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東京新聞<税を追う>

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東京新聞<税を追う>歯止めなき防衛費 《総集》 ★2018 年 11 月 25 日 朝刊 <税を追う>歯止めなき防衛費(10)辺野古新基地建設 県民抑え 際限なき予算 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018112502000123.html [写真]辺野古新基地の工事区域を仕切るフロート。その内側では民間会社の 警備艇が建設反対派の抗議船を監視していた=沖縄県名護市辺野古沖で(中 沢誠撮影) ボートの舳先(へさき)に座る黒ずくめの乗員が威嚇するように、抗議船 にビデオカメラを向けている。サングラスに黒のマスクで顔を覆った乗員は 拡声器を手に、ひっきりなしに警告する。「ここは臨時制限区域です。速や かに退去してください」 沖縄県名護市辺野古(へのこ)の米軍キャンプ・シュワブから約五百メートルの沖合。今月 二十日、海上で新基地建設に抗議する小型船に同乗した。工事区域への立ち入りを規制するフ ロートの内側にいたのは、防衛省沖縄防衛局から警備業務を請け負った民間警備艇だった。 一日から海上工事が二カ月ぶりに再開。美(ちゅ)ら海(うみ)は再びフロートで仕切られ た。基地反対運動を撮り続ける名護市の写真家、山本英夫さん(67)は「国はカネがないと 言いながら、ここでは基地反対の民意を抑えるために毎日二千万円も使っている。モリカケ疑 惑なんかの比じゃないよ」と、警備艇に怒りをぶつけた。 新基地建設が本格化した二〇一四年度以降、海上保安庁の警備に加え、民間の警備艇が二十 四時間態勢で監視している。海上警備の予算は一五~一七年度で計百六十一億円。座り込みが 続くシュワブ・ゲート前での陸上警備の予算を合わせると、三年間の総額は二百六十億円に上 る。 「一日二千万円の警備費」は、新基地に反対する「沖縄平和市民連絡会」メンバーで元土木 技術者の北上田毅(きたうえだつよし)さん(72)が防衛局への情報開示請求で暴いた。「一 日の人件費が一人九万円で積算されており、あぜんとした。国策だったら何でもありなのか」 と嘆く。 その後、会計検査院が海上警備費を調べると、防衛局は「業務の特殊性」を口実に国の単価 ではなく業者の見積もりをそのまま採用していたことが発覚。一五~一六年度で計一億八千八 百万円を過大発注していた。 コスト意識の乏しい防衛局。それが、かえって県民の反 感をあおっている。名護市の自営業、島袋正さん(58) は訴える。「ヤマト(本土)の人は、辺野古は沖縄だけの 問題と思ってるかもしれないが、自分たちの税金が無駄に 使われているわけさ。国民一人一人にしわ寄せが来てるん

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よ」 そもそも政府は当初から「禁じ手」を使っていた。 一三年十二月、当時の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事が辺野古埋め立てを承認すると、 政府は一四年七月、建設費百四十二億円を予備費から支出した。国会審議を経ずに閣議決定だ けで支出できる予備費は、災害などの緊急時に限られる。沖縄では当時、建設反対の大きなう ねりが広がっていた。 「野党の追及を避け、基地建設を強行したい政権の姿勢が表れている」と分析するのは新藤 宗幸・千葉大名誉教授(行政学)。「予算は国会の議決が必要という財政民主主義に反する姑 息(こそく)な行為」と批判する。 埋め立てすら手付かずなのに、辺野古には既に千二百七十億円が支出されている。政府が当 初、想定した総事業費は三千五百億円以上。巨額の税金を垂れ流しながら、今後いくらかかる のか、見通しさえ国民に明らかにしようとしない。 沖縄選出の赤嶺政賢衆院議員(共産)は金に糸目を付けない政府のやり方に憤る。「辺野古 で予算なんてあってないようなもの。県民を黙らせることが予算の最大の要件なんだ」 =お わり (鷲野史彦、原昌志、中沢誠、望月衣塑子、藤川大樹が担当しました) ★2018 年 11 月 25 日 朝刊 <税を追う>取材班から 「放置」国家でいいですか http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018112502000118.html 「キュウーン」。研究室に入るなり、騒々しい音が耳に飛び込んできた。沖縄県の辺野古(へ のこ)新基地建設の取材で、沖縄国際大学(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の前泊博盛教授を 訪ねたときのことだ。 ベランダに案内されて、すぐ分かった。四階の研究室から目と鼻の先のところに米軍普天間 (ふてんま)飛行場。滑走路に複数の新型輸送機オスプレイが待機していた。 「エンジンの整備中でしょう。上空を飛んだら、こんなものじゃないですよ」。十四年前、 学内に米軍ヘリが墜落した現場も一望できる。基地と人々の暮らしが隣り合わせであることを あらためて実感させられた。 沖縄の人たちに辺野古の問題を尋ねると、決まって口にしたのが「本土の無関心」だった。 みんなが納めた税金が辺野古では好き放題使われているのに、なぜ-。怒りを持たないことに、 みな歯がゆさを抱いていた。 前泊さんは皮肉まじりに、こう評した。「国民の生活を切り詰めて、他国のために基地を造

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る。それを放置する国民が政権の暴走を許している。日本は『法治』国家じゃない、『放置』 国家になっている」 辺野古の問題も「税」というフィルターを通してみれば、本土に住む私たちにも、より身近 に迫ってくる。 「税金がどう使われているかを考えれば、辺野古だってみんなの問題なんですよ」。海でカ ヌーをこいで抗議活動を続ける島袋正さん(58)の問いかけが、胸に刺さった。 (中沢誠) ★2018 年 11 月 24 日 朝刊 <税を追う>歯止めなき防衛費(9)米軍再編費、要求ゼロ 膨らむ予算「裏技」駆使 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018112402000129.html [写真]安倍首相は観閲式で、防衛大綱見直しについて「未来の 礎となる防衛力のあるべき姿を示す」と強調した=10月14 日、陸上自衛隊朝霞訓練場で 「要求額を見掛け上、小さくしていると批判が来ることは分 かっていた。でも、そうせざるを得ないほど、後年度負担がの しかかっている」。防衛省の幹部が正直に打ち明けた。 二〇一九年度予算の概算要求は、本年度当初予算から2・1%増となる過去最大の五兆二千 九百八十六億円。防衛費の概算要求上限のぎりぎりの額だが、実はそれでも足りず、本来盛り 込むべき費用を外していた。本年度二千二百億円を計上した米軍再編関係費だ。 原因は後年度負担と呼ばれる国産・輸入の兵器ローンにある。安倍政権による米国製兵器の 輸入拡大に伴い、一九年度の返済は二兆七百億円に。同時に返済額より四千四百億円多い新た なローンが発生する。まさに自転車操業。ローン残高はわずか六年間で二兆一千億円も増え、 来年度は五兆三千億円を超す。 幹部は「概算要求に米軍再編関係費を入れるとパンパンになる。そこで上の判断でゼロにし た」と言う。毎年発生する経費のため、通常は前年度と同額を仮置きするが、今回は額を示さ ずに項目だけ入れ、判断を政府に投げる異例のやり方にした。例年通りに盛り込んでいれば総 額は五兆五千億円を超え、6・3%の伸びとなる。それを「小さく見せた」のだった。 防衛費は北朝鮮情勢や中国の海洋進出などを理由に六年連続で増加している。第二次安倍政 権発足後、毎年1%超と伸びているのは他に社会保障費だけだ。 戦闘機F35や輸送機オスプレイ、早期警戒機E2Dなど、米国の対外有償軍事援助(FM S)に基づく輸入兵器のローン残高は、一三年度の千九百十九億円から本年度は約六倍の一兆 一千三百七十七億円。そこへ機動戦闘車や潜水艦など高騰する国産兵器が輪を掛ける。 ある幹部自衛官は「予算は増えても全然足りない。もっとつけてもらわないと日々の活動費

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を削らなければならない」と言う。 増え続ける本予算だけでは足りず、防衛省は補正予算にもローン返済を組み込む「裏技」を 使うようになった。 補正は災害対応などが本来の趣旨だが、一四年度以降は艦船やミサイルの取得費の計上が常 態化している。政府ぐるみでなければ、とてもできない。予算編成に詳しい防衛省の元幹部は 「かつて補正で装備品を買うことは考えられなかった。何でもありになっている」と懸念して いる。 見た目以上に膨張している防衛費。安倍晋三首相は年末に策定する新しい「防衛大綱」と、 向こう五年間の「中期防衛力整備計画(中期防)」に向け、ことあるたびに「従来の延長線上 ではない防衛力」を強調してきた。防衛費拡大の布石は至るところに打たれている。 「今のような政策を続け、中期防で予算を積み増していけば、どこかで財政的にパンクする。 専守防衛で許される防衛力とは何か。根源的な議論が必要だ」。軍事ジャーナリストの前田哲 男さんは、なし崩しの防衛費増大に危機感を覚える。 予算増大の圧力が国の内外で強まり、専守防衛が揺らぐ。財政が危機的状況の中で、軍備増 強を進める北朝鮮や中国と競うように、日本は軍拡へと転換するのか。来月示される政権の結 論を注視する必要がある。 ★2018 年 11 月 23 日 朝刊 <税を追う>歯止めなき防衛費(8)中期防兵器リスト 「八掛け」で詰め込む http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018112302000127.html 「機動戦闘車、九十九両」 「ティルト・ローター機(輸送機オスプレイ)、 十七機」 「戦車、四十四両」…… 二〇一三年十二月に閣議決定した現行の中期防 衛力整備計画(中期防)。一四~一八年度の防衛 費の総額を二十三兆九千七百億円程度と定め、購 入する兵器の名前がずらりと記してある。中期防 は五年ごとに策定される、いわば兵器の「買い物リスト」だ。 各兵器の防衛省の見積額は、企業との取引に影響があるとして非公表だが、財務省が実際の 購入額と比較すると、見積もりのずさんさが浮かび上がった。 機動戦闘車は一両四・八億円の見積もりに対し、購入額は七・一億円(48%増)。オスプ

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レイは一機六〇・五億円→七四・六億円(23%増)、戦車は一両十億円→一一・五億円(1 5%増)など、二十二品目のうち十五品目で見積もりより高騰していた。 価格が高騰すれば数量を減らす必要が出てくる。国産の機動戦闘車は十二両、戦車は四両減 らした。C2輸送機(一機二〇六・四億円)も当初の十機から七機に。計九品目で目標を達成 できないという、ちぐはぐな結果だ。一方、オスプレイは計画通り十七機を米国から輸入する。 その分、他の兵器を減らした格好だ。 「こんなに購入単価が上がってしまっては(購入する)数量が達成できないのは当たり前だ。 コスト管理ができていない」。財務省幹部は指摘した。なぜ取得価格は上がったのか。 防衛省の末永広防衛計画課長は「消費税率が5%から8%に上がり、装備品によっては加工 費や材料費も上がった」と説明。為替レートが円安になり、米国から兵器を調達するコストが 増えたことも原因に挙げたが、財務省は為替の影響額を除いて計算しているので理由にならな い。 現場からは、別の声が聞こえる。「『ポツハチ』を掛けたりするんだよ」。十年ほど前に退 官した元自衛隊幹部が明かした。ポツハチとは「見積もりを0・8倍する」という意味だ。 「中期防のリストに(兵器の)アイテムが載っていないと、絶対に事業化されない。だから、 見積額を八掛けにして無理やり入れている、というのが実態だ」 このため調達の際には当然価格が上がり、逆に数量が減る事態が起きる。会計部署を経験し たことがある現役自衛官の一人は「中期防に詰め込むだけ詰め込むやり方は、今も変わってい ない」と証言する。 「F35戦闘機や無人偵察機グローバルホーク、(ミサイル防衛に使う)イージスシステム など、日本は高価な装備品を好むようだ」 そう指摘するのは元米海兵隊大佐で日本戦略研究フォーラム上席研究員のグラント・ニュー シャム氏。例に挙げた兵器はいずれも米国製だ。政府は来月、一九~二三年度の新しい中期防 を決定するが、ニューシャム氏は戦略的視点が欠けているとする。 「必要なものが何か。包括的・体系的に評価しないまま兵器を購入している。買うだけでな く、金額に注意を払い、必要に応じてお金を使うべきだ」 ★2018 年 11 月 21 日 朝刊 <税を追う>歯止めなき防衛費(7)国内防衛産業 機関銃価格 米の7倍 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2 018112102000130.html 「日本は米国の七倍の値段で買っている」

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今年四月、財務省で開かれた財政制度等審議会の分科会。葛西敬之・JR東海名誉会長や永 易(ながやす)克典・三菱UFJ銀行特別顧問ら経済界の大物委員の前で、主計局防衛係の内 野洋次郎主計官が説明した。 やり玉に挙がったのは住友重機械工業がライセンス生産する軽機関銃「MINIMI(ミニ ミ)」。ベルギーの銃器メーカー「FNハースタル」が開発、一分間に七百五十~千発撃つこ とができる。住友重機はハースタル社にライセンス料を払って設計図を購入、部品製造から組 立まで行う。 自衛隊はMINIMIを一九九三年度から購入し始め、陸・海・空で約五千丁を保有する。 以前は毎年二百丁前後調達していたが、二〇一三年に機関銃の試験データ改ざんが発覚した以 降は大幅に減少。一七年度は四十八丁だった。 調達数の減少に伴い、単価が高騰した。同じライセンス生産をしている米国が一丁四十六万 円、オーストラリアが四十九万円なのに対し、日本は三百二十七万円と七倍前後だ。 「さすがに納税者は許さないでしょう」。日本の防衛産業界に広い人脈を持つ関係者はため 息交じりに漏らす。住友重機の担当者は財務省の指摘にはコメントせず、「今後も企業努力を 重ねていく」と話した。 日本の防衛装備品が高額になる大きな要因の一つが「原価計算方式」。装備品は市場価格が ないため、メーカー側が材料費や加工費などの原価を積み上げ、そこへ防衛省が一定の利益を 上乗せして価格が決まる。利益率は製造業の平均を基にしており、関係者は「おおむね6%弱」 と言う。 「原価が増えれば利益も膨らむ構造になっており、企業が自主的に原価を下げる方向には向 きにくい。そうした問題点は以前から認識していた」。防衛装備庁の担当者はそう話す。 コスト意識が働きにくいだけでなく、原価を水増しして過大請求する事件も後を絶たない。 最近十年間の主な事例でも、三菱電機の二百四十八億円など十三社で計四百九十五億円の過大 請求が発覚。国庫に返納するとともに多額の違約金を支払っている。 装備庁は抜き打ち調査を増やしたが、一六年度の契約実績は約六千七百件、二兆円近くに上 り、別の担当者は「検査する人がとても足りない」と言う。 防衛産業は専門性が高く自衛隊との関係は深い。防衛省と契約実績のある企業には毎年、自 衛隊の一佐以上と本省課長相当以上の幹部だけで六十~八十人で天下る。自衛隊のある元幹部 は「再就職先の企業が仕事を取るためにOBを連れて来ることはある」と話す。 防衛産業界から政界への献金も毎年多額に上る。防衛省の契約上位十社のうち八社は一六年、 自民党の政治資金団体「国民政治協会」に計一億三千二百八十万円という多額の献金をしてい る。八社の一六年度の受注額は地方分を除いて八千八百五十一億円と、全体のほぼ半分を占め る。

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改善されない高コストや繰り返される水増し請求。財務省幹部は「防衛産業というムラ社会 で、競争力が落ちている」と指摘する。 その背後に政界と業界、防衛省・自衛隊のもたれ合いが浮かび上がる。 ★2018 年 11 月 19 日 朝刊 <税を追う>歯止めなき防衛費(6)対外有償軍事援助 米優位 もの言えぬ日本 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111902000116.html [写真]FMSを所管する米国防安全保障協力庁が入るビル=米南部 バージニア州アーリントンで(後藤孝好撮影) いつ電話してもつながらず、留守電に要件を吹き込んでも連絡が ない。らちが明かずワシントン郊外の米国防総省から一キロ先の米 軍のオフィスに乗り込んだ。中に入ると、あちこちで電話が鳴って いた。それでもスタッフらは構わずに目の前の業務を続けていた。 これは二十年ほど前、米国駐在だった防衛省職員が目にした「対外有償軍事援助」(FMS) を巡る米側の対応だ。米国から兵器を輸入する際、FMSでは米政府が窓口になる。 職員は「米軍の担当者は高飛車というか、売ってやっているという、上から目線を感じた」。 防衛装備庁有償援助調達室の森伊知朗室長は「今も状況はほとんど変わらない」と語る。 FMSは米国に有利な取引で、価格や納期は米側が主導権を握る。昨年十月、会計検査院が 装備庁に注文を付けたFMS取引の不備は、米国にもの言えぬ日本の立場を物語るものだ。 パーツ番号が合わない、数量が異なる、空欄のままになっている…。検査院が調べたところ、 早期警戒機など二〇一四~一五年度の六十四契約(総額六百七十一億円)すべてで、米側から 届いた納品書と精算書の記載に食い違いがあった。検査院の担当者は「官の会計処理としてあ りえない」とあきれる。 しかも、食い違いは常態化していた。原因は米側にあるというのに、森室長は「こういうも のだと思って米政府には改善を求めてこなかった」と釈明する。 契約金額は高額で、一歩間違えば日本に大きな損失が出る。米側に請求ミスがあっても、一 年以内に通知しなければ補償してもらえない。にもかかわらず、確認を求めても回答は遅い。 検査院によると、米政府から「あまりに問い合わせが多いので、もっと絞ってくれ」と言わ れた職員までいたという。 食い違いを米側に問いただすのは最終手段で、米軍サイトで照合したり、書類の別の記載で 類推したりしていたという。結果的にチェックは甘くなる。検査院は「十分に疑義を解明しな

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いまま、装備庁は精算していた」と指摘する。 「日本は足元を見られている」。そう語る元航空幕僚長の田母神俊雄氏も、かつてFMS取 引の理不尽さを味わった一人だ。 空幕装備部長だった約二十年前のこと。「リンク16」と呼ばれる米軍の情報共有システム の導入を決めた途端、米国は価格を一億三千万円から二億五千万円に引き上げてきたという。 「米軍幹部に直接、『信義にもとる』と抗議すると一カ月後、元の価格に戻った」と田母神 氏。「なぜ価格が上がったのか、なぜ元に戻ったのか説明もない。FMSって常に米国の勝手 なんですよ」。今も米国の言い値であることに変わりはなく、FMSへの依存度を強める日本 の将来に危機感を抱く。 昨年十二月、検査院に背中を押されるように装備庁は、米政府に納品書と請求書の食い違い がないように求めた。だが米側の対応は鈍い。今年一~八月の六十六契約のうち、食い違いは 実に七割超の五十契約(総額二千百八十億円)で見つかっている。 ★2018 年 11 月 18 日 朝刊 <税を追う>歯止めなき防衛費(5)貿易赤字解消図る米大統領 「兵器買え」強まる流れ http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111802000123.html [写真]トランプ米大統領(右)との会談で大量の米国製兵器の購入を 迫られた安倍首相=9月、米ニューヨークで(共同) 「武器」と「カジノ」。 今年の夏以降、訪ねてくる旧知の米国関係者たちから、何度この言 葉を聞いたことだろうか。 「彼らに訪日の目的を尋ねると、用件は必ずこの二つの利権だ」。日本総合研究所の寺島実 郎会長は、急速に矮小(わいしょう)化している日米関係を肌で感じている。 訪ねてきた人の多くは、知日派の元政権スタッフや元外交官ら。「日本通であることで米国 の防衛やカジノの関連企業などに雇われた彼らが、対日工作のため動き回っている構図が、こ こに来てくっきり見える」と明かす。 一基で一千億円以上する迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」に象徴されるように、 安倍政権は国難を理由に米国製兵器の購入にアクセルを踏む。 右肩上がりで増える日本の防衛費に、米軍需メーカー幹部は「安倍政権になってビジネス環 境はよくなった」と手放しで喜ぶ。 追い風を吹かしているのがトランプ米大統領だ。約七兆円に上る対日貿易赤字をやり玉に挙

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げ、日米首脳会談のたびに、安倍晋三首相に米国製兵器や化石燃料などの購入を迫ってきた。 通商と安全保障をパッケージにして、兵器を「ディール(取引)」として売り込む。その姿 は、さながら武器商人だ。元米海兵隊大佐で、日本戦略研究フォーラムのグラントF・ニュー シャム上席研究員は「トランプ氏は、日本が自分の防衛を十分果たさず、米国にただ乗りして いると考えている」と指摘する。 「私は(安倍首相に)『われわれは巨額の赤字は望まない。あなたたちはもっと買わざるを 得なくなるだろう』と言った。彼らは今も大量の防衛装備品を買い続けている」。米紙ワシン トン・ポストによれば、トランプ氏は九月下旬のニューヨークでの記者会見の際、直前に行わ れた安倍首相との会談で、そう迫ったことを強調した。 対日貿易赤字の多くを占める自動車は、日本経済を支える基幹産業。トランプ氏が赤字削減 のため、日本車の追加関税に手を付ければ、国内経済への打撃は避けられない。 「米国装備品を含め、高性能な装備品を購入することが日本の防衛力強化に重要だ」と応じ た安倍首相。大統領の得意のせりふ「バイ・アメリカン」(米国製品を買おう)への抵抗はう かがえない。 「TPP(環太平洋連携協定)交渉で、自動車の輸出と農産物の輸入をてんびんに掛けられ ている農協の気分だ」。国内の防衛産業は、自分たちの食いぶちを奪われかねないと戦々恐々 だ。ある大手メーカー幹部は、自民党の国会議員から「自動車を守るためのバーターとして、 米国から高い武器をどんどん買えという流れになっている」と打ち明けられたという。 小切手を切ってくれそうなところに請求書が行くように、増大する日本の防衛費に米国が群 がっている。「今や米国にとって日本は草刈り場だ」という寺島氏は、対米交渉に警鐘を鳴ら す。 「日本に東アジアの安全保障に対するしっかりした構想がないから、米国に武器を売り込ま れる。トランプ政権の期待に応えるだけでは利用されるだけだ」 ★2018 年 11 月 17 日 朝刊 <税を追う>歯止めなき防衛費(4)レーダー商戦 しのぎ削る米メーカー http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111702000129.html [写真]訓練で海上配備型迎撃ミサイル(SM3)(右)を発射する海上 自衛隊のイージス艦「こんごう」。軍事メーカーはレーダー更新をにら む=2007年12月、ハワイ沖で(海上自衛隊提供) 九月二十八日、東京都内のホテル。サイバーテロやミサイル防衛(M D)のセミナーが開かれ、国内外の防衛企業の幹部や自衛隊OBら約三 十人が出席した。主催したのは旧防衛庁長官や初代防衛相を歴任した久 間章生(きゅうまふみお)氏が会長を務める一般社団法人・国際平和戦

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略研究所。久間氏は二〇〇九年の衆院選で落選後、政界を引退したが、日米の防衛分野に広い 人脈を持つ。 「これからの戦争はミサイルの時代になってきた」 久間氏のあいさつの後、海上自衛隊OBの坂上芳洋氏が講演した。環太平洋合同演習の際、 指揮官としてイージス艦を運用した経験があり、退官後は米軍事メーカー・レイセオンのシニ アアドバイザーも務めた。講演のテーマは政府が導入を決めた地上配備型迎撃ミサイルシステ ム「イージス・アショア」。坂上氏はシステムに搭載されるレーダーに米ロッキード・マーチ ン製の「SSR」が選ばれたことに疑問を呈した。 SSRは一基百七十五億円ほどとされるが、坂上氏は「まだ構想段階で、ミサイル射撃試験 などをしていない。日本が試験費の負担を強いられ、価格がさらに膨らむ可能性がある」。 会場からは「それは国会が止まるくらいの話だな」という発言も出た。斉藤斗志二(としつ ぐ)元防衛庁長官だった。 北朝鮮は一六年以降、核や弾道ミサイルの実験を繰り返した。防衛省の幹部は「誰もがミサ イル防衛強化が必要と考えていた。官邸は高高度(こうこうど)防衛ミサイル(THAAD) も地上イージスも米国製なので、どちらでも構わないという立場だった」と明かす。 地上イージスに決まったことで、防衛省は米ミサイル防衛庁からSSRと米レイセオン製の レーダー「SPY-6」の提案書を受け取り、レーダーの選定に入った。 イージス艦にロッキード社製の「SPY-1」を搭載している米海軍が今後、レイセオン製 のSPY-6に更新するため、日本の防衛業界でも「レイセオンが有利」とささやかれた。だ が今年七月、ロッキード社に軍配が上がり、業界に驚きが広がった。 ロッキード社と関係が深いコンサルタントで、元航空自衛隊空将の山崎剛美(たかよし)氏 は「日本製の窒化ガリウム半導体を組み入れるなどして大きさを変えないで性能を向上させた」 と勝因を分析する。お膝元の米国で失った商機を日本で取り返した格好だ。 「今回のレーダー選定は単にイージス・アショアのレーダーを決めるというだけではない」。 そう指摘するのは元米陸軍大佐で、レイセオンに勤めたことがあるスティーブン・タウン氏。 次のレーダー商戦は海上自衛隊のイージス艦だ。 海自は保有する六隻のイージス艦のミサイル防衛能力を向上させながら、二〇年度までに八 隻に増やす計画だ。レーダーはロッキードのSPY-1が搭載される予定だが、「近い将来、 レーダーの更新が始まっていくだろう」と海自OB。レーダー更新は一基百億円を超す一大ビ ジネスだ。 今や米国製を中心に高額兵器を次々と導入するようになった日本。世界の軍事メーカーや商 社が虎視眈々(たんたん)と商機をうかがう。

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★2018 年 11 月 16 日 朝刊 <税を追う>歯止めなき防衛費(3)進む日米一体化 軍事戦略の一翼担う http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111602000133.html [写真]昨年5月1日、安保法成立で海上自衛隊による初の米艦防護が行わ れた。護衛艦「いずも」(手前)と、停泊中の米海軍補給艦=神奈川県横 須賀市沖で 四回目の核実験、続く長距離弾道ミサイルの発射。二〇一六年二月、北 朝鮮の挑発行為に半島情勢は緊迫の度合いを増していた。 その頃、海の向こうの米連邦議会では、地上配備型迎撃ミサイルシステ ム「イージス・アショア」の日本導入が話題に上っていた。「アジア太平 洋に配備されているわれわれのイージス艦の任務を軽減するのではないか…」 議員から日本配備による米国のメリットを問われたハリー・ハリス米太平洋軍司令官(当時) は、質問を途中で遮り断言した。「もちろんだ」。まるで米国のミサイル戦略の一角を日本が 担うと言わんばかりだった。 昨年末、日本は地上イージスの導入を決めた。トランプ米大統領が日米首脳会談で、安倍晋 三首相に大量の防衛装備品の購入を迫った翌月のことだ。 ハリス氏は今年二月の米下院軍事委員会でも日本の地上イージス導入の効果を聞かれ、「私 や海軍、太平洋艦隊の負荷の一部を軽減することになるだろう」と明言した。日本国内では今 も、「トランプ氏に買わされた」との声がくすぶる。 地上イージスを運用する陸上自衛隊でトップの陸幕長まで務めた冨澤暉(ひかる)氏は、日 本で先にミサイル弾道を探知すれば米国は迎撃しやすいと分析。日米一体の運用を見据えた配 備とみる。「日本にとってミサイル防衛はあったほうがいいが、米国は日本を守るためだけに 売るわけではない」 政府が配備候補地に挙げるのは、陸自の新屋演習場(秋田市)とむつみ演習場(山口県萩市、 阿武町)。北朝鮮から秋田、山口に向かう延長線上には、それぞれ米軍基地のあるハワイとグ アムが位置する。 もし、北朝鮮がグアムを狙ってミサイルを発射したらどうするのか。防衛省の答えは「地上 イージスで対応することも理論上は考えられる」。日本を守るための兵器が米国を守るために 使われる可能性を認めた。 「地上イージスだけでなく、どんどん日米の軍事一体化が加速している」。民主党政権で防 衛相を務めた北沢俊美氏は、第二次安倍政権下での日米同盟の変貌ぶりに目を見張る。 転機は一五年九月、他国を武力で守る集団的自衛権の行使に道を開いた安全保障関連法の成

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立だ。自衛隊の戦闘機や護衛艦が、米軍機や米艦を警備するケースが増えている。日米安保政 策に長年かかわってきた米国務省の元高官でさえ、「五年前にはあり得なかった光景だ」と言 う。 官邸で安保政策を担当する薗浦健太郎首相補佐官は「今や日米同盟は、かつてないほど強固。 揺るぎない絆により、同盟の抑止力・対処力は大きく向上し、日本の安全はより確固たるもの になった」と主張する。 今年九月、海上自衛隊は中国が進出を強める南シナ海で潜水艦の訓練を実施したと発表した。 「極秘であるはずの潜水艦の行動を公表することは、本来ありえない」。北沢氏は異例の公表 に、米国にすり寄る日本の姿を重ねて続けた。「集団的自衛権が容認された証しとして世界に アピールする。おもねってるんだ、米国に」 ★2018 年 11 月 14 日 朝刊 <税を追う>取材班から 「売買」を「援助」変な訳 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111402000130.html 米国政府が同盟国に自国の兵器を売却する制度「FMS」。foreign milita ry salesの頭文字で、日本では制度が始まった一九五〇年代から「対外有償軍事援助」 とか「有償援助調達」と訳されてきた。セールスが援助とは違和感がある。 七七年に国会で当時の社会党議員が「だいたい援助という言葉はどこから訳したのか。有償 軍事販売だ」と批判している。政府側は「日米防衛援助協定に基づいて日本に付与される、一 応援助の形態を取っている」と答弁。その上で「ご指摘は、気持ちとしてはごもっともだと私 どもも思っている」とも。 二〇一六年にも旧民主党議員が「この訳は誤解を与えるのでは」と質問。当時の中谷元防衛 相は「米国政府が認める武器輸出適格国のみが、軍事機密性の高い装備品を調達できるという 意味で、一般的な売買とは異なる」と反論した。 当の米国が援助ではなく売買や取引と言っているのだから、なぜそう訳さないのだろう。近 年、FMSによる兵器ローンが急増し、防衛費を圧迫する。それでも「これはアメリカからの 援助です」と言い続けるのだろうか。 (原昌志) ★2018 年 11 月 14 日 朝刊 <税を追う>歯止めなき防衛費(2)コストより日米同盟 覆った偵察機導入中止 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111402000150.html [写真]米軍の無人偵察機グローバルホークと、昨年6月に防衛 省整備計画局が作成した内部文書=コラージュ 「GHの取得を中止する方向で、政務、関係省庁(NSS、

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官邸)と調整する」 防衛省整備計画局が昨年六月に作成した内部文書。GHとは当時、米国から輸入を検討して いた無人偵察機グローバルホークを、NSSとは国家安全保障局を指す。文書にはGH導入の 経緯と輸入中止を検討する理由が記されている。その上で、防衛大臣ら政務三役とNSS、首 相官邸と調整するとなっていた。 米政府の提案を受け、防衛省がGHの導入を決めたのは二〇一四年十一月。価格は三機で五 百十億円だったが、米側は昨年四月、価格上昇を防衛省に連絡してきた。レーダー部品が製造 中止となり、新たな部品の開発に追加費用が発生したとして、計六百二十九億円と23%も高 騰していた。 防衛省には装備品の価格が上昇した際の管理規則があり、価格が15%上昇したら事業の見 直しを検討、25%の場合は事業中止を検討することになっている。 整備計画局では、GHは今後も部品枯渇による価格上昇リスクがあると判断した上で代替策 を検討。「近年の画像収集衛星の進展をふまえると、より安価な手段で相当程度が代替可能」 と結論付けた。「日米同盟に与える影響」も検討の結果、「対処が不可能なものではない」と 判断。導入中止の方向で、官邸などと調整するとあった。 さらに導入中止に向けた段取りとして「自民党に事業中止の根回しを行った後、対外的に発 表する」と記されていた。GHの導入中止へ防衛省の自信がうかがえる内容。ところが、わず か一カ月で覆った。 昨年七月、整備計画局と防衛装備庁が作成した別の内部文書。「GHの価格の上昇リスクは 引き続き存在する」としながらも、「能力はわが国を取り巻く安全保障環境に必要不可欠」と して「事業を進めることとしたい」とある。正反対の結論を導いていた。 文書は共産党の小池晃書記局長が入手した。整備計画局の幹部は本紙の取材に「外務省やN SSから『安全保障環境や日米同盟をふまえ、さらに検討を深めてほしい』と打診され、省内 でもう一度議論した結果、購入継続を決めた」と回答した。導入中止の方針に外務省やNSS から異論が出て、覆ったことを認めた。 ある欧米系軍事企業の幹部は「GHは米空軍でもコストが問題視されたが、政府はコストよ り日米安保を踏まえ、米国との関係を重視したのでは」と話す。 実際、米空軍はGHの経費高騰などで、調達計画数を六十三機から四十五機に縮小している。 ドイツでは一二年にGHの初号機一機を米から導入したが、コスト増加などを理由に追加購入 を中止した。 自衛隊の元幹部は「装備品の導入は現場で必要性を詰めることが重要。もともと現場はGH をいらないと言っていたのに、トップダウンで決めてしまうのがNSSの弊害だ」と話す。 GH三機の年間の維持整備費は計百二十億円余り。かつて一時間飛ばすのに三百万円かかる

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という米側の試算もあった。日米同盟の名の下、兵器ローンのツケが国民に重くのしかかる。 ★2018 年 11 月 13 日 朝刊 <税を追う>歯止めなき防衛費(1)かすむ専守防衛 官邸主導で攻撃兵器選定 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111302000149.html [写真]安倍晋三首相(右)と国家安全保障局の谷内正太郎局長(コラージ ュ) 「いくらか分からないのに、われわれが予算承認しなければならないの はおかしい。国民の税金だということを考えろ」 昨年十二月、自民党本部で開かれた国防部会。数日前に小野寺五典(い つのり)防衛相(当時)が導入を発表した、三種類の長距離巡航ミサイル の単価を答えない防衛省幹部に、議員らが口々に怒りをぶちまけた。 戦闘機F15に搭載する米国製の「JASSM(ジャズム)」と「LRASM(ロラズム)」 は射程が九百キロと長く、日本海から発射しても北朝鮮に到達する。F35に搭載するノルウ ェー製の「JSM(ジェイエスエム)」の射程は五百キロで、最新鋭のF35はレーダーに映 りにくい。 昨年八月の防衛予算の概算要求には入っていなかったが、同年十一月のトランプ米大統領の 来日後、与党議員への説明もそこそこに導入が発表され、国防族の 怒りを買った。 [写真]戦闘機から発射される巡航ミサイルJASSMのイメージ図 =米ロッキード・マーチン社のHPから 荒れる国防部会。「予算を簡単にもらえると思うなよ。NSCと の関係はどうなんだ。説明しろ」。不満の矛先は、安倍政権で発足 した国家安全保障会議(NSC)にも向けられた。 NSCは二〇一三年十二月、首相、官房長官、外相、防衛相を中心に組織された。翌年一月、 実動部隊の国家安全保障局(NSS)が内閣官房に置かれると、防衛省からの積み上げで決ま ってきた兵器選定の主導権は事実上官邸に移った。 巡航ミサイルは相手ミサイルの射程圏外から攻撃でき、離れてにらみ合うという意味から「ス タンド・オフ・ミサイル」とも呼ばれる。防衛省は「離島やイージス艦などを防衛するため」 と強調するが、敵基地攻撃が可能なため、これまでの政権は専守防衛の観点から導入に慎重だ った。 元航空自衛隊空将の織田(おりた)邦男氏は「スタンド・オフ・ミサイルの導入は(自民党 と旧社会党の)五五年体制なら絶対無理だった。それを軽々と超えてしまうのは、NSSがで

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きたメリットだと思う」と語る。 NSSには防衛、外務、警察の各省庁を中心に約七十人が出向する。元外務次官の谷内(や ち)正太郎局長を外務、防衛出身の二人の次長が支える。発足後、兵器調達面でも防衛政策が 目に見える形で変化してきた。 本年度四十六億円の研究費がついた「高速滑空弾」や来年度にはエンジンの研究に六十四億 円を要求している「極(ごく)超音速ミサイル」は、「いずれも攻撃的兵器と見なされる可能 性が高いとして、机上の研究にとどまっていた」。防衛省で航空機開発を担当した元空将の山 崎剛美(たかよし)氏はそう話す。 政策の転換は米国の望むところだ。米国務省の元高官は「日本は集団的自衛権を行使できる ようになり真のパートナーになった。以前は日本が巡航ミサイルを導入するなんて想像できな かった」と喜ぶ。 NSSのある幹部は「総理や官邸の話を聞きながら防衛省が出す選択肢を示して、日本の安 保や外交政策の中で、どれがいいかを考えていくだけだ」と官邸主導の兵器選定を否定した。 だが、防衛省の幹部が内情を明かした。 「総理は『敵にやられっぱなしで、日本が守るしかないでは良くない。攻撃的な技術をやっ た方がいい』という考えだと周囲は受け止めている。NSSで『総理の意』をくんだ議論を重 ね、防衛省に提示させたんだ」 ◇ 安倍政権で初めて五兆円を突破し、増大し続ける防衛費。官邸主導で米国から高額兵器を次 々と輸入、攻撃型ミサイルの導入計画も進める。聖域化する予算の流れを追い、専守防衛を逸 脱するかのように、米軍との一体化を急激に進める政権の内実を報告する。 (この連載は鷲野史彦、原昌志、中沢誠、望月衣塑子、藤川大樹が担当します) 東京新聞<税を追う> 10/29~11/9 ★2018 年 11 月 9 日 朝刊 <税を追う>地上イージス 総額6000億円超も 防衛省公表は2基4500億円 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018110902000152.html [写真]ルーマニアに設置されたイージス・アショアの施設=2016年5月(ロイター・共同) 取得費と三十年間の維持費を含め、防衛省が二基で約四千五百億円と公表している地上配備 型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。ただ、システムを格納する建屋や迎撃ミサ

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イルの費用は含まれていない。さらに、搭載するレーダーを巡り「高額の射撃試験が必要にな る」との指摘がある。今後、ミサイル費用を含めると一千億円単位の増額になり、総額で六千 億円を超す可能性もある。 (「税を追う」取材班) 昨年十二月の地上イージス導入決定後、防衛省はシステムの構成品の選定作業を実施。レー ダーは米ミサイル防衛庁から、米ロッキード・マーチン製「SSR」と米レイセオン製「SP Y-6」の二種類の提案を受け、今年七月にSSRを選んだ。 SSRは、二〇二〇年に米アラスカに配備される次期警戒管制レーダー「LRDR」を基に 開発する。現在、海上自衛隊が五隻保有するミサイル防衛対応のイージス艦のレーダー「SP Y-1」に比べ、探知距離が二倍以上になるなど、性能は向上するという。 昨年十一月の国会で、小野寺五典防衛相(当時)はイージス艦を参考に地上イージス一基の 取得費を約八百億円と試算したが、今年八月の概算要求の段階で、千二百三十七億円に膨らん だ。SSRは一基で百七十五億円ほどとみられる。米国のインフレによる価格上昇などの要因 もあるが、防衛省幹部は「SSRの搭載が価格上昇の主たる要因になった」と説明する。 地上イージス二基の三十年間の維持・運用費は約二千億円。本体と合わせ約四千五百億円の 総費用には建屋などの施設整備費や、一発三十億円以上とされる新型迎撃ミサイル「SM-3 ブロック2A」、発射装置などは含まれていない。 さらにSSRについて、イージス艦の運用経験がある海上自衛隊OBは「実際に弾道ミサイ ルに模した標的を探知・追尾し、センサーとして機能するか確かめる射撃試験が必要になる」 と指摘している。 米軍事企業関係者によると、米海軍が導入を決めたレイセオン製のSPY-6は、米海軍が 五億ドル(約五百七十億円)以上の費用をかけ、一連の試験を実施したという。 SSRの試験も同額程度の費用がかかれば、施設整備費やミサイルの費用などと合わせて一 千億円単位の増額が考えられる。 防衛省防衛計画課は「われわれが求めている性能が実際に発揮できるか、運用開始前に確認 することは必要だと考えている。追尾試験や実射試験の具体的な方法や費用負担は今後、米政 府などと協議して決めたい」と話している。 ◆取材班から 費用の全体像示せ 防衛省側の説明のたびに百億円単位で値段が上がったイージス・アショア。日本の防衛企業 のある幹部は「迎撃ミサイルなどもろもろ含めたら、総額は一兆円近くになるのではないか…」 と推測する。 一兆円の数字に根拠はなく、防衛省の幹部も「さすがに一兆はないと思う」と首を横に振る が、ではいったい、いくらくらいかかるのか。総額が示されない以上、疑問は当然出てくる。 最初の値段は今の三分の二だった。自衛隊の幹部OBは「まだレーダーが決まっていないか ら、安く説明しておきましょう、という理屈は分からないでもない」と言いつつも、「最初に 小さい数字を出すのは官僚の悪い癖」と断じる。

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軍事機密を理由に防衛省が搭載するミサイルの数を明らかにできないのは分かるが、仮に二 基で計四十発なら千二百億円を超す。イージス・アショアがどれほど必要なのか、それを議論 する国会は始まったばかりだ。やはり、かかる税金の全体像は示す必要がある。 (藤川大樹) ◆ご意見・情報を募集 シリーズ「税を追う」へのご意見、情報を募集します。メールは [email protected]、 郵便は〒100 8505(住所不要)東京新聞社会部「税を追う」取材班へ。 ★2018 年 11 月 7 日 朝刊 <税を追う>F35A 米から20機追加購入へ 日本企業、参画断念も http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018110702000157.html 航空自衛隊に配備する米国製の最新鋭戦闘機「F35A」について、政府が約二十機を追加 購入する方向で最終調整していることが、関係者への取材で分かった。現在購入を進めている 四十二機のうち三十八機は、国内企業が製造に参画し、調達価格が割高になっている。追加購 入する二十機は、国内企業の製造参画を取りやめ、米国製をそのまま輸入することも検討して いる。 F35Aを巡っては防衛省は国内産業育成のため、機体組み立てや部品製造に参画する三菱 重工業、IHI、三菱電機の三社に計千八百七十億円を設備投資。輸入を選べば、これらの施 設の機能が大幅に縮小する可能性もあり、多額の税金を投じた判断が問われそうだ。 追加購入の契約は早ければ二〇二〇年度から行う。 国内企業が製造に参画する現在のF35Aについて、防衛省は一九年度の概算要求額で一機 百五十三億円と見積もっている。これに対し、今年、米政府が製造元のロッキード・マーチン と契約した単価は百一億円。日本が、米国からの直接輸入を選べば、取得コストは大幅に減る 見込みだ。 政府関係者によると、現行の四十二機の生産が終われば、機体組み立ての施設は閉鎖、整備 拠点は機体の維持運用のため存続させる方向で検討している。追加分の二十機は、主力戦闘機 「F15」の後継の一部と位置付ける方針。約二百機あるF15のうち、百機は改修して使い 続けることになっているが、未改修の残り百機の扱いが焦点になっていた。 (望月衣塑子、 原昌志) ★2018 年 11 月 7 日 朝刊 <税を追う>F35A 国産部品の搭載遅れ 防衛省、返還額分からず http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018110702000139.html [写真]最新鋭ステルス戦闘機F35A 政府が二十機の追加購入を検討している米国製戦闘機F35Aを巡

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っては、既に購入を進めている四十二機のうち三十八機で、日本製部品の搭載が遅れるという 問題が生じている。米側に前払いした一機百数十億円に上る購入費のうち、部品未搭載による 返還額がいくらになるかを、防衛省では把握できないことが分かった。米国が圧倒的有利とさ れる「対外有償軍事援助(FMS)」の兵器取引の弊害がここでも浮かび上がる。 (「税を 追う」取材班) FMSは米政府の「言い値」に従って前払いするため、取引価格が適切か不透明との指摘が ある。過払いがあれば納入後に返金されるが、精算は遅れがちだ。F35A全四十二機の納入 が終わるのは二〇二四年度の予定で、精算時期はさらにずれ込むとみられる。防衛省は「米政 府の精算が終わらないと、返還額や時期は分からない」としている。 防衛省が一八年度末までに米国と契約するのは三十四機。最初の四機は一機九十六億円だっ たが、五機目からは日本企業が機体の組み立てや、エンジンとレーダー部品の製造に参画する ことになり、契約時期によって一機百三十億~百七十億円に引き上げられた。 防衛省は国内産業育成のため、IHIと三菱電機の部品製造ライン整備に計七百四十一億円 を投入。さらにこの二社を米企業の下請けに参入させ、元請けの米企業が二社に支払う部品製 造費や工賃を、窓口の米政府に前払いしてきた。 しかし、米国から原材料の供給が遅れたなどの理由で、部品 の製造が始まったのは昨年十二月から。いまだに国産部品は搭 載されていない。 昨年九月に会計検査院から国産部品の搭載遅れを指摘された ことを機に、防衛省は米政府と対応を協議。前払い金のうち、 部品未搭載で余分に支払った費用の返還を確認したという。た だ、一機につき五十億円前後になる差額がすべて返金されるわ けではなく、額や時期は米側の精算待ち。国費で整備した二社 の製造ラインの維持費が含まれるのかも不明だ。 F35Aは取得までの期間が長く、契約も巨額であることか ら、所管する防衛装備庁の担当者は「精算作業にもかなりの時 間がかかる」とみている。全機納入を待たずに精算を年度ごと などにできないか、米政府に求めている。 国産部品の搭載が始まるのは早くて十七機目から。計画通り十九部品がすべて搭載されるの は、四十二機のうち最大でも八機にとどまるとみられる。 ◆ご意見・情報を募集 シリーズ「税を追う」へのご意見、情報を募集します。メールは [email protected]、 郵便は〒100 8505(住所不要)東京新聞社会部「税を追う」取材班へ。 ★2018 年 11 月 6 日 朝刊

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<税を追う>取材班から トイレの紙 自腹の隊員 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018110602000136.html 「こういうものに二千億円、三千億円とお金をかける一方で、陸上自衛隊の一般隊員の状況 がどういうことなんだ、ということがたくさんある」 立憲民主党の本多平直衆院議員は先週の予算委員会で、政府が導入を決めた迎撃ミサイルシ ステム「イージス・アショア」をただした後、一転して現場の自衛官が使う消耗品に焦点を当 てた。一例に挙げたのがトイレットペーパーだ。 「人数あたり何センチという基準を決めており、足りなくなると自衛官は自費で買っている と。真っ先に解消していただきたい」。言葉に力がこもっていた。 岩屋毅防衛相も「隊員が自費購入した場合もあると承知している」と認め、「隊員の負担に ならないようにしたい」と応じた。 この日、陸自の三十四施設で自家発電設備がないことも明らかに。先の北海道地震では、一 日以上停電した施設があった。米国製兵器の輸入拡大で、装備品のローンは五兆円超と、どん どん膨らむ。足元は大丈夫なのだろうか。(藤川大樹) ★2018 年 11 月 5 日 朝刊 <税を追う>741億円投じ国産部品ゼロ 戦闘機F35A 搭載計画大幅遅れ http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018110502000123.html [写真]ステルス戦闘機F35A 米国から購入している次期主力戦闘機「F35A」を巡り、防衛省 が二〇一三年度から国内企業を部品製造に参画させるため、IHIと 三菱電機の生産ラインの整備費などに七百四十一億円を投じながら、 国産部品を内蔵した機体はまだ一機も納入されていないことが分かった。米国からの原材料輸 入の遅れなどが理由。計画した国産部品をすべて内蔵し た機体は、全四十二機のうち最大でも八機にとどまる見 通しだ。 (「税を追う」取材班) F35Aの製造元は米大手軍需メーカーのロッキー ド・マーチン。防衛省は一二年度から米国の対外有償軍 事援助(FMS)を使って購入し、これまで九機が納入 されている。

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防衛産業の育成につなげたい防衛省は、ロッキードの下請けに 入った国内企業の工場や生産ラインの整備費や維持費を負担して いる。一機で何万ともいわれるF35Aの部品のうち、国内で製 造できるのは二十九個。それでも一七年度までに契約ベースで、 エンジン部品を製造するIHIに五百二十一億円、レーダー部品 を造る三菱電機に二百二十億円を支払った。この他に、機体の組 み立てや検査を担う三菱重工業に千百二十九億円払っている。 機体の価格は米国から完成品を輸入した最初の四機は一機当た り九十六億円だったが、日本企業の参画や円安の影響で、一三年 度の五機目以降は百五十億円前後に高騰した。 だが、一七年に入ってもIHIと三菱電機では、本格的な製造は始まらず、部品によっては 契約に至っていないケースまであった。 防衛装備庁の担当者は「製造に必要な素材を米企業がなかなか送ってこなかったり、米企業 からの発注が遅れ契約手続きに入れなかったりしたため」と説明する。 会計検査院は一七年九月、国産部品の搭載遅れについて装備庁の対応の不備を指摘した。日 米間で協議し、国内で部品の製造が一部始まったのは同年十二月だった。 装備庁によると、国産部品を内蔵したエンジンの搭載は二〇年度納入の十七機目から、レー ダーは二一年度納入の二十三機目からの見通し。すべての部品が内蔵されるのは早くても三十 五機目以降になるという。 IHIは「最先端の戦闘機用エンジン技術に接することにより、技術基盤の維持・高度化に 資することができた」とコメント。三菱電機は「回答を差し控える」、ロッキード・マーチン 広報担当は「日本の調達関連であるので、防衛省に相談する方が適切かもしれない」と回答し た。 ◆国内企業参画は妥当 <防衛装備庁プロジェクト管理部の話> 国内企業参画を進めていることは妥当と考えてい る。防衛装備庁としては、日本企業が製造した部品がなるべく早期に搭載されるよう、引き続 き、米政府や日米関係企業に働き掛けていきたい。 <F35A> レーダーに探知されにくいステルス機能を持ち、敵を感知する情報収集能力が 高い。米国を中心に9カ国で共同開発した。今年から順次、航空自衛隊三沢基地に配備されて いる。防衛省の試算では、全42機の取得費(約6000億円)と30年間運用した場合の維 持整備費などを合わせると約2兆円に上る。 ★2018 年 11 月 5 日 朝刊 <税を追う>F35A導入 防衛産業育成に1800億円 国内生産「恩恵ない」

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018110502000253.html [写真]昨年12月からF35Aのレーダー部品の製造が始まった三菱電機鎌倉製作所=神奈川 県鎌倉市で、本社ヘリ「おおづる」から 最新鋭戦闘機「F35A」の導入を巡り、日本の防衛産業育成のために防衛省が五年前から 投じた費用は千八百億円余り。だが、巨額の投資に見合うよう な効果はいまのところ、あまり得られていない。むしろ浮き彫 りになったのは、米国の都合に左右されやすい「対外有償軍事 援助」(FMS)に基づく兵器調達の実態だ。国内からは「高 い税金を払っているのに恩恵がない」という批判が出ている。 (「税を追う」取材班) 当初の想定から四年遅れた二〇一七年十二月、三菱電機の鎌 倉製作所(神奈川県鎌倉市)で、ようやくF35Aに搭載するレーダー部品の製造が始まった。 間もなく新たなトラブルが生じた。やっと動き始めた生産ラインの改修を迫られる事態にな ったのだ。 「レーダー部品に使う集積回路(IC)が米国で枯渇しそうなので、新たなICに切り替え ることになった」と防衛装備庁の担当者。ライン改修費用を盛り込んだこともあり、防衛省が 一九年度予算に要求したF35Aの機体価格は一機 百五十三億円と、一八年度から二十億円も跳ね上がっ た。 防衛省はF35Aの生産に国内企業を参画させる ため、一三~一七年度だけで千八百七十億円(契約額) に上る資金を投入してきた。国内での機体組み立ては 一三年度に予定通り始まったがエンジンやレーダー への国産部品の搭載は遅々として進んでいない。 背景には近年急増する米国のFMSを利用した武器取引がある。日本にとって最新兵器を入 手できるメリットはあるが、価格は「言い値」で納期も米国次第。F35Aを巡る突然の部品 変更は、米側の都合に振り回された結果だ。 防衛省はF35Aの導入に当たり、米側にライセンス料を支払って国内で製造するライセン ス生産を要望していたが、技術流出を懸念する米側に断られた。代わりに日本側が持ち掛けた のが、機体の組み立てや国産部品の採用だった。国産にこだわるのは技術確保への危機感だ。 航空自衛隊小牧基地や名古屋空港に近接する三菱重工業の工場(愛知県豊山町)では、機体 の組み立てや検査が行われている。組み立ては米企業の指示に従い主翼や胴体など主要部品を つなぎ合わせる作業で、装備庁の担当者は「間近で機体に触れて作業できるので、防衛産業の 育成につながる」と胸を張る。

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ただ、周囲からは冷めた目も。自衛隊の元空将は「プラモデルを組み立てるようなもので、 技術の習得につながらない」と指摘する。しかも、FMSによる兵器取得はブラックボックス だらけだ。 三菱重工業関係者は「機体の最終検査は米国技術者が担い、日本の技術者は施設内の立ち入 りも許されない」と話している。 ◆ご意見・情報を募集 シリーズ「税を追う」へのご意見、情報を募集します。メールは [email protected]、 郵便は〒100 8505(住所不要)東京新聞社会部「税を追う」取材班へ。 ★2018 年 11 月 2 日 朝刊 <税を追う>米国製優先、飛べぬ国産 整備部品足りず自転車操業 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018110202000144.html 安倍政権で急拡大した米国製兵器の導入により、戦闘 機など五種の兵器だけでも、向こう二十~三十年間の維 持整備費が二兆七千億円を超える防衛省の試算が明ら かになった。そのあおりで国産を中心に、米国政府の対 外有償軍事援助(FMS)以外で調達した兵器の維持整 備費にしわ寄せが来ている。主力戦闘機ですら故障部品 の修理が進まず、稼働率は大幅に低下。現場の自衛隊で は、国産兵器の運用に危機感が広がっている。 (「税 を追う」取材班) 「航空自衛隊の維持整備は現状でも部品不足が累積し、借金まみれのような状態だ」。昨年 八月まで空自の補給本部長を務めた尾上定正氏は、現場の窮状を厳しい表情で明かした。 その一つに挙げたのが二百機を数える戦闘機F15。米企業とライセンス契約を結んだ国内 最大手の三菱重工業が生産し、修理を手掛ける主力戦闘機だ。領空侵犯の恐れがある、他国の 軍用機に対する緊急発進のほとんどを担うため、最優先で整備している。 しかし、そのF15ですら部品の在庫が乏しく、すぐに修理・整備できないケースが相次ぐ。 仕方なく、整備中のもう一機の部品を流用する「共食い整備」でやりくりしているという。 「部品を流用された機体は飛べなくなるから、F15の稼働率は大幅に落ちている」と尾上 氏。優先度の低い整備は後回しになりがちなため、将来のパイロットの育成に使う練習機「T 4」などは、故障すると倉庫に置かれたままにされ るのが現状だ。 [写真]緊急発進でパイロットが駆け込むF15戦 闘機。部品の在庫不足が深刻化している=2014 年12月、航空自衛隊那覇基地で

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空自がFMSで導入する最新鋭戦闘機「F35A」で既に配備されたのは九機。将来的に計 四十二機に増える。「F35Aが増えるほど、それ以外の維持整備費は圧迫される。極端に言 えば、F35A以外の空自の飛行機は動かなくなる」と尾上氏は懸念する。 危機感は自衛隊全体に広がる。「自転車操業で運用上の問題は生じていないのか」。昨年十 二月に防衛省で開かれた調達審議会で、有識者の一人が海上自衛隊の国産の哨戒ヘリコプター 「SH60K」でも、いわゆる共食い整備が行われていると実態を取り上げた。 「運用に影響を及ぼしている部隊もある」。当事者の防衛省側がそう認めざるを得ないほど、 共食い整備の影響は深刻化している ★2018 年 11 月 2 日 朝刊 2018 年 11 月 2 日 07 時 04 分 <税を追う>米製兵器維持費、2兆7000億円 防衛予算を圧迫 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018110202000134.html http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018110290070407.html 防衛省が米国政府の対外有 償軍事援助(FMS)を利用し て導入、あるいは導入を予定し ている戦闘機「F35A」など 五種の兵器だけで、廃棄までの 二十~三十年間の維持整備費 が二兆七千億円を超えること が同省の試算で分かった。同省 は二〇一九年度のFMSによ る維持整備費に千七十五億円 を見込んでいるが、F35Aな どの本格的な配備はこれから で、将来的に年間の維持整備費 が大幅に増え、防衛予算を圧迫 していく。 (「税を追う」取材班) 日本などの同盟国がFMSを利用して米国から兵器を購入する際、米国政府は最新技術の流 出を避けるため、秘匿性が高い部分の修理整備はFMSに基づき、製造元の米国メーカーが行 うことを求めている。購入国は兵器を廃棄するまで、維持整備費を米国政府に払い続けること になる。 防衛省の試算によると、四十二機導入するF35Aの場合、機体の購入費(計五千九百六十 五億円)に加え、米国政府などに支払う維持整備費に三十年間で約一兆二千八百億円を見込む。 このほか購入費が高い輸送機「オスプレイ」(十七機)▽無人警戒機「グローバルホーク」 (三機)▽早期警戒機「E2D」(六機)▽地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」

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(二基)は、二十~三十年間の維持整備費計約一兆四千三百億円がかかる。 既に配備されているのはF35Aの九機だけで、配備が進むごとに維持整備費は大きく膨ら む。 日本側が維持整備の一部を請け負う場合もあるが、米国から兵器を導入すると整備や技術指 導を担う米国の技術者らが日本に滞在することになり、その渡航費や人件費は日本側が「技術 支援費」として支払う。米国から取り寄せる部品も高額なため、輸入兵器の維持整備費は、国 内で調達するより割高になる。 国産・輸入両方の高額兵器の購入費は複数年度で支払うことができ、二年目以降が後年度負 担(ローン残高)と呼ばれる。一二年度まで三兆円前後で推移していた兵器ローン残高は、安 倍政権による米国製兵器の導入拡大で急増。一九年度予算で約五兆三千四百億円に達する見込 み。さらに今後FMSによる維持整備費が膨らめば、兵器ローンの増加に、歯止めがかからな くなる恐れがある。 ◆高級車購入と同じ <防衛装備庁プロジェクト管理部の話> FMSで購入するような高性能の装備品は、高級車 を買った際に維持費がかさむのと同じだ。今後、さらにFMSの維持整備費が上昇する傾向に あるのは間違いない。国産装備品にしわ寄せが及ばないような装備政策を立てていきたい。 ★2018 年 10 月 29 日 朝刊 <税を追う>取引先1位は米政府 装備品、「言い値」で高騰度々 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201810/CK2018102902000153.html 防衛省の最大の取引先は国内企業ではなく、アメリカ政府-。安 倍政権で米国の「対外有償軍事援助(FMS)」に基づく兵器導入 が急増し、米国は二〇一五年度から三年連続で契約先のトップに立 つ。「バイ・アメリカン(米国製品を買おう)」。兵器購入を迫る トランプ米大統領に応じてきた安倍晋三首相。だが、米側の「言い 値」で決まりがちな価格など、米国主導の取引により、防衛予算の 借金が膨らんでいる。 (「税を追う」取材班) 「安倍政権の米国製装備品の積極的な購入は、事実が物語ってい る」。今年六月の参院外交防衛委員会。井上哲士(さとし)議員(共 産)が防衛省から取り寄せた資料を基に切り出した。 地方防衛局分を除いた防衛省の装備品契約額。一二~一四年度は 国内最大手の三菱重工業が一位で、米国政府は一三年度の二位(千 六十九億円)が最高だった。それが一五年度からはトップに居続け る。一七年度は三千八百七億円で、二位の三菱重工業に一千億円以上の差をつけた。

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「(ミサイル防衛の)イージスシステムやF35A戦闘機といった わが国を守るために必要な装備品はFMSでしか調達できない」。小 野寺五典(いつのり)防衛相(当時)はそう答弁し、「今後とも米国 と連携する」と日米一体化を強調した。その一つが一九年度に契約予 定の地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」だ。 防衛省は秋田市と山口県萩市・阿武町にある二つの演習場に配備す る方針で、価格は二基で計二千三百五十二億円。だが一九年度に支払 うのは五十七億円だけで、残る二千二百九十五億円は二〇年度以降、 四年に分けて支払う。 「北朝鮮は核兵器を放棄せず、対応策は必要だ」。元航空自衛隊空 将の織田(おりた)邦男氏は地上イージスの意義は認めつつ、「米国 は秘の部分は教えてくれない。問題は価格の中身が分からないことだ」と案ずる。 FMSでの兵器の取引価格は米側が見積もるため、値段は言い値になりがちだ。日本向けに 部品を作り直すなどの理由で、当初の見積もりから価格が高騰することも度々ある。日本側が 適正価格を検証するのは難しく、米側の圧倒的優位は動かない。 米国製兵器の導入拡大により、複数年度で支払う後年度負担(ローン残高)は急増。一九年 度の支払いは国産を含め、二兆七百八億円と予算全体の四割を占める。これに人件費と糧食費 を合わせると八割が固定的な経費となり、新たな装備品の購入などに使える「自由枠」は二割 しかない。 防衛省では、予算の硬直化への懸念が広がる。ある幹部はつぶやく。「後年度負担に圧迫さ れ、これ以上切り詰められないところまで来ている」 <イージス・アショア> イージス艦に搭載している迎撃ミサイルを地上に配備し、大気圏外 で弾道ミサイルの迎撃を図るシステム。防衛省は2024年度ごろに山口、秋田両県に2基を 配備し、日本全域のカバーを目指すが、強力なレーダー波による健康被害を懸念する声も出て いる。 ◆ご意見・情報募集します シリーズ「税を追う」へのご意見、情報を募集します。メールは [email protected]、 郵便は〒100 8505(住所不要)東京新聞社会部「税を追う」取材班へ。

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