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トップレベルのアスリートへの理学療法 現状と課題

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 775 ~ 776トップレベルのアスリートへの理学療法 現状と課題 頁(2015 年). 775. 分科学会シンポジウム 3(日本スポーツ理学療法学会). トップレベルのアスリートへの理学療法 現状と課題* 松 田 直 樹**. 平成 23 年に「スポーツ基本法」が施行され,その中で地域・ 健康スポーツの推進や障がい者スポーツの推進とともに,ス ポーツに関する競技水準の向上に資する諸施策相互の有機的な 連携を図っていくことなどが定められた。さらに 2020 年開催 の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け,国の関 連施策はもとより,競技団体や大学・スポーツ関連施設や病院 など民間を含む様々な形でのスポーツ医科学支援が構築されて きている。 理学療法士の役割は,外傷・障害後の保険医療としてのリハ ビリテーションにとどまらず,プロ・実業団チームでのトレー ナーとしての活動,外傷予防に関する研究・実践活動,競技力 向上のための医科学支援,国際競技大会での支援,スポーツに. 図 1 過 去 5 大会のオリンピックにおける日本選手団本部 トレーナー帯同状況. 関する科学的研究・実践のほかにも地域におけるスポーツ選手 の育成やスポーツ現場での事故・障害防止など活動の幅は非常 に広がっている。.  . オリンピックにおける理学療法士の活動 夏季・冬季とも過去 5 大会(アトランタ・シドニー・アテ ネ・北京・ロンドン:長野・ソルトレイク・トリノ・バンクー. . バー・ソチ)での,日本選手団本部医務室としての理学療法士 の帯同状況を見ると,選手団本部トレーナーとして夏季大会で は各大会 2 ~ 3 名帯同のうち理学療法士が 1 ~ 3 名,冬季大会 では 1 ~ 2 名帯同のうち 1 名の理学療法士が帯同している(図 1) 。. 図 2 選手団全体のトレーナー内訳. また,各競技団体スタッフとして選手村に入った選手団全体 でのトレーナー数は,ロンドン大会では 24 競技 30 種目中 24 名,. であり,女性特有のコンディションに対する対応も必要であ. そのうち理学療法士は 4 名帯同していた。ソチ五輪では 7 競技. る。女性トレーナーの数が男性トレーナーに比較するとまだま. 15 種目で 20 名,うち理学療法士は 4 名帯同していた(図 2)。. だ不足している現状であり,今後さらに女性理学療法士の参加. 近年のオリンピックでのトレーナー活動としては,理学療法. が期待されている。. と同時にコンディショニングやトレーニングなど幅広い分野で のサポートが求められるようになっている。また年々オリン. マルチサポートハウスでのトレーナーの活動. ピック選手団としてのスタッフに割りあてられる AD カードの. 前述の通り,近年のオリンピックではスタッフに割りあてら. 制約が大きくなっており,選手団内と同時に選手村の外でのサ. れる AD カードの枚数の制約が厳しくなっている現状がある。. ポート体制の充実も必要になっている。. 図 1 の通り,選手団本部のトレーナーは北京大会までは 3 名体. また,大会によっては参加選手の半数以上が女性アスリート. 制であったが,ロンドン大会では 2 名と人数を減らさざるを得. *. Sports Physiotherapy for Top-level Athletes: Current Situation and Challenges ** 国立スポーツ科学センター アスリートリハビリテーション主任専 門職,アスレティックトレーナー,理学療法士 (〒 115–0056 東京都北区西が丘 3–15–1) Naoki Matsuda, Deputy Division Manager, JASA-AT, PT: Japan Institute of Sport Sciences, Athlete Rehabilitation キーワード:スポーツ理学療法,国際競技大会,オリンピック. ない状態であった。各競技団体のトレーナーも同様の制約を受 けており,選手村の外で活動するトレーナーの比率は増えてい る印象がある。ロンドン大会の際に後述するマルチサポート・ ハウスの利用を各競技団体から申請された村外トレーナース タッフだけでも 49 名が現地で活動していた。実際はさらにパー ソナルスタッフなどの活動もあり実人数はさらに多いトレー.

(2) 776. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. ナーが村外支援活動をしていると考えられる。 選手村外のスタッフが選手をケアする場合,「ゲストパス」 といわれる,デイリーの入場パスを日本選手団から組織委員会 に申請して入村する必要がある。このゲストパスには,国とし て発行枚数の制限があり,また 21 時には退村しなければなら ない。練習後または試合後のケアは事実上困難な状況である。 加えて,ゲストパスはあくまでもゲストの入村を許可するカー ドであり,医療機器の持ちこみは許可されない場合もある。 村外スタッフが村外で選手をケアする場合,選手は活動場所 まで移動せざるを得ない。五輪開催中は通常シングル一泊 7,000 ~ 10,000 円のホテルが,50,000 ~ 70,000 円になるともいわれ 10 日以上の活動場所の確保となるとコストが非常に高額になっ. 図 3 ロンドン五輪での日本選手団本部メディカル. てしまう。また遠方に活動場所を確保した場合,選手の移動に よる様々なリスクやコンディションへのマイナスの影響も考え ざるを得ない。 2012 年のロンドンオリンピック,2014 年ソチオリンピック と文部科学省委託事業「マルチサポート事業」の一環として, 日本スポーツ振興センターが村外の支援施設として「マルチサ ポート・ハウス」を設置した。 マルチサポート・ハウスは競技者パフォーマンスの最大化に 焦点をあて,国際競技大会での競技や試合への最善の準備を行 う環境を提供するため,選手村村外にスポーツ医・科学,情報 面等から総合的にサポートするための拠点である。メディカル の分野に限らず,栄養,コンディショニング・リカバリー,分. 図 4 ロンドン五輪でのマルチサポート・ハウスのケアエリア. 析,情報戦略,コミュニケーションなど様々な分野でのサポー トを実施した。ロンドン大会ではマルチサポート・ハウスのト レーナーとして計 9 名のトレーナーを派遣した。そのうち理学 療法士の資格を有しているスタッフは 3 名であった。ソチオリ. ながっていくのではないだろうか?. 関連スポーツ施策への理学療法士の可能性. ンピックでは 4 名のトレーナーを配置しすべてのスタッフが理. スポーツ基本法の施行に伴い,国の施策としてスポーツの. 学療法士資格を有していた。今後のオリンピックについてもマ. 普及・振興,競技力の向上など様々な領域への支援がなされ. ルチサポート・ハウスを設置し村外サポートの支援は継続して. るようになってきている。前述したマルチサポート事業とい. いく予定であり,2016 年のリオ大会においてはパラリンピッ. われる,オリンピック・パラリンピック競技においてメダル獲. クにおけるマルチサポート・ハウスの設置も検討されており,. 得が期待される競技をターゲットとして,アスリート支援や研. 今後ますますオリンピック・パラリンピックにおいて理学療法. 究開発など多方面から専門的かつ高度な支援を戦略的・包括的. 士が活躍できる場が増えていくものと予想される。. に実施する事業においても,各競技における専門支援スタッフ. 2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会 にむけて. として理学療法士を配置している競技もあり,この分野での理 学療法士の支援の可能性はますます広がっていくものと考えら れる。. 2020 年に開催予定である東京オリンピック・パラリンピッ. 地域から,有望なアスリートのタレントを発掘・育成してい. ク競技大会において日本は参加国としてのみならずホスト国と. く「ナショナル・タレント発掘・育成プログラム」や「地域タ. して,競技に参加する選手・スタッフへのメディカルサービス. レントアスリートチャレンジプログラム」や女性アスリートの. の実施をすることになる。また,数年前からは各国とも事前合. 戦略的強化に向けた調査研究,女性特有の課題に対応した支援. 宿等を日本国内の各所で実施することも予想される。大会開催. プログラムとして展開されている「女性アスリートの育成・支. 時だけでも村内のポリクリニックや会場でのメディカルサービ. 援プロジェクト」など様々なスポーツ支援事業の中にも理学療. スやその他のボランティアを含めると数百名のトレーナース. 法が支援できる可能性のある,多くの公的な医科学支援戦略が. タッフの協力が必要になる。. スタートしている。. 2020 年のホスト国として,またその後の理学療法士の価値. トップアスリートへの理学療法の可能性として,トップリー. を高めていくためにも理学療法技術の向上のみならず,スポー. グのチームのみならず公的支援の現場も多く用意されてきてお. ツ現場での経験やコミュニケーション能力や語学の修得など広. り,ますます理学療法士はアンテナを拡げ,広い視野でアス. い視野にわたる自己研鑽を進めていくことが,オリンピック・. リートへのサポート展開していけることが期待されている。. パラリンピック競技大会の理学療法士としてのレガシーにもつ.

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参照

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