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1. 山陰地域におけるインバウンド観光需要の動向 山陰地域の訪日外国人の延べ宿泊者数の推移をみると 振れを伴いながらも徐々に増加している ( 図表 1) この間 境港に寄港するクルーズ船が隻数 乗客ともに増えている( 図表 2) ほか 米子空港等からの入国者数も増加傾向にある ( 図表 3) このよ

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0 2016 年 12 月 1 日 日本銀行松江支店

山陰地域におけるインバウンド(訪日外国人)観光の動向と

関連企業等の対応状況

 本稿の内容に関するお問い合わせは、日本銀行松江支店総務課(0852-32-1503)もしくは matsue-b1918@boj.or.jp までお願いします。 ※ 本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、あらかじめ日本銀行松江支店までご相談 ください。複製を行う場合は、出所を明記してください。

Bank of Japan Matsue Branch Sanin Research Papers

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1 1.山陰地域におけるインバウンド観光需要の動向 山陰地域の訪日外国人の延べ宿泊者数の推移をみると、振れを伴いながらも徐々に増加し ている(図表1)。この間、境港に寄港するクルーズ船が隻数・乗客ともに増えている(図表 2)ほか、米子空港等からの入国者数も増加傾向にある(図表3)。このように、山陰地域に おけるインバウンド観光需要は着実に増加しているとみられる。 (図表1)訪日外国人の延べ (図表2)クルーズ客船寄港 (図表3)訪日外国人の入国 宿泊者数 実績(海外国籍) 者数 (出所)観光庁「宿泊旅行統計調査」 (出所)外務省「出入国管理統計」 (注)境港管理組合が公表しているクルー (注)16 年は 16/10 月までの数値 ズ客船寄港実績を基に作成。16 年は を年率換算。 予約状況分を含む。 もっとも、国内旅行者を含めた延べ宿泊者数に占める外国人旅行者のウェイトは 2%台と低 水準であるほか、宿泊を伴わない境港へのクルーズ客船の平均滞在時間は 10 時間弱と短く、 観光地への訪問や買い物等の波及効果は限定的とみられる。このため、山陰地域では、イン バウンド観光需要の規模はそれほど大きくないと考えられる。 この背景について、企業等へのヒアリング情報も踏まえて整理すると、①そもそも訪日外国 人旅行者の山陰に対する認知度・訪問意欲自体が低い(図表4)中で、②一人当たりの消費額 が少ない韓国人の宿泊者ウェイトが高い(図表5、6)。また、受け入れ側においても、③観光 に関する様々なイベント(出雲大社の大遷宮、尾道松江線の開通、松江城の国宝化、水木しげ るロードの再注目等)を背景に近年増加している国内観光者のリピーターをいかに確保してい くかが当面の課題と考え、インバウンド観光需要の取り込みにまで注力しきれておらず、大都 市圏でみられた所謂「爆買い」の動きも非常に限定的であることや、④外国語が話せる人材の 不足等からすぐには対応できない先が多いことが挙げられる。さらに、受け入れ側のより構造 的な課題として、⑤山陰地域内の移動における交通の利便性の悪さや、⑥インバウンド観光需 要の取り込みに向けた地域間の連携が進んでいないことなどを指摘する声も聞かれている。 0 5 10 15 20 0 5 10 15 20 14 15 16年 乗客数(右目盛) 客船数(左目盛) (隻) (千人) 0 4 8 12 16 20 0 10 20 30 40 50 鳥取県(左目盛) 島根県(左目盛) 全国(右目盛) (千人泊) (百万人泊) 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 0 10 20 30 40 50 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16年 山陰(左目盛) 米子空港(左目盛) 全国(右目盛) (千人) (万人)

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2 0 100 200 300 中 国 オー ス ト ラ リ ア ス ペ イ ン 英 国 フラ ン ス イ タ リ ア ベ ト ナ ム シ ン ガ ポ ー ル ロ シ ア そ の 他 米 国 香港 ドイ ツ カ ナ ダ タ イ マレ ー シ ア イ ン ド イ ン ド ネ シ ア 台 湾 フィ リ ピ ン 韓 国 (千円) (図表4)訪日外国人旅行者における日本の (図表5)山陰の国別延べ訪日外国人宿泊者数 観光地の認知度と訪問意欲 (2015 年) (出所)(株)日本政策投資銀行・(公財)日本交通公社「DBJ・JT BF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(平成 28 年版)」 (図表6)国籍別にみる訪日外国人 1 人当たり旅行支出(2015 年) (出所)観光庁「訪日外国人消費動向調査」 この間、訪日外国人の消費動向をうかがうと、山陰地域でも都市部や主要観光地等で指摘 されているように、一部でみられていた「生活用品」や「家電」等の購入が一服し、フード コートでの飲食や地元特産品の購入など「食事」や「土産物」へとシフトしてきているとの 声が聞かれている。また、体験型の施設での需要が増加するなど、訪日目的が「買い物」と いったモノ消費から体験型・交流型の観光等のコト消費にシフトしている傾向がみられてい る。 9% 5% 3% 1% 0% 20% 40% 60% 80% 東 京 富士 山 北 海 道 京 都 大阪 広島 鳥取 松江/ 出 雲 認知度 訪問意欲 (注) 調査地域は、韓国、中国、台湾、香港、タイ、シンガポール、 マレーシア、インドネシア、アメリカ、オーストラリア、イギ リス、フランス。これらの地域に居住する海外旅行経験者 を対象に、各地域の認知度等をインターネットで調査した もの。 (出所)観光庁「宿泊旅行統計調査」 韓国, 46.8 台湾, 19.2 香港, 11.6 中国, 9.0 アメリカ, 2.9 タイ, 2.1 ドイツ, 1.3 フランス, 0.4 その他, 6.7 全延宿泊数のうち 外国人の占める割合 4.1% 韓国, 16.5 台湾, 23.7 香港, 11.8 中国, 9.6 アメリカ, 7.1 タイ, 1.3 ドイツ, 1.4 フランス, 3.1 その他, 25.6 全延宿泊数のうち 外国人の占める割合 1.3% 鳥取県 島根県

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3 なお、本年 5 月に適用された免税対象額の引き下げに伴い、これまで敬遠されがちだった やや高額な商品にも動意がみられるようになったこともあり、一部では消費額を増やす動き もみられる。 2. インバウンド観光需要の獲得に向けた取り組み インバウンド観光需要の獲得に向けた今後の課題としては、①観光振興を官民一体となっ て強力に推し進める体制づくりや、②観光資源の発掘や再発見、③訪日外国人旅行者の山陰 に対する認知度・訪問意欲の引き上げに加え、④山陰へのアクセス面の整備や、⑤語学力を 備えた人材を中心とした人手の確保等が挙げられる。 こうした中で、企業や地方公共団体、経済団体等による課題解決に向けた前向きな対応を 纏めると以下のとおりである。 (1)体制面については、各地域で DMO1設立の動きがみられており(図表7)、このうち 16/4 月 に山陰全域をカバーするかたちで設立された山陰インバウンド機構は、当地域のインバウン ド観光事業の司令塔としての役割が期待されている。また、松江市では、松江観光協会の株 式会社化が検討されるなど、インバウンドを含んだ観光振興の強化に取り組んでいる。 (図表7)山陰地域の DMO 設立の動向 申請区分 日本版 DMO 法人の名称 マーケティング・マネジメントの対象地域 広域連携 DMO 山陰インバウンド機構 鳥取県、島根県 地域連携 DMO 鳥取中部観光推進機構 鳥取県:倉吉市、三朝町、湯梨浜町、琴浦町、北栄町 岡山県:真庭市 地域連携 DMO 鳥取・因幡観光ネットワーク 協議会(設立予定) 鳥取県:鳥取市、岩美町、智頭町、若桜町、八頭町 地域連携 DMO 中海・宍道湖・大山圏域版 DMO(設立予定、名称未定) 未定 地域 DMO 飯南町観光協会 飯南町 (出所)観光庁「日本版 DMO 候補法人登録一覧」、新聞報道 (2)観光資源面については、自然環境等を活かした体験型・交流型観光の企画に注力する動 きがみられるほか、鳥取県を中心にアニメ(漫画)・スポーツといったコンテンツを利用 した活動が行われている。

1 Destination Management Organization。観光庁では「地域の『稼ぐ力』を引き出すとともに地域への

誇りと愛着を醸成する『観光地経営』の視点に立った舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、 明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に 実施するための調整機能を備えた法人」と定義している。

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4 (3)PR 面では、企業と地方公共団体や経済団体等が連携してヨーロッパやアジア等の重点地 域へのプロモーション活動(商談会、旅行会社招聘等)やパワーブロガーの招致を行って いるほか、企業による自社ホームページの多言語化など山陰地域の認知度・訪問意欲を高 めるための取り組みが行われている。このほか、足もとの需要拡大や新たな需要開拓を企 図して、海外の旅行エージェントに直接営業に出向き、成果をあげている先がみられる。 その際、企業は、①国・地域別にみたニーズ、②観光客の受け入れが増加した国・地域に おける増加の背景、③自社の価格帯が受け入れられるか等について、アンケートや統計等 で調べた上で海外でのプロモーション活動を行っている。 (4)アクセス面については、地方公共団体等では交通の不便さを補うために、国際線におけ る直行便の誘致活動(図表8)や大型旅客船が接岸可能な港湾設備の拡充投資、山陰道に おける未整備区間の前倒し開通等に熱心に取り組んでいる。 (図表8)管内空港における国際線定期便設置状況 空港名 就航年月 路線 米子空港 2001 年 4 月 米子⇔ソウル 2016 年 9 月 米子⇔香港 (注)鳥取県ホームページの情報を基に日本銀行松江支店が作成。 (5)外国語対応面では、山陰地域では、外国人の観光案内等を生業とする通訳案内士が 71 名(16/3 月末時点)と少なく、新たな採用も困難であることから、企業向け接客翻訳 サービスの利用等で対応する先や、出先企業では本社から応援を受ける先もみられる。 また、島根県、鳥取県では構造改革特区計画の申請を行い、15/11 月に「山陰地域限定特 例通訳案内士養成特区」の認定を受け、山陰地域限定特例通訳案内士の育成に努めてい る。このほか、企業では、地方公共団体の補助金を活用しながら、案内表示、説明板、 パンフレット等の多言語化や外国語の音声ガイドの設置を行っている先もみられる。 (6)その他の面では、Wi-Fi やクレジット対応機の設置を行うことで受入体制を整備する先 や、海外で発行されたキャッシュカードが利用できる ATM の設置等による金融・決済サー ビスの向上に取り組んでいる地域金融機関がみられる。 3. 先行きの展望 日本全体の訪日外国人の訪問回数をみると、「1 回(初めて)」が 4 割前後で推移しており、 「2 回以上」のリピーターの比率は、このところ 6 割前後とあまり変化はない(図表9)。 もっとも、訪日外国人の全体数が増加していることを踏まえると、リピーター数は着実に増 加している。また、こうしたリピーターは、都市部での観光だけでは飽き足らず地方を回る 可能性が高いと思われる。

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5 72 65 53 50 47 36 18 16 12 10 9 5 0 20 40 60 80 100 シ ョ ッ ピ ン グ 自 然 ・ 景 勝 地 観 光 繁 華 街 の 街 歩 き 温 泉 入 浴 旅 館 に 宿 泊 日 本 の 酒 を 飲 む こ と 日 本 の 歴 史 ・ 伝 統 文 化 体 験 テ ー マ パ ー ク 美 術 館 四 季 の 体 感 日 本 の 現 代 文 化 体 験 ス キ ー ・ ス ノ ー ボ ー ド (%) (図表9)訪日外国人の訪日回数 (出所)観光庁「訪日外国人消費動向調査」 (注)16 年は第 3 四半期までの計数。 そこで、観光庁の「平成 26 年訪日外国人観光客の地方訪問状況」(トピック調査)をみる と、訪日外国人の 6 割近くが地方を訪問している。同調査で注目すべき点は、地方のみ訪問 している外国人は、ショッピングのほかに、自然・景勝地観光、温泉入浴、旅館宿泊、日本 の酒を飲むことなどの実施率が高いことである(図表 10)。また、調査対象を山陰地域に訪問 する外国人の多くを占める東アジア圏等に絞り込んだ調査をみても、地方では、自然観光、 温泉入浴、歴史的な建造物・遺跡や街並みを楽しむことが人気であるほか、郷土料理やその 土地で採れた魚介や肉、野菜や果物を味わうといった「食」への関心が高い(図表 11)。こう した分野は山陰地域の強みである。 (図表 10)訪日外国人の地方での活動実施率 (図表 11) 訪日外国人旅行者が日本の地方 観光地を訪れた際にしたいこと (出所)観光庁「平成 26 年訪日外国人観光客の地方訪問状況」 (出所)(株)日本政策投資銀行・(公財)日本交通公社「DBJ・ JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査 (平成 28 年版)」 60 58 55 54 52 50 47 45 45 42 0 20 40 60 80 自 然 観 光 地 を 訪 れ る 温 泉 を 楽 し む 郷 土 料 理 を 食 べ る 歴 史 的 な 街 並 み を 楽 し む 歴 史 的 な 建 造 物 や 遺 跡 を 訪 れ る そ の 土 地 で 採 れ た 魚 介 や 肉 、 野 菜 や 果 物 を 味 わ う 花 や 紅 葉 を 楽 し む 都 市 部 と は 違 っ た 地 方 な ら で は の 風 景 を 楽 し む 雪 景 色 を 楽 し む そ の 土 地 の 菓 子 を 購 入 す る (%) 35.5 36.9 35.2 37.6 41.3 40.7 36.7 36.6 39.3 37.8 37.8 38.8 0% 20% 40% 60% 80% 100% 11 12 13 14 15 16年 20回以上 10~19回 6~9回 2~5回 1回 系列9

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6 このため、今後の課題としては、①各地で設立されている DMO が、各々の取り組みの効果 を最大限に発揮できるように、役割分担を調整したうえで相互に協力するような関係を構築 する中で、②自然・景勝地観光、温泉入浴、歴史体験、「食」の提供といった山陰地域の強み について、消費や連泊を誘発するようなコンテンツとして育て上げるとともに、③交通の利 便性を高めるために、国際航空便の誘致や貿易港、山陰道の整備等に向けた取り組みを継続 するなどが挙げられる。 なお、本年 10 月に鳥取県中部を震源とする地震が発生した。この結果、観光面でも、一部 地域では、宿泊・飲食施設や観光施設の運営に支障がないにもかかわらず、既存の予約のキ ャンセルや新規予約の減少等の影響がみられている。もっとも、11 月に鳥取県が「復興本部」 を立ち上げるなど、地方公共団体、経済団体、企業、金融機関等が復旧から復興、そしてさ らなる発展に向けて一丸となって前向きに取り組んでいる。その成果の一環として、当地の 貴重な観光資源に対する関心が高まり、外部から復興を応援する動きもみられている。こう した中で、関係者が、当地の観光資源に一段と磨きをかけ、国内のみならず海外からも観光 客を誘致する動きに弾みをつけ、インバウンド観光需要の着実な増加につなげていくことが 期待される。 以 上

参照

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