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糖尿病足病変の重症化予防における理学療法

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(1)理学療法学 第 46 巻第 5 号 371 ∼ 378 頁(2019 糖尿病足病変の重症化予防における理学療法 年). 371. 理学療法トピックス シリーズ 「糖尿病重症化予防と理学療法」. *. 連載第 4 回 糖尿病足病変の重症化予防における理学療法. 河 辺 信 秀 1) 渡 部 祥 輝 2). 創傷を有する症例もしくはそのリスクをもつ症例におい. はじめに. ては,歩行能力維持という観点から大切断の回避を目的.  糖尿病足病変に関する国際ワーキンググループにおい. とした介入が行われる。2009 年の日本下肢救済・足病. て,糖尿病足病変(以下,DM foot)は, 「神経障害や. 学会の発足以降,形成外科,血管外科,心臓血管外科,. 末梢血流障害を伴った下肢の感染症や潰瘍および深部組. 糖尿病内科,循環器内科など複数の創傷治療にかかわる. 1). 織の破壊病変」と規定されている 。本邦では,胼胝や. 診療科による創傷治療施設が各地で設立され,救肢率が. 陥入爪などの非潰瘍性病変も DM foot と定義している. 向上した。これらの医療施設に所属する理学療法士を中. 場合が多いが,重症化予防という観点からは,潰瘍を形. 心として,下肢慢性創傷患者に対する理学療法が行われ. 成し壊死に至る過程をいかに予防するかが重要である。. るようになっている。. DM foot による足潰瘍の米国での有病率は,糖尿病患者 の 1.5 ∼ 10%であるとされており,年間発生率は 2.2 ∼ 5.9%と報告されている. 2). 。障害発生率も 25%と高率で. 下肢慢性創傷の病態と治療  下肢慢性創傷は,CLI と DM foot が主要な病態である。. あるため,糖尿病患者において DM foot は,生涯にわ. CLI では虚血による痛みの強い潰瘍が形成される(詳細. たって介入が必要な合併症である。潰瘍や壊死などの下. は次号参照) 。一方で,DM foot による潰瘍形成は,糖. 肢慢性創傷は,治癒に失敗した場合,大切断に至る。米. 尿病神経障害による知覚障害が一義的な要因となる。こ. 国では,糖尿病患者の下肢切断は,非糖尿病患者と比較. れらの知覚障害は, 「釘が刺さっても痛みがない」 「骨折. して 8 倍の切断率であるとされており,下肢切断全体. の痛みに気づかない」 「出血が気にならない」など防御. の 60%以上が糖尿病患者である. 2). 。下肢慢性創傷によ. 機構としての深刻な破綻が生じるレベルで出現する。こ. る大切断症例は,義足歩行獲得が著しく困難である。. のため,DM foot においては, 「患者が気づかない」こ. らによる重症下肢虚血(以下,CLI)症例を対象とした. とが問題であり,医療者や家族などの介入が必須である. 調査では,下. 切断では 0%という著. 理由でもある。これらの重篤な知覚障害が存在する足部. 。また,CLI 症例に加え. に,力学的負荷,靴擦れ,外傷,やけど,爪病変,皮. て DM foot 症例も加えた切断症例の FIM を用いた歩行. 膚病変などの外的な要因が加わることで潰瘍が発生す. 維持率の調査でも,下. 切断では. 2) る 。靴の不適合(フィッティング不良)は大きな問題. 4) 13%の歩行維持率であった 。下肢慢性創傷による大切. である。足部形状と靴の形状,特に先端部の形状との不. 断症例の義足歩行獲得が困難である理由としては,両側. 一致が足趾部の圧迫や足趾間の摩擦を生み,靴ずれの原. 性に進行する DM foot の病態により非切断肢機能が低. 因となる。また,Claw toe 変形が存在する場合に,トゥ. いことや動脈硬化性疾患の合併による全身状態の悪化な. ボックスの低い靴を履くことで,足趾背側に靴擦れが生. どが影響していると考えられる。したがって,下肢慢性. じる可能性がある。靴擦れは足部潰瘍発症の 70%を占め. 切断で 33%,大. しく低い歩行維持率であった. 3). 切断では 71%,大. るとする報告 *. Physical Therapy in Aggravation Prevention of Diabetic Foot 1)城西国際大学福祉総合学部理学療法学科 (〒 283‒8555 千葉県東金市求名 1 番地) Nobuhide Kawabe, PT, PhD: Department of Physical Therapy, Josai International University 2)東京工科大学医療保健学部理学療法学科 Yoshiteru Watanabe, PT, MS: Department of Physical Therapy, Tokyo University of Technology キーワード:糖尿病足病変,下肢慢性創傷,大切断予防,off-loading. 5). もあることから,靴のフィッティング. 不良は重要な危険因子である。潰瘍に,虚血と感染が加 わると壊死に至る。治癒のためには,虚血と感染の改善 が必須であるため,形成外科,血管外科,心臓血管外科 の医師が,感染制御のためのデブリードマンや小切断, 血流改善のための血管内治療,血管バイパス術などを行 う。また,下肢慢性創傷は, 「歩く褥瘡」と呼ばれており,.

(2) 372. 理学療法学 第 46 巻第 5 号. 荷重が加わり続ける限り絶対に治癒しない。したがって,. 起こすと考えられている 14)。特にリスフラン関節離断. 創傷部位の免荷(以下,off-loading)が重要となる。変形,. やショパール関節離断などでは,前脛骨筋,長趾伸筋,. 関節可動域などの足部の運動機能,歩行形態,力学的負. 長母趾伸筋などの足関節背屈筋群が切断されてしまうた. 荷などの要因が影響することから off-loading の達成には. め,術後,尖足変形が必ず発生する。術創部が,断端先. 理学療法士が大きな役割を担っている。. 端に存在していることが多いことから,先端部に潰瘍形 成する場合が多い。. DM foot の力学的問題.  糖尿病患者では種々の合併症により身体機能の低下が.  DM foot 発症の外的要因である足底圧異常は,動作. 生じ,それにより歩容が変化することで足底圧上昇が発. 中の運動力学的因子である。足底圧上昇には Hammer/. 生する。糖尿病神経障害患者の歩行は,歩行速度や歩幅. Claw toe 変形や外反母趾,シャルコー関節といった足. が減少し,両脚支持時間が延長する. 部変形,足関節や中足趾節関節(以下,MTP 関節)の. 応は身体機能の低下により生じた不安定性による転倒リ. 関節可動域制限が関与している。また,すでに発症した. スクを回避するためのものであると考えられる。運動力. DM foot により足関節以遠,特に足趾や中足骨レベルで. 学的観点から,これらの歩行変化は歩行中の床反力を小. の切断(小切断)や,糖尿病神経障害による歩行パター. さくする要素であると考えられるが,Saura らの報告で. ンの変化が関連する因子として指摘されている。. は,糖尿病神経障害患者では初期接地から荷重応答期,.  Hammer/Claw toe 変形は DM foot 発症の独立した危. 立脚終期から前遊脚期にかけて床反力垂直成分が上昇す. 険因子とされており. 6). ,MTP 関節の過度の伸展により. 中足骨頭下に存在する脂肪組織が前方に移動し,中足骨 頭が足底に突出することで足底圧が上昇すると考えられ ている。また,足関節背屈可動域制限との組み合わせに. ることが示されており. 15)16). 。これらの反. 17). ,糖尿病神経障害が歩行中の. 足底圧上昇に関与していることが推測される。. 下肢慢性創傷の病期と理学療法の役割. 7) よる足底圧の上昇も指摘されている 。外反母趾も足底.  下肢慢性創傷の病期分類を図 1 に示す。糖尿病患者の. 圧の上昇にかかわる因子である。軽度の外反母趾変形で. 場合,創傷が存在せず神経障害を合併した状態であれ. あっても第 1 ∼ 3 中足骨頭部の足底圧上昇がみられると. ば,発症予防期に該当する。創傷治療期を経て,治癒後. の報告. 8). があり,潰瘍の発症と関連する可能性がある。. は再発予防期に至り,大切断を余儀なくされる症例も存. シャルコー関節症は著しい疼痛感覚の欠如に加えて,足. 在する。理学療法のかかわりとしては,病期により役割. 根骨が激しい変形をきたす。典型例では,リスフラン関. が異なる。. 節脱臼が発生し,舟状骨や立方骨が足底に突出した船底.  創傷治療期における理学療法は,大きく 2 つの役割. 状の足部となる。突出部位の著しい足底圧上昇をきたす. が存在する. シャルコー関節は,潰瘍形成の独立した危険因子として. loading に貢献することである。上述した力学的問題で. 6) 指摘されている 。. ある運動機能や歩行の面から介入を行い off-loading を.  足関節および第一 MTP 関節可動域制限は足底圧上昇 9)10). 18). 。1 つは,創傷治癒を達成するための off-. 達成することで「創傷治癒」へダイレクトに影響を及ぼ. 。糖尿病患者における足関. す。これらは,治療効果への貢献という意味で一般的な. 節可動域制限は必発としてよい症状であり,特に背屈可. 理学療法の効果とは大きく異なる。一方で,創傷治療期. 動域制限と前足部足底圧上昇との関連については多くの. の症例は,廃用症候群を中心とした歩行能力の低下が認. 報告がなされている。Lavery らは自動運動での足関節. められる. 背屈可動域が 0°未満で足底圧が上昇していたことを報. 療法によって身体機能・歩行能力を改善する必要があ. に関与する因子である. 11). 19). 。したがって,創傷治療を行いながら理学. 。河辺らは糖尿病患者において他動的足. る。これら 2 つの役割は,相反する目的であるといえ. 関節背屈可動域が 20°未満で最大足底圧の上昇がみられ. る。創傷治癒のためには off-loading として足部を免荷. 告している. たとしている. 12). 。Mosteo らはランジ肢位で測定した足. 関節背屈可動域が 30°未満の場合に足底圧上昇を認めた 13). し歩行を制限する必要があるが,身体活動を高めるため には,荷重や運動量の増加が必須である。したがって,. 。他動的足関節可動域制限は多くの. 創傷治療期の理学療法の役割は,歩行や身体活動を高め. 先行研究が示すように,前足部足底圧上昇に関与する因. るための運動を行いながら,創傷治癒を達成するための. 子である。しかし,可動域制限のカットオフ値はこれま. off-loading を行うこととなる。. でのところ明確ではないため,今後さらなる調査が待た.  発症予防期・再発予防期の理学療法は,創傷治療を専. れる。第一 MTP 関節伸展可動域制限に関しても,足関. 門としている医療施設の理学療法士だけでなく,多くの. 節背屈可動域制限と同様に糖尿病患者でみられる症状で. 理学療法士にとっても必要な知識と技術である。糖尿病. と報告している. あり,母趾足底圧上昇と高い相関が報告されている. 10). 。.  創傷の治療を目的とした小切断も,足底圧上昇を引き. 患者における脳血管疾患の発症は約 3 倍であり,血液透 析患者の新規導入では,糖尿病が原因疾患の 1 位を占め.

(3) 糖尿病足病変の重症化予防における理学療法. 373. 図 1 下肢慢性創傷の病期と理学療法. る。一般的な理学療法の対象疾患となる症例において. 用いずに実施可能なため臨床上簡便に実施できる。馬場. も,DM foot のハイリスク症例が多く含まれている可能. らの報告では,下肢における痛覚閾値以下の部位の広が. 性がある。また,DM foot や CLI による大切断患者(下. りが,糖尿病罹患年数やアキレス腱反射低下度,振動覚. 切断・大. 切断)は,義足装着によるリハビリテー. 低下度と関連していることが示されている. 21). 。. ションを目的として回復期リハビリテーション病院に入.  近年,より簡便なスクリーニング方法として Ipswich. 院する。これらの症例では,義足歩行練習が中心である. Touch Test が提唱されている. 22). 。Ipswich Touch Test. が,両側性に進行する DM foot の病態を考慮すると非. は,患者に目を閉じてもらい,両側の母趾,第 3 趾,. 切断肢はきわめて高い確率でハイリスク状態にあると考. 第 5 趾の先端を検者の指先で 1 ∼ 2 秒軽く触れて,触. えられる。これらの発症予防期・再発予防期の症例に対. 覚を確認する検査である(図 2) 。2 ヵ所以上の無感覚. する理学療法も重症化予防という観点では,必要不可欠. で,異常と判断される。Sharma らによると,Ipswich. である。本稿では,創傷治療期および発症・再発予防期. Touch Test は,感度 78.3%,特異度 93.9%,陽性適中. の 2 つの観点から理学療法について解説する。. 率 81.2%,陰性適中率 92.8%であり,スクリーニング方 法 と し て 5.07Semmes-Weinstein Monofilament を 用 い. 理学療法評価. た触圧覚テストと同等の精度であるされている. 22). 。. 1.発症・再発予防期および創傷治療期に共通した評価. 2)末梢動脈疾患. 1)糖尿病神経障害.  下肢末梢動脈疾患の存在は,下肢慢性創傷の発症のみ.  糖尿病神経障害の評価は国際的にコンセンサスの得ら. でなく,潰瘍治癒の遅延につながるため,その評価は重. れた診断基準は確立されていないため,神経症状や神経. 要となる(詳細は次号参照)。. 2). 学的検査から総合的に判断する必要がある 。比較的妥. 3)関節可動域. 当性が高い診断基準として,糖尿病性神経障害を考える.  DM foot に対する関節可動域の評価は,足部を中心. 会が開発した簡易診断基準があり,日常診療で用いられ. として足関節底屈・背屈,内がえし・外がえし,第一. 20). 。これらは,自覚症状の有無や,アキレス腱. MTP 関節伸展・屈曲の測定が重要となる。足関節底. 反射検査,内果振動覚検査から総合的に判断する。糖尿. 屈・背屈の評価方法は日本整形外科学会および日本リハ. 病神経障害のスクリーニング検査として,モノフィラメ. ビリテーション医学会の定める「改定関節可動域表示な. ントを用いた圧触覚検査や爪楊枝や竹串を用いた痛覚検. らびに測定法」に準拠し測定する。足部の内がえし・外. 査がある。モノフィラメントによる圧触覚検査では 5.07. がえしについては日本足の外科学会の定義にしたがい,. ている. Semmes-Weinstein Monofilament を用い足背・足底の. ベッド上腹臥位にて下. 複数ヵ所で圧触覚を評価する。10 g の圧を加えること. 軸として測定する。. のできるモノフィラメントを足趾および足背で知覚でき. 4)足部変形. ない症例は潰瘍形成リスクが高いとされる。爪楊枝や竹.  Hammer/claw toe 変形は足底圧上昇にかかわる因子. 串を用いた痛覚(Pin-prick)弁別検査は特別な器具を. であるため,その評価は重要となる。Hammer toe 変形. 長軸を基本軸,踵骨長軸を移動.

(4) 374. 理学療法学 第 46 巻第 5 号. 図 2 Ipswich Touch Test の実施方法 テスト肢位は,裸足で両足を投げ出した長座位である.被検者は目を閉じた状態とし,検者の指先で,患者 の足趾先端を軽く触れて,感覚を確認する.触れられていることがわからない部位が 2 ヵ所以上の場合,感 覚障害ありと判断する.テストの順番は,右母趾,右第 5 趾,左母趾,左第 5 趾,右第 3 趾,左第 3 趾である.. は,MTP 関節は正常であるが,趾節間関節(以下,IP. 圧上昇に関連するため,歩行評価時に必須となる。. 関節)が過屈曲した状態である。Claw toe 変形は MTP.  足底に加わる負荷量を評価するには,歩行能力や足底. 関節が過伸展し,IP 関節が過屈曲した状態である。そ. 圧評価だけでなく,1 日の身体活動量の把握も重要とな. の他,外反母趾や内反小趾,外反扁平,凹足変形は足底. る。生活活動記録計を用いた 1 日の歩行距離や歩数の積. 圧分布異常を引き起こす要因となるため見落とさないよ. 極的な評価が必要である。. うに注意深く観察する必要がある。 5)歩行時足底圧. 2.創傷治療期の評価.  歩行時の足底圧評価では,足底圧分布計測装置を用い.  創傷治療期においては,創傷の病態,治癒に影響を及. る。マット型と靴の中にセンサーを挿入できるシート型. ぼす因子の把握が必須である。病態の把握のためには,. のものがある。これらの装置は複数の圧センサーが埋め. 創傷の重症度分類を確認することが必要である。テキサ. 込まれているため,局所の圧を測定することが可能であ. ス分類. る。また,測定結果が視覚的に明瞭に表示できるものが. からステージ分類を行う。また,神戸分類. 多く,患者教育にも用いることができる。おもに用いる. 態ごとにタイプ分類が行われる。Type 1 は末梢神経障. 25). では,潰瘍の深さ,感染,虚血の 3 つの項目 26). では,病. 測定値には最大足底圧と圧−時間積分値がある。先行研. 害が主体となる潰瘍,Type 2 は末梢血行障害が主体と. 2 究では潰瘍形成にかかわる最大足底圧を 6 kg/cm 以上. なる潰瘍,Type 3 は感染が主体となる潰瘍,Type 4 は. 23). 。足底圧分布計測装置がない場合は,ピ. 末梢血行障害と感染を伴う潰瘍である。症例の創傷のス. ドスコープやフットプリントを用いる。これらの方法は. テージを確認し病態を把握する。理学療法士にとって重. 簡易かつ安価に足底圧を推測することが可能であるが,. 要な情報は,創傷が足部のどの部位に存在しているか正. 静止立位での評価しか行えないため,歩行中の足底圧を. 確に知ることである。創部を免荷しながら理学療法を行. 反映しているかどうかは慎重に判断する必要がある。. う必要があるため,正確な位置情報が必要である。可能. 6)歩行能力・身体活動量. であれば,主治医の回診に同行し,処置の際に創の位置.  糖尿病患者や神経障害を合併した患者では歩幅の減. を確認する。もしくは,医師が撮影した創部の写真を確. 少,歩隔の拡大,歩行速度の低下,両下肢支持期の延長. 認する。また,創傷の改善の指標としてサイズ測定が行. とされている. 15)16). 。関節運動では股関節伸展角度,膝関. われる。医師が,創傷の縦横の大きさと深さを測定して. 節屈曲・伸展角度,足関節底屈・背屈角度,MTP 関節. いるため,これらを確認し,創傷の変化を常に把握する. 伸展角度の減少がみられる。これらの変化は,比較的. 必要がある。創傷の深さについては,表在のみか,腱・. 初期の糖尿病患者でも発生する可能性が指摘されてい. 関節包に達するか,骨・関節に達するかについて,情報. が見られる. 24). ため,発症予防の観点からも注意深く観察する必. を確認する。筋腱に達する創傷の場合,該当する筋腱の. 要がある。足底圧異常にかかわる点では,立脚中期から. 活動を伴う関節運動は,潰瘍治癒を遅延させるリスクが. 前遊脚期にかけて足関節背屈可動域の減少が前足部足底. あるためである。創部の状況により行える関節運動は異. る.

(5) 糖尿病足病変の重症化予防における理学療法. 375. なるため,必ず主治医に確認する。. 予防期で異なるため,それぞれの病期で介入内容を適切.  感染が存在する場合,原則,off-loading が必要となる。. に選択する必要がある。. また,関節運動が感染の進行を促すリスクもある。した. 1)関節可動域練習. がって,感染の状況も把握する。DM foot の感染は,米 国感染症学会のガイドラインに準拠した治療が行われて 27). (1)創傷治療期  創傷の治療過程では創部の免荷が優先されるため,関. 。局所感染の診断は,臨床診断が重要視されて. 節の固定や活動量の低下による関節可動域制限が起こ. おり,①局所の腫脹や硬結,②紅斑,③局所の圧痛また. る。また,糖尿病神経障害由来の制限も加わるため関節. は疼痛,④局所の熱感,⑤排膿もしくは血性分泌物のう. 可動域練習は積極的に行う必要がある。一方で,関節可. 27). 動域練習は,皮膚,筋腱,関節包の伸張を伴うため創. 感染の深達度も重要であり①軟部組織のみか,②リンパ. 傷治癒を遷延させる要因になり得る。特に MTP 関節や. 管炎を伴うか,③筋膜に及んでいるか,④骨に及んでい. IP 関節に対する関節可動域練習は足底の皮膚,腱を牽. るかの 4 段階で判断される。特に感染が骨に達し,骨髄. 引するため,前足部から中足部足底に創傷が存在する症. 炎であると診断されている場合,切断が必要となること. 例では禁忌となる。足関節可動域練習においても下. が多いため,どの骨に感染が存在するか知ることは,治. ら足底を通過する筋腱が多数存在するため,実施には慎. 療後の足部形状を把握するうえでも重要な情報である。. 重な判断が必要であり,主治医と相談のうえ,実施する. いる. ち 2 項目以上を満たす場合,感染ありと判断される. 骨髄炎の評価は. 。. 28). ,①実際に骨が見える,②プローブ. で骨が触れる(Probe-to-Bone Test) ,③潰瘍の大きさ 2. か. べきである。 (2)発症・再発予防期. が 2 cm 以上,④潰瘍の罹患期間が 1 ∼ 2 週間以上,⑤.  発症・再発予防期では創傷が存在しないため,積極的. 赤沈 70 mm/hr 以上の項目のいずれかがあてはまる場. に関節可動域練習を実施する必要があり,足底圧上昇と. 合,骨髄炎の存在を疑う。画像診断では MRI が有用で. 関連する足関節,MTP 関節を中心に実施する。目標可. あり,骨髄浮腫の範囲が正確に把握可能である。これら. 動域は明確な基準は存在しないが,足関節背屈可動域 0. は医師によって行われるが,理学療法士も検査結果を把. ∼ 10°以下の場合,足底圧が上昇するとされているため,. 握する必要がある。. 10°以上の可動性を目安とする。MTP 関節は正常歩行. DM foot の理学療法. で 45°∼ 55°の伸展可動域が必要であることを念頭に介 入する。介入頻度は 2 回 / 週の介入を 10 週間継続した. 1.足部の観察. 結果,糖尿病神経障害患者の足関節,第一 MTP 関節の.  発症・再発予防期においては,定期的な足の観察が重. 関節可動域が正常可動域まで改善したとの報告が参考に. 要である。『糖尿病診療ガイドライン 2016』では定期的. なる. な観察が DM foot の予防につながるとして推奨されて. 状態に陥ることも指摘されており,継続した介入やセル. 2) いる 。理学療法士は,患者を裸足にすることに慣れた. フストレッチング方法の指導を行う必要がある。. 職種であるため,積極的に足を観察する役割を担うべき. 2)装具療法. である。DM foot のリスクをもつ症例では,理学療法施. 29). 。しかし,介入を行わないと再び可動域制限の. (1)創傷治療期. 行時に定期的に裸足での観察を行い,発赤,皮膚の乾燥,.  欧米における創傷治療期での装具療法は Total contact. 肥厚,角化,胼胝,鶏眼,白癬症,爪病変,水疱,潰瘍,. cast(以下,TCC)がゴールドスタンダードである。. 足部変形などがないか確認する。. TCC は創傷治癒率が高く,感染等のない DM foot 患者 を対象とした RCT の報告では 90%以上が治癒してい 30). 。一方で,TCC は日本の保険制度の影響により使. 2.靴のフィッティング指導. る.  靴のフィッティング不良には靴のサイズや形状と足の. 用頻度が少ない。一般的な免荷方法としては医療用フェ. 形状との不一致が問題となるため,足と靴の形状を確認. ルト材やプラスタゾートを用いて創傷部をくり抜いてイ. する。靴ずれは足趾先端で多く発生するため,靴の先端. ンソールを作成し,治療用サンダルと併用する方法があ. の形状が足趾の形状より狭い場合,圧迫により靴ずれが. る(図 3)。免荷用のハーフシューズと比較して,潰瘍. 発生する。靴ずれを予防するためには足趾の形状に適. 部をくり抜いたフェルトを用いた治療で潰瘍治癒が早. したラウンドトゥやオブリークトゥを選択する。また,. まったとの報告がある. トゥボックスの高さも確認し,足趾背側が接触しない形. トを用いた免荷は,安価で容易に加工できるため,様々. 2) 状を推奨する 。. な潰瘍の状態に適応しやすい。一方で,くり抜く範囲や. 31). 。フェルト材やプラスタゾー. 着用が適切でないと潰瘍部が圧迫される危険性もあるた 3.off-loading. め,免荷の状況は足底圧分布装置を用いて評価を行うこ.  off-loading にかかわる介入は創傷治療期と発症・再発. とが望ましい。.

(6) 376. 理学療法学 第 46 巻第 5 号. 図 3 プラスタゾートと治療サンダルを用いた簡易免荷 プラスタゾートを潰瘍部に合わせてくり抜き,治療サンダルと組み合わせて潰瘍部の off-loading を行う.. 図 4 免荷歩行練習用デバイス 足部への荷重が困難な症例に対する免荷歩行デバイス a, b: Knee Crutch.膝関節屈曲位で装具に下肢を固定し,下 前面で荷重を行うデバイスである.屋外歩行も可能であり, 通院患者が使用することもできる.一方で,膝窩部を強くベルトで固定する必要があるため,バイパス術後の症例では使用 できない.また,下 前面に創傷が存在する場合も使用は禁止となる. c, d: Knee Walker.Knee Crutch よりも難易度が低いため,歩行能力の低下した症例でも使用できる.また,ベルトでの固 定が必要ないためバイパス術後の症例でも,使用できる場合がある.下 前面への荷重が困難な場合は,使用不可能である.. (2)発症・再発予防期. えで,積極的に用いるべきであると考える。.  発症・再発予防期ではインソールと靴を組み合わせた. 3)免荷歩行練習. フットウェアや,アウトソールを加工したフットウェア.  DM foot 患者において off-loading と荷重を伴う歩行. がおもに用いられる。インソールと靴を組み合わせた. 練習の両立のためにはフットウェアを用いる以外に免荷. フットウェアの使用により,潰瘍再発が 45%低下した. 歩行練習が重要となる。創傷治療期での免荷歩行は揃え. 32). や,プラスタゾート製インソールと Post-. 型歩行が多く指導されている。Brown らは患肢を先行. operative shoes の組み合わせで,前足部足底圧が通常. させ,健肢を揃える揃え型歩行は健肢が患肢を超えて歩. との報告. 靴と比較し,23%減少したとの報告がある. 33). 。アウト. く前型歩行に比べ前足部足底圧が 53 ∼ 87%減少したこ 36). 。また,足部の完全免荷が必要な. ソール加工ではロッカーソールが用いられる。Uccioli. とを報告している. らはインソールとロッカーソールを組み合わせたフット. 場合も,膝立位での荷重が可能なデバイスを用いた免荷. ウェアの着用により 1 年後の潰瘍再発率が減少したこと. 歩行練習が積極的に行われている(図 4)。Mueller らは. 34). 。足底圧においても,ロッカーソー. 健常者および糖尿病患者を対象に歩行時の前遊脚期から. ル着用により前足部最大足底圧および積算圧が 13 ∼. 遊脚初期にかけて股関節屈曲を強め,足関節底屈を抑制. を報告している 24%減少する. 35). 。糖尿病足病変に関する国際ワーキン. ググループのガイダンス. 1). においても,潰瘍再発予防. した歩行の off-loading 効果を調査しており,通常の歩 行パターンと比較し,前足部最大足底圧が 27%減少し, 37). 。こ. のためにフットウェアの使用が推奨されており,足底圧. 歩行速度は減少しなかったことを報告している. 分布測定装置等でフットウェアの免荷状況を確認したう. れらの歩行練習は立脚終期から前遊脚期に生じる足関節.

(7) 糖尿病足病変の重症化予防における理学療法. 377. 底屈を消失させることで前足部足底圧を減少させる歩行. ながら,積極的な身体活動量の増加を目指すことが可能. パターンである。免荷歩行練習では立脚終期から前遊脚. であると考えられる。. 期に着目し,前足部足底圧を減少させる歩行戦略を選択 することが重要である。一方で,発症・再発予防期にお. おわりに. いては,歩行形態を著しく制限する免荷歩行は,生活.  現在,創傷治療は専門の医療機関を中心として行われ. 上,困難であるため杖などの歩行補助具と装具療法によ. ており,その成果は大きい。しかし,今後,増加の一途. る off-loading が中心となる。. を辿るであろう下肢慢性創傷患者の治療は,これらの医 療機関のみでは対処しきれない。専門の医療機関での急. 4.身体機能への介入. 性期治療後に回復期リハビリテーション病院や在宅にお. 1)筋力,バランス能力への介入. いて創傷患者を継続的に管理する体制をつくることが求.  DM foot 症例は,創傷治療期において廃用症候群に. められている。これらの領域の理学療法士に対して,下. よる筋力低下が発生する。さらに,糖尿病神経障害に. 肢慢性創傷の理学療法を啓発することが喫緊の課題であ. よる筋力低下が加わる。2 型糖尿病患者を対象とした研. る。一方で,理学療法の場面では,創傷を合併している,. 究. 38). では,下肢を中心とした筋力低下が認められ,1. 型糖尿病患者を対象とした研究. 39). では足関節背屈筋力. もしくはリスクをもった症例に比較的多くの理学療法士 がかかわっている。再発予防・発症予防の観点からは,. では 41%の低下が認められた。糖尿病神経障害はバラ. これらの理学療法士が適切に評価・介入を行えるように. ンス障害も引き起こす。重心動揺計を用いた検証で,外. なれば,大切断予防に大きく貢献できると考えている。. 40). 理学療法のエビデンスを構築することに加えて,多くの. では,10 秒以上の片脚立位が可. 理学療法士に向けた教育・啓発活動を展開することが重. 周面積が著明に拡大していることが示されている Goldberg らの報告. 41). 。. 能であった症例は 39%のみであった。さらに,timed up and go test では,糖尿病神経障害の重症度と相関が みられた(r = 0.71) 。これらの筋力低下やバランス障害 に対しては,理学療法が有効である。Allet らの報告. 42). では,週 2 回の理学療法により,6 ヵ月後の股関節・足 関節筋力,静的・動的バランス,歩行スピードが改善さ れたとされている。これらの効果は,創傷の存在しない 症例に対する効果であり,創傷治療期の症例に対する効 果に関しては,検証が不十分である。 2)身体活動量への介入  創傷治療期においては,off-loading に対する介入を十 分に行ったうえで,身体活動量を増加させるべきであ る。松本らの報告. 43). によれば,下肢慢性創傷の治療を. 目的として入院した症例に対する TCC を用いた介入に より,75%の歩行維持が得られ,かつ,ADL も維持さ れた。身体活動量の改善は不明であるが,off-loading を 十分に達成した状況での介入は,歩行能力や ADL を維 持するだけの身体活動量を担保することができたと推測 できる。一方で,発症・再発予防期では,より積極的 な身体活動量に対する介入が可能である。Armstrong らの報告. 44). では,歩行量の増加が潰瘍形成に影響を及. ぼしていないとされている。LeMaster ら. 45). は,DM. foot リスクをもつ症例を対象として,十分な off-loading が達成された装具を提供したうえで,運動介入によるラ ンダム化比較試験を実施した。その結果,介入群では, 一年後の一日平均歩数,週間歩行時間が保たれたが,対 照群では有意に低下したことを報告した。さらに,2 群 間では創傷発生に差がみられなかった。したがって,発 症・再発予防期では,off-loading への十分な配慮を行い. 要であると考えている。 文  献 1)International working group on the diabetic foot (IWGDF): Guidance 2015. http://www.d-foot.org/d-foot/guidance/ (2019 年 6 月 20 日引用) 2)日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン 2016.日本糖 尿病学会(編),南江堂,東京,2016,pp. 239‒261. 3)  依子,寺師浩人,他:重症下肢虚血患者における下肢 切断レベルによる歩行機能への影響.日形会誌.2010; 30: 670‒677. 4)高橋拓斗,河辺信秀,他:下肢慢性創傷入院患者の切断部 位と歩行・階段昇降能力維持率の関係.日本下肢救済・足 病学会誌.2019; 11: 78. 5)Bus SA, Maas M, et al.: Elevated plantar pressures in neuropathic diabetic patients with claw/hammer toe deformity. J Biomech. 2005; 38: 1918‒1925. 6)Boyko EJ, Ahroni JH, et al.: A prospective study of risk factors for diabetic foot ulcer. The Seattle Diabetic Foot Study. Diabetes care. 1999; 22: 1036‒1042. 7)河辺信秀,田伏友彦,他:糖尿病足病変における関節可動 域制限及び Claw toe が歩行時足底圧に及ぼす影響.日本 下肢救済・足病学会誌.2015; 7: 59‒64. 8)Martínez-Nova A, S nchez-Rodríguez R, et al.: Plantar pressures determinants in mild Hallux Valgus. Gait & Posture. 2010; 32: 425‒427. 9)Searle A, Spink MJ, et al.: Association between ankle equinus and plantar pressures in people with diabetes. A systematic review and meta-analysis. Clinical Biomechanics. 2017; 43: 8‒14. 10)Leese G, Schofield C, et al.: Scottish foot ulcer risk score predicts foot ulcer healing in a regional specialist foot clinic. Diabetes care. 2007; 30: 2064‒2069. 11)Lavery LA, Lawrence A, et al.: Ankle equinus deformity and its relationship to high plantar pressure in a large population with diabetes mellitus. J Am Podiatr Med Assoc. 2002; 92: 479‒482. 12)河辺信秀,廣瀬典子:健常者における足関節背屈制限が歩.

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