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別室登校を行う発達障害児の不安に対する認知行動療法

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-08 136

-別室登校を行う発達障害児の不安に対する認知行動療法

○金山 裕望1,2)、松元 秋穂1)、佐藤 寛3) 1 )関西学院大学大学院文学研究科、 2 )日本学術振興会、 3 )関西学院大学文学部 問題 不登校を行う児童の背景には様々な問題が存在す る。不登校を行う児童を対象に調査を行った鈴木他 (2017) は,その背景に発達障害や不安症の問題を多 く抱えていることを報告している。そのため発達障害 および不安を抱える不登校に陥った児童への対応が必 要だと考えられる。 不登校から学級へ登校するまでの間には,別室登校 という段階が存在する。しかし別室登校児に対する対 応が学校内の教職員にとって大きな負担になっている (たとえば伊藤, 2003;小泉他, 2011)。そのため不登 校の段階から別室登校の段階に移った別室登校児に対 して,学校内の教職員以外の外部の専門家による新た な支援が必要とされている。 しかしながら別室登校を行う発達障害児の不安に対 する支援について報告した研究はほとんど存在しな い。そこで本研究では,目的別室登校を行っている不 安の問題を抱える発達障害児を対象とした認知行動療 法を実施することを目的とした。 方法 対象 対象となったのは、自閉スペクトラム症,注意欠 如・多動症,発達性協調運動症,の診断を受けている 小学校 4 年生の男児 1 名であった。対象児は母親と離 れられず,午前中は別室で母親と過ごしていた。午後 になると母親と一緒に帰宅していた。 支援者 第一著者が対象児に対して認知行動療法を行った。 第一著者は特別支援ボランティアとして週 1 回程度, 対象児が所属している小学校で通常学級もしくは別室 で支援を行っていた。第一著者は,対象児,および別 室にいる対象児の対応をしている養護教諭と日常的に 会話を行っており,養護教諭とは対象児に対する支援 について話し合っていた。 事前の聞き取り 養護教諭および対象児の事前の聞き取りによって, 対象児は教室内で「揺れる感じ」がすることに不安を 感じており,母親と一緒に別室にいる時は「揺れる感 じ」がしないと感じていることが明らかになった。そ のため揺れる感じを回避する安全確保行動として母親 と一緒に別室で過ごすことを行っていると考えられ た。 尺度

ス ペ ン ス 児 童 用 不 安 尺 度(Ishikawa, Sato, & Sasagawa, 2009; Spence, 1997) 児童の不安障害の症状を測定する自己評定の質問紙 であり,分離不安障害,社交不安障害,強迫性障害, パニック障害,特定の恐怖,全般性不安障害の症状を 測定する 6 つの下位尺度を含む,38項目から構成され ている。 行動指標 行動指標として,別室内で母親と離れることを指す 「母親と離れる」,別室から教室に上がって授業を受け る「授業に参加する」,教室で給食を食べる「給食を 食べる」,母親と離れた後で一人で勉強する「一人で 勉強する」,母親と別室で勉強する「母親と勉強する」, 母親と,もしくは一人で別室で遊んだり休憩したりす る「休む」を採用した。なお,これらの記録は養護教 諭が対象児と一緒に紙にシールを貼ることで記録を とった。 支援内容および支援方法 支援においてはワークシートを作成し,対象児と支 援者とで別室内で実施した。第 1 回目は心理教育を実 施し,気持ちについての理解を深めることを目的とし た。第 2 回目および 3 回目は心理教育を実施し,認知 について理解を深めることを目的とした。第 4 回目は 認知再構成法を実施し,新たな認知を見つけることを 目的とした。第 4 回目終了後,学年末のため支援を中 断した。なお対象児は発達性協調運動症の診断を受け ており書くことに負担を感じていたため,ワークの内 容について支援者が対象児に質問し,回答内容を支援 者がワークの中に書き込んだ。 倫理的配慮 本研究の発表にあたり,保護者に対して説明を行 い,了承を得た。 結果 経過 対象児は全セッションを通して,感情,行動,認知, 身体反応について報告することができた。第 3 回目の セッションでは認知再構成法を実施し適応的な認知を 考え出すことができていたが,行動や気持ちについて は 変 わ ら な い と 思 う と 報 告 し て い た。 第 4 回 目 の セッションでは「母親に帰らないでほしい」という考 えについて反証を検討した。母親がいれば安心すると いう考えの存在も認めつつも,母親がいなくても揺れ ると感じることがなかったことを自発的にあげること

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-08 137 -ができた。 行動指標 行動指標ごとに支援前後の比較を行うためにTauを 算出した。その結果,母親と離れるについてはTau が 有意となり,介入前後において母親と離れると一人で 勉強するが有意に増加していた(「母親と離れる」の Tau = 0.50, p = .000, 90%信頼区間 [Cl [0.21, 0.79]];「一人で勉強する」の Tau = 0.40, p = .003, 90%信頼区間 [Cl [ 0.14, 0.65]])。休むにつ いてはTauが有意となり,介入前後において休むが有 意に減少していた(「休む」の Tau = -0.39, p = .003, 90%信頼区間 [Cl [ -0.68, 0.01]])。授業に 参加する,給食を食べる,母親と勉強するについては, Tauが有意にならず,有意な増加および減少は認めら れなかった(「授業に参加する」の Tau = 0.04, p = .812, 90%信頼区間 [Cl [ -0.25, 0.33]];「給食 を食べる」の Tau = 0.16, p = .368, 90%信頼区 間 [Cl [ -0.13, 0.45]]; 「母親と勉強する」の Tau = -0.27, p = .300, 90%信頼区間 [Cl [ -0.56, 0.02]]))。 不安症状 分離不安およびパニック症状の得点について,本研 究では質問紙得点の変化の検討およびIshikawa et al. (2009) において示されている一般男児の得点と の比較を行った。分離不安症状の介入前の得点は一般 男児より1SD高い 5 点であった。そして介入後には 7 点となり,同年齢の一般男児より3SD高くなった。パ ニック症状の介入前の得点は一般男児より2SD高い14 点であった。介入後は 6 点となり,一般男児と同程度 の得点になった。 考察 本研究の目的は,別室登校を行う発達障害児の不安 に認知行動療法を適用し,その効果を検証することで あった。認知行動療法を適用した結果,部分的に行動 指標や不安症状に改善が認められた。 本研究を実施していく中で,対象児は母親がいない 場面でも「揺れる感じ」がしないことを自発的に見つ けることができるようになった。その結果,母親と離 れるおよび一人で勉強するという行動が生じやすくな り,パニック症状の得点が減少したと考えられる。 授業に参加する,給食を食べる,母親と勉強すると いう行動に変化が見られず,分離不安得点は微増し た。給食を食べるという行動は,「気持ち悪くなる」 という身体反応を引き起こすと対象児は感じていた。 そのため「揺れる感じ」に焦点を当てた本研究では支 援を行うことができていなかったと考えられる。また 授業に参加するという行動については,それに加えて 対象児は「書く」という行動が負担であると訴えてい た。対象児の母親との分離を拒否する行動は,パニッ ク様症状の安全確保のためだけでなく,課題からの回 避という機能もあったと考えられる。以上のことか ら,今後は課題からの回避や給食を食べるという行動 に対しても支援を行う必要があると考えられる。 本研究は,これまでほとんど検討されてこなかった 別室登校を行っている発達障害児の不安に対して焦点 を当てたという点において,有意義な研究であったと 考えられる。今後の研究においては,支援が行われて こなかった別室登校児に対して,専門家と学校との連 携しながら支援を行うことが望まれる。

参照

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