によって、スタッドレスタイヤ llxl
%の時には、マイナス lo℃ 以下にもかかわ らず、制動時にはわずか数百台程度の車両走行で、
「つるつる路面」が発生してしまう事がフィール ドでも確認出来た。
他方、一定割合のスパイクタイヤや非金属 タイヤチェー ンの混入によって、「つるつる路面」
発生を予防でき、この事は現在 「つるつる路面」対策 として行われている凍結防止剤やすべ り 止め材の散布等の外に、非金属タイヤチェーン等の使用拡大等の方策も考えられる事を示 して いる。
今後は、制動時以外での路面変化状況の試験や
0℃
に近い温度での試験の他、脱スパイクタ イヤ時代の路面管理手法について、一定条件下での非金属タイヤチェー ンの使用等も含め、最 も効率の良い方法に関 して更なる調査が必要 と考える。参考文献