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日本感性工学会論文誌

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Academic year: 2021

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(1)

1.

緒 言 ファッション産業は,毎年多様なアイテムやデザインが氾 濫し,ブランド間の競争も激しい状況である.このような現 実で最も重視されることは,消費者の感性と情緒である.そ こでファッションアイテムが追求するイメージとそのイメー ジに相応する消費者の感性を即時把握し,対応することが重 要といえる.また,衣服は単に着るものではなく,ファッショ ンイメージを表現し,個性を表出し,自分を表す一部になっ ており,衣服の視覚的イメージ効果の重要性は今後さらに強 調されていくと考えられる.そのため,消費者の感性を用い る多様な研究が必要である. 衣服イメージに関する先行研究を調査してみると,渡辺 ら[

1

]は,服装イメージとデザインとの関連について研究 し,服装のイメージを構成する

5

因子を抽出した.藤井[

2

] は,パンツシルエットが着装評価に及ぼす影響について研究 した.吉岡は,図柄のイメージを決定づけるのは「縞の太さ」 と「色」であり[

3

],同一図柄のサンプルで洋服と和服にお ける縞柄イメージは,同一縞柄にも関わらず洋服と和服では 衣服イメージが異なっていることを報告している[

4

]. 一方,小管ら[

5

],高森[

6

],杉浦ら[

7

]は,縞柄の間隔, 方向,色収差を用いて衣服のイメージに及ぼす影響について 考察しているが,実験に用いられた試料は色紙の平面図形で 呈示されたものであるため実際衣服から感じる立体感が排除 されており,布で製作して実物を用いた試料は同じ長さのワ ンピースで,バリエーションの範囲が少ないため既存研究よ り多様な考察ができてない.また,これまでの衣服イメージ や印象に関する研究は,対象とする年齢層の範囲がいずれも

20

歳代前半に限定されていた. そこで本稿では,

10

歳代から

50

歳代までの女性

150

人を パネルとし,衣服イメージや印象を分析する.そのための試 料として,プリーツ数とスカート丈の条件による造形的シル エットやイメージに影響を及ぼすアイテムであるプリーツス カートを用いる.具体的には,プリーツ数,スカート丈を要 因として年齢層別プリーツスカートの嗜好度及び相互作用を 把握し,年齢層別に好きなプリーツ数とスカート丈を提示す る.また,二元配置による分散分析によりプリーツ数の変化 による年齢層別プリーツスカートイメージの差を検討し,プ リーツ数及びスカート丈による変化がプリーツスカートの視 覚的イメージ評価用語に及ぼす関連性並びに相互作用を分析 する.各年齢層別に嗜好するプリーツ数とスカート丈のデー タを用いて主成分分析を行い,

10

歳代から

50

歳代までの人々 が認識しているプリーツスカートの視覚的イメージを明らか

プリーツ数とスカート丈の変化が

年齢層別プリーツスカートの視覚的イメージに及ぼす影響

李 正和*,丸田 直美**,廣川 妙子***

*文化学園大学大学院‚ **共立女子大学‚ ***文化学園大学

The Effect of Pleat Number and Skirt Length on the Visual Image

of a Pleated Skirt by the Age Group

Junghwa LEE*, Naomi MARUTA** and Taeko HIROKAWA***

* Bunka Gakuen University, 3-22-1 Yoyogi, Shibuya-ku, Tokyo 151-8523, Japan

** Kyoritsu Women’s University, 2-2-1 Hitotsubashi, Sendaida-ku, Tokyo 101-8437, Japan *** Bunka Gakuen University, 3-22-1 Yoyogi, Shibuya-ku, Tokyo 151-8523, Japan

Abstract : For the purpose of providing information for the apparel field, the effects of changing the pleat number and skirt length

on the visual image of 30 types of pleated skirts by age group were analyzed. The major results are as follows. Changes in the pleat number and skirt length were strongly related to the visual image of pleated skirts; the more pleats there are, the more complicated, dressy and feminine they look, while the fewer pleats there are, the more calm and plain they are regarded. In addition, it was revealed that the shorter the skirts are, the more casual, childlike and simple they look, while the longer they are, the more formal, heavy, mature and luxurious they appeared. Image changes were much more significant for the skirt length than they were for the number of pleats, while for age groups, the number of pleats accounted for much larger differences in visual image than the skirt length. In particular, compared to other age groups, there was a significant difference in image scores for subjects aged 10 to 19 for skirts that were uncommon, and for subjects in their 50s for skirts that gave them a sophisticated and charming image. As a result of principal component analysis, it is considered that the 1st principal component analysis (PC1) largely contributes to an element expressing sensitive fashion image based on expression, while PC2 contributes to the age factor based on activity. However, it was revealed that the items which strongly influence the major components are different by age, as are the items which determine the image of pleated skirts.

Keywords : Skirt length, Pleat number, Pleated skirts, Visual image

(2)

398 にすることを目的とする. 本稿の新規性は,

30

種類のプリーツスカートを製作して 試料化し,年齢層別に幅広く着装されているプリーツスカー トを用いて衣服イメージを考察する点にある.これまで衣服 イメージに関する研究はワンピース(ストライプ柄),パン ツ,スカート等を対象として考察されてきたが,プリーツス カートを用いて報告された文献はほとんどみられなく,実際 製作した

30

種類のプリーツスカートをパネルに呈示するこ とで,より正確なイメージ判断ができると考えられる.また, 独創的な点として,認識しているプリーツスカートイメージ を年齢層別に比較している点にある.年齢層別プリーツス カートの嗜好度及びイメージ分析をすることで,アパレル分 野で衣服製作時における年齢層別イメージ設計の資料にな り,アパレルビジネスへの展開が期待される. 本稿は全

4

章で構成されている.第

2

章では,実験方法に ついて述べ,第

3

章では,視覚的効果及び嗜好度,イメージ 評価用語の相関関係,プリーツ数の変化とプリーツスカート イメージの関係,スカート丈の変化とプリーツスカートイ メージの関係,年齢層別プリーツスカートイメージの主成分 分析について述べる.そして第

4

章で本稿をまとめる.

2.

実 験 方 法

2.1

 試 料 プリーツスカートによく使用される素材であるポリエステ ルツイルを用いてワンウェイ(車ひだ)プリーツスカートを 製作した.布地の物性を表

1

に示す.製作したスカートは, プリーツ数が

8

12

16

20

24

28

本の

6

種類,スカート丈が マイクロミニ,ミニ,ナチュラル,ミディ,マクシの

5

種類で, 計

30

種類とした(表

2

).スカート丈は,モデルの人体プロポー ションに合わせて決定した.マイクロミニは臀部の線が見え ない範囲とし,ミニは股下から膝までの

1/2

位置に,ナチュラ ルは膝まで,ミディは膝から外果点間の

1/2

置に,マクシは外 果点までの丈と定めた.スカート丈は,マイクロミニから順 に

35cm

46cm

64cm

80cm

98cm

とした.スカートのサ イズは,モデルのヌードサイズに対し,ウエストで

2.6cm

,ヒッ プで

4.3cm

のゆとり量を入れて製作した.前中心腰丈は

25.1cm

,脇腰丈は

26.1cm

,後ろ中心腰丈を

27.0cm

とした.

2.2

 着装及び撮影

2004

2006

HQL

(人間生活工学研究センター)の

20

歳 代女子の平均サイズに近いモデル

1

人を選出し,評価時に視 線が分散されないように脚形も目立たないモデルを選出し た.モデルの基本人体計測寸法を表

3

に示す.上衣はスカー トと同じ系統色の基本

T-

シャツを着装させ,デジタルカメ ラで撮影した.写真は,下半身のみを用いてモデルのイメー ジが評価に影響を及ぼさないようにし,プリーツ数が同一で

5

種類のスカート丈のスカートを配置した写真

6

グループ(表

2

の赤枠の行),スカート丈が同一で

6

種類のプリーツ数のス カートを配置した写真

5

グループ(表

2

の青枠の列),計

11

グループを作成した.

2.3

 実験時期及び対象 実験は,東京に居住する女性を対象に,

2011

2

月から

4

月にかけて実施した.ファッション専攻教員と学生,ファッ ションに興味がある一般人を含め,

10

歳代,

20

歳代,

30

歳代,

40

歳代,

50

歳代の年齢層別に

30

人ずつ,計

150

人をパネル とした.本稿では

10

歳代から

50

歳代までの

5

年齢層を全年 齢層と表記する.

2.4

 イメージ評価方法 ①視覚的効果と嗜好度:プリーツ数とスカート丈による視 覚的効果や嗜好度を把握するため,同一スカート丈に対して プリーツ数の違いによる体の錯視効果を調査した.また,同 一スカート丈における好きなプリーツ数と,同一プリーツ数 における好きなスカート丈に関する設問をした.パネルは

11

グループの写真を見ながら回答した. ②イメージ評価:

11

グループの写真の中で,全年齢層で よく着られているナチュラルスカート丈を基準に,プリーツ 数が異なるプリーツスカート

6

種類と,

24

本プリーツ数を基 準にスカート丈が異なるプリーツスカート

5

種類に対してイ メージに関する評価を得た.回答者の疲労度などを考慮し, 正確な判断を期すためスカートの種類は

11

種類に限定し た.プリーツスカートのイメージを多角的に捉えるために,

7

段階の

SD

法により回答を得た.意味微分尺度は,両側に 反対語をなす形容詞を用い,各尺度は

7

段階尺度を構成し た.例えば,「嫌い−好き」の場合,非常に嫌い(

1

点),か なり嫌い,やや嫌い,どちらでもない(

4

点),やや好き, かなり好き,非常に好き(

7

点)とし,この数値を用いてイメー ジ得点を算出した. 表1 布地の物性 組成 (%) 組織 厚さ (mm) 重さ (g/m2 (デニール)糸番手 (インチ)密度 剛軟度mm ドレープ係数% ポリエステル70 ウール 30 綾織 0.518 304 2/80 118×66 28.7×32.7 49.6 表3 モデルの基本人体計測寸法 No. 項目 寸法 No. 項目 寸法 1 身長 164.3 7 脇腰丈 26.1 2 体重 52.2 8 後ろ中心腰丈 27.0 3 胴囲 66.7 9 WL高 104.7 4 腹囲 82.9 10 殿部後突位高 81.5 5 臀囲 89.0 11 膝蓋中心点高 42.7 6 前中心腰丈 25.1 12 外果点高 4.5 (単位:cm,kg)

(3)
(4)

400

2.5

 イメージ評価用語 官能検査に用いるイメージ評価用語は,衣服官能検査にお いて通常よく使われる官能表現のうち,プリーツスカートの イメージに関する個人の嗜好度の把握と視覚的評価をするた めの形容詞的イメージ表現の

23

項目を選別した.評価用語 は後掲表

6

の通りである.

2.6

 分析方法

23

対の形容詞を用いて回答を得たデータを得点化して平 均値を計算し,相関分析を行い,イメージ評価用語の関連性 を分析した.

SD

法による各サンプルの尺度値を基に,二元 配置分散分析,プリーツ数とスカート丈による年齢層別主成 分分析を行い,全年齢層別に保持しているプリーツスカート イメージを把握し,相互作用の効果を比較分析した.

3.

結果および考察

3.1

 視覚的効果及び嗜好度 同一プリーツ丈におけるプリーツ数の変化による全年齢層 の視覚的効果は,体の太さに関しては,同一スカート丈にお いてプリーツ幅が最も広い

8

本プリーツは,

39.8%

のパネル が 最 も 太 く 見 え る と 回 答 し た. 次 に

12

本 プ リ ー ツ は,

15.0%

のパネルが太く見えると判断した.これはプリーツ幅 が広い場合,視覚的に視線を横方向に誘引することから面積 を広く感じさせ,体が太く見えると判断したと考えられた. 長さに関しては,同一スカート丈においてプリーツ幅が最も 狭い

28

本プリーツスカートは

39.5%

のパネルが最も長く見 えると回答し,次いで

8

本プリーツスカートは,

29.4%

のパ ネルから長く見えるという結果を得られた.これはプリーツ 幅が狭いと縦方向に長さが強調されてスカート丈が長く見え ると判断したと同時に,プリーツ幅が広いことにより全体の 面積を広く感じて丈も長く見えると判断したのではないかと 考えられた.この結果から,プリーツ幅が狭いか広いかによっ て,スカート全体の太さや長さという視覚的イメージに影響 を及ぼすことが明らかになった. 同一スカート丈におけるプリーツ数の変化の年齢層別嗜好 度を表

4

に示した.これより,年齢層別に嗜好度の高いプリー ツ数は,一定の傾向はみられず様々であったが,プリーツ幅 が最も狭い

28

本プリーツスカートは全年齢層で選ばれな かった.プリーツ幅が最も広い

8

本プリーツスカートは,

40

歳代と

50

歳代に好まれていた. 同一プリーツ数におけるスカート丈の変化の年齢層別嗜好 度(表

5

)については,

10

歳代はどのプリーツ数においても ミニスカートを好む傾向にあり,

20

歳代はナチュラルスカー トを好む傾向がみられた.

30

歳代はナチュラルスカートを 好む傾向もみられたが,全体的にミニスカートを好む傾向が 強く示された.

30

歳代は若年と中年の間で,年齢より若く みせようとする心理やトレンドを受け入れようとする傾向が あると考えられた.

40

歳代はプリーツ数に関わらずナチュ ラルスカートを好む傾向があり,

50

歳代はミディスカート を好む傾向もあったが,全体的にナチュラルスカートを好む 傾向が強いことが確認された.

40

歳代以上は,社会的に年 齢の制約を受けていると思われ,膝の長さを超える丈を嗜好 する結果が得られた. 表4 スカート丈に関する年齢層別嗜好度の高いプリーツ数 年齢層 スカート丈 10歳代 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 マイクロミニ 24 12 12 16 8 ミニ 20 12 20 12 20 ナチュラル 16 16 16 16 8・16 ミディ 16 16 24 8・24 20 マクシ 20 20 12 8・20 24 (単位:プリーツ数) 表5 プリーツ数に関する年齢層別嗜好度の高いスカート丈

(5)

以上の結果より,プリーツ数の好みはスカート丈に影響を 受ける可能性もあり,一定の傾向は見られなかったが,スカー ト丈の好みは,プリーツ数に関わらず年齢層別に嗜好度があ ることが明らかになった.

3.2

 イメージ評価用語の相関関係 プリーツスカートのイメージを評価できる用語

23

対,即 ち

46

個の評価用語間の関係を分析した.嗜好との関係が深 い「好き−嫌い」と相関がある項目を調べた結果,同一プリー ツ数でスカート丈が変化する

6

グループの写真を使った場 合,

20

40

歳代において,「好き−嫌い」と「魅力的でな い−魅力的な」「センスのない−センスのある」とは

0.6

以 上の相関係数を示した.

10

歳代,

50

歳代においては高い相 関は得られなかった.一方,同一スカート丈でプリーツ数が 変化する

5

グループの写真の場合,

40

歳代と

50

歳代では上 記のイメージ以外に「野暮な−洗練な」「セクシーでない− セクシーな」の項目が得られた.これより,プリーツ数とス カート丈の変化によるプリーツスカートの視覚的イメージに おいて,「好き−嫌い」を判断する重要項目は,「魅力的でな い−魅力的な」「センスのない−センスのある」が挙がり, 年齢層別に大きな差はないことが判明した.

3.3

 プリーツ数の変化とプリーツスカートイメージの関係 プリーツ数の変化による年齢層別プリーツスカートイ メージの差を検討するため,プリーツ数と年齢層を要因と して二元配置による分散分析を行った(表

6

).プリーツ数 の変化によるイメージに有意差(

p<0.05

)が得られたのは

16

項目,年齢層間に有意差(

p<0.05

)が得られたのが

16

項 目であった. 図

1

にプリーツ数の変化による年齢層別プリーツスカート のイメージをグラフに示した.同一スカート丈でプリーツ数 に変化を与えた場合の全体的なプリーツスカートのイメージ は,落ち着いて女性らしいイメージで,セクシーでなく高級 なスカートのイメージであることが分かった.プリーツ数別 には,

8

本プリーツにおいて他のプリーツに比べて有意 (

p<0.01

)に「保守的な」「落ち着いた」「単純な」「太い」 と判断され,年齢層が低ければ低い程「魅力的でない」と判 断する結果が得られた.これに対して

28

本プリーツは,他 のプリーツと比較して有意(

p<0.05

)に「非大衆的な」「ドレッ シィな」「贅沢な」「派手な」「複雑な」「個性的な」イメージ と判断され,年齢層が高ければ高い程「センスのある」と判 断する傾向が見られた. 年齢層別には,

10

歳代は他の年齢層に比べてどのプリーツ においても有意(

p<0.05

)に「非大衆的な」「嫌い」イメー ジと判断した.また,

50

歳代は「洗練な」「魅力的な」「セン スのある」イメージと判断してその他の年齢層全てと有意差 (

p<0.05

)が得られた.特に,「フォーマルな−カジュアルな」 の項目では,

10

歳代はプリーツ数が少ない方がよりフォーマ ルなイメージと回答したが,

50

歳代はプリーツ数が多い方が よりフォーマルなイメージと回答し,逆の結果が見られた. また,「硬い−柔らかい」の項目では,

20

歳代はプリーツ数 が少ない方がより柔らかいと判断したが,

40

歳代はプリー ツ数が多い方がより柔らかいと判断し,

20

歳代と

40

歳代と 反対の結果であることが明らかになった. 図

2

は,全年齢層でプリーツの幅が狭くなるに従ってイ メージ得点が大きくなる,又は小さくなる項目である.値 は全年齢層の平均値で示した.得られた項目は,「落ち着い た−華やいだ」「ドレッシィな−スポーティな」「地味な− 表6 プリーツスカートのイメージの分散分析結果

(6)

402 派手な」「単純な−複雑な」「男っぽい−女っぽい」「太い− 細い」であった.プリーツ数が少なければ少ない程「単純な」 「太い」のイメージで,より「落ち着いた」「地味な」イメー ジの傾向が得られた.プリーツ数が多ければ多い程「複雑 な」「細い」のイメージで,より「女っぽい」「ドレッシィな」 イメージを表す傾向が見られた.即ち,プリーツ数はプリー ツスカートのイメージを変化させ,プリーツ数の変化によっ て年齢層別に認識するイメージにも差があることが明らか になった.

3.4

 スカート丈の変化とプリーツスカートイメージの関係 スカート丈の変化による年齢層別プリーツスカートイ メージの差を検討するため,スカート丈と年齢層を要因と して二元配置による分散分析を行った(表

6

).スカート丈 の変化によるイメージに有意差(

p<0.05

)が得られたのは

22

項目,年齢層間に有意差(

p<0.05

)が得られた項目は

5

項目であった. 図

3

にスカートの変化による年齢層別プリーツスカート のイメージをグラフに示した.全年齢層でプリーツ数の変 化によるイメージの差より,スカート丈の変化によるイメー ジの差の方が大きいことが明らかになった.スカート丈別 には,最も短いマイクロミニが他のスカート丈に比べて一 番多い項目数で有意差が得られた.特に,有意差(

p<0.01

) が表れた評価項目は,「進歩的な」「華やいだ」「カジュアル な」「子供っぽい」「低級な」「スポーディな」「派手な」「不 安定な」であった.これに対して最も長いマクシは,他の プリーツ丈と比較して有意(

p<0.05

)に「非大衆的な」「贅 沢な」「複雑な」「細い」「個性的な」イメージと判断された. また,「自然な−人工的な」の項目において,ミニとナチュ ラルは,「自然な」イメージを表し,マイクロミニ,ミディ, マクシは「人工的な」イメージを表す結果が得られた.「地 味な−派手な」の場合は,どの年齢層においてもマイクロ ミニが最も派手で,ミディが最も地味であるという意見が 示された. 年齢層別には,

50

歳代が他の年齢層に比べて一番多い項 目で有意差が得られた.特に,どのスカート丈においても有 図1 プリーツ数の変化によるプリーツスカートの視覚的イメージ 図2 プリーツ数とプリーツスカートイメージの関係

(7)

意(

p<0.05

)に「古典的な」「洗練な」イメージと判断した. 「セクシーでない−セクシーな」の項目では,

50

歳代はマ クシが最もセクシーなイメージと判断したが,その他の年齢 層ではマイクロミニが最もセクシーであると判断し,逆のイ メージが得られた.「硬い−柔らかい」の項目でも,

50

歳代 はスカート丈が長い方が柔らかいイメージと判断したが,

10

歳代はスカート丈が短い方が柔らかいイメージと判断し た.「平凡な−個性的な」の項目では,

50

歳代はマクシが個 性的なイメージと判断したが,

10

歳代はマイクロミニが個 性的なイメージと判断したことが明らかになった. 年齢層順で変化が表れた評価項目を見ると,ミニの場合は 年齢層が低ければ低い程,より「単純な」「安定的な」と認 識し,ナチュラルの場合は年齢層が高ければ高い程「好き」 「柔らかい」と認識することが分かった.マクシの場合は, 年齢層が高ければ高い程「高級な」「ドレッシィな」「洗練な」 と判断した. 図

4

は,スカートが長くなるに伴いイメージ得点が大きく なる,又は小さくなる項目である.値は全年齢層の平均値で 示した.得られた項目は,「フォーマルな−カジュアルな」 「重々しい−軽快な」「大人っぽい−子供っぽい」「低級な− 高級な」「ドレッシィな−スポーティな」「単純な−複雑な」 であった.スカート丈が短ければ短い程「カジュアルな」「軽 快な」「子供っぽい」「低級な」「スポーティな」「単純な」イ メージの傾向があり,スカート丈が長ければ長い程「フォー マルな」「重々しい」「大人っぽい」「高級な」「ドレッシィな」 「複雑な」イメージに判断することが示された. 以上の結果から,スカート丈はプリーツスカートのイメー ジを大きく変化させることが明らかになった.また,スカー ト丈の変化によって年齢層別に認識するイメージは差が少な いものの,年齢差が大きいために全く逆のイメージで判断さ れる場合も見られることが明らかになった.

3.5

 年齢層別プリーツスカートイメージの主成分分析 年齢層別にプリーツ数とスカート丈には好みがあり,プ リーツスカートイメージに関する認識が異なることが明らか 図3 スカート丈の変化によるプリーツスカートの視覚的イメージ 図4 スカート丈とプリーツスカートイメージの関係

(8)

404 になったことより,各年齢層別に嗜好するプリーツ数とス カート丈のデータを用いて主成分分析を行った.分析項目は プリーツスカートイメージを評価する

23

項目中,年齢層別 に項目間の相関係数が低い項目を削除し,

16

項目とした. 表

7

に各主成分の因子負荷量,固有値,寄与率,及び累積寄 与率を示した.第

3

主成分までで全体の

6

割以上が説明可能 であることから,これら

3

主成分を用いて年齢層別にプリー ツスカートイメージを解釈することにした. 全年齢層において第

3

主成分までの累積寄与率は

64.5

72.1%

であった.各主成分の因子負荷量が大きい項目は,年 齢層によって少しずつ異なっているが,大きく捉えると,第

1

主成分の場合は全年齢層に表れた項目が「魅力的な−魅力 的でない」「センスのある−センスのない」「女っぽい−男っ ぽい」「現代的な−古典的な」「好き−嫌い」であり,魅力と センスの値が高かったことから,表現性を中心にした感覚的 なファッションイメージを示す成分と解釈した. 第

1

主成分は,第

2

主成分と第

3

主成分に比べて年齢層別 に共通の評価項目が多く見られたが,負荷量が高い項目や項 目数には差が見られた.例えば,

10

歳代には「柔らかい− 硬い」の項目が

0.6

以上の負荷量で第

1

主成分に表れたが, 他の年齢層には低い値であることが分かった.

20

歳代は, 評価項目には他の年齢層と差が見られなかったが,負荷量が 高い項目が全て負の領域に位置していることが明らかになっ た.

30

歳代は,第

1

主成分に一番多い項目が含まれ,第

3

主 成分まで

0.6

以上の項目が最も多い年齢層であった.

40

歳代 は,他の年齢層と異なり「洗練な−野暮な」のイメージが第

1

主成分に得られなかった.

10

40

歳代では第

1

主成分に「セ クシー−セクシーでない」の項目が得られたが,

50

歳代の み第

3

主成分に表れた. 第

2

主成分では,

10

歳代以外の年齢層に「子供っぽい− 大人っぽい」の項目が得られ,「華やいだ−落ち着いた」「カ ジュアルな−フォーマルな」「スポーティな−ドレッシィ な」の項目が見られたことから,活動性を中心にした年齢 的な要素をもつイメージを示す成分と解釈した.

10

歳代に は「軽快な−重々しい」の項目が

0.6

以上の負荷量で第

2

主 成分に表れたが,他の年齢層には低い値であることが分かっ た.

20

歳代は「子供っぽい−大人っぽい」「スポーティな− ドレッシィな」の値が負の方向に高い負荷量を示し,

40

歳 代も第

2

主成分に高く表れた全項目が負の領域に位置した ことが分かった.

50

歳代も負の方向に高い負荷量を示し, 他の年齢層と違って「派手な−地味な」の項目が第

2

主成 分に得られた. 第

3

主成分は,全年齢層で一つの項目が得られ,「個性的 な−平凡な」の評価項目が最も多く表れたことから,個性を 表す成分と解釈した.

30

歳代は「自然な−人工的な」の値 が負の方向に高い負荷量を示した.第

3

主成分までで正の領 域に高い負荷量を示した年齢層は

10

歳代であり,負の領域 に高い負荷量を示した年齢層は

20

歳代であることが明らか になった. 年齢層別の第

1

主成分と第

2

主成分の因子負荷量の散布図 中,評価項目が最もばらついた

20

歳代と最も集中した

30

歳 代を図

5

,図

6

に示した.第

1

主成分である「表現性」の成 分を横軸に,第

2

主成分である「活動性」の成分を縦軸と してイメージ空間における因子負荷量の各評価項目を示し た.ただし,軸に対しての位置づけでこの結果は原点を

0

として表現しているため,+,−には解析上の意味はない.

20

歳代は,第

3

主成分まで含まれた因子負荷量が

0.6

以上の 項目が最も少なく,評価項目間の位置が最も分散されてい ることが分かった.即ち,

20

歳代はファッショントレンド に最も関心があり,個性が強い年齢層のため,プリーツス カートに関するイメージにも多様な意見が得られたと考え られる.これに対して

30

歳代は,第

1

主成分に

0.8

以上の 負荷量を示す項目が

5

項目もあり,第

1

主成分で

46.2%

のイ メージ表現ができることから,年齢層中最も横軸に集中し ていることが明らかになった.即ち,

30

歳代は

20

歳代に比 べてプリーツスカートに関するイメージの因子負荷量の値 が高い項目が多いにも関わらず,比較的に同じイメージで 判断すると考えられた. 表7 評価項目別の因子負荷量

(9)

7

は,全年齢層におけるプリーツスカートイメージの平 均値の位置を主成分分析の手法を用いて便宜的に散布図に示 したものである.座標位置を見ると,年齢層別にプリーツス カートを判断する主要なイメージは異なることが分かり,散 布図の位置は年齢層別に認知しているプリーツスカートのイ メージが予想できる.表現性と解釈した第

1

主成分の軸を基 に,

20

歳代はプリーツスカートをセンスや魅力がないイメー ジと判断し,

50

歳代は自然で洗練されたイメージと判断し, 逆の位置に表出された.これに対して,活動性と解釈した第

2

主成分の軸は,

10

歳代と

30

歳代が

40

歳代と逆の位置に示 された.

10

歳代と

30

歳代はカジュアルでスポーディなイメー ジと判断し,

40

歳代はフォーマルでドレッシィなイメージ と判断することが分かった. 本研究の結果は,アパレル企業においてこれからのプリー ツスカートのデザイン企画の情報になると判断される.特に

20

歳は,因子負荷量の結果で第

3

主成分までの全項目が負の 方向に負荷した結果が得られ,

20

歳代が認知しているプリー ツスカートイメージが

20

歳代の衣服アイテムイメージとは 一致していないと判断される.これは,これからのプリーツ スカートイメージを変化させる必要があり,

20

歳代をター ゲットとするプリーツスカートのデザインにはより新しい多 様な変化が要求されていると考えられる.

4.

結 語 年齢層別プリーツスカートの視覚的イメージに関する分析 をするため,プリーツ数とスカート丈の変化を用いて相互間 の関連性を検討した.その結果は次の通りである.

1

)プリーツ数の変化は,プリーツスカートの視覚的イメー ジと強い関係が見られ,プリーツ数が多ければ多い程「複雑 な」より「ドレッシィな」「女っぽい」等のイメージと,プリー ツ数が少なければ少ない程,より「落ち着いた」「地味な」 等のイメージと評価された.

2

)スカート丈の変化は,プリーツスカートの視覚的イメー ジと関連が非常に深く,スカート丈が短ければ短い程「カジュ アルな」「子供っぽい」「単純な」等のイメージと,長ければ 長い程「フォーマルな」「重々しい」「大人っぽい」「高級な」 等のイメージと評価された.

3

)プリーツスカートのイメージの変化は,イメージ得点と しては,プリーツ数よりスカート丈の変化の方がより大きく 影響を及ぼしていることが分かったが,年齢層別にはスカー ト丈よりプリーツ数の変化の方が多くのイメージ項目で有意 差が得られた.

4

)年齢層別にプリーツスカートを判断する主な評価イメー ジ項目は,年齢層別に多様であったが,各年齢層とも第

1

主 成分の項目らは,表現性を中心にした感覚的なファッション イメージを表す要素が大きく寄与し,第

2

主成分は,活動性 図5 20歳代のプリーツスカートイメージ評価用語の 因子負荷量による位置 図6 30歳代のプリーツスカートイメージ評価用語の 因子負荷量による位置 図7 全年齢層の平均的なプリーツスカートイメージの位置

(10)

406 を中心にした年齢的な要素が寄与し,第

3

主成分は,個性的 な要素が寄与していると考えられた. 以上,プリーツスカートに関する嗜好度とイメージは年齢 層別に差が得られ,プリーツ数とスカート丈の変化に従って プリーツスカートイメージが異なってくることを把握した. そして,年齢層別にプリーツスカートを判断する主要なイ メージを分析し,商品イメージと消費者に符合するプリーツ スカートのデザインが可能な基礎資料及び方法を提示するこ とができた. 今後は,年齢層別に好むスカート丈とプリーツ数の範囲 で,素材や色の傾向について研究を積み重ねていく必要があ ると考える.さらに,ファッション産業やデザイン設計に おける基礎情報提供のため,本研究を基にプリーツスカート 以外のアイテムについても研究を進めて行きたいと考える. 参 考 文 献 [1]渡辺澄子,川本栄子,中川早苗:服装におけるイメージと デザインとの関連について(第1報)イメージを構成する 主要因子とデザインとの関連,日本家政学会誌,42,5, pp.459-466,1991. [2]藤井一枝:パンツシルエットが着装評価に及ぼす影響,日 本繊維機械学会誌,52,11,pp.255-262,1999. [3]吉岡 徹:被服における図柄のイメージ(第1報)和服に おける縞柄と色彩のイメージ計量,日本家政学会誌,36, 10,pp.793-802,1985. [4]吉岡 徹:被服における図柄のイメージ(第2報)和服に おける縞柄と色彩のイメージ計量,日本家政学会誌,37, 12,pp.1077-1084,1986. [5]小菅啓子,小林茂雄:ストライプ柄のイメージに関する基 礎的考察,日本繊維製品消費科学誌,31,1,pp.38-45, 1990. [6]高森 壽:縞柄衣服のみかけの長さと印象,日本家政学会 誌,45,1,pp.47-53,1994. [7]杉浦愛子,渡邊友里子,伊藤きよ子,木本晴夫,森俊夫, 日下部信幸:視覚特性がストライプ柄ワンピースドレスの イメージに及ぼす影響,日本繊維製品消費科学誌,52,4, pp.241-248,2011.

[8] Myung-Hee Lee: A Judgment on Gathered Skirt s Shape by Visual Image, J. Kor. Soc. Cloth. Ind., 12, 2, pp.214-218, 2010. [9]日本官能評価学会:官能評価士テキスト建帛社,2009. [10]岩下豊彦:SD法によるイメージの測定,川島書,1983. [11]人間生活工学研究センター:日本人の人体寸法データブッ ク2004-2006,2008. 李 正和(学生会員) 2000年 韓国慶星大学衣装学科卒業,2007年 梨花女子大学デザイン大学院衣装デザイン専 攻デザイン修士取得,現在,文化学園大学大 学院生活環境学研究科被服環境学専攻博士後 期課程在学.この間,韓国でファッションデ ザイナーとして活躍し,体形別プリーツスカート設計方法,プ リーツスカートイメージ変化,自動設計プリーツスカートプロ グラム開発に関わる被服造形学などの研究に従事. 丸田 直美(非会員) 1981年 奈良女子大学家政学部被服学科卒業, 2005年 文化女子大学大学院生活環境学研究 科博士後期課程被服環境学専攻卒業,現在, 共立女子大学家政学部教授.博士(被服環境 学).この間,被服衛生学,被服造形学に関 する研究分野で,着衣量の季節変化,快適着衣量,衣服圧,福祉 に関わる衣服などの研究に従事. 廣川 妙子(正会員) 1970年 文化女子大学家政学部卒業,現在, 文化学園大学教授.1992年HQLの人体計測 調査で関東地区計測責任者.2003∼2006年 「高齢者・障害者配慮生活用品標準化研究委員 会」のアパレルWGの副委員長,2007年3月 に「高齢者配慮設計指針−衣料品−ボタンの形状及び使用法」 が日本工業規格に制定.三次元計測装置を用いて,パターン設 計因子と運動機能性及び着用感に関する研究に従事.日本感性 工学会理事,2007∼2011年 日本繊維製品消費科学会理事・現 在評議員.

表 2  プリーツスカートのサンプル
図 7 は,全年齢層におけるプリーツスカートイメージの平 均値の位置を主成分分析の手法を用いて便宜的に散布図に示 したものである.座標位置を見ると,年齢層別にプリーツス カートを判断する主要なイメージは異なることが分かり,散 布図の位置は年齢層別に認知しているプリーツスカートのイ メージが予想できる.表現性と解釈した第 1 主成分の軸を基 に, 20 歳代はプリーツスカートをセンスや魅力がないイメー ジと判断し, 50 歳代は自然で洗練されたイメージと判断し, 逆の位置に表出された.これに対して,活動性と解

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