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問題社員から会社を守るための就業規則見直しポイント はじめに どの時代にも 会社にとって問題となる社員は存在していました 高度経済成長時代には そのような問題社員を抱えている余力が企業にもありました しかし リーマンショック 東日本大震災という大きな二つの経済危機を経て 企業には そのような余力はな

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Academic year: 2021

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問題社員から会社を守るための就業規則見直しポイント

勤怠に問題がある社員への対応方法

能力不足の改善がされない社員への対応方法

協調性不足が組織に悪影響を与えている社員への対応方法

会社の規律を守れ!

問題社員への

適切な対処法

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森田務公認会計士事務所

第 97 号

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問題社員から会社を守るための就業規則見直しポイント

どの時代にも、会社にとって問題となる社員は存在していました。 高度経済成長時代には、そのような問題社員を抱えている余力が企業にもありました。し かし、リーマンショック、東日本大震災という大きな二つの経済危機を経て、企業には、 そのような余力はなくなっています。 すべての社員が、会社業績の向上に一丸となって取り組まなくては、厳しい競争に勝ち 残ることはできません。 本レポートでは、問題社員をどのようにして会社に貢献できる社員に変化させるか、ど うしても変われない社員は、どのようにして退職してもらうかという2つの視点で作成し ています。 自社の組織風土を良い状態に保つために、問題社員にどのように対処したらよいか、参 考にしていただければと存じます。 会社にとって問題となる社員にはどのようなパターンがあるでしょうか。 本人の勤務態度が悪くて、仕事に支障をきたすという個人レベルのマイナス社員から、 チームワークを乱し周囲へ悪影響を与える組織レベルのマイナス社員も存在します。 また最も多いのは、力量不足で会社の業績・業務に貢献できず、改善努力もしない社員 です。 ①勤務態度に問題 がある社員 無断欠勤や遅刻が多い等の勤怠不良を起こしたり、企業の定めている ルールを破る社員。会社の規律乱れ、士気の減少につながる。 ②周囲に悪影響を 与える社員 2種類のタイプがある。他人とのコミュニケーションを阻害するタイ プと、他人との衝突を繰り返すタイプの2種類。 ③力量不足が解消 できない社員 業務上のミスを頻発させたり、取引先とのトラブルが多い社員。また、 業務効率が非常に悪く、周囲のメンバーに大きな迷惑や負担をかけて しまう社員。それを解消する努力をしない社員。

会社にとって問題となる社員とは?

はじめに

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企業経営情報レポート 2 問題社員の行動は、会社と社員の間で締結される労働契約の契約不履行というだけでな く、最悪の場合は会社に対する悪い評判が広まり、その結果、会社の社会的評価にまで影 響をおよぼす可能性も否めません。 問題社員に対する対応としては、教育・指導という方法がありますが、会社を守る選択 肢の最後の手段として、経営者は問題社員に対して会社を去ってもらわなければならない という判断を下す必要もあります。そのためには、会社のルールブックである就業規則の 点検整備を行うことが、トラブル予防の最も重要なことになります。 就業規則は、会社のルールブックです。上手く活用することで会社が常に晒されている 危険から身を守ることができます。 解雇をしなくてはならない問題社員が出てきた時に、最初に確認しなくてはならないこ とがあります。それが就業規則の解雇の条文の確認です。解雇は、就業規則の絶対的必要 記載事項となるためで、就業規則に記載していない会社はないと思いますが、その条文の 中身についは今一度確認する必要があります。解雇事由が就業規則に明記されていなけれ ば不当解雇と言われる可能性があるからです。 では、就業規則に記載のない事由での解雇は許されないのでしょうか。 現在、それに対する論点は2つあります。 ①就業規則の解雇事由は「例示列挙」にすぎないため、記載のない事由で解雇しても合 理的で相当性があれば許される。 ②就業規則の解雇事由は「限定列挙」なので、記載のない事由による解雇は許されない。 上記論点を踏まえると、例として以下のような内容が考えられます。 例(解雇) 第○○条 社員が次の各号のいずれかに該当するときは、解雇とする。 (1) 精神や身体の障害で業務に耐えられないと認められたとき (2) 勤務成績または勤務状況が不良で、改善の見込みがないとき (3) 事業の縮小等により社員の減員が必要なとき (4) 天災地変その他やむを得ない事由により事業の継続が不可能となったとき (5) その他前各号に準ずる事由があるとき

就業規則における解雇事由の点検整備

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実務的には、想定できる解雇事由を列挙したうえで、最後に「その他前各号に準ずる事 由があるとき」という包括的な規定を盛り込むことにより、両方の観点を備えた就業規則 が完成します。 留意する点としては、解雇事由に該当したからといってすぐに解雇できるわけではあり ません。 法律で解雇は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場 合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められています。 過去の判例でも単に「営業成績が悪いから」、「勤務態度が悪く、協調性も無いから」と いって解雇はできないとしています。 ●客観的に合理的な理由というのは、誰もが辞めさせられてもしかたがないと思える理 由で、社員の問題となる行動になります。 ●社会通念上相当というのは、社会一般からみて納得できる理由で、再三にわたり注意、 指導、教育を積み重ねたり、又は、配置転換をしたにもかかわらず、本人に改善の意 志が見られない場合の状況ということです。 つまり、注意、指導、教育、配置転換等を会社としてやれるだけのことはやったが、本 人に改善の意志が認められない場合、他の社員に対しても悪影響を及ぼすためという理由 で解雇することができます。 次に懲戒処分についてですが、会社が懲戒処分を行うためには、就業規則に懲戒処分の 種類、内容を定めておかなくてはなりません。会社は問題社員に対して注意、指導をして も、その行為が改善されなければ、懲戒処分を課すことができ、それでも改善の余地が見 られなければ解雇処分につなげることができます。懲戒処分の種類としては、譴責(けんせ き)、減給、出勤停止、降格(降職)、諭旨解雇、懲戒解雇があります。また懲戒事由として、 就業規則に必ず記載すべき事由があります。下記に例としてご紹介しておきます。 (1) 本規則、会社の定める諸規定または法令に違反したとき (2) 正当な理由なく、たびたび遅刻、早退または欠勤したとき (3) 勤務に関して注意されたにもかかわらず改善しないとき (4) その他前各号に準ずる行為があったとき

就業規則における懲戒事由の点検整備

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企業経営情報レポート 4 やはりここでも、起こりうるすべての事由を具体的に記載するのは不可能なので、(4) のような包括的な規定を入れておくことが重要なポイントとなります。 就業規則に定めがあるという以外に、懲戒処分を行うときのポイントが3つあります。 ①懲戒処分と処分の対象となった行為の均衡がとれていること → 軽微な違反行為に重い処分は課せられませんが、軽微な行為を繰り返した場合、 1回目は、軽い処分、2回目以降は処分を重くしていくことは可能。 ②二重処分にならないこと → 同じ違反行為に対して、懲戒処分を2度に渡って課すことはできません。 ある違反行為があり、それに対して減給をした上で、出勤停止にするのは無効。 ③懲戒処分の手続きを遵守すること → 就業規則に、処分を行うときの手続が規定されている場合は、それを遵守しなく てはならず、怠った場合は違反行為が重大でも無効になる可能性があります。 それでは、第2章から問題社員の対応方法について、事例を交えながら解説をします。

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勤怠に問題がある社員への対応方法

勤怠に問題がある社員とは、社会人として最も基本である「遅刻しない」、「欠勤しない」、 ということができない社員のことを言います。そして、この問題社員を放置しておくこと は大変危険です。 なぜなら、他の社員も真面目に働くのが馬鹿らしくなって、勤怠不良になる者が増えて しまい、職場のモラルが下がってしますからです。 遅刻・欠勤をすることは、労働契約上の義務違反(債務不履行)に該当し、普通解雇事 由となり、さらに職場秩序の面から、正当な理由のない勤怠不良に対しては懲戒解雇事由 にもなります(元々、労働者には欠勤の権利や遅刻の権利はありません)。ただし、社員の 勤怠不良を理由とする解雇が有効と認められるためには、客観的に合理的な理由と社会通 念上相当と認められる事が必要です(労働契約法 16 条)。 では、どのように対応していけば良いか事例を交えて対応方法をご紹介していきます。 ■事例 M社には、勤怠不良の社員Yがいます。Yは遅刻の常習で、また欠勤も連続ではあり ませんが毎月3~4日は必ずしています。 そこでM社は、日常業務ではYを戦力として計算することができないと判断し、新し く勤怠の良い人をYの代わりに採用しようと考えています。 上記事例の問題社員Yに対して、会社が取る行動としては、はじめにに改善を促して様 子を見ることです。そしてつぎに結果を見て、改善の見込みがなければ退職勧奨や解雇と いった手段で退職してもらうということになります。 退職勧奨とは、会社側から社員側に強制を伴わない退職の働きかけを行うことで、社員 側がこれに応じると、労働契約上の合意解約となり、「解雇」にはあたりません。解雇トラ ブルに発展することがないため、できるかぎり退職勧奨で辞めてもらうように話を進めて いくことが重要となります。では、具体的に対応の仕方を見ていきます。 まず対応の仕方として絶対にやってはいけないこととしては、いきなり勤怠不良社員Y に対して勤怠不良を理由として解雇してしまうことです。 これは解雇権の濫用ということで、解雇が無効になってしまい問題社員Yに解雇日以降

勤怠に問題がある社員への対応例

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企業経営情報レポート 6 の賃金を支払う上(民法 536 条2項)に、復職させなくてはなりません。 そうなってしまうと、他の社員は当然納得しないので職場のモラルは低下して、モチベ ーションは保たれなくなります。 正しい方法ですが、まず問題社員Yに対しての対応する前に整理しなくてはならないポ イントが2点あります。1点目はいくら勤怠不良でも解雇できない場合があります。それ は対象者が裁量労働制の労働者、幹部社員、フレックスタイム制適用社員になります。 理由は、裁量労働制の労働者、幹部社員は勤怠管理を本人に委ねており、フレックスタ イム労働者は、始業、終業を労働者の裁量に委ねているからです。 2点目は、Yの勤怠不良の状況が解雇されてもやむを得ない程度の状態であることです。 そのためには、以下のポイントに注意をしなくてはなりません。 ●欠勤回数、連続性、無届なのか、理由はあるか ●遅刻(早退)回数、時間数、頻繁か、無届なのか、理由はあるか ●解雇までに注意・警告がしっかりと行われたか ●欠勤または遅刻をすることによって、企業にどのような支障が生じたのか では、問題社員Yに対して会社側が取るべき行動をフローチャートで見ていきます。

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①口頭注意(業務報告を作成) ②勤怠不良 ③注意(始末書の提出) ④勤怠不良 ⑤厳重注意(始末書の提出) ⑥勤怠不良 ⑦退職勧奨(退職合意書) ⑧解雇(解雇通知書) 1カ月以上 経過観察 1カ月以上 経過観察 1カ月以上 経過観察 ①まずは、問題社員の直接の上司が口頭で注意をしますが、他 の社員がみている前で行うと、後でパワハラと反論される可 能性があるので、他の社員のいない会議室等で行います。係 長等の一定のリーダー職を同席させて2対1で行い、同席者 に業務報告を作成してもらい、記録に残しておきます。問題 社員には改善目標も提出させます。 ③改善の見込みを見極めなくてはならないので、明確に注意を して始末書を提出させます。改善目標の内容についても話し 合います。 ⑤前回の注意よりも厳しく注意をします。その後、必ず始末書 を提出させてください。今回も改善目標の内容を話し合いま す。 ⑦⑧改善の見込みがないと判断しても、すぐに解雇に踏み切ら ず、退職勧奨による合意退職を目指します。そのときに始末 書等の証拠を見せながら話をします。受け入れられなければ 解雇に踏み切ります。

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企業経営情報レポート 8 ■解雇有効のケース ●判例 A社に勤務していた社員Bは、通勤途中の負傷や私傷病等を理由に、約5年半の間に 約2年4ヶ月を欠勤し、そのうち、4回の長期欠勤を含んでいました。また、最後の長 期欠勤の前には、出勤日数の約4割が遅刻であった。それだけでなく、ある月において は、計 100 分の無断離籍をしました。 A社は、社員Bに再三の注意及び面接指導を行いましたが、社員Bは反省するどころ か、反発することさえありました。こうした社員Bの態度は、A社の業務に多大な支障 を与えるという理由で、A社は社員Bに解雇通告をしました。 ●ポイント この裁判では、社員Bは上記のとおり、遅刻・欠勤を繰り返し、出勤しても、離籍が 非常に多いことに加え、勤務成績も悪く、やむを得なく他の社員がフォローしなければ ならないこともあり、結果、A社の業務遂行に支障を生じさせたと認められました。 また、社員Bの労働能率は著しく低いということで、就業規則の解雇事由である「労 働能率が甚だしく低く、会社の事務能率上支障があると認められたとき。」に該当すると 認められました。 さらに、A社は社員Bに対して面接指導を行ってきたものの、社員Bの勤務態度に変 化は見られませんでした。 以上のことから判断すると、A社が社員Bを解雇したことには合理的な理由が存在す るとして、解雇有効と判断されました。 上記のとおり、本件については、遅刻・欠勤のみならず、勤務成績不良も解雇理由とし て付加されており、また、再三にわたる面接指導を行ったこともポイントとなっています。 仮に、一度も注意・指導を行わず、遅刻・欠勤が積み重なった段階で、いきなり解雇通 告をした場合は、結果は違っていたかもしれないと考えられます。 また、遅刻に関して回数で解雇という判断は難しいですが過去に、日産自動車事件(東 京地裁 昭和 61.11.28)という裁判で2ヶ月半の間に回数にして 60 回、累計時間にして 110 時間 30 分におよぶ遅刻を繰り返し、上司の指示命令を拒否したということで解雇が有 効とされた例はあります。 一方で、何十回も遅刻をしていても会社として指導していなかったり、始末書を取って おらず遅刻を理由に突然解雇して起きた裁判は、解雇が無効となっているので注意が必要 です。

勤怠問題で解雇した社員についての裁判

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能力不足とは、労働の質の不足であり、これをそのまま放置することは絶対によくあり ません。ただ、労働の質不足を退職の理由とするのは、一般的には困難であり、かなり周 到な用意をしなくてはなりません。 つまり会社は、ただ仕事が遅いとか、他の社員と比べて仕事ができないということだけ の理由では、解雇することはできないということです。 では、なぜ困難なのかという理由は2つ考えられます。 ①会社が、社員に求める労働能力というのがはっきりとしていない → これを解決するには、入社時や異動時に会社が社員に求める労働能力について、はっ きりと書面にして示し労使双方が同じ思いとなるようにする必要があります。 ②労働能力欠如を証明することを考えておらず、労務管理がきちんとなされていない → 退職勧奨や解雇まで行くには、業務指導書を交付したり、始末書を提出させるこ とが複数回ないと証明はできません。 ここからは、事例を交えて対応方法をご紹介してまいります。 ■事例 C社には、勤務態度は真面目で無遅刻、無欠勤であるが、とにかく仕事が遅く、他の 社員より2倍以上時間がかかる社員Sがいました。社員Sは、所定労働時間(8時~17 時、うち休憩が 12 時~13 時)内には担当する仕事が終わらないため、残業を発生させて いました。その結果、社員Sは他の社員の 70%の仕事しかしていないのにも関わらず、 逆に給料は 1.5 倍になっていました。そこでC社は、社員Sに1ヶ月の猶予を与え、そ の間は勤務しないで他に職を探してもらって退職しいてもらいたいと考えています。 上記事例の問題社員Sに対して、会社が取る行動としてははじめに仕事の遅さを改善さ せる努力を促します。このためには、3ヵ月、6ヶ月など期間を区切って改善指導を実施

能力不足の改善がされない社員への対応方法

能力不足が改善されない社員への対応例紹介

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企業経営情報レポート 10 し、その間1~2週間に一度チェックして、その結果をフィードバックして自覚させる必 要があります。そして、次に結果を見て、改善の見込みがなければ配置転換を試し、それ でも見込みがなければ退職勧奨や解雇といった手段で退職してもらうことになります。 今回は、勤怠不良のケースよりも慎重な対応を取ること必要があります。 では、具体的に対応の仕方を見ていきます。 まず対応の仕方として絶対にやってはいけないこととしては、いきなり勤怠不良と同様 にSに対して労働能力欠如を理由として解雇してしまうことです。 なぜなら何の準備も無く、解雇してしまい紛争になったとしても解雇が無効となり、他 の社員の企業への信頼、企業の権威が傷ついてしまうからです。 今回のケースでも、問題社員Sに対して事前に整理しなくてはならないポイントが 2 点 あります。1点目は新卒者でないことの確認です。 理由は、新卒者が仕事をできる前提で入社してきていないためです。 2点目は、Sの労働能力欠如の状況が解雇されてもやむを得ない程度の状態であること です。そのためには、以下のポイントに注意をします。 ●特に中途採用者に関しては、企業が当該労働者に求める(期待する)労働能力と比較 してどれくらい差があるのか ●解雇までに注意・指導が行われたか ●その労働能力の欠如により、企業はどのような支障が生じたか では、問題社員Sに対して会社側が取るべき行動をフローチャートで見ていきます。

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①改善指導 業務指導書を作成 ②具体的な目標設定(教育訓練・指導)(始末書提出) ③改善指導 業務指導書を作成 ④具体的な目標設定(教育訓練・指導)(始末書提出) ⑤配置転換の検討 ⑦解雇(解雇通知書) ⑥退職勧奨(退職合意書) 6カ月以上 経過観察 6カ月以上 経過観察

教育訓練、指導しても

状況に変化が見られない

①会社が当該社員に求める労働能力の内容、程度を明確に伝 え、未達なので改善するように指示、指導します。必ず書面 に残します。 ③この時点で改善が見られなければ、再度問題社員に対して会 社が求める労働能力の内容、程度を明確に伝えます。必ず書 面に残します。 ⑤最後のチャンスとして、職種限定での採用でなければ今より 軽易な職務の部署への配置転換を検討する方法もあります。 それに応じて給与の見直しも行います。 ⑥⑦改善の見込みがないと判断しても、すぐに解雇に踏み切ら ず、まずは退職勧奨による合意退職を目指します。そのとき に業務指導書や始末書等の証拠を見せながら話をします。受 け入れられなければ解雇に踏み切ります。 ②改善の状況を見る期間として6カ月を設け、会社は教育訓 練、指導を行います。2週間に一度はチェックをして、結果 を本人に自覚させます。教育訓練、指導内容は必ず書面で残 します。また、指導の内容によっては始末書を提出させます。 ④改善の状況を見る期間として6カ月を設け、会社は教育訓 練、指導を行います。2週間に一度はチェックをして、結果 を本人に自覚させます。教育訓練、指導内容は必ず書面で残 します。また、指導の内容によっては始末書を提出させます。

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企業経営情報レポート 12 ■解雇無効のケース ●判例 A社に勤務する社員Bは、入社以来、営業職を担当しており、当初の人事評価は「標 準」が多かったが、後半は「標準を下回る」評価が多くなっていました。 その後、社員Bは業務課へ異動し、決算書の作成等を担当することになりましたが社 員Bは頻繁にPCの入力ミスをしていました。ミスの数は少なくとも約 90 件が明らかに なっていました。 その結果、誤った決算書を作成することになり、誤りが発覚後、社員Bは始末書を提 出しましたが、A社は社員Bに解雇通告をした。根拠となる就業規則の解雇事由は、「技 能発達の見込みが無いと認められたとき。」でありました。 ●ポイント 上記について、裁判では、解雇無効と判断されました。判断理由のひとつに、A社で は、物流業務等、社員Bを配置転換可能な部署が存在したことが挙げられます。 上記のように、能力不足の社員を解雇する際、配置転換可能な部署が存在する場合は、 無効となるケースもあると考えて良いでしょう。 ■解雇有効のケース ●判例 弁当屋であるC社において、社員Dは、店長として勤務していました。社員Dは、忙 しい時間帯に帰ってしてしまうことや理由も言わずに所在不明になることなどが頻繁に ありました。それだけではなく、接客態度の悪さによる客からの苦情、さらには商品価 値の無い焦げた商品を販売、加えて、従業員のシフト管理も不十分でありました。C社 は、現場の混乱を生じさせていたなどを理由として社員Dを解雇しました。 ●ポイント 上記について裁判では、社員Dの勤務状況は、根拠となる就業規則の解雇事由である 「勤務成績が著しく不良で就業に不適格と認められたとき。」に該当すると認めました。 また、社員Dの店長としての能力不足は、C社の経営に影響をおよぼす程になっている、 C社において店長を配置転換できる部署は無いと認められたことにより、解雇有効と判 断されました。 能力不足の社員を解雇し、解雇有効と判断されたケースには、上記の判例のような、管 理職やヘッドハンティングされた社員を解雇する場合が多いようです。

能力不足社員についての判例

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協調性とは、他人を理解し、うまく物事を進める能力で会社組織に所属する社員には、 非常に重要なスキルであります。 もし協調性が足りない社員がいる場合、職場の和が乱れてしまうため断固たる対応をと る必要があります。このような、社員に対して会社や上司が何の対応も取らなければ他の 社員のモチベーションが下がり、最悪の場合職場にいる全社員が会社や上司の言うことを 聞かなくなるか、聞き流すだけとなってしまい結果として会社の生産性が低下することに なります。しかし、このような協調性のない社員のタイプは、能力的が高く言葉巧みなの で慎重に対応する必要があります。 では今回の場合、どのように進めていくことが適切なのか事例を交えて対応方法をご紹 介します。 ■事例 L社には、勤務自体に問題はない(勤務態度も良く、仕事は速く失敗が少ない。)が、 他の社員との協調性が欠けていて、職場で気に入らないことがあると、すぐに他の社員 を一方的に責めたり無視したりする社員Oがいて、職場の雰囲気を悪くしていました。 そこで、L社はOに対して1ヶ月の猶予を与え、その間は勤務しないで他の職を探し てもらって退職してもらいたいと考えています。 上記の問題社員Oに対して会社が取れる対応としては、協調性がないこと以外は会社に 貢献している社員なので、まずはじめに協調性が不足していることを認識してもらい改善 を促すこととなります。 それでも改善が見られないようであれば、次に退職勧奨や解雇という手段をとり会社か ら去ってもらいます。 改善を促すことは、最終的な解決手段である退職勧奨や解雇を円滑にするうえで重要な 要素となるので、改善を促していることを明確にすることがポイントです。 では今回も、具体的に対応の仕方を見ていきます。 3つの事例に共通して絶対にやってはいけないこととしては、協調性不足でいきなり解 雇してしまうことです。

協調性不足が組織に悪影響を与えている社員への対応方法

協調性がない社員への対応方法

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企業経営情報レポート 14 そして協調性不足の社員は、その問題を指摘されると「自分は正しく、上司や同僚の方 が間違っている。」という言い分がよく出てくるので問題が起きた段階で、客観的に事態を 見極めることが対応のスタートとなります。 ■客観的に事態を見極めるための4つのポイント ①関係者からの事情聴取 → ②本人の言い分を聞く ③ ②の言い分に対する裏付け調査 → ④客観的事実の認定と評価 では、問題社員Oに対して会社側が取るべき行動をフローチャートで見ていきます。 もし、会社に複数の部署があれば、④の後に本当に最後のチャンスとして配置転換を行 う方法もあります。 ①問題が発生(客観的事実関係の確認) ②注意書の交付 始末書の提出 ③警告書の交付 懲戒処分を行う ④問題が発生(客観的事実関係の確認) ⑥解雇(解雇通知書) ⑤退職勧奨(退職合意書) 2~3回は様子を見てその都度注意書を交付始末書の提出を求める ②見極めた事実とその評価を前提に、問題社員に対し て注意書を交付して禁止行為であることを明確に通 知し、始末書の提出を求めます。そして、教育して 改善状況を見ます。 ④結局本人に、改善の意思が見られず、問題が発生し てしまったときも上記の4つのポイントに沿って客 観的事実の見極めを行います。 ⑤⑥改善の見込みがないと判断しても、すぐに解雇に踏み切ら ず、まずは退職勧奨による合意退職を目指します。そのとき に注意書や始末書等の証拠を見せながら話をします。受け入 れられなければ解雇に踏み切ります。 ①問題が発生したときは、上記の4つのポイントに沿 って客観的事実の見極めを行います。 ③②の期間内に改善されなければ、警告書を交付し、 場合によっては懲戒処分を行います。厳しい対応を とり、最後のチャンスとして様子を見ます。

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配置転換をすることにより、人間関係が変わりそれに伴い協調性不足が改善する可能性 も十分あります。 また、協調性不足の社員を注意に関しても、その途中で社員からパワハラではないのか と反論される可能性があるので他の社員のいない会議室等で行います。係長等の一定のリ ーダー職を同席させて2対1で行い同席者を記録係として記録を残すことが重要なポイン トとなります。 協調性不足の社員という表現は、具体性に欠けます。例えば、同僚とのトラブルが絶え ない者もいれば、孤立を余儀なくされている者もいるからです。後者の場合は、社内での いじめやパワーハラスメントの問題も考えられますが、ここでは、前者の同僚とのトラブ ルが絶えない者を解雇したケースをご紹介します。 ■解雇無効のケース ●判例 A社に勤務していた社員Bは、同僚との協調性に欠けていて、いざこざが絶えません でした。また、業務上、関係のある役所の担当者に失礼な態度をとり、さらには、会社 の方針を批判したり、指揮命令に従わないなどがありました。社員Bはこれらを理由と してA社から解雇通告された。 ●ポイント 上記について裁判では、A社の事業内容は比較的単純作業であったことから、従業員 間で緊密な協調が無ければ成立しないということはなく、また、社員BがA社の指揮命 令に従わなかった事実を推認させる事情も見当たりませんでした。 さらに、A社は、上記の業務上、関係のある役所の担当者に失礼な態度をとった翌日 には、社員Bに注意をしたものの、それ以外には、社員Bに注意・指導を行った形跡は 見当たりませんでした。 これらのことから判断すると、社員Bの協調性の無い態度が、A社の業務に支障を生 じさせたとは言えず、また、A社の努力により、従業員間の人間関係修復を行うのは不 可能とまでは、現段階で言うには早過ぎることから、解雇無効と判断されました。 上記判例は、協調性不足の社員の解雇が有効と判断されるのが難しいというのではなく、 A社の社員Bに対する注意・指導が足りないということがポイントであると判断できま す。また、注意・指導の他に配置転換を行い、人間関係に変化を与えてみることも必要で はないかと判断することができます。

協調性不足社員についての判例

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企業経営情報レポート 16

■参考文献

『社員の正しい辞めさせ方、給料の下げ方』日本実業出版社 井寄 奈美 『問題社員・余剰人員への法的実務対応』日本法令 浅井 隆 『就業規則作成&見直しマニュアル』すばる舎リンケージ 杉山 秀文

企業経営情報レポート

会社の規律を守れ! 問題社員への適切な対処法 【著 者】日本ビズアップ株式会社 【発 行】森田 務 公認会計士事務所 〒630-8247 奈良市油阪町456番地 第二森田ビル 4F TEL 0742-22-3578 FAX 0742-27-1681 本書に掲載されている内容の一部あるいは全部を無断で複写することは、法律で認められた場合を除き、著 者および発行者の権利の侵害となります。

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