第2章
人生の三大資金のポイント
第1節 教育資金
第2節 住宅資金
第3節 老後資金
第4節 決済ツールとしてのカードやローンのしくみ
第5節 中小企業の資金計画
第1節 教育資金
1 教育資金の考え方 教育資金は住宅資金や老後資金とならび、人生の三大資金の一つといわれています。 教育資金として必要となる金額は家庭によって大きく異なりますが、一般的に入学金や 授業料等の「学校教育費」と、塾や習い事の費用としての「学校外教育費」をあわせた ものが該当します。 いつ必要となるのか、どれぐらい必要となるのかはライフイベント表を作成すること で見積もることができます。そのため、子どもの進学にあわせておおよそどの程度必要 になるかを試算し、そのためにいつから貯めていくか計画的に行動することが重要とい えます。 2 教育資金の準備 (1)積立貯蓄/一般財形 教育資金はできる限り安全性を重視して確実に貯めることを心掛けるべきです。その ため、預貯金の積立による計画的な資金確保の他、勤務先に財形貯蓄制度があれば一般 財形貯蓄をもとに貯める方法も検討されるとよいでしょう。これは給与天引きにて積み 立てを行うことができる仕組みです。 (2)学資保険/こども保険 教育資金確保の手段として代表的なものに「学資保険」や「こども保険」をあげるこ とができます。いずれも各生命保険会社が取り扱う貯蓄性の保険であり、満期時には満 期保険金を受け取ることができます。また、契約者である保護者が死亡した場合には、 以後の保険料支払いは免除されます。 学資保険やこども保険は、貯蓄重視のものと、契約者が死亡した場合の死亡保障や子 どもの医療保障など保障を重視したものがあります。そして、満期時だけではなく、進 学時に祝金がでるものもあります。 3 教育ローン代表的な公的教育ローンとしては、日本政策金融公庫が行う「国の教育ローン」があ り、固定金利で最大 350 万円(留学の場合には450 万円)まで借りることができます。 なお、民間金融機関の教育ローンは変動金利により取り扱いが多くなっていますが、資 金使途が自由なフリーローンと比べると金利が低く設定されています。 教育ローンの使いみちは、入学金や授業料にとどまらず、テキストなどの教材費や下 宿代などにも利用できます。 <国の教育ローン(教育一般貸付)概要> 種類 国の教育ローン/教育一般貸付 融資機関 日本政策金融公庫 融資条件 親の年収制限あり(子どもの人数により年収上限額が異なる) 融資対象の学校に入学・在学する学生の保護者に対する貸し付け 融資限度額 学生 1 人につき 350 万円以内(ただし、海外留学資金の場合には 450 万円まで利用可) 条件 固定金利/返済期間は 15 年以内/最長4 年間元金の据え置き可能 4 奨学金制度 教育資金が不足する場合には、教育ローンの他、奨学金制度を活用する方法がありま す。奨学金制度は、保護者である親ではなく子ども(学生)がお金を借り、卒業後に返 済を行う仕組みですが、卒業後返済を行う必要がない給付奨学金を導入しているケース もあります。 代表的な奨学金制度として、日本学生支援機構が行う奨学金をあげることができます。 日本学生支援機構の奨学金には、「第一種奨学金」と「第二種奨学金」があります。第 一種奨学金は、無利子であり、借りた資金のみを返済していけばよいことになります。 第二種奨学金は有利子(在学中は無利子)であり、卒業後、借りた資金と利子を返済す る必要があります。学生本人の成績などにより利用できる奨学金の種類が変わります。 平成30 年度進学者から返済が不要の「給付型奨学金」が実施されます(平成 29 年か ら、一部先行実施あり)が、対象は住民税非課税世帯であり、高校等からの推薦等が必 要です。
<教育ローンと奨学金の比較> 教育一般貸付 (国の教育ローン) 日本学生支援機構の奨学金 (貸与型:第 1 種・第 2 種) 貸与対象者 保護者 (一定の場合には本人でも可) 学生本人 申込時期 1 年中、いつでも可能 原則、決められた募集期間内 貸与金額 学生一人につき最高 350 万円。 一括貸与 種別、区分によって異なる。 月々定額の貸与 成績要件 なし あり 返済方法 最高 15 年 金額、割賦方法によって異なる 利息 在学期間内は利息のみ 【第 1 種奨学金】 無利息 【第 2 種奨学金】 在学期間内は無利息 (年利 3%が上限) 対象となる学校 就業年限が原則として 6 ヶ月以 上で、中学校卒業以上の人を対 象とする教育施設 大学院、大学、短期大学、高等 専門学校、専修学校 その他 両者の併用は可能
第2節 住宅資金
1 住宅の考え方 住宅の購入は、人生においてもっとも高い買い物の一つといわれており、一般的には 一部を頭金と準備し、残りは住宅ローンを組むことで購入します。長期にわたって返済 を行うのが通常であるため、安心して返済できるような資金計画を行うことが重要です。 住宅を取得する際には、住宅価格のほかに様々な諸費用が必要となります。一般的に は、諸費用を含んだ物件価格の 20%~30%程度を頭金として用意すべきだといわれてい ます。 2 自己資金の準備手段 自己資金の準備手段としては、自身で貯めて準備をするほか、親などから資金援助を 受ける方法があります。親からの資金援助には、住宅取得資金の贈与に関する特例があ りますので、一定の条件に該当する場合には利用されるとよいでしょう(詳細は「相続・ 事業承継」で学習します)。 (1)財形住宅貯蓄 財形住宅貯蓄とは、勤務先を通じた給与天引きの積立制度です。住宅購入や住宅の増 改築のために資金を準備したい場合に利用でき、貯蓄商品と保険商品があります。貯蓄 商品では元本と利子をあわせて 550 万円まで、保険商品は払込保険料 550 万円まで非課 税で貯蓄を行うことができます。また、「財形住宅融資」を受けることができるメリッ トがあります。 <財形住宅貯蓄の対象者> 対象者 申込時の年齢が 55 歳未満の勤労者 積立期間 5 年以上 非課税 元利合計もしくは払込保険料 550 万円まで3 住宅ローンの考え方 住宅ローンは通常、10 年や 20 年、30 年など返済が長期にわたります。そのため、返 済方法や金利水準など住宅ローンをどのように組むかによって総返済額が大きく変わ ることになります。総返済額がどの程度になるかももちろん重要ですが、毎月の返済が 滞りなく行うことができるかどうかを見極めることが大切です。通常は、毎月の返済額 を手取り収入(可処分所得)の 25%以内に抑えることが目安とされています。 なお、住宅ローンを組む際に、金融機関から「団体信用生命保険」への加入を求めら れることがあります。団体信用生命保険に加入すると、契約者である住宅購入者に万が 一のことがあった場合には、保険金で住宅ローンの残債を一括返済されます。民間の住 宅ローンでは強制加入となっており、保険料は金利に含まれていることが一般的です。 4 住宅ローンの金利の種類 住宅ローンの金利には、大きく分けて「固定金利」、「変動金利」、「固定金利選択型」 があります。 (1)固定金利 固定金利は、ローン契約時から返済期間終了まで金利が変わりません。そのため、金 利が低いときに住宅ローンを組むことができれば低金利の恩恵を受けることができま す(総返済額を抑えることができる)。一方、金利が高いときに住宅ローンを組んだ場 合には、市場金利が下がってもローン契約時の金利で返済する必要があるため、不利と なります。 (2)変動金利 変動金利は、市場金利の変動により一定期間ごとに金利が見直されます。そのため、 借入後に金利が低下すれば総返済額を減らすことができますが、金利が上昇すれば総返 済額の増加を招く恐れがあります。金利の見直しは6 ヵ月ごとに行われ、毎回の返済額 が変わるのは5 年ごとであるケースが一般的といえます。 (3)固定金利選択型
<固定金利と変動金利、固定金利選択型のイメージ> <住宅ローン金利のポイント> ・金利低下局面では変動金利、金利上昇局面では固定金利で借り入れる方が有利となる 5 住宅ローンの返済方法 住宅ローンの返済方法には、「元利均等返済」と「元金均等返済」があります。 (1)元利均等返済 元利均等返済とは、借りた元金と利子(利息)をあわせた返済額が毎回一定額となる 返済方法です。毎回の返済額が一定であるため、返済計画が立てやすい点がメリットで すが、返済当初は毎回の返済額の中に占める利子(利息)の割合が高く、金利など同じ 条件の元金均等返済に比べると最終的な総返済額が多くなります。
第3節 老後資金
1 リタイアメントプランの考え方 リタイアメントプランとは、退職後の人生設計をどうするか検討することです。日本 人の平均寿命は世界一の水準といえ、これまでとは働き方が異なってきていること、公 的年金だけでは老後資金が不足する恐れがあることを考慮すると、リタイアメントプラ ンの重要性は日に日に増すばかりです。 多くの人にとって、退職後の収入は減ることになるでしょう。そのため、退職金やそ れまでにためたお金をどのように使うのか、また運用により増やしていくのか、不足す る場合にはどう対処していくのか、早めの準備・検討が必要といえます。 2 リタイア後の資産運用 リタイア後の資産運用は、基本的には安全性を重視した運用を心掛けるべきです。な お、ある程度老後資金に余力のある方で5~10 年程度使わないお金がある場合にはリス クをとった運用を行うことも可能です。ただし、株式というよりは債券などリスクが低 めの金融商品での運用を心掛けるべきでしょう。 また、何かあった時に備えて、流動性にも配慮する必要があります。すなわち、すぐ に現金化できる、もしくはすぐに現金としておろすことができる資金の確保も行ってお くべきです。 3 リバースモーゲージ リバースモーゲージとは、自宅に住み続けながら、その不動産を担保に金融機関から 生活資金を借り入れ、亡くなった後にその不動産を売却することで借入金を返済する仕 組みです。今後、子供がない夫婦を中心に、老後資金の確保方法として注目されていく かもしれません。 4 成年後見制度 成年後見制度とは、20 歳以上でありながらも判断能力が不十分な人の権利を守るた めの制度です。成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。や一定の親族が申立てを行うことによって、家庭裁判所が本人の法律行為を手助けする 人物を選任するしくみです。判断能力がどの程度不十分かによって、「後見」「保佐」「補 助」の 3 つにわかれ、それぞれ「後見人」「保佐人」「補助人」が選任されます。なお、 判断能力が全くない方が後見に該当し、判断能力が特に不十分な方が保佐、判断能力が 不十分な方が補助に該当します。 (2)任意後見制度 任意後見制度は、将来判断能力が不十分になった場合に備えて、事前に本人があらか じめ契約により将来の後見人を決めておくしくみです。任意後見の契約は必ず公正証書 で行う必要があります。任意後見制度での家庭裁判所の関与は、本人があらかじめ選任 しておいた任意後見人を家庭裁判所が選任した任意後見監督人を通じて監督するにと どまります。 法定後見、任意後見ともに、その内容は登記されます。成年後見人(後見人・保佐人・ 補助人)になるのに特に法令上の制限はありませんが、実際には配偶者や子供など親族 がなるケースが多いといえます。なお、以下の者は欠格事由に該当するため、成年後見 人になることができません。 ①未成年者 ②家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人または補助人 ③破産者 ④被後見人、被保佐人、被補助人に対して訴訟をし、またはした者およびその配偶者な らびに直系血族 ⑤行方の知れない者