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Ⅰ 総括研究報告

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Academic year: 2022

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Ⅰ 総括研究報告

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厚 生労働 科学研 究 費 補助金 ( 第3次対 がん総 合 戦略研究 事業)

総 括 研究 報 告書  

呼 吸 移 動 を 伴 う 胸 部 病 変 に 対 す る 先 進 的 強 度 変 調 回 転 照 射 に 関 す る 研 究

 

研 究 代 表 者   橋 本   成 世   が ん 研 究 会 有 明 病 院   放 射 線 治 療 部  

研 究 要 旨

高 精 度 放 射 線 治 療 法 の 1つ で あ る 強 度 変 調 放 射 線 治 療(IMRT)は 身 体 の 様 々 な 部 位 の 治 療 に 用 い ら れ つ つ あ る 。呼 吸 に よ っ て 移 動 す る 肺 癌 や 悪 性 胸 膜 中 皮 腫 に お い て も IMRT が 使 用 さ れ て お り 、さ ら に 強 度 変 調 回 転 照 射(VMAT)を 用 い る こ と で 線 量 集 中 性 の 向 上 及 び 照 射 時 間 の 短 縮 化 等 の 利 点 が 見 出 さ れ て い る 。 し か し 、 呼 吸 移 動 を 伴 う 部 位 に VMAT を 行 う 場 合 、 治 療 時 の 呼 吸 状 態 に よ っ て 投 与 線 量 が 変 化 す る 。こ れ は 、治 療 機 の 機 器 動 作 と 呼 吸 に よ る 体 内 臓 器 の 動 き が 照 射 毎 に 異 な る こ と が 主 な 原 因 で あ る 。そ の た め 、日 々 の 治 療 毎 に 投 与 線 量 が 異 な る 可 能 性 が あ る も の の 、実 際 に 投 与 さ れ た 線 量 を 確 認 で き る 手 法 は 確 立 さ れ て い な い 。 ま た VMAT プ ラ ン に よ っ て 機 器 動 作 が 異 な る た め 、 投 与 線 量 の 変 化 も VMAT プ ラ ン に 依 存 す る と 考 え ら れ る 。 本 研 究 で は 呼 吸 移 動 を 伴 う 胸 部 病 変 に お い て 、VMAT の 最 適 な 治 療 計 画 か ら 日 々 の 投 与 線 量 の 評 価 ま で の 一 連 の 手 法 を 開 発 し 、 シ ス テ ム を 構 築 す る こ と を 目 的 と す る 。

本 研 究 は 、(1) 治 療 計 画 ・ 照 射 法 に 関 す る 研 究 (2)VMATに お け る 腫 瘍 位 置 の 検 出 に 関 す る 研 究 (3)VMAT に お け る 4次 元 に 対 応 し た 線 量 再 構 成 法 に 関 す る 研 究 の 大 き な 3つ の 項 目 か ら 成 り 立 つ 。 平 成 25 年 度 の 研 究 に お い て 以 下 の 検 討 を 行 い 、成 果 を 得 た 。(1)投 与 線 量 の 変 化 に 影 響 を 及 ぼ す パ ラ メ ー タ の 調 査 を 行 い 、自 由 呼 吸 下 の VMAT で は 平 均 リ ー フ ギ ャ ッ プ 幅 と VMAT 照 射 中 に 生 じ る 呼 吸 回 数 が 強 く 影 響 す る こ と が 分 か っ た 。ま た 、処 方 方 法 及 び 適 切 な VMAT プ ラ ン の 作 成 法 の 検 討 も 併 せ て 行 っ た 。(2)VMAT 照 射 に お い て も 腫 瘍 位 置 の 検 出 が 行 え る よ う に 、 平 成 24 年 度 に 構 築 し た 腫 瘍 位 置 検 出 法 を 改 良 し た 。VMAT 照 射 に お い て ±1mm 程 度 の 精 度 で 腫 瘍 位 置 を 求 め る こ と が 可 能 で あ っ た 。ま た 、実 患 者 画 像 に 対 し て も 本 手 法 で 腫 瘍 位 置 を 求 め る こ と が で き た 。(3)呼 吸 移 動 を 考 慮 し た 線 量 再 構 成 法 の 構 築 を 行 い 、本 線 量 再 構 成 法 に よ っ て 3 次 元 的 な 腫 瘍 の 動 き に 対 し て も ±2% 以 内 の 精 度 で 腫 瘍 の 中 心 線 量 を 求 め る こ と が 可 能 で あ っ た 。さ ら に(2)と(3)の シ ス テ ム の 統 合 を し 、4 次 元 線 量 再 構 成 法 の 一 連 の シ ス テ ム 構 築 を 行 っ た 。 フ ァ ン ト ム 実 験 の 結 果 ±2%

以 内 の 線 量 誤 差 で 腫 瘍 の 中 心 線 量 を 求 め る こ と が で き た 。ま た 2次 元 線 量 分 布 に お い て も 線 量 誤 差 3%、 位 置 誤 差 3mmを 許 容 範 囲 と し た ガ ン マ 解 析 の Pass Rate は 平 均 89.6%で あ り 、 本 線 量 再 構 成 法 に よ っ て 実 際 の 投 与 線 量 を 見 積 も る こ と が で き る と 確 認 で き た 。

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研究分担者氏名・所属研究機関名及び所 属研究機関における職名

小口正彦・がん研究会有明病院放射線治 療部・部長

小塚拓洋・がん研究会有明病院放射線治 療部・副部長

中島大・がん研究会有明病院放射線治療 部・主任

伊藤康・がん研究会有明病院放射線治療 部・主任

北村望・がん研究会有明病院放射線治療 部・診療放射線技師

五月女達子・がん研究会有明病院放射線 治療部・診療放射線技師

大友結子・がん研究会有明病院放射線治 療部・診療放射線技師

上原隆三・がん研究会有明病院放射線治 療部・診療放射線技師

松林史泰・がん研究会有明病院放射線治 療部・診療放射線技師

高橋良・がん研究会有明病院放射線治療 部・診療放射線技師

A. 研究目的

社会の急速な高齢化に伴いがん患者、

特に高齢のがん患者が急増している。比 較的治療の負担が少ないことから放射線 治療を受ける患者数は飛躍的に増加して いる。特に強度変調放射線治療(IMRT)

は前立腺癌や頭頸部だけではなく呼吸性 移動を伴う肺癌や悪性胸膜中皮腫でも線 量分布の向上を認め臨床でも利用され始 めている。さらに身体360度方向から照 射が可能な強度変調回転照射(VMAT)

は、従来のIMRTよりも短時間で腫瘍に

線量を集中することが可能となり、胸部 病変においても利点が見出されている。

  VMAT は ガ ン ト リ 角 度 と 多 分 割 コ リ メータ(MLC)及び線量率を連続的に変 化させて治療を行う照射法である。肺等 のように呼吸により腫瘍が移動する部位 では呼吸抑制、息止め、呼吸同期といっ た手法を用いて腫瘍の動きに対応した治 療を行う。いずれの手法も、照射時の腫 瘍の位置を完全に一定にすることはでき ず、投与線量の誤差の原因となる。動き のある腫瘍に対して VMAT を行う場合 には、このような誤差が特に顕著になり 腫瘍に十分に放射線があたらないおそれ がある。また、治療中の腫瘍あるいは体 内臓器の動きを経時的に捉える方法は確 立されておらず、治療中に腫瘍が動いた 場合に患者体内においてどのような線量 分布が形成されているかを知る方法は確 立されていない。本研究では呼吸移動を 伴う胸部病変において、VMATの最適な 治療計画から日々の投与線量の評価まで の一連の手法を開発しシステムを構築す ることを目的とする。

本研究により従来以上に安全性が確保 された高精度放射線治療が可能となり、

治療効果の増加及び副作用発生頻度の低 下が期待できる。悪性胸膜中皮腫に対す る放射線治療では、致死的な放射線肺臓 炎が問題となるが、悪性胸膜中皮腫の解 析では症例数が限られている。呼吸性移 動を伴う肺癌に対する放射線治療の知見 は、同じ胸部の疾患である胸膜中皮腫に も有用と考えられる。そのため、本研究 では、症例数の多い肺癌を主として解析 した。

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B. 研究方法

本研究は(1)治療計画・照射法に関 する研究、(2)VMATにおける腫瘍位置 の検出に関する研究、(3)VMATにおけ る4次元に対応した線量再構成法に関す る研究の大きな3つの研究項目から成り 立つ。

(1)治療計画・照射法に関する研究 昨年度の検討において呼吸状態に応じ て 投 与 線 量 の 変 化 が 10%程 度 生 じ る と 分かった。平成 25 年度では投与線量の 変化がどのようなパラメータに依存する か検討した。様々な呼吸状態を模擬させ た 胸 部 動 体 フ ァ ン ト ム(Model 008A;

CIRS lnc., Norfolk, VA)を4次元CT

(4D-CT)で撮像し、得られた画像を用 いて VMAT プランを立案した。VMAT プランのパラメータと呼吸状態を変化さ せた際の投与線量の変化量の関係性を解 析した。パラメータには多分割コリメー タのリーフスピード、リーフギャップ幅 及び照射中に生じる呼吸回数等を用いた。

過去に 3 次元照射(3D-CRT)を行っ た症例に対し、ガントリ回転角度を変更 した複数のVMATプランを立案し、DVH 及 び 線 量 分 布 を 比 較 す る こ と で 適 切 な VMATプランの検討を行った。また2005 年3月〜2013年12月までにがん研究会 有 明 病 院 で 放 射 線 治 療 を 行 っ た非 小 細 胞肺癌、小細胞肺癌 330例について解 析を行い処方方法の検討を行った。

 

(2)VMAT における腫瘍位置の検出に 関する研究

  平成 24 年度では放射線治療中に撮影

した電子照合画像装置(EPID)画像を 用い、腫瘍陰影を追跡することで腫瘍位 置を検出できるシステムを構築した。平 成 25 年度は VMAT 照射中に得られる EPID 画像においても検出精度を保てる ようにシステムに改良を加えた。VMAT は照射中に連続的に線量率が変化するた めに、EPID 画像を収集した際に特有の アーチファクトが生じる。腫瘍位置の検 出に影響が生じるため、アーチファクト 低減のための専用の画像フィルタを作成 した。また腫瘍位置の検出には正規相互 相関を用いているが、相関値が低いと検 出精度が低下する。そのため、閾値を設 定し閾値以下の相関値の場合には RPM

(Real-time position management) system で得られる呼吸波形から腫瘍位 置 を 予 測 さ せ る よ う に 。 さ ら に 腫 瘍 に MLC が重なる場合にも腫瘍位置が検出 できないため、EPID 画像上の MLC 領 域を自動で抽出し、腫瘍と重なる場合に も RPM 波形から腫瘍位置を予測させる ように改良を加えた。以上の改良を加え たシステムを用い、VMAT照射時に得ら れたEPID画像から腫瘍位置が検出でき るか検討した。また、EPID 画像のフレ ー ム 毎 に 腫 瘍 位 置 を 検 出 す る 関 心 領 域

(ROI)を MLC 外の領域に再設定させ ることによっても MLC と腫瘍が重なる 状況を回避できると考えた。本年度の研 究ではこの手法の実現可能性についても 検討した。

(3)VMAT における 4 次元に対応した 線量再構成法に関する研究

  昨年度に引き続き線量再構成法の構築

(6)

及び精度評価を行った。線量再構成は治 療中の腫瘍位置と VMAT 照射時の機器 動 作 記 録 で あ る ロ グ デ ー タ を 使 用 し 、 4D-CT 画 像を用 いて 治療計 画装 置上で 線量分布を再計算させる手法を用いてい る。胸部動体ファントムを用い、腫瘍の 動きを変化させた複数の VMAT プラン を用いて精度評価を行った。頭尾方向の みの2次元の腫瘍の動き及び頭尾方向に 加え腹背方向、左右方向にも動かした 3 次元的な腫瘍の動きを評価に用いた。腫 瘍の動きは既知であるため、機器動作と 腫瘍位置の関係は計算によって求めるこ とができる。腫瘍位置毎に計算に用いる 4D-CT画像の位相を選択し、計算した線 量分布を全て合算して線量評価を行った。

計算には20位相に分割した4D-CT画像 を用いた。線量分布の合算は2種類の方 法を用いた。1 つは腫瘍の中心位置で全 ての線量分布の座標を規格化して合算す る 方 法 、 も う 1 つ は deformable registration を使用して線量分布の合算 を 行 う 方 法 で あ る 。 治 療 計 画 装 置 は Eclipse(Varian Medical Systems, Palo Alto, CA)、直線加速器は CLINAC 21 EX(Varian Medical Systems, Palo Alto, CA ) を 使 用 し た 。 deformable registration は Velocity ( Velocity Medical Solutions, Atlanta, GA)を使用 した。評価は腫瘍の中心線量と腫瘍の中 心を通る2次元断面の線量分布で行った。

さらに昨年度に引き続き、線量再構成に 用いる 4D-CT 画像の位相分割数が計算 精度に及ぼす影響について検討を行った。

(4)線量再構成法と腫瘍位置検出法の

システム統合

腫瘍位置検出に用いるEPID画像ファ イルにはヘッダー情報として VMAT 照 射時のガントリ角度の情報が記録されて いる。このガントリ角度情報と EPID画 像から得られる腫瘍位置情報、さらに実 際の照射時の呼吸波形及びログデータの 4 種類の情報を複合し線量再構成に必要 となるDICOM-RT Planファイルを作成 す る 一 連 の シ ス テ ム を 構 築 し た 。(3)

VMATにおける4次元に対応した線量再 構成法に関する研究と同一の VMAT プ ランを用いて線量再構成精度の評価を行 った。線量分布の合算は腫瘍の中心位置 で座標を規格化して行った。

(倫理面への配慮)

EPID 画像の撮影に関してはがん研究 会有明病院の IRB で承認を受けたプロ トコールに従って患者への説明と同意を 得て行われている。本研究においては実 験動物に対する動物愛護上の配慮等への 対応に対する問題は発生しない。また、

本研究の実施において既存の医療用直線 加速装置を利用するが、薬事法に触れる 機器改造は伴わない。本研究の実施にお いて、がん研究会有明病院で放射線治療 を受けた患者のCT やMRI、PETなどの 画像を用いることがあるが、そのデータ については個人情報をすべて削除する措 置を講じる。

C. 研究結果

(1)治療計画・照射法に関する研究

(7)

  呼 吸 状 態 に よ る 投 与 線 量 の 変 化 は 、 VMAT プ ラ ン の 平 均 リ ー フ ギ ャ ッ プ 幅 及び VMAT 照射中に生じる呼吸回数に 相関が認められた。平均リーフギャップ 幅が広いほど、呼吸回数が多くなるほど 線量の変化量は小さくなる傾向を示した。

また、両パラメータを変数にとることで、

投与線量の変化量を予測できる近似式を 導出することが可能であった。

VMAT プランを比較した結果、360°

回転の VMAT プランよりもガントリ回 転 角 度 に 制 限 を 与 え た 部 分 回 転 の VMAT プ ラ ン の 方 が 正 常 肺 に 与 え る 低 線量を抑えることが可能であった。しか しながらPTVに対する conformityが低 下 し て し ま う た め 、homogeneity 及 び conformity を 保 ち つ つ 正 常 肺 の 線 量 を 低下させることができる治療計画を更に 検討していく必要がある。

  処方方法の検討においては、アイソセ ンタ線量とPTVの最大線量、平均線量、

D98、D95、D50、D2、GTVの最大線量、

最小線量、平均線量、D98、D50、D2 の 比較を行った。PTV の D50 の標準偏差 が2.3%であり、最もばらつきが小さかっ た。また、アイソセンタにおける線量処 方 と比 較 し て 線量 の 平 均 値 も 1〜2%程 度高い程度であった。肺癌の IMRT や VMATではPTV D50が従来の照射法と 線量差が少なく、有力な候補として考え られた。

(2)VMAT における腫瘍位置の検出に 関する研究

  VMAT 照 射 を 用 い て 腫 瘍 位 置 を 実 測 したところ、±1mm程度の誤差で腫瘍位

置を求めることができた。また、実患者 画像においても単純な照射野の場合には 同程度の精度で腫瘍位置を求めることが できた。実 患者の EPID 画像に動的な MLC パターンを載せた画像では±5mm 程度の差が認められた。RPM 波形の動 きと腫瘍の動きが、呼吸位相毎に変化し ていることが大きな原因だと考える。

  EPID画像のフレーム毎にROIを再配 置させる方法では、固定照射野を用いた ガントリ固定の照射あるいは回転照射の 場合にもフレーム毎の腫瘍の移動量は±

1mm 以内の誤差で検出できた。しかし ながら、VMAT照射の場合には MLCが 腫瘍に重なってしまうことで ROI が 1 つも置けず、腫瘍位置が検出できない状 況が発生した。

 

(3)VMAT における 4 次元に対応した 線量再構成法に関する研究

  腫瘍の中心位置で線量分布の合算を行 った結果、腫瘍の中心線量においては腫 瘍の頭尾方向のみの動き及び頭尾方向に 合わせて左右方向、腹背方向にも動かし た 腫 瘍 の 動 き に 対 し て も ±2%以 内 で 実 測と一致する結果が得られた。2 次元断 面の線量分布では線量誤差 3%、位置誤 差3 mmを許容範囲としたガンマ解析に おいて、腫瘍を頭尾方向のみに動作させ たプランでは 90%以上のPass Rate、頭 尾方向及び左右方向に移動させたプラン においても88%以上のPass Rateを示し た。全プランの平均 Pass Rateは92.9%

であり、実測と良く一致する線量再構成 が 行 え て い る と い え る 。deformable registration を用いて線量分布を合算さ

(8)

せた場合では、腫瘍の中心位置で線量分 布を合算させた結果と比較して 3%前後 の線量差を認めた。また、ガンマ解析の Pass Rateは80%程度であった。

4D-CT 画 像 の 位 相 分 割 数 に よ る 線 量 再構成精度は1位相あたりの腫瘍最大移 動距離が5mm以内であれば、線量差3%

以内の精度で計算が行える結果が得られ た。

(4)線量再構成法と腫瘍位置検出法の システム統合

  EPID 画像から検出した腫瘍位置を用 いて線量再構成したところ、腫瘍の中心 線量の測定では腫瘍の頭尾方向のみの動 き及び頭尾方向に合わせて左右方向、腹 背方向にも動かした腫瘍の動きに対して も ±2%以 内 で 実 測 と 一 致 す る 結 果 が 得 られた。また、線量誤差3%、位置誤差3 mmを許容範囲としたガンマ解析におけ るPass Rateは平均89.6%であり、実測 と一致する線量再構成が行えていた。

D. 考察

(1)治療計画・照射法に関する研究 呼吸状態による投与線量の変化はリー フギャップ幅及び VMAT 照射中に生じ る呼吸回数に依存することが分かった。

同一 VMAT プランにおいても呼吸状態 に応じて最大 8%程度生じる線量変化が 3%程度にまで減少した。また、同一呼吸 回数においても、VMATプランによって は線量変化が8%から4%にまで変化した。

この投与線量の変化は呼吸回数と平均リ ーフギャップ幅を変数とした近似式を用

いて予測することができると分かった。

一般的に VMAT プランの平均リーフギ ャップ幅が広い場合には、回転原体照射 に近くなるために線量分布は平均リーフ ギャップ幅が狭い場合と比較して不利に なることが多い。患者の呼吸回数は個人 によって変化するため、予測式を利用す ることで許容される投与線量の変化量を 担保しつつ、かつ可能な限り有利な線量 分布の作成が可能になると考える。現在 用いられている治療計画装置では最適化 計算時に呼吸回数やリーフギャップ幅の 変数は取り入れられていないため、リー フギャップ幅を操作するには煩雑な作業 が必要である。これらの変数を考慮した 最適化計算が行える治療計画装置を開発 することで、実臨床への応用に繋げてい けると考える。

今回導出した予測式はガントリ角度や、

腫瘍サイズ、照射野サイズ等が限られた 条件によるものである。本年度の検討か ら VMAT プランにおいてもガントリの 回転角度に制限を加えることで肺等の正 常組織に与える線量を抑えることが可能 であると分かった。conformity等を向上 させるプランの検討は必要であるが、こ のような臨床上考えられる条件において も予測式が作成できるかを検討する必要 がある。

(2)VMAT における腫瘍位置の検出に 関する研究

  VMAT 照 射 特 有 の 問 題 点 を 解 決 し ± 1mm 程度の精度で EPID 画像から腫瘍 位置を求めることができた。本手法のよ うな治療ビームを用いて腫瘍位置を検出

(9)

する以外にも On-board imager を用い て腫瘍位置を求める方法もある。この方 法では MLC 等の障害陰影が写り込まな いために腫瘍の位置を正確に求めやすい 利点がある。しかしながら、本手法は余 分な被曝を伴わずに腫瘍位置を求めるこ とができるという特徴がある。本手法の 問題点としては、MLC が腫瘍に重なる ような状況において RPM 波形から間接 的に腫瘍位置を予測させているので、実 際の腫瘍位置と差が生じている可能性も 否定できない点である。動的な MLC 照 射野を用いた実患者画像において 5mm 程度の差が生じた原因にもこれが影響し ていると考えられる。今年度はトラッキ ングに用いるROIとMLCが重なる状況 を可能な限り回避するために、EPID 画 像のフレーム毎に ROI を再配置させる 手法の検討も行った。単純な固定照射野 を用いた場合には±1mm 以内の精度で 腫瘍位置が検出できるところまでシステ ムの開発が進んだ。しかしながら、VMAT 照射のような動的な MLC 照射野を用い た状況へ対応させるには更なるシステム の改良が必要であった。この手法が実現 できれば RPM から腫瘍位置を予測させ る割合が減少し、より良い精度で実患者 画像の腫瘍位置を求めることができると 考える。

(3)VMATにおける 4 次元に対応した 線量再構成法に関する研究

  2 次元の腫瘍動作に加え 3次元的な腫 瘍の動きにおいても線量再構成精度を評 価した。計算によって求めた腫瘍位置情 報を基に線量分布を合算したところ、腫

瘍の中心線量においては±2%以内、ガン マ 解 析 (3mm / 3%) に お い て も 平 均 92.9%のPass Rateを示し、実測と良く 一致した結果を得ることができているこ と分かった。実患者に対して線量再構成 を行う場合、腫瘍や肺の動きが直線的で あれば 4D-CT 画像から求まる腫瘍位置 において線量分布の合算を行うことで、

同程度の精度で投与線量の評価ができる と考えられる。しかしながら、実際には 腫瘍や臓器は呼吸と共に変形を伴いなが ら動くことが予想される。近年、変形を 伴 う 線 量 分 布 の 合 算 に は deformable registration が多く用いられている。本 研究で deformable registration を用い て線量分布の合算を行ったところ 3%前 後の線量差が生じると分かった。実患者 に対して線量再構成を行い deformable registration で合算を行った場合、この 程度の線量誤差が含まれる可能性がある と考えられる。いずれにしても、動きを 完全に把握していない場合には合算に伴 う誤差が生じる可能性がある。精度の高 い線量評価を行う場合には、合算前の位 相毎に計算された線量分布を使用し正常 組織や腫瘍の線量を見積もった方が良い と考える。

(4)線量再構成法と腫瘍位置検出法の

システム統合

  EPID 画像から検出した腫瘍位置を基 に線量計算に用いる 4D-CT 画像の呼吸 位相を決定し、線量再構成に必要なファ イルが作成できる一連のシステムを構築 した。これにより、VMAT照射時に EPID 画像を取得することで、実際の腫瘍位置

(10)

を基にした線量再構成を行うことが可能 となった。精度評価の結果、(3)のVMAT における4次元に対応した線量再構成法 に関する研究の結果と比較し、ガンマ解 析(3mm / 3%)の Pass Rate は平均 92.9%から 89.6%にわずかではあるが低 下する傾向を示した。腫瘍位置以外は(3)

の線量再構成と同一の手法を用いている ことから、低下の原因は腫瘍位置の検出 精度が影響していると考えられる。腫瘍 位置検出精度を向上することで今以上に 再構成精度を高めることができると考え る。

E. 結論

  呼吸状態による投与線量の変化に関連 するパラメータを求められた。これによ り、事前に投与線量の変化量を見積もる ことが可能だと分かった。4 次元に対応 した線量再構成法の一連のシステムを構 築し、ファントム実験において実測と一 致する結果が得られていると分かった。

  線量再構成を実臨床に使用することで、

実際に投与された線量を基にした臨床評 価も可能になると考える。実臨床への応 用に向けてシステムの改良及び評価を行 っていく。

F. 健康危険情報 特になし

G. 研究発表 1. 論文発表 なし

2. 学会発表

1) 橋 本 成 世, 伊 藤 康, 中 島 大, 北 村 望, 五月女達子, 大友結子, 上原隆三, 小 塚拓洋, 小口正彦. “VMAT における 腫瘍の呼吸性移動を考慮した線量再 構 成 ,” 医 学 物 理 33 Sup.1, 99,

(2013). 第 105 回日本医学物理学会

学術大会, 横浜市, 平成 25 年 4 月 11-14 日.

2) 五 月 女 達 子, 橋 本 成 世, 北 村 望, 木 田智士, 伊藤康, 中島大, 大友結子, 上原隆三, 小塚拓洋, 小口正彦. “胸 部病変に対する EPID 画像を用い た腫瘍 位置 情報の 確認,” 医学物 理 33 Sup.1, 96, (2013). 第105回日本 医 学 物 理 学 会 学 術 大 会, 横 浜 市, 平 成25年4月11-14日.

3) 橋 本 成 世, 伊 藤 康, 中 島 大, 北 村 望, 五月女達子, 大友結子, 上原隆三, 高 橋良, 松林史泰, 小塚拓洋, 小口正彦.

“VMAT に お け る 腫 瘍 の 呼 吸 性 移 動

を 考 慮 し た 線 量 再 構 成,” 医 学 物 理 33 Sup.3, 136, (2013). 第106回日本 医 学 物 理 学 会 学 術 大 会, 吹 田 市, 平 成25年9月17-18日.

4) Ito Y, Hashimoto M, Saotome S, Nakajima M, Otomo Y, Kitamura N, Uehara R, Kozuka T, Oguchi M.

“Dose reconstruction in considering of respiratory motion of the target using 4D-CT in VMAT,” Int. J.

Radiat. Oncol. Biol. Phys. 87(2) Supplement, S721, (2013).

(Presented at the 55th Annual Meeting of the American Society for Radiation Oncology, Atlanta,

(11)

GA, USA, Sep 22-25, 2013)

5) 北 村 望, 橋 本 成 世, 伊 藤 康, 中 島 大, 五 月 女 達 子, 小 口 正 彦, 佐 藤 智 春.

“呼 吸 移 動 を 考 慮 し た 線 量 再 構 成 に おける 4DCT の位相分割数が計算制 度に与える影響,” 第 41 回日本放射 線 技 術 学 会 秋 季 学 術 大 会, 福 岡 市, 平成25年10月17-19日.

6) 上原隆三, 橋本成世, 伊藤康, 中島大, 五月女達子, 北村望, 大友結子, 佐藤 智 春, 小 塚 拓 洋, 小 口 正 彦. “胸 部 病 変に対するVMATの治療計画パラメ ータが線量変化に及ぼす影響,” 日本 放射線腫瘍学会学術大会法文集, 161,

(2013). 第 26回日本放射線腫瘍学会

学術大会, 青森市, 平成 25 年 10 月 18-20日.

7) 伊藤康, 橋本成世, 中島大, 五月女達 子, 大友結子, 北村望, 上原隆三, 佐 藤 智 春, 小 塚 拓 洋, 小 口 正 彦. “呼 吸 性移動を伴う胸部病変へのVMATに 関する研究,” 日本放射線腫瘍学会学 術大会法文集, 266, (2013). 第26回 日 本 放 射 線 腫 瘍 学 会 学 術 大 会, 青 森 市, 平成25年10月18-20日.

H. 知的財産権の出願・登録状況 1. 特許取得 

2. 実用新案登録 なし  3. その他 なし

なし

(12)

参照

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