DM広告の現状と今後の課題
~広告費統計資料、予測データ、広告動態調査からの一考察~
井上 東二郎
本稿では、前々回、前回のレポートに引き続き、2015 年のダイレクトメール(DM)を含めた国内 広告市場の動向について、代表的な広告費統計資料である電通の「日本の広告費」と経済産業省の「特 定サービス産業動態統計調査」(広告業)のデータを使って分析する。また、日経広告研究所の「広告 費予測」のデータをもとに、今後の国内広告費のゆくえを見ていく。この予測は日経広告研究所と日 本経済研究センターが共同開発したモデルを使い、経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」 の広告業売上高をベースに、同センターが予測する財務省の「法人企業統計季報」の経常利益増減率 と名目GDP 増減率を加味し、同センターの短期経済予測も反映させている。 さらに今回は、日経広告研究所の「広告動態調査」の調査データを用いて、有力企業の宣伝担当者 がDM を含めた各種広告メディアをどう評価をしているのかも探っていく。この調査では、各企業が 宣伝活動に投じる費用の規模やその使い道、実際の活動や考え方など多岐に渡る質問を設定、幅広い 業種から回答を得ており、広告主企業の最新の宣伝活動を知る手立てとして参考になる。 最後のまとめとして、これらのデータを踏まえ、最近のデジタル技術の急速な進展によってメディ アの環境が激変する中でのDM 広告の現状を捉えるとともに、今後の課題について述べていきたい。 1 電通の「日本の広告費」から推定する DM 広告市場 (1)2015 年の国内総広告費は 4 年連続の増加 電通が16 年 2 月に発表した「2015 日本の広告費」によれば、15 年の国内総広告費は 6 兆 1,710 億円。4 年連続で前年実績を超えたが、伸び率は前年の 2.9%を下回る 0.3%の微増に止まった。 電通の「日本の広告費」は、1 年間(1 月~12 月)に使われた国内広告費をマスコミ 4 媒体(14 年から衛星メディア関連を含めた)、インターネット、プロモーションメディアの広告媒体料金と広告 制作費について、媒体社や広告制作会社の協力を得て毎年推定している。継続性を重視し、分野ごと の推定範囲を明示しているのも特徴である。 15 年の国内総広告費は、企業業績の伸長やミラノ万博の開催などがプラス要因となったものの、前 年4 月の消費税増税前の駆け込み需要や 2 月のロシア・ソチでの冬季オリンピック、6 月の FIFA ワ ールドカップブラジル大会開催に伴う反動減、中国など海外経済の減速、個人消費の伸び悩みなどが 影響し、年間では前年比0.3%増となった。 媒体別では、マスコミ4 媒体が 2 兆 8,699 億円(前年比 2.4%減)、インターネットが 1 兆 1,594 億 円(同10.2%増)、プロモーションメディアは 2 兆 1,417 億円(同 0.9%減)となった。マスコミ 4 媒体は新聞6.2%減、雑誌 2.3%減、ラジオ 1.4%減、テレビメディア(14 年から地上波テレビと衛星 メディア関連の合計値)1.2%減で、4 媒体全てがマイナスに転じた。一方、スマートフォン(スマホ) や動画広告、新しいアドテクノロジーを活用した広告が伸長したインターネットは前年に引き続き2 ケタ増を確保、全体を牽引した。プロモーションメディアは、全体では前年を下回った。 媒体別構成比では、マスコミ4 媒体 46.5%(新聞 9.2%、雑誌 4.0%、ラジオ 2.0%、テレビメディ ア31.3%)、インターネット 18.8%、プロモーションメディア 34.7%となり、前年に比べるとインタ ーネットが1.7 ポイント増加したのに対し、マスコミ 4 媒体は 1.3 ポイント、プロモーションメディ アは0.4 ポイント減少した。特に新聞、テレビなどマスコミ 4 媒体の減少が目立つ(図表 1)。 (2)DM 広告費は前年の 2 年ぶりの増加から再び減少へ DM を含めた 8 メディアで構成されるプロモーションメディアは、全体では前年までの 3 年連続の プラスからマイナスに転じた。そのうち、屋外、POP、展示・映像他は 3 年連続の増加となったもの の、交通、DM、フリーペーパー・フリーマガジンがマイナスに転じ、折込は 3 年連続、電話帳は 17年連続の減少となっている。DM は 3,829 億円(前年比 2.4%減)で、2 年ぶりにプラスとなった前年 から再びマイナスに転じた。ただ、媒体構成比は6.2%(同 0.2 ポイント減)を占め、構成比の順位 では、テレビメディア(31.3%)、インターネット(18.8%)、新聞(9.2%)、折込(7.6%)に次ぐ第 5 位につけ、前年と変わらない広告費規模を堅持している(図表 1)。 15 年の DM 広告市場を見ると、全体的には、ネットを軸に広告展開をしていた企業が、DM を積 極的に活用したケースも目立つが、もともとDM を広告の軸にしていた企業が一旦ネットにシフトし たものの、費用対効果の側面から紙メディアであるDM の有効性を再評価し、従来の DM 主体の広 告展開に回帰したケースも多いようだ。ネットで獲得できる顧客層と、そうでない層を明確に区分す る傾向が強まっている。業種別では、E コマース領域で DM を活用するケースが増えている。特にス マホの買い替えや中高年層への普及拡大を図る情報・通信、ネット対応でのサービスを進める金融・ 保険、オムニチャネルの本格化を目指す流通・小売業などでは、DM の活用が着実に増加している。 (図表1)媒体別広告費 出典:電通「2015(平成 27 年)日本の広告費」 2 経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」から推定する折込・DM 広告市場 (1)電通の「日本の広告費」との違い 前回も指摘したが、経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」では、広告業の業務種類(取 扱媒体)をマスコミ4 媒体、屋外、交通、折込み・ダイレクトメール、海外、SP・PR・催事企画、 インターネット、その他の8 業務に分けており、電通の「日本の広告費」における媒体分類と一部異 なっている。経済産業省の調査では、折込とDM を一括りにしたり、海外広告や PR も含めている。 両者の相違点は、経済産業省の調査が広告会社を対象とし、その業務分類を国内広告会社の多くが採 用する売上の取扱種目に依拠しているのに対し、電通の調査は媒体社と広告制作会社を主要な調査対 象としていることに起因すると思われる。媒体分類としては、電通の調査が一般的と言えるだろう。 (2)DM 広告単独の推定 この相違点を踏まえ、同調査の折込とDM を合計した 15 年の「折込み・ダイレクトメール」の売 上高を見ると、1~3 月は前年同期比 4.4%減、4~6 月同 0.9%減、7~9 月同 1.3%減、10~12 月同 0.8%減で推移し、年間では前年比 1.9%減となっている。月別では、4 月、7 月、10 月、12 月の 4 ヶ月は前年比プラス、他の8 ヶ月は同マイナスのまだら模様の結果となっている(図表 2)。
一方、電通の「日本の広告費」では、15 年の折込広 告は前年比4.7%減で 3 年連続のマイナスと推定、日 本新聞折込広告業協会(J-NOA)の「全国新聞折込 出稿状況」(193 拠点のモニターが収集したデータ)で も、15 年の 1 世帯平均の新聞折込枚数は同 3.6%減と 分析する。日本新聞協会によれば、全国の新聞発行部 数は、2000 年の 5,371 万部から 15 年の 4,425 万部へ と16 年間で 900 万部以上減少している。この推移を 見ても、15 年の折込広告の減少幅は妥当な推定値と言 えるだろう。 折込とダイレクトメール(DM)を合計した経済産 業省の「特定サービス産業動態統計調査」(広告業)に おいてDM 広告費単独の推定はできないが、DM 広告 に比べ減少幅が大きい折込広告の調査結果を見ていく と、15 年のDM 広告費は前年比マイナスではあるが、 その減少幅はそれほど大きくはなかったと考えられる。 3 日経広告研究所の「広告費予測」から推定する今後の折込・DM 市場 (1)2015 年~16 年の総広告費予測 日経広告研究所が16 年 7 月に発表した「広告費予測」によれば、15 年の総広告費実績は、上期で 前年同期比2.0%増、下期で同 3.4%増、年間で前年比 2.7%増としている。この実績値をもとに、16 年は上期3.7%増、下期 1.7%増、年間で 2.7%増と予測する。中国や他の新興国経済の低迷、円高・ 株安基調の影響懸念はあるものの、企業業績は堅調に推移すると見て、伸び率は前年比横ばいと想定 している。ただ、消費税率引き上げの延期や英国のEU 離脱、14 年 4 月の消費増税の駆け込み需要 の反動や若年層の将来への不安、高齢者層の消費マインドの低下などから、個人消費は力強さに欠け ている。先行きの景気動向は変動要因もあると見て、上期は3.7%増、下期は 1.7%増とした。 媒体別ではマスコミ4 媒体 0.2%増(新聞 3.9%減、雑誌 4.1%減、テレビ 1.3%増、ラジオ 2.1%増)、 交通広告0.2%減、折込み・DM1.1%減、インターネット 14.6%増、その他 3.4%増としている。今 回もインターネットの顕著な伸びが広告費全体を牽引する構図は変わらない(図表3)。 (2)折込・DM 広告費予測 その中で、折込・DM の 15 年実績と 16 年予測を見ると、15 年実績は上期 3,471 億円(前年同期 比2.7%減)、下期 3,333 億円(同 1.1%減)、年間では 6,804 億円(前年比 1.9%減)としている。こ の数値を基準に、16 年は上期 3,437 億円(前年同期比 1.0%減)、下期 3,292 億円(同 1.2%減)、年 間では6,729 億円(前年比 1.1%減)で、15 年に比べ、減少幅は 0.8 ポイントの改善と予測する(金 額は1 千万円以下切捨て)。ただ、「広告費予測」は、経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」 を基本データに、媒体分類も「折込み・DM」として様々な予測値を加味しているため、ここでも DM 単独の予測はできないが、折込広告の減少が続く中では、DM 広告の減少幅は小さいと推定される。 広告業の業務種類別売上高 (百万円) 前年比 前年同期比 前年同月比 (%) 平成26年 696,807 99.7 27年 685,200 98.1 平成27年 1~3月 179,486 95.6 4~6月 170,067 99.1 7~9月 161,147 98.7 10~12月 174,501 99.2 平成28年 1~3月 176,814 98.5 平成27年 3月 70,568 95.9 4月 58,616 102.7 5月 54,843 97.2 6月 56,609 97.5 7月 59,014 100.1 8月 47,611 96.0 9月 54,523 99.6 10月 57,154 101.9 11月 56,748 94.7 12月 60,598 101.1 平成28年 1月 57,616 98.9 2月 50,875 100.4 3月 68,323 96.8 4月 59,012 101.4 5月 51,088 93.8 折込み・ ダイレクトメール 年・期・月 (図表2)折込み・ダイレクトメール売上高 出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」
広告費(暦年) 売上高合計 4媒体広告 新 聞 雑 誌 テレビ ラジオ 交通広告 ダイレクトメール折込み・ インターネット その他 7媒体計 2014暦年上 2,898,152 1,063,995 203,468 52,557 782,912 25,058 106,227 356,747 240,199 1,130,984 1,767,168 2014暦年下 2,870,340 1,031,000 183,385 57,639 763,102 26,875 96,225 336,895 251,044 1,155,175 1,715,165 2015暦年上 2,956,315 1,013,832 187,094 49,956 752,380 24,401 105,449 347,124 271,507 1,218,404 1,737,911 2015暦年下 2,967,588 1,017,484 170,907 53,765 766,229 26,581 98,138 333,315 290,008 1,228,645 1,738,943 2016暦年上 3,066,408 1,017,852 179,934 47,231 765,517 25,168 104,723 343,720 313,776 1,286,338 1,780,070 2016暦年下 3,018,145 1,016,538 164,145 52,191 773,338 26,863 98,535 329,202 329,832 1,244,039 1,774,106 2014暦年上 4.6 3.9 2.3 -3.1 5.0 -1.7 4.0 0.6 12.2 5.1 4.2 2014暦年下 2.3 0.9 -3.3 -0.8 2.1 1.8 0.3 -1.2 13.9 2.6 2.2 2015暦年上 2.0 -4.7 -8.0 -4.9 -3.9 -2.6 -0.7 -2.7 13.0 7.7 -1.7 2015暦年下 3.4 -1.3 -6.8 -6.7 0.4 -1.1 2.0 -1.1 15.5 6.4 1.4 2016暦年上 3.7 0.4 -3.8 -5.5 1.7 3.1 -0.7 -1.0 15.6 5.6 2.4 2016暦年下 1.7 -0.1 -4.0 -2.9 0.9 1.1 0.4 -1.2 13.7 1.3 2.0 2014暦年 5,768,492 2,094,995 386,853 110,196 1,546,014 51,933 202,452 693,642 491,243 2,286,159 3,482,333 2015暦年 5,923,903 2,031,316 358,001 103,721 1,518,609 50,982 203,587 680,439 561,515 2,447,049 3,476,854 2016暦年 6,084,553 2,034,390 344,080 99,423 1,538,855 52,031 203,258 672,922 643,607 2,530,377 3,554,176 2014暦年 3.5 2.4 -0.4 -1.9 3.5 0.1 2.2 -0.3 13.0 3.9 3.2 2015暦年 2.7 -3.0 -7.5 -5.9 -1.8 -1.8 0.6 -1.9 14.3 7.0 -0.2 2016暦年 2.7 0.2 -3.9 -4.1 1.3 2.1 -0.2 -1.1 14.6 3.4 2.2 実 額 ( 百 万 円 ) 伸 び 率 ( % ) 実 額 百 万 円 ) 伸 び 率 ( % ) (図表3)広告費予測(2016 年 7 月) 出典:日経広告研究所 4 日経広告研究所の「広告動態調査」から見る各種広告メディアの利用実態 日経広告研究所の「広告動態調査」は、同研究所がまとめた「有力企業の広告宣伝費・2015 年版」 記載の単独広告宣伝費上位430 社のうちの 239 社とそれに準ずる企業 269 社の合計 508 社を対象に 15 年 11~12 月に調査を実施、262 社から回答を得た。回答率は 51.6%である。ちなみに「有力企業 の広告宣伝費」は有価証券報告書を提出し、その中で広告宣伝費を公表している企業を対象としてい る。調査内容は、対象企業の広告予算、広告メディアの評価、組織・活動・広告調査、広告会社との 取引、広告表現など多岐に渡り、回答結果は各企業の広告宣伝活動の実態や意識を知るうえで重要な データと言える。今回は、この調査における広告メディアについての設問と回答結果から、DM を含 めた各種広告メディアの利用実態や今後の評価について見ていきたい。 (1)2015 年度の広告宣伝費の媒体配分 15 年度の各企業の媒体費配分を見ると、テレビ地上波が 49.8%(前回比+3.6 ポイント)、新聞 6.3% (+0.7 ポイント)、ラジオ 2.0%(+0.2 ポイント)で、配分シェアが徐々に減る傾向にあったマスメ ディアに復調の兆しがみられる。インターネットは8.9%(+1.1 ポイント)で順調にシェアを伸ばし た半面、折込チラシ5.5%(-2.9 ポイント)、見本市・展示会・イベント 2.9%(-1.1 ポイント)、 屋外広告2.0%(-0.3 ポイント)、DM1.9%(-0.3 ポイント)、POP1.1%(-0.8 ポイント)などは そろってシェアを落とした。交通広告は4.0%(+1.2 ポイント)で堅調だった(図表 4)。 (図表4)
(2)各メディアの利用状況 各メディアの利用状況を見ると、テレビ地上波が86.9%で最も高く、次に新聞 86.4%、インターネ ット86.0%、雑誌 79.6%、屋外広告 72.9%、交通広告 67.4%と続く。DM は 49.8%で、対象の 17 メディア中、14 位に止まった(図表 5)。ただ、DM の業種別では、商社・流通・小売業が 76.7%、 サービス・レジャーが72.7%、精密・事務機器・文具が 70.0%と DM 平均を大幅に上回った。 (図表5) (3)利用が増えると見込む広告媒体、減ると見込む広告媒体 この設問は、各企業が各種広告メディアの将来性をどう見ているかを知る材料となる。利用が増え ると見込むメディアではインターネットへの支持が格段に高く、73.3%を記録した。モバイルも 61.1%で 6 割台にある。マスメディアでは、テレビ地上波が 26.7%となったものの、新聞 9.2%、雑 誌8.8%、ラジオ 6.1%とそれぞれ 1 ケタ台に止まった。DM は 9.2%、新聞と同位置で、雑誌やラジ オ、屋外広告、POP、折込チラシなどを上回り、17 メディア中、8 位につけた(図表 6)。DM の業 種別では、家庭用品・レジャー用品50.0%、商社・流通・小売業 24.3%で平均を大幅に上回った。 一方、利用が減ると見込むメディアでは、新聞40.1%、雑誌 34.7%、折込チラシ 29.0%、ラジオ 27.1%などが上位に並び、テレビ地上波は 21.4%と 2 割台である。DM は 16.8%に止まり、17 メデ ィア中、13 位の位置につけている(図表 6)。DM の業種別では、金融・保険 4.2%、医薬品・医療用 品9.1%などは平均を大幅に下回っている。 (図表6) (4)特に重要と考える媒体、あまり重要視していない媒体 ここでは(3)の設問と一線を画し、特に重要と考える(広告宣伝費を減らされた際でも極力減額 しない)メディアを3 つまで挙げている。テレビ地上波が 51.5%で最も高く、次にネット上の自社ホ ームページ35.9%、インターネット広告 35.5%、モバイル広告 33.2%などネット関連メディアが続 く。DM は 7.6%で、交通広告、テレビ(BS、CS など)、カタログ・PR 誌、POP などを上回り、18 メディア中10 位に止まった(図表 7)。DM の業種別では、商社・流通・小売業が 40.5%で平均を大 幅に上回った。一方、あまり重要視していない(広告宣伝費を減らされた際、減額の対象となる)メ ディアでは、回答が分散したものの、雑誌が26.3%で最も高く、次にラジオ 24.4%、折込チラシ 22.9%、 新聞21.8%と続く。DM は 17.6%で、18 メディア中 5 位だった(図表 7)。DM の業種別では、ファ ッションが10.0%、電気機器・AV 機器が 11.1%、情報・通信が 12.5%と平均を下回った。
(図表7) ※(図表4~7)「広告動態調査」2016 年版(回答はすべて複数回答) 出典:日経広告研究所 まとめ 以上、電通の「日本の広告費」と経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」から、15 年の DM を含めた国内広告市場の動向を見てきた。DM 広告費は、両調査とも前年比マイナスだったが、 減少幅は他メディアに比べそれほど大きくはなかった。また、日経広告研究所の「広告費予測」では、 16 年の折込み・DM 広告費を前年比 1.1%減とし、減少幅は 15 年より 0.8 ポイントの改善と予測し た。折込広告の不振が続く中では、DM 広告単独の見通しはさらに改善される可能性もある。インタ ーネット広告の伸長が顕著な半面、新聞、雑誌など紙メディアの低迷が目立つが、紙メディアの一翼 を担うDM の減少幅は小幅に止まり、マスメディアとは一線を画す予測となった。 一方、日経広告研究所の「広告動態調査」では、DM は現状の広告費の媒体配分や各メディアの利 用状況、特に重要視する媒体評価で課題を残す結果となった。この調査の対象は、有価証券報告書に 広告宣伝費を公表する上場及びそれに準ずる企業の上位クラスで、テレビやインターネットが利用メ ディアの主力であるため、DM を積極的に活用する通販・通教などを含めた幅広い業種企業とは、広 告メディアに対する意識や考え方に多少の違いがあるのかも知れない。ただ、影響力のある有力企業 対象の調査だけに、DM の現状評価や今後の活用方法を考えるうえで示唆に富んだ内容となっている。 例えば、「今後の利用が増える・減ると見込まれる広告媒体」では、DM は他メディアに比べ比較的 良い評価を受けている。「増える」から「減る」を引いた数値、つまり実質的な利用意向率では、イン ターネット(+70.6)やモバイル(+58.0)、テレビ BS・CS など(+9.6)、テレビ地上波(+5.3) には及ばないものの、DM は-7.6 ポイントに止まり、新聞(-30.9)、雑誌(-25.9)、折込チラシ (-25.9)など他の紙メディアやラジオ(-21.0)に比べると、そのマイナス値は小さい。 また、業種別で見ると、「利用状況」では商社・流通・小売業やサービス・レジャー、精密・事務機 器・文具が、「利用が増える」では家庭用品・レジャー用品や商社・流通・小売業が、「特に重要視す る」では商社・流通・小売業が、DM 平均値を大幅に上回る支持を得ている。 この部分で、DM が比較的良い評価を受けた理由はどこにあるのだろうか。各企業がどんな基準で 媒体選択しているのかを見ていくと、その理由がよく分かる。この調査では判断基準の上位に、訴求 対象の基本属性(75.6%)、媒体の到達率(66.8%)、広告予算との兼ね合い(64.1%)、過去の出稿実 績(53.4%)、カバーエリアの効率性(48.1%)、訴求対象のライフスタイルや特性(46.2%)、広告料 金・コストパフォーマンス(42.7%)、情報の特質や信頼性(37.0%)などの項目が並んでおり、DM にとっては有利な要素が多く含まれているからだ。 DM はターゲットの属性を絞り込みやすいうえ、ピンポイントでの訴求が可能で、到達率や効率性 に優れている。また1 通当りの情報量の多さや情報の信頼性・保存性・一覧性などの機能に強みを持 ち、インターネットなど他メディアとの親和性も高い。このようなDM メディアの特性は、企業の宣 伝担当者が挙げる媒体選択基準と符合する点が多いのだ。しかし、DM は現状の利用状況などでメデ ィアの課題を残した。その解決を図るためにも、広告メディアとしての認知度をさらに高める必要が あるだろう。今後はDM の特性を生かし、紙とインターネットを連動させるなど実効性のあるクロス
それらの課題に積極的に取り組むことで、DM の広告メディアとしての利用価値は一層高まるものと 思われる。
井上 東二郎 日経広告研究所 前主席研究員