• 検索結果がありません。

水準と比幌的関連づけ-

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "水準と比幌的関連づけ-"

Copied!
109
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)2015年度. 博士論文. 社交不安障害の情動刺激に対する情報処理特性一覚醒 水準と比幌的関連づけ‑. 指導教授 研. 究. 人久保. 科. 街亜. 文学研究科. 専. 攻. 心理学専攻. 氏. 名. 石川健太. 教授.

(2) 目次 はじめに. 第一章 2.1. 社交不安障害の特性. 社交不安障害の疫学‥ . ‥. ‥. 3. ‥. ‥. ‥. 2.2. 社交不安障害と他の精神疾患との関連‥.. 2.3. ネガティブな情報処理と社交不安のモデル. 2.4. ネガティブ情報としての表情と視線方向. 2.5. 社交不安障害と覚醒水準. ‥ . ‥. 2.6. 社交不安障害とポジティブ情報‥. 2.7. 比峰的関連づけと左右人脳半球機能.. 2.8. 本研究の目的‥. 第二章. ‥. ‥. ‥. ‥. 6. ‥ .. 6. ‥.‥‥. 7. ‥.. 12 13. ‥. ‥. 15. ‥ .. 17 21. 日.. 研究1の目的と意義一覚醒水準の観点からネガティ. ブ情報に対する特性を捉える‑ 3.1. 実験1. 26. 社交不安が主観的な時間体験に与える効果:表情と 6 2. 視線方向からの検討‥ .‥ 方法.. ‥. .. ‥. ‥. 3.2.3. 実験装置. ‥. 3.2.4. 刺激. ‥. ‥. ‥. ‥. ‥. ‥. ‥. ‥ . ‥. ‥. ‥. ‥. 9 2. 質問紙‥. ‥. ‥. 8 2. 3.2.2. ‥. 8 2. 3.2.1参加者‥. ‥. 8 2. 3.2. ‥. ‥. ‥ . ‥ . ‥. ‥. ‥. ‥. ‥ . ‥. ‥. 第三章. 研究2の目的と意義一比職的関連づけと左右大脳機. 能半球‑ 4.1. 37. 社交不安障害のポジティブ,ネガティブ情報の処理の再考:. 比略的関連づけと左右大脳半球機能に着目して. 4.2. 研究2. 4. 考察.. 3. 3,4. 1. 結果.. 3. 3.3. 0 3. 手続き‥ .. 0 3. 3.2.5. ‥. ‥. 比倫的関連づけと左右大脳半球機能..

(3) 4.3. 実験2. 社交不安が表情と背景色の比晩的関連づけに与え 2 4. る効果‥. ‥. .. ‥. ‥. .. ‥. . 5 4. 4.4. ‥. ‥. 4.4.1質問紙‥. ‥. ‥. 5 4. 方法. ‥. ‥. ‥. ‥ 5 4. 実験装置. 4.4.3. 刺激. ‥. ‥ 5 4. 4.4.2. ‥ 7 4. 4.4.4. 手続き. 8 4. 4.5. 4.6. 4.7. 結果. ‥. 考察. ‥. ‥. 実験3. ‥. ‥. ‥. .. ‥. ‥. ‥. ‥. ‥. ‥. .. .. ‥. ‥. .. ‥. ‥. .. .. .. 50. 社交不安が表情と服の明るさの比境的関連づけに 2 5. 与える効果 方法. ‥. ‥ .. ‥ . ‥. 実験装置. 4.8.4. 刺激. ‥ .. ‥. ‥. ‥. ‥ .. 4 5. 4.8.3. ‥. 4 5. 質問紙.. ‥. 4 5. 4.8.2. ‥. 3 5. 4.8.1参加者‥. ‥. 5 5. 4.8.5. ‥. 3 5. 4.8. ‥. 手続き.. 7 5. 4.9. 4.10. 結果. ‥ .. 考察. 60. ‥ .. 4.11実験4. 社交不安が文字と明るさの比喰的関連づけに与え 3 6. る効果‥ ‥ .. 4.13. 方法. ‥ .. 4 6. 日的. 3 6. 4.12. 4 6. 4.13.1参加者. 4 6. 4.13.2質問紙. 5 6. 4.13.3実験装置. ‥. ‥. ‥. ‥ . 5 6. 4.13.4刺激. ‥ 5 6. 4.13.5手続き. ‥ .. 4.15. 考察. ‥ .. 9 6. 結果. 5 6. 4.14. 5. 研究2における全体考察. 第四章. 総合考察. ‥. 3 7. 4.16.

(4) 5 7. 研究1のまとめ‥. 5.2. 研究2のまとめ‥. ‥. ‥ . ‥ . ‥. ‥. ‥. ‥ . ‥. ‥. ‥ 5 7. 5.1. ‥. ‥. ‥. ‥ . ‥ . ‥. ‥. ‥. ‥ . 8 7. ‥‥.‥ .. 5.4. 本研究結果における社交不安障害の情報処理モデル... 5.5. 本研究の社交不安の情報処理モデルと先行研究との比較. 5.5.3. 左右半球差に関わる先行研究との比較. 5.6 5.7. 本研究における課題と今後の展望. ‥ 結論. 5.8. 要旨. ‥. 5.9. 引用文献. ‥‥‥‥ ‥. ‥. ‥. ‥. ‥.. ‥ . ‥. ‥. ‥. ‥.. ‥‥‥ .‥. ‥ . ‥. ‥ . ‥. 6 8. ポジティブ情報に関わる先行研究との比較‥‥. 5 8. 5.5.2. ‥ .. 4 8. ‥. 4 8. 本研究結果の意義. 2 8. 5.3. 5.5.1ネガティブ情報に関わる先行研究との比較‥. Lt\:). ‥.

(5) 1. はじめに 我々は常に他者からの評価を受けながら生活している。乳幼児期では. 両親や兄弟の評価を,学童期では学校や友人からの評価を受ける。こう した他者からの評価は,その形態を変えつつも一生涯に渡って行われて いくであろう。このような他者からの評価を大別すると,ポジティブな 評価,ネガティブな評価に分けることができると考える。一般的に,他者. からポジティブな評価を与えられた際,受け手にはポジティブな感情が 生じる。反対にネガティブな評価を与えられた際は,ネガティブな感情 が生じるであろう。我々はこうした他者からの評価を受けることで,自. 分自身の感情や行動を変容させていく。しかしながら,他者からの評価 を受け手が適切に処理できなかった場合はどうであろうか。例えば,他 者から賞賛を過度に謙遜してしまったり,あるいは他者から見れば些細 な注意に対して,過度にネガティブに捉え,自分自身を否定されたかのよ うに感じてしまう場合である。このような云わば,非適応的な情報処理 が日常的に行われていた場合,我々の認知や感情,そして行動はどのよう に変化していくであろうか。 r TL‑諺. 本研究では他者からの評価に対する過敏性を主な特性とする社交不安 障害に着目し,情動刺激に対する情報処理過程を検討することが目的で ある。第一の目的として,覚醒水準の観点から,中立,ネガティブな情報. に対して,社交不安が与える影響について検討する。他者の表情はその人. の感情を表す重要な社会的信号の役割をもち,観察者に対する感情や評価 を伝える(Ekman, 1973; Darwin, 1872‥ dhman, 1986)。また,表情だけでな. く,他者の視線もまたこうした役割をもち,視線を向けられた人に対する 興味や関心を伝える(Baron‑Co虹en, 1995)。社交不安をもつ人はこうした. 社会的信号に対して,健常者とは異なる情報処理を行うことが報告されて. 1.

(6) きた(石川・岡村・大久保, 2012; Roelofs, Putman, Schouten, Lange, Volman,. & Rinck, 2010; Schmitz, Scheel, Rigon, Gross, 良 Blechert, 2012)。例えば,怒. り顔や恐れ顔に対して過度に注意を向けるネガティブな注意バイアス,. ネガティブや暖味な情報をよりネガティブ解釈する解釈バイアスなど がある(Horley, Williams7 Gonsalvez7 良 Cordon, 2004;石川他2012; Mansell,. Clark, Ehlers, & Chen, 1999; Mogg, Philippot, & Bradley, 2004; Roelofs et a1., 2010; Schmitzetal・, 2012)o. さらに,先行研究では,社交不安患者の覚醒. 水準が上昇することで,他者評価と自己評価の不一致を促進し,自己に 対してネガティブな評価を行うことが示唆された(Wild,Clark,Ehlers,良. McManus,2008).ただし,こうした覚醒水準の上昇によるネガティブなバ. イアス‑の影響が,他者の表情や視線方向などの外的手がかりに対して, どういった要因が関わるかは十分に検討されていない。こうした覚醒水. 準の上昇による影響は,ネガティブな情報にのみ選択的に生じるのであ ろうか。社交不安をもつ人とそうではない人では,他者の表情や視線方 向に対する印象が異なる(石川他, 2012; Roelofset a1., 2010; Schmitz etal.,. 2012)。したがって,本来は中立的な情報であっても,その情報が自分自. 身に向けられているのか,あるいは別のものに向けられているかによっ て,ネガティブと捉える可能性があるだろう。そこで研究1では,表情と. 視線方向を操作することによって,覚醒水準が中立的,ネガティブな情報. に対する情報処理特性を検討する。 中立,ネガティブ情報‑の情報処理特性だけでなく,比聡的な関連づけ と左右大脳半球機能に着目することで,ポジティブ,ネガティブな情報に. 対する情報処理特性を検討することが,本研究の第二の目的である。先 行研究では社交不安をもつ人は,ネガティブな情報‑の注意や解釈バイ アスなどが検討されてきた(Horley, Williams, Gonsalvez, 良 Cordon, 2003 et. 2.

(7) a1., 2004;石川他, 2012; Mansell et a1., 1999; Mogg et a1., 2004; Roelofs et a1.,. 2010;Schmitzetal・,2012)。しかしながら,こうした情報処理バイアスはネ. ガティブな情報に対してのみ生じるものであろうか。日常生活において は,他者からの評価はネガティブなものだけでなく,ポジティブな評価も. 行われる。他者からの評価に対する過敏性という社交不安障害の特性を 考慮すると,ネガティブな情報にのみ焦点をあてるだけでは,社交不安障 害の情報処理特性は十分に明らかにできないと考える。こうした考えを・ 裏づけるように,近年の研究において,社交不安をもつ人はポジティブ. な情報に対する恐れ,ポジティブな出来事に対する過小評価,ポジティ ブな感情体験の低下など,ポジティブな情報に対して,健常者とは異な る情報処理を行うことが示唆されてきた(Alden, Mellings & Laposa, 2004; Kashdan, 2007; Kashdan & Steger, 2006; Heimberg, Brozovich, 良 Rapee, 2010;. Weeks, Heimberg, Rodebaugh7 良 Norton, 2008; Wong, Morrison, Heimberg,. Goldin,&Gross,2014)。こうしたポジティブ情報に対する情報処理に対し. て,ネガティブな情報に特に焦点をあてた従来の社交不安のモデルでは, 十分な説明を行うことができない(Beck, 1976; Clark 良 Wells, 1995; Rapee. &Heimberg,1997)。そこで本稿では,ネガティブな情報だけでなく,ポジ. ティブな情報にも焦点をあてることで,社交不安障害の情報処理特性を 包括的な視点から検討し,新たな情報処理モデルを構築する。. 2. 第一章. 社交不安障害の特性. 我々が日常生活を送るなかで,不安を感じることなく生活していくこ. とはほとんどないだろう。例えば,初めて会った人と会話をしなければ. ならない時や,大勢の前で発表を行わなければならない時など,誰しもが ある種の不安を感じるようになる。ただし,こうした社会的状況におい. 3.

(8) て,他者からの評価に対して強い不安や恐怖を感じ,またそうした状況を 回避し続けることで,日常生活に支障が生じるようになると,それは社 交不安障害と呼ばれるようになる(American Psychiatric Association; APA, 2013)0 APAが発行するthe Fi托h Edition of the Diagnostic and Statistical Manual. ofMentalDisorders(DSM‑5)によると,社交不安とは,社会的状況において. 他者からの注目や否定的な評価を受けることに対して,強い不安や恐怖を 抱く精神疾患である(APA,2013)。社交不安障害の診断基準としては,社. 会生活場面で生じる顕著な不安や恐怖,あるいは他者からの評価に対す る過敏性などが挙げられる。こうした症状によって日常生活に支障をき たし,且つ,症状が6ヶ月以上続くと社交不安障害となる。 Diagnosticand ノ. statistical manual of mental disorders text revision(DSM‑ⅠⅤ‑TR)からDSM‑5. ‑の改訂では,診断項目に他人に迷惑をかける事を恐れるという症状が 新たに加わった(APA,2013)。この症状は従来の対人恐怖に当てはまるも. のであり,日本に特有な精神疾患と考えられていた。こうした診断項目 の追加が行われた背景には,DSM‑5では日本における対人恐怖など,特定. の文化で生じる社交不安に類似した精神疾患を,社交不安という枠組み から捉え直したことが関係する。こうした診断項目の変更によって,今. 後,対人恐怖は社交不安障害として,理解されていく可能性があるだろ ラ.⊃. さらに, DSM‑ⅠⅤ‑TRでは不安症状が喚起される社会的状況に応じて. 限局饗,非全般型,全般型と亜系として分類されていた(APA,2000)。こ. れは不安や恐怖が起こる特定の状況に対する恐れということを強調する 分類であった。一方, DSM‑5では行為状況のみのタイプを亜型とした変 更が行われた(APA, 2013)。. 4.

(9) (肘l巨Cl T to岩‑00Zdll∠てこム1g華・蛸雀W音響東男glmSG. ̀予10岩髄鞘勤撃)寂晋堀雀CO葺剖孝立寄君萱封洋二乍9‑mS(I I aln3Id. 7毒簡㌢二軍圭ニiこき勧告率(Jき二/コ鮮(4 I/i 1粟立鯛Y : ㌢本譜勃寺11. ),杏(LMTA・(朗i闇繁‑.f主. {T等琴工景凝さftt韻事(iJを̀貢卜称事餌墨一書、咋壱封辞同̀葦二主 綴. り妻,I./i製専さTJご. t姐. 闇靭(21‑ニ機転‑k観)I; L鮭ra転̀掛て′ J7‑‑17‑、/等号酬常If,f執着((,制If'. りこI.i暮tvl.脈髄ンて‑ ‑1:‑.;エ韻事(Jnrを. ‑i J'JTJt事出目l藍難球開封考̀墓塗望/,,:、二\′. 昔;一字毎I t'盗難軸畠([・別封教珂. ●善二上. 闇麓'Ⅰ. 、 l^iZT'草子ユー(lj t奉. (2才=き常肇朝卑(//^鞘壷:‑;:撒鯛妾を寄't27二日管輩'A l頓連判311適う養親墨静河. ◆孝二上̀脇霞、H. I cIz等'=.'くi湖(J}勢研く17i事艶I,'基.'*甘利 7・f'‑・卜,'17、1̲t隼̀1鴬軌yZ等夷̀=j葦l・:!修三‑勤寡={'妾写二沌串;新報ギLt畢伺墨、 tt(i,守. 一葦.tl. 髄藁■!). 、1第I TJf巨9号‑言二は喪‑‡LA蔀潤‡小.tt㌢(ギ、#,:LJ ̀淑藁'A. L薄(享ナンを二潮音ら学1沌しか等墨(lLTl壱〔ゝ筆跡/(,'劫葦(‑揖t,'i‑'埋鰍望精等:柁(Ij=ztT ̀墨葦:i,藻鋤藁La. '(ly‑fl.劃鞍十卜等震{‑3さ'f三石空^封寺葦二hi‑強敵,I.準岩\沌'4.!Jt i r;,‑fL敢回章J埋麿墨請等凝,Jトを.a. 't 'i督!Jif,lニ(2,咋貢寵葦ニー.青. さT,、'苺,ay','蕃呈●(之It:‑'事̀J封軽̀ :\(/+fミril ̀ヰ=帝専鄭拳̀ :禦封為:‑i ・封殺. 墨蔓鰍1璃1,‑i+. '一阜・=評引tg蔓孝二lふ剥琶二王貨.:17 1/キ妄昔;埋勧岩苛等崩く̲lIを̀〇. (六 17,/Fi y才も尋{:3幸恵・静粛J =卜零墨̀ (守=]′iiT要義蜘・研対';・t'T'Y判. つ㌢ネギ・IJ,+/〜/^Jl71'り1t,'長沼壬に回,:. 串空̀ (/1 =j :l瀞〉 ′1tfyfJi:7血̀ir¥TJiJi) 'cz 'Lぞ藁蔓(.nCz'll.草笛:iL違さlr'養量;1+,葦=l (‑ET頓与技塾{C,Ir/目'百. 、日コ1,,(さ二響羊.局.塞く!?YY ̀ lui '=葦二は抱、 Ht E緋わ行(/瑞,轟凶封孝二上こき貨. (":;Y、.1三軍軍・室言責・零.)*(相磯(,,3Y聯/t・L. 等!蔓鰍I)h'.ij・. 埋鮪嘩与拍;・こ̲灘\/ ◆埋魯:\托・寺肖、ナ′ i(腰覇rl,〜. 々、石u昌/ ' ミ韓(1苛等弓至宝等Ii些舘挙を㌢糠̀ユ1 ='旭. <(2'官二日てnFr2i・・岩り(之{‑Ji'(/ I Sf,・1'埋暫葦. (/㍗(/'I壱̀よ葦二土・鋤簾さj暴穎rllこ宵=t̲壁掛単音等二は葦(・与,:ヰ葦=lt巻軽くJ膚葦(I;・'うー'IJ:tt (11職'Ⅴ.

(10) 2.1社交不安障害の疫学 DSM‑5によると,アメリカにおける社交不安障害の12ヶ月の有病率. はおよそ7%であり,男女差では女性の方が男性よりもやや多い(APA, 2013)。ただし,臨床群においては女性よりも男性患者の数が多く,こうし. たちがいには,社会的な役割に起因する男性の援助要請行動が関わる可 能性が指摘された(APA,2013)。また,社交不安障害の有病率はアメリカ. と比較すると,日本や韓国,中国などのアジア圏の方が低いと報告されて きた(APA, 2013)0 World Mental Health (WHO)が2004年に世界各国と共 同で行った調査(The WHO World Mental Health Survey Consortium, 2004). によると,アメリカにおける12ヶ月有病率は6.8%であった。一方,日本. における12ヶ月有病率は0.7%という結果であった。こうした有病率のち. がいについては,アメリカと他の国における有効回答率のちがいや文化 差が影響しているという指摘がある。例えば,アメリカにおける調査の 回答率は70.9%であったのに対して,日本では55.1%であった。自宅‑の. 訪問面接という調査方法も,精神疾患を抱える家族にとっては負担が大 きいことが予測される。 WHOはこう. した結果について,標本の偏りや欧. 米先進諸国で発展した精神疾患の症状の概念が,他の文化では馴染みが 薄いことなどの問題点を挙げ,国際比較としての目的を果たしたかにつ いては,疑問の余地があると結論づけた。. 2.2. 社交不安障害と他の精神疾患との関連. 社交不安障害は全般性不安障害やパニック障害など他の不安障害だ けでなく,うつ病や物質関連障害との関連が指摘されてきた(Brown, Campbell, Lehman, Grishman, & Mancill, 2001; Grant, Hasin, Blanco, Stinson, Chou, Goldstein, Dawson, Smith, Saha, 良 Huang, 2005; Ruscio, Brown, Chin,. 6.

(11) Sareen, Stein, & Kessler, 2008)o例えば, Grant etal・(2005)が行った非臨床. アナログ研究では,社交不安傾向が高い人のおよそ38%の人が特定の恐 怖症を, 56%の人が気分障害を併発していた。気分障害のなかでも,大う つ病を併発している人は34%と高い傾向があったo. 一方,臨床群を対象. とした調査では気分障害との併発率は72%であり,大うつ病では60%と 非常に高いことが示唆された(Browneta1.,2001)o. これらの研究が示唆す. るように,社交不安障害は他の精神疾患との併発率が高い。そのため,社. 交不安障害の情報処理メカニズムを解明することは,他の精神疾患との. 関連や介入方法を検討する上でも非常に重要な役割をもつと考える。. 2,3. ネガティブな情報処理と社交不安のモデル. これまで社交不安障害の症状,疫学,あるいは他の精神疾患との関連に ついて述べた。では,社交不安障害における心理特性については,どのよ. うなモデルがあるのだろうか。従来の社交不安障害のモデルでは,ネガ. ティブな情報に対する注意や解釈バイアスに焦点があてられてきた。本 節では,既存の社交不安障害のモデルを概観し,社交不安障害のネガティ ブな情報‑のバイアスを検討していく。 ・:‑∋. 社交不安障害においては,いくつかの代表的なモデルがある。これらに. 共通する特徴として挙げられるものが,ネガティブな情報に対するバイ アスである(Beck, 1976; Clark 良 Wells, 1995; Rapee 良 Heimberg, 1997)。例え. ば, Beck(1976)のモデルでは社交不安障害の特性としてネガティブなス キーマや自動思考が関係していると述べた. Clark,Beck,&Alford (1999). によるとスキーマには大きく分けて(1)単純スキーマ, (2)媒介信念と仮. 定, (3)中核的信念の3つがあるという。単純スキーマとは環境の物理的. 特性,日常活動の実質的管理,精神症状に一切またはほとんど影響を与.

(12) えないと考えられるルールである。例えば, "社会的規則を守る"などが. これに当たる。媒介信念と仮定とは自己評価や情動調整に影響を与える if‑then型の表現など条件つきのルールであり, "大金を手に入れたら幸 せになれる"などがこれにあたる(Clarketa1.,1999)。中核的信念とは自己. 評価に関連した周囲の情報を解釈するための包括的かつ絶対的ルールで ある(Clarketal・,1999)。例えば, "私は人から信用される"や"私は他の人. を愛することができる"などがこれにあたる(Clarketa1.,1999)。自動思考. とは,行動や感情には関係なく自動的に浮かんでくる思考である。日常生 活の中で,私たちは様々な思考を廻らせているが,それら全ての思考が意 識に上がる訳ではない。自動思考はそう. した意識下にあったものが,何. かの拍子に意識上‑と上がってくるものとされている(Clarketa1.,1999)0. Beck (1976)は社交不安障害の特性として,これらのスキーマや自動思. 考が,ネガティブな形で形成されることを指摘した。例えば,社交不安を. もつ人が,過去にスピーチ場面など,社会的場面において失敗した経験が あった場合,ネガティブな体験として記憶の中に残り続ける。その後,再 び同じような状況に遭遇した際に,その状況とスキーマと照らし合わせ る。そして,同じような失敗をするかもしれないというネガティブな考 えが浮かび,不安に陥るとBeck(1976)は考えた。このようにして生じた. 不安は,自動思考によって強化され,社会的状況の回避に繋がる。認知行 動療法における社交不安障害‑の介入は, Beck(1976)のモデルに基づく. ものであり,ネガティブなスキーマや自動思考の修正に焦点を当てられ てきた。. Clark&Wells(1995)のモデルにおいても,身体症状やイメージなど,自. 分自身の内的な状態に対する注意やネガティブな認知が,社交不安障害 の特性であると述べた(Figure2)。このモデルでは,社交不安をもつ人は. 8.

(13) Figure 2. Clark 良 Wells (1995)のモデ/レ(Clark 良 Wells, 1995, P・ 405,. Figure 18.1を基に筆者が作図). 社会的状況に遭遇した際に,赤面や発汗,四肢の震えなどの身体症状に対 して注意を向けると仮定している。この時,他者からは知覚できないよ. うな僅かな身体症状であったとしても,社交不安をもつ人はその身体症. 状を過度に評価し,自身が他者からネガティブな評価を受けていると推 測する。この自己注目やネガティブな認知によって,社会的状況に対す る不安や回避行動が強化されるのである。 Clark&Wells(1995)では,自己. 注目やネガティブな認知,そして,それに伴う回避行動は社交不安の重要 な特性であり,不安症状の維持要因として考えた。 一方, Rapee&Heimberg (1997)のモデルでは社交不安障害の特性とし. て,身体症状など内的な手がかりだけでなく,社会的状況における外的な. 9.

(14) 手がかりに対する注意についても言及した(Figure3)0 Rapee&Heimberg. Perceived audience ‑ ‑. 顎i. 上 智. iZS. Preferential. alrocation of MentaE attentional. resources. 甚. 輔. of. Representation. self. as. seen. Perceived. internal. cues. 〆♂轡byaudgience. External indicators. of negative. i. evaluation. Comparison of mental representation. of self as seen by audience with ‑藁山女V・@. appraisa( of audiencels expected standard. judgment of probabHity and cDnSequenCe Of negative. evaruation from audience. 産:ヨE遷幸ヨ玉 Behavioral. Figure 3. Cognitive. Symptoms. Symptoms. of. of. anxiety. anxiety. Physica一. symptoms of. anxiety. Rapee 良 Heimberg (1997)のモデ′レ(Rapee 良 Heimberg,. 1997, P・ 743, Figure lを基に筆者が作図). (1997)によると,社交不安をもつ人はスピーチ場面などの社会的状況にお. いて,聴衆の表情や態度のなかにあるネガティブな情幸田こ対して注意を 向ける。そして,自己評価と外的な手がかりを比較し,聴衆からネガティ. ブな評価を受けていることを過度に見積もる。こうした聴衆からのネガ ティブな評価を受けることで,その後,どのような結果が生じるのかを予. 測し,不安や恐れなどの認知的症状や四肢の震え,赤面など身体症状が 生じる。社交不安をもつ人は,これらの症状を意識することによって,さ. 10.

(15) らに聴衆からのネガティブな評価を予測する結果につながる。 Rapee& Heimberg(1997)はこうしたネガティブな情報に対するバイアスは,社交. 不安障害の重要な維持要因の一つであると述べた。 このようにBeck (1976), Clark 良 Wells (1995)やRapee 良 Heimberg (1997). など従来の社交不安障害のモデルでは,社交不安をもつ人のネガティブ な情報に対する情報処理バイアスが注目されてきた。これらのモデルを 支持するように,社交不安の測定に用いられる質問紙では,他者からの否. 定的な評価に対する不安や回避行動などを測る項目が含まれる(金井・笹 川・陳・鈴木・嶋田・坂野, 2004; Leafy, 1983; Mattick& Clarke, 1998;笹川・. 金井・村中・鈴木・嶋田・坂野,2004)。さらに実験的な手続きを用いた研究. においても,社交不安をもつ人にとって,不安や恐怖を喚起するようなネ. ガティブな表情に対する,注意バイアスや解釈バイアスなどが報告され てきた(Amin, Foa, 良 Coles, 1998; Horley, et a1., 2003; Chen, Ehlers, Clark, 良. Mansell, 2002;石川他, 2012; Mansell et a1., 1999; Mogg et a1., 2004; Roelofs et. a1., 2010; Schmitz et al・, 2012; Stopa 良 Clark, 2000)。他者の表情はその人の. 感情を表す重要な社会的信号の役割をもち,表情のなかでも脅威を表わ す感情は人間の進化において重要な手がかりの一つである(Darwin, 1872:. dhman,1986).ネガティブな表情は,他者の脅威行動を直接的に示すもの であり,様々な文化圏で確認されてきた(Ekman,1973)。これらの表情に. 対して,ネガティブなバイアスをもつことは,社交不安の他者からのネガ. ティブな評価を恐れるという特性と一致すると考える。ただし,社交不. 安をもつ人にとって,他者からのネガティブな評価とは感情価だけでは なく,他者からの視線方向もまた重要な規定要因となることが示唆され てきた。. ll.

(16) 2.4. ネガティブ情報としての表情と視線方向. 他者の視線は,社会的信号としての重要な役割がある(Baron‑Cohen, 1995)。ただし,社交不安をもつ人は,他者とのアイコンタクトを避け,こ うした信号を適切に処理できないことが示唆された(Greist,1995)こう した報告を裏付けようにRoelofs et al. (2010)は接近一回避課題(Approach‑. AvoidanceTask:AAT)を用いて,社交不安患者と健常者で,他者の視線方. 向に対して,異なる行動傾向があることを報告した。この実験では怒り. 顔,中立顔,笑い顔の直視,あるいは左右いずれかに視線を向けた顔写真 が用いられた。実験課題は,これらの顔写真の背景色に従って,ジョイス ティックを押す,もしくは引くことを参加者に求めた。接近一回避課題で. は,ジョイスティックを押す反応は対象‑の接近行動を意味し,反対に引. く反応は対象からの回避行動を意味した。実験の結果,統制群と比べて 社交不安群は,直視の怒り顔に対して,ジョイスティックを引く反応が 速かった。一方,こうした傾向は怒り顔であっても,逸視であった場合に 生じなかった。 Roelofsetal. (2010)は社会不安をもつ人が他者の怒りを敏. 感に察知し,ネガティブな感情が自身に向けられていると判断すること で,回避行動が形成されることを示唆した。この結果は,他者の評価がネ. ガティブであると認識されるためには表情だけでなく,視線方向も重要 な役割をもつことを裏づけるものであった。 さらに, Schmitzetal・(2012)の非臨床アナログ研究では,中立的な表情. を用いた場合においても,視線方向によって,社交不安が高い人はそれを ネガティブなものとして捉えることを示唆した。この実験では事象関逮 電位(event‑related potential; ERP)と質問紙による回答から,中立顔の直. 視と逸視に対する反応のちがいを検討した。実験課題は,パソコン画面. 12.

(17) 上に提示された中立顔の直視,あるいは中立顔の逸祝が提示された後に,. 画面の左右いずれかの位置にターゲット刺激が提示された。参加者は堤 示されたターゲット刺激が,左右のどちらにあるかをできるだけ速く正 確に判断するものであった。さらに中立顔の直視と逸視に対して,どれ. く. らい不快に感じるかを評定させた。実験の結果,社交不安が高い人は. 中立顔の直視よりも,逸視に対して注意を向けると共に,より不快である と感じることが示唆された。この結果は,社交不安をもつ人にとって,本. 来はネガティブな感情価ではない表情であっても,視線方向によってネ ガティブな情報として捉えることを示唆した。. 2.5. 社交不安障害と覚醒水準. 社交不安障害のネガティブ情報に対する情報処理過程を検討する上で, 社交不安をもつ人の,覚醒水準を考慮することが必要であると考える。 例えば, Clark 良 Wells (1995)やRappe 良 Heimberg (1997)などの代表的な. 社交不安障害のモデルにおいて,社交不安をもつ人の覚醒水準は外的, 内的な手がかりの知覚に関わることが示唆されてきた。 Siess,Blechert&. Schmitz(2014)のレヴューによると,社会的状況において,社交不安が高. い人は低い人に比べて,緊張や不安など主観的な報告が強く生じること を報告した。また,こうした覚醒水準の上昇は,発汗や四肢の震え,呼吸 の増加など生理的な指標においても生じることを報告した。こうした主. 観的,生理的な覚醒水準の上昇は,社交不安における症状の維持要因の 一つであり,社交不安障害の診断基準としても重要な指標となっている (APA,2013)。また, Siessetal・ (2014)は,主観的,生理的な覚醒水準の変. 化に対して,臨床場面での応用においても重要であると指摘した。例え ば,バイオフィードバック法を用いることで,社交不安をもつ人が自分自. 13.

(18) 身の身体症状をモニターし,覚醒水準の制御を行う(Siesseta1.,2014)。あ. るいは,発汗などの身体的な覚醒に対する認知をポジティブに捉えるこ. とによって,主観的な不安や緊張を低減させるなど介入方法を指摘した (Siess et a1., 2014).. 社交不安患者の課題実行中の覚醒水準が,パフォーマンスに与える影 響を検討したものとしてWildetal. (2008)の研究がある。この実験では,. 参加者は対話課題を行う際に心拍計を装着し,対話課題終了後,偽りの フィードバックを与えることで,参加者の覚醒水準を操作した。覚醒水. 準を上げる条件では,課題実行中に感情覚醒や心拍の増加があったと偽 りのフィードバックを行った。一方,覚醒水準を下げる条件では,感情. 覚醒や心拍の増加はなかったことをフィードバックした。統制条件では,. フィードバックを行わなかった。覚醒水準の操作が終わった後,参加者 は対話課題における自身のパフォーマンスを行動チェックリストによっ. て評価した。また,対話課題における参加者のパフォーマンスは,実験協 力者が行動チェックリストによって評価した。実験の結果,社交不安患. 者は健常者と比べて,課題実行中のパフォーマンスにおける自己評価と 他者評価の不一致が大きく,自己のパフォーマンスを過小評価した。ま. た,低覚醒水準条件と比べて高覚醒水準条件では,社交不安患者,健常着 共に不安得点が高かったが,社交不安患者の方が健常者よりも不安の上 昇を過大評価した。これらの結果からWildetal. (2008)は,課題実行中の. 覚醒水準はネガティブ情報の過大評価やポジティブ情報の過小評価につ ながることを示唆した。 Wildetal・ (2008)の研究からも示唆されるように,課題実行中の覚醒水. 準の高低は,社交不安をもつ人のパフォーマンスを変化させる。ただし, Wildetal・ (2008)の研究は質問紙を用いた自己報告型のものであり,実験. 14.

(19) 的な手続きをもって,覚醒水準が社交不安をもつ人のパフォーマンスに 与える影響を検討したものは,筆者が知る限りない。. 2.6. 社交不安障害とポジティブ情報. 近年の研究では,社交不安をもつ人は,ネガティブな情報だけでなく,. ポジティブな情報に対しても,健常者とは異なる情報処理を行う可能性 が示唆されてきた(Heimberg et al・ 2010; Weeks et all, 2008; Wong et al・,. 2014)。例えば, Weeksetal. (2008)の研究では,社交不安傾向が高い大学. 生を対象として,質問紙調査を行った。この調査では,参加者に対して本. 人のパーソナリティを評価すると伝え,他者からの肯定的な評価に対す る態度を測定した。質問項目では, "私は百分の才能が他者に評価される としても,自分の才能を見せることが不快である""私は権威ある人から賞. 賛を受けることに不安を感じる"など,他者から肯定的な評価に対して, 事実である一全く事実ではないの10件法で求めるものであった(Weekset all,2008)。質問紙‑の回答後,参加者に対してパーソナリティ検査の結果 として, "あなたには才能がある"などのポジティブなフィードバックを 与えた。このフィードバックに対して,参加者は全く不快ではない(0)〜. とても不快である(100)のなかで評価した。調査の結果,社交不安が高い. 人は,他者からの肯定的な評価に対して強い恐れが高かった。また,肯定 的な評価に対する恐れと,ポジティブなフィードバックに対する評価の 間で正の相関があり,恐れが強い人はポジティブなフィードバックに対 して,強い嫌悪感を示すことが示唆された。 この結果は,その後の調査においても支持されており,社交不安をもつ. 人は他者からの肯定的,否定的な評価のいずれにおいても苦痛を感じる ことが示唆された(Heimberget al.7 2010)。また, Heimberget all (2010)は. 15.

(20) 社交不安をもつ人にとって,他者からのポジティブな評価は,後のネガ. ティブな評価を予測する因子になると述べた。 この考えを支持するものとして, Aldenetal. (2004)の研究がある。この. 研究では,社交不安患者がロールプレイを行った後に,参加者のパフォー. マンスに対して,ポジティブな側面を強調する群とネガティブな側面が なかったと教示する群を設定し,後のセッションにおける不安状態を測 定した。その結果,ネガティブな側面がなかったと教示した群よりも,ポ. ジティブな側面を教示した群の方が後のセッションでの不安が高かった。 Aldenetal・ (2004)は社交不安をもつ人にとって,ポジティブな評価を受. けることは,他者からの過度な期待として捉えると考えた。こう. した期. 待は社交不安をもつ人にとって,負担となるため,ポジティブな評価を受 けることを恐れると考えた(Aldeneta1.,2004)。このように,他者からの. ポジティブな情報は,社交不安をもつ人にとって脅威になり. うることが. 示唆される(Aldeneta1.,2004)。これらの報告を踏まえると,社交不安を. もつ人はネガティブな情報だけでなく,ポジティブな情報に対しても健 常者とは異なる情報処理をもつことが予測されるであろう。. 社交不安障害において,自己,あるいは他者のポジティブ感情に着目し た研究は少ない。そのなかでも,感情調整の観点から社交不安とポジティ ブ,ネガティブ情報の情報処理を検討したものとしてKashdan&Steger (2006)の研究があるo. この研究では経験サンプリング法を用いて, 3週間. に渡って,大学生を対象とした感情調整について検討した。その結果,. 社交不安傾向が高い人は低い人と比べて,日々のポジティブな出来事や 感情体験が少ないことが示唆された。こうした報告を裏付けるように, Kashdan(2007)が行った, 19の研究, 2976人の参加者を対象としたメタ分. 析によると,社交不安の高さとポジティブな感情体験に間に負の相関が. 16.

(21) あることが示唆された。また, Wongetal. (2014)の研究では,社交不安患. 者を対象として,自己とポジティブな情報の結びつきに着目した。Wong etal. (2014)の実験では自己カテゴリー(e.g. Ⅰ,own,my,me)と他者カテゴ リー(e.g. them, others, you, your)が不安カテゴリー(e・g・ anxious, uncertain,. nervous, fearful)や安定性カテゴリー(e.g・ calm, restful, balanced, relaxed). と,どの程度結びつくかを検討した。その結果,社交不安患者は健常者 よりも,自己カテゴリーと安定性カテゴリーとの結びつきが弱かった。 Wongetal. (2014)はこの結果から,社交不安患者は自己とポジティブな. 情報を結びつける機能が弱いことを示唆した。. 近年の社交不安障害研究では,社交不安をもつ人は他者からのネガティ ブな評価だけでなく,ポジティブな評価に対しても,恐れや不安を抱くこ とが示唆された(Heimberget al・, 2010; Weeksetal, 2008),また,ポジティ. ブな感情体験の少なさ,自己とポジティブな概念の結びつきが弱いなど,. 非適応的な感情調整を行っていることが報告された。これらの結果は,. ネガティブな情報処理に焦点を当ててきた既存の社交不安モデルでは千 分な説明ができないと考える。特にポジティブな出来事の過小評価やポ ジティブな感情体験の低下に対しては(Kashdan 良 Steger, 2006; Kashdan,. 2007),新たな枠組みから,社交不安障害のモデルを捉え直すことが必要 であると考える。. 2.7. 比職的関連づけと左右大脳半球機能. Kashdan&Steger(2006)は社交不安が高い人は,ポジティブな感情体験. が少ないことを報告した。感情体験に関わる機能として,比境的関連づ けがある(Barsalou, 1999; Meier, Robinson, 良 Clore, 2004; Lakoff& Johnson,. 1999;Okubo&Ishikawa,2011)。比峰的関連づけとは,感情などの抽象的な. 17.

(22) 概念と,外的な物理事象に対する身体体験とを比喰的に結びつけるもの である(Barsalou, 1999; Meier et a1., 2004; Lakoff & Johnson, 1999; Okubo &. Ishikawa, 2011)。抽象的な概念である感情をそれのみで捉えることは難し. い。感情を物理事象に対する身体体験に対して,比愉的に結びつけること で理解されると主張した(Lako庁&Johnson, 1999)。こうした比険的関連づ. けは,知覚一概念的な結びつきを発展させたものであるとMeiereta1.(2004) は報告した。 Meieretal.(2004)によれば,子どもは発達に伴い,抽象的な. 概念を理解する能力を獲得していくが,これには感覚運動的な表象が重 要な役割をもつと述べた。例えば,子どもが母親に抱かれた際の暖かさと いう身体感覚は,幸福という抽象的な概念と結びつく。人の発達に伴い, こうした初期の知覚一概念的な結びつきが繰り返し行われることによっ て,比晩的な関連づけ‑と発展していくと考えられる(Meieretal.,2004).. 我々の日常生活において,比晩的関連づけはいたるところで行われてい る。例えば,近年ではブラック企業という言葉を頻繁に耳にするであろ. う。ブラック企業という言葉を聞いた際には,過重労働や違法労働,低賃 金など過酷な労働環境である企業など,ネガティブなイメージをもつと 考える。これは黒という物理特性とネガティブな感情が,比喰的に結びつ けられた結果である。このような比略的関連づけは日本だけでなく,海外. の映画作品における登場人物のイメージカラーなど,普遍的に生じるもの であり,我々の日常生活のなかで重要な役割をもっている(Barsalou,1999;. Meier etal・, 2004; Lakoff& Johnson, 1999; Lakoff& Johnson, 1980; Okubo & Ishikawa, 2011)0. こうした比険的な関連づけについて, Meieretal. (2004)は実験的な手. 続きをもって,ポジティブ,ネガティブな情事鋸こ着目した研究を行った。 この研究では文字の感情価としてポジティブ語(e・g・, gentle, genius, trust),. 18.

(23) ネガティブ語(e・g., enemy, devil, danger)を用いた。 Meieret al・ (2004)はこ. れらの文字の明るさ(白色,黒色)を操作し,感情価との一致効果を比較 することで,比晩的関連づけの効果を検討した。 Meieretal. (2004)が行っ. た課題は,提示された文字の感情価がポジティブか,あるいはネガティ. ブかを参加者が判断するものであった。実験の結果,文字の感情価がポ ジティブな場合,白色で提示された条件の方が黒色で提示された条件よ り. も,正答率が高かった。一方,感情価がネガティブな場合では,このパ. ターンが逆転した。 Meieretal. (2004)は,これらの結果から,感情は外的. な物理特性と比愉的に結びつけられることを報告した。 さらに,比峰的関連づけは,左右大脳半球機能と密接に関わることも 報告されてきた(Okubo 良 Ishikawa, 2011; Schmidt 良 Seger, 2009; Winner 良. Gardner, 1977)。例えば, Winner& Gardner (1977)は左右の脳部位に対す. る損傷が比境の生成に与える影響を検討した結果,左半球と比べて右半 球の損傷が,比晩の生成を困難にすることを示唆した。また,近年の脳画. 像研究においても,右側前頭葉,側頭葉が比晩の生成に強く関わることを 報告した(Schmidt 良 Seger, 2009)。さらにOkubo 良 Ishikawa (2011)はMeier. etal.(2004)が報告した感情価と明るさの比略的関連づけに対して,左右 大脳半球機能との関連を検討した。 Okubo&Ishikawa(2011)の実験では,. Meier(2004)の実験手続きに基づいて,文字の感情価と文字の明るさを操. 作した。さらに,文字刺激の提示視野一半球を左視野一右半球,あるい. は右視野一左半球に提示することによって,感情価と明るさの比峰的関 連づけに与える効果を検討した。その結果,感情価と明るさの一致効果 は,右視野一左半球に提示した条件よりも,左視野一右半球に提示した. 条件の方が強く生じた。こうした結果は,比晩の生成と右半球の関連を 裏づけるものであり(Schmidt 良 Seger, 2009; Winner 良 Gardner, 1977),比. 19.

(24) 晩的関連づけには左右大脳半球機能が関わることが示唆された(Okubo& Ishikawa, 2011)。. 一方,多くの研究で社交不安をもつ人とそうではない人において, 異なる左右大脳半球機能をもつことが報告されてきた(Amir, Klumpp, Elias, Bedwell, Yanasak, 良 Miller, 2005; Bush, Luu, 良 Posner, 2000; David‑. son, Marshall, Tomarken, & Henriques, 2000; Etkin 良 Wager, 2007; Goldin,. Manber, Hakimi, Canli, & Gross, 2009; Phan, Fitzgerald, Nathan, & Tancer, 2006; Stein, Goldin, Sareen, Zorrilla, & Brown, 2002; Straube, Kolassa, Glauer, Mentzel, 良 Miltner, 2004; Straube, Mentzel, & Miltner, 2005; Tillfors, Fur‑. mark, Marteinsdottir, 良 Fredrikson, 2002)o. こうした左右半球の機能差は,. 社交不安をもつ人の比略的関連づけにどのような影響を与えるだろうか。. 先行研究からも示唆されるように,社交不安をもつ人は脅威刺激に注意 を向け,そうしたネガティブな情報を過度に恐れる傾向があった(石川 他, 2012; Mogg,etal・, 2004; Roelofseta1., 2010).その一方で,ポジティブな. 情報に対してはその情報を過小評価するという(Kashdan& Steger, 2006;. Wongeta1.,2014),非適応的な情報処理を行っていることが示唆されてき. た。しかし,先行研究ではこうした非適応的な情報処理が生じる背景に ついては十分に明らかにされていない。. 20.

(25) 2.8. 本研究の目的. 本研究の目的は,社交不安障害における情動刺激に対する情報処理過 程について,多角的な視点をもって捉え直すことである。そのために,ま. ず研究1では,これまで社交不安障害において注目されてきたネガティ ブな情報に対するバイアスに加え,中立的な情報に焦点をあてる。先行 研究によると,社交不安患者の覚醒水準が上昇することで,他者評価と自 己評価の不一致を促進し,自己に対してネガティブな評価を行うことが 示唆された(Wildetal・, 2008)。ただし, Wildetal. (2008)の研究は質問紙. を用いた自己報告型のものであり,実験的な手続きをもって,覚醒水準が. 社交不安をもつ人のパフォーマンスに与える影響を検討したものは筆者 が知る限りない。また, Wildetal. (2008)で示唆されたネガティブな過大. 評価は,自己評価という内的な情報に対するものである。社交不安障害 をもつ人にとって,他者からの外的な手がかりに対する評価‑の過敏性 は,不安症状の維持要因の一つである(石川他, 2012;.Roelofsetal., 2010;. Schmitzetal・,2012)o. したがって,こうした外的な情報に対して,覚醒水. 準が与える影響を検討することは,社交不安障害の情報処理特性を理解 する上で必要であると考える。. 社交不安を対象とした研究ではないものの,覚醒水準と外的な情報 に対する評価の関連については,覚醒水準と主観的な時間体験との関 連を検討した研究がある(Bar‑Haim, Kerem, Lamy, & Zakay, 2010; Droit‑. Volet, Brunot, & Niedenthal, 2004; Droit‑Volet, Mermillod, Cocenas‑Silva, & Gil, 2010; Tipples, 2008; Tipples, 2011).これらの研究では,怒りなど他者. に脅威を与えるようなネガティブな表情は,知覚者の覚醒水準を上昇さ せ,主観的な時間体験を長くすることが報告された(Bar‑Haimeta1.,2010;. 21.

(26) Droit‑Volet et al, 2004; Droit‑Volet et a1., 2010; Tipples, 2008; Tipples, 2011).. こうした主観的な時間体験の変化は内的時計モデルによって説明される (Gibbon, Church, 良 Meck, 1984)。. attentlOn l. l. Y ′'叫、ヽ clock Stage. memory Stage. deci siOn Stag e. L sholで. Figure 4. 'long'. Gibbon et al・ (1984)の内的時計モデル(Droit‑Volet, 良 Gil. (2009) P・1944 Figure lより引用. このモデルでは主観的な時間体験は(1)時計過程, (2)記憶過程, (3)決 定過程の3つの過程を経て行われることを仮定している(Figure4)。時計. 過程では,ペースメーカーから送られた信号は一時的に蓄積される。記憶. 過程では,時間の計測時の記憶が貯蔵されおり,この情報と蓄積器から送 られてきた信号と比較することで,時間の評価が行われる。このモデルで. は,蓄積器に貯蔵された信号が多ければ多いほど,時間知覚の過大評価が 生じると仮定されている。覚醒水準はペースメーカーに作用するもので あり,覚醒水準が高まるとペースメーカーから送られる信号が増大する と仮定されている(Zakay, Nitzan, 良 Glicksohn, 1983)こうした内的時計モ. 22.

(27) デルに基づいた研究では,怒り顔や恐れ顔などのネガティブな表情は,栄 醒水準を上昇させ,体内時計のペースメーカーが速まることによって主 観的な時間体験の過大評価を生じさせることを示唆した(Bar‑Haimeta1., 2010; Droit‑Volet et al, 2004; Droit‑Volet et a1., 2010; Tipples, 2008; Tipple, 2011)。. このようにネガティブな情報に対する覚醒水準の上昇は,知覚者の主 観的な時間体験を長く評価させる(Bar‑Haimet a1., 2010; Droit‑Vblet et al, 2004; Droit‑Volet et a1., 2010; Tipples, 2008; Tipples, 2011)o先行研究では,. 社交不安をもつ人は,覚醒水準の上昇によって,ネガティブな情報を過大 評価することが報告された(Wildeta1.,2008)。ただし, Wildetal. (2008). の研究は,自分自身の不安状態などの内的手がかりに対して検討したも のである。他者の表情や視線方向は,他者が自分をどのように評価して いるのかを理解する上で重要な外的な手がかりであり,ネガティブなも のだけでなく,ポジティブ,あるいは中立的な評価を観察者に与える。社. 交不安をもつ人の,ネガティブな情報に対する覚醒水準の上昇は,不安症 状の維持要因の一つである。覚醒水準がどのような要因によって上昇し,. それが情報の評価に影響を与えるかを検討することは,臨床場面におい て,症状に対する介入方法を検討する上で重要である。そのため,研究1 の目的は,表情と視線方向に着目することで,これらが覚醒水準と主観的. な時間評価に与える影響を検討する。 さらに研究2では,比晩的な関連づけと左右大脳半球機能に着目し,ポ. ジティブ,ネガティブな情報に対する情報処理特性を検討する。近年の 研究では,社交不安をもつ人はネガティブな情報に加えて,ポジティブな 情報に対して,健常者とは異なる情報処理を行うことが示唆されてきた。 (Alden et a1., 2004; Kashdan, 2007; Kashdan & Steger, 2006; Heimberg et al.,. 23.

(28) 2010; Weekset a1., 2008; Wonget al. 2014)。従来のネガティブな情事鋸こ着. 目した社交不安障害のモデルでは,こうしたポジティブ情報に対する情 報処理について,十分な説明を行うことが困難であると考える。特に,社. 交不安障害におけるポジティブに対する過小評価やポジティブ感情の低 下を検討するためには,新たな視点から捉え直すことが必要である。. 我々が自分自身の感情を理解する上で,比愉的な関連づけが重要な役 割を担っている(Barsalou, 1999; Meier etal.,2004; Lakoff& Johnson, 1999;. Okubo&Ishikawa, 2011)。比境的関連づけとは,感情などの抽象的な概念. と,外的な物理特性から生じる身体体験とを比喰的に結びつける機能で ある(Barsalou, 1999; Meier et a1., 2004; Lako庁& Johnson, 1999; Okubo &. Ishikawa,2011)。抽象的な概念である感情をそれのみで捉えることは難し. い。しかし,こうした概念と具体的な物理特性から生じる身体的な体験 とを比喰的に結びつけることで,はじめて感情は理解される(Lako庁& Johnson,1999)。こうした比愉的関連づけの機能は,左半球よりも右半球 の活性が強く関わることが報告された(Okubo&Ishikawa,2011)0 Kinsbourne (1970, 1973)の左右の大脳半球機能のモデルでは,言語処理. に対応した左半球の活性や,表情や視空間処理に対応した右半球の活性 は,注意の要因によって強く生じる場合や弱くなることを仮定した。例. えば,右半球が活性化すると表情や視空間情報に対する優位性が高まり, 左視野に対する注意が促進される。また,このモデルでは一万の半球の 活性によって,もう一方の半球の活性が抑制されることも仮定した。こ. れは例えば左半球の活性が生じることによって,右半球の活性が抑制さ れ,左視野‑の注意が向けられなくなることを意味する。このような特. 定の情報に対する一方の半球の活性は,社交不安障害においても生じて おり,社交不安をもつ人は健常者と異なり,左半球で怒りや恐れなど表. 24.

(29) 情に対する活性が強く生じることが報告された(SteinetaL,2002; Straube etal・, 2004)0 Kinsbourne (1970, 1973)のモデルに基づくと,こうした表情. に対する左半球の活性は,右半球の活性を抑制させることが考えられる。 比峰的な関連づけは左半球よりも右半球が強く関わる(Okubo&Ishikawa,. 2011)。したがって,社交不安をもつ人の左半球の活性は,右半球の活性. を抑制させることによって,比略的な関連づけの機能を低下させる可能 性があるだろう。そして,こうした左半球の活性による右半球の抑制は,. 表情など社交不安をもつ人が,特に注意を向ける情報に対して生じるこ とが考えられる。比略的な関連づけによって,我々は自分自身の感情を. 理解することができる。社交不安障害におけるポジティブな感情体験の 低下などには,こう. した比喩的な関連づけの機能が低下している可能性. があるだろう。そこで,研究2では比峰的な関連づけと左右大脳半球機能 に着目することで,ポジティブ,ネガティブな情報についての情報処理を. 検討する。. 本稿では研究1,研究2を通じて,社交不安障害における新たな情報処 理モデルを仮定することが口的である。こうした新たな情報処理モデル. リ. に基づき,社交不安障害の症状の維持要因の理解や新たな介入方法への 検討を行うことは,社交不安障害に対する基礎研究のみならず,臨床場面 ‑の応用について重要な示唆を与えるであろう。. 25.

(30) 3. 第二章. 研究1の目的と意義一覚醒水準の観点か. らネガティブ情報に対する特性を捉える‑. 3.1実験1. 社交不安が主観的な時間体験に与える効果:表情. と視線方向からの検討 実験1では,覚醒水準に焦点をあて,表情と視線方向を操作すること. によって社交不安をもつ人の主観的な時間体験について検討する。多 くの研究では,覚醒水準と主観的な時間体験との関連が示唆されてきた (Bar‑Haim et a1., 2010; Droit‑Vblet et al, 2004; Droit‑Volet et a1., 2010; Tipples, 2008;Tipples,2011)。これらの研究では,表情を操作することで,ネガティ. ブな表情が主観的な時間体験に与える効果を検討した。ただし,社交不 安をもつ人にとって,他者からの評価を認知する上では,表情と視線方向 の組み合わせが重要である(Adams 良 Kleck, 2003; Baron‑Cohen, 1995)。こ. れを裏づけるように,社交不安をもつ人は本来はネガティブな表情では ない中立顔において,視線方向が逸視であった場合は,それをネガティブ 情報として捉える(Schmitzeta1.,2012)。また,怒り顔においては,逸視よ. りも直視に対してより回避傾向を高めることが報告された(Roelofseta1., 2010)0. これまでの社交不安研究において,表情と視線方向を操作することに よって,社交不安をもつ人の主観的な時間体験を検討したものはない。主. 観的な時間体験は,社交不安障害の維持要因である覚醒水準の変化を予 測する一つの指標である。こう. した維持要因に対して,他者の表情と視. 線方向が,どのような影響を与えるかを検討することは,効果的な介入方 法の検討につながると考える。実験1の目的は,実験的な手続きを用いる. 26.

(31) ことによって,ネガティブ情報に対する主観的な時間体験を検討するこ とで,社交不安障害の非適応的な情報処理を明らかにすることである。. 先行研究では,怒り顔や恐れ顔などのネガティブな表情は,覚醒水準を 上昇させ,体内時計のペースメーカーが速まることによって,主観的な 時間体験の過大評価を生じさせることを示唆した(Bar‑Haimeta1.,2010;. Droit‑Volet et al, 2004; Droit‑Volet et all, 2010; Tipples, 2008; Tipples, 2011).. 社交不安をもつ人にとって,他者からのネガティブな評価は,表情と視線 方向の組み合わせが重要である(Roelofs et al・, 2010; Schmitz et a1., 2012)0. したがって,表情と視線方向によって生じる異なる印象は,社交不安をも. つ人の主観的な時間体験を変化させると考える。ただし,覚醒水準が主. 観的な時間体験に与える影響を検討する上で,逆向性干渉の影響を考慮 する必要があるだろう。例えば, Ogden,Wearden,&Jones(2008)の研究で. は,さまざまな刺激の提示時間を繰り返し観察することで時間判断の歪 みが生じ,より主観的な時間体験に基づくようになることが示唆された。 そのため,課題の前半と後半で,パフォーマンスの変化を検討する必要が あると考える。. これらの先行研究に基づき,研究1では,̀内的時計モデルの観点から,. 社交不安障害におけるネガティブな情報に対する情報処理特性を検討す る。先行研究に基づき,実験1では次のような仮説を立てた。社交不安を もつ人はそうではない人と異なり,中立顔の逸視,怒り顔の直視などの表 情をネガティブなものとして捉える。これらのネガティブ情報は,覚醒水 準を上昇させ,ペースメーカーからの信号を増大させる(Gibbon7Church,. &Meck,1984)。また,時間の経過とともに記憶段階に貯蔵されている基 準時間の情報が減衰するため(Ogdeneta1.,2008),時間の経過に従って,. 決定段階における覚醒水準の影響は強くなり,ネガティブ情報の過大評. 27.

(32) 価が生じやすくなると仮定する(Wildeta1.,2008)。仮説に基づくと, 1・社. 交不安をもつ人にとって中立顔の逸視は,他者からの拒絶を表わすため,. 中立顔の直視よりも逸視に対する主観的な時間体験の過大評価を行う0 2.社交不安をもつ人にとって怒り顔の直視は他者の怒りが自身に向けら れていると認知するため,怒り顔の逸祝よりも,直視に対して時間知覚の. 過大評価を行う。 3.これらネガティブ情報に対する主観的な時間体験の. 過大評価は,逆向性干渉によって,刺激の提示時間の判断が暖味になる課 題の後半で,顕著に生じるという予測を立てた。. 3.2. 方法. 3,2.1参加者. 参加者は学生59名(男性25名,女性34名)であった。参加者の平均年齢 は21.1歳,標準偏差は2.8であった。. 3.2.2. 質問紙. 参加者を社交不安高群,低群に分けるために笹川他(2004)の日本語版 BFNE,日本語版Social Phobia Scale(SPS:金井他, 2004),日本語版Social interaction anxiety scale(SIAS:金井他, 2004)を用いた。参加者を社交不安. 高群,低群に分けるために笹川他(2004)の短縮版他者からの否定的評価 に対する社会的不安測定尺度(Brief Fear of Negative Evaluation Scale,以. 下, BFNE)を用いた。 BFNEは他者からの否定的な評価に対する不安を 測る尺度であり,全12項目を4件法で評価するものであった。. SASは社会的状況において,他者からの自己のパフォーマンスを観察 されること‑の恐怖を測定するものである。質問項目は20項目からなり. 全く当てはまらない〜非常に当てはまるの5件法で評定される。不安得 点の合計は80点であり,社交不安と健常群を分けるカットオフ・ボイン. 28.

(33) トは24点であった。 SIASは人との会話やつき合いといった他者との交流. 状況における不安を測定するものである。質問項目は20項目で構成され 全く当てはまらない〜非常に当てはまるの5件法で評定される。不安得 点の合計は80点であり,社交不安と健常群を分けるカットオフ・ポイン トは35点であった。. SPS, SIASのカットオフポイント, BFNEの平均不安得点よりも得点が. 高い参加者を社交不安高群(18名),カットオフポイント及びBFNEの平. 均不安得点よりも得点が低い参加者を社交不安低群(23名)を社交不安低 群とした。上記の基準を満たさない18名の参加者は分析対象としなかっ. た。社交不安高群と低群において,各質問紙の平均不安得点の差を検討 した結果,全ての不安得点において社交不安高群は低群よりも有意に得 点が低かった(Table 1)0. Tablel. 実験1における参加者の社会不安得点の平均値と標準誤差 High social anxiety Low social anxiety n=18. n=23 mr. e. u. 9. 30.65(1.74). 6. 53・39(0・79). 5. 20・48(1・35). 6.10. 50・89(1・87). ooユ ool o1. 10.43(1.36). .. 3.2.3. 21.00(0.36) 10. 40・61(2・73). 1. I). ′千レ. 20・60(0・43). M(SE). a V. M(SE). 実験装置. 刺激の提示には17inchCRTモニターを使用し,画像解像度は1024×768 pixelsであった。観察距離は60cmであった。. 29.

(34) 3.2.4. 刺激. 表情刺激として石川他(2012)からモデル(8名)×表情(怒り顔,中立顔) ×視線方向(正視,左右逸視),合計で48枚の顔写真を用いた。 Droit‑Vblet etal・ (2004)を参考に,表情刺激の大きさは縦17×横14cmに変更した。 3.2.5. 手続き. study. phase. Traim'ng. phase. Test. phase. う 400,600,800,loop, 400 or 1600 ms. 400 0「 1600 ms. Short or Lo咽. Figure5. 12001400 or 1600 ms. Short or Long. 学習課題,練習課題,本試行の実験手続き. 課題はDroit‑Vblet et al. (2004)の時間二等分法を用いた。実験は学習課. 題,練習課題,本試行の3段階で構成された(Figure5)。学習課題では楕円 状の中立刺激が400msか1600msの条件で提示された。参加者はこれら2. 種類の提示時間を学習した。練習課題では,学習課題と同様の中立刺激 が400msか1600msのいずれかの条件で提示された。参加者は学習課題. で覚えた2種類の提示時間と比較して,どちらの提示時間に近いかを判 断した。練習課題が終わると,課題成績のフィードバックが行われ,参加. 者の成績が90%以上になった参加者は本試行‑進んだ。正答率が90%未. 満であった場合,参加者は再度学習課題から実験を進めた。本試行では 表情刺激が400, 600, 800, 1000, 1200, 1400, 1600 msのいずれかの条件で提. 30.

(35) 示された(Figure5)。参加者は刺激の提示時間が,学習課題の短い提示時 間(400ms)に近いと感じたらFのキーを,長い提示時間(1600ms)に近い. と感じたらJのキーを押すように求められた。キー反応は参加者ごとに カウンターバランスをとった。試行数は全896試行であり, 496試行を基 準として第一ブロック,第二ブロックに分けた。参加者は112試行ごとに. 休憩をとった。実験計画は社交不安(高群,低群),性別(男性,女性),表情 (怒り,中立顔),視線(直視,逸視),提示時間(400,600,800, 1000, 1200, 1400. and1600ms),ブロック(第‑ブロック,第二ブロック)の5要因混合計画. であった。. 3.3. 結果. 実験計画に示した各条件について,参加者が"長い"と判断した割合を 算出し,分散分析を行った。 分散分析の結果,ブロックの主効果が有意であり(F(1,39)‑17.3,p< fool,T72p‑・3),第一ブロック(M‑55%SE‑1・8)よりも第二ブロック(M. ‑60%gg‑1.9)の方が"長い"と判断した割合が高かった。また,提示時 間の主効果が有意であり(F(6,234) ‑509・0,p < ・001,T72p‑・92),提示時間. が長くなるにつれて"長い"と判断した割合が増加していった。一方,表 情の主効果(F(1,39)‑0・49,p‑A8,72p< ・01),視線の主効果(F(1,39) ‑o・247P‑・62,T72p < ・01),及び社交不安の主効果は(F(1,39) ‑0・57,p‑. ・81,r72p< ・01)は有意ではなかったo. 社交不安×表情×視線×ブロックの交互作用が有意であったため(F(1, 39)‑5・32,p‑・02,72p‑・12),第‑ブロック,第二ブロックごとに社交不. 安×表情×視線の被験者間1要因,被験者内2要因の分散分析を行った。 第二ブロックで社交不安×表情×視線の交互作用が有意であったため(F. 31.

(36) (1,39)‑5・91,p‑・02,q2p‑・11),表情ごとに社交不安×視線方向の分散. 分析を行った。 Figure6が示すように,中立顔条件で社交不安と視線の交 互作用が有意で.あり(F(1,39) ‑11・7,p< ・001,T72p‑・23),社交不安高群. は中立顔の直視条件よりも逸視条件の方が提示時間を"長い"と判断する 割合が高かった。一方,社交不安高群と異なり,社交不安低群では中立顔 の逸視条件よりも,直視条件の方が"長い"と判断する割合が高かった。 7. n U. 6. L E T. Second block. First block. 6. O t n. 5. SaSuOdsaL.、BuolこtOSa碧lua)lad. 薄HiかsoLia摘nxiety 、・・ Low so亡i13Lanl,(iety. nJler号illsF.・I Averted p.Llヱ(・ 【)irert即ICI AvL9.rtPdF,rlTe. Ga王e direction of neutra一 face. Figure6. 社交不安高群と低群が中立顔の提示時間に対して"長い". と判断した割合(エラーバーは標準誤差を表わす). tj. 中立顔条件と異なり,怒り顔条件では社交不安×視線の交互作用は有 意ではなかった(F(1,39)‑0・01,p‑・89,T72p<・01)。また,第‑ブロッ. クにおいて社交不安×表情×視線方向の交互作用は有意ではなかった(F (1, 39) ‑0・157P ‑ ・697772p < ・01)0. 第‑ブロックと第二ブロックで,覚醒水準変化を検討するため,表情ご とに社交不安×視線×ブロックの分散分析を行った。その結果,中立顔. 条件では社交不安,視線方向,ブロックの交互作用が有意であったため (F(1,39)‑11・4,p‑・01,T12p‑・22),視線方向ごとに社交不安×プロツ. 32.

(37) sasuodsaJ"guoL,‑OS亀t:lu巴Lad. C H癌卜SC亡i.li a.・1:tieTy Lcv.I SO・=iLlf anxiety. First. EiiZ:. D汗eeを蛋aZe. block. Second. 伽藍舶d卵Ze D摘EtgaZ倍. bJoek. 加即紬d霞a夏空. Gaze dirc{tion of angry face. Figure7. 社交不安高群と低群が怒り顔の提示時間に対して"長い". と判断した割合(エラーバーは標準誤差を表わす). クの分散分析を行った。その結果,逸視条件では,社交不安とブロックの 交互作用が有意であり(F(1,39)‑7・9,p‑・01,772p‑・16),社交不安高群. は逸祝条件において,第一ブロックよりも第二ブロックで提示時間を"長 い"と判断した割合が高かった(Figure6)。一方,直視条件では社交不安と ブロックの交互作用はなかった(F(1,39)‑0・91,p‑・34,72p‑・02)0. 一方,怒り顔条件では,社交不安とブロックの交互作用が有意であり(F (1,39)‑6・3,p‑・01,r72p‑・13),第‑ブロックよりも第二ブロックにお. いて,提示時間を"長い"と判断した割合が高かった(Figure7)。しかしな がら,社交不安,視線方向,ブロックの交互作用はなかった(F(1,39)‑ 0・1,p‑74,772p < ・ol).. さらに社交不安,性別,ブロックの交互作用が有意であったため(F(1, 39)‑6・3,p‑・01,r72p‑・13),社交不安ごとに性別×ブロックの分散分析. を行った。その結果,社交不安高群では性別とブロックの交互作用が有 意であり(F(1,16)‑6・1,p‑・02,,rI2p‑・27),男性の社交不安高群は第一. 33.

(38) ブロックよりも第二ブロックの方が提示時間を長いと判断した割合が高 かった(第‑ブロック‑55%,第二ブロック‑65%,p<. 001,Bonferroni‑. corrected)。一方,女性の社交不安高群では第一ブロックと第二ブロック. の提示時間の判断にちがいはなかった(第‑ブロック‑55%,第二ブロッ ク‑ 58%, p ‑.27, Bonferroni‑corrected)o社交不安高群とは異なり,社交. 不安低群では性別とブロックの交互作用は有意ではなかった(F(1,21)‑ OA8,p ‑ Ag, T72p ‑ ・02).. 3.4. 考察. 実験の結果,社交不安高群は低群と異なり,直祝した中立顔より. も. 逸祝した中立顔に対して時間知覚の過大評価を行うことが示唆された (Schmitzeta1.,2012)o. また,こうした時間知覚の過大評価は,課題が進む. につれて顕著に生じることが示唆された。先行研究によると,ネガティブ. な刺激は観察者の覚醒水準を上昇させ,体内時計のペースメーカーを速 めることで,時間知覚の過大評価が生じる(Bar‑Haimeta1., 2010,Tipples,. 2008;Tipples,2011)。社交不安が高い人にとって,中立顔の逸視は他者か. らの拒絶感情を表すものであり,ネガティブな刺激として認識される (Schmitzeta1.,2012)。そのため社交不安低群と異なり,社交不安が高い人. は中立顔の直視よりも中立顔の逸視に対する時間知覚の過大評価が生じ たと考える。課題の後半にのみこうした時間知覚の過大評価が生じた理 由として,逆向干渉が関わっているかもしれない。先行研究によると,時. 間二等分法を用いた実験では,さまざまな条件の提示時間を観察するこ とによって,学習した基準時間に対する記憶が暖味になることが報告さ れた(Bouton, 1993; Ogdenetal・, 2008)。実験1においても実験後のインタ. ビューで,多くの参加者が基準時間の忘却を報告し,主観的に時間判断を. 34.

(39) 行ったと述べた。こうした逆向干渉が生じることによって,社交不安が. 高い人は中立顔の直視よりも,中立顔の逸視に対する主観的な時間体験 の過大評価を行ったことが示唆された。このような時間知覚のちがいは,. 本研究のモデルで仮定した,社交不安をもつ人のネガティブな情事鋸こ対. する過大評価と,ポジティブな情報に対する過小評価という,非適応的な 情報処理過程を反映していると考える。 一方,怒り顔に対して,社交不安が高い人は視線方向に関わらず,時間 知覚の過大評価を行ったことが示唆され,この結果は木研究の仮説を一. 部支持する。先行研究では,社交不安をもつ人は怒り顔の逸視よりも直視 をネガティブであると感じ,回避行動を形成することが報告された。こ うした報告と実験1の結果は完全には一致しない(Roelofsetal・,2010)。先. 行研究によれば,中立顔より. も怒り顔は観察者の覚醒水準を上昇させる. ことで,体内時計が速まり,怒り顔に対する時間知覚の過大評価が生じる と報告した(Bar‑Haim et a1., 2010; Droit‑Vblet et a1., 2004; Droit‑Vblet et a1.,. 2010; Tipples, 2008; Tipples, 2011)o. ただし,社交不安が低い人よりも社交. 不安が高い人にとって,他者の怒り顔は自身の不安を強く喚起する脅威 刺激である(Horleyet a1., 2003;石川私2012; Mogget a1., 2004)。他者の怒. り顔によって引き起こされた不安の効果は,怒り顔の視線方向に関わら ず覚醒水準を上昇させ,時間知覚の過大評価が生じたのかもしれない。 研究1において,社交不安が高い人と異なり,社交不安が低い人は中立 顔の逸視よりも直視に対して時間知覚の過大評価を行った。一方,怒り. 顔に対しては直視よりも逸視に対する時間知覚の過大評価を行うことが 示唆された。これらの結果は,社交不安が低い人の適応的な方略を表わ していると考える。他者の怒り顔の直視や中立顔の逸視は,他者からの ネガティブな評価を表わす社会的な手がかりである(Roelofseta1.,2010;. 35.

(40) Schmitzetal・,2012)。こうしたネガティブな社会的手がかりよりも,他者. の注意や関心が自身に向けられている状況など重要視することは,社会 的相互作用においてはより適応的な方略であろう。臨床場面においては, このような適応的な方略を社交不安が高い人に応用していくことで,不. 安の低減など社交不安の症状の改善に役立っかもしれない。. 先行研究では,社交不安をもつ人の脅威刺激に対する選択的注意や解 釈バイアスなどが報告されてきたが,時間的な評価については十分に検 討されていなかった。本研究は中立,ネガティブな情報に対する主観的. な時間感覚を検討した初めての研究である。この研究は臨床場面におい て,暴露療法などを用いる際に,中立的な刺激やネガティブな刺激の適切. な提示時間を選定する上でも非常に重要な示唆を与えるであろう。. 36.

(41) 4. 第三章. 研究2の目的と意義一比幌的関連づけと. 左右大脳機能半球‑ 4.1社交不安障害のポジティブ,ネガティブ情報の処理の再. 考:比鴨的関連づけと左右大脳半球機能に着目して 本研究における目的は,社交不安障害におけるポジティブ,ネガティ. ブ情報に対する情報処理過程を多角的な視点をもって検討することであ る。そのため,研究2では社交不安障害における左右大脳半球機能と,比 峰的関連づけに焦点をあてることで,検討を行う。. 多くの研究で社交不安をもつ人は,健常者と異なる左右大脳半球機 能をもつことが報告されてきた(Amiret al・, 2005; Bush& Posner, 2000;. Davidson et a1., 2000; Etkin & Wager, 2007; Goldin et a1., 2009; Phan et all, 2006; Stein et a1., 2002; Straube et a1., 2004; Tillfors et a1., 2002)。例えば,. Steinetal. (2002)の研究では,社交不安患者と統制群に対して,怒り,恐. れ,笑い,中立顔など,さまざまな表情刺激を提示し,その際の脳活動 を機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)によって測定した。その結果,恐怖や. 真顔に対しては社交不安患者群と統制群において,脳活動にちがいはな かった。一方,怒りや軽蔑を表出する顔写真に対しては,社会不安患者群. は,右半球よりも左半球における前頭前皮質や内側側頭葉,特に后桃体の 賦活が大きかった。こうした左半球の賦活は,笑い顔より. も怒りや軽蔑. などのネガティブな表情で強く生じた。属桃体は感情や記憶の処理に非 常に重要な役割をもつ部位であるため, Steinet al. (2002)はこうした部. 位の賦活の大きさは,社交不安患者が怒りや軽蔑といった感情に対して 敏感であることを裏づけると述べた。また, Straubeetal. (2004)は社交不. 安をもつ人を対象として,意識的な課題と非意識的な課題における表情. 37.

参照

関連したドキュメント

The mGoI framework provides token machine semantics of effectful computations, namely computations with algebraic effects, in which effectful λ-terms are translated to transducers..

The 100MN hydraulic press of the whole structural model based on the key dimension parameters and other parameters is analyzed in order to verify the influence of the

An example of a database state in the lextensive category of finite sets, for the EA sketch of our school data specification is provided by any database which models the

A NOTE ON SUMS OF POWERS WHICH HAVE A FIXED NUMBER OF PRIME FACTORS.. RAFAEL JAKIMCZUK D EPARTMENT OF

For staggered entry, the Cox frailty model, and in Markov renewal process/semi-Markov models (see e.g. Andersen et al., 1993, Chapters IX and X, for references on this work),

A lemma of considerable generality is proved from which one can obtain inequali- ties of Popoviciu’s type involving norms in a Banach space and Gram determinants.. Key words

de la CAL, Using stochastic processes for studying Bernstein-type operators, Proceedings of the Second International Conference in Functional Analysis and Approximation The-

[3] JI-CHANG KUANG, Applied Inequalities, 2nd edition, Hunan Education Press, Changsha, China, 1993J. FINK, Classical and New Inequalities in Analysis, Kluwer Academic