理 学 療 法 学 第16巻第
5
号 345〜 350頁 (1989年 )報
告
老 人 保 健 法
に お け る
機 能 訓 練
事 業
の
実
態
一
兵 庫 県 下
に おけ
る理
学
療
法
士の関
わり
*一
川
勝 邦
浩
**吉 成 俊
二森 本
栄
成 瀬
進
藤 林 英 樹
奥
座
奇 世
子
得 平 司
桝
田
康 彦
山
本
克
己
姫 野 吉 徳
神 沢 信 行
小 西 崇 子
菅
村
正
吾
要旨 兵庫県 下の 理 学療法 士 が関わっ てい る 老人保健法によ る機能 訓練 事 業の実 態につ い て調 査 し た。
対象 は, 43事業 実施場 所に年6回以上協力してい る 理学療法 士とした。
内容は実施 状 況, 参加者の状況, 訓 練 内容・
時 間,
事 故 対策,
問題 点 な どの34項 目である。
アンケー
ト回 収 率は 97.
7% (42/43通 )であっ た。
参 加 者の疾患 は脳 卒 中 が 最 も多く,
年齢は60代, 70代 が 多か っ た。
交 通 手 段は徒歩が多く送 迎車の利 用は10
ヵ所15.
8
%であっ た。
訓練 内容は能力低下を中心 に し た アプロー
チが多く行われていた。
ま た機 能 訓 練の展開方 法や概念の位 置づ け とい っ た 基本 的な ところに悩ん でい る理学 療 法士 が多く,
今後の対 策の必要性が示
唆された。 キー
ワー
ド 機 能 訓 練 事 業,
実態調 査, 問 題 提起1
は じ め に 昭 和58年2月に老人保 健 法 (以下 老 健 法 )が施 行 され て以来, そ れ に基づ く機能訓練事 業 (以下事 業)や訪問 指 導が行われる よ うになっ て きた。
昭 和62年10月 現在,
兵 庫 県 下でも県地域 保 健 課の調 査に よ る と91市町の うち71
市 町で本事 業が行われ,
15市 町で訪問指 導が行われて いる。
本事 業に お い て理学 療 法 士 (以下PT
)は,
29市* The functional training task in the law o壬the health and medical services for the aged that physical therapists in
HyQgo Prefecture invQlve
** 兵 庫 県 理学 療 法 士会 地 域 理 学 療 法 対 策 委 員 会
Kunihiro Kawakatsu
,
RPT,
Hideki Fujibayashi,
RPT,
Yoshineri Himeno
,
RPT,
Shunji Yoshinari,
RPT.
Kiyoko Okuza
,
RPT,
Nobuyuki Kanzawa,
RPT,
Sakae Merhmoto,
RPT,
Tsukasa Takihira,
RPT,
TakakoKonishi
,
RPT ,
Susumu Naruse,
RPT,
YasuhikoMasuda
,
RPT,
Shogo Sugamura,
RPT,
KatsumiYamamoto
,
RPT : Hyogo Physical Therapist Associa.
t n (受付日 1989年 2月 6目 ) 町43事 業 実施 場所に年6
回 以上協力し て お り,
11
市町15
カ 所で訪問指 導を 行っ てい る。
そこ で今回 は本事業の実 態を調 査し,
現 状の問題 点の把握をとお して今後の士会 活 動の指 針を得る こ とを 目的と し た。
H
対 象 お よび 調 査 方 法 調査は,
昭 和62年10月現 在, 兵庫県下の43 事業 実 施 場 所に年6回 以上 協 力し ている PT を対 象と し た。 方 法 は, 郵送に よ るア ン ケー
ト調 査 を 行っ た。 内 容は,
事業 の実 施 状 況,
参 加 者の状 況,
訓 練 内容・
時 間,
事 故 対 策,
問題 点 な どにつ い て の34項目である。
アン ケー
ト は43通 発送し,
回収率は97.
7% (42通 )であっ た。
皿 結 果 1) 実 施 状 況 昭 和58年より本 事 業に PT が協 力を始め て か らその数 は着実に増えて お り (図1),
実施 場 所につい て は,
市 町 の保健セ ン ター38.
1%,
保 健 所26.
2%であり,
こ の両 者346 理学療 法学 第 16巻 第5号 で全 体の約三分の二 を 占め る。 他に総 合 福 祉セ ン タ
ー,
老人福 祉セ ン ター,
福 祉 会 館 な どがあっ た。
実 施 頻 度は月 1回か ら4回 が多 く,
その うち PT が参 加 して いる回数は月1回 が40,
596,
月2回が26.
2
%であ っ た (図2)。 機 能訓練事 業に必 要と さ れ る職 種の参 加 状 況につ い て は, 医師, 保健婦, 看護婦,
PT,
作業 療 法 士,
ボラン テ ィア,
担当課 員,
と協 力メン バー
は多いが,
常 時 参 加し て い る のは保健婦だけで ある (図3)。
2) 参 加者の状況 参 加者につ い て は, 脳卒中が78.
3% を占め最も多く,
次い で骨関節 疾 患であっ た。
年 齢は,
60 代が36.
8%,70
代が32.
O
% と多く,
性別で は 男性が63,
1%と多か っ た。
ま た, 交 通 手 段につ い ては徒歩 が 最も多く31.
7%で, 次 い で自家 用車, タ クシー
を利 用し ていた。 そし て,
市 町 ヵ所 40 20 26 39[
191−
一 59 、「
i
「
1i11 5859
6061
62
年度(昭和)
図 1 事 業 実 施ヵ所 (回答 39/42) 睾 業の実施頻度 (回as41f42) PT の参加 頻度 (回答42/42) 図 2 事業の実 施頻度 とPT の参 加頻度 ヵ所 40 30 20 10一
i
選
齶
睡
「
「
驪
贐
覊
匚
「
1
き「
}
1
爨
覊
鏃
…翻
1
「
飆ぐ
保健 婦 PT 医 師 看 護婦 担 当 ボ ラン 課 員 テ ィ ア驪
全 くな し ほ と ん ど 不 参 加蠶靉
時 鯵 加[コ
い っ も勠 作 業 栄養士 体育 その他 療 法士 指導員 図 3 メ ン バー
の参 加 状 況 (回答41
/42
)老 人 保健 法に おけ る機能訓練事 業の 実態 347 骨 主た る疾 患 (回答39/42
,
参加者数626人) 80 贈 年 齢 (回答3S/421参加 者 数587入) 交 通 手段 (回 答29/42,
参加者数488人) 図 4 参 加 者の状 況 基 本 動 作訓練 ホー
ムプログ ラム・
介 助 方法の助 言 指 導 関節 可動域 運動 応用 動 作 訓練 補 装 具・
生 活 用 具・
家 屋 改 造の助 言 筋 力 増 強 訓 練 平 衡 訓 練 姿 勢 矯 正 訓練 レ ク リエー
ショ ン・
スポー
ッ に おける助言 その他 50 図 5PT
が行っ てい る訓 練 (回答 42/42) ユoo
% の送迎車に よ る ものIXIS,
8%で,
10ヵ所であっ た (図4)。 3) 訓練 内容・
時 間 PT が行っ て い る訓 練 内容とし ては,
基本 動 作 訓 練, fi・一
一
ムプロ グラム及び介 助 方 法の助 言 や 指 導,
関 節 可 動 域運 動が中心 であり,
その ほか にも応 用 動 作訓練,
補 装 具・
家屋改 造の助言 や筋力 増 強 訓 練な ど まで幅広く行わ れて いる (鋼5)。
また,PT
の主な役 割とし て は能 力 低 下 と社会的不 利に対 す るア プ ロー
チ と答え たもの が42,
9 %と最も多かっ た (図 6)。
本 事 業一
回につ きPT が 関わ る訓 練時間は,
個 別 訓練 で は 31N60 分が 41,
6%,
グルー
プ訓 練で は30分 以 内が 50e/eと最 も多か っ た (図7)。
そし て,
個 別 訓 練,
グルー
図 6PT の主 な役割 (回答 42/42)348 理学療 法学 第 16巻第
5
号61〜
個 別 訓 練
(
回 答36/42
) グルー
プ訓練 (回答26
/42)
図 7 本 事 業一
回につ きPT
が関わ る時 間 図 8 PT に よる参 加 者へ の事 故につい て の対策 (回答 40/42) プ訓織こ重 き をお くPT は それ ぞ れ31.
7%であり,
両 方 均 等に行っ て いる PT は36.
6%であっ た、
4) 事 故 対 策PT
に よる参加者へ の事故につ い て は, 市 町が全責任 をとると答えた者 45%,
不 明 と答 えた者 50% であっ た (図 8)。
市町が全責 任をとると答えた者の うち, 47.
6% が市町 と契
約を交して いた。
ま た,
PT 自身の事 故につ い て も,
市 町 と契 約を交して い るの は23、
7%であっ た。
5) 本 事 業の捉 え方 及び悩 みPT
が本事 業をどの様に捉えて いる かにつ い て は,「満 足し て い る」・
「や ればやるほ ど面 白い」・
「非常に満 足し てい る 」 と簣
えた者は57.
1%で,
「ジレ ンマ に陥っ てい る」・
「楽し みがない 」と答え た者は38.
1%で あっ た (図9
)。 ま た, 悩ん でい る問 題につ い て は,事業の展 開 方 法 46.
2%,
事 業の概 念や位 置づけ30.
8%,
行 政機 関や他組 満 足してい る ジ レンマ に陥っ ている やれ ばや る ほ ど面 自い匚:
= = コ
・… %[ 二
:コ
・・.
・%[
コ
・.
・% ・ ・ ンテ ・ ア翻 醐 き起・ る04
・
8
% 非 常に満足 してい る 楽しみが ない そ の 他口
・.
・%口
・。
4
%匚
・1.
9
%・
図9PT
が本事業を どの よ うに捉え てい る か (42ケ所47回答,
複 数回答)轢 碾 開 舷
1
コ
46.
2
% 轢 の齢 や齶 づ けL
コ
3。.
8%驚
欝
騨
撒[ コ
28.
・% 将 来 謄[=コ
25.
6
% 贓 や鏃 と嘱 わ 肪[コ
・7.
9% ネッ ト ワー
クの不 備 チ・
一
ム ワー
クの不備 事業の技 術 面 ADL や 介助の指 導[
]
・5.
4
%口
・o・
3
%[
]
・。。
3
%日
2,
6
% 家 屋 雌 や鞴 職 の指覇
2.
6
% 鞍 期 チ・ ・クや 欝亘
2・
6
%そ ・ 他
口
12.
8
% 図 10PT
が悩んだ り困った り し てい るこ と (39ヵ所80回答.
複数回答 )老人 保健法 に お け る機 能訓練事業の実態 349 織 との 関 わ り28
.
2%,
将来 展 望25.
6%で あっ た (図10)。
そ し て, 「満足し てい る」・
「面 白い」な ど と答え た者の うち展 開方法・
概念や 位 置 づ けにつ い て悩ん で い る者は 52% であ り,
「ジレ ンマ に陥っ て い る」・
「楽し み が ない」 と答 えた者では100 %であっ た。
IV
検 討 課 題 本 事業の参 加 者 は,
脳卒 中に よる障 害 者が 圧倒 的に多 く, 当面こ の 参加者に対 するア プロー
チを重 点 的課 題と し て再認 識 する必 要 が ある。
訓練や指 導の内容は基 本動 作訓 練, 応 用 動 作 訓練,
ホー
ムプロ グラムや介 助 法,
補 装具, 家屋改造,
関 節 可 動 域 運 動,
家 族 指 導 な ど多 くの ことが 行 わ れて い る が,
その障 害レベ ル は能力低 下を中 心に し た アブV一
チがな されてい る。 これは, 障 害 者に おい て,
生活の 中に おける 問 題の 申 心は 日常生 活 動作 (ADL )である場合が多い こと からして 当然とも言 え る。
そして,
さ らに,
労働,
経 済 生 活,
旅 行, スポー
ツ な ど に お ける社 会 的 不 利を考 慮し て い くこ と も必 要であ る。
ま た, 昭 和57年に老人保 健 法が制 定されて か ら,
機能 訓 練 事 業が盛んに行 わ れ,
地 域リハ ビ リ テー
シ ョ ン活 動 が 重要視さ れて きて い る。
だが,
今回の調 査で は,
PT が 本 事 業の概念,
位 置づけ,
展 開 方 法とい っ た基本 的事 柄に, 最 も多 く悩んで いる。
こ の ことよ り地 域リハ ピ リ テー
シ ョ ンの体 系化とい う課題 に取り組ま ね ば な ら ぬ根 本 的問題がある よ うに思われる。 地 域 社会における種々 の組 織や その活 動, 家 族 等の入間 関 係,
参加 者の意 欲や 自立とい っ た事 柄について,
卒前卒後教育の申でレ ベ ル ァ ッ プを図っ てい く必 要もある。
本事 業に協力する上で,
事 故と補 償,
時間不足,
職 場 のV ンパ ワー
などの問題は ど れ も重要 課題である。
特に 事 故に対し て は常に慎重な 心構えが 必 要である。
ま た,
現 在 県 下の市 町で定 員 化されて い る PT は僅か 5名であ る点か ら も, 時 問 やマ ンパ ワー
がいかに不 足し てい る か がわ か る。
これに対して 日本理学療 法士協 会も市町 村の 対 策が促進さ れ る よ う厚生省に働 きかける必 要 が ある。
ま た, 当土会も兵庫県の 「リハ ビ リ テー
シ ョ ン シ ステム 構 想」の もとに市 町で の PT の定 員 化がもっ と推進 され て い くよ う心がけね ぽ ならない。
V
ま と め 地域に関わっ てい る現時点の問 題を考え る と, 次の点 につ い て早急に対 策を講じ る必 要 が ある と思われるe 地域リハ ビリ テー
シ ョ ンの体 系化とPT
の位置づ け 地域リハ ピ リ テー
シ = ンの質的向上を図る た めの PT 教 育 地 域で の PT の定 員 化 最後に本調査に ご協 力戴いた PT 諸氏に深謝致し ます。 尚,
本論 文の主 旨は,
第23回 日本 理 学 療 法士学会におい て発表 したe350
E#esza*
ig16#rg5e
<Abstract>
The
Functional
Training Task inTheLaw
of TheHealth
and Medical Services for
The
Aged
that Physical Therapists imHyogo Prefeeture Involye Kunihiro KAWAKATSU, RPT, Hldeki FUJIBAYASHI, RPT, YoshinoriHIMENO, RPT,Shunji
YOSHINARI,RPT,
Kiyoko
OKUZA,
RPT, NobuyukiKANZAWA,
RPT,
Sakae
MORIMOTO,
RPT, Tsukasa TAKIHIRA, RPT, Takako KONISHI, RPT,Susumu
NARUSE,
RPT,
Yasuhiko
MASUDA, RPT, Shogo SUGAMURA, RPT,Katsumi
YAMAMOTO,
RPTHb!oge
Pilysicat
77ierapist
Asseciation
We
sent physicaltherapists inHyogo Prefecture questionnaires about functionaltralning taskin
thelaw
of thehealth
and medical servicesfor
the aged. The sample consisted of 43 physical therapists whohad
taken part in the fuctionaltraining task six times and over a year. Thequestionnaire covered 34 items, for example, state of conduct, partieipants, kinds of
functional
training, a rneasure of accidents, and other problems, We received responses
from
42(97.70/o)
of43 physlcaltherapists.
Participants
were mainly intheir sixties or seventies and had stroke. Approximately one thirdof participantscarne on
foot,
and thoseby
pick-upbus
and car was only15,8%.
Physical
therapists were malnly lncharge of exercisefor
participants'disabilities.
Plenty
of physicaltherapists seemedto