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平成28年度 学内研究助成金 研究報告書

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Academic year: 2022

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平成28年度 学内研究助成金 研究報告書

研 究 種 目

■奨 励 研 究 助 成 金 □研究成果刊行助成金

□21世紀研究開発奨励金

(共同研究助成金)

□21世紀教育開発奨励金

(教育推進研究助成金)

研 究 課 題 名 高性能金属空気二次電池の実現に向けたグラフェン複合材料の開発

研究者所属・氏名

研究代表者:産業理工学部 生物環境化学科 講師 湯浅雅賀 共同研究者:

1.研究目的・内容

金属空気電池は、空気中の酸素を正極活物質とするためリチウムイオン電池をも凌ぐ高いエネル ギー密度を有しており、次世代の蓄電池として期待されている。しかし、電池内部に酸素を取り 込むための空気極を構成するカーボンブラックが、充電電流により酸化分解するため、現状の金 属空気電池は充電が困難であることが課題である。そこで本研究では、グラファイトの積層構造 を剥離して得られる炭素ナノシートであるグラフェンを、カーボン代替材料として検討した。

2.研究経過及び成果 グラフェンの合成

グラフェンは、化学剥離法(ハマーズ法)により合成した。まず、2 gの市販のグラファイト粉末

を100 mlの濃硫酸中で過マンガン酸カリウム8 gを用いて酸化し、酸化グラファイトを合成した。

得られた酸化グラファイトを、蒸留水を用いた透析により精製した後、酸化グラファイトの分散 液に超音波を照射することで積層構造を剥離し、酸化グラフェンの分散液を得た。得られた酸化 グラフェン分散液を160℃で12時間加熱することで還元し、グラフェンを得た。窒素ドープグラ フェンを得る場合は、酸化グラフェンの水熱処理時に、酸化グラフェンの質量の10倍の尿素を加 えて、加熱処理を行った。

グラフェンの酸素発生反応(充電反応)に対する耐久性 得られたグラフェンについて、充電反応が起こる電極電位 領域における耐久性を調べるため、グラフェン薄膜電極お よびカーボンブラック(従来の空気極材料)のサイクリッ クボルタンメトリー(電位 0~1 V vs. Hg/HgO)を行った。

その結果(図1)、従来の空気極の材料であるカーボンブ ラックでは電位の走引 1 回目では大きな酸素発生電流が 生じ、充電反応に対して活性を示すものの、2回目以降は 徐々に酸素発生電流が低下し、30 回目では酸素発生反応 に起因する電流はほとんど観測されなくなった。これは、

カーボンブラックは充電反応が起こる電極電位では非常 に不安定であり、分解して消失したことを意味する。一方 で、本研究で合成したグラフェンは、30 回の電位走引を

繰り返しても酸素発生電流の値はほとんど低下しなかった。したがって、グラフェンは金属空気 電池の充電反応に対して安定な、金属空気二次電池を実現する材料として有望であるといえる。

グラフェンの還元発生特性

グラフェンを用いて金属空気電池用空気極を作製し、その酸素還元特性(放電反応特性)を調べ た。その結果を図2に示す。グラフェンのみを用いた空気極では、100mA/cm2での酸素還元電流 にて-250 mV vs. Hg/HgOの電極電位を示したが、これに触媒としてLaMnO3を30mass% 担持 すると、空気極の電位は貴な電位に28 mVシフトし、LaMnO3がグラフェン上での酸素還元反応

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 0.2 0.4 0.6

電流/ mA

電位/ mV vs. Hg/HgO グラフェン1サイクル目 グラフェン30サイクル目 カーボンブラック1サイクル目 カーボンブラック30サイクル目

図1. グラフェンおよびカーボンブラックのサイクリック ボルタモグラム

(電解液:1mol/L KOH, 走査速度50mV/sec, 走査範囲:0~1 V vs. Hg/HgO)

(2)

を促進することが明らかとなった。窒素ドープグラフ ェンを用いた空気極では、LaMnO3担持グラフェンの 場合よりもさらに貴な電位を示しており、グラフェン への窒素ドープがグラフェンの酸素還元活性(放電活 性)の向上に非常に有効であることが明らかとなった。

これは、グラフェンの炭素骨格にドープした窒素が酸 素還元反応の活性中心となっているためであると考え られる。さらに、上記の検討で高い酸素還元活性を示 すことが明らかとなったLaMnO3を窒素ドープグラフ ェンに 30 mass%担持し、更なる酸素還元活性の向上 を計った。しかし、その結果は予想に反し、窒素ドー プグラフェンにLaMnO3触媒を担持しても更なる酸素 還元活性の向上は示さなかった。これは、窒素ドープ グラフェンに比べてLaMnO3が低活性であるために、

LaMnO3が活性向上の役割を果たせなかったためであ

ると考えられる。したがって、窒素ドープグラフェン

の活性を更に高めるには、窒素ドープグラフェンよりも高い酸素還元活性を有する材料を探索し、

する必要があると考えられる。

グラフェンの酸素発生特性

グラフェンを用いた空気極の酸素発生活性を調べた結 果(図3)、グラフェンのみを用いた空気極では、100 mA/cm2での酸素発生電流にて1379 mV vs. Hg/HgOの 電極電位を示した。これに従来の検討で高い酸素発生活 性を示すことが明らかとなっている LaNiO3を 30

mass%担持したところ、電極電位はほとんど変化せず、

LaNiO3はぐふらフェン上では酸素発生触媒としての

機能を発現しないことがわかった。一方で、窒素ドープ グラフェンを用いると、電極電位は100 mA/cm2での酸 素発生電流にて1160 mV vs. Hg/HgOを示し、グラフ ェン炭素骨格への窒素ドープは酸素還元だけでなく酸 素発生の活性向上にも有効であることがわかった。

3.本研究と関連した今後の研究計画

本研究によって、グラフェンが金属空気二次電池の実現に有望な材料であること、窒素のグラフ ェンへのドープが酸素還元反応(放電反応)と酸素発生反応(充電反応)の両方に有効であるこ とが明らかとなった。今後は、窒素以外の元素(リン、硫黄、ホウ素など)のグラフェン炭素骨 格中へのドープ効果や、窒素ドープグラフェンの酸素還元・発生活性を更に高めるのに有効な触 媒材料の探索を進める予定である。

4.成果の発表等

発 表 機 関 名 種類(著書・雑誌・口頭) 発表年月日(予定を含む) 電気化学会2017年秋季大会 口頭 2017年9月(予定)

0 50 100 150 200

-500 -400 -300 -200 -100 0 100

電位/mV vs Hg/HgO

電流密度/mAcm-2

:グラフェン

:窒素ドープグラフェン

LaMnO3担持グラフェン

:LaMnO3担持窒素ドープグラフェン

2.グラフェン, 窒素ドープグラフェン、LaMnO3担持グラ フェン、LaMnO3担持窒素ドープグラフェンの酸素発生 特性(充電 反応特性)

電位/mV vs Hg/HgO

電流密度/mA・cm-2

0 50 100 150 200

2000

1500

1000

500

0

-500

:グラフェン

:窒素ドープグラフェン

:LaNiO3担持グラフェン

図3.グラフェン, 窒素ドープグラフェン、LaNiO3担持グラ フェンの酸素発生特性(充電反応特性)

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