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まえがき
本書は,令和元年度となる2019年度現在,大阪歯科大学歯学部で筆者が 担当している1年次の数学(通年1コマ)と3年次の医療統計学(半期1コ マ)の講義内容をもとにしたテキストです.独習書としても講義の教科書と しても利用しやすいように,各講の区切りの位置に,予習復習の目安を設け ています.本書の狙いは,次の3点にあります. 医療系大学で数学を学ぶ機会は非常に限られていますので,せめて上の 二つの講義の内容を数学的に一貫したものにしたいと考えていました.平成 28年度入学生から1年次の数学の内容をその準備として刷新し,ちょうど平 成30年度から3年次の医療統計学を担当しました.さらに担当初年度に調 整したものを次年度中に出版するという非常に順調なペースで,当初の目的 が達成されました.こうした幸運には何か使命が伴うはずです.後の と も関係しますが,医療系に限らず,大学で数学系教員が統計学教育の基礎を 担当する場合が増える,あるいはその意味が重くなると思われます.大学の 環境変化の中で,数学の役割を再確認し,数学を研究している人が数学を教 育するという体制の維持に貢献することが,本書の第一の狙いです. リテラシーという言葉を耳にする機会が増えていますが,実際には本来 の「文字を読むことができる」というレベルのこと,つまり,掲示などによ る通知を理解するとか,文書を交換して約束をするとかの基本的な行動や, 複数の報道内容を比較するとか,論説を批判的に読んで意見を書き留めると かの文化的な習慣が,身についていない大学生が増えています.これは若者 医療系を志す人のための基礎数学―微積分から統計学へ― 森 淳秀著 https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320061941morifinal:<2020/2/1>(9:39)
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まえがき の人口が減少し,大学進学率が上がったことの効果なので,読み書きのリメ ディアル教育を行うことは,いまや大学の責任だと考えられます.文章の代 わりに図表や映像教材を使えばよいという意見もあります.しかし少なくと も本学の学生の大半は,活字を読むことによって成長しているように見えま す.また,私見ですが,図表や映像で何かを理解することは,活字で理解す ることより程度が高いのではないかと思います.文章を読むことができない 人に図表や映像を見せても,あるいは口頭で説明をしても,諸概念の論理的 なつながりが伝わらないからです.本書の第二の狙いは,教員が書いた文章 を学生に読ませ,読解力を国家試験などのレベルに引き上げることです. 付録として平成 ・ 年の学習指導要領の改訂について,まだ教科書が 出ていない段階ではありますが,一般大学生向けに趣旨をまとめました.教 育学部向けではありません.この改訂において数学は,児童・生徒たちが科 学的探究の活動においてお互いにつながりを持つためのツールのように考え られています.古い常識を批判的に吟味して新しい価値観をつくる.これは まさに若者の特権ですが,そのような価値観は互いにつながりを持つことに よって形成され,強化されるものです.若者は人口としては減少しています が,ネットワーク上の存在としては大きくなっていくことが期待されます. 統計学,小学英語,プログラミングといった新しい教育は, だけではな い,若者の多様なつながり方を促進するものです.一人で探求することや, 流行に流されないことも大切ですが,数学は共有されるべきものだと思いま す.この考えを若者たちに発信することが,本書の第三の狙いです. 本書を出版するアイデアを頂いた清閑堂の木枝祐介氏,出版を実現して頂 いた共立出版の大越隆道氏,貴重な時間を割いてコメントを頂いた京都大学 ゲノム医学センターの吉安徹氏,コメントだけでなく中学校の統計教育に関 する情報を頂いた京都教育大学・ さきがけの横山知郎氏,そして本書の 一部に吸収された何年かの講義において,様々な間違いを指摘してくれた大 阪歯科大学と京都大学の受講生の方々に深く感謝したいと思います. 年 月 大阪歯科大学数学教室 森 淳秀 医療系を志す人のための基礎数学―微積分から統計学へ― 森 淳秀著 https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320061941