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Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 11, No. 1 1 日 本 進 化 学 会 会 長 挨 拶 日 本 進 化 学 会 ニュース Vol. 11, No

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<年月日(西暦)>       年   月   日   №       ふ り が な 名  前 ローマ字 所  属 所属先住所または連絡先住所 〒 TEL FAX e-mail 以下から選ぶかまたはご記入下さい(複数記入可)  専門分野 人類、脊椎動物、無脊椎動物、植物、菌類、原核生物、ウイルス、理論、 その他(      )  研究分野 分子生物、分子進化、発生、形態、系統・分類、遺伝、生態、生物物理、情報、 その他(      ) 以下から選んで下さい 一般会員  ・  学生会員 注)研究生や研修生などの方々の場合、有給ならば一般会員、無給ならば学生会員を選んで下さい。 学生会員は必要に応じて身分の証明を求められる場合があります。 申込方法/上記の進化学会入会申込書をご記入の上、下記の申込先へ郵便・FAXe-mailでお送り下さい。 申 込 先/日本進化学会事務局 〒102-0072 千代田区飯田橋3-11-15 UEDAビル6F(株)クバプロ内

     ●TEL : 03-3238-1689●FAX : 03-3238-1837●http://www.kuba.co.jp/shinka/●e-mail : [email protected]

<年会費の納入方法>

【 年 会 費】 一般会員  3,000円/学生会員 2,000 賛助会員 30,000円(一口につき) 【納入方法】   ① 銀行振込みをご利用の場合 (銀 行 名)三井住友銀行  (支 店 名)飯田橋支店 (口座種類)普通預金口座  (口座番号)773437 (口座名義)日本進化学会事務局 代表 株式会社 クバプロ ② 郵便振込みをご利用の場合 (口座番号)00170-1-170959 (口座名義)日本進化学会事務局

第12回日本進化学会東京大会案内

4

 海外研究室だより【第11回】

  スイス連邦水圏科学技術研究所(Eawag)

5

 ソフトウェア紹介①

●MEGA5:

  

Molecular Evolutionary Genetics Analysis version 5

9

 ソフトウェア紹介②

●PDF 管理ソフト Papers ver. 1.9.4

14

 海外学会参加記● EMBO Practical Course

  on Computational Molecular Evolution

18

1

会長挨拶

3

2010年度役員紹介

21

編集後記

Vol .

11

No.

1

(2)

今年の1月から日本進化学会の会長を務めております斎藤成也です。2011 年末までの2年間の任期のあいだに、できる限りこの学会に尽くす所存ですの で、会員皆様のご協力をお願いいたします。 新執行部の陣容はすでに学会のホームページに掲載されていますが、主要 メンバーとして、倉谷滋副会長(2012∼13年度の会長)、田村浩一郎事務幹 事長、池尾一穂庶務幹事、佐々木顕会計幹事、宮正樹編集幹事(日本進化学 会ニュース編集長)がいます。私を含むこれら6名で、今年の2月下旬に東京 飯田橋にある学会事務局(クバプロオフィス)を訪問しました。このほか、和田洋国内渉外幹事、明 石裕国外渉外幹事、隅山健太広報幹事、橋本哲男生物科学学会連合担当幹事、三中信宏日本分類学 会連合担当幹事、高橋文男女共同参画委員会担当幹事がいます。国外渉外幹事は今年度に新設した ものです。今後日本以外の学会などとの交流を増やすことを考えておりますので、米国で長く生活さ れていた明石裕さんにお願いしました。 本年度は、まず以下のことに取り組みます。 ◎学会会計の健全化:赤字体質からの脱却を含めて、いろいろな問題をかかえていますので、昨年 度も担当された佐々木顕さんに引き続き会計幹事をお願いし、ワーキンググループで検討を続けて いただいています。 ◎学会会則・細則の改定:学会が設立された時点で詳細な会則・細則が設定されましたが、設立か ら10年以上すぎ、少し手直しする必要性を感じております。たとえば、副会長の役目の明確化、 評議員と執行部との兼任の是非などがあります。現在執行部内で改定案を作成中です。 ◎年次大会実行委員会と学会執行部との連携の強化:これまで年次大会の運営はほぼ実行委員会に 一任されてきましたが、1年に一度の大会は本学会にとって最大の行事ですので、学会として一貫 したスタイルを維持することの重要性を感じています。そこで、3月末に何人かの執行部役員とと もに東京工業大学を訪問し、岡田典弘実行委員長らと話し合いの場を持ちました。その結果、こ れまで開催されなかったこともあったポスター賞を必須化し、ポスター賞の審査を学会の執行部が 担当することが決まりました。 やや長期的な懸案事項としては、公益信託進化学木村資生基金との関係があります。本学会の学 会賞は、当初木村賞という名称でした。スズキ財団から毎年寄付をいただいて、賞金にあてていまし たが、スズキ財団から 2億円という巨額の寄付をいただいたために、「公益信託進化学木村資生基金」 が設置され、そこでの運営となりました。このため、「木村賞」が形の上では日本進化学会から離れ ましたが、本学会の選考委員会で選ばれた学会賞受賞者が、公益信託進化学木村資生基金に推薦さ れ、基金の運営会議の審議を経て木村賞受賞者に選ばれてきました。毎年の学会賞授賞式で、公益 信託進化学木村資生基金の木村克美委員長が挨拶されているのをご存じの会員も多いと思います。 ただ、この形では基金の独自性が薄れるという基金側の判断があり、今後本学会と基金の関係に変化 が生じる可能性があります。たまたま私は基金の運営委員会メンバーの一人ですし、ほかにも運営委 員として宮田隆・五條堀孝本学会会長経験者がおられますので、本学会にとってよい方向になるよ

日 本 進 化 学 会 会 長 挨 拶

日本進化学会ニュース Vol. 11, No. 1

発 行: 20106月●日 発行者:日本進化学会(会長 斎藤成也) 編 集:日本進化学会ニュース編集委員会(編集幹事 宮正樹) 印刷所:福々印刷株式会社 発行所:株式会社クバプロ 〒102-0072 千代田区飯田橋3-11-15 UEDAビル6F TEL : 03-3238 -1689FAX : 03-3238 -1837

(3)

日本進化学会 2010年度役員紹介

う、努力いたします。 もうひとつの長期的懸案事項としましては、公益法人問題があります。現在、本学会は任意団体 ですが、これまで財団法人の運営を規定していた法律が改正されたために、本学会も大きな基盤財産 を有することなしに、なんらかの法人格を取得できる可能性がでてきました。全国に多数ある学会に 「学会法人」というような枠をもうける可能性も、日本学術会議などで現在議論されております。こ れらの状況を注視し、関連学会の動向も調べて、本学会がどのような形を採用すればよいのか、今後 検討してゆく予定です。 このあいさつ文が日本進化学会ニュースに掲載されて会員の皆様に届くころには、すでに学会の メールリストで流れているかと思いますが、来年の日本進化学会年次大会は、2011年7月26日∼31 日に京都大学で開催されることになりました。実行委員長は京都大学の阿形清和教授です。会期が 長いのは、分子進化学の国際学会である SMBE(Society for Molecular Biology and Evolution)の 年次大会と合同開催となったためです。こちらは国立遺伝学研究所の五條堀孝教授、池尾一穂准教 授と私が中心となって運営を進めます。国際会議との合同は初めての試みですし、相手の分野が分子 進化学であり、進化学という広い研究分野をすべてカバーしているわけではないのですが、ご了承い ただけるよう、お願いいたします。なお、これらの会期のうちの 1日間は日本進化学会だけの開催と する予定です。 私は学部学生の時に日本人類学会に入会しました。明治時代とはいえ、当時学部生だった坪井正 五郎らが設立した小さな研究会が日本人類学会の発端であったことを知り、自分も学部生だが学会を 作ってみたいものだと夢見ていました。当時は進化学会がありませんでしたから、それができればい いなあと思っておりました。それから20年以上を経て、1999年に日本進化学会が設立された際に, 私自身も多少関わることができたのは、大きな喜びでした。2年前に日本進化学会の副会長に選出さ れ、長谷川真理子前会長のもとで学会運営を学んできました。今年と来年の 2年間、それを生かし て、本学会が今後も長く発展してゆけるように、会長として精励いたします。あらためて、会員皆様 のご協力をよろしくお願いいたします。 2010年5月31日

 斎藤 成也

— 役 員 構 成 —

会長: 斎藤 成也 (国立遺伝学研究所) 副会長: 倉谷  滋 (理化学研究所) 事務幹事長・web担当幹事: 田村 浩一郎 (首都大学東京) 会計幹事: 佐々木 顕 (総合研究大学院大学) 庶務幹事: 池尾 一穂 (国立遺伝学研究所) 編集幹事: 宮  正樹 (千葉県立中央博物館) 編集委員: 荒木 仁志 (スイス水圏研究所) 工樂 樹洋 (コンスタンツ大学) 真鍋  真 (国立科学博物館) 国内渉外幹事: 和田  洋 (筑波大学) 国外渉外幹事: 明石  裕 (国立遺伝学研究所) 広報幹事: 隅山 健太 (国立遺伝学研究所) 男女共同参画委員会担当幹事: 高橋  文 (国立遺伝学研究所) 生物科学学会連合担当幹事: 橋本 哲男 (筑波大学) 日本分類学会連合担当幹事: 三中 信宏 (農業環境技術研究所)

— 評 議 員

(50音順)

阿形 清和 (京都大学) 秋元 信一 (北海道大学) 浅見 崇比呂 (信州大学) 巌佐  庸 (九州大学) 遠藤 一佳 (筑波大学) 遠藤 秀紀 (東京大学) 太田 英利 (琉球大学) 粕谷 英一 (九州大学) 五條堀 孝 (国立遺伝学研究所) 小林 一三 (東京大学) 颯田 葉子 (総合研究大学院大学) 嶋田 正和 (東京大学) 塚谷 裕一 (東京大学)   和希 (琉球大学) 疋田  努 (京都大学) 深津 武馬 (産業技術総合研究所) 真鍋  真 (国立科学博物館) 三中 信宏 (農業環境技術研究所) 矢原 徹一 (九州大学) 渡邉 日出海 (北海道大学)

(4)

新しい企画満載の

第12回日本進化学会大会(東京大会)のご案内

日 程:2010年8月2日(月)∼5日(木) 会 場:東京工業大学・大岡山キャンパス 大会ホームページ:http://www.evolution.bio.titech.ac.jp/sesj2010/sesj_index.html 第12回日本進化学会東京大会を、2010年8月2日(月)から8月5日(木)の4日間、東京工業大学大 岡山キャンパスで開催します。大会主催者の提案するシンポジウムですが、今回は並列せずに、S1から S7までを連続して聞けるように配慮しました。テーマは「地球の歴史と生命の進化」です。また、公開 講演会では今までの常識を覆すサイエンスの醍醐味を満喫出来ると信じています。国際ワークショップ や一般公募のワークショップも新しい科学の発見が満載です。大会の参加申込み等、詳細は大会ホーム ページをご覧ください。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

《大 会 概 要》

8月2日(月) 13:00∼16:00 公開講演会、進化学夏の学校 16:00∼19:00 進化学夏の学校 8月3日(火) 9:00∼12:00 S1シンポジウム、ワークショップ、一般口頭発表 13:00∼16:00 S2シンポジウム、ワークショップ、一般口頭発表 16:30∼19:30 S3シンポジウム、ワークショップ、ポスター発表1、高校生ポスター発表 8月4日(水) 9:00∼12:00 S4シンポジウム、国際ワークショップ、ワークショップ、一般口頭発表 13:00∼16:00 S5シンポジウム、国際ワークショップ、ワークショップ、一般口頭発表 16:15∼18:15 総会・学会賞授賞式・受賞講演 18:30∼20:30 懇親会 8月5日(木) 9:00∼12:00 S6シンポジウム、国際ワークショップ、ワークショップ、一般口頭発表 13:00∼16:00 S7シンポジウム、ワークショップ、ポスター発表2 ※公開講演会、進化学・夏の学校は一般の方でも聴講できます。(入場無料) ※上記はあくまでも予定であり、変更の可能性があります。最新情報については随時大会ホームページ をご確認ください。

《参加登録・発表申込みについて》

参加登録および発表の演題登録は、以下の大会ホームページで受け付けております。   http://www.evolution.bio.titech.ac.jp/sesj2010/sesj_index.html 発表演題登録:6月18日(金)〆切 参加登録(早期登録):6月25日までに登録し、7月2日までに参加費を送金した方 参加登録(直前登録):Web登録は7月23日〆切(それ以降は大会期間中に会場受付にて承ります) ※一般口頭発表、ポスター発表は進化学会会員のみに限ります。それぞれ一人一発表まで申込み可能で すが、会場の都合次第でご希望に添えない場合があります。

《大会参加費・懇親会費》

一般会員 学生会員 非会員 大会参加費 早期登録(6月25日まで) 6,000円 3,000円 7,000円 直前登録(6月26日以降) 7,000円 4,000円 8,000円 懇親会費  早期登録(6月25日まで) 6,000円 3,000円 6,000円 直前登録(6月26日以降) 7,000円 4,000円 7,000円 大会参加費・懇親会費は郵便振替にて下記口座へ払い込みください。その際、通信欄には申込み時に与 えられた登録番号をご記入ください。   口座番号: 00160-9-663042   口座名称: 第12回日本進化学会大会

《大会委員長・連絡先》

岡田 典弘 東京工業大学 生命理工学研究科 〒226-8501 横浜市緑区長津田町4259-B-21 大会事務局: [email protected]

スイス連邦水圏科学技術研究所(Eawag)

私が進化学会ニュースに寄稿するのは三度目、 海外研究室だよりならば二度目になります。一度 目は2004年にシカゴ大学生態進化学科の紹介を、 二度目は2007年、研究奨励賞受賞記という形で オレゴン州立大学での研究紹介をさせていただき ました1,2。今回は現在所属しているスイス連邦 水圏科学技術研究所(Eawag、エアワグと読みま

荒木 仁志

す)の紹介をしたいと思います。日本人にはアル プスやハイジのイメージの強いスイスですが、読 者の皆さんには合わせてスイス生活の空気を感じ てもらえれば幸いです。 Eawagはアルベルト・アインシュタインを輩 出したスイス連邦工科大学、ETHの一組織で、 水に関わる多様な科学技術研究を行う国立の研

(5)

究所です。学生も多く流動性の高い組織ですが、 チューリヒ近郊のデューベンドルフという町のメ インオフィス、ルツェルン近郊カスタニエンバウ ム の CEEB(Center of Ecology, Evolution and Biogeochemistry)合わせて500名 強が所 属す る、スイスの中では比較的大きい研究教育機関 といえるでしょう。水、という生命に不可欠な 物質をテーマにしているだけに生命科学、特に生 態学や環境・保全生物学に重きを置いてはいます が、研究分野は生物学に留まらず化学や物理学、 社会学など水圏のあらゆる面に及びます。研究者 間の交流も盛んで、多角的に水やそれを取り巻く 世界を理解・改善しようという発想がこの研究所 を特徴づけています。所属する個々の研究者にも そのような発想が求められるため、自分の研究が 他分野の研究者や社会にとってどのような意義が あるのか、自然と考えさせられる毎日です。 元々、私は分子集団遺伝学という人様の役に は立ちそうも無い研究分野を専攻していました し、日本で研究していた学生時代には進化のメカ ニズムを理解すること以外、学術的興味は持って いなかったように思います。しかし、アメリカで の研究体験を経て「進化の概念に基づく保全遺伝 学」を目指すようになり、ちょうど魚類進化学と 実践的保全学の接点を模索していたEawagで研 究をすることになったのです。私のオフィスはカ スタニエンバウムの CEEB、所属はDepartment of Fish Ecology and Evolution( 図1)で、 アフ リカ・ビクトリア湖のカワスズメ(Cichlid)の適 応放散研究で有名な Ole Seehausen博士が学科 長をされています。同学科には他にSticklebacks の分子生態進化を研究しているArjun Sivasun-dar、河川生態系修復をはじめとする実践的な環 境保全学を研究をしているArmin Peter両博士 が所属し、私と合わせた4人のグループリーダー でFishec-groupを形 成しています。(5人 目の 理論生態学者は今年就任予定。)学生はETHや Seehausen博士が教授を兼任するベルン大学か ら卒論や修論、博士論文研究のため各グループに 所属することがほとんどですが、なかにはアフリ カやアジアから研究留学の形でやってくる学生も います。うちの学科のグループリーダーがドイツ 人、インド人、スイス人に日本人、という事実 が示すように国際色はとても豊かで、年に一度、 CEEBで開かれるインターナショナル・フード・ デーには毎年数十カ国のバラエティーにとんだ料 理が並びます。 現在は「魚の人工飼育に伴う遺伝的変化と自然 界での適応度」という、私にとってはライフワー クとなりつつあるテーマで研究プロジェクトを立 ち上げています3,4(プロジェクト内容については 下記ホームページ参照)。公用語だけで四カ国語 (英語は含まない!)というお国柄、養魚場のマ ネージャーたちとコミュニケーションをとるのも 一苦労、といった感じですがそれはそれで新鮮で すし楽しいものです。スイスの研究事情について は第9回の海外研究室だより5でチューリヒ大の 清水健太郎さんが既に紹介済みなので詳細は割愛 しますが、一言で言うなら進化学のような基礎研 究を行うにはかなり恵まれた環境です。その理由 はまず潤沢な科学技術研究費です。私の出生地 である九州よりも小さく、人口も800万に満たな いスイスがどうして?と思ってしまいますが、第 二次世界大戦以降、経済基盤が非常に安定して おり、その経済力の一翼を担っているのがRoche をはじめとする最先端の科学技術研究に基づく大 手医薬系企業の活躍にあることも一因でしょう。 ちなみに国民一人当たりの GDPは世界3位(日 本は21位、2008年世界銀行調べ)、研究者一人 当たりの研究費も世界トップクラスで共に日本の 約1.5倍(総務省統計局発表の資料6による)。も ちろんお国柄やシステムが違うので一概には比較 できませんが、スイスが真の意味での科学技術立 国を目指し、実践していることが見て取れます。 科研費の分配方法も公平で、もちろん競争はしっ かりありますが、私のような駆出しの研究者にも きちっと配分されるよう配慮され ています。まして進化学が基礎研 究だからといって不利になったと いう話はスイスでは聞いたことが ありません。結果、世界中から優 秀な科学者が集まり、これが更な る研究環境の向上をもたらしてい ます。つまるところ科学技術大国 というのは長期的で継続的な国家 戦略の産物なのだ、ということを 肌で感じる思いです。 研究環境を語るに当たって研究 資金以上に大事なのが教育ですが、この面でもス イスはユニークなシステムを採用しています。細 部はカントンと呼ばれる州ごとに異なるようです が、基本的に公立なら学費は幼稚園から大学に至 るまで無料。小学4、5年生になると適性検査が あり、約半分の学生は就職を念頭においた専門教 育を受けるようになるそうです。15歳になると多 くの学生が職業見学、そして実務見習生へ。残 りはいわば進学コースですが、10歳やそこらで将 来の職業について絞り込む、というのはなかなか シビアなシステムです。もちろんその後の進路変 更の可能性は残されてはいますが、現実には進学 コースから職業教育コースへ、というパターンが 大多数のようです。9年間の義務教育就学後の進 学率が高いのは日本と同様ですが、やはりここで も職業訓練学校が大多数を占め、いわゆる普通 科高校に行って卒業時に大学入学資格を取得す る割合は全体の2割以下なのだとか。更には大学 入学後も中間試験、卒業試験と容赦ない選抜が 待っています。彼らには同級生の多くが専門教育 を経て得るであろう「手に職」や専門職に必須な ライセンスがあるわけではありませんから、大学 で振るい落とされないように必死です。これだけ の選抜とプレッシャーを小学校時代から受けてい れば、大学の学生意識や質が総じて高いのも頷け ます。ちなみにスイスには ETH、ベルン大の他 にもチューリヒ大、バーゼル大やローザンヌ大な ど世界的に有名な大学が数多くありますが、大学 入試は大学ごとに行われるわけではなく、基本的 に学生が選んで入ることができるシステムなのだ そうです。このあたりも日本やアメリカと違って ユニークですね。ちなみに永世中立国・スイスは 意外にも徴兵制で、学生たちも定期的に軍の訓練 合宿に参加する義務があるそうです。 生活面では総じて物価が高いのが頭が痛いとこ ろですが、食料品などの品質はかなり高く、パ ン、チーズや生ハムといった素朴な食材が主体な がら肉や魚、野菜といった生鮮食品も満足いく程 度に手に入ります。本来当たり前のことなのです が、Coop、Migrosといったありふれた大手スー パーでも季節季節をしっかり反映した食材が並ぶ のはビニールハウス食材を見慣れた我々には当初 とても新鮮でした。もっともスイスのスーパーは この二社の独占状態で、彼らを含めたスイス中の 多くのお店が土曜は午後 4時まで、日曜は終日閉 店ですから慣れるまでは大変です。 また、スイスは治安の面でも世界最高水準で、 これも本来当たり前のことですが小さい子供たち が自分たちだけで遊びまわっているのをよく目に します。緯度が高いため冬は日が短いですが、気 温は平地では思ったほど下がりません。札幌くら いの感覚でしょうか。ウィンタースポーツの花形 図1 Eawag, Department of Fish Ecology and Evolutionの メ ン バー。研究所隣接のルツェルン湖畔にて2008年撮影

(6)

はやはりアルペンスキーで、まともに滑れない私 でも十分楽しめる素晴らしい景色と長いゲレンデ がたくさんあります。サッカーも盛んでプロリー グもありますが、強豪の多いヨーロッパの中では あまり目立つ存在ではありません(そうはいって も一応はワールドカップ 2010出場国、日本代表 並みには期待されています!)。夏にはハイキン グが盛んで、年配の方でもスキーストックのよう なポールを手に山歩きを楽しまれる姿をよく見か けます。日も長く暑さも厳しくないので夏のスイ スはとても快適です。今住んでいるルツェルンは スイスの中でも特に有名な観光地で、夏の音楽 祭や冬の大仮装フェスティバル(ファスナハト)、 ワーグナー、チャップリンやオードリー・ヘップ バーンゆかりのルツェルン湖やリギ山、ピラトゥ ス山など様々な観光資源で世界中から多くの訪問 客を魅了しています(図2)。Eawagでもよく学 生向けにサマースクールを開くのですが、その自 然環境と相まって例年好評を博しています。 環境、といえば進化学の最新情報へのアクセ スに関しても特筆すべきでしょう。ヨーロッパで は歴史的に進化学への関心が高く、ダーウィン生 誕200年だった昨年に限らず毎年数多くのシンポ ジウムやワークショップが開かれます。これらの イベントに気軽に参加できるのもヨーロッパで進 化学研究をする大きな利点の一つです。Eawag CEEBは西ヨーロッパの中核スイスのそのまた中 央、ルツェルン近郊に位置するため、交通面での 利便性は特に高いといえます。スイスはそもそも 電車の路線がとてもよく発達していて時間も正確 です。ベルン、チューリヒ、バーゼルといったス イスの主要都市へはそれぞれ電車で1時間ほどで 行けますし、イタリア・ミラノまで3時間半、フ ランス・リヨンやパリ、ドイツ・ミュンヘンへ も片道五時間といったところです。チューリヒ やバーゼルの空港を使えばロンドンやベルリンも 2時間程度。この地理的な利点も上記の経済力・ 教育と並んでスイスの国際研究競争力を高めてい る要因といえるでしょう。 とはいえアメリカをはじめ他の海外研究先同 様、スイス生活もいいことばかりではありませ ん。スイスの市町村は総じて保守的で、日本の 村社会意識のようなところがあります。猛々しい 山々と岩盤質の痩せた土地、という自然の厳しさ 故なのか、都市国家時代の面影を残す強靭な地 方共同体意識の影響か、はたまたドイツ語、フラ ンス語、イタリア語といった言語文化圏のせめぎ 合いの結果なのか、理由は定かではありませんが 「よそ者」に厳しいのです。これは他人であって も陽気に声をかけてくるアメリカ人慣れしていた 私には少々驚きでした。当のアメリカ人にはもっ とショックらしく、アメリカ人でEawagの所長 を務めるJanet Hering博士は「スイスでは移り住 んで六世代経っているスイス人の友人ですらよそ 者と呼ばれているらしい」と苦笑していまし た。なにやら日本の「外人」意識に通じると ころが無くもありません。もっとも、観光客 の多いルツェルンで100%アジア人の外見な ら、むしろ大手を振って「よそ様」英語を使 えるので生活に困ることはありませんが。 なんにせよ、日本も含めてそれぞれの国 にそれぞれの長所と短所があり、研究・生 活環境も少しずつ異なります。それこそが 海外暮らしの楽しみですし、異なる価値観 や文化に触れるきっかけです。嫌でも世界 の研究者と競い合うことになる日本の若手研究 者にも行く・行かないはともかく大いに世界を意 識してほしいところです。とはいえ研究留学を 考える際にはいろいろな不安が出てくるのも事実 でしょう。それらの差異を事前に見極め、自分 に合った環境を見つけるに越したことはありませ ん。そのためにも、受け入れ先の研究者や留学経 験者に積極的に連絡を取り、実体験に基づく情報 をうまく利用されることをお勧めします。 なお、私の研究室では魚類進化や集団遺伝学、 保全学に関心を持つやる気とバイタリティーのあ る学生・研究者を随時募集しています。興味の ある方は是非、下記のメールアドレスまでご連絡 ください。 図2 山と湖に囲まれた中世ヨーロッパの面影を残す街、ル ツェルンの遠景。中央に見えるのは街の象徴、カペル橋 Department website: www.eawag.ch/organisation/abteilungen/ fishec/index_EN 著者メールアドレス:[email protected] 1) 進化学会ニュース2004 vol.5 no.2 2) 進化学会ニュース2007 vol.8 no.2

3) Araki, Cooper and Blouin. 2007. Genetic effects of captive breeding cause a rapid, cumulative fitness decline in the wild. Science 318: 100-103. 4) Araki, Berejikian, Ford and Blouin. 2008. Fitness

of hatchery-reared salmonids in the wild. Evolu-tionary Applications 1: 342-355. 5) 進化学会ニュース2008 vol.9 no.1 6) 「世界の統計2010」(www.stat.go.jp/data/sekai/)

ソフト

ウェア

紹介❶

1993年、最初のバージョンをリリースして以 来、我々はMEGAのバージョンアップを重ねて きた。MEGA2では、 プラットフォ ームをMS-DOSからWindowsに変え、MEGA3では、多重 アライメントを含めたデータ入力・編集機能を 実装した。今回ご紹介するMEGA5では、最尤 法による分子進化・分子系統解析法を実装した。 さらに、ユーザ指定系統樹の解析やMUSCLEを 用いた多重配列アライメントなど、MEGA5に は最尤法以外にも新たな機能がいくつも含まれ、 MEGA3以来のメジャー・バージョンアップを遂 げたと思う。これらの機能の実装は、実は10年 来の懸案事項だったが、MEGAの開発ポリシー である「利便性」、いわゆる ユーザーフレンド リー なソフトであることとの折り合いが悪く、 それらを解決するために長い年月を費やしてし まったのが実情である。 最尤系統解析法の実装 MEGA4までに実装されていた分子系統樹推定 法は、距離行列法(NJ、ME、UPGMA)と最節 約法に限られていた。最尤法の利点は十分に理解 していたが、(1)計算時間が非常に長い、(2)置 換パラメーター、樹形探索法などのオプションが 多い、の二つの特徴が「利便性」を損なうもので あったため、実装を今日まで引き延ばしてきた。 しかし、ハードウェアの進歩によって計算時間は 大きく改善され、またその間台頭してきた数々の 最尤解析法のソフトウェアによって必要な機能は 何かが見えてきたことが、MEGAに最尤解析法 を実装する背景にあった。そこでMEGA5には、 多くのユーザが必要とするエッセンスのみを実装 した。系統解析をある程度のレベルで迅速に行 いたい方にはお勧めだ。細かいことをいろいろい じくりまわしたい方には物足りないだろう。ただ

MEGA5: Molecular Evolutionary

Genetics Analysis version 5

(7)

AICc、BICが計算され、AICcの順に 表示される(図4)。 (5) コドン単 位の自 然 選 択の検 定には、 HyPhyを利用した。ただし、理論的 に問題が指摘されているω(オメガ) を直接最尤法で推定する方法ではな く、祖先配列を最尤法で推定し、そ れに基づいて非同義置換数を推定す る方法を採用した。 ユーザ指定系統樹の入力 最尤法の実装に伴いどうしても避けて 通れなかったのが、「系統樹の入力」機能の実装 だ。分子系統解析では、推定系統樹に対して意 中の系統樹がどの程度有意に異なるのかを調べる ことは、非常に意味のあることである。一方、系 統樹を用いる分子進化解析では、樹形を生物学 的に妥当なものに固定する必要がある。このよ うに重要な機能であるのになぜ今まで実装されな かったかといえば、そこにも「利便性」とのジレ ンマがあった。我々が意味する「系統樹の入力」 は、単にNewickファイルを読み込むだけではな く、配列データとの適合性のチェックや系統樹 データの編 集の機 能も含まれる。MEGAでは、 入力された配列データから任意の配列だけを選択 して解析に用いることができる。そこで、系統樹 を読み込む際、系統樹に含まれる名前が使用する 配列の名前と一致するか、その都度チェックする 必要がある。一致しない場合、不一致を簡単に 修正するための機能も当然必要となる。

図5左にはMEGA5のTree Input Dialogによ る系統樹入力の様子を示す。この例では、配列 の名前は Artemia salina であるのに、読み込も うとした系統樹では A. salina となっているが、 プルダウンメニューを使ってその対応付けを簡単 に行うことができる。また、樹形の変更も移動し し、「ある程度のレベル」といっても、それはそ んなに低くないことを、我々はコンピュータ・シ ミュレーションや実際の配列データを使って確認 している。言いかえれば、それ以上の、あっても あまりプラスにならないものは、利便性のために 割愛されたのだとご理解いただきたい。MEGA5 に実装されている最尤解析法には、(1)最尤系統 樹の推定、(2)分子時計による分岐時間の推定、 (3)祖 先 配 列の推 定、(4)置 換モデルの選 択、 (5)コドン単位の自然選択の検定がある。 (1) 最尤系統樹の推定では、NNI(Nearest

Neigh-bor Interchange)、CNI(Close NeighNeigh-bor Interchange)の2種類の樹形探索法を選択で きる。最近人気のPhyMLの原著論文によれ ば、NNIだけでも十分な探索効果があると いうことだが、一応、もう一歩深く探索する CNIも実装した(図1)。最節約法になれた方 は「NNIの次はSPRだろう」と思うかもしれ ないが、最尤法の場合、計算時間の短縮が大 きな課題であり、樹形変更に伴う再計算量が 少ないCNIのメリットは大きい。 (2) 分子時計による分岐時間推定は、系統樹の 根(root)から枝の先端(いわゆるOTU)ま での距離が一定になるように枝長に制約をつ けた伝統的なもので、分子時計の尤度比検定 も同時に行われる。また、枝長の最適化のプ ロセスで得られる対数尤度の変化から分岐点 の誤差も計算される(図2)。 (3) 祖先配列の推定では、サイト毎の祖先形質は Tree Explorer 上で系統樹と共に表示され、 Information Dialogには、 各 形 質の確 率も 表示される(図3左)。また、「配列」として、 テキストファイルや MS-Excelに出力するこ とも可能である。後者の場合、確率によって 色分けもされる(図3右)。 (4) 置換モデルの選択では、Modeltestプログラ ムのように全ての置換モデルを用いて系統樹 の尤度を計算し、最も適したモデルを選択す るものである。評価基準として対数尤度の他 図1 最尤系統樹推定のオプション 図2 最尤系統樹(左)と分子時計を用いた分岐時間の推定(右) 図3 祖先配列のTree Explorer(左)とMS-Excel(右)への出力 図4 最尤モデル選択の出力

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もいるかもしれないが、研究分野によってユーザ の要望は驚くほど異なるので、全てのユーザの要 望をかなえることは不可能に近い。また、そもそ も我々がユーザと認識できるのは、実際にMEGA を日々の研 究で使い、そこからフィードバック を送ってくださる方々だけである。そのフィード バックの方法が「バグ・リポート」で、MEGAの ウェブサイト(http://www.megasoftware.net/) に行き、 左 側の Report Bugs をクリックする と、専用の入力フォームが表示される。単に不具 合を報告するだけではなく、 Severity メニュー で feature を選択すれば、実装してほしい機能を リクエストすることも可能である。我々は、この システムを通じてユーザからのバグ情報や要望を 集約し、MEGA開発の重要な情報源にしている。 MEGA5では、このユーザからのフィードバッ クを強化・促進するため、メイン・ウィンドウに 専用のボタンを配置、ワンクリックで入力フォー ムが表示されるようになっている(図7)。MEGA が将来どのようなソフトウェアになっていくかは、 このバグ・リポートに送られてくる内容に大きく 影響されることが容易に想像できると思う。残 念ながら、これまで日本のユーザからのフィード バックは皆無に等しい。英語で書くのは億劫だろ うが、是非、積極的な書き込みをお願いしたい。 たい枝をマウスで選択し、そのまま移動したいと ころまでドラグ&ドロップするだけで行うことが できる(図5右)。 その他の新機能 MEGA5には最尤法以外にも数々の新機能が 搭載された。その中の目玉は、なんと言っても 配 列の多 重アライメント用プログラムとして、 ClustalWに加えてMUSCLEが実装されたことだ ろう。MUSCLEの性能については、筆者は正直 なところよく知らないが、多くのユーザの希望を かなえるという意味で実装した。MUSCLEをは じめ多重配列アライメントや配列データの編集機 能は、Alignment Explorerに集約されているが、 MEGA5では、その他にも保存性の程度によって 塩基やアミノ酸の表示を変えられたり、メインメ ニューから直接系統解析へデータが転送できたり と、MEGA4と比べると細かい点で改良が加えら れた(図6)。 その他、MEGA5全体を通しても、ギャップ・ サイトの扱いにこれまでのComplete Deletionと

Pairwise Deletionに加え、 その中 間のPartial Deletionを設けたり、出力先としてMS-Excelを 加えたりなど、いろいろな部分で新機能が追加さ れた。また、目には見えないところではあるが、 我々はMEGA5のためにソースコードを大きく改 変した。その目的は、計算部分とユーザ・イン ターフェース部分の分離である。今後、前者だけ を用いてコマンドライン・バージョンもリリース する予定である。さらに、LinuxやMac OS上で 実行できるバージョンもWineやDarwineの助け を借りて順次リリースする予定である。 MEGAの将来 MEGA開発の最初の目的は、進化距離や近隣 結合法など、根井研究室で開発された解析法を実 装した使いやすいソフトウェアを作ることだった。 しかし、その目的は、MEGA3のころから徐々に 変わってきた。「根井研究室で開発された解析法」 から「ユーザが望む解析法」への変遷である。こ れまで紹介してきたように、MEGA5の新機能の 多くがユーザからの要望によって実装されたこと は、理解していただけたと思う。今後リリース予 定のLinux、Mac OS、コマンドラインの各バー ジョンも、ユーザのリクエストに他ならない。「自 分の要望には少しも応えていない」と思われる方 図5 Tree Input Dialogでの入力系統樹と配列の対応付け(左)と樹形の編集(右)

図6 MEGA5のAlignment Explorer。50%以上の配列で共有されている塩基は背景が色付けされている。プル ダウンメニューで選択されている「Phylogenetic Analysis」をクリックすると、即座に系統樹推定に移行できる。

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ソフト

ウェア

紹介❷

はじめに 今から26年前の1984年、私の修士論文(和文) は手 書きであった。 それから3年 後の1987年、 NECのPC9800シリーズが普及し、当時としては 画期的なWordStarというワープロソフトで学位 論文(英文)を書き上げた。インターネットなど まだない時代、論文を執筆するときは参考文献の コピーを手元に山のように置き、それをひっくり 返しながらキーボードを叩いていたものである。 参考文献といえば、その別刷りやコピーの整 理法には頭を悩ませたものだ。博物館の標本と同 じで、増えることはあっても減ることはない文献 を、限られた時間とスペースでいかに効率よく整 理するかが、当時の研究者にとって大きな課題の 一つでもあったような気がする。私自身、著者 のアルファベット順にフォルダーを作成したり、 カード型データベースを構築したり・・・など試 行錯誤でいろいろ試みた覚えがあるが、結局その データベースが壊れてしまい復旧不可能となり、 それ以来大量の文献は(私が分野替えをしたこと もあるが)本棚の紙製フォルダーの中に眠ったま まである。 そして世紀がかわり2010年の現在、(幸運なこ とに)いまだに自分で論文を執筆している私のオ フィス環境はどうなっただろうか。まず第一に紙 媒体で論文を保管する機会が極端に減った。あっ たとしても、通勤時に読むために紙の上に出力す るくらいである。一方で、今度は新たな問題が 発生した。大量のPDF版論文(当時で1500編ほ ど)がコンピュータのあらゆるところにばらばら に保存されるという、悪夢のような状況になって きてしまった。紙版であろうがPDF版であろう が、やはり文献は整理しないとどうしようもない

PDF管理ソフト Papers ver. 1.9.4

宮 正樹(千葉県立中央博物館) ことがわかってきたのである。 Papersの登場 そこで救世主のように登場したのがPapersと いう文献整理ソフトであった(詳細については下 記サイトを参照;$42.00で40%の学生/グルー プ割引あり)。 http://mekentosj.com/papers/ 2008年の秋頃だろうか、オンラインジャーナ ル大手の Biomed Centralのサイトを閲覧してい たところ、バーナーにこのソフトの広告が(ま るで私の悩みを知っていたかのように)踊って いた。 残 念ながら Papersの作 者は熱 烈なMac ユーザであるためWindows版はないが、 類 似 のソフトはフリーウェアも含めて多数あるよう なので、PDF版論文の整理をしたい人は(Mac ユーザも含めて)各自の目的にあったものを探 していただきたい。また、私の場合は次回に紹 介予定の EndNoteと併用することによって効率 的な文献管理と参考文献欄の作成をしているが、 EndNote単体でもPDF版論文の文献管理が可能 であることを付記しておく。 Papersでできること Papersはひと言で言うとiTunes(注釈:ダウ ンロードした楽曲を管理するAppleが開発したソ フトウェア)の論文版である。ライブラリーと呼 ばれる論文のデータベース(一覧表のかたちで可 視化されている;図1)が基本となり、それを著 者や出版年、タイトルやジャーナルでソートした り、特定のテーマでグループ化したり、スポッ トライト(コンピュータ上のあらゆるファイルを メタデータを使って検索する機能)を使ってキー ワードで検索したりなど、さまざまな付加機能で 探したい論文にたどり着けるようになっている。 さらには閲覧モード(図2)もPapers内部にある ので、論文を読みたくなってもPDFリーダを立 ち上げる必要はない。また、インターネット検 索もPapers内部から可能である。ショートカッ トキーを使えば論文からキーワードを検索し、そ のままインターネットから情報を拾うことができ る。当然のことながら、これらのウィンドーはタ ブを使って移動できるので(図2)、ラップトップ のような画面が狭い環境でも有効に使える。 ライブラリーの構築 肝心のライブラリーはどうやって構築するのだ ろうか? 私の場合、地方の博物館で論文のダ ウンロードもままならないという、ある意味劣悪 な環境にいる。そこで共同研究者の一人であるポ スドクの井上潤君(当時フロリダ州立大学在籍) から、彼が集めた1,500編以上のPDFを提供し てもらい、それを元に論文コレクションを築いて きた。これまでデータベースを扱った経験から言 うと、これらの論文を一つひとつ登録するという 膨大な作業が待っているはずであったが、有り難 いことにPapersはちがった。PDFにメタデータ (論文のタイトルや著者などの基本的情報)さえ ついていれば、PDFをライブラリーにまとめてド ラッグ&ドロップするだけでそれらの情報を引き 出し、半ば自動的にライブラリーに登録してくれ るのである。幸い、およそ3分の2の論文(ほと んどは2000年以降に出版されたもの)はこのよう なかたちでライブラリーに登録することができた。 残りの3分の1(すでにライブラリーに入って いる)の文献情報の登録作業も案じていたほど大 したことはなかった。Matchという機能を用い ると、論文のタイトルや著者を選択できる画面 になり、それを検索語としてGoogleScholor や PubMed にアクセスし、Papersがライブラリー 登録に必要な情報をこれらのデータベースから引 き出してくれるのである。PubMed は医学・分 子生物学系に特化したデータベースであるため、 図1 Papersを開いたところ。ライブラリーが前面に出ている

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進化学全分野を網羅しているわけではないが、 GoogleScholorは古典的論文も含めてたいていの 論文を網羅しているため、この機能の恩恵は絶大 であった。 この作業を手の空いたときに少しずつ進めたと ころ、およそ500件のメタデータのないPDF版 論文(古い論文が大半)についても無事に 10日ほ どで書誌情報を登録することができた。あとは ダウンロードしてきた論文をライブラリーに日常 的にドラッグ&ドロップしてやる習慣さえつけて おけば、自然とライブラリーは充実したものにな る。もちろん、こうしたウェブに登録されてい る情報がすべてそのまま使いものになるかという と、そんなことはないので注意は必要である。細 かい修正は(すべての文献に対してではないが) 必須である。結局、書誌情報を手作業で入力す ることはあまりなく、無事にライブラリーを構築 することができた。 Papersのもう一つの良いことは、ソフトの側 が個々のPDFに決まったルールで名前をつけ(た とえば著者+発表年+ジャーナル名)、しかも階 層的なフォルダーを作成し、そこにわかりやすく ファイルを保存してくれることであろう。論文発 表年と筆頭著者の名前さえわかれば、Papersの ライブラリーの中からその論文のPDFだけを取 り出すことができる。ダウンロードした PDF論 文は番号しかついていない場合が多いが、この機 能があるおかげで訳のわからないPDFが大量に 図3 Match機能を使ってタイトルの一部(Neoselachian shark from the non-marine Wessex)からGoogle

Scholorを使って論文の書誌情報を検索したところ。古生物の論文でも一発で正確な書誌情報(右上)を検索す ることができた 蓄積することは避けられる。 iPadとPapers さらにもう一つ「長距離電車通勤者」には朗 報(?)がある。PapersにiPad版が出たのである。 実はiPadが発表されたとき、いったい誰がどの ように何に使うのかさっぱりイメージがつかめな かったのだが、まさに私のような長距離電車通 勤者(東京⇔千葉;片道1時間45分)のためにあ るものであることがわかった。これまで、読みた い論文や読まなくてはならない原稿(これがたく さんある)はいちいち印刷して通勤時に読んでい たのだが、それらをすべてiPadに移行できるの である。 それだけでない。iPadのWiFi + G3版 を購入すれば、インターネットを国内ならほぼど こからでも利用できるので、あらゆることの調べ がつくことを意味する。まさに動く電脳書斎であ る。早速、iPadの予約購入に走ったのは言うま でもない。 最後になるが、このように貯め込んだPDF版 論文の書誌情報は、EndNoteにもエキスポート できる。次回はこのEndNoteを紹介したい。 図2 論文閲覧モード。タブを使ってライブラリーと簡単に行き来できる 5月3日から13日まで、ギリシャ・クレタ島で 行 わ れ たEMBO Practical Course on Computa-tional Molecular Evolutionに参 加してきました。 オーガナイザはAlexandros Stamatakisさん(系統 解析ソフトRAxMLの開発者)、Giorgos Kotoulas さん(ギリシャ海洋研究センター)、Nick Goldman

さん(EBI)、Ziheng Yangさん(分子進化解析ソ フトPAMLの開発者)、Aidan Buddさん(EMBL) で、European Molecular Biology Organization の主催で行われました。

私は現在、オランダのライデン大学でポスドク をしています。オランダに移る前まではウナギの

EMBO Practical Course

on Computational Molecular Evolution

海 外 学 会 参 加 記

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分子系統と集団の研究をしていました。現在は魚 類生理学、とくに成熟・繁殖と種苗生産を研究 テーマとしています。今回のサマーコースの主題 は「分子進化解析の理論と実践」です。現在の研 究とは直接的な関係はありませんが、まだ解析中 のデータがあること、進化系統解析に必須の理 論の講義をこれまでに受けたことがないこと、さ らに、講師陣の面々が現在この分野をリードする 代表的な方々であることから、またとない機会と 思い応募しました。後で分かったことですが、参 加者40名の募集に対して最終的に280名の応募 があり、15%という非常に高い競争率だったそう です。コースに参加できることが決まったのは今 年2月の中旬頃で、とても嬉しかった一方で、一 抹の不安も感じました。というのも、オランダ に移って以降、分子系統学や集団遺伝学からは すっかり遠ざかっていたからです。発表されたプ ログラムの内容も予想以上に濃く、大丈夫かな と、多少の不安を感じながら、コース前日の5月 2日にクレタ島に入りました。 クレタ島は、まだ厚手のジャケットが必要な オランダとは違い、太陽が燦々と照り、気温も 25℃を遥かに越え、まさに夏です。アテネでは暴 動など不穏な動きもありましたが、クレタ島では そんなことはどこ吹く風、白いビーチとターコイ ズブルーの海を外に眺めながら、翌 3日からコー スが始まりました。このコースが開催されるのは 今年が初めて、この場所でこの類のコースが行わ れるのも初めて、今後の開催は今回の評価次第、 ということで、コース全体にある意味で新鮮な 緊張感がありました。会場はInstitute of Marine Biology and Genetics of Hellenic Centre for Marine Research( ギリシャ 海 洋 研 究センタ ) で、期間中滞在するホテルから歩いて20分程度 のところにあります。1日のスケジュールは、講 義前の自習時間(9時∼10時)の後、午前に2コ マ(午前10時∼11時半、12時∼13時半)、昼食 (13時半∼15時)を挟んで午後に2コマ(15時∼ 16時半、17時∼18時半)、その後、基調講演(19 時∼20時)で、途中1日のエクスカーションを除 いて、これが11日間続きました(図1)。 参加者は40名、基調講演とティーチングアシ スタントを含めた講師は 20名の総勢の60名の大 きなコースでした。参加者は、主催者が意図した 通り、様々なバックグラウンドを持つ人が集まっ ていました。イギリス、ドイツ、地元ギリシャか ら来た人がやや多数派で、他はフランス、イタリ ア、スイス、スペイン、ポルトガル、デンマー ク、クロアチア、ベルギー、ブルガリア、トル コ、インド、南アフリカ、ケニア、コスタリカ、 カナダなどから参加していました。私も含め半分 近くは自身の国籍とは異なる国に拠点を置いてい るので、「何カ国から何人が参加」と数えること にはもう意味がないように思いました。研究テー マや経験も様々で、大学を卒業したばかりの学生 から、修士・博士課程の学生、ポスドク、テク ニシャン、ジュニアおよびシニアリサーチャーま でがおり、とくに学生のなかには進化や生物、あ るいはバイオインフォマティクスの勉強を始めた ばかりで、このコースで行われるようなことは何 も知らない、という人もいました。参加者の研 究テーマは、バイオインフォマティクスと進化生 物学がおよそ半々といったところで、後者の中 では、扱っている分類群も節足動物(化石)から 線虫類、昆虫類、爬虫類、鳥類、魚類、哺乳類 図1 講義風景。机上のラップトップを使った実践に も多くの時間が割かれた など多岐にわたっていました。これほどまでに、 バックグラウンドが違う人が一堂に集まる機会は そうあるものではありません。講義の合間や食事 の際に、参加者同士で研究の話をするのは非常に 面白かったです。 コースは大きく分けて、Interpreting trees、 Resources & alignment、Building trees、Co-alescent theory、Hypothesis testingという5つ のテーマから成っていました。手始めとして基 本 的なUnix/Linuxコマンドの講 義を受けた後 (知っている人には大変退屈であったろう内容で す)、いよいよ本格的にコースが始まりました。 最初はAidan Buddさんが担当するInterpreting Trees の講義が行われました。ここでは、分子 進化や分子系統の基本概念と、nodeやbranch、 cladeといった用語(定義)の説明、系統解析の 基本的な流れの解説がありました。進化を研究す る人なら誰でも知っているべきことばかりでした が、今更ながら、自分が正確に理解していたこと を確認できたのはよかったと思います。

続いてBill PearsonさんとJavier Herreroさん を講 師として、Resources & Alignmentの講 義 が行われました。Bill Pearsonさんの講 義は( 私 にとっては)決して簡単ではなく、むしろかえって 混乱したのですが、中でも similarity と homol-ogy の話はとくに興味深かったです。BLASTな どの検索プログラムが実際に何をしているか、どの ようにsequence similarityを測るのか、sequence similarityからhomologyを推定するというのはど ういうことか、 homology という言葉の曖昧さを 強く認識させられました。 次の講 義はBuilding Treesというテーマで、 Olivier Gascuel さんとJohn Heusenbeckさんが 講師でした。このあたりから目に見えて疲れが出 始め、朝食をスキップする人、10時の講義のス タートに来るのが精一杯という人が増えてきまし た。講義はひたすら数学と統計です。参加者の 半分近くは普段ソフトウェアを使う側で、その背 景にある数学的・統計的理論にはさほど明るくは ありません。正直に言うと、私も苦手です。バ イオインフォマティクスを専門としている学生は 難なくついていけるのですが、そうでない者はド ロップアウトするかしないかのところで何とか踏 ん張っている感じでした。休憩の際に、参加者同 士で「さっきの理解できた?」「さっきのもう一回 教えて」という話をすることが一番多かったのは この講義中だったと思います(図2)。 この後Coalescent theoryの講義で、このコー スの中で私が最も勉強したかったテーマの一つで した。気力・体力ともに本格的にきつくなってき た頃でしたが、非常に楽しみにしていました。講 師はMikkel SchierupさんとRasmus Nielsenさ んです。Coalescent theoryは集団遺伝学の古典 的な理論のひとつですが、近年コンピュータ解析 上の困難が解決され、ここ数年で集団遺伝学の論 文で見かけることが急激に増えました。私自身も 数年前からソフトウェアを使って解析しているの で、このタイミングで「Coalescenceとは何か」 という基礎から学ぶことができたことは大変ラッ キーでした。 コース最後のテーマがHypothesis testingで、 図2 講師のNick Goldmanさん。尤度比検定の説明 中

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Nick GoldmanさんとZiheng Yangさんが講師で した。講義の中心はモデルの選択や、樹形の検定 ですが、何と何を比較するのか、何と何を比較す ることができるのか、何が帰無仮説になるのか、 尤度比検定を行う際の危険などを、統計検定の 基礎から解説してもらいました。 アイスランドの火山の噴火の影響で、基調講演 に招かれていたJeff Thorneさん(分岐年代推定 ソフトウェアmultidivtimeの開発者)が来られな くなったことを受けて、10日目にZiheng Yang さんが急遽、分岐年代推定について講義をしてく ださいました。時間が限られていたので、分岐年 代推定について一通りを説明するといった感じで したが、Jeff Thorneさんの講演を非常に楽しみ にしていたので、この緊急講義はとても嬉しかっ たです。分岐年代推定について、空いた時間に Yang さんに私のデータを見て頂いたり、アドバ イスを頂いたりすることができました。 現在の解析では、ソフトウェアにデータを入れ て、何回かクリックしたり、数行コマンドを打っ たりすれば、理解していようがいまいが、ともか く結果は出てきます。自分で計算してみようとは 思わないですし、データの規模が大きくなってき た現在では、そもそも現実的ではありません。今 回のコースの多くの講義では、あえてシンプルな データを用意して、手で樹形を描いたり尤度を 計算したり、またソフトウェアを使って簡単な 解析をする時間が多く設けられていました。例え ば、John Heusenbeckさんは、20面体のサイコ ロを全員に1つずつ配って、あるtransition prob-ability とstationary distributionの下で、 わたし たちに塩基置換の尤度を計算させました。Nick Goldmanさんは私たちに、χ二乗検定の分布表 を見て、尤度比検定をさせました。これらのこ とは、本来ならば当然理解しているべきことで、 頭では分かっていた参加者がほとんどだと思いま す。ですが、自分の手でやってみることで、ソフ トウェアが何をしているのか、どこに計算の難し さがあるのかを体感できたのは、今後解析をして いくうえでとてもよかったと思います。 コースのオーガナイザの一人と話した際に、バ イオインフォマティクスと進化生物学の間の距離 を近くしたい、ということも裏の目的であったと 聞きました。バイオインフォマティシャンや統計 学者は、実際には生物に触れることなく進化や系 統の研究をしています。公共のデータベースから 取って来たデータを解析したり、コンピュータを 使って、私たちが使う解析手法を開発したりし ます。一方で、私たち進化生物学を研究してい る側は、ある問題に対して、自分でサンプリング と実験をして取ったデータを解析します。私たち は、限られたデータで、できるだけ客観的に精度 の高い推定をしたいと考えます。しかし、例えば データが十分ではなかったり、計算において非常 に大きな負荷がかかったり、大きな分散を伴った りして、希望通りの解析をすることが(少なくと も現時点では)不可能ということが、私たちには 理解しづらいと思います。逆に、バイオインフォ マティシャンにとっては、なぜ私たちが問題を解 決するために理想的なデータを取らない(取れな い)のか、解決できない部分になぜそこまでこだ わるのかを理解しづらいと思います。そこにはい つも隔たりがあって、このコースの講義の中でも、 参加者同士の研究の話の中でも、2つの立場の距 離を感じました。それぞれの研究テーマや目的が 違うので、完全に理解し合う必要は必ずしもない と思います。が、視点を変えたときに問題になる 点や解決したいポイントを話し合う機会があった ことは、とても意味のあることだと思います。 もうひとつ、今回のコースで印象的だったの は、講師や参加者の距離が近く、雰囲気がとて もよいことでした。毎日一緒に勉強し、同じホテ ルに泊まり、すべての食事をともにするので、時 間とともに打ち解けるのは自然なことかもしれま せんが、こういったコースがいつも雰囲気がよい とは限らないと、別のコースに参加したことのあ 2005年から昨年までの5年間、長いこと日本 進化学会ニュースの編集委員長を務められた産業 技術総合研究所の深津武馬さんの後を引き継ぎ、 今号からその役目を務める千葉県立中央博物館 の宮です。会長の斎藤成也さんから今年早々に 編集幹事(=編集委員長)就任の打診を受けてど うしようかと逡巡していましたが、もとより文章 を書くことや編集の仕事が苦にならないので、お 引き受けすることにしました。私を補佐する役目 の編集委員には、スイス連邦水圏科学技術研究 所の荒木仁志さんとコンスタンツ大学の工樂樹洋 さんという海外で活躍するお二人に加え、進化学 会の中でもメディアに出る機会が最も多いと思わ れる国立科学博物館の真鍋真さんにお願いしまし た。三人とも海外経験が長く、しかも第一線で 活躍されている真の研究者ですから、きっと会員 の皆さんに有益な情報を届けてくれるでしょう。 ソフトウェア紹介でも述べましたが、iPadの出 現により、いよいよ紙媒体の出版物の運命が怪し くなってきました。このニュースの新たなあり方 (出版方法やその頻度・配布方法等)についても、 検討すべき時が来ているのかもしれません。ま た、ニュースの内容等についてご意見があれば、 遠慮無く私宛にメールをください [email protected])。よろしくお願いします。 る学生に聞きました。今回は毎日朝から晩まで かなりハードに勉強しているのに、講師の方も参 加者も一緒になって夕食の後ほぼ毎日一杯やっ ていました。John HeusenbeckさんやRasmus Nielsenさんと一緒に、みんなでビール片手にビ リヤードをやったり、Alexandros Stamatakisさ んやNick Goldmanさんと飲み歩いたりしたのは いい思い出です。こういうときは、研究や仕事の 話はほとんどしません。お国柄の違いや趣味のこ となど、本当にどうでもいい話ばかりを楽しくす るだけです。本来は、学会やコースの目的は情報 を得ることであったり、勉強することであったり すると思います。しかし、個人的にはそういった 場で、色々な人を見て、会って、話すという経験 そのものに価値があると思います。今回のサマー コースではバックグラウンドの違うたくさんの人 に会うことができ、そういう意味でも、非常に恵 まれていたと思います。 最終日、講義の全日程を終えた後でYangさん とGoldmanさんがこう仰っていました。

"If you did not understand half of the course, that's all right. We expected that." (Yangさん)

"...if you have understood between the half and two third of the course, we offer you a job. If you understand three quarters you get our jobs..."(Goldmanさん)

"In the beginning of our work we were con-fused. Now we are confused on a higher level." (Yangさん) 11日間、素晴らしい講師の方々から講義を受 けてもなお、私自身完全に理解できたとは到底思 えません。しかし、YangさんとGoldmanさんが 仰った通り、勉強するたびに、以前より少し理解 して、そのために少し混乱して、また勉強して混 乱して、それを繰り返していけばよいのだと思い ます。今回は、わたしにとっては非常に密度の濃 い充実したサマーコースで、本当に参加すること ができてよかったと思います。 最後に、コースを円滑に運営してくださった オーガナイザのみなさん、素晴らしい講義をして くださった講師の方々と、一緒に勉強し楽しい時 間を過ごした参加者のみなさん、このコースを紹 介してくださった千葉中央博物館の宮正樹さん に、この場を借りて感謝いたします。 ■編 集 後 記

参照

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