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2 山形大学紀要 ( 工学 ) 第 27 巻第 1 号平成 14 年 2 月 配向していたから, 熱処理時に収縮が起った. 得られた熱処理繊維 (Sample 2~8) の30 における密度とともに, 収縮率も測定したので, 結果を Table 1に示した. なお, 非晶部分の密度を 1.335g/

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PET繊維のアルカリ処理中における減量

工学部機能高分子工学科

Weight Loss in PET Fibers during Alkali Treatment

Masao OKAMOTO, Norihide SUZUKI and Katsuhiro AOKI

Department of Polymer Science and Engineering, Faculty of Engineering (平成13年10月 1 日受理)

Abstract

PET fibers of different crystallinities prepared by heat-treating a melt-spun PET fiber were alkali-treated in 16.7% NaOH aq. at 60, 78 and 85℃ for 2h. In the low temperature region, the weight loss during the alkali treatment was greater in amorphous PET fibers than in crystalline samples; above Tg

of about 70℃, the situation reversed itself. This behavior is the phenomena associated with Tg. H2O

molecules can predominantly permeate the amorphous regions in PET fibers near Tg. The presence of

water in fiber reduces NaOH concentration on the surface of fiber. As a result, the degree of hydroly-sis becomes lower, because it is dependent on NaOH concentration.

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山形大学紀要(工学)第27巻 第1 号 平成14年 2 月 Bull. Yamagata Univ.(Eng.)Vol.27 No.1 Feb. 2002

1.緒 言 ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液で処理すると, 繊維表面が加水分解され,繊維に絹に近い光沢と 柔らかさを与えることができる.このようなアル カリ処理は古くから行なわれており1-4),著者ら も以前に行ったことがある.その際に,処理によ る減量率の処理温度依存性に興味ある変化がある ことを見つけている5).すなわち,溶融紡糸した ままのPET繊維では,アルカリ処理減量が,処 理温度がガラス転移温度以上になると,急に小さ くなることである.しかも,予め熱処理されて結 晶化度が向上している繊維の場合よりも小さくな る.このような結果が生ずる原因を,アルカリ処 理の際に起こるPETの結晶化および繊維の収縮 に求めようと考えたが,説明し切れなかった.し かし,最近行なった実験中に,上記結果を説明す るのに大いに役立ちそうな結果が得られたので, その結果を含めて,以前の結果を考え直してみた. 2.実 験 2.1 用いたPETおよびアルカリ処理液 実験で用いたPETは,60℃で24時間以上減圧 乾燥したチップ状のものである5).また,アルカ リ処理には,蒸留水100gに対してNaOH(関東化 学㈱の特級試薬)20gの割合で溶解した16.7% NaOH水溶液を使用した. 2.2 結晶性の異なる各種PET繊維の調製 溶 融 紡 糸5)し た ま ま の 未 延 伸 繊 維 ( 3 . 7 ~ 4.3tex)を30cmに切断し,空気中で10分間,い ろいろな温度で熱処理することによって結晶性の 異 な る 各 種P E T 繊維 を 調 製 し た . も と の 繊 維 (Sample 1)は,複屈折度が16.1×10-3で,やや

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配向していたから,熱処理時に収縮が起った.得 られた熱処理繊維(Sample 2~8)の30℃におけ る密度とともに,収縮率も測定したので,結果を T a b l e 1 に 示 し た . な お , 非 晶 部 分 の 密 度 を 1.335g/cm3,結晶部分の密度を1.455g/cm3とし て6)各試料密度から結晶化度を求めてみると,約 10~50%となり,結晶化度が大きく異なる各種 PET試料を得ることができた. 2.3 PET繊維のアルカリ処理 容量50mlの共栓付三角フラスコにアルカリ処 理液40mlを入れ,このフラスコを恒温槽中にて 所定温度に加熱する.次に,デシケーター中に保 存しておいた約0.25gのPET繊維を精秤してから フラスコ内に入れ,繊維に付着している空気をピ ンセットですばやく除いてから,2 時間アルカ リ処理をする.処理後の繊維を流水にて充分洗浄 し,さらに,純水を入れたビーカー中で約3 時 間放置し,繊維に付着しているNaOHを除去した. このようにして得られたアルカリ処理繊維を, 50℃で10時間以上減圧乾燥後,デシケーター中 に保存した. 2.4 ESCAスペクトルの測定 島津X線光電子分析装置ESCA-1000を用いて 行った.測定の際の励起源はMgKα線である.ア ルカリ処理された試料表面層におけるNaの存在 を知ろうと考えたので,ESCAスペクトル中に見 られるX線励起オージェ電子スペクトルの264eV ピーク7)を観測した.また,深さ方向の情報を得 るためにArイオンスパッタリングを併用した. 3.結果および考察 3.1 各種PET繊維へのアルカリ処理効果 Sample 1~8を60,78および85℃でアルカリ処 理した際の処理減量と収縮率(Sample 1の長さ 30cmからの)および得られたアルカリ処理繊維の 密度をTable 2に示す.アルカリ処理温度が60℃ の場合には,どの試料でも,処理前後での密度も

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3 3 岡本・鈴木・青木:PET繊維のアルカリ処理中における減量 収縮率もほとんど変化していない.60℃はPET のガラス転移温度8)よりも低い温度であり,この ような温度でのアルカリ処理中には,処理液は PETの結晶部分へはもちろん,非晶部分へもほ とんど浸透して行かないであろう.また,PET の結晶部分は非晶部分より,耐加水分解性が大き いと考えられるので,繊維表面から加水分解され て行くならば当然,結晶性の低いSample 1~3の 方が,結晶性の高いSample 4~8よりもアルカリ 処理減量が大きくなる.実験結果も期待通りで あった.しかし,Sample 1~3の中での比較でも, Sample 4~8の中での比較でも,アルカリ処理前 の密度が低い方がアルカリ処理減量が小さいとい う傾向が見られる.これは,結晶性の高い試料で も低い試料でも,繊維のごく表面の非晶部分の一 部で,PETが加水分解されにくい状態になり得 ることを示している.次に,処理温度が78℃の 場合を見ると,60℃の場合とは異なり,Sample 4~ 8の方がずっと処理減量が大きい.この温度は, 無定形PETのガラス転移温度8)以上の温度であ るから,Sample 1~3がアルカリ処理中に収縮し てくることは,当然のことと思われる.しかし, Table 1を見ればわかるように,80℃の乾熱処理 では,処理時間が短いとは言えほとんど収縮が見 られない.したがって,アルカリ処理液がPET を可塑化しているように思える.ところで,低密 度状態のPETよりも高密度状態のPETの方がア ルカリ処理による耐加水分解性が大きいと考えら れるにもかかわらず,78℃でのアルカリ処理で は , 全 く 逆 の 実 験 結 果 と な っ て い る . ま た , Sample 1~3の中での比較でも,Sample 4~8の 中での比較でも,60℃での場合と同様,アルカ リ処理前の密度が低い方がアルカリ処理減量が小 さいという傾向が見られる.さらに,アルカリ処 理温度が上昇すれば処理減量は増大すると考えら れるにもかかわらず,Sample 1~3では,60℃で の処理減量とほとんど同じ(Sample 4~8では, 予想通り処理減量が増大している)という結果が 得られた. PET繊維では,その構造の緻密性あるいは疎 水性にはばまれて,水あるいは水酸化物イオンの 浸透はごく表面に限られており,加水分解が繊維 表面から順次進行し,加水分解生成物は繊維表面 から徐々に溶解されて行くと思われている.2,3) しかし,前述したように,78℃のアルカリ処理 液中では,非晶部分の多いSample 1~3において 容易に収縮が起こることから,PET繊維のごく 表面だけでなく内部においても,PET分子の移 動性が大きくなっていることがわかり,アルカリ 処理液の影響は繊維内部の非晶部分にまで及んで いることになる.したがって,60℃でのアルカ リ処理の場合とは異なり,78℃では,繊維のご く表面ばかりでなく内部の非晶部分も加水分解さ れにくい状態になっていることは明らかである. このような現象はアルカリ処理されている際に, 処理液中の水分子が優先的に繊維内の非晶部分へ 浸透するのであれば起こり得る.アルカリ処理減 量は処理液のNaOH濃度が高いほど大きい2).し たがって,繊維内に水が存在すれば,繊維表面の NaOH濃度は低下し,処理減量の減少という結果 となる.この効果がアルカリ処理温度が高くなっ たことにより期待される処理減量の増大をほとん ど相殺してしまったようである. アルカリ処理温度が85℃の場合を見てみよう. Sample 1~3でも,Sample 4~8でも,78℃処理 の場合より処理減量が増大していることは期待ど おりである.けれども,低密度状態の繊維よりも 高密度状態の繊維の方がアルカリ処理による減量 が大きいという78℃処理の場合と同様な結果にな っている.これも,前述した繊維内の非晶部分へ の水分子の優先的浸透による効果であろう.また, Sample 1~3がアルカリ処理中に大きく収縮する ことも78℃処理の場合と同様であるが,78℃処 理中には見られなかった密度増加が観測されてい る.Sample 1を100℃で乾熱処理した場合には, Table 1を見ればわかるように,かなりの収縮は 起こってはいるが密度の増加は認められない.こ のような相違が生ずるのも,アルカリ処理中にお ける繊維内の非晶部分への水分子の優先的浸透効 果によるものであり,PET分子の移動性が大き くなっていることを示している. ところで,NaOH水溶液中ではNa+もOHも水 和イオンとして存在する.NMR測定により求め られた水和数は,Na+では3.5,OHでは0.5であ る9)ので,ここで用いたアルカリ処理液中には, 水和に関与していない自由な水分子もある.これ

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ら の う ちN a+の 水 和 イ オ ン は 最 も 大 き い の で PET繊維内への浸透が最も困難で,また,陽イ オンと陰イオンとは互いに引き合う傾向にあるか ら,OH-の水和イオンも自由な水分子よりは浸 透しにくいであろう.したがって,水分子が,ア ルカリ処理中において,PET繊維の非晶部分へ 最も浸透しやすいということになるであろう. 3.2 アルカリ処理中に起こる試料表面から のNa+の浸透 アルカリ処理中において,水あるいは水酸化物 イオンがPET繊維内へ浸透したかどうかは,2.3 で述べた方法で得られた処理後の繊維を調べても わからない.しかし,Na+ならばESCAスペクト ルを測定することによって,浸透の有無を調べる ことができそうである.もし,Na+が試料内に浸 透できる条件ならば,水分子もOH-も浸透でき るはずである.ここでは,表面分析のしやすさか ら,新たにシート状試料を作って,アルカリ処理 を行なった.2 枚のアルミ板間に原料チップを挟 み,280℃で溶融プレスした後,アルミ板ごと取 り出し,素速く氷水中に入れて急冷して得たシー トを非晶性試料とし,これを180℃で 2 時間熱処 理したものを結晶性試料とした(厚さ:約200μm). この2 種類の試料を10および50%のNaOH水溶 液で2 時間,所定温度で処理した後,純水を入

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5 5 岡本・鈴木・青木:PET繊維のアルカリ処理中における減量 れたシャーレ内に入れ,約 3 時間放置した.シー トを取り出して,表面に付着している水分を拭き 取ってからESCAスペクトルの測定を行った.ア ルカリ処理は60℃から 5 ℃ごとに90℃までの各 温度について行なったが,結晶性試料においては いずれのアルカリ処理試料においてもNa+の浸透 はほとんど認められなかった.一方,非晶性試料 の場合には,10%NaOH水溶液処理ではいずれの 温度での処理でも,Na+の浸透はほとんど認めら れなかったが,50%NaOH水溶液中での65℃処理 では,明らかに試料内部にまでNa+の浸透が確認 でき,70℃処理では最も大量に浸透が認められ, より高温での処理になるほど浸透量はやや減少し ているが,90℃処理でもかなりの浸透が認めら れた(Fig.1). なお,非晶性試料の10%NaOH水溶液処理で Na+の浸透が認められないのは,自由な水分子の 浸透が先行してしまうからであろう.ところが, 50%NaOH水溶液においては,先に述べたように, Na+およびOHにおける水和数がそれぞれ3.5お よび0.5とすれば,自由な水分子は存在せず,Na+ やOH-に水和している水分子ばかりが存在する. したがって,浸透するならばこれらの水和イオン であり,以上の実験結果は,PETの非晶部分に は,ガラス転移領域でのアルカリ処理中に,Na+ の水和イオンが容易に浸透することを示している. 3.3 熱水処理中に起こる試料表面からの水 の浸透効果 PET試料をガラス転移領域の温度でアルカリ 処理すれば,非晶部分には水分子が容易に浸透し 得ることがわかった.そこで,Table 1に示した PET繊維を,アルカリ処理液ではなく純水を用 いて,2.3と同様な手順で処理し,吸水率を知ろ うとした.ただし,2時間の熱水処理後の繊維は, 直ちに純水で室温まで冷却してから取り出した. 吸水率は,繊維表面の付着水を濾紙で取り除き, そのまま精秤して,繊維の重量増加量から求めよ うとした.しかし,Sample 1~3の方が吸水率が 大きいことがわかったが,測定結果のばらつきが 大き過ぎたので,詳細な考察はできなかった. 3.2で述べたシート状試料についても熱水処理 をしてみた.この場合は,吸水率を調べるためで はない.非晶性試料でもNa+が浸透していなかっ た10%NaOH水溶液処理と熱水処理とで,処理中 におけるPETの結晶化挙動に相違があるかどう かを密度測定結果から調べようとした.したがっ て,両処理後の試料を,測定前にシート表面に付 着している水分を拭き取るだけでなく,十分に減 圧乾燥した.測定結果をTable 3および 4 に示す. 結晶性試料では,熱水処理でもアルカリ処理でも, 処理温度が違っても,密度の相違は認められない. しかし,非晶性試料では処理温度が70℃以上に なると,熱水処理の場合でも,アルカリ処理の場 合でも,60および65℃での処理試料よりも密度 が高くなっている.また,75,80および85℃で

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の処理試料の場合には,明らかに,アルカリ処理 よりも熱水処理の場合の方が大きな密度増加と なっている.試料の形態は異なるが,3.1で述べ た16.7%NaOH水溶液中での処理の場合,処理温 度が78℃でも密度増加は認められなかったのに, 10%NaOH水溶液中での処理では,75℃でも密度 増加が認められている.したがって,アルカリ処 理の際のアルカリ処理液のNaOH濃度が低いほど, PET試料中の非晶部分への水分子の浸透がより 容易であり,非晶部分のPET分子がより容易に 結晶化可能なほどの分子運動性を得ることがわか る. いずれにしろ,PET繊維のアルカリ処理中に, アルカリ処理液から優先的に水分子が繊維内の非 晶部分へ浸透する場合がある.この場合には,ア ルカリ処理減量が,期待される減量よりも少なく なることがわかった. 参考文献

1)R. Hill : Fibers from Synthetic Polymers (1953). 2)橋本健:繊学誌,Vol. 14, 510(1958). 3)橋本健:繊学誌,Vol. 15, 794(1959). 4)栗山捨三,是松幹雄:繊学誌,Vol. 16, 110 (1960). 5)石塚修,岡本正雄,田島昌明:山形大学繊維 製造研究施設報告,Vol. 8, 19(1972). 6)G. Farrow and I. M. Ward : Polymer, Vol. 1,

330(1960). 7)日本表面科学会:表面科学の基礎と応用(フ ジ・テクノシステム,1991)287. 8)植松市太郎,植松淑子:高分子11-128. 147 (1962). 9)大瀧仁志,田中元治,舟橋重信:溶液反応の 化学(東京大学出版会,1977)30.

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岡 本 正 雄 教授

     (1936年7月30日生) 略 歴 1961年 3月 東京理科大学理学部化学科卒業 1961年 4月 日東紡績㈱入社         化繊研究所勤務 1966年 5月 山形大学助手(工学部) 1967年 11月 山形大学講師(工学部) 1971年 5月  山形大学工業短期大学部講師(併任) 1984年 3月 1982年 5月 工学博士(東京工業大学) 1982年 12月 山形大学助教授(工学部) 1987年 10月 山形大学教授(工学部) 6 7 8

参照

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