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IPSJ SIG Technical Report Vol.2009-MUS-83 No /12/5 EC-Rencon 1, 2 1, 2 3 1, 2 4 Rencon (EC) EC-Rencon EC-Rencon EC-Rencon A Repo

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IPSJ SIG Technical Report

演奏表情付けコンテスト EC-Rencon 開催報告

橋 田 光 代

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北 原 鉄 朗

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片 寄 晴 弘

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†4

Renconプロジェクトでは,2009年918日,エンタテインメントコンピューティ

ング(EC)2009の特別オーガナイズドセッションとして,第8回演奏表情付けコンテ

ストEC-Renconを開催した.人間による手作業の修正を極力排除した自律システム

部門と,人間による演奏表情付けを主目的としたシステムのための打ち込み部門では,

当日発表の新曲に制限時間つきで表情付けを行わせ,自動ピアノによる演奏を行うと いう形でコンテストを実施した.また,歌唱合成など一般の音楽システムを対象とし たフリー部門を設けた.EC-Renconでは,イベント自体がエンタテインメント性を持 つことを念頭に置き,演奏生成処理の様子や制作者らへのインタビュー,自動ピアノ での再生といった,会場での演出に対する工夫も行った.本稿では,EC-Rencon実施 概要について報告する.

A Report of EC-Rencon: Performance Rendering Contest for Automated Music Systems

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Rencon is an annual international competition at which entrants present the computer systems which they have developed for generating expressive music performances and au- dience and organizers judge the performances. The 2009 Rencon competition, which is composed of an autonomous section (for evaluating the ability of the entered systems to generate performances autonomously), a system-supported section (for evaluating human performances done using computer systems) and an open section for a general music sys- tem, was held as an organized session at EC2009. The entrant systems in autonomous sec- tion and system-supported section generated expression to a set piece newly composed for the comptition and autonomous systems were requested to generate more two short pieces from Chopin and Mozart specified at the venue on site. Their performances were played by the autopiano. In this paper, we report the overview of the competition and some of our new trials such as stage-managing as an entertainment and developing an Internet voting system.

1. は じ め に

1980年代以降,パソコンの普及やMIDI規格の統一などを受け,音楽領域全般の学術研究 や一般消費者向けの音楽制作ソフトウェアの開発が大きく進展している.最近では,学術・産 業ともに音楽演奏の表情付けに対する注目が集まっており,2002年からは音楽演奏システム による演奏表情付けコンテストRencon (Performance Rendering Contest)11)が始まった.こ れまでに,ICAD-Rencon(京都/2002年),FIT-Rencon(東京/2003年),IJCAI-Rencon

(アカプルコ/2003年), NIME-Rencon(浜松/2004年),ICMC-Rencon(バルセロナ/

2005年),ISMIR-Rencon(ビクトリア/2006年),ICMPC-Rencon(札幌/2008年)と 7回のコンテスト(ワークショップ)を執り行ってきた1)–5)

2009年のRenconは,エンタテインメントコンピューティング20092の特別オーガナイ

ズドセッションとして開催した.EC-Renconの実施においては,本体がエンタテインメン トを取り扱っていることもあり,実施開催自体にエンタテインメント性を持たせる工夫を 実施した.以下,EC-Renconの概要とコンテスト結果を報告するとともに,今後開催する

Renconについての展望を行う.

2. EC-Rencon

2.1 概 要

EC-Renconは,エンタテインメントコンピューティング2009の特別オーガナイズドセッ

ションとして,東京大学本郷キャンパス工学部2号館フォーラムを会場に,2時間枠の一般 公開という形で実施された.図2に会場の様子,図1にプログラムを示す.

今回のコンテストでは,自律システム部門(2.2節)と表情付け支援部門(2.3節),フ

†1関西学院大学理工学研究科/ヒューマンメディア研究センター Research Center for Human & Media, Kwansei Gakuin University

†2科学技術振興機構CREST「デジタルメディア領域」CrestMuseプロジェクト JST/CREST CrestMuse Project

†3筑波大学大学院システム情報工学研究科

Department of Intelligent Interaction Technologies, Tsukuba University, Japan

†4NTTコミュニケーション科学基礎研究所 NTT Communication Science Laboratories 1http://www.renconmusic.org/

22009916–18日,http://ec2009.entcomp.org/

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IPSJ SIG Technical Report

1 EC-Renconプログラム.

Fig. 1 Program of EC-Rencon

2 EC-Rencon会場:東京大学 工学部2号館 Fig. 2 EC-Rencon venue at University of Tokyo

3 ソリス氏による招待講演の様子 Fig. 3 Invited talk by Solis Jorge

リー部門の3部門が設定された.まず橋田による開会挨拶があり,課題曲の発表,参加シス テムの紹介を経て,すぐに演奏生成が開始された.自律システム部門,表情付け支援部門と もに,以下の条件で演奏生成が行われた.

( 1 ) 入力はMusicXMLまたはSMF形式ファイルで,SMF形式の演奏データを出力する.

( 2 ) 生成対象となる課題曲は当日会場で発表される.

( 3 ) 参加システムは,その場で各曲の演奏生成処理を実施し,制限時間(40分)内に生

成結果を提出する.

( 4 ) 演奏データはYAMAHAサイレントピアノC-IIIによる再生とする.

参加システムの演奏生成作業には,会場脇に個別ブースが用意された.生成作業を行ってい る間,早稲田大学のソリス・ホルヘ氏による招待講演「楽器演奏ロボット間のインタラク ションの実現に向けて」が行われた(図3).

演奏生成終了後,聴き比べを行った(2.6節).自律システム部門,打ち込み部門の順に,

参加システムが順番に登壇し,約1分間のシステム紹介を行ってから演奏が再生された.観 客らは,会場に設置された無線LAN経由によるオンライン投票サイト,または会場入口に 用意された投票用紙をもって,演奏を聴くごとに,(1)表情の豊かさ(Expressiveness)と(2) 演奏の自然さ(Naturalness)について5段階評価を記入していった.

最後に,新曲課題の作曲者村尾忠廣氏(帝塚山大学)による課題曲の演奏が披露され,投 票用紙ならびにインターネット投票による集計結果ならびに今年度のRencon Awardsの受 賞者への表彰が行われた.

なお,今回のRenconの実施については,エンターテイメントイベントとして「観客に見 せる」ことに重点を置き,1)システム開発者へのインタビューを実施,2)システム開発 者の顔の見える形での投票の実施,3)楽曲提供者からの作曲意図の解説,4)対象となる 課題曲のオンライン抽選,などの演出上の工夫を行った.

参加システムの各演奏の様子はビデオ撮影されており,現在,Renconホームページ上に て閲覧できるようになっている.

2.2 自律システム部門

2006年度開催以前のRenconにおいては,課題曲として既存の楽曲が事前に提示され,当 日までに各エントリチームから提出されたSMFを,電子音源を通じてスピーカで聴き比べ るという形態を取っていた.この方式では,課題曲に合わせたシステムのユーザカスタマ イズが可能で,システムの本質的な演奏表現を問うことは困難であるという問題があった.

ここ数年の間で,学習型・事例ベース型として有望な演奏システムが増え,演奏生成処理に おけるシステムの自律度が上がってきていることから,2008年度のICMPC-Rencon4)から,

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IPSJ SIG Technical Report

音符・MIDI レベルで 演奏を人間が直接修正 することはできない

一連の処理中は サウンド出力不可 演奏ルール適用・事例探索など,生成処理のための 音楽構造解析(楽曲分析)は人間・システムの どちらが行ってもよい(ただし演奏試聴は不可)

楽譜データに対する 音楽構造などのアノテーション

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生成された演奏を人間が 評価した上で演奏を再生成 することはできない

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4 自律システム部門における演奏生成処理上の制約 Fig. 4 Condition on generating a performance in autonomous section

以下3つを条件として課した自律システム部門を設けている.

(1)新曲課題 コンテスト当日に発表される新作楽譜に対して,制限時間内で演奏を生成し た.課題曲が当日発表されたことにより,楽曲に特化したパラメータ調整が事前に準備 されるのを防いだ.

(2)様式の異なる楽曲に対する表情付け 演奏様式の異なる複数の楽曲を生成対象とした.

これにより,システムの汎用的な演奏表現能力を競った.

(3)生成処理過程における人間の介入の制限 生成時に演奏表情に関するパラメータを人間 が操作したり,生成された演奏に対し人間が手修正・評価を行い,再生成を行ったりす ることを不可とした(図4).また,生成中はシステムから一切のサウンド出力も不可 とした.これらにより,生成中に人間の「耳」が介入されることを防いだ.

2.3 表情付け支援部門

学習・事例ベース型のシステムによる表情付け技術が進展する一方で,近年,人間による 音楽コンテンツ制作,特に,表情付けを支援するツールも充実してきている.このような 背景を受けて,打ち込み部門では,人間による演奏表情付けを前提とする演奏生成(支援)

システムを対象にした.

参加者は,市販の音楽編集ソフトウェアか独自開発システムのいずれかを用いて,40分

間の制限時間の中で出来る限りの表現を目指した.自律システム部門とは異なり,演奏生成 の主体は人間にあることがこの部門の特徴である.ここでは,制作された演奏の良し悪し だけでなく,人間の制作作業効率やシステムのインターフェースデザイン,人間(ユーザ)

によく使われる機能などを観察することを狙いとした.

2.4 課 題 曲

生成対象の課題曲は以下の2カテゴリに分けられる.

(1)新曲 当日に初めて公開される1分程度のピアノ曲である.自律システム部門,表情付 け支援部門共通の新曲課題として,昨年に引き続き,帝塚山大学の村尾忠廣氏に作曲を委嘱 した(図5).

(2)ショパン冒頭ならびに(3)モーツァルト冒頭 自律システム部門を対象として,ショパ ン,モーツァルトのピアノ曲のうち,ホームページ上で事前告知された曲目リストの中から

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5 EC-Rencon課題曲A:村尾忠廣氏による新曲

Fig. 5 The new set piece composed by Tadahiro Murao

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IPSJ SIG Technical Report

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Piano Sonata K.282 2nd mov.

6 EC-Rencon課題曲B:ショパン(左),モーツァルト(右)のピアノ曲より冒頭15秒程度分

Fig. 6 Set pieces from Chopin and Mozart

それぞれ1曲ずつの冒頭約15秒分が,当日の開会時に抽選で指定された(図6).

参加システムには,MusicXML形式,SMF形式の各ファイルを格納したUSBフラッシュ メモリと,参考用として印刷譜が配布された.

2.5 審 査 方 法

今回のコンテストでは,以下の4つの観点に基づく審査,賞が用意された.

EC-Rencon自律システム部門賞 会場ならびにインターネットでの投票において,演奏の

豊かさ,自然さの各5段階評定の合計が最も高い自律システム部門のシステムに授与さ れる.

EC-Rencon Rendering賞 会場ならびにインターネットでの投票において,演奏の豊かさ,

自然さの各5段階評定の合計が最も高いシステムに授与される.

EC-Rencon技術賞 Rencon実行委員会による審査において,技術的にもっとも優れている

と評されたシステムに授与される.

EC-Rencon村尾賞 課題曲の作曲者である村尾氏によって,音楽的に最も良いと評された

システムに授与される.

2.6 コンテスト結果

今回のコンテストは,東京で開催する日本語の一般無料公開イベントとして実施された.

会場は屋外と通ずる吹き抜けエリアであり,EC2009の参加者を中心に一般客や学生など約 80名程度が聴講し,Renconワークショップとしては過去最大規模となった.

1に,今回の参加システムを示す.自律システム部門には,前回以前から参加している Coper on the Web(野池)6),Kagurame-Phase II/III(alpha)(日野ら),usapi(寺村ら)7)のほ か,新規にReocorn(吉田ら),ConBreO(丹治ら)8)の計6システムがエントリした.表情 付け支援部門には,指揮演奏インタフェースVirtualPhilharmony(馬場ら)9),楽譜作成ソフ

1 EC-Rencon参加システム Table 1 EC-Rencon entrant systems

部門 システム名 代表者 所属

自律システム部門 Coper on the Web 野池賢二 津田塾大学

Kagurame Phase-II 日野達也 芝浦工業大学

Kagurame Phase-III (alpha) 日野達也 利根川直樹 芝浦工業大学

Reocorn 吉田葵 津田塾大学

ConBreO 丹治信 東京大学

usapi; Universal Statistical Auto- 寺村佳子 京都大学

mated Pianist Impersonator

表情付け支援部門 VirtualPhilharmony 馬場隆 関西学院大学

Finale 2009 坂本有紀 (株)イーフロンティア

フリー部門 あたりレゾネータ 村主大輔 関西学院大学

Band-in-a-box 坂本有紀 (株)イーフロンティア

トウェアFinale 2009(株式会社イーフロンティア)10)が,フリー部門にはあたりレゾネータ

(村主ら)とBand-in-a-box(株式会社イーフロンティア)11)がそれぞれ参加した.

2および表3に,自律システム部門賞,Rendering賞の聴き比べ投票結果を示す.投票 得点は,表情の豊かさ,演奏の自然さに対する5段階評価を評定別に人数計でかけたものを 曲別に求め,それを合算したものである.そのうえで,得点の高いほうから順位づけを行っ た.ただし,表情付け支援部門が新曲課題1点だけの生成であるのに対し,自律システム部 門では3作品が得票対象であり,さらにショパン,モーツァルトに関してはともすれば事 前の作り込みが可能であること,新曲課題に比べて楽曲の長さが短いことなどを踏まえて,

各曲の得票に対し以下の重みを付けた.

自律部門:新曲課題×4 +ショパン×1 +モーツァルト×1 支援部門:新曲課題×6

投票の結果,自律システム部門では,総合得点においてConBreO(丹治)が第一位とな り,以下,usapi,Kagurame Phase-IIと続いた.昨年のICMPC-Renconでは学習型のシステ ムが上位を占める結果となったが,今回は,学習型のusapi,事例型のKagurameを押さえ,

遺伝的プログラミングを用いて演奏ルールの最適化を図ったConBreOが高得点を得た.た だし,モーツァルト作品に関しては,usapi,KagurameがいずれもConBreOの得票を上回っ ている.

自律システム部門では,システムによって演奏生成にかかる所要時間に大きな幅がある.

また,未知楽曲楽譜の表情付けを行う場合,システムによっては,未対処の問題に初めて遭

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IPSJ SIG Technical Report

2 自律システム部門賞の投票結果.有効投票数:44票.

Table 2 Voting result of EC-Rencon Award

順位 システム名 得点 総合点

新曲課題 ショパン モーツァルト

1 ConBreO 291 333 268 892

2 usapi 283 214 310 807

3 Kagurame Phase-II 224 165 307 696

3 Rendering賞の投票結果.有効投票数:44票.

Table 3 Voting result of EC-Rencon Rendering Award

順位 システム名 得点 総合点

表情の豊かさ 演奏の自然さ

1 Finale 2009 203 201 404

2 VirtualPhilharmony 202 185 387

3 ConBreO 156 135 291

遇するというような事態も起こりえる.たとえば野池のCOWのように,5分後には課題3 曲すべての生成を終了できたシステムがある一方で,Kagrame Phase-III(alpha)は生成処理 過程において発生したエラーを時間内に解消することができず,新曲課題を棄権することと なった.

Rendering賞については,表情付け支援部門のFinale2009とVirtualPhilharmonyが自律シ ステムの得票を大きく引き離して上位を占めた.表情付け支援部門のシステムはいずれも,

人間による演奏の作りこみが入念になされるほど生成演奏の質が向上するタイプのもので ある.当日発表の新曲を40分間で作りこむという生成条件は,人間の作業者にとって厳し いものであるが,Finale1は,「バロック風」などある程度パラメータ化された自働表情付け 機能を使って楽譜ベースで演奏表情を作り,VirtualPhilharmonyは赤外線センサを取り付け た指揮棒を振って表情付けを行うものであり,演奏披露時に馬場自身による指揮を交えての 演奏を行った.今回,支援部門が上位に来た理由の一つとして,支援部門の参加者が演奏記 号に対する考慮も入れて表情付けを行っていたのに対し,自律部門のシステムが多くが演奏 記号よりも音の並びを重視したアプローチを採用していたことが考えられる.

また,技術賞にはFinale2009が,村尾賞はConBreOが選出された.

1楽譜制作を主目的としたソフトウェアであるが,シーケンサーソフトウェアと同様にMIDIレベルで各音の演奏 情報を編集することが可能となっている.

7 Rencon Awards表彰式.左から順に,橋田,坂本(Finale 2009),村尾,丹治(ConBreO)(敬称略)

3. EC-Rencon実施上の考慮点と展望

3.1 Rencon実施における環境整備

演奏の表情付け研究は,もともとは,音楽における人工知能領域の研究としてスタートし た.したがって,その評価イベントRenconは,今までは,音楽や人工知能の会議に連携す る形で実施されてきた.ところが,「初音ミク」の大ヒットもあり,現在,表情付けは音楽 領域にとどまらず,エンタテインメントの文脈においてもとらえられ始めている.そこで,

今回のEC-Renconは,エンタテインメント系の会議での連携イベントとして実施すること

とした.また,今回は,初回の2002年以来となる東京での日本語開催となった.

EC-Renconでは,前回のICMPC-Renconに引き続き,自律システム部門,市販ソフトウェ アも参加可能な表情付け支援部門を設けた.また,ピアノ演奏に限らず幅広く音楽生成を扱 う研究システムやソフトウェアの参加を促したところ,フリー部門では,歌唱における「あ たり」を表現するシステムや,コード入力による演奏生成を行うシステムが加わった.

また,我々は,演奏システムの参加を促すための環境整備の一環として,演奏表情データ ベースCrestMusePEDB212)の配付を行っている.

今後も引き続き,多方面の分野で表情付け研究に取り組む研究者,企業らのRencon参加 を促していく予定である.

3.2 インターネット投票システムの導入

前回のICMPC-Renconから,聴き比べの投票をインターネット上でもできるように,Rencon

2http://www.crestmuse.jp/pedb/

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IPSJ SIG Technical Report

実施中に投票用サイトを公開し,利用を促している1

今回は会場に無線LANを設置し,PCまたは携帯端末を持っている人については演奏を 聴いたその場でオンライン入力をしてもらい,投票用紙への記入と合わせての投票作業を 行った.

EC2009の参加者にはセッション中パソコンを持ち込んで聴講する参加者が多いため,そ

れなりに多数のアクセスがあると見込まれた.しかしながら,結果としてはインターネット アクセス数と投票用紙による投票はほぼ半々であり,とくに携帯端末については「パケット 代を消費したくない」という声も寄せられた.投票サイトそのものについては,前年に引き

続きRenconにおける演奏評価方法の新しい形態のひとつとして有効であるというコメント

も寄せられており,効率的な投票方法の検討を今後深めていく必要がある.

3.3 エンタテインメント性の導入

EC-Renconでは,エンターテイメントイベントとして「観客に見せる」ことに重点を置

き,当日その場で演奏が生成されている様子を見せたり,生成処理の前後で適宜,システム 参加者らが登壇する機会を設けたり,演奏再生に自動ピアノを用いることで,その場でリア ルに演奏されている様子も伝えた.

今回の演出では,誰が開発したシステムによる演奏かは観客(評定者)にも判ってしま う.この手法ではブライド評価にならないというマイナス面もあるが,公開イベントとして の実施を考えた場合,ドラマ性も不可欠である.実際,今回の試行によって,評定者数自体 がイベントを楽しみ,Rencon自体のPRになるというプラス面が確認された.今後,イベ ントとしての「演出」についてもさらなる検討を進めて行きたい.

4. ま と め

本稿では,演奏表情付けコンテストEC-Renconの開催について報告した.人間による手 作業の修正を極力排除した自律システム部門と,人間による演奏表情付けを主目的としたシ ステムのための表情付け支援部門,フリー部門を設け,当日発表の新曲に制限時間つきで演 奏生成させるという条件のもとでコンテストを実施した.また,エンターテイメントイベン トとして「観客に見せる」ことに重点を置き,演奏生成処理の様子や制作者らへのインタ ビュー,自動ピアノでの再生といった,会場での演出についての試みも実施した.さらに,

インターネット投票システムを導入し,当日やその後の継続的な演奏評価を実施するための

1http://www.renconmusic.org/rencon2009/

初期的な枠組みを提示した.

Renconはこれまで,ほぼ年1回のペースで国際会議をまわってきたが,今後は,各年程

度で国際会議での開催を企画しつつ,国内シンポジウムの開催を強化していくことを予定し ている.現在,来年2010年度は音情研夏のシンポジウム,2011年にKTH(スウェーデン)

でのRencon開催に向け,準備を進めている.詳細は順次Renconホームページにて案内す

るので参照されたい.

謝辞 本研究は,科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業CREST「デジタルメディア

領域」CrestMuseプロジェクト,ヤマハ株式会社,株式会社イーフロンティアの支援を受け

て実施されました.また,Rencon開催にあたり,EC2009実行委員会,村尾忠廣氏,東京大 学嵯峨山研究室はじめ,多くの方に多大なるご協力をいただきました.ここに感謝いたし ます.

参 考 文 献

1) 平賀瑠美,平田圭二,片寄晴弘:蓮根:めざせ世界一のピアニスト,情報処理,Vol.43, No.2, pp.136–141 (2002).

2) 片寄晴弘,平田圭二,平賀瑠美:IJCAI-RENCONの報告と課題,情報処理学会研究報 告音楽情報科学2003-MUS-52,pp.149–152 (2003).

3) 野池賢二,橋田光代,平田圭二,片寄晴弘,平賀瑠美:NIME04 RENCON開催報告と 次回への課題,情報処理学会研究報告 音楽情報科学2005-MUS-59,pp.71–76 (2005).

4) 橋田光代,片寄晴弘,平田圭二:Renconの現状報告とICMPC-Rencon 08の実施計 画について,情報処理学会研究報告音楽情報科学2007-MUS-71,Vol.2008, pp.67–70 (2007).

5) 橋田光代,片寄晴弘,平田圭二,北原鉄朗,鈴木健嗣:演奏表情付けコンテストICMPC- Rencon開催報告,情報処理学会研究報告 音楽情報科学2008-MUS-78 (2008).

6) COW: COPER on the Web: http://noike.info/kenzi/cgi-bin/cow/.

7) usapi: http://hawaii.sys.i.kyoto-u.ac.jp/keiko-te/usapi.html.

8) ConBreO: http://www.iba.t.u-tokyo.ac.jp/tanji/software/ConBreO.html.

9) 馬場 隆,橋田光代,片寄晴弘:Wiiリモコンを用いた指揮システム“VirtualPhilhar- mony”,エンターテインメントコンピューティング(EC)2009予稿集,pp.91–94 (2009).

10) Finale: http://music.e-frontier.co.jp/product/finale/.

11) : Band-in-a-Box: http://music.e-frontier.co.jp/product/biabwin/.

12) 北原鉄朗片寄晴弘橋田光代:ピアノ名演奏の演奏表現情報と音楽構造情報を対象とし た音楽演奏表情データベースCrestMusePEDBの構築,情報処理学会論文誌,Vol.50, No.3, pp.1090–1099 (2009).

Fig. 1 Program of EC-Rencon
Fig. 5 The new set piece composed by Tadahiro Murao
図 6 EC-Rencon 課題曲 B: ショパン(左),モーツァルト(右)のピアノ曲より冒頭 15 秒程度分
表 2 自律システム部門賞の投票結果.有効投票数:44 票.

参照

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