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財団法人日本オリンピック委員会説明資料(冊子)

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1 目次 はじめに ··· 2 緒言 1.スポーツの意義と JOC の社会的役割 ··· 3 2.オリンピック・ムーブメントと JOC の取り組み ··· 5 3.これまでの国際競技力向上における JOC の取り組み ··· 6 第1章 トップスポーツの現状 ··· 9 1.競技スポーツを取り巻く我が国の現状 ··· 10 2.トップスポーツを取り巻く我が国の現状の課題 ··· 12 1)組織 ··· 12 2)法務 ··· 13 3)財源 ··· 13 4)身分保障 ··· 14 3.国際競技力向上に関する諸外国の状況 ··· 15 第2章 スポーツ立国に向けた JOC の取り組み ··· 17 1.JOC ゴールドプランの更なる具現化と発展 ··· 18 1)これまでの施策の評価と発展 ··· 18 2)新たな施策の展開と充実 ··· 19 2.ディレクター、アドミニストレーションスタッフの プロフェッショナル化の推進 ··· 20 3.ナショナルトレーニングセンターの充実と発展 ··· 21 4.スポーツ離れが進む青少年世代へのアプローチ ··· 22 第3章 スポーツ立国に向けた JOC からの提言 ··· 23 1.国家戦略としてのトップスポーツ ··· 24 2.財政基盤確立の支援 ··· 25 3.トップコーチ・強化スタッフ、アスリートの社会的地位 ··· 27 4.ナショナルトレーニングセンターの有効活用と更なる整備 ··· 29 5.国際競技大会及び国際会議の誘致における国の保証・支援 ··· 31 6.有用な(スポーツ)人的資源の育成と活用 ··· 33

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はじめに

財団法人日本オリンピック委員会(JOC)は、2001 年 4 月、長期国際競技力向上戦略と して「JOC GOLD PLAN」を策定した。

そして、このプランをマスタープランとして、2016 年東京オリンピック大会開催時には、 金メダル獲得数で世界第 3 位を目指すことを決め、その目標達成のための戦略シナリオを 「JOC GOLD PLAN STAGEⅡ」として明示した。

世界第 3 位を目指すこの戦略シナリオをダイナミックに遂行するためには、たとえば、 オリンピック等の国際競技大会招致に不可欠な政府財政保証のような、国策でなければ解 決が困難な強化基盤となる課題が積み残されている。 JOC ではこれまでもオリンピック大会における強化の国策化を唱えてきたが、国政の場 においても「スポーツ省(庁)の設置」や「スポーツ振興法の改訂など」の論議が本格化し、 「スポーツ立国化」の流れが加速し始めている。このような中、JOC ゴールドプラン専門 委員会は、「JOC GOLD PLAN」のさらなる推進のために、トップスポーツにおける国家レ ベルの今日的課題を明らかにし、その解決へ向けた取り組みについての検討を行ってきた。 本レポートは、国際競技力向上における選手強化を中心とした視点より、トップスポー ツの現状と課題、スポーツ立国化の必要性についてまとめたものである。 このレポートの内容についてご理解いただき、スポーツ立国の実現に向け、関係機関・ 団体等の一層のご支援・ご協力をお願いする次第である。

財団法人 日本オリンピック委員会

選手強化本部長 福 田 富 昭 JOC ゴールドプラン委員長 田 嶋 幸 三 〃 副委員長 勝 田 隆 (スポーツ立国化検討プロジェクトチーフ)

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緒言

1.スポーツの意義とJOC の社会的役割 スポーツは、健康・体力の保持増進に加え、体を動かすことによる充足感、爽快感、達 成感、満足感、連帯感などの精神的充足をもたらし、明るく豊かで活力に満ちた社会の形 成に寄与するものである。また、先端的な学術研究や芸術活動と共有する人間の可能性の 極限を追求する世界共通の文化的行為としても考えられ、国家、民族を越えた相互理解を 促進するものでもある。 特に、オリンピック大会や国際競技大会等で展開されるトップアスリートの活躍は、見 る人々に大きな感動や楽しみ、活力を与え、その成果は、青少年をはじめとする多くの人々 のスポーツ活動の普及・振興に好ましい影響をもたらしている。 このような意義を持つスポーツの振興及びそのための推進力となるトップアスリートの 育成・強化の発展において、オリンピック理念に則り、オリンピック・ムーブメントを推 進し、スポーツを通じて世界の平和の維持と国際的友好親善に貢献するとともに我が国ス ポーツ選手の育成・強化を図り、持ってスポーツ振興に寄与することを目的として活動し ている財団法人日本オリンピック委員会(JOC)は、重要な役割を担っている。 スポーツ振興の推進力となるトップアスリートの育成・強化、つまり、国際競技力の向 上のためには、オリンピック・ムーブメントの推進による国民の理解と支援が必要であり、 オリンピック・ムーブメントの推進のためには、国際競技大会での選手達の活躍が必要と なる。 したがって、国際競技力の向上とオリンピック・ムーブメントの推進は、JOC の活動の 大きな両輪であるといえる。そして、2016 年オリンピック日本開催の実現は、この両輪を 推進していく上で、非常に重要な役割を担っているといえる。 JOC は、スポーツ振興基本計画に基づき、2001 年 4 月に“JOC ゴールドプラン”を策 定し、「国際競技力向上と維持のためのシステムと環境づくり」、「競技間連携の促進」、「オ リンピック・ムーブメントの推進」を掲げ、その実現に向け、具体的な施策に取り組んで きた。 そして、2004 年アテネオリンピック大会での成果を踏まえ、“JOC ゴールドプランステ ージⅡ”として、「2016 年第 31 回オリンピック競技大会を日本で開催」し、「金メダル獲 得数での世界トップ3 を目指す」ことを目標に掲げ、その目標達成のために、他国の情勢 を分析するとともに、選手・コーチ、そして、さまざまな分野の専門家が一丸となった「チ ームジャパン」のもと、日々選手強化活動を行っている。

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また、2008 年には、スポーツ界にとって半世紀に及ぶ悲願の「ナショナルトレーニング センター」が設置され、JOC では、この施設を有効に活用し、「チームジャパン」としての 総合力を活かすための新たな取り組みも展開している。 しかしながら、才能ある選手を発掘、育成し、世界と伍して戦える選手にまで強化する には長い期間を要する。また、2010 年からユースオリンピック大会も開催されることとな り、これを機に、さらにスポーツを通した青少年の健全な育成活動も、世界的に取り組む べき極めて重要な課題として掲げられている。 したがって、JOC は、JOC を中心にスポーツ界が一丸となり、中長期的な視点を踏まえ、 トレーニング環境の整備と、強化資金の充実と安定財源基盤の確立、指導者の育成、ネッ トワークの構築等をはじめとする施策を展開するとともに、このような活動に対する国民 の理解を得るために、オリンピック・ムーブメントの推進にも取り組まなければならない。 しかし、これらの諸施策を展開するには、現行の法律、制度、組織及び限られた財源等、 スポーツ界の努力だけでは解決できない課題も多く、国、政府、地方自治体、企業、大学 等とも連携した国を挙げた取り組みが必要となる。 そこで、トレーニング環境の充実、強化費の拡充、国際大会開催費補助、オリンピック 招致に伴う財政保証、企業・大学・地方自治体等が支援しやすい環境づくりなど、国際競 技力向上のための諸施策を国策として取り組んでいく必要性をここに提言する。

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5 2.オリンピック・ムーブメントとJOC の取り組み JOC は寄付行為において、その目的を「オリンピック憲章に基づく国内オリンピック委 員会として、オリンピックの理念に則り、オリンピック・ムーブメントを推進し、スポー ツを通じて世界の平和の維持と国際的友好親善に貢献するとともに我が国スポーツ選手の 育成・強化を図り、もってスポーツ振興に寄与することを目的とする。」と謳っている。 ここに謳われている「オリンピックの理念」とは、国際オリンピック委員会(IOC)の定 めるオリンピック憲章に記されているオリンピズムに他ならない。オリンピズムとは、「人 生哲学であり、肉体と意志と知性の資質を高めて融合させた、均衡のとれた総体としての 人間を目指すものである。スポーツを文化や教育と融合させるオリンピズムが求めるのは、 努力のうちに見出される喜び、よい手本となる教育的価値、普遍的・基本的・倫理的諸原 則の尊重などに基づいた生き方の創造である。」とされる。 つまり、JOC がスポーツ振興を図るということは、同時に、社会に対して、オリンピッ クの理念(オリンピズム)に基づく教育的価値や文化的価値も醸成させるということであ る。 ・JOC の取り組み JOCでは、オリンピック・ムーブメント推進のためのコンセプトとして、“日本代表選手 への応援”を挙げ、一部の人たちのオリンピックではなく「みんなのオリンピック」にす るため、そして、スポーツの持つ価値を多くの人たちと共有し、スポーツの愛好者を増加 させるために、オリンピック・ムーブメント推進事業の指針として、「認知と参加」を位置 づけ、広報型プログラムと参加型プログラムを展開してきた。 その結果、JOCホームページ、オリンピックデーラン、オリンピックコンサートなど、 一部の事業は定着し効果も挙げている。しかしながら、国民が能動的にオリンピック・ム ーブメントに取り組むまでには至っていない。 今後、2016年オリンピック・パラリンピック日本招致、2010年より開催されるユースオ リンピック大会等も踏まえて、オリンピック・ムーブメント教育の学校教育への導入や日 本の人的資源でもあるオリンピアン活用の制度づくり等に取り組むとともに、財団法人日 本体育協会、各競技団体、JOCパートナー都市、JOCスポンサー企業、地域タレント発掘・ 育成事業等との緊密な連動を図るなどにより、さらなるオリンピック・ムーブメントの推 進を図る必要がある。 また、オリンピック・ムーブメントを推進するために、人材の育成、ノウハウの蓄積を 図るとともに、事業の財源を確保するために、寄附、支援会員組織、マーケティング事業 等の充実とその基盤となるオリンピックマーク等の知的財産の保護や支援しやすい環境の 整備をする必要性がある。

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3.これまでの国際競技力向上におけるJOC の取り組み ・スポーツ振興基本計画とJOC ゴールドプラン 2000 年 9 月にスポーツ振興基本計画が策定された。スポーツ振興基本計画では、スポー ツ行政の主要な課題として「我が国の国際競技力の総合的な向上方策」が掲げられ、「早期 にメダル獲得率が倍増し、3.5 パーセントとなることを目指す。」という政策目標も示され た。これを受けて、「我が国の国際競技力の総合的な向上方策」についての責務を負うJOC は、2001 年 4 月に国際競技力向上戦略として“JOC ゴールドプラン”を策定した。 “JOC ゴールドプラン”は、「スポーツ振興基本計画」と連動し、JOC の役割を明確化 した長期的国際競技力向上計画であり、スポーツ振興基本計画に則った総合的(1 競技団体 ではカバーできない領域に焦点をあてた)施策であった。 ・JOC ゴールドプランステージⅡ JOC は、2001 年に策定した“JOC ゴールドプラン”をもとにした国際競技力向上と維 持のためのシステム並びに環境の整備をはじめとする選手強化事業を展開し、2004 年に開 催されたアテネオリンピック大会において、日本代表選手団は、金メダル16 個を含むメダ ル37 個を獲得し、金メダル獲得数で世界第 5 位となった。 このアテネオリンピック大会での成果は、スポーツ振興基本計画で示された「メダル獲 得率 3.5 パーセント」という政策目標を上回るものであり、この成果を踏まえて、JOC は 新たな夏季競技の目標として、JOC ゴールドプランステージⅡ ~夏季バージョン~を策定 し、「2016 年東京オリンピック大会を招致し金メダル獲得数で世界トップ3を目指す」こと を掲げた。 また、JOC ゴールドプランステージⅡ ~夏季バージョン~において、世界トップ3を達 成する基本条件として、ナショナルトレーニングセンターの活用、競技別強化拠点の整備・ 活用、財政基盤の強化、総合的な国際力の向上を挙げている。 そして、JOC では、世界トップ3を目指すための国際競技力向上の基本方針として、以 下のものに重点をおき取り組んでいる。 ①現場主義:選手強化現場とのコミュニケーションの促進 ②情報戦略活動の充実:勝つため・戦うための情報戦略 ③ナショナルトレーニングセンターの積極的活用:競技団体間の連携の推進 ④JOC スポーツアカデミー事業の展開 ・JOC ナショナルコーチアカデミー事業:インターナショナルレベル指導者養成

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7 <ナショナルトレーニングセンター> 諸外国を見てもナショナルトレーニングセンターによる選手強化の重要性や効果が極め て高いことは明かであり、我が国においても何度も設置構想や設置計画は持ち上がっては いたが、実現には及ばなかった歴史的経緯がある。 しかしながら、「スポーツ振興基本計画」において、「我が国の国際競技力の総合的な向 上方策」における政策目標達成のための必要不可欠な施策として、「トップレベルの競技者 の強化のため、ハード・ソフト両面において充実した機能を有するナショナルレベルの本 格的なトレーニング拠点を早期に整備する。」と明記され、実現に結びついた。さらに、ア テネオリンピック大会の成果を踏まえた小泉純一郎首相の指示により早期建設が叶い、日 本スポーツ界の半世紀に及ぶ悲願であったナショナルトレーニングセンターは、2008 年 1 月21 日より共用を開始した。2001 年にオープンした国立スポーツ科学センターに隣接し 設置され、今まで以上に、スポーツ情報・医・科学との連携を図った選手強化事業が行え ることとなった。 また、ナショナルトレーニングセンターに整備できない屋外競技種目、海洋水辺系競技 種目、冬季競技種目、高地トレーニング施設については、国内の既存施設を「ナショナル トレーニングセンター競技別強化拠点」(NTC 競技別強化拠点)として国が指定し、その上 で、ナショナルトレーニングセンターとのネットワークを構築することにより連携を図る こととなっている。

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1.競技スポーツを取り巻く我が国の現状 ・我が国における多岐にわたり複雑なスポーツ組織構造 我が国におけるスポーツ組織は、競技スポーツ、生涯スポーツ、レクリエーションスポ ーツ、学校体育、健康スポーツ、障害者スポーツ等の多種多様な独立した組織から構成さ れている。それらの組織は、それぞれが組織の能力の範囲の中で、国や管轄官庁等の示し た政策・施策の実現を目指した取り組みを行っている。多くの組織は独立しており、積極 的な連携を取ることも少ないことから、同様の取り組みが複数の組織で重複して行われる ことも少なくない。また、スポーツ界にとって有益な「知」が分散され、蓄積されにくい 組織構造でもある。 ・競技スポーツを担う人材の多くはボランティアである 我が国のスポーツがアマチュアリズムに支えられ普及し、発展してきたことから、競技 スポーツにおいても、ボランティアを基盤とする体制によって発展してきた歴史的経緯が ある。今日的にも、多くのボランティアによって競技スポーツにおける取り組みの多くが 支えられている。そのため、一部の競技団体を除き、多くの競技団体の組織力は強固なも のとは言えない状況にある。 ・企業や学校によるトップスポーツの牽引とその限界 我が国の競技スポーツを牽引してきた要素として、学校スポーツと企業スポーツがある。 学校スポーツは、高等学校や大学で課外活動(部活動)として行われている。企業スポー ツが整備されるまでは日本のスポーツの牽引役を担ってきた歴史がある。しかしながら、 少子化による生徒数の減少、運動部活動への参加生徒数の減少、専門的な指導の出来る指 導者の不足などにより、競技種目によっては、チームが編成できない、あるいは、十分な 指導ができなくなるなどの状況がある。 また、企業によるスポーツは、全国規模のリーグ戦や大会が実施され、それ以前の大学ス ポーツに代わり我が国におけるスポーツの牽引役を担った。しかしながら、企業によるス ポーツ活動はあくまでも企業の広告塔あるいはメセナ活動の一環であり、経済の好不況や 企業の業績等によって整理、廃止されることがある。実際に、バブル経済の崩壊による我 が国の経済的側面の減退に伴い、企業の競技スポーツからの撤退が相次いでおり、その成 立は極めて困難な状況にある。

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11 ・チームジャパンとしての実力(アテネオリンピック以降の競技力) アテネオリンピック大会でのチームジャパン(日本代表選手団)は、金メダル獲得数ラ ンキング(IOC ランキング)によると世界第 5 位であった。 しかしながら、アテネオリンピック大会翌年(2005 年)以降、世界選手権等をベンチマ ークし、毎年オリンピックが開催されたと仮想した場合のチームジャパンの実力について、 JOC は、2005 年は金メダル獲得数 6 個で第 14 位、2006 年は金メダル獲得数 8 個で第 10 位、北京オリンピック大会前年の2007 年は金メダル獲得数 5 個の第 15 位であったと分析 した。 また、2008 年に開催された北京オリンピック大会における日本代表選手団は、金メダル 9 個を含む 25 個のメダルを獲得し世界第 8 位という結果であった(図1)。 図1:チームジャパンとしての実力把握(アテネオリンピック以降の競技力) 0 5 10 15 20 25 30 35 40

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2.トップスポーツを取り巻く我が国の現状の課題 1) 組織 ・統括機能を持った組織の欠如 我が国には、日本のスポーツ界全体を統括する機能を持った組織がない。そのため、ス ポーツ界全体の構造は複雑化し、実行力の分散化を引き起こしている。 ・責任の所在が不明確 我が国では、スポーツ政策・施策の実行力が分散化しているため、政策・施策決定の責 任の所在が不明確である。 ・非プロフェッショナルな組織構造 我が国の多くのスポーツ関連機関では、人的資源をボランティアに依存しているために、 結果責任を負うことができない組織構造である。 ・文部科学省の枠組み内でのトップスポーツ スポーツ立国化が実現すれば、トップスポーツは国策として国の責務によって取り組ま れることになるが、現在、トップスポーツは、文部科学省の枠内での計画や方策に基づき 取扱われており、国策としての取り組みとはなっていない。

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13 2) 法務 ・国の責務が明記されていないスポーツ振興法 我が国のスポーツの振興に関する施策についての法令であるスポーツ振興法には、国の 責務が明記されていない。しかしながら、文化芸術の振興に関する文化芸術振興基本法に は国の責務の明記がなされている。 ・国が定めるスポーツ統括組織がない 我が国には、スポーツ統括組織を国が定める法的根拠となる法令が整備されていない。 そのため、スポーツ界全体の構造は複雑化し、実行力の分散化を引き起こしている。 ・トップスポーツに関わる選手、コーチが法的に保護されていない 我が国には、トップスポーツに関わる選手やコーチの権利を保護する法的根拠となる関 連法令はない。したがって、生活の安定を得て競技力向上に専念できる権利が確保されて いないと言わざるを得ない。 3) 財源 ・1/3 を負担しなければならない国庫補助事業 選手強化委託事業への国庫補助金は、補助対象となる費目の3 分の 2 相当分の補助であ るため、競技団体は最低でも3 分の 1 以上の自己財源を確保しなければならない。また、 国庫補助金を増額することは、競技団体の自己負担額も同時に増大することとなり、財政 的基盤の脆弱な競技団体では自己負担分の財源を確保できず、事業の実施を見送ることも あり得る。 ・単年度予算 我が国では、国の制度上、単年度予算編成である。しかしながら、選手強化事業は、中 長期計画(主に 4 年周期)に基づき行われるものも多く、単年度の予算編成では期待した 成果を挙げにくく、また、継続性を有する事業計画も推進しにくい状況となっている。 ・税制上の優遇措置 JOC は特定公益増進法人として国に認定されているため、寄附金優遇の適用団体である。 しかしながら、多くの競技団体は公益法人であるため法人格と税の優遇(法人税面での優 遇)は連動しているが、特定公益増進法人ではないため、寄附金優遇を受けていない。ま た、充実した選手強化事業を実施するための民間資金の調達は、収益事業とみなされ法人 税等が課税され、十分な財源を確保しにくくなっている。

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4) 身分保障 ・トップスポーツに従事する者の多くは企業の所属である トップスポーツに従事する者の多くは企業への所属・契約をしていることから、経済動 向にも左右され、安心して競技に専念できる環境が整備されているとは言い難い。また、 セカンドキャリアも、所属・契約している企業に依存しているのが現状であり、同様に経 済動向にも左右され、不安定な基盤であると考えられる。 ・国家による報償金制度がない JOC によるオリンピック大会での報償金制度はあるが、国家による報償金制度は整備さ れていない。 ・スポーツにおける褒賞制度が整っていない オリンピック競技大会優秀者顕彰やスポーツ功労者顕彰が設けられているが、文化功労 者に支給されている年金制度はスポーツに関する各顕彰には設けられていない。また、ス ポーツ単独の勲章制度は、現在、存在しない。 ・出産、子育てが競技継続の障壁となる 女性トップアスリートにとって、出産や子育てに関する環境整備や配慮の不足が競技継 続の障壁となることが多く、その支援制度も整備されていないのが現状である。また、ト ップアスリートとしてのパフォーマンスのピークと出産、子育てが重なることも考えられ ることから、支援制度は国際競技力向上に対する直接的な支援にもなる。

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15 3.国際競技力向上に関する諸外国の状況 世界の国際競技力向上に向けた取組みに大きな違いはなく、世界の国際競技力向上の戦 略フレームは、(1)競技力向上の拠点(中核拠点、ハブ拠点)の整備、(2)強化費の増 加と重点投資、(3)強化戦略プラン(重点種目の設定)の策定・実行、(4)競技力向上 プログラム/施策の全国規模の展開、の4つに集約されると考えられる。 このフレームにおける国際競技力向上の具体的プログラムとして、(1)競技力向上の総 括組織の設置、(2)情報戦略活動、(3)タレント発掘・育成、(4)コーチ育成・研修、 (5)スカラーシップ(アスリートプログラム)、(6)キャリアサポート、(7)医・科学 サポート、(8)テクノロジー研究開発(マテリアル開発)等の施策が展開されている。 大枠として同様のフレームの中で、世界各国は、国際舞台での戦いにおいて「僅かな差」 を生むために、さまざまな工夫と挑戦を行っている。

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1. JOC ゴールドプランの更なる具現化と発展 1)これまでの施策の評価と発展 競技者育成プログラムの推進 スポーツ振興基本計画における到達目標として、2005年(平成17年)を目途に、各中央 競技団体が指導理念や指導内容を示した競技者育成プログラムを作成し、このプログラム に基づき競技者に対し指導を行う体制(トップレベルの競技者を組織的・計画的に育成す る一貫指導システム)を整備するよう進めてきた。この結果、いくつかの競技団体で一貫 指導システムによりジュニア選手における競技力の向上が現れつつある。 今後は、既に整備された各競技における競技者育成プログラムを再評価するとともに、 競技者育成プログラムに基づく一貫指導システムのさらなる普及・促進を図る必要がある。 競技間連携プロジェクトの更なる発展 世界の変化のスピードに対応していくためには、1競技団体だけでは対応しきれない諸問 題が存在する。その諸問題を解決していくために、異なる競技・種目による合同トレーニ ング・合宿等を通じて、情報の共有化や人的交流を図り、チームジャパンとしての意識を 醸成させる積極的な競技間連携に取り組んできた。 また、福岡県、岡山県、和歌山県等で行われている識別型地域タレント発掘・育成事業 や美深町で行われているトランポリンからフリースタイルスキー・エアリアルへの種目転 向型のタレント発掘・育成事業等、競技間連携が必要となる新たな動きも出てきている。 このような戦略的なタレント発掘・育成事業やナショナルトレーニングセンターを利用 したクロストレーニング等、競技間連携の更なる推進、発展を図る。 競技団体評価基準の改定 各競技団体の国際競技力を評価するため、競技実績、育成システム、国際的な人材の育 成、アンチ・ドーピング、JOCとの協調性等の面より評価を実施してきた。 ナショナルトレーニングセンターが開所されたことにより、各競技団体の選手強化に係 る活動も新たな局面に直面することになる。競技団体評価基準においても、これら周辺環 境の変化等に対応した改定を行う。

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19 2) 新たな施策の展開と充実 識別型地域タレント発掘・育成事業の支援、推進、統括 各地域で行われているタレント発掘・育成事業において発掘・育成された競技者が、日 本を代表する競技者へと育成されるためにも、競技種目を選ぶ機会及び競技種目特性を見 出す環境の整備、それに伴う地域タレント発掘・育成事業の拡大、各競技団体に繋げるパ スウェイの構築、受入れる競技団体の競技者育成プログラムの高品質化とその維持を推進 する。また、ナショナルトレーニングセンターを活用することで、地域タレント発掘・育 成事業、競技者育成プログラムとJOCエリートアカデミー事業との連携、推進を図る。 包括的強化戦略本部の設置 従来、日本代表選手団本部は国際総合競技大会の直前に編成されてきた。そのため、チ ームジャパンとしての包括した戦略を持つことが困難であった。また、包括戦略が整備さ れていないことにより、プライオリティアスリートの選定などの重点的な環境整備を行う ことも困難であった。 JOC として、早期に日本代表選手団包括的強化戦略を策定し、メダル獲得の可能性が高 い競技種目・アスリート、将来有望なアスリート等への重点的な支援をはじめとする『主 導型』の強化・育成システムへの転換を図る。 チームジャパン実力把握の充実 日々刻々と変化する世界のスポーツ界に対応していくために、チームジャパンの国際競 争力を国際総合競技大会直前に分析するのではなく、日々の活動として各競技の世界選手 権等も含めた実力把握と分析を行うとともに、その精度の向上に努める。 また現在、本活動で得られたデータの一部は、チームジャパンデータブックとして発行 し、各競技団体へフィードバックしているが、さらに、分析の精度を高め、日本代表選手 団包括的強化戦略の立案において活用することを図る。 JOC ゴールドプラン ステージⅡ(冬季競技)の制定と推進 JOC ゴールドプランステージⅡ 夏季バージョンは既に策定され、2016 年東京オリンピ ックを招致し金メダル獲得数で世界第 3 位を目指して選手強化を推進している。しかしな がら、冬季競技に関してはJOC ゴールドプラン ステージⅡでは触れられていない。 よって、冬季競技種目のチームジャパンとしての現状を把握し、実力を分析し、ステー ジⅡ冬季バージョンの早期策定を進める。

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2.ディレクター、アドミニストレーションスタッフのプロフェッショナル化の推進 指導者・強化スタッフのレベルアップ より質の高いコーチ、強化スタッフの養成及び積極的な活用のために、ナショナルトレ ーニングセンターにおいてJOC ナショナルコーチアカデミー事業を展開している。 この事業の内容を充実させ、拡大することにより、プロフェッショナル意識を持つ優秀 なコーチ、強化スタッフを養成し、新たな専任ディレクター制度の導入を図る。また、JISS との連携強化も図り、情報戦略、医学、科学の知識を持ち、それらをマネジメントし、ア スリートのサポートチームとしてコーディネートできる人材の育成も図る。 アドミニストレーションスタッフのレベルアップ より効率よく効果的な選手強化事業を行うためには、アドミニストレーション機能を高 める必要性は高い。JOC における事務局の能力アップをはじめとして、各競技団体の事務 局のアドミニストレーション能力の向上を図ることも重要である。また、国際スポーツ界 における我が国のプレゼンスを高めるためにも、高い交渉力と強い発言力を持ったスポー ツ国際人の養成も図る。 トップコーチ・強化スタッフのJOC の契約又は雇用制度 現行制度では、国際競技力向上に務めている専任コーチ、強化スタッフ等の活動は活動 謝金となっている。包括的強化戦略の下、プライオリティアスリートの強化・育成を行う にあたり、社会的な身分が保証されておらず、不安定な生活を強いられている。安心して 国際競技力向上に取り組み、常にチームジャパンを念頭においた指導を実践するために、 社会的な地位の向上やJOC との契約あるいは雇用など、専任コーチ、強化スタッフ等の制 度の見直しを図ることが必要不可欠である。また、国際基準の指導レベルを保持するため に、「任期4年、再任2回まで」などの条件付けや優秀者に対するナショナルトレーニング センターのディレクターやJOC ナショナルコーチアカデミー事業の講師などへの昇格制度 も設定する。

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21 3.ナショナルトレーニングセンターの充実と発展 教育プログラムの充実 JOCスポーツアカデミー事業(JOCエリートアカデミー事業、JOCナショナルコーチア カデミー事業、JOCキャリアアカデミー事業)を通じて、ナショナルトレーニングセンタ ーで展開される教育プログラムの充実を図る。 ・JOCエリートアカデミー事業 現在の卓球及びレスリングのJOCエリートアカデミー事業を、ロールモデルとして充 実を図り、他の競技にも拡大を図る。 ・JOCナショナルコーチアカデミー事業 プロフェッショナルな指導者を養成することを目的とし、高度な専門的能力を取得す るためのプログラムが展開されている。また、コーチだけを対象とするのではなく、 マネジメントスタッフや情報戦略に関わるテクニカルスタッフ、医科学サポートを行 うドクター、トレーナーの養成も目指した拡大も検討されている。 ・JOCキャリアアカデミー事業 「ジュニア期からのキャリアデザイン教育」、「キャリアトランジション克服能力の強 化」、さらには「本人のやりたい仕事、やらせたい仕事の顕在化」を柱としたトータル なケアをしていくための支援プログラムを充実する。 国際力の強化 スポーツ国際人養成プログラムがナショナルトレーニングセンター内で展開されるよう プログラムの作成と構築を図る。また、JOCエリートアカデミー事業のプログラムとして 国際力の向上を意図した長期海外留学制度、JOCナショナルコーチアカデミー事業におい ても、国際協力機構(JICA)と連携した青年海外協力隊として指導者派遣などのスポーツ 指導者海外研修事業の充実・発展を図る。また、第4のJOCアカデミーとして、国際的なア ドミニストレーターを養成するアカデミーの開校を検討している。 情報戦略・拠点ネットワーク NTC競技別強化拠点、競技団体、地方自治体、JISSとナショナルトレーニングセンター の連携を図るとともに、国際競技力向上のための情報を収集・分析、集積、配信を行う。 また、各拠点(NTC競技別強化拠点、地方自治体等)と連携しナショナルタレント発掘・ 育成事業の展開を図り、競技団体とのパスウェイ確立にも努めながら、各拠点でのコーデ ィネーターとなる人材の育成を図る。 さらに、全競技共通のコントロールテストを実施することで、競技間連携の更なる促進 を図る。このテストにより得たデータは日本代表選手の基礎体力を把握し、比較するため だけではなく、タレント発掘・育成事業にも活用し、一貫指導システムの構築に役立てる。 加えて、諸外国のナショナルトレーニングセンターとの連携を図ることにより、国際競 技力向上のための国際ネットワークの構築を図る。

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4.スポーツ離れが進む青少年世代へのアプローチ ユースオリンピック大会の重要性 2010年より開催されることが決定しているユースオリンピック大会については、JOCと して、オリンピック大会へのパスウェイの一つとして位置づけ、JOCスポーツアカデミー 事業や関連スポーツ団体と連携しつつ、また、IOCロゲ会長が意図している「未来から託さ れているスポーツ」であることも意識した上で、JOCとして派遣方針を策定し派遣を行う 予定である。 ユースオリンピック大会の出現により、我が国における当該年代の競技大会の構造が再 編、再考される可能性が高い。特に、将来オリンピックでのメダル獲得などの活躍が期待 される選手においては、国内で行われている全国大会や国民体育大会ではなく、ユースオ リンピック大会への出場の重要性が極めて高くなることも考えられる。 学制による進学に伴った選手強化・育成環境の分断化の改善 学校の部活動を中心に活動していた生徒は、中学でのトーナメント大会の終了から中学 卒業、高等学校入学までの期間、トレーニングや試合を行う競技の環境を失うことになる。 この高等学校進学に際しての強化育成環境の分断化が起こるのを防ぐために、サッカーで は、国民体育大会のU16化を行い、U17ワールドカップに備えた強化育成環境を整えている。 このような取り組みは、各競技で極めて重要であり、整備を行う必要性がある。

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1.国家戦略としてのトップスポーツ 1)国家戦略としてのトップスポーツ オリンピック等の国際競技大会において優秀な成績を納め、その力を維持して行くため には、個人あるいは競技団体レベルの取組みだけでは、もはや世界に伍していくことは困 難である。イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア等に代表されるさまざまな国々 が、国際競技大会での成功に向けて、国策としてトップスポーツの育成・強化に取り組ん でいる中、日本も、「国際競技力の向上」を国の重要政策課題と位置づけ、国策としてト ップスポーツの育成・強化に取り組んでいくべきである。 2)既存の枠組みを超えた取り組み 我が国のスポーツ振興体制は、JOC や日本体育協会、日本スポーツ振興センターなどさ まざまな組織・機関が複雑に存在した構造となっており、この複雑な統括機能が、我が国 のスポーツ力を分散させている。国家戦略として総合的なスポーツ振興政策を展開するた めには、文部科学省からの強化費助成の一元化も含め、スポーツ関連行政を一元的に推進 できる体制を整備する必要がある。 また、我が国のスポーツ関連予算は、文部科学省だけではなく、さまざまな省庁に分散 化されている。厚生労働省や社会保険庁では「健康」あるいは「体力づくり」という名目 で事業が行なわれ、国土交通省においては「公園整備」という名目でスポーツ関連設備や 施設の整備に国費が使われている。 現在、競技スポーツに関する諸施策は文部科学省の所轄下にあるが、国際競技力の向上 を国家戦略として推進するためには、スポーツ関連予算も含め、スポーツ関連行政を一元 的に推進できる「スポーツ省(庁)の設置」が必要である。

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25 2.財政基盤確立の支援 国家予算の拡充と柔軟な運用 選手を育て、強化していくためには、ハード面、ソフト面、そしてそれを稼動するため のシステム構築に、膨大な資金が必要となり、諸外国に伍して競い活躍する日本選手の強 化事業費は、まだまだ財源が不足している。 環境を整備し、国の代表として派遣する選手を見つけ、育てるために、選手強化のため の運用しやすい国家予算の大幅な拡充が必要である。 1)補助率90%以上 選手強化委託事業への国庫補助は、現状、補助対象となる費目の3分の2補助となって いる。これは、最低でも3分の1以上の自己財源が確保できなければ、強化事業に取り組 めないこととなる。財政的基盤の脆弱な競技団体では、自己負担分の財源を確保できず、 JOCの補助、選手個人の自己負担等に頼っている。 日本の代表するトップアスリートの強化及び国際競技力向上は国策とし、補助対象費目 の拡大とともに、補助率も国の全額補助あるいは90%以上とすべきである。 2)運用の柔軟性 ガソリンをはじめとする物価の高騰、海外合宿・遠征等に関わる為替レートの変動など 現実に即した単価設定、諸外国の強化施策に対抗するための臨機応変な対応などに、適用 できるよう、JOCの裁量により変更可能な運用面で柔軟性のある国家予算の運用の仕組み の整備、また、対象経費の対象費目の拡充などが必要である。 3)補助先の一本化 国際競技力の向上を推進するためには、競技団体毎の選手強化に加え、チームジャパン のもと、競技・種目を超えて横断的に選手強化を進めることも必要となり、事業全体の企 画・立案、組織化、評価等の役割を担うJOCのリーダーシップが不可欠である。そのため、 必要となる財源の補助も、JOCに一本化すべきである。 よって、NTC競技別強化拠点やニッポン復活プロジェクト重点強化予算をはじめとする 国際競技力向上に係る国家予算は、直接JOCに補助を一本化することにより、より効果的 に活用されることとなる。 4)複数年度での国庫補助 複数年度(例、オリンピアードである4年)での予算編成が行えることで、オリンピッ クに向けた中長期計画に基づいた選手強化を進めることが可能となり、選手強化費はより 効率的に活用されることとなる。

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民間資金導入のための支援 国際競技力の向上のための国家予算の拡充や補助率アップによる国の支援のみならず、 更に選手強化を図るとともに、国民からの理解と信頼を得られるよう運営の適正化及び透 明性を促進し、オリンピック・ムーブメントを推進するために、民間から財源を確保する 必要がある。 1)オリンピックマーク等の知的財産の保護 JOCは、自己の持つマーク、エンブレム、スローガン等の知的財産を、支援していただ いている企業等に使用する権利を付与することにより、民間資金を確保している。このよ うなマーク等は、現状、商標法あるいは不正競争防止法等により一部保護されているもの の、その保護の範囲は万全ではなく、不正使用、流用の防止のために多額の費用も発生し ている。更なる保護のために国による法制化等の支援が必要である。 オリンピックマーク等の万全な保護は、オリンピック招致にも必要な条件としてIOCより 求められており、ギリシャ、中国、イギリスを始め、オリンピック開催国では法的に整備 がなされている。 2)税制面での優遇措置の推進 オリンピックマーク等を活用した民間資金の調達は、景気に左右されやすく、また、近 年はIOCによる規制等もあり、次第に限界となりつつある。 さらに、これらの民間資金の調達は、収益事業と位置づけられ、JOCは公益法人として 税法上優遇されているものの、選手強化、スポーツ振興という公益事業を推進するための 財源として調達した民間資金から法人税等が控除される等の有効な活用ができないことと なっている。また、選手強化、スポーツ振興を推進するための目的税の導入も含め、指定 寄附金等の税制面での優遇措置の推進が必要である。 3)競技力を支える企業等への支援措置の充実 近年の経済不況等による企業がかかえるスポーツチームの休廃部は、国際競技力の向上 を図る基盤を揺るがしている。競技力を支える企業や選手強化に支援をしている企業等に 対し、税制面を含め、よりスポーツへの支援をしやすい環境を整える必要がある。また、 国際競技力向上に関する寄附についても指定寄附金を適用するべきである。 4)オリンピック競技大会等の放映権料の分配

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27 3.トップコーチ・強化スタッフ、アスリートの社会的地位 謝金から契約・雇用へ 現在のトップスポーツを支えるコーチや強化スタッフ(専任コーチ、専任情報・科学ス タッフ、専任トレーナー等)は、謝金支払いになっているため、雇用の形態は取っておら ず、多くの場合、国民年金や社会保険といった社会保障制度への加入に関する全額が自己 負担となる。しかしながら、安心して国際競技力向上における事業に携わるためには、雇 用や契約といった形態を取るなどの社会保障制度の整備が必要である。 トップアスリートの活用 スポーツ交流はもとより、トップアスリートとしてのパーソナリティや人的なネットワ ークを活かし、スポーツ(競技現場)以外の分野においても、スポーツ大使(アンバサダ ー)への活用や、スポーツ省(庁)が設置された場合にはスポーツ大臣として登用できる 制度の整備が必要である。 奨学金、傷害・失業保険制度、互助制度等の確立 経済的に恵まれない学生競技者への学業費用の援助や、世界選手権等に出場する直前の 準備期間に対する給料の保障(補充)など、トップ競技者が競技と職業・学業を両立させ るための資金援助、コンサルタントを行う支援団体の設立、システムの確立が必要である。 ドイツには、アスリート援護財団があり、上記のようなサポートが行われている。 女性トップアスリートへの出産、子育て支援制度の整備と充実 上記のように、トップアスリートへの社会保障制度の整備は十分ではない。その上、女 性トップアスリートの出産、子育てに関する環境整備や配慮は不十分であるために、女性 アスリートの競技継続を阻むことも多い。出産、子育てを経験した女性トップアスリート の活躍は、男女共同参画社会のロールモデルとなり得ることからも、女性トップアスリー トへの出産、子育て支援制度が整備されるべきである。 トップアスリートの資格取得支援とポストの優先配分 トップアスリートの博士課程、修士課程進学推薦制度を整備し、学位取得に向けての環 境支援システムの構築を図る必要がある。また、トップアスリートの学位取得に伴って、 体育系大学、自衛隊体育学校などの「高等教育機関」において、博士・修士を取得したト ップアスリート教員枠を確保するシステムも構築する必要がある。 ナショナルコーチアカデミー修了資格の発展・展開と修了者の活用 ナショナルコーチアカデミー修了資格の学位(博士・修士)への発展と、トップスポー ツにおける業績の学術業績化について検討する必要がある。また、上記の高等教育機関に

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おけるトップアスリート教員枠の確保に向けたシステム構築との連動も推進すべきである。 さらに、ナショナルコーチアカデミー修了者が、各ブロック・エリアにスポーツコディ ネーター/スポーツディレクターとして配置され活用されることで、地域におけるスポー ツ振興にも寄与できるシステムも整備されるべきである。

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29 4.ナショナルトレーニングセンターの有効活用と更なる整備 1)ナショナルトレーニングセンターの施設利用料の低廉化 スポーツ界では、1964年の東京オリンピック開催前よりナショナルレベルの専用のトレ ーニング施設の設置を訴え、半世紀を経て悲願がようやく実った。しかしながら、国際競 技力の向上を目的としたナショナルレベルの専用トレーニング施設にもかかわらず、専有 面積に応じた施設利用料が設定されている。 JOCでは、各競技団体の利用促進を図るために、施設利用料、食費、宿泊費などを一部 負担することとしたが、これによりJOCの予算を圧迫する結果を招いている。 諸外国、特にスポーツ先進国では、国やサッカーくじ収益金からの補助により、殆どが 無料となっている。 我が国のナショナルトレーニングセンターも競技団体の負担を軽減し、選手やスタッフ がトレーニングに専念できる環境を一日でも早く実現させるためにも、ナショナルトレー ニングセンター利用料の更なる低廉化・無料化を図るべきである。 2)ナショナルトレーニングセンターにおける選手強化事業費の補助 JOCでは、ナショナルトレーニングセンターを利用して、さまざまな選手強化事業を推 進する。ナショナルトレーニングセンター本来の目的である選手強化合宿はもちろんのこ と「JOCスポーツアカデミー事業」を中心に、「栄養管理事業」、「拠点・ネットワーク連携 事業」、「競技間連携事業」、「スポーツ情報・医・科学連携事業」、「アンチ・ドーピング普 及事業」、「国際交流事業」、「スポーツ国際人養成事業」など、多岐にわたって国際競技力 の向上に必要不可欠な事業を計画している。 特に、JOCスポーツアカデミー事業は、ナショナルトレーニングセンターのオープンと 同時にスタートした事業であり、その他の事業も、諸外国では、既に積極的に取り組まれ ているものばかりである。我が国も、これらを国策として、より一層支援し、充実した予 算を確保し、実施すべきである。 3)その他ナショナルトレーニングセンターの整備 北区西が丘に開設するナショナルトレーニングセンターでは、屋外競技、海洋/水辺系 競技、冬季競技、高地トレーニングなどには十分な対応ができない。これらに対処するた めに、文部科学省では、平成19年度より既存の国内施設を、「ナショナルトレーニングセ ンター(NTC)競技別強化拠点」として指定・支援を実施している。しかし、ハード面、 ソフト面、システム面において諸外国と比較して見劣りすることは明白である。屋外競技 NTC、海洋・水辺系競技NTC、冬季競技NTC、高地NTC等となるよう整備し、N TC中核拠点との連携・協力を図り、効果的に選手強化ができる環境づくりが必要である。

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4)西が丘地区のスポーツ教育特区化

東京都北区西が丘地区を、スポーツによるエリート育成を目指した教育特区とし、義務 教育課程とナショナルトレーニングセンターで行われているJOCエリートアカデミー事業 とを連動させた、国際競技力向上のための年齢に応じた一貫指導システムの構築、スポー ツ国際人として日本を代表することのできるエリートアスリートの養成を行う必要がある。

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31 5.国際競技大会及び国際会議の誘致における国の保証・支援 2016年オリンピック招致への支援 1)財政保証と知的財産の法的保護保証 2016年オリンピック日本招致を実現するためには、IOCが要求する国の保証を明確に示 す必要がある。19の項目において政府保証を求められている。 その項目の中で、特に、重要と位置づけられているのが、政府の財政保証とオリンピッ クマーク等の法的保護である。 この2つの政府保証は、国家的なイベントとして位置づけられるオリンピック大会の招 致を成功させるためには必要最低限のものである。 2)政府関係者の参画 オリンピック招致委員会及び招致のためのプレゼンテーションへの大臣や政府関係者の 参画、さらには、各種国際競技連盟(IF)との関係構築、ODA等を活用したロビー活動等 により、国内的にも、国際的にも招致活動を効果的に推進でき、また、国を挙げての姿勢 を明確に示すことができる。 国際競技大会及び国際会議の招致における国の保証・支援 1)招致における保証 国際競技大会の日本招致は、オリンピック大会と同様、国際競技力の向上及びスポーツ を通した世界平和・青少年の育成等に大きな意義を持つ。 しかし、その招致に際してはオリンピック大会と同様、政府保証がなければ、日本開催 が困難な場合があり、これらが可能になるような法整備が必要である。 2)開催経費の補助 IOC、IF、アジア・オリンピック評議会(OCA)、各種アジア競技連盟(AF)が主催す る国際競技大会の日本開催には、多額の費用がかかる。これらは国がしっかりとした補助 をする必要がある。 3)国際人の養成 国際競技大会及びスポーツに関連する国際会議を日本にて開催することは、スポーツに おける日本のリーダーシップを確立し、そして、国際的に影響力を持つ人材を育成するこ とにも繋がることより、国策として取り組むべきものである。

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4)指定寄附金の対象項目に関する検討 自国で開催されるオリンピック大会については、指定寄附金が適用されるが、オリンピ ック大会以外の国際競技大会や国際会議の開催については適用されない。 オリンピック大会と同様、国際競技力の向上及びスポーツを通した世界平和・青少年の 育成等、スポーツにおける日本のリーダーシップを確立するためにも指定寄附金の適用の 拡大を図るべきである。

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33 6.有用な(スポーツ)人的資源の育成と活用 選手・指導者等の海外派遣の整備 トップアスリートの競技力向上とともに、キャリアサポートに有効である海外派遣制度 を充実させることは重要な施策であり、同様に、ジュニアアスリートや指導者を対象とす る派遣制度も整備する必要がある。 また、青年海外協力隊等によるスポーツ指導者の海外派遣等においても、スポーツによ る日本のリーダーシップを確立するために、JOCとの連携・協力関係を築き上げる必要が ある。 トップアスリートの活用 国家の代表としての国際的な経験を持ったアスリートは、国に対しても有益な人的資源 であると考えられる。スポーツ交流はもとより、トップアスリートとしてのパーソナリテ ィや人的なネットワークを活かし、スポーツ以外の分野においても、アンバサダーとして 活用できる制度を整備する必要がある。また、その有益な資源を、国を挙げて育成するこ とは、国にとっても重要なことである。 スポーツを通じた全人的な教育制度の構築 スポーツを通じた真の国際人を本格的に養成し輩出するための「海外研修」制度、また、 教育機会を保障するための「チューター」制度の充実が必要である。エリート選手に対し ては教育制度においての柔軟な運用の必要性について検討し、併せて前述のスポーツ教育 特区制度と連動し、高い効果を果たすエリート教育制度の構築が求められる。 オリンピック・ムーブメント教育の推進 国際競技力の向上を図り、2016年オリンピック日本開催を実現するためには、オリンピ ック・ムーブメントの推進により、国民の理解と支援が必要となる。 IOCが、2010年より、青少年のスポーツ大会とスポーツ教育を兼ねたユースオリンピッ ク大会を開催することを決定したことを契機に、青少年のコミュニケーション能力の欠如 や引きこもり、いじめなどの課題がクローズアップされている現代社会において、オリン ピック・ムーブメント教育を学校教育に取り組み、スポーツ、そして、オリンピックの意 義、更にはアンチ・ドーピング活動の啓蒙など、国民とともに、スポーツの持つ明るく健 全な意義を享受し、又、知らせていくべきである。

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JOC ゴールドプラン専門委員会

スポーツ立国化検討プロジェクト

レポート 2008

発 行 日:平成 20 年 9 月 30 日

編集・発行:財団法人 日本オリンピック委員会

〒150-8050 東京都渋谷区神南 1-1-1

岸記念体育会館内

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