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Web上で行うポジティブ感情想起課題が個人のメンタルヘルスに及ぼす影響について

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-86 468

-Web上で行うポジティブ感情想起課題が個人のメンタルヘルスに及ぼす影響について

○松宮 菜緒子1)、東條 光彦2) 1 )岡山大学大学院教育学研究科、 2 )岡山大学大学院社会文化科学研究科 問題と目的 今日,人々の心理的健康を増進させるためのキー ワードとして,「ポジティブ感情」がある。これに関 し て,F r e d r i c k s o n(2 0 0 1) が「 拡 張・ 形 成 理 論 (broaden-and-build theory)」を提唱している。これ によれば,ポジティブ感情を経験することで対処能力 やレジリエンスなどの身体的,知的,社会的な個人資 源が形成され,個人の健康を高めることができるとい う。ポジティブ感情を経験することに注目して考えら れた介入課題の一つにThree Good Things in Life (TGT)課題(Seligman et al., 2005)がある。TGT課 題とは,その日に起きた 3 つのポジティブな出来事と それが起きた原因を 6 日間毎晩書くという筆記課題で ある。この課題によりSeligman et al.(2005)では 抑うつの減少と幸福感の上昇が実験終了後 6 ヶ月後ま で続いた。TGT課題は個人で継続的に行うことができ るため,メンタルヘルスを向上を目的としたセルフケ アとしては適していると思われる。 さて,近年の情報機器やネットワーク環境の発達を 考慮すると,Webを用いたTGT課題はより簡便なセルフ ケ ア 方 略 に な る と 考 え ら れ る。 そ こ で 松 宮・ 東 條 (2017)はWebを用いたTGT課題の効果を検討したが, 課題の継続率と精神指標の変化に課題があった。 そこで本研究では,継続率向上のためにSNSの利用 や心理教育を実施し,評価指標に生活の質的変化を捉 える指標を取り入れTGT課題の効果を再検討するこ と,人々のメンタルヘルスを維持向上する介入につい ての検討を目的とする。 方法 実験対象者は A 大学の 2 講義を受講する学生のう ち,参加に同意した171名(男性33名,女性138名,平 均年齢20.68歳,SD=1.11)。一方の講義を受講する学 生を実験群(128名),他方の授業を受講する学生を待 機群(43名)とした。実験群には70分程度の心理教育 の後 2 週間の課題に従事するよう求めた。 【尺度】 ・ 睡眠:OSA睡眠調査票MA版(山本他,1999)睡眠 状態に関する 3 項目,入眠と睡眠維持・夢みの 2 因子, 7 項目 ・ ストレス:心理的ストレス反応尺度(SRS-18)(鈴 木他,1997)18項目 ・ 活力:POMS2(横山,2015)活力-活気因子 9 項目 実験群には,心理教育直後(pre), 2 週間の課題終 了後(post),課題終了から 2 週間後(follow)に尺 度 へ の 回 答 を 求 め た。 待 機 群 に は 2 週 間 の 待 機 前 (pre),課題前後(post, follow)に尺度への回答を 求めた。課題および尺度全ての回答をWeb上のフォー ム内で行い,フォーム配布およびリマインダー通知は SNSツールを用いた。 【心理教育】 「ポジティブ感情を高めよう」というテーマで個人 ワークを含めた70分程度のプレゼンを行った。内容: なぜポジティブなのか/ポジティブ感情の効果/ポジ ティブな出来事探し 【課題】 TGT課題を改変した課題。その日にあったポジティ ブな出来事を 3 つ挙げ,どのような気分か,その気分 の強度を合わせて記述するよう求めた。この課題をで きるだけ毎日, 2 週間行うよう求めた。 【倫理的配慮】 回答内容は成績に一切関わるものではないこと,本 実験で得られたデータは厳重管理し本研究のみで使用 すること,課題の記述内容は他の対象者に見られるこ とはないこと,参加しない場合や課題を中断した場合 でも対象者に一切の不利益はないことを,配布資料に 記載し,同意を示したものにフォームへのアクセスを 求めた。 結果と考察 1 . SNS利用の効果 実験群において,preに回答した128名のうち, 1 日 以上課題に取り組んだのは57.8%の74名であった。松 宮・東條(2017)と比較すると,取り組み率はほとん ど変わらない。しかし,実験を呼びかけた対象者のう ち,実験に興味を示し尺度,及び課題に取り組んだ者 の割合は,松宮・東條(2017)が15.3%であったのに 対し,本研究では66.0%であった。この理由として, SNSの利用効果が考えられる。今回用いたSNS(LINE) は20代の96.3%が利用しており(総務省,2017),今 回の対象者にとっては身近なツールであるため,本研 究にも関心をもちやすかったのではないかと考えられ る。また,リマインダーを配布した日の回答が他の日 に比べて多かった。これはリマインダーが対象者に認 知され課題への取り組みを促したことを示しており, リマインダーにSNSを利用することが良好な手段で あったと考えられる。

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-86 469 -2 . TGT課題の効果 分析対象者は,preとpostのどちらも回答し,実験 群では 1 日以上課題に取り組んだ者99名(実験群61 名,待機群38名)であった。実験群のうち,preにお けるSRS-18の尺度得点が平均以下であった者をストレ ス低群(36名),平均以上であった者をストレス高群 (25名)とした。各尺度の平均得点をTable.1に示す。 「睡眠」,「ストレス」,「活気」の各尺度において, 3 群(ストレス低・ストレス高・待機)× 2 群(pre・ post)の 2 要因分散分析をおこなった(Table.2)。そ の結果,「睡眠」においては,時期,群のいずれの主 効果,交互作用はみられなかった。「ストレス」にお いては群の有意な主効果と交互作用がみられた。下位 検定をおこなったところ,ストレス低群における時期 の 単 純 主 効 果 が み ら れ(F(1,96)=4.59, p <.05, ηp 2 =.05),postの方がpreより高かった。「ストレス」 が上昇した理由として,TGT課題が与えた負荷が考え られる。課題実施後に寄せられた「ポジティブな出来 事が思いつかず,ネガティブな気持ちになってしまっ た」というコメントを参考にすれば,課題を行うこと でネガティブな気分を喚起してしまった可能性が考え られる。また,「活力」において有意な群の主効果が みられ,多重比較の結果,ストレス低群がストレス高 群よりも高かった。preにおいて「ストレス」と「活 気」には 1 %水準で有意な中程度の負の相関があった ことからも妥当な結果であると思われる。 今後の課題 今回利用したSNSは対象者にとって親和性のある ツールであったが,実験者に個人のアカウントを知ら れてしまうという欠点もある。さらに,フォームの仕 様上,課題で記述した内容は入力後振り返ることがで きない。これらの点を補うため,システムの再検討を 行い,より誰でも気軽に継続的に取り組みやすい介入 方法を考える必要性があると思われる。 また,本研究では,比較的健康な大学生を対象にし た。近年学校教員のメンタルヘルスについて問題が指 摘されているが(ex.佐野・蒲原,2013),このような 労働者や高齢者等に対象者を広げ,様々な年代に対し てメンタルヘルスを維持向上させる介入方法を検討す る必要があると思われる。 主要参考文献

Seligman, M. E. P., Steen, T. A., Park, N., and P e t e r s o n , C . (2 0 0 5). P o s i t i v e P s y c h o l o g y Progress: Empirical Validation of Interventions. American Psychologist, 60 ( 5 ), 410-421.

参照

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