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ナツダイダイの貯蔵, 包装および品質改善に関する研究 III 温熱処理前の冷蔵が減酸におよぼす影響-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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第24巻第1号(1972) 35

ナツダイダイの貯蔵,包装および品質改善に関する研究*

Ⅲ 温熱処理前の冷蔵が減酸におよぼす影響

北 川 博 敏・足 立 修 三**・樽 谷 隆 之

l.緒 近年,酸味の強い,いわゆる夏ミカンは多少酸含盈が多いことだけで高価に取り引きされなくなっている.−・方, 古くから有効を減酸方法として知られていたと酸鉛の散布は,果実内にヒ素の残存することが明らかになり(5),食品 衛生の見地から望ましい減酸方法とはいえない. 筆者らは,果実の呼吸を増大させると酸が消費され,減酸するのでないかと考え,30∼400C の温度に果実を数日 間おいたところある程度減酸することを認め,この処理方法を温熱処理と名づけてさきに発表(7〉したい温熱処理にお いては,処理温度が高く,処理期間が長いほど滅酸の程度は大にをフたが,同時に菅野の増大,異臭の発生なども激 しくなった.そして,実験室的規模においてこのような品質悪化の生じない350C,3日間の処理を多くのナツダイ ダイに行なったところ,酸含盈が比較的高い果実についてはかなりの程度に減酸したが,平均酸含意が2%を少し上 廻るほどの果実については効果が少なかった. 杉山ら(8)は洋ナシの追熟において,果実を迫熟温度におく前に冷蔵すると追熱中における呼吸晶が増大すると報告 しており,岩田ら(8)もナツダイダイを冷蔵したとき,冷蔵期間が長くなるにしたがって出庫後の呼l放免が増大するこ とを認めている. 温熱処理によってナツダイダイが滅酸するのは,処理によって呼吸墓が増大し,酸が消費されるこ.とによるのでな いかと思われるので,処理前に果実を冷蔵すれば減酸効果がより大きくなるかもしれをい.この報告は,以上のよう な考えのもとに,50Cと00Cに冷蔵した果実に350C,3日間の温熱処理を行ない,減酸の程度を測定した結果を とりまとめたものである. ⅠⅠ.材料および方法 実験は昭和44年,45年に香川大学農学部において行をった.供試した材料は愛媛県宇和青果農業協同組合から送ら れたものおよび本学部近くの生産者から直接購入したものである. 温熱処理および酸の定立,表示は前報(、7)のとおりである.果実の唾吸の経日的な変化は所定の温度に保ったデシケ ・一夕・−を用い,いわゆる密封式で測定し,炭酸ガスの呼出患として表示したが,時間的な変化は冷蔵した果実1個を 35OCにおいた直径18、5cmのデシケ一夕一に入れ,071/minの流速で350Cの空気を流しながら,デシケータp・ 内の炭酸ガス汲度を日立一堀場EIA−IA型赤外線分析計により測定した.冷蔵した果実を350C に移したときの果 実温の上昇はCu−Co熱電対(直径0・1mm)を果皮面から約2cm内部に播人し,その起電力を受信記録計(横河 電機ERB12−30−123)により自記させた. tII.結 果 1)温熱処理前の冷蔵と減軽効果 昭和44年6月27日,香川県津田町の同一・園から収穫した果実を50Cの冷蔵庫に入れ,1週間ごとに40佃をとり出 し,直ちに酸含盈を測定した20個と,350C,3日間の温熱処理をした後に測定した20偶の平均酸倉見は第1図に示 したとおりである.すなわ■ら,冷蔵中に酸含盈はほとんど変化しをいが,温熱処理による滅酸効果は冷蔵期間が長く *本報告の要旨は園芸学会昭和45年度秋季大会において発表した **現在三菱樹脂株式会社長浜研究所勤務

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5 果実数 無処理 無冷蔵 1.0 1.5 2い0 2.5 3.0% 1.0 1.5 2け0 2.5 3い0% 1.0 15 2,0 2=5 3い0% 1.0 1.5 2.0 25 3.0% 1・0 1・5 2・0 2・5 3・0%酸含畳 第2図 温熱処理前の冷蔵(50C)が減酸効果におよぼす影響 (昭和44年6月27日入庫)

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37 第24巻第1号(1972) なるにつれて大きくなった.これを酸味図(6)で示すと第2区1のとおりで,無冷蔵の果実を35◇C,3日間の温熱処理 をすると,平均酸含盈が2.16%から1い90%に減少したが,かなりの果実の酸含盈が写%を越えた.しかし,2週 間以上冷蔵して温熱処理をすると2%以上の酸含盈の果実はをくなり,酸味図の上では,いわゆる甘夏と変わらなく なった. 昭和45年には4月14日,6月10日の2回にわたり,愛媛県宇和青果農協より送られた果実を5◇Cと00Cに冷蔵し, 同様な実験をくり返した.4月14日に入庫した果実については,果実の酸含屋がかをり高かったため,無冷蔵のもの を温熱処理するだけで滅酸効果はかをり大きかった.しかしながら,第3区Ⅰのとおり,冷蔵後に温熱処理をするとそ の効果はさらに大きくなり,冷蔵期間が長くなるにつれて効果は増大した.00Cに冷蔵した果実についても同様な傾 向があったが,50Cのほうが減酸効果は大であるように思えた. 6月10日に入庫した果実についても第4図のとおり,同様な傾向が認められ,冷蔵期間が長くなるにつれて減酸の 効果は大となった.また,00Cより50Cのほうが処理の効果は大のようであった.なお,0◇Cに人膚したものは5週 間を過ぎるころから,岩田ら($)が述べているようを低温障普と思われる症状が果実表面に発生した. 冷蔵温壁5℃ ..′無処理 、−−− −●−−−_ ■●−−_ ーー ーー●■− ㌣ ̄ ̄一−、、−−− −−_____ , 35℃3日間温熱処理 0 1 2 3 4 5 6週 冷蔵温度 0℃ ′・無処理 −−−−●−_ −■一−■■  ̄ ̄ ̄…小● ̄も■●  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄−−・・・・− 35℃3日間温熱処理 0 1 2 3 4 5 6週 第3図 温熱処理前の冷蔵が滅酸効果におよぼす影響(昭和45年4月14日入庫)

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0 1 2 3 4 5 6週 第4図 温熱処理前の冷蔵が減酸効果におよぼす影響(昭和45年6月10日入庫) 2)温熱処理前の冷蔵と炭酸ガスの呼出盈 昭和45年6月10日に入庫した果実を6週間冷蔵後350Cに移し,350Cの空気を流しながら果実温の上昇と炭酸ガ スの呼出の時間的変化を測定した.果実の温度は,はじめ急速にあがるが6時間ごろからかんまんになり,第5図に 示すように,だいたい14時間後に350Cに達した.−・方,炭酸ガスの呼出も冷蔵庫から出した直後に急速に増えるが, 第6図のように6∼8時間で長大に達し,以後次第に減少した.そして,00Cに貯蔵した果実のほうが50Cに貯蔵 したものより炭酸ガス呼出競が多く,デシケータt一内の濃度が常に高かったけ 6月10日に人煙した果実を触冷蔵,2週間後,4週間後,6週間後にとり出し,温熱処理中の炭酸ガス呼出嵐を測 定したところ,第7図のようにをり,冷蔵期間が長いほど温熱処理中の炭酸ガス呼出蕊が大となり,ピー・クの高さも 高くをった.また,00Cに冷蔵したもののほうが50Cに冷蔵したものより炭酸ガス呼出塁が常に多かった.

(5)

39 第24巻第1号(1972) 0 0 32 果実の温度 第5図 6週間00Cおよび50Cに貯蔵した果実を35◇Cに移した後の果実温の時間的変化 0 0 0 0 43 炭酸ガス濃度

16 18 20 22 24時間

0 2 4 6 8 10 12 14 35℃に移して彼の時間 第6図 6週間00Cおよび50Cに貯蔵した果実を・350Cに移した後の炭酸ガス呼出盈の時間的変化 CO2mg/kg/hr 無冷蔵 60 40 20 0 ′一ト∵

01 2 3日 0 12 3日

温熱処理開始後の日数

0 1 2 3日 0 1 2 3日

第7図 冷蔵期間と温熱処理中の炭酸ガス呼出盈の変化(昭和45年6月10日入庫)

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ⅠⅤ.考 察 ナツダイダイを冷蔵した後に,350C に3日間おき,いわゆる温熱処理をすると温熱処理だけに比較して減酸の効 果がより大きくなった.そして,その効果は第1図,第2図,第3囲および第4図に示すとおり,冷蔵期間が長いほ ど大になった.たとえば,平均酸含塁が2…16%の果実は2週間以上50Cに冷蔵して温熱処理をすると,酸味図でみ ても甘夏とかわらなくなった(第2図). 温熱処理前に冷蔵すると減酸効果が大きくをる理由については,出席後処理中の呼吸作用が大にをるため,酸がよ り多く消費されるのではないかと想像される、冷蔵した果実を出庫すると呼吸量が増大することは,杉山ら(8)が洋ナ シ,岩田ら(8)がナツダイダイ,EAKSら(1・8)がオレンジ ,レモンにおいて認めており,本実験においても第7図に示 すように冷蔵期間が長くなるにつれて,350C での炭酸ガス呼出畠が増大し,岩田ら(3)の報告と−・致していた. しかしをがら,この炭酸ガス呼出長のすべてが酸の消費をともなうような呼吸を示しているかどうかについては問 題があると思われる.冷蔵した果実を出席後直ちに果実温の上昇と炭酸ガス呼出魔の変化を測定した結果によると, 果実温は表皮下2cmで35◇Cに移して約14時間後に350Cに達したが(第5図),炭酸ガス呼出量はすでに6∼8時 間後にピ、−・クがあって以後減少した(第6図).したがって,この炭酸ガス呼出盈のピ・−クは果実温が上月したため に呼吸が活発になり生じたものとは考え.にくく,果実内に蓄敬した炭酸ガスが放出されたものかあるいは岩田ら(4)が 述べたようにある種の中間代謝物の蓄横によるものかもしれない. また,第6図,第7図のように50Cに貯蔵したものより,00Cに貯蔵したもののほうが温熱処理中の炭酸ガス呼 出急がはるかに多かったにもかかわらず,減酸の効果は第3図,第4図のとおり,50Cに貯蔵したものより大にはな らなかった. ナツダイダイをlOCに長く貯蔵すると低温障害が発生することは岩田ら(3)が報告しており,本実験でも00Cにお いたものは5週間ごろから同様な障書が接じた.さらに,同氏ら(4)はリンゴ酸あるいはオヰザロ酢酸からエチレン生 成に至る経路が活性化されたのが障書発生の原因ではないかと述べている.本実験ではこの点の追究はしていないが, 00Cで果実の代謝に異常が生ずることは確かで,これが炭酸ガス呼出嵐は多いのに滅酸の程度が大きくない理由につ をがるのかもしれない.また,ナツダイダイは果実の数十%を果皮が占めているので,当然炭酸ガス呼出曳に果皮が 大きく影響していると思われるけ その上,岩田ら(4)によると果皮と果汁の酸には関連があるらしく,呼吸と果汁の酸 の関係を果皮ぬきには論じられない.本実験は冷蔵果実の出席後の呼吸について調査することを目的として行なった ものではなく,これらの点を考察するじゅうぶんをデータ・−がないが,今後はこの問題についても検討を行ないたい. また,それが目的としたナツダイダイのより大きい減酸処理につながるかもしれ覆い. ナツダイダイを50Cの冷蔵庫に2∼3週間以上冷蔵した後に350Cに3日間処理すると,温熱処理だけにくらべて 減酸の効果が大きくなることが明らかになった.この方法は多盈のナツダイダイを企業的に減酸処理するには冷蔵庫 や処理室の回転などから考えてすぐれたものとはいえ.ないが,遊休の冷蔵庫がある場合には役立つものと思われる. 今後はより効果的な減酸方法について研究を進めたい. 摘 要 1)果実に悪影響を生じない350C,3日間の温熱処理をする前に,5および00Cに2∼3週間以上冷蔵すると, 減酸の効果が温熱処理だけにくらべて大きくをった.また,冷蔵期間が長くなるにしたがって,効果が大きくなる傾 向が認められたが,00Cに貯蔵したものは50Cに貯蔵したものより効果が大きくはならなかった. 2)処理中の炭酸ガスの呼出量の変化をみると,6∼8時間でピー・クに遷し,その後次第に減少したが,果実温度 は約14時間で350Cに達した.また,冷蔵後350Cにおける果実の炭酸ガス呼出鼠は冷蔵期間が長くをるにつれて 多く,50Cに貯蔵したものより00Cに貯蔵したもののほうが多かった.温熱処理前に冷蔵サーると減酸の効果が大に なるのは,処理中の呼吸が冷蔵することにより増大するためではないかと思われるが,炭酸ガスの呼出盈とは必ずし も関係がないようである. 謝辞 この実験に際して,多盈のナツダイダイをご提供下さった愛媛県宇和青果農業協同組合にお礼を申し上げる.

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第24巻第1号(1972) 41

引 用 文 献 (1)EAKS,ⅠL:Physiologicalstudies of chilling

lIl】urylnCitrusfruits,アgβ花∼ア妙‡∠〃J,35,632−636

(1960)

(2)+

:E鮎ctsof chillingon therespiration Oforangesandlemons,Pro‘∴AmerSoJHorlSJi, 8丁,181−186(1965) (3)岩田 隆・中川勝也・緒方邦安:ナツミカン果 実貯蔵【■Pの低温障害に関する生理学的研究(第 1報),国学雑,3了,87−94(1968)

(4)+・軸・+

:ナツミカン果 実貯蔵中の低温陣容に関する生理学的研究(第 2報),園学雑,38,93−100(1969). (5)門屋∵・臣・倉岡唯行・松本和夫:ヒ酸鉛散布が ナツダイダイの果実発育ならびに糖,酸含盈に およぼす影響,蘭学雑,3ち,111−116(1966). (6)北川博敏・足立修三・樽谷隆之:ナツダイダイ の貯蔵,包装および品質改善に関する研究(第 1報)酸味図による品質の判定,農および園, 45,54ト542(1970).

+・∵・ 】 叫:ナツダイダイ

(7) の貯蔵,包装および品質改善に関する研究(第 2報)温熱処理による滅酸,蘭学雑,39,380− 384(1970)− (8)杉山直儀・岩田正利・高橋和彦・崎山亮三・高 田峰雄:洋ナシバ−・トレットの追熟について (第2報)冷蔵および追熱中の成熟過程ならび に呼吸盈,関学雑,34,19−25(1965)1

STUDIES ON THE STORAGE,PACKAGINGAND QUALITY

IMPROVEMENT OF NATSUDAIDAI

III.EfftctsofColdStorageBeforeReducingtheAcidity

at350Cfbr3Days

HirotoshiKITAGAWA,SyuzoADACHIandTakayukiTARUTANI

Sllmmary

l・Storingtheftuitat50rOOCfor more than2to3weeksbcfbrcholding the丘uitat350C

fbr3daysincreasedtheefft,CtOf’lowerlngtheacidityofCitru5nat5udaidai”Thee鮎ctbecame

greater withlonger periods ofcold storagelHowever,the efftct ofstorlng at OOC did not

exceedthatat5OC

2一Ittookthe丘uitabout14hourstocometo theholdingtemperatureof35OC.Duringthis

time CO2eVOlution丘omthe fiuitreachedthemaximumin6to8hours,decreaslng gradua11y

thereafterlCO2eVOlution duringthe treatmentincreased withlonger fiuit storage andwas

greater・atOOCthan5OCいItseemsthat CO2eVOlution丘omthe丘uitduringthetreatmentwas

notnecessarilyassociatedwiththelossofacidbyresplration

(1972年6月5日 受理)

参照

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