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アルゴン循環型水素エンジンの試み

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Academic year: 2021

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アルゴン循環型水素エンジンの試み

1. はじめに

 往復動内燃機関はコンパクトで比較 的高い熱効率から,さまざまな分野に ひろく用いられており,さらなる高効 率化と低エミッションを目指して研 究・開発が進められている.近年,と りわけ究極の高熱効率を目指してアル ゴン循環型水素エンジンの実現が試み られている.これは,作動流体にアル ゴンのような単原子分子気体を用い て,その比熱比の高さを活用して高効 率化を目指すものである.本稿ではそ の原理と研究例について紹介する.

2. アルゴン循環型水素エンジン のコンセプト

 一般的にガソリンエンジンのような 火花点火エンジンの理論サイクルは,

いわゆるオットーサイクルであり,そ のサイクルは図 1に示すように,断 熱圧縮-等積加熱-断熱膨張-等積冷 却で構成される.ここで,圧縮比をε,

作動流体の比熱比をκとすると,その 理論熱効率は以下のようになる.

  ηth= 1 - 1/εκ-1

 すなわち,εが大きいほど,あるい は

κ

が大きいほど熱効率は高くなり,

その関係を図 2に示す.ここで,火 花点火エンジンの場合いわゆるノッキ ングと呼ばれる異常燃焼が生じるため にεはあまり大きくできない.また,

κは空気を仮定すると約 1.4 で,空気

-燃料の混合気であれば約 1.3 となり,

これらの値が理論サイクルの熱効率を 制限していることがわかる.ここで,

作動ガスを例えばアルゴンのように単 原子分子とすれば,κが約 1.6 程度と 大きくなるために,通常の空気あるい は空気-燃料混合気を用いた場合に比 べて飛躍的に高効率化が見込める.た だし,作動ガスに希ガスであるアルゴ ンを用いる場合,そのまま排気を大気 中に捨てずに吸気に戻さなければなら ないために,クローズドサイクルにす る必要がある.この際,排気中の燃焼 生成物を取り除かなければならない.

そこで,水素を燃料に用いれば燃焼生 成物が水だけとなるために排気を冷や

すだけで容易に分離することが可能で ある.このようなエンジンシステムの 基本コンセプトは京都大学の Ikegami らが 1982 年に提案している(1)図 3 はその概略であり,エンジンに吸気す る前に酸素を添加し,筒内に直接水素 を噴射して,圧縮圧力・温度で自着火 燃焼させる.その後,排気は冷却水で 冷やされ,燃焼生成物の水を分離除去 す る. ま た, 同 様 の コ ン セ プ ト は 2010 年 に ト ヨ タ 自 動 車( 株 ) の Kuroki らによって提案されている(2). これは,ガソリンエンジンをベースと し,吸気に水素と酸素を加えるととも に,火花点火により燃焼させるもので ある.図 4によると,圧縮比および 燃料供給方法等を最適化することに よって,図示熱効率はベースとなった ガソリンエンジンの 38%から 54%に まで大幅に向上することがわかる.ま た,筒内に水素を直接噴射して自着火 燃焼させれば,ノッキングによる圧縮 比の制限を受けないために,さらに高 効率を目指せる可能性がある.この場 合,高温・高圧のアルゴン-酸素雰囲 気における水素噴流の自着火燃焼を制 御する必要があり,基礎的な実験研究 もなされている(3)

3. おわりに

 作動流体にアルゴンのような単原子 分子気体を用いて,その比熱比の高さ を活用して高効率エンジンの実現を試 みる取り組みについて述べた.クロー ズドシステム等実際上の課題も残るも のの,高効率エンジンの可能性に期待 したい.

(原稿受付 2012 年 10 月 23 日)

〔川那辺 洋 京都大学〕

●文 献

( 1 )Ikegami, M., Miwa, K. and Shioji, M., A Study of Hydrogen Fueled Compression Ignition Engines, Int. J. Hydrogen Energy,

7-4(1982)341-353.

( 2 )Kuroki, R., ほか , Study of High Efficiency Zero-Emission Argon Circulated Hydrogen Engine, SAE Paper, 2010-01-0581, (2010).

( 3 )Mansor, M. R. A. , Nakao, S. , Nakagami, K.

and Shioji, M., Ignition Characteristics of Hydrogen Jets in an Argon-Oxygen Atmo- sphere, SAE Paper, 2012-01-1312, (2012).

断熱膨張

断熱圧縮 3

1

2

2

4

1

図1 オットーサイクル

1.0 0.8 0.6 0.4 0.2

01 5 10 15

κ=1.45 1.4 1.35 1.251.3 1.2

1.4 1.35 1.251.3 1.2

圧縮比ε 理論熱効率ηth

20 25 30

図2 オットーサイクルの熱効率

Argon+O

2

O

2

H

2

H

2

O

Coolant Burned

gas

Condenser- separator

図3 クローズドシステムの概略(1)

Unburned Loss 100 1.2 25.7

35.0

Heal Balance(%)

38.0

Gasoline Air

9.8

12.2 41.5

2 0.30

*N ηGC.101.325kPa 0.12

0.60

− 1

13.0 Ar+O2

H2 44.6 48.3 51.0 54.0 30.3 26.0 24.3 24.3 19.8 23.7 23.5 20.6 5.3 2.0 1.2 0.7 80

60 40 20 0 Cooling Loss Exhaust Loss

Fuel Working Gas Compression Ratio

Number of Nozzle Holes IMEP(MPa)

Injection Rate(N cm3/msec)

Indicated Thermal Efficiency η

図4 熱効率の変化

─ 50 ─

日本機械学会誌 2013. 2 Vol. 116 No.1131 111

参照

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