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第 3 号 Ni 基単結晶超合金のクリープ寿命に及ぼすアルミ拡散コーティングの影響 31 Table 1 Chemical compositions (mass ) of single crystal superalloys examined in this study. Alloys Ni Co

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Academic year: 2021

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(1)

Ni 基単結晶超合金のクリープ寿命に及ぼす

アルミ拡散コーティングの影響

佐 藤 彰 洋

1,2

青 木 祥 宏

2

荒 井 幹 也

2

原 田 広 史

1

1物質・材料研究機構超耐熱材料センター 2石川島播磨重工業株式会社

J. Japan Inst. Metals, Vol. 71, No. 3(2007), pp. 320325  2007 The Japan Institute of Metals

Effect of Aluminide Coating on Creep Properties of NiBase Single Crystal Superalloys Akihiro Sato1,2, Yasuhiro Aoki2, Mikiya Arai2and Hiroshi Harada1

1High Temperature Materials Center, National Institute for Materials Science, Tsukuba 3050047 2IshikawajimaHarima Heavy Industries Co., Ltd., Tokyo 1358710

This article compares the creep rupture responses of aluminide coated samples with uncoated ones to elucidate the effect of diffusion layers on resistance against creep. Three Nibase single crystal superalloys, CMSX4, TMS75 and TMS138, were chosen for present study. Creep specimens had thicknesses ranged from 1 mm to 4 mm to simulate the varying dimensions across the actual turbine blade. Creep conditions were set at 1060°C137 MPa and 1100°C137 MPa. Experimental results indicated that the creeprupture lives of coated specimens were shorter than those of the bare samples. In particular, the coated TMS138 specimen with 1 mm thickness had an 86 reduction in creep rupture life. Microstructural observations on coated samples indi-cated the formation of diffusion zones beneath the coating; a creep life model was then developed to taken account the reduction in load bearing cross sectional area. In conclusions, the creeprupture lives predicted by the model have shown good agreement with the experimental values.

(Received May 15, 2006; Accepted December 4, 2006)

Keywords: aluminide, nickelbase single crystal superalloys, secondary reaction zone (SRZ), creeprupture life

1. 緒 言

ジェットエンジンの出力・効率の向上を目的に,タービン 入り口温度(Turbine Inlet Temperature, TIT)の高温化が図 られている.その結果,最新ジェットエンジンの TIT は 1600°C にも達し,今後も上昇する傾向が見られる1).この 高い TIT を実現するために,高圧タービン動翼に関して, 使用される Ni 基単結晶超合金(以下,Ni 基超合金と略す)の 耐 用 温 度 向 上2)と 熱 遮 蔽 コ ー テ ィ ン グ ( Thermal Barrier Coating, TBC)システムの適用3)などが図られている.TBC システムは,ボンドコートと呼ばれる耐酸化金属コーティン グと,その上のトップコートと呼ばれる熱遮蔽セラミックス コーティングで構成される.一般的に,ボンドコートには PtAl などのアルミ拡散コーティング,あるいは MCrAlY コーティングが用いられ,それぞれ優れた耐酸化特性を有す ることが知られている.コーティングの組織は,一般的に コーティング層(付着層とも言う)とコーティング施工時に コーティング基材界面に生成する拡散層(InterDiffusion Zone, IDZ)からなり,Re を多量に有する最近の Ni 基超合 金では IDZ の下に二次反応層(Secondary Reaction Zone, SRZ)が生成し,高温での使用中に厚く成長することが報告

さ れ て い る4,5). IDZ や SRZ は 脆 い Topologically Close 

Packed(TCP)相が多量に析出した層であり,これらの層の 存在により基材強度特性は劣化すると予想される4,6).しか しながら,合金種の差や付着層,IDZ, SRZ がクリープ強度 に及ぼす影響を,定量的かつ包括的に,論じた例はない.一 方,最新のタービン翼では冷却効率向上などの理由で部材肉 厚が薄くなる傾向がある.薄肉化が進むとコーティング層や SRZ が機械特性に及ぼす影響はさらに大きくなると予想さ れることから,それらの影響を定量的に把握することは必要 である. そこで本研究では,上記の課題を克服するため,最も汎用 的に使用され,ボンドコートの基本となっているアルミ拡散 コーティングを第 2 世代から第 4 世代 Ni 基超合金に施し, コーティングの有無,合金種,試験片の厚さや付着層, IDZ, SRZ 厚さなどが条件 1060~1100°C137 MPa のクリー プ寿命に及ぼす影響を,定量的に検討した. 2. 実 験 方 法 基材として,第 2,第 3,第 4 世代 Ni 基超合金 CMSX 47),TMS758),TMS1389)を用いた.それらの合金組成 を Table 1 に示す.各合金の単結晶丸棒を鋳造した後,溶体

(2)

Table 1 Chemical compositions (mass) of single crystal su-peralloys examined in this study.

Alloys Ni Co Cr Mo W Al Ti Ta Hf Re Ru CMSX4 (2ndgen. SC) Bal. 9.0 6.5 0.6 6.0 5.6 1.0 6.5 0.1 3.0 ― TMS75 (3rdgen. SC) Bal. 12.0 3.0 2.0 6.0 6.0 ― 6.0 0.1 5.0 ― TMS138 (4thgen. SC) Bal. 5.8 3.2 2.8 5.9 5.9 ― 5.6 0.1 5.0 2.0

Fig. 1 Effect of specimen thickness on LarsonMiller Parameter of the bare and coated TMS138 specimens at 137 MPa.

Fig. 2 Creep rupture life at 1100°C137 MPa of the bare and coated TMS138, TMS75 and CMSX4. 化熱処理を施し,平行部が幅 3 mm,厚さ 1~4.5 mm の板 状クリープ試験片を作製した.クリープ試験片は引張軸が結 晶の〈100〉方向から 10°以内となるように加工した.その後, 一次時効熱処理に相当する熱サイクルでハロゲン化アルミを 試験片表面において還元させ,基材中にアルミニウムを浸透 させる処理(アルミ拡散浸透処理)を施し,試験片全ての面に bNiAl 層を形成させた(以下,アルミ拡散コーティング材と 称す).一部の試験片は,アルミ拡散浸透処理前に Pt めっ きをすることで,PtAl コーティングを施した(以下,PtAl コーティング材と称す.アルミ拡散コーティングと PtAl コーティングを総称してコーティング材とする).いずれの コーティング材も二次時効熱処理を施した後,温度 1060°C または 1100°C,負荷応力 137 MPa のクリープ試験に供し た.コーティング材の負荷応力はコーティング前の試験片平 行部断面積から計算した.本研究で適用したコーティングで は,付着層と IDZ の間がコーティング前の試験片表面とな る.一方,比較のためにコーティングを施さず同じ熱サイク ルを経た材料(以下,ベア材と称す)のクリープ試験も行なっ た. クリープ試験後の試験片に対して,平行部の断面を走査型 電子顕微鏡(SEM)により観察した. 3. 結 果 3.1 クリープ試験結果 Fig. 1 に TMS138, TMS75, CMSX4 のコーティング 材およびベア材の負荷応力 137 MPa におけるクリープラプ チャー試験結果を示す.試験片厚さとラーソン・ミラー・パ ラメータ(=T×(20+log tr)×10-3,T は試験温度(K),tr は破断寿命(時間),LMP と略す)の関係をプロットした. TMS138 のベア材の LMP は,本研究で検討した厚さの範 囲では,試験片厚さに関わらず一定であり,その平均値は 31.0 であった.一方,コーティング材では,アルミ拡散 コーティング材,PtAl コーティング材のいずれにおいて も,ベア材よりも LMP が低下しており,その低下率は試験 片の厚さが薄くなるにつれて大きくなることがわかった.厚 さ 1 mm 試験片では LMP が平均値 29.9 まで低下した.つ まり,ベア材よりもコーティング材の方がクリープ寿命は短 く,その寿命低下率は試験片厚さが薄くなるにつれて大きく なっている.TMS75 および CMSX4 を基材にした場合も Fig. 1 に示した TMS138 の結果と同様の傾向を示し,コー ティング材はベア材よりも LMP が小さく,その差は試験片 厚さが薄くなるにつれて大きくなった. 合 金 種 類 の 差 を 直 接 的 に 比 較 す る た め に , TMS 138, TMS 75 お よ び CMSX 4 の 厚 さ 1 mm 試 験 片 の 条 件 1100°C137 MPa 下の平均クリープ寿命を Fig. 2 にまとめ る . ベ ア 材 の 平 均 ク リ ー プ 寿 命 は TMS 138, TMS 75, CMSX4 で,それぞれ 395 時間,124 時間,94 時間であっ た.従来報告されるとおり9),第 4 世代合金である TMS 138 が本クリープ条件で非常に優れた特性を示すことがわか る.しかし,前述したように,コーティング材の平均クリー プ寿命はベア材に比べ大きく低下し,TMS138, TMS75, CMSX4 で,それぞれ 56 時間,28 時間,35 時間となっ た.コーティング材においても,TMS138 が最も長いク リープ寿命を示すものの,コーティング材クリープ寿命をベ ア材クリープ 寿命で除すとそれぞれ 0.14, 0.23, 0.37 であ り,第 4 世代合金 TMS138 でコーティング材のクリープ寿 命低下の割合が最も大きいことがわかる. 3.2 クリープ破断後のミクロ組織観察 クリープ破断後のコーティング材のミクロ組織観察を詳細 に 行 な った . 代表 的 な 例と し て ,Fig. 3 (a ) ~( c )に 条 件 1060 °C 137 MPa 下 で ク リ ー プ ラ プ チ ャ ー 試 験 し た ( a ) TMS138 PtAl コーティング材(試験片厚さ 1 mm,破断時

(3)

Fig. 3 Crosssectional micrographs of the coating region after creep rupture in (a) PtAl/TMS138, (b) Aluminide/TMS75 and (c) Aluminide/CMSX4.

間 104 時間),(b)TMS75 アルミ拡散コーティング材(試験 片厚さ 3 mm,破断時間 265 時間),(c)CMSX4 アルミ拡 散コーティング材(試験片厚さ 3 mm,破断時間 303 時間)の

表面近傍断面の SEM 写真を示す.Fig. 3(a)に示すように, TMS138 PtAl コーティング材では,最表面に付着層,そ の下に IDZ,さらにその下に SRZ が観察された.IDZ は, g′相あるいは b 相をマトリックスとし粒状の TCP 相が析出 した構成である.この IDZ は,コーティングプロセス中に 生成し,試験前から観察されている.一方,SRZ は,g′相 をマトリックスとし針状の TCP 相が析出した構成で,試験 中に成長したことが試験前後の組織比較から確認されてい る.付着層は b 相を保っていた.また,SRZ および IDZ 内 部に多数の亀裂が生じている様子が観察された.Fig. 3(b) に 示 す よ う に , TMS 75 ア ル ミ 拡 散 コ ー テ ィ ン グ 材 も TMS138 と同様,最表面から付着層/IDZ/SRZ/基材の順に コーティング組織が形成され,SRZ および IDZ 内部には亀 裂の発生が確認された.一方,Fig. 3(c)に示すように, CMSX4 アルミ拡散コーティング材では SRZ がほとんど認 められず,最表面の付着層と IDZ からなっている.ただし, IDZ 内部には亀裂の発生が認められた.また,TMS138 ア ルミ拡散コーティング材も,同様に最表面から付着層/IDZ/ SRZ/基材の順にコーティング組織が形成され,SRZ および IDZ 内部には亀裂の発生が確認された.アルミ拡散コーテ ィング材の付着層は,PtAl コーティング材と異なり b+ g′2 相であることが観察された.これは PtAl コーティン グよりもアルミ拡散コーティングの方が酸化による Al 元素 の消費が早く,選択酸化されやすい粒界において,b 相の組 成が変化し g′相が形成されたためと考えられる. 以上より,従来報告されるように4,5),Re を約 5 mass含 む第 3 世代合金,第 4 世代合金において,顕著に SRZ の成 長が認められることがわかる.また,SRZ と IDZ 内部に亀 裂が観察されることからそれらは脆い,あるいは変形抵抗が 小さい層であると推察される.ただし,SRZ および IDZ 内 部の亀裂が基材へ進展している箇所は認められなかった.ま た,クリープボイドの成長は基材内部の鋳造欠陥から生じて いる様子が確認されており,破面観察から内部の鋳造欠陥か ら成長したクリープボイドが繋がることで破断に至っている 様子が伺えた.これらのことから,SRZ や IDZ はクリープ 亀裂の発生要因にはなっていないことが示唆された. 4. 考 察 条件 1000°C 以上150 MPa 以下のような高温低応力にお ける Ni 基超合金のクリープ変形では,応力軸に垂直な方向 に g 相と g′相が層状に連なるラフト組織の形成と,それに 伴う gg′界面転位網の形成が転位運動を妨げることが知ら れている2,10,11).一方,付着層,IDZ および SRZ は bNiAl 相や g′相の多結晶体をマトリックスとし TCP 相や g 相など が析出した組織を有するため6),gg′2 層のラフト組織に比 べてクリープ強度が大幅に劣ると予想される.Fig. 3(a)~ (c)に示したようにクリープ試験後の IDZ や SRZ には多く の亀裂が観察されることからも,それらの層が応力をほとん ど負担しないと考えられる.実験方法で述べたように,本研 究におけるコーティング材のクリープ試験の応力は,コーテ ィング前の試験片平行部断面積から計算しており,一方,本

(4)

Fig. 4 Calculated effective stress on the substrate of PtAl/ TMS138 during creep test at 1060°C137 MPa.

Fig. 5 LarsonMiller diagrams for stressrupture of TMS 138, TMS75 and CMSX4. 研究で適用した拡散コーティングでは,付着層と IDZ の間 がコーティング前の試験片表面となることが確認されてい る.したがって,コーティング材では IDZ と SRZ の分だけ 荷重を担う有効断面積がベア材よりも小さくなり,その結 果,基材部分にかかる実効の負荷応力(以下,実効応力と称 す)が大きくなるためクリープ寿命が低下したと予想される. そこで,コーティング材において,付着層,IDZ および SRZ は全く荷重を受け持たないと仮定し,基材部分にかか る実効応力の算出を試み,実験結果の考察を行なった.試験 片の厚さを A,幅を B,初期拡散層厚さ(IDZ 厚さ)を C,ク リープ時間 t における SRZ 厚さを D(t ),クリープ破断時間 を trとすると,第 3 世代合金,第 4 世代合金ともに SRZ は 時間の平方根に比例して成長することが知られているた め4,5),D(t )は破断時の SRZ 厚さ D(t r)を使って, D(t )=D(tr) tr t ( 1 ) と表すことができる.すると時間 t における試験片の有効断 面積 S(t )は, S(t )=

{

A-2

(

C+D(tr) tr t

)}

×

{

B-2

(

C+D(tr) tr t

)}

( 2 ) となる.SRZ が成長するにつれ,有効断面積は式( 2 )に従 って減少する.よって,コーティング材の負荷応力を saと すると,時間 t において基材部分にかかる実効応力 s(t )は, s(t )=sa×A×B S(t ) ( 3 ) と表すことができる.条件 1060°C137 MPa 下でクリープ 試験した TMS138 PtAl コーティング材(Fig. 3(a))につ いて C, D(tr)を測定し,s(t )を計算した結果を Fig. 4 に示 す.破断が起こらないと仮定し,クリープ 200 時間まで計 算した.時間 0 において IDZ はすでに形成しているため有 効面積は実際よりも小さく,負荷応力 137 MPa に対する実 効応力は 145 MPa と見積もることができる.その後,SRZ の成長とともに実効応力は増大し,例えば 100 時間で 205 MPa に達する.これは負荷応力 137 MPa に対して約 50 の増大であり,SRZ の成長に伴う実効応力の増大は非常に 大きいと見積もられる. 次に,実効応力の増大により,破断寿命がどれだけ短くな る か を 考 察 す る . Fig. 5 に 実 験 的 に 求 め た TMS 138, TMS75, CMSX4 ベア材の負荷応力とLMP を示す.いず れの合金も応力の対数と LMP が直線的な関係であることが 実験的に求められている.この関係から,温度一定のとき, logs=a×log tr+b tr=10z,Z= 1 a(log s-b ) ( 4 ) となり,実効応力 siにおける破断時間 tr, iが求めることがで きる.一方,Fig. 4 に示した実効応力と時間の曲線を階段状 に近似し,実効応力 siにおける保持時間を Dtiとすると, Dtiをその応力での破断時間 tr, iで割った値の合計が 1 にな ったところ,つまり, n

i=1 Dti tr, i =1 ( 5 ) となったところで破断すると考えることができる. 分割を十分に細かくすれば式( 5 )は積分に書き換えられ て式( 6 )のようになる.

f

t 0 dt tr(s) =1 ( 6 ) Fig. 4 より時間t のときのs(t )を求めることができ,そ して,式( 4 )から負荷応力が s(t )一定であるときの破断時 間 trが計算できる.その tr(s )を用いて式( 6 )を解くこと で,有効断面積の減少を考慮した破断時間が求められる.全 ての試験片に対して,このようにして計算した破断時間と実 測値の関係を Fig. 6 に示す.有効断面積の減少を考慮せず に見かけ上の負荷応力 137 MPa から予測される破断時間と 実測値の関係も中抜きの印で Fig. 6 に示す.前項までに述 べたようにコーティング材のクリープ寿命はベア材に比べ低 下するため,補正をしない場合,実測値は全て計算値を大き く下回っている.一方,上記のような仮定に基づき有効断面 積の補正を行い計算した場合,計算値と実験値は,合金種類 に関わらずよい相関を示すことがわかる.その重相関係数は

(5)

Fig. 6 Relationship between calculated and observed creep rupture life. Correlation coefficient for data points with cross sectional area correction. is 0.97.

Fig. 7 Relationship between the calculated creep rupture life of TMS138 at 1100°C137 MPa and the area fraction of coat-ing and diffusion zone in the cross section of the specimen.

0.97 と非常に高かった. したがって,付着層,IDZ および SRZ が全く荷重を受け 持たず,かつ,コーティング材のクリープ寿命低減は IDZ や SRZ の生成により基材部分の有効断面積が減少すること のみによると仮定することで,コーティング材のクリープ破 断寿命が高い精度で予測できることが明らかになった.前項 のクリープ破断試験片のミクロ観察結果と合わせると,その 仮定は十分成立していると言える.つまり,付着層,IDZ および SRZ が全く荷重を受け持たず,かつ,コーティング 材のクリープ寿命低減は IDZ や SRZ の生成により基材部分 の有効断面積が減少することのみによると考えられる. また,Fig. 5 において,LMP を示す直線の傾きの絶対値 は,TMS75>CMSX4>TMS138 である.この傾きの絶 対値が小さいほど実効応力が大きくなったときのクリープ寿 命低減の割合が大きいことを意味する.そのため,Fig. 2 の ように TMS138 の寿命低減率が最も大きかった理由は, SRZ の成長による有効断面積の低下が大きいことと他合金 に比べて LMP 図の傾きの絶対値が小さいことの 2 点が挙げ られる. タービン翼において,拡散層がクリープ破断寿命にどれく らい影響を及ぼすかを考察するため,TMS138 試験片の断 面積に占める拡散層(IDZ および SRZ)の割合と 1100°C137 MPa クリープ破断寿命の関係を求めた.その結果を Fig. 7 に示す.ここで,クリープ破断寿命は,コーティング材のク リープ寿命低減が有効断面積の減少のみによるとして計算し た.Fig. 1 において,コーティング材のクリープ寿命は試験 片厚さが薄くなるとともに低下することを示したが,それは Fig. 7 において試験片の断面積に占める拡散層の割合が増え ることに対応する.TMS138 の厚さ 1 mm 試験片におい て,拡散層の割合は約 23にも達するため,そのクリープ 寿命に及ぼす影響は非常に大きいことがわかる.ただし,現 在実用的に用いられているタービン翼では断面積に占める拡 散層の割合は数以下であり,その影響は小さいと考えられ る.しかしながら,タービン翼の薄肉化は進む傾向にあり, かつ第 3 世代以降の Ni 基超合金では第 2 世代合金と比較し て,SRZ が発生しやすいことから,クリープ寿命に及ぼす 拡散層の影響は今後,大きくなると考えられる.したがっ て,第 3 世代以降の Ni 基超合金を将来ジェットエンジンの 高圧タービン翼に適用し,その優れたパフォーマンスを得る ためには,コーティングと基材の間の拡散を抑え,SRZ 発 生を抑制するコーティング技術の開発が必要になると考えら れ る . そ の よ う な 課 題 に 対 し て , 最 近 , EQ コ ー テ ィ ン グ12,13),拡散バリア法1416)や炭化法17)などが提案され,機械 強度を低下させないコーティングとして注目される.EQ コーティングは理論上,基材と熱力学的に平衡する tieline 合金をコーティング材として選定することで,コーティン グ/基材間の元素の相互拡散を防ぐ手法であり12,13),筆者ら は積極的に研究開発を進めている. 5. 結 言 アルミ拡散コーティングを施した第 2 世代単結晶超合金 CMSX 4,第 3 世代合金 TMS75,第 4 世代合金 TMS 138 の厚さを変えた試験片を用いて 1060~1100°C137 MPa の条件でクリープ試験を行なった結果,以下のことを明らか にした.  いずれの合金においても,コーティング材のクリープ 寿命は同条件のベア材よりも低下し,試験片厚さが薄くなる につれ,また合金の世代が上がるにつれ低下率は大きくなっ た.TMS138 では,厚さ 1 mm 試験片,1100°C137 MPa 条件でコーティング材クリープ寿命はベア材クリープ寿命の 14まで低下した.  コーティング材のクリープ試験において,付着層, IDZ および SRZ が全く荷重を受け持たず,かつ,コーティ ング材のクリープ寿命低減は IDZ や SRZ の生成により基材

(6)

部分の有効断面積が減少することのみによると仮定すること で,コーティング材のクリープ破断寿命が高い精度で予測で きることが明らかになった. 終わりに,本研究は経済産業省「環境適合型次世代超音速 推進システムの研究開発(ESPR)」の一環として行われたこ とを付記し,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発 機構(NEDO)をはじめ関係者各位に謝意を表します. 文 献 1) W. S. Walston: Superalloys 2004, (TMS, 2004) pp. 579588. 2) Y. Koizumi, T. Kobayashi, T. Yokokawa, J. X. Zhang, M.

Osawa, H. Harada, Y. Aoki and M. Arai: Superalloy 2004, (TMS, 2004) pp. 3543.

3) N. P. Padture, M. Gell and E. H. Jordan: Science 296(2002) 280284.

4) W. S. Walston, J. C. Schaeffer and W. H. Murphy: Superalloys 1996, (TMS, 1996) pp. 918.

5) Y. Matsuoka, Y. Aoki, K. Matsumoto, A. Sato, T. Suzuki, K. Chikugo and K. Murakami: Superalloys 2004, (TMS, 2004)

pp. 637642.

6) O. Lavigne, C. Ramusat, S. Drawin, P. Caron, D. Boivin and J. L. Pouchou:Superalloys 2004, (TMS, 2004) pp. 667675. 7) K. Harris, G. L. Erickson, S. L. Sikkenga, W. D. Brentnall, I. M.

Aurrecoechea and K. G. Kubarych: Superalloys 1992 (TMS, 1992) pp. 297306.

8) T. Yokokawa, M. Osawa, H. Murakami, T. Kobayashi, T. Yamagata and H. Harada: Proceedings of Materials for Ad-vanced Power Engineering 1998, European Committee (1998) pp. 11211128.

9) Y. Koizumi, J. X. Zhang, T. Kobayashi, T. Yokokawa, Y. Aoki and M. Arai: Japan Inst. Metals67(2003) 468471.

10) J. X. Zhang, T. Murakumo, H. Harada, Y. Koizumi and T. Kobayashi:Superalloys 2004, (TMS, 2004) pp. 189195. 11) F. R. Nabarro and H. L. de Villiers:The Physics of Creep,

(Tay-lor & Francis UK, 1995) pp. 241248.

12) A. Sato, H. Harada and K. Kawagishi: J. Japan Inst. Metals 70(2006) 192195.

13) A. Sato, H. Harada and K. Kawagishi: Met. Mat. Trans. 37A(2006) 789791.

14) T. Narita, S. Hayashi, H. Yukawa, M. Noguchi and M. Miyasaka: U. S. Patent 6830827 (2004).

15) I. T. Spitzberg, R. Darolia, M. R. Jackson, J. C. Zhao and J. C. Schaeffer: U. S. Patent 6306524 (2001).

16) R. G. Wing: U. S. Patent 6080246 (2000).

17) I. E. Locci, R. A. Mackay, A. Grag and F. J. Ritzer: NASA/ TM2004212920 (2004).

Fig. 1 Effect of specimen thickness on LarsonMiller Parameter of the bare and coated TMS138 specimens at 137 MPa.
Fig. 3 Crosssectional micrographs of the coating region after creep rupture in (a) PtAl/TMS 138, (b) Aluminide/TMS75 and (c) Aluminide/CMSX4.
Fig. 4 Calculated effective stress on the substrate of PtAl/ TMS138 during creep test at 1060° C137 MPa.
Fig. 6 Relationship between calculated and observed creep rupture life. Correlation coefficient for data points with cross sectional area correction

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