特 別 講 演
病気
と
障害
,そ し
て
健康
*巾
村
隆
一
* *1
.
病 気と障 害,
そ し て 健康一
新 しい モデルを求め て一
」,
こ れ は1983年に出版 さ れ た 小冊 子の表題 で あ 歓、
その内 容 俵1
〕を要 約し,
1970
年 代か ら80
年 代 初 頭の時 代 背 景,
それ か ら現在
に 至 る2D
年
間の一
病気
,
障害
,
健康 」
をめぐる主 要 な 論 点 を 紹 介 する、
、
過 去20年 を 振 り返る と,
こ の 間の変 化は わ ずか であ り,
時 代の趨 勢は ゆっ く りと推 移 してい る こ とに気づ く。
現 代 医 療
の問 題
1983
年,
わ が 国 は世 界一
の長 寿 国であ り.
21世 紀に は超 高齢
社 会 を迎 える こと,
医療 費の膨 張 がクロー
ズ アップ されてい た。
問 題の根 底には,
病 気と障 害との混 同,
医 療を支え る 医学 が純 粋 な 自 然 科 学とな り,
人々 の受 診 行 動を支 配して いる病1:
illness
〕の通俗モデル (folk
modeD と医 師が対 象とする疾 病(
disease
)の 医 学モ デル (medical model,
疾病
モ デル ;dis
−
ease model 〕との乖 離 が あっ た
。
通 俗モ デルで は,
病は好 まし くない もの,
取 り除 き,
正 すべき ものとして治 療の対 象になる。 そ の よ う な価 値観 や信 念か ら,
人々は 行動 する。
医学モデルは 疾 病の科 学 的研 究を本 来の目的と す る。
治 療 技 術 も科学 的仮説 の検 証 を経て展 開する。
し か し,
人々 の抱い て いる価 値 観や社会文
化的背
景へ の配慮な し で は,
医 療は通 俗モデルへ の対 応が で き ない、
,
医 学 は,
病
に よっ て生じ る人々の困惑,
人 間 とし て 社 会 的に機 能することへ の制 約,
心身の苦痛とい う心 理的反 応 など,
自然 科学が対 象と して扱えない問題を残し た ま ま,
疾病
の 本 質,
普 遍 性 を 追 求して いる、
、
医 療へ の困 惑 を 除 くため に,
医療は 通俗モデルを 包 括 的に取 り込 むこと が必 要であろう2,。
患 者 と病 気
らの領 域 を通じて,
多種 多 様の集 団や制 度 が 構 造 的に関 連して い る。
そ こ で 人々が 相 互 に 行 為 す る と き,
何らかの立場や資 格 があ り,
それに対 応し た行 動 様 式が期 待さ れ てい る。
個 人の立 場や地 位に応 じた一
定のパ ター
ンとな り,
組 織 化 さ れている 行 動 様 式を役
割という
.
Parsons は病者 役割
〔sick rele〕 とい う 概 念を提 示して いる15 }。
患
者になり,
医療行 為
の枠
内に 人 ることで
,
人々は病 者 役 割に従っ て,
冂常の義 務 を免 除 され,
医師の指示 に従い
,
速や か に 回復 する ように努 力 する ことが求め ら れ る が,
そ の状 態に なっ たこと に対し て,
個 人の責
任はない、
、
一
方,
慢 性 疾 患に よっ て心身 機 能
が障害
さ れ てい る場
合,
Kutner
は 障害 者 役 割 (disabled
role)という概 念 を提 唱 した6)。こ こ で 障害と は
,
長期間 に わ た る身体 的 あるい は精 神 的 な 機 能 障 害のた め,
日常生活で役 割 行 動の遂行が 不 可 能 な 状 態 をい う。
障 害 者 役 割は,
自分の障 害に対して忍 耐 強 く打ち勝ち,
障 害に 適 応し,
機 能 障害 が ない 身 体 機 能によっ て機 能 的 制 限 を代 償し,
ある程 度ま で仕事
を行
い,
社会的
に は活動性
を 高め ることであ るc 臨 床 医 学は,
疾 病 を 医学モデルに従って説 明 する。 モ デ ルと は,
現実の見 方,
解 釈や 理解の仕 方 を含んだ統 合 的シ ステム で あ る、
、
医 学モデ,レは [病 囚一
病理一
発 測 の図 式 で 疾 病 概念を 表11e} 通 俗モ デル の論 点 は,
社 会 学 的ア プロー
チ、
とく に役 割 論の 導人 に よっ て 明 ら か に な る。
病人とは病 気 〔sickness :1を 患っ てい る 人 を意味 す る が.
こ こでい う病 気と は身体の具合が悪い とい うこと で あ り,
医 学モデルに従っ た意 味での疾 病で は ない。
人々 は 具 合 が 悪い とい う 感 じ で,
病 気 と 判 断 す る。
一
方,
患 者 と は受 診 してい る病 人であり,
医 師に よ る医療 行 為の枠 内にい る。
社 会には政 治 や 教 育 や 医 療 な どの機 能 的領 域 が あ り,
そ れ*
Sickness
.
Disabitity and Ilcalth*
*
東 北 文 化 学 園 大 学 大 学 院健 康社 会シス テム研 究 科 〔〒9818551 宮 城 県仙 台 市 青 葉 区 国 見 6451
.
:Ryuichi Nakamura
,
MD,
PhD:Tohoku Bunka・
Gakuen University,
Graduute Schoul
,
IleatLh und ET−,
iro”i[!e”t Scienuじキ
ー
ワー
ド :病 気、
障 害.
健 康 病 気と障害、
そ し て健 康 :新しい モデ Jレを求め て海哩島社二
,
1983
.
第1
章 現 代 医療の問 題 長寿 国日本一
医療 費 問題一
病 気と障 害一
科 学と し ての医 学 第2
章 患 者 と 病気 患 者と は一
疾 病 行 動一
病 者と障 害 者の役 割一
医 学か ら み た 病 気 第3
章 疾 病 観 の 歴史的変遷 病 気の原始 的モデルー
経 験か ら科 学へ一
存 在 論とバ ラン ス論
一
医学
的モ デルの誕生一
万能で ない 医学
的モデルー
精 神 科領 域 での混 乱 第4章 新しい モ デ ルを求めて 二つ の流れ 生物 心理社 会 的モ デ ルー
障 害というと ら え方 第5
章 慢 性 疾 患の諸 問 題 医 学 的モデル の限 界 慢 性 疾 患の自然 経 過一
予 防とい う考え
方
一
現 実 的な対
応の道一
健康
につ い ての考
え 方一
障 害 と 偏 見の問 題 第6章
人間 行 動の発 達 的 変 化 リハ ビリ テー
シ ョン で の試み 運 動 行 動の階 層 性一
運 動 行 動の発達一
人 間 活 動 と環 境一
生 活 時 間 とい う 見方 お わりに構 成してい る
、
,
多 くの急 性 疾 患は,
医 学モ デ ル に従っ て征 服さ れ,
境 代 医療に おける医 学モデル の信 頼 性は高い。
し か し.
慢 性 疾 患 が 生 み だ す 諸 問 題 の 解 決 に は.
本質的 に 異 な るモデルが 必要で あろう。 そ うであれ ば.
医 学 華 命な しでは.
現 代 医 療の 諸 問 題 は解 決 しない。
医 学モデルの確 ウ:が 臓 器 別の研 究 と診療科
の並蔵 細 分 化を 生 み だ し た。
そ れ につ れて,
臓器 別の分 業 化が医 療 内部に確立 し,
医 療の需 要と供 給シ ス テ ム,
さ らには 制 度の検 討が頻 繁に行われ る ようになっ て い る、
疾 病 観 の 歴 史 的 変 遷 歴史 的に み る と,
病 気とい う 爵葉が何を意 味す るの か,
どの よ うな 状 態 を指 すのか.
どのよ うなk
寸応 (治 療 :1 が 行 われるの か は,
い ろい ろ と 変 化 し てい る、
、
占代 人 や 原 始 人 に とっ て,
病 気は自 然や超 白然,
神や 悪魔に よっ て個人 に降り懸か る災難,
個 人 を 支配 して死 に至ら しめるもの である,
、
加 持 祈 祷や お守 り な ど,
魔術や宗
教 儀 式が治療の巾 心 的役 割 を担っ
てい る 〔原始 モ デ ル :primitive mode1 }。古 代ギ リ シャで は,
ア ス ク レベ イ オ ン神 殿 を中 心にして医 療が行わ れ た。 神は薬 草を与える聖職 者の手 を経て働 くとさ れ、
薬 を 指 示 する聖 職 音が 医師と して機 能し てい た.
、
次 第に,
医師は病気に伴 う形や色な どの類 似か ら,
病 気を 個 人別の 出 来事と し て で は な く,
そ こ に 現 れ た 普 遍 化L
た 特 徴 を と らえるよ うになる。
医 学の科 学へ の出 発 点である.
、
ロー
マ 時代の医 学は,
ガ レ ノスに よっ て大 成 された、
.
ガレ ノ ス は健康
を苦
痛が なく,
H
常
生活
H
の機
能が障害
さ れ てい ない状 態と考 えた。
心 身 機 能に障 害があれ ば,
病 気であるn
中世の西 洋 医 学 は,
科 学 として はあ ま り発 展し な かっ
た、
ルネッサ ン ス に 人 り,
ベサ リ ウス の解 剖 学,
ハ ア ベー
の血 液 循 環の発 見な ど によっ て,
ガ レ ノス の体 系が崩壊す るttl7 世 紀,
シ デ ナムは.
医学のH
的 は 病 気 を治 すだけで な く,
病 気につ いて の知 識 を 追求
する こと とし て,
病 気 を分 析し て説 明 する ことに努め,
植物 分 類 学の ように病 気を分 類し た。
こ こか ら,
病 気を 臨床的 に 個 別の実 体と して扱う 立場が 生 ま れ た、
、
これ は 現代へ 引き継が れ.
症 状 (symptom 〕 や徴 候 〔sign 〕 を 記 号として,
それ らの紐 み合わ せ か ら疾 病 を 診 断 する症 候 学となっ た。
18世 紀,
モ ル ガニ が 死後解 剖の肉眼所見 と 生前
の臨床 観察
と を 関係づ け,
病 理 学が始 まる. 症 候群 は病理所 見で説 明さ れ.
疾病
概 念が確
立 し た。
現代医学の誕生である。
191
.
U二紀には ヴ ィル ヒ ョ ウが病 理 所 見 を 臓 器レ ベ ルだ け で なく,
細 胞レ ベ ル に拡 大して.
臨床 所 見 と 対 比 し た、
疾 病 概 念 の 確 lli’
で 際L’
t
’
っ たこと は,
疾 病の原 因のい くつ か を見いだ し たこ と で あ る、
コ レラ や 結核
な どσ)絅 菌の発 見,
ホル モ ン異 常 や 栄 養 障 害.
遺 伝の影 響 など が明らか になっ た。
こ う して医 学モ デ ルが 完 成 した。 医 学は医 科 学とな :」,
明 ら か な病理 学 的所 見の存 在が疾 病の本 質 とみな さ れてい る。
し か し,
椿 神 科 領域 で は,
患 者の多 くは その訴 えや行動に み ら れ る 止常か らの逸 脱、
す な わ ち 症 状 や 徴 候 に よっ て 診 断 さ れ,
治 療が行わ れて い る.
精 神 障 害の多 くは,
病理学に 還 元 し て説 明 するこ とができてい ない、
新 しいモデ
ル を 求 め て 問 題 解 決へ 向けて の い くつ かの試み が あ る。
人 間 は 生 物 で あ :?,
各 人に心理的 自己が あ り,
社 会の一
員であ る、
.
医 学モ デ ル で は,
これ らすべての側 面 を覆うこと は で き ない,
.
牛 物 的・
心 理的・
社 会 的存 在と し ての 人 間 を 統 合 し て と ら え るモ デルが 求 め ら れ た。
Enget
が 提案し た 「生物・
心 理・
社 会モ デ ルー
L’
/お よ び世 界保 健 機 関が試 案として提 川 した 「国 際 障 害 分 類 」ZO,
す な わ ち 障害モ デル を検討
し よう,
、
Erlgclは1
助け を求めて い る人が病 気か健 康かを 判 断 して,
も し病 気 なら ば,
どの よう な病 気か を分 析し,
治療の合 理 的プ ロ グラムを決め,
健 康 を回復・
維 持さ せ るのが 歴 史1杓 に み た 医 師の機 能で あっ た」と し て,
生 物・
心 理・
社 会モ デル の 必 要 性 を説い てい る。
患 者の訴え が 生活 問 魂に起 困す るのなら,
それ を援 助す るのに適 切 な 制 度 や 機 関 を紹 介すべ きであ り.
医 師に 必 要 と さ れ る知 識や技 能には,
社 会学や心 理 学や牛物 学 が 含 ま れ る と 指 摘 し てい る。
国際 障 害 分類 は,
個人の心身 機 能や能 力 や社 会 的存 在に,
疾 病が及ぼす 影 響 を検 討 してい る.
医 学モ デ ルに続け て障 害モ デ ,レを用い れ ば,
患者
の 人 問 と し ての側 面 が 明ら か に な ると想定
し たの で あ る.
,
そ の ほ か に.
障 害との関 連で は社 会 学 領 域 や 障 害 者 団 体にお ける問 題 息 識がある。 1950年 代,
障 害 児 教 育や障 害 児 療 育の分野で は
,
impairment
:handi
〔ap あ るい はLmpairment
:disability
の対比 で,
機 能 障 害と 障 害 が 記 述 さ れ,
概 念 や 用 語 に 混 乱 が あ’
った、
.
現在の障 害 (disability
)概 念に至 る 三つ の 流 れの発生であ駄.
あ ま り紹 介 され てい ない障 害モデルに社 会 学 者Nugi
の モデルがある 17,ttt
⊥9.
・
60年 代にNagi
は,
ア メ リ カ の社 会 保障
・
障 害
保 険プロ グラ ム のた め,
L
活 動 的 病理機 能 障 害
一
機 能 的 制 限一
障 害 ]の概 念 枠 絹み を提 案 した。
機 能 障 書: qmpairme ロt) は解 剖 学 的・
生理 学11
(Jあ るい は知的・
情 緒FI
(Jな 異 常や欠損である、
.
機 能 的 制限Cfunctional
limL
[ation 〕 は個人レベ ル の パ フ
’
t一
マ ン ス の 制 限,
障 害 (disability
)は役 割 遂 行や社 会 文 化 的・
物 理 的 環 境にお けるパ フ ォー
マ ン ス の制 約で ある。
当時,
損 害 補僧の問 題や年 金用の障 害 判 定の基準
に,
多
くのプロ グラ ムは機 能 障 害を尺 度に して いた が.
種々 の問 題を 生 じて いた.
、
これ は社 会 問題の解 決とい う視 点で提 案さ れ た障 害モ デ ル である。
他 方.
イギリ ス の WODd は,
国 際 疾 病 分 類 を 拡 張 して.一
疾 病 /変 調 :機 能 障 害 能 力 低下 社 会 的不利1
の図式を,
1975
年
の 国際疾病 分類,
第9
回 改 正 に提 案し,
こ れ が 1980年
に世界 保 健機
関の国 際 障 害 分 類 〔試 案〕となる。 こ こ で は活 動 的 病 理 過 程は 医 学モ デ ル の 疾 病 変調 〔dis
−
ease
.
・
.
disorder
) に代わっ てい る、
.
機 能 障 害はNagi
モデルと 同 じ で あ り,
能力低 卜’
〔disabilily
} はiF
常 と み な さ れ る 仕 方 で 活 動 す る 能丿J
の 制 限 あ るい は 欠損と さ れ,
パ フ t一
マ ン ス で は な く,
能 力を取 り ヒげ てい る。 社 会 的 不 利Chandicap
)は Nagi モ デ ル の障 害に類 似 する。 Wα)dモ デ ルは医 学モ デ ル の 延長である.
、
二つ の障 害モデルは出 発 点の問 題意識 が相 違し て い る。
前 者は社 会 学か ら,
後 者は 医 学 か らの視 点で あ る、
t/
第3
の 概 念 枠 組 み は 障 害 者 団 体 に よ る もので,
イ ギ リス の差 別 に 反 対 す る身 体障害者 連h
川PIAS〕 や障 害 者イン ター
ナ ショナ ル [IDPP
の定義であ る、
、
表現 に 多 少の相 違 は あ るが,
今では 世 界に広 まってい る.
DPI
の定 義は.
機 能不全 1:impairment
; と障 害 〔disability
)を 分 けてい る。
機 能 不 全は 「身 体 的.
精 神 的 あ るい は 感覚r
白 機 能 障害に よ る 機能的 制 限 〔i’
unCLionallimitation
:1」,
障 害 は 「物理 的・
社会 的バ リア に よっ て他 者と同 じレ ベ ルでコ ミュ ニ テ ィ の
、
r
均 的 な生活に参 加 する機 会の喪 失 あ るい は制約1
である。
障 害 を個 人の状 態 濛と して では なく,
差 別 や 偏 見のよ う な社 会心 理 的 な態 度あ るい は構 成 主 義の立場 か ら社 会構 造の問 題とする,
い わ ゆ る 社会モデルである、
問 題 は,
正義 あるい は 公 正 とは何 かである、
、
機 能 障 害のある 人々に 対し て,
社 会は どのよ うにあるべ き かの問 題と もい える。 Wasserman は 機 能 障害に か か わ る 正 義 につ い て,
「有 力なア プ ロー
チは,
止義 を1直に分 配の 用 語で理解 する19)
。
社 会に お け る 個 人の資 産、
機 会や福 祉のパ ター
ン である。
こ の ア プロー
チ は,
機 能障 害を機 能 的 制限 と して 扱う傾向があ り.
そ れ が種々 の 分 配に対 する要 求を 生みだ し てい る,
,
第2
の ア プ ロー
チ は.
機 能 障 害 を抑 圧 され た 礼 会 集 団の印として扱い、
抑 圧 的で 差別 的 な態 度や実践の排 除 を機 能 障 害に対す る 正義と みなす一
と記 して いるc
慢 性 疾 患
の諸 問 題
・
1
曼性
疾患 と障 害 とは切 り離せない、
慢H.
と は.
状 態が良 くも 悪 くもな らす,
長 引 くことである,
現代の多 くの疾 病は慢 性で あ り,
急性 感 染 症のような意味での治癒は 望 めず,
人々は病 気 のま まで生 活 していか な けれ ばならない/
.
人々に とっ ての問題 は,
病貳だ けでな く,
そ れに伴 う変 化,
生 活の 質 (QOD
で ある。
慢性疾 患 と 呼 ば れ てい る もの の 多くは.
その原 因解 明に はい ろ い ろな困 難が あ り,
未解決 で あ る。
原 閃 論 で は.
多くの 要図の複 合 が 想 定 され、
その理解は統 計 的な解 釈であ る。
医学 研究では,
疫 学 的 手法 が 中心になる。
慢 性 疾 患に対して,
医学 は疾 病の白然経過 を観察
することか ら出 発しな けれ ばならない 状 況に あ る、
、
慢 性 疾 患に共通する自然経 過 を示 す。
〔D
感受 性 のあ る 段 階であ り,
まだ病 気で はない状 態,
病 気の発牛 し や す い 条 件,
危 険因 ∫.
〔riskfaCLur
:1 がある。 危 険 因 子の除 去が 人々 の健 康 維 持 に 急 務 と さ れ.
環 境 汚 染の問 題 解決,
生 活習慣 の変 化が求め ら れ る。
C2
} 自覚症 状 は な くて も,
身 体 に 病 理 学 的 変 化 が生じた段 階であ る。
臨 床 的に は異 常が な く て も,
病 理 解 剖で は 異常所
見が見い ださ れ る、
,
健 康 診 査に よ る 早期 発 見,
食
生活
の 指導
や 運動 療 法 を通 じて,
病 理 過 保の進 行 防IEに努め る.
〔3
〕 自覚症状や 臨床 徴 候が 現 れ,
臨床
的 に疾 病 と 診 断され.
臨 床 検 査の籵 果 からも,
医 学モデル0):
病 因一
病
理一
発 現]
の 関 係 が 確 、;くす る,
{4
)機 能 的 制限あるい は能 力低 下へ と展 開 す る。
疾病は 永 続 的 で 不 叮逆な病理 学 的 過程に よっ て生じたもの が慢 性疾 患の特徴 で あ る た め.
医 療 の 日 標 は 予 防 に な る。
予 防 と は疾 病の発症 以前に,
そ れ を抑制 してし ま うこ と で あ る、
、
慢 性 疾 患の自然 経 過につ い て理解が 進 む につ れ て、
全 経 過 あ るい は各
段 階におい て進 行 を 食い止 める,
進 行を遅 くす る努 力が予 防である。
健 康 (hcalrh〕の 出 来を 理解 する た め
,
ギ リ シャ神 話の 神々 を紹 介 する/
.
t
ア ス ク レピウ スはアポロ の烏,
∫・
.
ア スク レペ イ オ ン神 殿に劣、られ て い る神であり,
薬 草と癒し 〔IIledicille andhea
[ing
:〕 の医 神である。
ア ス ク レピウ ス の娘ヒュ ゲ でアは.
健 康 〔hca
[th )の 女神 とさ れ た。
占 代ロー
マ で は,
ヒュ ゲイア は サル ス と呼ば れ,
健康・
安 寧や繁 栄 (presperity冫の女 神に な る,
、
.
占 代ギ リ シャ,
ロー
マ に おい て は、
病 気 を 治 す・
癒 す 神 と健 康・
繁 栄の女 神と は別 個 あった。 現 在,
世界で多
くの 人々 が 認 めてい る 健 康の 定 義 は 世 界保 健 機開の憲 章 前 文にあり,
一
健 康と は,
完 全 な 肉 体 的,
精 神 的 及 び祉 会的福 祉の状 態であ り,
単に疾 病又 は病 弱の存 在し ない こと で は ない1
である。
こ の文 章の 前 半は肯 定 的・
積 極 的・
直接 的 な 定 義,
後 半 は 否定 的・
消 極的・
間接 的な定 義であ り,.
二元 論になっ てい る。 病 気 と健 康につ いて は,
こ れ らを・
元論で捉 える覧Z
場 と一
:元 論で提 える立 場がある,
,
前 者は健 康を病 気と 反対
の状 態 と考
え,
さ ら に 健康は 人 生 で 巧 み に適 応し てい る状 態 ある いは能 力を.
卜分に 発揮し ている 状 態 と す る。
病 気 と 健康と は二つ の質 的に異 なっ たもの である とい う考え ノ∫も あ る。
個 人 に は種々の程 度の病 的 要 素と健 康 的 要 素と があり,
全体と し て 個 人の健 康 状 態 は こ れ ら諸 要素
間の差引計 算で得ら れると仮 定 する。
病 気か ら健 康へ 目 を移 すと,
人間活動
を通 じて心 身機 能の向 ヒを 図るというテー
マ が主流にな7” ,,
健 康と は,
常に相対rl
勺で,
変 化しつ つ ある 状 態であ り、
その理 想 像 ある い は囗標と してLU
’
界保健機
関 に よ る 健 康 の定 義が 必 要 と な る、
社会文化的 な 意 味 を もつ 人 間の 行動は
、
個 人の心 身 機 能,
個 人 を取り囲む物理 的 環 境,
対 人 関 係 な ど と の 関 連 に よっ て定 ま る、
.
機 能 障 害や機 能 的 制 限の意 味は,
物理 的環境 や 対 人 関係に よっ て変化 する。
近 年,
社 会環 境 と対 人 関 係 が 問 題となっ てい る。 杜 会 環 境か ら の 圧力
でk
きい のは偏 見である,
,
偏 見 と は実 際の経 験よ1・
〕前に十 簿 な客 観 的 根 拠 もな し に,
個 人や集 団ある い は事 物な どの特 殊な対 象に対 して抱 かれる歪んだ観 念と.
そ れ に 基づ く好き・
嫌い の 感情で,
障 害 者に対.
して一
般に問題と な るのは 非 好 意 的 感 情 で あ る。
杜 会 が 示 す 偏見は,
障 害 者の社 会 的 行 為にい ろ い ろな 形で圧 力 と なっ て 加 わっ て くる。
障害 者 が社 会の期 待や要 求だ けに従っ て行 動し な け れ ば な ら ない とす れ ば,
障害者
が人生の 凵標 を 追 求 する行 動 とは矛 盾する だ ろう。 障 害 者に役
割葛藤
の状態
を 作 りだし てい る の は杜 会である。・
.
一
方,
慢 性 疾 患 患 者の生活 行 動は,
ときに長 期の入 院 牛活
に よっ て幼 児 化し たパ ター
ンへ と退 行 する。
患 者は病 者 役 割に従っ て 行 動 し.
凵 常 生 活 ヒの 必 要 な 活動 も他人 に依 存して,
自 分の疾 病 治 療に専念して いるtt これ が 生活 行動 に 退行、
幼 児 化 を もた ら す要 因であ る,
,
こう して 二次 的 障 害 が 生 じ る。
障 害 の 発 生 や 進 行が予 想 される慢 性 疾 患 患 者には,
障 害 予防のた め に.
新 た に障 害 者 役 割 を獲 得 し,
社 会 復 帰 する過 程 が 必 要 とさ れ る か も し れない。 人間 行 動
の発 達 的変 化
人 間を客 観 的にとらえるのに,
医 学モ デ ル に従 う還 元主義の 立 場 で は な く.一
般 システム理論と 発達理論の応 用がで きる の で は な か ろ うか、
、
諸科学の 統一
.
一
的 理解の基 礎は,
あら ゆる科 学 を物 理 学へ 還 元 する こ と,
あら ゆ る現 象を物理学 的な ものに最 終 的に分 解 すること とされてい る が,
牛物や社 会の レベ ル を最 卜.
位レベ ルである物 理 学の構 成 要 素 と法 則に還 元 しても,
満 足 な 理解
は得ら れ ない、
、
入間の運動 行動 は 運 動,
動 作.
行 為 に 分 け ら れ る。
障 害モデ ル の.
機 能 障 害能 力 低 卜
’
一
社 会 的 不 利 ]に対応 し て,
[連 動一
動 作一
行為 ] が 配 置 されるt.
それ は :物理 シス テ ムー
生物シ ステムー
社 会シ ステム] という人 間の階層 的秩 序と して の概 念構
成に おい て,
「
力学 的原理成 長
・
進 化一
政 策・
日的・
価 値 ]表
2
生 活 時 間調 養に用い た行 為 分 類一 一 一
一
誠
商
a 睡 眠 1 基 本 的 坐i
舌b
食 事 c 身 辺 処理・
他 寝て いる,
睡 眠 中,
起 床 食 事 をと る,
お やつ,
お茶 洗 面・
歯みが き,
排 泄a
余
暇 2 杜 会 的生活b
労
働・
学 業
3 移 動4
医 療 5 ぼ ん やり・
その他 テ レ ビをみ る,
会話,
盆 栽の手 人 れ 炊事
.
洗濯,
帳簿
つ け 電 車に乗る,
タ ク シー
を待つ,
歩い てい る 薬 を飲 む,
診 察
,
腰の運 動 休 息,
ぼ んや り してい る,
横に な る24
時
間の問に行
わ れ る行 為
を観察
法 〔ID分ご と に対 象 者の行 為 を直 接 観 察に よ り記 録 する },
あ るい は自己中告 法 [’
15分ご とに行っ て いた行 為 を本 人に記 載さ せ.
連 続3凵問 行 う) により記 録し,
こ の表に基づ い て8項 目に分 類し,
その発 生 頻 度 を百 分 率で示 した ものを生 活 時 間 とする.
の法 則にそれぞれ支 配 されて い る。 こ の階 層 的秩 序の な かで,
下位シ ステム の法則は次の上位レベ ル の前 提に な る。
こ の よ う な階 層 構 造 を仮 定すれ ば,
人 間の 社 会的活動 は 人 間のJJ
学的・
生 物 学 的特性 を 下 位構造 と し て 内在さ せて いること に な る.
、
そ のた め,
下 位 構 造が 十 分に機 能 し な ければ.
止 常 な上位 構 造の 働 き,
社 会 的 活 動は歪 む。
下位 構 造は上 位 構 造が もつH
的のた め の手段
に な る。
人間の 運動 行
動に おい て,
単 純な反射
運動か ら目的や意 図のある複 雑 な 随 意 運 動へ の発 達 的変 化は,
こ の よ う な階 層構 造の下でな され る と仮 定 するのであ る。
人 間の発 達は,
遺 伝 的 要 因と環 境 要 因 との相互作 用に よっ て 起こ る方 向性 の あ る 心身の構造 お よ び 機 能 の 分 化・
複 雑 化・
多 様 化の過 程であ る。
背臥位か ら 疏位に な る動 作で観 察さ れ る動 作の組み合わ せ と運 動パ ター
ンは,
幼 児か ら6歳 児 まで順 次 変化
するn
幼 児は1
歳 を 過 ぎて立 ち上 が れ る よう
に な ると,
背
臥位
か ら寝
返 りをし て腹
臥位
に な り,
四つ ばい位
,
高
ばい位
を経 て立 位 に なる。3
歳 児は,
背 臥 位から体 幹 を 半 身 に して起 き上 がり,
片 肘 立 ち位か ら膝 立 ち位,
さ ら に片 膝 立 ち位とな り,
立 位に 至 る。
6
歳以 降 に な ると,
背臥位か ら一
気に起き 上 が り.
しゃが ん だ姿 勢か ら立 て る ように な る、
、
これ らの発達的変化 は.
力 学的 に は静的バ ラ ン ス の安 定し た姿 勢か ら不 安 定の姿 勢へ の 変 化であ り,
動 作の速 さでは緩 慢 な 運 動 から迅 速 な運 動へ の変 化である、
ひ とつ の動 作に利 用さ れる運 動パ ター
ン の多 様性は静
的・
動
的バランス の安
定性向
上,
運動の速さ の変化
,
新
た な 運動パター
ン の獲得
に よっ て 可能に な る。
その結果,
人間の適 応 能 力は増 大 する。 し か し,
成人で も中 枢 神 経 疾 患に冒 される と,
発 達 的に み て レベ ル の低い運 動パ ター
ンとなる。
それ は適 応 能 力の低下 であ り,
発 達 とは逆の退 行現象である、
・
人 間 は生 涯 を通 じて種々の活 動 を行っ てい る、
、
その 目 的 は自 己 維 持 と 労 働 と 余 暇 に 分 け られ る。
現 代 社 会 で は,
ラ イフ ステー
ジ と役割・
活 動の関係が定まっ てい るIS:
。
種々 の活 動の 出 現 や その頻 度 に は,
個 人の欲 求 と能 力 や技 能,
社 会 文 化 的状 況 が関 係 する、
、
それぞれの活 動の量 的 分 布にも,
ライフ・
サイク ルに従っ た 変 化がある。
活 動の質 的 変化で は,
乳 幼 児 期に は自 己維持
に 必要な技
能が習得
さ れ,
年齢
増 加につ れて次第
に社 会 文 化 的規範に沿っ た活 動に 必要な技能 が習 得さ れ る、
.
乳児 期の 活 動は 「食べ る・
眠る・
動 く!など,
大 部 分は自己 維 持の活 動 4 T.
S 53歳 1−
a 5 1−
b % m30 350工 2
−
a 型 : 10m歩行 速度: ADL : (tetal lOO): 2−
b 11秒 75.
0M
,
T 54歳 秒 234 ユ 7 図1パ
ー
キン ソ ン病2例の生活 時 間プロ フ ィー
ル で あ る。 幼 児 期や学 齢 前 期になる と,
「移 動・
身 辺 処 理 がで き る よ う に な る。
学 齢 期には,
将 来の牛 産 活 動に参 加 するため の準 備 とし て 「勉学」に励む よう
に な る。
成 人期に は,
あら ゆ る活動 が あ り,
高 齢 に な る につ れ て,
生 産活 動を離れ,
余 暇 活 動 が 中 心 に な るm こ の ような変 化を臨 床 的に検 討 する于法に,
生活 時 間調査 がある。
生活 時 間と は,
個 人が1日 に行 うい ろい ろな 生 活 活 動 (行為
)を時
間分布
量で表
し たもの である (表2
)。 生 活 活 動 を5
項目 に分け,
その 発 生頻 度を %表 示して,
各
活 動 項日 の時 間量 と す る,
) 図1はパー
キン ソ ン病で退 職 した50
歳 代の男 性2
名
の生活 時 問プロ フィー
ル である。 いず れの患 者 も 機 能 的 制 限は同 程 度で ある、
、
T
、
S
:S3
歳,
家 族は勤務 し てい る妻と息 子。
1日の生 活は起 床 後,
朝 食の 支 度に 始 ま り,
昼 間 は掃除,
ス トー
ブの給 油,
買 物 な ど.
1
日の24
% を 家事 労働 に費や し,
テ レビ,
新 聞,
雑 談に20%.
休 息に 4%弱,
睡 眠 や 食 事,
身辺 処 理の基 本 的 生活に54% を費や し,
60歳 代の健 常 者の平 均と同じ生活を行っ て い る/
.
t
老 化の傾 向はある が,
妻 と役 割 を 交代 して,
日常 生 活に巧み に適 応し てい る。
M
.
T
:54
歳,
家 族は妻,
勤め てい る娘と 大学生の息
子.
1目の58% が基 本 的 生 活に,
40% がテレ ビ や新
聞,
散
歩に費
や さ れて い る。
昼間もベ ッ ドで横にな り,
70歳 代 以上の老 人 ある い は幼 児 に 似 た 生活を送って い る。
どちらの健 康 状 態 が 良 好かは明 ら かであろう、
、
T.
S
は家 庭 内で健 常 者 と同 じ ように活動 的 な役割を 果 た して い るが
.
M.
T は病者役 割
に陥っ た ま まである。
バー
キン ソ ン病に よ る機 能 的 制限 より も,
二人のお か れ た家 庭 環 境が 生活 時 問に 相 違 を 生 み だ し てい る。
慢 性 疾 患に罹 患 して も,
限ら れ た能 力 範囲 内 で 活 動 的 で,
普 通 に 近い 生 活 を送ること は 可能であろう。
それには家 族や周囲の人々の協
力,
社 会 的支 援 が 必要である。
小 冊 了
・
[お わ りに」
は,
「慢 性 疾 患は治 癒 し ない。
また 患 者 には 何 らかの機 能 障害
,
能
丿丿低
下を もた らす。
ガン,
高 血圧,
心 疾患のい ずれをみ て も,
現 在の医療が行ってい るのは病 気の 制 御,
管
理 であ り,
病 気の治癒ではない。・…
人凵 の
高齢
化に 伴 う 慢性 疾 患 の 増 加 は.
そ う 簡 単 に退 治さ れ な い.・・…
「曼性 疾思の患 者 に は
,
障害に 対するア プロー
チ が 急 務である。
その原 点と して疾病 観.
健 康の価 値 観 の 変 化 が 求 め ら れ る。病 気
をもっ ていても積 極 的, 活 動 的 な生活はロ∫能で あ るとい う 決 意で あ る、
,・…
健 康
とは機 能 的状 態 像であ り,
法 則 性 を もっ た,
変 化 を続 ける過 程である。社会
的動物
と し て の人 間の特 性 を十 分に生 か し,
積 極 的に社 会へ 参 加し てい く過 程 で あ る。・…
医 学モデル.
障 害モデル,
そして発 達 的 視 点 を統 合 するこ とで,
慢性 疾患が も た らす 困難 を 征 服 する道 が 開 ける。
病 気の 予防,
治 療と 管 理,
リハ ビ リ テー
ショ ンを 中 心 に し た医療サー
ビス と,
健 康の保 持と増進 を 意図し た 保 健 サー
ビス と が,
これ らの モ デル.
概 念に従 うことにより,
新しい保 健 医療 サー
ビスが 叮能に な る だ ろう一
と記
し ている。
こ こ には一
病 気一
障 害健 康 」
,
「医 療サー
ビスと保 健サー
ビ ス」
とい う キー
ワー
ド区 分 が 掲 げ ら れてい るn 前 者 は 学 問 的 な概 念,
後者 は行 政や制度
を意
識 し た用語である。
手 段の選 択 で取 り上げら れ,
ミ クロ な個
人レベ ル の価 値 観を反 映し たものに拡 大 した。
障 害 者 リハ ビ リテー
ショ ン に おける帰 結の判 定で も 重 視 さ れ る。QOL
は,
身体 的・
心 理 社 会 的に満 足して い る状 態 (wetl−
being
) に 対応 する。
その構 成 要 素は社 会 的 役 割の遂 行.
身 体 的状態、
精 神的 状 態,
人 間 関係,
経 済 状 態,
宅観的健 康 状 態 などで ある。
指 標には,
生活水
準,
経済 状 況,
生活
満足度
,
住
宅や居 住 地 区の質,
自尊 心,
職務 満足 度 な どが 含 ま れる。QOL
は [大 規模
人 「1
のQOL −,
「健 康に関 するQOL
」,
「個 人の生活 改 善に 関 するQOL
」
の3
種 類に分 けら れ る。
一
健 康に関 するQOL
」 につ い て,
Patrick
ら161,
は健康
を一
元 的に表 示して,
死 か ら否 定 的・
消 極 的 健 康 状 態,
そ して最 高 の安 寧へ 至 る一
元的尺 度 を 提 案 し てい る (表3
)。
任 意の重み づ けを行っ てスコアを把 握 し,
時 間経 過で生 じ るス コアの変 化 に よっ て,
介人手 段の適 否 を 評 価 する(図2)
tt一
般用語と し て.
質 (quality) は 良 好Cg
odness )の程 度 を 意 味 する。
そ うであ れ ば,
健 康 状 態 〔health condition ) を,
表
4
のように ウ 自的に示 すこと もでき るc し か し,
QOL
は多 元 的で あ り,
それ ぞ れ に対 する 人々 の重み づけ は 相 違 す る。 Pail1ら 14) が行 っ た患 者や家
族を対象
とし た 調査で は,
QOL
には18
の次 元 が あ り,
それらが 7つ の ク ラ ス ター
に分か れ てい る。
表4
に掲 げ ら れ た7
種 類の疾 病,
身体 障 害 あるいは精 神 障害 に 共 通 す る の は 「生 活 を 享受・
意 味あ る活 動1 の次 元だ けである、現 状で は,
QQL
に よ る健 康状態の判断 は,
疾 病や障 害ご とに個 別の尺 度 を 必 要として い る。
QOL
の定 義は 測 定 法 と 解 き が た く 結 びつ いている。
健康
の 理想 状 態 を 求 めて,
研 究 者は肯 定 的・
積 極 的 定義
に沿っ た作業仮説
,
操 作 的 定 義 を求 めて多 くの努 力 を続 け てい る。
老 人 保 健 法 と健 康 増 進
1983
年,
わ が国では老 人 保 健 法が施行さ れ た。
この法律 で 「機 能 訓 練 」 は,
健康 診 査や 医療 と併 記 され,
制 度で は医 療 (疾 病の治 療 )で はない 。 当 時の厚
生省 告示
は 「機 能 訓 練は,
40
歳 以 ヒの者であっ て,
疾 病,
負 傷 等 により心 身の機 能が低 下してい るもの のうち,
医療 終 ∫後 も継 続 して心 身の機 能 を維 持 回復
す る た めの訓練 を行 う 必 要のある者 等 を 対 象 と して行 う」と記 して い る。
心 身 機 能の維持
回復
は 医療
とは,
制 度 面で は 別 になる。
心 身 機 能の維 持 回 復は健 康 増進 を 目 的 と し て 実 施 さ れ る の で あ り,
医 学モデル (疾 病モ デ /の に従 う もの で は な い。
Nagi
モデルに従 え ば,
[機 能 障 害一
機 能 的 制 限 ]の過 程に 介入す る手 段で あ る。
そ こ に 注 日 す れ ば,
理 学療 法は障 害モ デ ルに立 脚 し,
障 害 予 防と健 康 増 進に貢 献し てい ること が 明 らか になる。
健 康 と 生 活の質 (
QOL
)
19
.
80年 代
か ら現 在 まで に展 開され た 健 康と障 害の話 題 を 検 討し よう、
,
健 康の肯 定 的・
積 極 的 な 概 念 につ い て は 人々 の合 意 がな く,
そ れ を 測 定 するのは困 難で あ る,
代わ る もの と し て,
生 活の質
Cqun
]i1.
y of ltfe:QOL
〕 が話題 に なっ た。
し か し,
QOL
の概念 をどの ように定 義し,
どの ように測 定 するの か に つ い て は結 論が得
ら れてい ない eQ 〔〕Lは1950年 代 後 半か ら,
ヨー
ロ ッパで経 済 発展に伴
う生活
条件
の悪 化などに対 する マ ク ロ な 社 会 指 標と し て導
入 さ れ た、
,
その後,
安 楽死 や疾 病の治 療障
害の概 念
を めぐ
っ て世界 保 健機 関で は
,
1993
年か ら国 際 障 害 分 類 〔試 案)の改 訂 作 業が行わ れ,
2001年,
世界保 健 機 関 の 第54
回 総会で新た に「
国際
生活 機
能 分 類 (ICF).
が承 認 され た。
この分類 は生 物・
心 理・
社 会
的 ア プロー
チ に依 拠 してい る。
[心 身 機 能・
身 体 構 造一
活 動一
.
.
参 加 ]の図 式で肯定
的 側面の生 活 機 能 を 表 し,
その否 定 的側 面 を [機 能 障 害r活
動 制限一
参
加制 約 ] と して障 害 を 表 す 〔図3
)。
ICF
はすべ て の 人につ い て の分 類であ り,
対象 範囲 は普遍 的 と さ れ る。
しか し,
健 康 閲 連状 況に問題 な し とす る だ け で は,
健 康 の 否定的・
消極 的・
間接 的 定 義であ り,
障 害 を 健 康の否 定 的・
消 極 的側 面 で取り 上 げ てい ることにな るcアメリカで は
、
1990
年 代にNagi モ デ ル に複 数の危 険 因 子 を 概念 的に加 え,
それ らが病 理か ら障 害に至 る,
そ れ ぞ れの過 程 に関5一
する と仮 定
し た 医学
研 究 所 (institute
of medicine :10M
)の10M
モ デ ル が提
出さ れ た (図・
P
。
そこ には 危 険 因 子 を除 去 する ことで,
障 害に至 る過 程を 遅 延 さ せ るとい う予防 医 学 的 発 想が読み取 れる。 他方,
196
年代 後 半か らの障 害 者 運 動,
1990年 代の障 害 学 の展 開に よって、
ア メリカ,
カナ ダ,
イギリス,
オー
ス トラリ ア,
ニ ュー
ジー
ラン ドで は,
障害は社 会的 に櫞 成さ れ た とする 考え方が広まっ た。
イ ギ リス のBarnes
ら Ll は障 害につ い ての 2つ の モ デ ルを対比 して い る 〔表5}。
個 人モデル 〔医 学モデル)表
3
安寧
::良 好 )の連続線
上 に位 嵩づ け た健 康にかかわる生活の顕の概 念附 概 念 定 義指
標
一
安寧
(1
、
e
)一
● 満足度 ● 全 般 的健康感
● 社 会 的安 寧 社 会 的統 合 社 会 的接 触親 交
機 会 ● 心 理 的良 好 感 情 的良 好 認知的良好 ●身
体 的 良 好と役 割 制 約 活 動 制 限 通常の社 会的役割 の 制 約 フ ィッ ト ネス ● 疾 病 主観 的 訴え 徴 候 白己申告に よ る疾病
生 理 学 的 測定組
織変
化 診 断 不 利益 死 身 体 的,
心 理的,
社 会的 及び精 神 的 な安 寧 健 康の 自己 評 定,
健 康の知 覚,
または健 康に 関 す る 悩 み 地域 社 会に お け る 参 加家
族や友
人 との 相il’
.
行 為 親 密 支援 健 康による機 会 均 等 1 }・ll:
痛
,
全般的安
寧.
十}福 など を含め た心 理 的態 度 と行 動 機 敏,
見 当 識 及び推 論に問 題 身 体 活 動.
移 動,
身辺処理 の急性
あ るい は慢
性の制 限 社 会 的 役 割,
学 校,
仕事,
家事.
余 暇の急 性 あるいは慢 性の制 約 あま り疲 労せ ず,
激しい身 体 活 動 を遂 行 身 体 的 及び心 理 的 症 状.
感覚,
疼 痛,
健康問 題,
直接 観察でき ない感じなどの報 告 理 学 的 検 査.
欠 損 や 異 常の観 察 で き る 証 拠 医 学 的状 況と機
能 障 害につ い ての患 者に よ る・
覧 表 記 録と 臨床 的 解 釈 病 理 学 的 証 拠 すべ て の証 拠に基づ く臨 床 的 判 断 健 康 問 題 に よ る 機 会の不 平 等 死 亡 ;生存一
死 (0
,
ω一
安 寧
任 意の 重み づけ 死 機 能 的 状 態1
.
0
0
.
8
0
.
6
0
.
4
0
.
2
0
.
O to 時 間一 図2
健 康.
安寧
の レベ ル と 予後
lfi.
)
t1 は個人 に生じ た問題 とい う見 方,
社会
モ デルは社 会構 造が鋼人 にもた ら す問 題とい う見 方であ り,
機 能 障 害のある人々に対 す る社 会 的抑 圧,
差 別 が 障 害であ る と主 張 されてい る、
,
ア メリカ 国 立 障 害・
リハ ビ リ テー
シ ョ ン研 究 所の 「研 究 助 成 長 期 計 画1999
−
2004
年一
では,
これ をパラ ダイム・
シフ トと して新 旧パ ラ ダ イムで表現 し てい る。
1
「1
パ ラ ダ イムは個人 (医 学:1 モ デ ル,
新パ ラダ イ ム は 祉会モデル に対応 し、
「障 害の定 義 」一
障 審に対 応 する戦 略 」「
障 害に対 応 する方 法 」 「介 人 するもの 「資 格1
「障 害 者の役 割1
’
障 害の 領 域 」が 両パ ラ ダ イム では 全く異 なっ てい る。
新パ ラ ダ イムに記さ れて いる 建物のバ リア フ リー,
就労
に お け る ジョブコー
チ,
ピア・
カ ウ ン セ リング,
ア クセ スな ど,
障 害が社 会 的 問 題と し て扱わ れ てい るこ と が 理 解 で き る。
実 際に,
物理 的・
杜 会 的 環 境の改 善 に よって,
これ まで の障 害 問 題もか な り改 善 さ れ,
杜 会 的 安 寧が図られて い る.
,
し か し,
私 た ち は.
Nagi
モ デ ルや10M モ デ ルが強 調 して い る [機 能 障 害一
機 能 的 制 限 ]の障 害 過 程に江目すべ きで あ ろう
。
最 近
,
社 会システム理 論に基づ いて,
障害
研究 に新た な提 言 が さ れ てい る。
Mlchailakis
〔2003) は,
障 害 研 究にお ける概 念化
を,
個人の身
体 的・
精 神 的・
知 的 欠損に焦 点 を 合わ せ た 「医 学モ デ ル.
,
個 人の前 提 条件 〔諸 欠 損 な ど ) を 相 対 的 に 扱っ た 「個 人一
社 会モ デ ル」,
個人の前提条件の 相 違 を 無 視 し た 「社 会モデル」の3
種に 分 け てい る。
そ れ ぞ れ が 観察すべ き対 象および その解 決 方 法は 異 なっ てい る。
現 在の障 害を めぐる視 点の 混 乱 を 解 決 す る た め、
Luhman7
.
H/ が提11昌 した社 会シ ス テ ム理 論 も 利 用 さ れてい る。
社 会シ ス テ ム理 論は,
観 察 者が自己 の観 察 するものに 対 す る展 望 を選 択 するこ とを 明ら か に し よう と試みる。
障 害の問 題は,
複 数の領 域 (表
61 か らアプロー
チ が な さ れるべ きであ り.
そのすべ てを 医学シス テ ム に還 元 して 解 決 することは で き ない。
私
たち
の役 害
II 私たちは機 能 障害のある人々 の障 害予防や健 康増 進 を 展 望 に 人れてい る専門職で あ る。
Lol
]ar 〔200
]1
, は 公 衆 衛 生の視 点 か表4
QC
)Lの次元 (疾 病障
害
別σ)患昔
・
家 族に よっ て検 討さ れた 次 元 ).
一
ク ラ ス ダー
次 元 神 経 疾 患 患.
者 神経 疾 患…
家 族 ! 心疾 患 筋骨 格 系 小 児 言語・
行動 小 児 肢 体 不 自 由 小 児 精 神一
感 情面の健 康 希 望 ○ ○Q
○一
o
○ 自尊 心 ○ ○Q
○ ○OI
○ 心 配 不安の処理 ○ ○Q
一
OI
○ 心のLド安
旨3 ○ ○
o
一
1
:⊂)一
.
一
1 自制の感じ一
一
○ ○ ○一
○一
一
一
人間 関 係 家 族の 人 問 関係一
○ ○一
⊂) !、
∩’
家 族の宰 福 (一
) ○一
○一
一
他 骨との関係 ○ …○ Io …
つ
一
○ ○ 帰 属 支 援 ○o
Q
Q
…(:) ○ ○ 認知 ○ ○ ○ ○ ○
.
c
)一
家 族 介 護 者 問 題 家 族 介護 音OI
○ ○一
一
○ ○ 幸 福 了一
育 て 問 題一
皿
一
一
○ ○ Io 潜 在 能 力の発 揮 機 能 を最 大 限に ⊂)O
Io ○
Q
○
c
: エ ネルギー
一
.
.
.
一
9
一
一
○一
楽しい 生活を.
「
冫:受 ○ : r−
、丶
ノ
o
○ ○Q
○ 意味あ る生 活 意 味 ある活動 ○ ○ (二) (:) 1こ: 〔⊃o
.
コ ミ.
1 ニ ティ問 題 ⊂)一
一
c
:一
基 本 的 概 念一
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