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京都府におけるトゲシャコの出現と漁獲について

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C A NC ER 14 (2005), p.13-16

京 都 府 にお け る ト ゲ シ ャ コ の 出 現 と 漁獲 について

本 尾

は じ め に 全国的に沿岸漁業資源の減少傾向が言われて久 しい中 ,京都府では近年トゲシャコの漁獲数が増 える傾向にある. 従来, トゲシャコは京都府はも とより,後述のように日本海においてもその分布 が知られていなかった大型種である 京都府内では一昔前まではシャコ類はさほど重 要な漁業資源とは見なされてはいなかった . それ がここ10年程前から“シャコ" を刺し網や篭網で 漁獲 ・混獲するようになってきている . それは大 阪などの大都市でシャコが重宝されており,その 味の良さが地方都市の宮津市や舞鶴市などにも伝 えられ, シャコの食材としての重要性が改めて知 れ

E

ってきたことが大きな要因のようである (栗 田 明,私信 ). ちなみに, 三宅 (1982) によれ ば水深93m までの砂泥・泥底に生息するトゲシャ コHarpiωquilla haゆax (基産地は日本 ) は相模 湾以南に分布する . 日 本 海 に 分 布 す る シ ャ コ 類 (Stomatopoda) については,大内 (1960),伊藤( 1970),本間 (1968 ), H o n m a (1968), H o n m a and

Ki

tami (1978), 鈴木 (1979),鳥浮ら (1998) のシャコの他に, H o n m a and

Kitami

(1978) のフトユピシャコ, 鈴木(1969)の トゲオフトユピシャコ,鈴木(1969) のハサ ミオフトユビシャコ,ヒメトラフシャコ ヨットゲシャコとセスジシャコなどの報告がある が (和名はすべて原著どおり ), トゲシャコにつ いては知られていない. なお,浜野 (2005) の漁 業混獲物としての トゲシャコの記載 (p68) は本 材料に基づいている. ここでは,日本海に多数が生息していないと思 Hiroshi M O T OH: O n the occurren ce and fisheries of a robber squillid mantis shrimp, H aゆiosquilla harpax

われていたトゲシャコが若狭湾の湾奥部に位置す る京都府で漁業対象とな っていることか ら,その 実態の一端を紹介する.

材料と方法

種査定 : 浜野 (2005) によれば, 日本ではトゲ ビシトゲシャコH . m elanouraとサガ ミ トゲシャ コH. annadaleiの

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種がいることにな っている. ここでは浜野 (2005) の記載に従い,尾肢外肢 赫出しないことから今回の 材 料はH aゆiosquilla 属 の ト ゲ シ ャ コ で あ る と 判 定した. なお, Oratosquilla属のシャコ

O.

oratoriaとトゲシャコ の識別は捕脚指節内縁に6鋭糠を有し尾節に1 対 の暗褐色斑紋が無いものをシャコ,

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鋭練を有し 尾節に1 対の明瞭な同斑紋があるものをトゲシャ コとした. 性については第3歩脚の基部に生殖脚 のあるものを雄,欠くものを雌とした. シャコ類の視察 ・聞き取り調査は, 主に京都府 漁業協同組合連合会( 以下,府漁連) の市場で、行 っ た. 波IJ定 ・観察にはすべて生鮮材料を用いた. 頭 甲胸長は額板を除く頭胸甲前縁から後端までの正 中線長 (浜野, 2005 の図 1 - 2 ) を,全頭胸甲長 は額板先端から頭胸甲最後端までの長 さを正中線 と平行して,そして全長は額板先端か ら尾節の亜 中央線先端までの長さ (浜野, 2005の図 1 - 2 ) を正中線と平行して 1!1 0 m m まで読み取れるノ ギスを用いて示 した. 結果と考察 漁獲状況 一市場視察および漁業者からの聞き取り ①宮津市漁業協同組合栗田 明氏 (2 0 03年 7 月2 3 日,2 0 04年 7月

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日.8月2 0日) ・京都府では“シャコ" は主に宮津湾,栗田湾

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14 京都府におけるトゲシャコの出現と漁獲について や舞鶴湾とその近くで獲られているようである (図 1). ・自分は“シャ コ" を 宮津湾 口部の 水 深23 m までの泥底域で,アナゴやタ コ用の篭縄で、獲って いる (図2 ). 船着き場の生け費に 20数匹が活か してあり ,引 き上げて見せてもらって筆者が確認 したところ,すべてがトゲシャコであった (7月 23日)• ・(栗 田氏は ) 退職後の今から

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年ほど前に漁 業を始めたが,その当時から トゲシャコは僅かな がらいた. しかし近年はその数が増えてきている . トゲシャコはシャコに比べて白っぽくて細長いの で「ローソク (蝋燭 )

J

と呼んでいる . ・(栗田氏の操業している) トゲシャコの主な 漁場は宮津湾お よびその近傍の水深14- 2 3 m の 泥底地であ る. 桁網に よるトリガイ曳き漁 (“シャ コ" は獲らない) があると漁獲数が減る( 巣穴が 壊されるからか? ). 一般的に , トゲシャ コは深 めの外洋に,シャコは内 湾の浅場にいる傾向があ る - 篭網で漁獲しており,餌にはコノシロが一番 良い. その際,コノシロの眼を 刺 さない方がシャ コの漁獲数が多い. ・篭縄は通称 “もんどり" と言い,サ イズの違 いにより大小2型がある (図2 ). 共に網色は赤 褐色で長楕 円形( 競走路型) をしており ,大型

丹後半島 京都府 図 1 シャコ類の棲息する内湾地域 ① 宮津湾, ② 栗田湾, ③ 舞鶴湾 の長径 は71c m (小型66 c m),短径57 c m (小型 48 c m),展開した使用時の高さが大型で2 9 c m (小 型18 c m),そし て拡げると長方形の網目の対角 線長が大型で16 m m (小型13 m m) である( 測定 値は著者の 実測値 ). 大小で、の漁獲量 ・率に はあ ま り差はない. ・( トゲシャコの) 産卵期は8月上旬頃と思う. ②府漁連宮津市場 (2004年8

2 3 日) ・トロ箱1個分のシャコ (数十 匹) が出 されて おり,それらの9 割以上が トゲシャコで,シャコ を見つけるのに苦労する程であった市場仲買人 は

5 - 6

年前 から トゲシャコが増えてきていると 言っていた . 図 2 京都府で漁獲されているシャコ類とその漁具 A 左卜ゲ シャ コの尾部腹面 (卵巣が末端まで充満), 中卜ゲシャコの尾部背面,右シャコの尾部背面, B :トゲシャ コ,C : 卜ゲシャコの捕脚, 0 : 2 種の漁獲物 (ほとんどがトゲシ ャコ),E :篭網“も んどり" の畳んだ状態, F 同展開した状態

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本 尾 ③府漁連舞鶴市場 (2 0 0 4年8月2 4日) 約15 k gの“シャコ" が水揚げされており,そ の内の約

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割が トゲ シャコであ った (府漁連の倉 幹夫課長調べ) ④舞鶴市漁業協同組合橋本治郎氏談 (2 0 0 4年10 月16日) ・昭和45年頃はトゲシャコは極めて稀であった が, 10年余り前から増えてきて目につくようにな り,近年は多い. トゲシャコは大きく,ハサ ミ(捕 脚) がノコギ リの“がんど" に似ているの でガン ドと呼んで,本来のシャコと区別している. (こ れら2種とは別に5 c mぐらいの小型の“シャコ" がいるとも 言 う. ) 漁獲状況一買い取り調査 表1 に示すように, 2 回の全数買い取り調査の i羊 15 結果,いずれの場合もトゲシャコの出現率が80 % 以上と 高かった. サンプル数が多くないので確 定的なことは 言 えないが,数お よびサイズにお いて雄より雌のほうが多く,より大きい傾向が見 られた 7 月 1 日の宮津湾のサンプルでは,雌の 多くで糧色をした卵巣が十分発達し,かつ 鳥浮ら (1998) の記述する受精卵を包むセメン ト物 質を 本見えたことから,上記栗田氏の「産卵期は8月 上旬頃」との見解は的を得ているように思われる. 京都府におけるシャコ類の漁獲シーズンは,刺 し網や篭網により,晩春から秋にかけてである. その聞におけるトゲシャコとシャコの漁獲数比率 は記録がなく 分らないという( 栗田 明,私信). 浜野 (1988) はトゲシャコの額板の形状につい て詳述しており,それについて今回の材料で調べ たところ,先端が長く突出する個体 (浜野, 1988 表1 トゲシャコおよびシャ コの漁獲数・比率と測定値 (2回の全数買い上げ結果) 種 類 Jl!ft雄 トゲシ ャコ 雄

"

"

"

"

'1 シャ コ 頭 甲 胸 長 全 長 (C L, m m) (T L, m m) 38.4 (43.1) 195.0 32.5 (36.8) 171.8 34.3 (39.4) 39.6 (45.5) 22.2 (24.3) 188.4 203.4 110.3 性 巣 状 況 - 以上トゲシャコ. シャコ= 4匹 (80.0% ) : 1匹 (20.0% ) トゲシ ャコ 雄 32.6 (37.6) 159.2

"

" 33.1 (45.5) 196.1 " '1 35.8 (42.5) 182.9

"

" 40.6 (45.8) 205.0 "

"

5匹 (測定せず) イ シ 33.9 (38.8) 174.9 卵巣充満 (尾節末端まで)

"

"

36.8 (43.7) 185.3

"

"

11 '1 37.6 (44.6) 189.7

"

"

"

" 41.5 (49.3) 225.8

"

"

'1 " 5匹 (測定せず) " '1

"

" 1匹 ( " やや充満 (半分程度)

"

"

4匹 (

"

卵巣なし シャコ 雄 30.9 (32.0) 145.0 " 雌 28.8 (30.2) 136.4 やや充満 (半分程度) イ シ " 29.1 (31.1) 146.4 卵巣なし - 以上トゲシャコ: シャコ= 23匹 (88.5% ) : 3匹 (11.5% ) 漁獲場所・年月日と漁具 架田湾, June 29, 2004,刺し網

"

'

"

"

" 宮津湾,July 1, 2

4,篭網

"

"

"

'1

'

"

"

"

"

'1 11

"

"

" "

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京都府におけるトゲシャコの出現と漁獲について の図21 のa,

b )

は 皆 無 で , ほ と ん ど が 丸 い 鈍 頭 型( 同図のdかh ) であった. さて上記のように , トゲシャコが増えているこ とは確かであるが,一方,従来棲息していたシャ コが減ってきている事実を漁業者や市場関係者が 指摘している. 市場ではトゲシャ コとシャ コは区 別しておらず,混みで市場の水揚げ台帳に記載さ れているので過去に遡って両種の出現状況を知る ことは不可能に近い. 両極を合せた漁獲量を調査 する唯一の方法は, もし保存されていれば,市場 の日 別仕切り帳を調べることであろう . なお,京 都府の漁獲統計資料ではシャコ類単独の数値 は無 く,

I

その他」として他の魚介類と一緒に扱われ ている . ところで,近年なぜ トゲ シ ャ コ が 増 え て き て いるのか,そしてそのことと関連するかのよう にシャコの漁獲数が減ってきているのはなぜか, その原因は一体何 であろうか シ ャ コ は 北 海 道 九 州 の両沿岸に分布 し (三宅 ,1982),一方, ト ゲシャコはそ れに比べて南方系種である. 近年, 京 都 府 沿 岸 の 海 水 温 度 が 平 年 値 に 比 べ て 高 い 年 が多くなってきている (京都府立海洋センター, 2004). この こ とと南方系のトゲシャコが増え, 相対的に北方系のシャコが措抗するかのように減 少気味に推移していることと関連があるのかも知 れない. ちなみに , 同じ若狭湾に属する福井県の小浜湾 でも近年, トゲシャコの出現が目立ってきて お り, シャ コで占められている実態がある (畑 中宏之, 私信)• 今回の少ない資料のみからは即断は無論禁物で あることは 言 うまでもない. 今後も ,京都府内さ らには日本海のシャコ類の出現動向を注視 してそ の種交替的な傾向の原因を探っていく必要がある と考えている . 謝 辞 聞き取り調査と 材料入手にご協力し、ただいた漁 業者の栗田明氏,舞鶴湾の漁獲状況情報を提供し て下さった京都府漁業協同組合連合会の倉幹夫課 長, そして小 浜市場でのトゲシャコの情報と材料 を提供して下さった福井県栽培漁業センターの畑 中宏之研究員 に感謝いたします. 関連文献の入手 や種査定に協力いただき,かつ本稿を校閲してい ただいた水産大学校助教授浜野龍夫博士に厚くお 礼申 し上げ ます. 文 献 浜野龍夫, 1988 シャコ類の生物学⑪ 日本産シャコ 類の分類と検索-9 トゲシャコ. 海洋と生物, 10 (5) : 378-381 浜野龍夫,2005. シャコの生物学と資源管理. 日本水 産資源保護協会水産研究叢書51,日本水産資源保護 協会,東京 215 pp 本間義治, 1968. 新潟市の海岸動物. 新潟 県生物教育 研究会誌,(4): 87-100.

H o n m a, Y. & Kitami, T . 1978. Fauna and flora in the waters adjacent to the Sado Marine Biological Station, Niigata University. A nnual R eport of Sado Marine Biological Station, Niigata University., (8): 7-81.

伊藤正一,1970. 新潟県寺泊海岸の動物相. 新潟県生 物教育研究会誌,(6): 21-36. 京都府立海洋センター, 2004. 京都の海の水温変動. 季報 (80),8 pp. 三宅貞祥,1982 原色日本大型甲殻類図鑑 ( I ) 保育社, 大阪 261 pp. 大内 明, 1960. 北部日本海底曳禁漁区の動物分布に 関する研究1. 底棲動物 日本海区水産研究所年報, (6): 173-182. 鈴木庄一郎, 1979. 山形県海産無脊椎動物. 中央印刷 株式会社,山形市,370 pp +図版1-22. 鳥j事 雅・ 三橋正基 -永井雄幸,1998. 石狩 湾に おけ るシャコの産卵期. Nippon Suisan Gakkaisi,臼 (3): 453-461

参照